説明

雪崩・落石等防護体の支柱

【課題】支柱の運搬及び搬入が容易で、且つ掘削を伴い現場での作業性を向上することができ、支柱上部と支柱下部との連結強度に優れた雪崩・落石等防護体の支柱を提供する。
【解決手段】支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結した支柱2において、支柱下部2Sの端部に、支柱2の鋼管より肉厚な肉厚管21の基端側を挿入固定すると共に、肉厚管21の先端側を突出した肉厚挿入部を設け、この肉厚挿入部が支柱上部2Uの端部に挿入される。また、この支柱上部2Uの端部内に、肉厚挿入部の先端側に挿入する挿入体31を設ける。連結状態で、支柱下部2Sと支柱上部2Uとの連結箇所内には肉厚管21が位置し、且つ肉厚管21の先端には、挿入体31の円柱部が挿入されて連結されるから、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを強固に連結できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護柵等の雪崩・落石等防護体の支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から山腹の斜面部等に構築して落石や積雪等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵が知られており、例えば、山腹の斜面部に間隔を置いて縦孔を穿孔し、この縦孔に建て込んだパイプ支柱を並設すると共に、これら各パイプ支柱に複数段のケーブルとともに金網を張設した落石等の防護柵(例えば特許文献1)が提案されている。
【0003】
また、設定面に間隔をおいて穿孔した複数の縦孔に支柱を建て込み、これら支柱の間に上下に間隔を置いて架設する複数の索条体と共に防護用網体を張設した防護柵(例えば特許文献2)や、セメントを混合した混合材である無収縮モルタルを充填した落石・雪崩等保護構造物用充填鋼管を用い、この充填鋼管を基礎に固定する(例えば特許文献3)ものが知られている。
【0004】
また、落石などの衝撃を摩擦エネルギーに変換して吸収するものとして、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平ロープ材の途上にロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成した衝撃吸収柵(例えば特許文献4、特許文献5)が提案されている。
【0005】
また、衝撃吸収杭において、埋設用の筒状体と、上部が地上に突出するように該筒状体に内挿される杭本体と、該筒状体と該杭本体との間に充填される充填材とを備えたもの(例えば特許文献6)がある。
【特許文献1】特開平7−197423号公報
【特許文献2】特開2002−115213号公報
【特許文献3】特開2002−266321号公報
【特許文献4】特開平6−197423号公報
【特許文献5】特開平6−33709号公報
【特許文献6】特開平9−203036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3の防護柵では、斜面に構築した防護柵によって積雪や雪崩等を効果的に受け止めることで、落石や雪崩といった自然災害を抑制することができ、また、特許文献4及び5の衝撃吸収柵では、衝撃を支柱に伝える前に水平ロープ材の一部に形成した緩衝部の摺動により衝撃を吸収することができ、従来に比較して支柱の荷重負荷を軽減できる。
【0007】
ところで、緩衝部を設けても、この種の防護柵において、支柱の強度が荷重に対する性能に大きく寄与し、支柱の強度を向上するには、支柱自体とともに取付強度を向上する必要がある。このため、基礎に形成した縦孔に支柱の下部を建て込み、所定の取付強度を得るようにしている。
【0008】
そして、防護柵の設定条件により、支柱が長尺となる場合があり、例えば、雪崩予防柵などでは、積雪に応じた上部柵高さとこれに対応した下部部分が必要となり、支柱が長尺となる。一方、鋼管などを支柱の材料に用いる場合、防錆などの面からメッキ処理が施される。
【0009】
そのようなメッキ処理は、メッキ槽に支柱を漬ける所謂どぶ漬けが行われるが、長尺な支柱を処理できるメッキ層が少なく、支柱が長くなると、製作工程と製作コストの面で不利になる。しかし、上記特許文献のものは、いずれも支柱又は杭に一体物を用いており、このような問題が予想される。
【0010】
加えて、メッキ槽内の高温のメッキ液に支柱を漬けるため、熱影響により支柱に歪みが発生すると、製品誤差が大きくなる。さらに、長尺な支柱は、車載寸法に制限を受け易いと共に、現場搬入時にも制約を受け易く、施工性の低下を招き易い。
