説明

電位色素及びカルシウム色素を用いた新規の細胞ベースアッセイ

例えば、Gタンパク質共役受容体の刺激に反応した細胞内cAMP濃度の変化を検出するのに、環状ヌクレオチド作動性チャネル並びに蛍光色素及び他の指示体を利用する新規の組成物および方法を開示する。cAMPに対する感度を増強し、かつ2価カチオンによって媒介された遮断を低減する1つ又は複数のチャンネル孔変異を含むCNG変異体が、Gタンパク質共役受容体活性の検出を含めた、様々なアッセイで使用される。タンパク質相互作用の細胞ベースのアッセイに特に適した新規の色素クエンチャー調合物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2003年10月30日出願の米国特許仮出願第60/515442号、及び、2004年7月20日出願の米国特許仮出願第60/589012号に基づく権利を主張し、これらの開示の両方を参照することにより、あらゆる目的に関して全体として本明細書に援用する。
【0002】
本出願は、2002年3月4日出願の米国特許出願第10/087217号にも関連しており、2001年10月26日出願の米国特許仮出願第60/330663号に基づく権利を主張するものであり、これらの開示を参照することにより、あらゆる目的に関して全体として本明細書に援用する。
(発明の分野)
【0003】
本発明は、一般に細胞生理学に関する。詳細には、本発明は、改善された環状ヌクレオチドアッセイで使用するための新規のCNG変異体、及び、蛍光電位色素を用いた新規の細胞ベースのアッセイで使用するための蛍光クエンチャー分子を含めた、カルシウム及び電位ベースの色素、並びに他の指示体を用いた細胞ベースのアッセイで使用するための新規のツールに関する。そのようなツールは、Gタンパク質共役受容体の活性を測定するのに有用であり、また、環状ヌクレオチドの細胞内濃度の変化が関与する他のアッセイで有用である。
(発明の背景)
【0004】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、3本の細胞内ループ及び3本の細胞外ループを伴った7本の疎水性アルファへリックス膜貫通(TM)ドメインを有することを特徴とする内在性膜タンパク質の大きなスーパーファミリーを構成している(Jiら、J Biol Chem、273:17299−17302、1998年)。加えて、すべてのGPCRが、N末端細胞外ドメイン及びC末端細胞内ドメインを含有している。細胞外リガンドの結合は、膜貫通ドメイン、N末端ループ、又は細胞外ループによって、単独で、あるいはこれらの組合せによって媒介されうる。例えば、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、及びヒスタミンなどの生体内アミンの結合は、最初にTM3部位で起こり、その一方で、TM5及びTM6は、細胞内シグナルを発信する部位をもたらすと考えられている。作動薬がGPCRに結合すると、その結果、1つ又は複数の細胞内ヘテロ三量体GTP結合タンパク質(Gタンパク質)の活性化が起こり、次にそれが、それに続いて下流エフェクター分子(酵素、イオンチャンネル、及び輸送体など)を調節することによって、シグナルの伝達及び増幅を行う。次にこれが、セカンドメッセンジャー(cAMP、cGMP、イノシトール、リン酸、ジアシルグリセロール、細胞質イオンなど)の迅速な産生をもたらす。
【0005】
GPCRは、リガンドがGPCRに結合した際に、細胞膜の反対側へのシグナル伝達を媒介する。GPCRの細胞内部分がGタンパク質と相互作用して、細胞の外部から内部へのシグナル伝達を調節する。GPCRは、このようにしてGタンパク質と共役する。Gタンパク質複合体には、3つのポリペプチドサブユニットがあり、それらは、GTPに結合し、それを加水分解するアルファサブユニット、及びベータガンマ二量体サブユニットである。不活性状態では、Gタンパク質はアルファサブユニット及びベータガンマサブユニットのヘテロ三量体として存在する。Gタンパク質が不活性であるときには、グアノシン二リン酸(GDP)がGタンパク質のアルファサブユニットに結合している。リガンドがGPCRに結合して、これを活性化したときには、GPCRがGタンパク質のヘテロ三量体に結合し、GDPに対するGアルファサブユニットの親和性を低下させる。活性状態では、GサブユニットがGDPをグアニン三リン酸(GTP)に交換し、活性型のGアルファサブユニットが、GPCR及びベータガンマ二量体サブユニットの両方から分離する。分離した活性型のGアルファサブユニットは、細胞内でGタンパク質シグナル伝達経路の「下流」にあるエフェクターにシグナルを伝達する。最後には、Gタンパク質の内在性GTPアーゼ活性が、活性型のGサブユニットを不活性状態に戻すが、その状態では、GサブユニットがGDP及びベータガンマ二量体サブユニットに結合している。
【0006】
このシグナルトランスダクションは、セカンドメッセンジャー分子の産生をもたらす。セカンドメッセンジャーがひとたび生成されれば、それは、細胞活性に広範な影響をもたらす。そのような活性の1つが、環状ヌクレオチドであるcAMP及びcGMPによる、環状ヌクレオチド作動性(CNG)チャンネルの活性化である。CNGチャンネルは、細胞膜を通したカチオンの流動を制御する膜貫通分子である。これらのチャンネルは、環状ヌクレオチドの細胞内濃度が増加することによって活性化、つまり開口される。ひとたび開口されれば、これらのチャンネルは、例えばNa、K、Mg2+、及びCa2+のイオンを含む、混成のカチオン流動を引き起こす。CNGチャンネルの活性によって、電気的興奮及びCa2+シグナル伝達と、環状ヌクレオチドの細胞内濃度変化との共役がもたらされる(図1)。
【0007】