【0011】
一方、製造面から見ると、支柱の使用される条件や場所などによって支柱の長さが異なる場合が多く、支柱上部は標準寸法に設定できても、地山に建て込む支柱下部の長さを、現場に合わせて変えるため、標準寸法で対応することができず、その都度、異なる長さの支柱を製造する必要がある。
【0012】
このため、支柱は、多品種少量生産となり、また、予め標準品を製造しておくことができないため、納期遅れやコストアップを招く問題がある。
【0013】
ところで、特許文献6では、筒状体に杭本体を内挿する技術が開示されているが、このように杭本体より大径な筒状体を用いると、この筒状体に合わせて掘削孔を大きくしなければならず、通常の杭本体を用いる場合より、工数および工事費が上昇する問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、支柱の運搬及び搬入が容易で、且つ掘削を伴い現場での作業性を向上することができ、支柱上部と支柱下部との連結強度に優れた雪崩・落石等防護体の支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、基礎に固定する支柱下部と、この支柱下部の上部に設ける支柱上部とを連結した支柱において、前記支柱上部と支柱下部の一方の端部に、前記支柱より肉厚な肉厚管の基端側を挿入固定すると共に、前記肉厚管の先端側を突出した肉厚挿入部を設け、この肉厚挿入部は前記支柱上部と支柱下部の他方の端部に挿入され、この他方の端部内に、前記肉厚挿入部の先端側に挿入する挿入体を設けたものである。
【0016】
また、請求項2の発明は、前記肉厚管内に充填材を充填したものである。
【0017】
また、請求項3の発明は、前記肉厚挿入部の先端側を、前記他方の端部内周と前記挿入体の外周との間に挿入するものである。
【0018】
また、請求項4の発明は、前記支柱上部及び支柱下部の端部と前記肉厚管との間に充填した接合剤により、前記支柱上部と前記支柱下部を接合したものである。
【0019】
また、請求項5の発明は、前記肉厚挿入部の先端側と前記挿入体との間に充填した接合剤により、前記肉厚挿入部の先端側と前記挿入体とを接合したものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の構成によれば、肉厚挿入部を他方の端部に挿入すると共に、他方の端部側の挿入体を前記肉厚挿入部内に挿入することにより、支柱下部と支柱上部との連結箇所内には肉厚管が位置し、且つ一方に設けた肉厚管の先端は、他方に設けた挿入体が挿入されて連結されるから、支柱下部と支柱上部とを強固に連結できる。そして、その支柱下部を設置場所に固定することにより、防護体の支柱を立設することができる。また、支柱下部と支柱上部の連結部分で支柱が太くなることがなく、したがって、支柱を挿入する掘削孔が大径になることがない。
【0021】
このようにして、長尺な支柱を、支柱下部と支柱上部に分けて運搬、搬入することができ、現場での据付作業性を向上することができる。また、支柱をメッキ処理する場合では、一体物より支柱上部及び支柱下部は短くなるため、そのメッキ処理を容易に行うことができる。さらに、支柱上部と支柱下部とに分割することにより、支柱上部を標準化して予め製造しておくことができる。
【0022】
また、請求項2の構成によれば、内部に充填した充填材により肉厚管の強度がさらに向上する。
【0023】
また、請求項3の構成によれば、前記肉厚挿入部の先端側を、前記他方の端部内周と挿入部の外周との間に挿入することにより、肉厚管の先端と挿入体とが連結される。
【0024】
また、請求項4の構成によれば、接合剤により、肉厚管を介して支柱上部と支柱下部とを所定強度で接合することができる。
【0025】
また、請求項5の構成によれば、接合剤により、肉厚挿入部の先端側と挿入体とを所定強度で接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる雪崩・落石等防護体の支柱を採用することにより、従来にない雪崩・落石等防護体の支柱が得られ、その雪崩・落石等防護体の支柱を夫々記述する。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明の防護体の実施例1について図1〜図9を参照して説明する。防護体たる落石・雪崩等防護柵1は、複数の支柱2,2…を間隔をおいて並設し、それら支柱2,2…間に横ロープ材3,3…を多段に設けると共に、それら支柱2,2…間を、防護面たる網体4により閉塞してなる。
【0028】
また、図中5は、支柱2の上部と、防護柵1の前側の斜面Yとを連結する控えロープ材であり、この控えロープ材5の一端を前記支柱2の上部に連結し、控えロープ5の他端を前記斜面Yにアンカー6により固定している。