受容体の機能は、Gタンパク質それ自体(共役にはGTP結合型が必要である)、リン酸化(Gタンパク質共役受容体キナーゼ、又はGRKによる)、及びβ−アレスチンとして知られている抑制性タンパク質への結合、によって調節される(Lefkowitz、J Biol Chem、273:18677−18680、1998年)。医学的に重要な多くの生物過程が、Gタンパク質及び/又はセカンドメッセンジャーの関与するシグナル伝達経路に参加するタンパク質によって媒介されていることは、久しく確立されていることである。(Lefkowitz、Nature、351:353−354、1991年)。事実、すべての処方薬剤のうち約1/3がGPCRリガンドである(Kallalら、Trends Pharmacol Sci、21:175−180、2000年)。
【0008】
GPCRは、知られている(あるいは予測されている)それらの構造的特性及び機能的特性に基づいて、3つの主要なクラス(そして、多数のサブクラス)に分類される(Ranaら、Ann Rev Pharmacol Toxicol、41:593−624、2001年;Marcheseら、Trends Pharmacol Sci、20:370−375、1999年)。これらの受容体うち、匂い物質、光、及び生体内アミンの受容体と、ケモカイン及び小型ペプチドの受容体と、いくつかの糖ペプチド/糖タンパク質ホルモンの受容体とを含めた大部分がクラスAに属する。クラスB受容体は、さらに高分子量のホルモンと結合し、一方、クラスCには、GABA受容体、味覚受容体、及びCa2+感受性受容体が含まれる。GPCRは、あらゆる組織に見出されている。しかし、個々の受容体の発現は、いずれも限定的かつ組織特異的でありうる。そのため、一部のGPCRは、特定の組織型のマーカーとして用いることができる。
【0009】
広範なGPCR及びGPCRリガンドから予測できるように、これらの分子の機能異常は、ヒトにおける多数の疾患状態に関連付けられている(Ranaら、同上、及びJiら、同上)。これら多数の疾患を治療するためのGPCR作動薬及び拮抗薬の開発がなされてきている。例えば、生体アミンの受容体の重要な一群が、多数の成功した薬物の標的となってきた。この一群の受容体には、エピネフリン及びノルエピネフリン(α−及びβ−アドレナリン受容体)、ドーパミン、ヒスタミン、並びにセロトニンの受容体が含まれる。GPCR機能の関与が示唆されている疾患の例には、心臓病(例えば、頻脈、鬱血性心不全など)、喘息、高血圧、アレルギー反応(アナフィラキシーショックが含まれる)、胃腸病、及び広範な神経障害(例えば、パーキンソン病、うつ病、統合失調症など)が含まれるが、これらに限定されない。最後に、乱用薬物の多くの受容体がGPCRである。
【0010】
多くの動物で、GPCRは、その生物の全身に存在し、正常機能の維持、そして、疾患状態の原因となっている。他の例では、特定のGPCR又は特定ファミリーのGPCRの発現が極めて厳密に制御されており、例えば、発生の初期ステージでのみ発現される。従って、必要に応じて、GPCRを刺激又は活性化できる化合物、若しくは、GPCRを抑制又は不活性化できる化合物を見出すことが重要である。GPCRの正常な機能を刺激する作動薬となる化合物は、これまで、喘息、パーキンソン病、急性心不全、骨粗鬆症、低血圧などを治療するのに使用されている。正常な機能を妨害又は阻止する化合物である拮抗薬は、これまで、高血圧、心筋梗塞、潰瘍、喘息、過敏症、精神障害及び神経障害、無食欲、並びに過食症を治療するのに使用されている。
【0011】
詳細に特徴付けされている受容体に加えて、多数の「オーファン」受容体がクローニングされ(Marcheseら、同上)、それらは、これらのファミリーの一部に配列類似性を有することが知られているが、それらの機能も、リガンドも明らかでないものである。GPCRは、多様な細胞活性の制御において中心的役割を果たしているので、これら「オーファン」受容体の作動薬及び拮抗薬を同定する方法、並びに、作動薬リガンドが既知である受容体に対する追加の拮抗薬を同定する方法が、今なお当技術分野で必要とされている。
【0012】
cAMPは、最初に認知されたセカンドメッセンジャーであり、Gタンパク質G及びGolfと共役する多数の受容体の活性化に反応してアデニル酸シクラーゼによって合成され、シクラーゼ活性は、Gタンパク質Giと共役する受容体の活性化によって抑制される。cAMPは、cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)を活性化し、重要な細胞反応をもたらす。生理的には、cAMPは、貯蔵エネルギーの動員(例えば、肝臓内の炭水化物の分解、脂肪細胞におけるトリグリセリドの分解、腎臓による水分の保存、及びCa2+恒常性)、心筋の拍数及び収縮力の制御、平滑筋の弛緩、性ホルモンの産生、並びに他の多くの内分泌過程及び神経過程などのホルモン反応を媒介する。
【0013】
現在、多くのcAMPアッセイが利用可能である。それらには、cAMP反応性プロモーターエレメントCREを用いてルシフェラーゼレポーターを発現させる転写レポーターアッセイ、cAMP免疫アッセイ(Applied Biosystems社、カリフォルニア州フォスターシティー)、アデニリルシクラーゼのin vitro酵素アッセイ(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)、及びcAMP蛍光偏光アッセイ(PerkinElmer Life Sciences社、マサチューセッツ州ボストン)が含まれる。しかし、これらすべてのアッセイはエンドポイントアッセイであり、そのようなアッセイでは、細胞を溶解させ、抽出物を試験に用いる。R.Y.Tsien及び彼の共同研究者は、単一細胞内のcAMP濃度をレポートする蛍光プローブを開発した。