【0029】
次に、前記支柱2の詳細について説明すると、その支柱2は、支柱上部2Uと支柱下部2Sとを連結してなり、それら支柱下部2Sと支柱上部2Uには、一例として、充填鋼管11が用いられる。
【0030】
充填鋼管11は、図7及び図8などに示すように、支柱2U,2Sの本体たる断面円形の鋼管12U,12S内に、断面略三角形状の補強体13を挿入配置して該鋼管12U,12Sに固定した後、内部に無収縮モルタルなどの充填材14を充填し、養生したものである。前記補強体13は、板材からなる3枚の補強リブ15,15,15をほぼ正三角形に配置し、補強リブ15,15,15の頂部15S,15S,15Sに帯状鋼板16,16,16を溶着してなる。また、前記帯状鋼板16の幅Wは、前記補強リブ15の厚さTの2倍以上である。また、補強体13の帯状鋼板16,16,16は、前記鋼管12U,12Sの内面と僅かな隙間を介して挿通可能に取付けられている。また、補強リブ15,15,15には貫通孔18が設けられ、充填材14の充填を容易にしている。
【0031】
尚、鋼管12Uと鋼管12Sとは同一構成であり、鋼管12Uは支柱上部2Uに用いられ、鋼管12Sは支柱下部2Sに用いられる。
【0032】
そして、製造時には、補強体13を組立てた後、鋼管12U,12Sの一側開口から該補強体13を挿入配置し、溶接棒などが届く開口側で補強体12U,12Sを鋼管12の内面に溶着固定した後、内部に無収縮充填材14を充填する。また、図8に示すように、補強リブ15の端部は溶接部17により帯状鋼板12に固定される。
【0033】
図2及び図9などに示すように、支柱下部2Sの先端部において、その鋼管12S内に肉厚管21の基端側を挿入し、この肉厚管21は、略2分の1の長さが鋼管12S内に挿入され、この鋼管12Sから突出した肉厚管21の先端側により挿入部21Aを構成している。前記肉厚管21は前記鋼管12Sより厚く、この鋼管12S内に肉厚管21が嵌入される。また、鋼管12Sと同一構成の短管リング22を形成し、前記鋼管12Sに肉厚管21を挿入した状態で、該鋼管12Sの管端と隙間を置いて、前記短管リング22を肉厚管21に外嵌し、前記隙間部分において、鋼管12Sと短管リング22と肉厚管21とを溶着部23により溶着一体化する。この場合、前記隙間の寸法は、鋼管12Sの肉厚程度にすることが好ましく、溶着部23は、グラインダーなどの研磨機により鋼管12Sの外周と面一に仕上げる。尚、短管リング22は鋼管12Sの一部を構成する。尚、前記肉厚管21は、鋼管や鋳鉄管などの鉄管からなり、前記鋼管12U,12Sに挿入可能で、且つ前記鋼管12U,12Sの厚さより肉厚であり、例えば、肉厚管21は鋼管12U,12Sの2倍以上の厚さを有する。
【0034】
また、前記肉厚管21の基端側には、該肉厚管21の端面に当接して仕切り板24を一体に設け、前記肉厚管21の先端側には、該肉厚管21内に仕切り板25を一体に設ける。また、それら仕切り板24,25には、それぞれ貫通孔24A,25Aがそれぞれ穿設されている。尚、それら仕切り板24,25は、溶着により肉厚管21に設けられる。
【0035】
一方、前記支柱上部2Uの上端部において、その鋼管12U内に挿入体31を設ける。この挿入体31は、前記挿入部21A内に挿入する円柱部32とこれより径大な鍔部33とを一体に有する。また、その挿入体31は長さ方向に複数(2つ)の貫通孔34が形成されている。また、前記鋼管12Uと同一構成の短管35を形成し、鋼管12Uと短管35との間に前記鍔部33を挟むようにして該鍔部33に鋼管12Uと短管35とを外嵌し、それら鋼管12Uと短管35との間に隙間を設け、この隙間部分において、鋼管12Uと短管35と鍔部33とを溶着部36により溶着一体化する。この場合、前記隙間の寸法は、鋼管12Uの肉厚程度にすることが好ましく、溶着部36は、グラインダーなどの研磨により鋼管12Uの外周と面一に仕上げる。尚、短管35は鋼管12Uの一部を構成する。尚、前記挿入体31は、鋼や鋳鉄などの鉄製のものが用いられる。また、円柱部32の長さは、嵌入する肉厚先端部21Aの内面の2分の1以上とすることが好ましく、こうすることにより、円柱部32と肉厚先端部21Aとの連結強度を十分に得ることができる。
【0036】
前記鍔部33の先端側の面と鋼管12Uの管端との間の長さ寸法Sは、前記挿入部21Aの先端と前記鋼管12Sの管端との間の長さ寸法S´より僅かに大きく、また、前記円柱部32の長さ寸法S1は、前記仕切り板25の先端面と鋼管12Sの管端との間の長さ寸法S1とほぼ等しい。また、鋼管12Uと鋼管12Sの端部が当接した状態で、前記円柱部32の先端面と仕切り板25の先端面との間に、数ミリ程度の隙間が形成され、同様に、肉厚挿入部21Aの先端面と鍔部33の先端面との間に、数ミリ程度の隙間が形成される。
【0037】
前記仕切り板25より基端側で前記鋼管12S内に、前記補強体13が挿入配置され、また、前記挿入体31より基端側で前記鋼管12U内に、前記補強体13が挿入配置されている。
【0038】
また、前記溶着部23より基端側において、前記肉厚管21には厚さ方向の貫通孔27が複数穿設され、この例では、対向する位置に一対の貫通孔27,27が穿設され、これら貫通孔27,27は前記溶着部23に近接した位置にある。
【0039】
そして、鋼管下部2Sにおいては、仕切り板25に穿設した貫通孔25Aから、前記充填材14を充填することにより、仕切り板25位置まで充填材14が充填され、また、肉厚管21内から貫通孔28,28を通って肉厚管21と鋼管12Sとの間の僅かな隙間にも充填材14が充填される。一方、挿入体31の貫通孔34から、前記充填材14を充填することにより、少なくとも挿入体31の基端側まで充填材14が充填される。尚、貫通孔34内に充填材14を充填してもよい。
【0040】
また、前記鋼管12Sの前記短管リング22には、接合用接合剤注入口42が形成され、一方、前記円柱部32に対応する位置で、前記鋼管12Uには、接合用接合剤注入口41が穿設され、これら注入口41,42同士は周方向に180度離れた位置にある。そして、それら注入口41,42には、それぞれホース(図示せず)などの管材が接続され、接合剤43を充填した後、図示しない接続部たるプラグが螺合されて閉塞される。
【0041】
また、前記肉厚管21には、前記仕切り板25より先端側に、貫通孔28が穿設され、この貫通孔28は連結状態で、前記円柱部32の先端面と仕切り板25との間に隙間に連通する。
【0042】
したがって、支柱上部2Uの鋼管12U内に、支柱下部2Sの挿入部21Aを挿入し、鋼管12Uと鋼管12Sの端部が当接すると、挿入部21Aの先端面と鍔部33の先端面との間に所定寸法の隙間が形成され、また、挿入体31の円柱部32が挿入部21A内に挿入される。この後、前記ホースを使って注入口41から、鋼管12U,12Sの内面と肉厚管21の外面との間、肉厚管21の先端側内面と挿入体31との間及び前記円柱部32の先端面と仕切り板25との間に、接合剤43を充填し、他方の注入口42から内部の空気を逃がす。尚、図9中、ハッチングで示す部分と、円柱部32の外周と挿入部21Aの内周との間が、接合剤43の充填範囲である。
【0043】
充填材たる接合剤43として、ベースレンジに、エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたエポキシ系接着剤を用い、主剤と硬化剤とからなる二液性で、湿潤面硬化型のものを用いる。このように、接合剤43に湿潤面硬化型のエポキシ系接着剤を用いることにより、湿気処理などが難しい現場においても、施工を行うことができる。
【0044】
次に、前記防護柵1の施工方法などについて、支柱2を中心として説明する。まず、設置場所で、支柱下部2Sを建て込んだ後、支柱上部2Uを連結する場合について説明すると、図1などに示すように、防護柵1の設置場所である山の斜面Yなどに取付孔51を穿孔し、この穿孔にはボーリングが用いられ、前記取付孔51に支柱下部2Sを挿入して建て込む。
【0045】
そして、取付孔51と支柱下部2Sとの間に隙間があれば、この隙間に取付孔用充填材52を充填して支柱下部2Sを設置場所に固定する。このように、支柱2の施工において、長尺な支柱2を、その支柱下部2Sと支柱上部2Uと分けて施工することができ、現場での据付作業性を向上することができる。また、充填材14を充填する前の支柱2を、メッキ処理する場合では、一体物より支柱上部2U及び支柱下部2Sは短くなるため、そのメッキ処理を容易に行うことができる。
【0046】
このように支柱下部2Sの施工が終わった後、連続して、あるいは時間をおいて、支柱上部2Uの施工を行う。まず、支柱上部2Uを支柱下部2Sに向って下し、支柱下部2Sの挿入部21Aを支柱上部2Uの鋼管12U内に合わせ、支柱下部2Sを下ろしていくと、挿入体31の円柱部32が挿入部21A内に挿入され、鋼管12U,12Sの先端同士が当接し、接続状態となる。そして、注入口41から、接合剤43を充填する。
【0047】
充填した接合剤43が硬化することにより、支柱上部2Uと支柱下部2Sとが一体化される。この場合、接合剤43による接着により、引抜力も得られ、また、接合剤43に湿潤面硬化型のエポキシ系接着剤を用いることにより、湿気処理などが難しい現場においても、施工を行うことができる。
【0048】