しかし、これらのプローブを細胞に適用する方法は、ハイスループットスクリーニングフォーマットに適していない(Adamsら、1991年、Nature 349:694−697;Zoccoloら、2000年、Nat.Cell Biol.2:25−29)。cAMP産生への個々の生存細胞の活性化を検出できること、特に、不均一な細胞又は組織環境において検出できることが当技術分野で必要とされている。そのような検出が行えるようになれば、長期記憶の誘導の場合にあるような、複雑な刺激に対する受容体の活性化及び細胞反応の試験が可能となるであろう。所与の細胞におけるCa2+活性化及びcAMP活性化両方の同時試験に基づいてオーファンGPCRのリガンドを同定するため、並びに、GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤を同定するために、生存細胞内のcAMPを直接試験する能力も、当技術分野で必要とされている。これらの必要性及び他の必要性が本発明によって満たされる。
(発明の概要)
【0014】
本発明のアッセイ及び方法は、cAMPアッセイで使用するための新規のツールを提供する。詳細には、本発明は、CNGベースのアッセイ、特に、GPCR及びGPCRシグナリングカスケードの活性をモニターするアッセイで使用するための新規のCNG変異体を提供する。新規のCNG変異体は、チャンネル孔のカルシウム遮断を排除する1つ又は複数の変異を有し、その結果、cAMPに対する感受性及び特異性(cGMPに対する)が改善され、また、CNGベースのcAMP活性化のアッセイがかなり改善された。
【0015】
CNGベースのアッセイ、並びに、カルシウム色素及び電位ベースの色素を用いた他のアッセイ、で使用するためのクエンチャー分子も提供する。そのようなアッセイでは、細胞内の蛍光をそのままに維持しながらバックグラウンドの細胞外蛍光を低減するために、蛍光指示薬と併せて膜不浸透性のクエンチャーが頻繁に使用されてきた。しかし、測定される生物相互作用に対してそのようなクエンチャーが薬理学的な干渉を示す場合、アッセイに対して負の影響が生じることがある。本発明のクエンチャー分子は、薬理学的に不活性であり、従って、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド脂質、及び有機小分子のアッセイとの適合性を有する。従って、これらの分子は、本明細書で例示するGPCR/CNGアッセイを含めた、電位依存性蛍光色素を利用する様々なアッセイで利用できる。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
[I.概説]
【0016】
本発明の新規の色素クエンチャー調合物は、検出用蛍光色素を利用するいかなる細胞ベースのアッセイにおいても広範な適用性を有する。本発明のCNG変異体は、細胞内cAMP濃度を測定するためのいかなる細胞ベースのアッセイにおいても広範な適用性を有する。これらの有用性は、本明細書、及び、参照により全体として本明細書に援用する米国特許出願第10/087217号に記載のGPCR/CNGアッセイによって例示される。
[新規のクエンチャー/色素調合物]
【0017】
膜不透過性の蛍光クエンチャーは、バックグラウンドの蛍光ノイズを低減して、アッセイ手順を単純化するために、しばしば蛍光指示薬と併せて使用される。例えば、マクロファージ細胞におけるフルオレセイン結合体の細胞内取込みをモニターするアッセイにおいて、細胞内の蛍光を維持しながら、細胞外蛍光バックグラウンドを低減するために、トリパンブルーが使用された(Sahlinら、1983年;Hedら、1987年;Wanら、1993年)。細胞内カルシウムを測定するのに、カルシウム蛍光色素と併せて、金属イオンクエンチャー及び吸光色素クエンチャーが使用された(Etterら、1996年;Daviesら、1997年;Mehlinら、Biotechniques、2003年)。膜電位をモニターするのに、電位依存性蛍光色素と併せて、衝突クエンチャーI及び吸光色素クエンチャーが使用された(Melikyanら、1996年;Leenhouts及びKruijff、1995年;米国特許出願公開第2003/0087332号)。遺伝子転写を測定するのに、蛍光色素と併せて、吸光色素クエンチャーが使用された(米国特許第6221612号)。
【0018】
クエンチャーとして使用される多くの色素は、繊維工業用に開発されたものである。従って、生存細胞に対する薬理作用は、通常、未知のまま残っている。クエンチャーが細胞シグナル伝達経路又は受容体に薬理作用を有する場合、あるいは、例えば、共有結合性、静電気、水素、及びファンデルワールス相互作用の結果としてリガンドと相互作用する場合、アッセイ性能に負の影響が生じることある。これらの相互作用は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオシド、脂質、又は有機小分子からなるリガンドをスクリーニングする場合に特に問題が大きい。開示する発明は、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、脂質、及び有機小分子のアッセイに適合性を有するクエンチャー色素、並びに、それを同定する方法を提供する。
【0019】
従って、本発明は、生物学的に不活性の蛍光クエンチャーを同定する方法であって、
(a)候補クエンチャー分子のコレクションを準備するステップと、
(b)少なくとも5つの受容体のパネルを提供するステップであり、
前記受容体は、少なくとも3つのタイプから選択され、
生体内アミン、アデノシン、脂質、アルカロイド、アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質を含めたファーマコフォアによって識別されるステップと、
(c)活性化ファーマコフォアの存在下、並びに候補クエンチャー分子の前記コレクションのメンバーの存在下及び非存在下で、前記受容体の活性をアッセイするステップと、
を含み、
生物学的に不活性の蛍光クエンチャーは、受容体の前記パネルの活性化に対して影響を及ぼさない、方法を提供する。そのようなアッセイでは、受容体の活性化は、通常、クエンチャーの機能的な使用が関与しない方法で定量化される。
【0020】
詳細には、一般的に使用されているクエンチャーであるトリパンブルーに、グルカゴンなどのペプチドリガンドの効力を低下させる傾向があることが見出された。ニトラジンイエロー及び構造類似分子であるニトロレッドは、ペプチド及び他の有機小分子の反応に対してほとんど影響を及ぼさず、電位依存性蛍光色素の有用なクエンチャーとして同定された。これらのクエンチャー色素は、様々な検出用蛍光色素を使用する細胞ベースのアッセイに用いる調合物において広範な適用性を有する。詳細には、本発明のクエンチャー色素は、作動薬、拮抗薬、又はアロステリックモジュレーターの生存細胞アッセイでCNGチャンネルの活性をモニターするために、電位色素と併せて使用することができる。この色素/クエンチャー調合物は、GPCRの脱オーファン化、並びに、細胞内cAMP、カルシウム、及び遺伝子発現のレベルを変化させる他のイベントにも用いることができる。様々な検出用蛍光色素と併せて、本発明のクエンチャー色素調合物は、創薬、毒性学、及び他の細胞ベースの研究用に提供される。
【0021】
本発明の調合物は、蛍光プレートリーダー、単一細胞イメージングプラットホームfacs選別機、電子生理学プラットホームのうちの少なくとも1つを用いた均質アッセイで特に有用である。本発明の調合物は、細胞内取込みがエンドサイトーシス、受容体内在化、ウイルス感染、ペプチドによって媒介された取込み、及び脂質によって媒介された取込みのうちの少なくとも1つによって媒介されるならば、いかなる細胞ベースのアッセイを用いてもよい。さらに、蛍光レベルは、測定される特定の活性に反応して増大又は低下しうることを理解されたい。
【0022】
この色素/クエンチャー/緩衝液調合物の利点の1つは、溶液中の結合していない色素を除去するのに通常必要な洗浄ステップを省略できることである。この新規に開発されたクエンチャーは、無洗浄フォーマットが望ましい場合にはいつでも、他の蛍光バイオマーカーと組み合わせて使用することができる。その例には、機械的応力に感受性の細胞の使用と、培地/緩衝液の交換の結果として生物反応が減弱又は撹乱される細胞又はアッセイの使用と、特定のプローブ、例えば、生体トレーサーの定常的な取込みの間、若しくは、細胞分化、運動能、又は分裂の長期的研究、において行われるようなアッセイの実施時間を通して少なくとも1つの色素又はアッセイ成分の存在が必要であるアッセイの使用と、プローブが細胞から漏出し、洗浄が不可能/望ましくないアッセイでの使用と、が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
しかし、このクエンチャー調合物のさらに別の利点は、このクエンチャーと組み合わせて様々なカルシウム色素が使用できることである。これらには、Fluo 3、Fluo 4、及びFura−2が含まれる。詳細には、Fura−2はレシオ色素であり、細胞の間の不均等な色素添加、単一細胞内での不均等な色素添加、試料への不均等な照射、光脱色、及び、リガンドが元々蛍光を有する場合に生じるような人為産物の影響を最小限にすることによって、より高い精度の測定を提供する。
【0024】
本発明のクエンチャーは、ある種のFRET又はBRETベースのアッセイで有用である。Dabcyl及びQSY色素(Molecular Probes社)などの非蛍光クエンチャーはFRET用の組合せで使用され、その場合、非蛍光アクセプターによって蛍光(又は発光)ドナーが消光される(Dabcylなどの効率的なクエンチャーは、ほとんどの蛍光色素の蛍光放射を99%削減する)。FRETが中断された場合には、クエンチャーはそれ以降、ドナーの放射を吸収せず、それは、ドナーに存在する蛍光色素の特異的な蛍光放射の増大として検出される。
【0025】
非蛍光クエンチャーは、(FRETドナー分子を介した励起というよりはむしろ)直接的な(すなわち非感受性の)アクセプターの励起からバックグラウンド蛍光が生じるという潜在的問題を排除する利点を有する。蛍光ドナー−非蛍光アクセプター対を含有する購入可能なプローブの例には、タンパク質分解の検出を目的としたプローブ(HIVプロテアーゼ及びレニン基質用のEDANS蛍光色素/Dabcyl対;特定のプロテアーゼによる基質の切断によってFRETが中断される)(Molecular Probes社)、及び核酸ハイブリダイゼーション(分子ビーコン:一方の末端に蛍光色素が結合し、もう一方の末端に非蛍光クエンチャーが結合したヘアピンオリゴヌクレオチド;相補配列へのハイブリダイゼーションによって、ヘアピンが開いて、FRETが中断される)が含まれる。本発明のクエンチャーは、ペプチド又はタンパク質に対して比較的不活性であるので、それらをそのようなアッセイで使用することによって、細胞性物質又はペプチド作動薬/拮抗薬の非特異的な結合が減少する。
[細胞ベースのcAMPアッセイに用いる新規のCNG変異体]
【0026】