尚、設置場所で、建て込み前に、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよく、この場合、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを別々に設置場所又はその近傍に搬入するから、それらの運搬及び搬入が容易となり、また、設置場所又はその近傍の作業に適した場所で、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを一体化することができる。
【0049】
尚、設置場所又はその近傍以外で、工場などにおいて、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよい。この場合、長尺な支柱2を支柱下部2Sと支柱上部2Uとに分割して製造するため、メッキ処理などの制約を受け難く、また、作業に適した場所で製造するから、メッキ処理を施した安定した製品(支柱2)を製造することができる。
【0050】
このように本実施例では、請求項1に対応して、基礎たる斜面Yに固定する支柱下部2Sと、この支柱下部2Sの上部に設ける支柱上部2Uとを連結した支柱2において、支柱上部2Uと支柱下部2Sの一方である支柱下部2Sの端部に、支柱2の本体たる鋼管12S,12Uより肉厚な肉厚管21の基端側を挿入固定すると共に、肉厚管21の先端側を突出した肉厚挿入部21Aを設け、この肉厚挿入部21Aは支柱上部2Uと支柱下部2Sの他方である支柱上部2Uの端部に挿入され、この支柱上部2Uの端部内に、肉厚挿入部21Aの先端側に挿入する挿入体31を設けたから、肉厚挿入部21Aを他方の端部に挿入すると共に、他方の端部側の挿入体31を肉厚挿入部21A内に嵌入することにより、支柱下部2Sと支柱上部2Uとの連結箇所内には肉厚管21が位置し、且つ一方に設けた肉厚管21の先端は、他方に設けた挿入体31が挿入されて連結されるから、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを強固に連結できる。そして、その支柱下部2Sを設置場所に固定することにより、防護体たる防護柵1の支柱2を立設することができる。また、支柱下部2Sと支柱上部2Uの連結部分で支柱2が太くなることがなく、したがって、支柱2を挿入する掘削孔たる取付孔51が大径になることがない。
【0051】
このようにして、本実施例では、長尺な支柱2を、支柱下部2Sと支柱上部2Uに分けて運搬、搬入することができ、現場での据付作業性を向上することができる。また、支柱2をメッキ処理する場合では、一体物より支柱上部2U及び支柱下部2Sは短くなるため、そのメッキ処理を容易に行うことができる。さらに、支柱上部2Uと支柱下部2Sとに分割することにより、支柱上部2Uを標準化して予め製造しておくことができる。
【0052】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、肉厚管21内に充填材14を充填したから、内部に充填した充填材14により肉厚管21の強度がさらに向上する。
【0053】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、肉厚挿入部21Aの先端側を、他方である支柱上部2Uの端部内周と挿入体31の円柱部32の外周との間に挿入するから、肉厚管21の先端と挿入体31とが連結される。
【0054】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、支柱上部2U及び支柱下部2Sの端部と肉厚管21との間に充填した接合剤43により、支柱上部2Uと前記支柱下部2Sを接合したから、接合剤43により、肉厚管21を介して支柱上部2Uと支柱下部2Sとを所定強度で接合することができる。
【0055】
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、肉厚挿入部21Aの先端側と挿入体31との間に充填した接合剤43により、それら肉厚挿入部21Aの先端側と挿入体31とを接合したから、接合剤43により、肉厚挿入部21Aの先端側と挿入体31とを所定強度で接合することができる。
【0056】
また、実施例上の効果として、支柱下部2Sの先端側で、鋼管12Sと鋼管の一部を構成する鋼管リング22との間に隙間を設け、この隙間で、鋼管12Sと鋼管リング22と肉厚管21とを溶着一体化したから、鋼管リング22の位置を設定することにより、鋼管リング22の端部からなる鋼管12Sの先端位置を正確に設定することができ、また、支柱上部2Uの先端側で、鋼管12Uと鋼管の一部を構成する短管35との間に隙間を設け、この隙間で、鋼管12Uと短管35と挿入体31とを溶着一体化したから、内部に配置される挿入体31を強固に鋼管12Uに固定することができる。また、他方の端部側の挿入体31を肉厚挿入部21A内に嵌入するから、肉厚管21の先端を他方である支柱上部2Uの鋼管12Uに確実に位置決め状態で固定することができる。