電位色素を用いたアッセイでは、野生型のCNGチャンネルを使用する場合、細胞外の培地中に存在するカルシウムイオンを、キレート化しなければならない。さもなければ、チャンネル孔にあるグルタミン酸残基にカルシウムが結合し、それによってイオン流動が遮断される。本発明の新規CNG変異体は、チャンネル孔ドメインに1つ又は複数の変異を有し、それによってカルシウムによるイオン流動の遮断を排除する。加えて、これらの変異によって、カルシウムに対するCNGチャンネルの透過性がさらに高くなる。cAMPの結合親和性、及びカルシウムに対するチャンネルの透過性に影響を与える、CNG内の3つの位置に、いくつかの組合せの変異を生成させ、試験した。ハイスループットスクリーニングにとりわけ有用であるアッセイに、単独で、あるいは組合せによって有意な改善を与える変異を同定した。本発明は、広範な適用性を有し、とりわけ受容体のスクリーニングに、中でも7回膜貫通受容体のスクリーニングに適用性を有する。例えば、本発明は、7回膜貫通受容体の作動薬、拮抗薬、又はアロステリックモジュレーターの結合を検出するのに使用できるアッセイを提供する。
【0027】
本発明の新規変異体は、他のCNGサブユニットと併せて発現させて、いくつかの利点を有するヘテロマーチャンネルを形成させることができる。嗅受容器ニューロン元来のCNGチャンネルは、CNGA2、CNGA4(Bradley J、Li J、Davidson N、Lester HA、Zinn K(1994年)、「Heteromeric olfactory cyclic nucleotide−gated channels:a subunit that confers increased sensitivity to cAMP」、Proc Natl Acad Sci USA、1994年9月13日、91(19):8890−4)、及びCNG4.3(Sautter A、Zong X、Hofmann F、Biel M(1998年)、「An isoform of the rod photoreceptor cyclic nucleotide−gated channel beta subunit expressed in olfactory neurons」、Proc Natl Acad Sci USA、1998年4月14日、95(8):4696−701;Bonigk W、Bradley J、Muller F、Sesti F、Boekhoff I、Ronnett GV、Kaupp UB、Frings S(1999年)、「The native rat olfactory cyclic nucleotide−gated channel is composed of three distinct subunits」、J Neurosci、1999年7月1日、19(13):5332−47;Bradley J、Frings S、Yau KW、Reed R(2001年)、「Nomenclature for ion channel subunits」、Science、2001年12月7日、294(5549):2095−6)の3サブユニットで構成されている。CNGA2タンパク質はホモマーチャンネルを形成できるが、CNGA4及びCNG4.3はできない。しかし、CNGA2並びにCNGA4及び/又はCNG4.3の同時発現によって、2又は3サブユニットからなるヘテロマーチャンネルを形成することができる。ヘテロマーチャンネルには、異種細胞で発現されるホモマーCNGA2チャンネルと比較して、いくつかの利点を有し、それには、(1)cAMPに対するより高い感受性(検出感度を増大させる)、(2)外向き整流作用の減弱(膜脱分極シグナルの増大をもたらす)、並びに、(3)より高い発現と、より低い細胞に対する毒性とをもたらす、より良いチャンネル構築が含まれる。
【0028】
新規変異体の総合的な利点としては、(1)電位色素又はカルシウム色素を使用した際のシグナルの増大、及び、(2)アッセイを、今や、生理的なカルシウム含有培地で行えることが含まれる。例えば、本発明の新規のカルシウム非感受性CNG変異は、膜電位/クエンチャーカクテルを、DPBS(カルシウム/マグネシウムがフリーであるリン酸緩衝生理食塩水)中ではなく、より生理的な緩衝液(HBSS、Hankの平衡塩類溶液など)中で添加することを可能にする。細胞形態が、よりよく保全され、二価カチオン濃度が添加時間中、生理的にバランスよく維持されるので、細胞は、成長表面により強固に付着する。また、EGTAが化合物添加緩衝液中に必要なく、以前に観測された、化合物緩衝液添加の際の細胞収縮が顕著に抑制された。全体として、そのような改良には、細胞応答性の増大が伴い、それによってアッセイの総合的感度の向上が導かれる(細胞イメージングフォーマット及び全ウェルリーディングフォーマットの両方で)。
【0029】
本発明の新規のカルシウム非感受性CNG変異は、カルシウムのcAMP依存的変化、及び同じ細胞の膜電位の同時測定を可能にし、受容体特異性が未知であるリガンド、又は、細胞イメージングプラットホームにおける受容体脱オーファン化(シグナル伝達経路が未知である受容体)スクリーニング、のための多重アッセイの基礎を提供する。カルシウム色素及び膜電位色素の両方で同時に標識されたCNG−発現細胞では、G共役GPCRの活性化によって、カルシウム及び膜電位の両方のリードアウトで、持続的なシグナルが引き起こされるであろう。対照的に、G共役受容体の活性化は、膜電位に影響を与えずに、急速かつ一過性のカルシウム上昇(細胞内カルシウム貯蔵の放出による)を誘導するであろう。G共役GPCRは、いずれのシグナルも誘導しないであろう。従って、G受容体及びG受容体を容易に区別することができる。
【0030】
イソプロテレノール(公知のG共役GPCR作動薬)又はフォルスコリン(cAMPを合成する酵素であるアデニル酸シクラーゼ、すなわちACの公知の活性化物質)など、cAMP濃度を上昇させることが知られている第1の化合物を添加することによって、膜電位色素又はイオン感受性色素(カルシウム感受性色素など)の少なくとも1つで測定可能な持続的なシグナルがもたらされるであろう。しかし、G共役GPCRも活性化されるような細胞は、反応の低減を示し(GによるACの阻害による)、それは、少なくとも膜電位色素又はイオン感受性色素の1つに反映される。従って、本発明は、それによってG、G、又はG受容体を検出できる単一のアッセイを提供する。そのようなアッセイは、受容体の共役特異性の同定をさらに可能にする。
【0031】
本発明のアッセイは、少なくとも第2の受容体の逐次的スクリーニングも提供する。例えば、第1の化合物がG共役受容体を誘導すると判明するかもしれず、その場合それは、細胞内カルシウムの一過性の増大によって示される。それに続く第2のリガンドの添加によって、カルシウム及び膜電位の両方における、より長時間の反応の誘導が観測されるかもしれず、それはG受容体を示すものである。さらに添加した場合に、第3のリガンドはいかなる作用も及ぼさないと観測されるかもしれない。しかし、フォルスコリンと第3のリガンドとの同時添加によっても、膜電位シグナル又はカルシウムシグナルの少なくとも一方で増大が誘導されず、その一方で、フォルスコリンのみを添加することによって、膜電位シグナル又はカルシウムシグナルの少なくとも一方が増大し、これはG受容体を示す。従って、本発明は、単一試料の多重アッセイを可能にする。
【0032】
さらになお、本発明のアッセイは、他のアッセイと多重化して、情報量を実質的に増大させることができる。これは、処理量を増加し、材料所要量を低減し、そして、リード化合物に優先順位をつける基礎を提供する。例えば、そのようなアッセイには、限定されるものではないが、(ミトコンドリア膜電位の変化の検出にレシオ色素JC1を用いた)アポトーシスの同時アッセイが含まれるかもしれず、それによって特定の化合物又は特定の化合物クラスの毒性に関する初期情報を提供する。さらに、本発明は、再分配アッセイと同時に行うことができ、この再分配アッセイでは、対象のタンパク質に蛍光タンパク質、発光タンパク質などでタグ付けできるであろう。
【0033】
多重アッセイの構成要素は、任意の順序で逐次的に行うこともできる。例えば、G−GPCRでは、第1の一過性のカルシウム反応の後に、Gによって媒介された持続的なカルシウムシグナル及び膜電位シグナルが続くであろう。G−GPCRでは、第1のカルシウム反応及び膜電位反応は、(先行するリガンドが、CNG介在性のシグナル伝達に対して最大限度の効力/有効性を示した場合に)影響を受けないか、あるいはさらに促進されるであろう。
【0034】
本発明の新規のカルシウム非感受性CNG変異は、遺伝子操作された細胞において高レベルかつ均質な発現を示す(新規に産生された変異型CNGを有するクローン内の細胞の事実上100%が、有害な効果を示すことなく、内在性受容体のG共役作動薬に再現可能に反応した)。これら新規の変異は、生物学的基質が、細胞初代培養などのように、数が少なく、産生するのに費用のかかる細胞によって代表される実験モデルにおける、リアルタイムの生存細胞cAMP反応を測定する、長い間求められていた手段を提供するものである。初代細胞は、in vivoの生理的条件に最も近いモデルであり、細胞分化、疾患、及び癌など、生理的に重要な過程に関与する多くの極めて重要な経路を研究するのに最も良い環境を提供するので、極めて貴重な生物学的基質である。しかし、それらは、in vitroでの寿命が限定されているため、動物器官から頻繁に産生する必要がある。初代細胞が従来の形質導入操作に対して既知の耐性を示して使用できる時間枠は限定されているので、最も効果的な、対象の遺伝子(この場合CNG)の一過性形質導入/感染が必要である。これら新規の変異は、この点における利点を提供する。従って、cAMPを介した内在性受容体シグナル伝達によって媒介された生存細胞cAMP反応の研究、並びに、セカンドメッセンジャー経路相互のリアルタイムの生存細胞クロストークの研究のために、CNGを発現するように適切な初代細胞を遺伝子操作することができる。(初代細胞のみで再現可能な疾患状態において、受容体シグナル伝達及び伝達経路間相互作用における欠損が影響を受けているかもしれない)。
【0035】
初代細胞を生物学的基質として使用することによって、感度及び統計的な有意性を失わずに、限定された数の細胞を用いて細胞イメージングベースのアッセイを行うことが可能となる。全ウェルプレートリーダーベースのアッセイでは、検出可能なシグナルを生成するのに多数の細胞が必要であるが(例えば、96ウェルプレートの1ウェル中に50000を超える数の細胞)、これと比較して、細胞イメージングでは、はるかに少ない数の細胞(<5000)しか必要としない。これは、(a)細胞イメージング装置は、標準的なプレートリーダーに見られるものより感度の高い励起/放射装置を含有しており、従って、単一細胞によって生成されるシグナルを容易に検出でき、そして、(b)イメージングフィールド中の細胞それぞれ、そしてすべてが別々の実体とみなされ、それによって、データ分析のための統計的に有意なプールが得られるからである(例えば、測定される20倍の顕微鏡視野の中に200〜300細胞を含有させることができる)。
【0036】
新規のCNG細胞系及びアッセイ試薬の感度が改善されているので、これらを用いて、より一層少ない細胞を用いて作業し、なおかつ可視化するのに十分なシグナルを生成させることが可能なはずである。新規のコンストラクトを用いて1536ウェルプレートを使用すれば、このアッセイフォーマットがさらに容易になるであろう。蛍光出力を生成させ、次に、マイクロ流体フォーマット用に構成された蛍光読み取り機で読み込むフォーマットで、作動薬/拮抗薬/アロステリックモジュレーターの潅流を細胞に可能とさせるマイクロ流体装置が使用されてもよい。同様に、蛍光イメージングに適合した固体基板上にアレイとして配置された細胞叢にある、特定のGPCRを有する細胞の局在的活性化を可視化することも可能なはずである。
【0037】