【0057】
また、実施例上の効果として、ベースレンジに、エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたエポキシ系接着剤を用い、主剤と硬化剤とからなる二液性で、湿潤面硬化型のものを用いたから、現場での接着性を確保することができ、また、モルタル等に比べて早く接合強度を得ることができる。
【0058】
また、充填鋼管11についての実施例上の効果として、支柱上部2Uと支柱下部2Sは、補強体13を備えた充填鋼管11からなり、断面円形の鋼管12U,12Sの内部に、断面三角形の補強リブ15,15,15を内接して設けると共に、補強リブ15,15,15の2つの頂点15Sを鋼管の引張領域側に配置したから、鋼管12内部の補強リブ15,15,15により、断面において内部のセメント混合材である充填材14が拘束され、圧縮応力が向上し、引張領域側に補強リブ15,15の2つの頂点15S,15Sを連結するリブ15があるため、これが曲げにより生じる引張力に抗して引張領域側の引張応力が向上し、荷重に対する応力を効果的に向上することができる。
【0059】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、支柱上部に肉厚管を設け、支柱下部に挿入体を設けてもよい。また、実施例では、斜面などの地山に支柱を建て込んだ例を示したが、コンクリートなどの基礎を設けた設置面に支柱を建て込んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例を示す防護体の断面図である。
【図2】同上、支柱上部と支柱下部の連結箇所の一部切欠き正面図である。
【図3】同上、支柱下部の先端側の一部切欠き正面図である。
【図4】同上、支柱下部の先端側の部材の分解説明図である。
【図5】同上、支柱上部の先端側の一部切欠き正面図である。
【図6】同上、挿入体を示し、図6(A)は平面図、図6(B)は正面図である。
【図7】同上、図2のA−A線及びB−B線断面図である。
【図8】同上、補強体の要部の拡大断面図である。
【図9】同上、支柱下部と支柱上部の連結箇所の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 防護柵(防護体)
2 支柱
2U 支柱上部
2S 支柱下部
11 充填鋼管
12U,12S 鋼管
14 充填材(無収縮モルタル)
21 肉厚管
21A 肉厚挿入部
22 短管リング(鋼管の先端側)
31 挿入体
32 円柱部(先端部)
35 短管(鋼管の先端側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に固定する支柱下部と、この支柱下部の上部に設ける支柱上部とを連結した支柱において、前記支柱上部と支柱下部の一方の端部に、前記支柱より肉厚な肉厚管の基端側を挿入固定すると共に、前記肉厚管の先端側を突出した肉厚挿入部を設け、この肉厚挿入部は前記支柱上部と支柱下部の他方の端部に挿入され、この他方の端部内に、前記肉厚挿入部の先端側に挿入する挿入体を設けたことを特徴とする雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項2】
前記肉厚管内に充填材を充填したことを特徴とする請求項1記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項3】
前記肉厚挿入部の先端側を、前記他方の端部内周と前記挿入体の外周との間に挿入することを特徴とする請求項1又は2記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項4】
前記支柱上部及び支柱下部の端部と前記肉厚管との間に充填した接合剤により、前記支柱上部と前記支柱下部を接合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項5】
前記肉厚挿入部の先端側と前記挿入体との間に充填した接合剤により、前記肉厚挿入部の先端側と前記挿入体とを接合したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の雪崩・落石等防護体の支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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