また、本発明のアッセイは、別の色素が異なったパラメータをモニターするのに使用される多重化能力を提供する。プローブ間の光学的適合性が、複数の蛍光プローブを併用する上での唯一の制限である。有用な組合せには、細胞毒性検出用及びアポトーシス誘導用のプローブが含まれるかもしれない。多様な蛍光特性を有する様々なプローブがこの目的に利用可能である。CNGベースのGPRCスクリーニングを、創薬における極めて初期のフェーズで、候補薬物の好ましくない作用を同定するアッセイと多重化させることは、成功の可能性のある薬物の発見及びプロファイリングを加速させるための非常に望ましいアプローチとなっている。
[GPCR/CNGアッセイ]
【0038】
これらのアッセイでは、GPCR及びCNGチャンネルは、細胞に内在性のものでも、あるいは、例えばここに記載された新規のCNG変異体の場合に、外因的に供給されたものでもよい。加えて、無差別共役のGタンパク質を含めた内在性Gタンパク質又は外因的に供給されるGタンパク質を本発明のアッセイ及び方法で用いることができる。
【0039】
一部の実施形態では、本発明は、第1のポリヌクレオチドに作動可能に連結した第1のプロモーターを含む第1の核酸を含有する宿主細胞を提供し、上記ポリヌクレオチドは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)タンパク質をコードする配列及び第2のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含む第2の核酸を含み、上記第2のポリヌクレオチドは環状ヌクレオチド作動性(CNG)チャンネルをコードする配列を含む。一部の実施形態では、上記環状ヌクレオチド作動性チャンネルは、チャンネルをその変異を含まないチャンネルよりcAMPに対して高感度にする少なくとも1つの変異を含む。一部の実施形態では、上記GPCR及び/又はCNGチャンネルは、通常、その細胞で発現されないものである。上記核酸は、1個の分子の一部でも、異なった複数の分子の複数の部分でもよい。上記核酸は、当業者に知られている任意の処方で細胞に提供してもよく、例えば、上記核酸の一方又は両方が、ウイルス及び/又はプラスミドの一部でも、及び/又は、細胞のゲノムから発現されたものでもよい。
【0040】
一部の実施形態では、その細胞のゲノムからの1つ又は複数の分子を発現する細胞系を、利用又は創出するのが望ましいであろう。タンパク質発現用の安定な細胞系の作製は、当業者の技能の範囲内にある。本発明の一部の実施形態は、1つのタンパク質を細胞のゲノムから発現させ、そして、もう1つを、外因性の核酸、好ましくはウイルス又はプラスミドから発現させることを含みうる。本発明の細胞は、いかなる種類の細胞でもよいが、好ましくは、哺乳類細胞などの真核細胞である。本発明の実施に適した細胞の例には、BHK細胞、マウスL細胞、ジャーカット細胞、153DG44細胞、HEK細胞、CHO細胞、PC12細胞、ヒトTリンパ球細胞、及びCos−7細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明で使用されるCNGチャンネルは、野生型チャンネルでも、cAMPに対する反応性がさらに高くなるように変異導入されたものでもよい。本発明の野生型CNGチャンネルは、ホモマーでも、ヘテロマーでもよい。上記チャンネルは、チャンネルをその変異を含まないチャンネルよりcAMPに対して高感度にする1つ又は複数の変異を含みうる。チャンネルをその変異を含まないチャンネルよりcAMPに対して高感度にする2つ以上の変異を含むチャンネルも、本発明に含まれる。チャンネルをその変異を含まないチャンネルよりcAMPに対して高感度にする3つ以上の変異を含むチャンネルも、本発明に含まれる。CNGチャンネルをコードする本発明の核酸分子は、配列番号1、5、及び7として提供する核酸配列のうちの1つ又は複数の全体又は一部を含みうる。本発明の一部のCNGチャンネルタンパク質は、配列番号2、4、6、及び8として提供するタンパク質配列のうちの1つ又は複数の全体又は一部を含みうる。
【0042】
一部の実施形態では、本発明で使用するCNGチャンネルが、cGMPに対して反応性である場合がある。他の実施形態では、本発明で使用するCNGチャンネルが、類似体又は誘導体の環状プリンモノホスファート(cPuMP)又は環状ヌクレオチドモノホスファート(cNMP)に反応性である場合がある。さらに他の実施形態では、本発明で使用するCNGチャンネルが、cAMP、cGMP、又は類似体若しくは誘導体のcPuMP又はcNMPに対してのみ反応性である場合がある。好ましい実施形態では、本発明で使用するCNGチャンネルが、cAMP、cGMP、又は類似体若しくは誘導体のcPuMP又はcNMPの少なくとも1つに対して反応性でありうる。好ましい実施形態では、本発明で使用するCNGチャンネルが、cAMP、cGMP、又は類似体若しくは誘導体のcPuMP又はcNMPのうちの2つ以上に対して反応性でありうる。
【0043】
本発明に従うGPCRをコードする核酸分子は、完全長野生型Gタンパク質共役受容体をコードするものでもよく、また、変異型GPCRをコードするものでもよい。一部の好ましい変異体としては、N末端及びC末端切除、並びに挿入及び/又は欠失変異体が含まれる。他の好ましい変異体は、少なくとも1つの保存性又は非保存性のアミノ酸塩基置換を有するものでありうる。さらに他の好ましい変異体は、N末端切除、C末端切除、挿入、欠失、保存性アミノ酸塩基置換、及び非保存性アミノ酸塩基置換からなる群から選択される少なくとも2つを含む、変異の組合せを有するものでありうる。変異型GPCRは、作動薬と接触した際に、それがGPCR媒介性の活性を誘導できるならば、本発明での使用に適している。
【0044】
一部の実施形態では、本発明の細胞は、Gタンパク質をコードする配列を含む第3のポリヌクレオチドに作動可能に連結した第3のプロモーターを含む第3の核酸を含有することがあり、このGタンパク質は無差別共役のGタンパク質でありうる。このGタンパク質は、細胞で通常に発現されることもあるが、細胞が第3の核酸を含有する場合には、さらに高いレベルで発現されることもある。別法では、このGタンパク質は、その細胞で自然に発現されない場合がある。
【0045】
本発明の一部の実施形態では、上記Gタンパク質共役受容体は、Gαs、Gαi、Gα16又はGαq、及び無差別共役のGタンパク質から選択された少なくとも1つのGタンパク質と実質的に共役する。別法では、上記Gタンパク質共役受容体は、例えば、GαqsなどのハイブリッドGタンパク質と実質的に共役する場合がある。
【0046】
αタンパク質のC末端4〜5アミノ酸は、受容体との相互作用を媒介するドメインをコードすることが示されている(Conklinら、1993年、Nature 363:274−276)。Gαiタンパク質のC末端がGαsのそれで置換されているキメラGαsタンパク質(Gαs/i)は、G受容体と共役して、アデニリルシクラーゼの活性を刺激することが示されている(Komatsuzakiら、1997年、FEBS Letters 406:165−170)。オーファンGタンパク質共役受容体のスクリーニングにおけるある種のキメラGαタンパク質の使用が、当技術分野で知られている。詳細には、G経路を介したG受容体の共役を指示するキメラGαqsを利用したアッセイが利用可能であり、細胞内カルシウムの放出によってG受容体をモニターすることが可能となる。キメラGαqiを用いてG受容体をGに変換する同様のアッセイが存在する。キメラGαqの使用に対する主な制限は、そのようなアッセイが一過性のカルシウム放出のみを提供するものであるということである。これは、処理量に関する可能性を制限し、また、可能な小型化の程度を限定するものである。GPCRをスクリーニングするためのGαsiキメラの使用も公知である。ラジオイムノアッセイでcAMP濃度の増大を検出することができるが、これらは比較的低いシグナル対ノイズ比を示す。ラジオイムノアッセイ及び転写レポーターアッセイは、両方ともリガンドとの長期のインキュベーションを必要とすることが多い(Drewら、2002年、BBA 1592:185−192)。
【0047】
対照的に、本発明は、Gαsiキメラの効果的な使用を可能にする。詳細には、本発明は、より長時間のシグナルを提供して、カイネティックアッセイ又はエンドポイントアッセイを可能にする。好ましい実施形態では、記載の発明は、マルチウェルプレート中で行われる。標準フォーマットには、96ウェル、384ウェル、又は1536ウェルが含まれる。開示する発明は、無傷の生存細胞を使用し、cAMP濃度を単細胞レベルで検査するものであり、特に1536ウェルフォーマットに適している。前記アッセイは、少なくとも1536ウェルを含有するプレートまで小型化することができ、それによって、試薬費用、及びアッセイの実施に必要な細胞数を実質的に減少させ、そして処理速度を増大させる。
【0048】
標準的なcAMPアッセイでは、細胞を溶解させて、抗体によって、又は当業者に周知の他の多くの方法のいずれかによって総cAMPを測定する。溶解細胞アッセイのシグナル特性及び用量反応特性は、各ウェルの細胞数に応じて異なる。アッセイ感度は細胞数の減少と共に低下する。対照的に、本発明は単一の生存細胞におけるcAMP濃度を測定するので、細胞数が減少しても、シグナル特性(蛍光のF/Fb比変化)及び用量反応特性はわずかにしか変化せず、それによって、検出器の設定の最適化を可能にする。CNGチャンネルベースのcAMPアッセイでは、細胞内の遊離cAMP濃度が細胞数に影響されない。この性能は、時間当たりの処理量を増大させ、各アッセイに必要な物質量(費用)を減少させるので、特に、本発明を薬剤化合物ライブラリーのスクリーニングに使用する際に貴重である。これは特に、検査される細胞が、初代細胞又は初代組織のように取得が困難である場合にあてはまる。
【0049】
本発明では、検査される細胞の数をさらに単一細胞にまで減少できることに、多大な有用性及び価値があることは当業者に明らかであり、1ウェルあたり少なくとも1細胞を許容する容積のものを含めたさらに多数のウェルを用いたスクリーニングフォーマットも可能であることが想定される。さらに、細胞をウェル内に限局する必要はなく、1特性あたり少なくとも1つの細胞のアレイも想定される。従って、アレイが数百、数千、又は数万の特性を含み、各特性が少なくとも1つの細胞を含み、上記少なくとも1つの細胞が少なくとも1つの内在性又は外因性の受容体を発現し、各特性において発現された受容体が、同一又は異種でありうるスクリーニングフォーマットが想定される。
【0050】
さらに、細胞が整列されている必要もない。さらに、上記の少なくとも1つの細胞は少なくとも1つの内在性又は外因性の受容体を発現し、各特性において発現された受容体は、同一であるか又は異なっており、ランダムに配置された細胞は、撹乱(perturbation)の結果として、cAMP濃度が変化したことを確認することも想定される。ある例では、特定の撹乱に対して、細胞混合物中の少なくとも1細胞が反応していることを知れば十分である。ここで使用する「撹乱」という用語は、細胞の生物活性を変化させることのできるいかなる環境変化も指す。撹乱の例には、例えば、1つ又は複数の化学因子、生物因子、機械的因子、熱因子(例えば、熱ショック及び同様のもの)、電磁気因子、重力因子、核因子、又は、時間的因子の任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。本発明によって細胞をアッセイする際のフォーマットは、撹乱のタイプにかかわらず柔軟性を有することが理解されよう。詳細には、製薬産業における化合物のスクリーニングに関して、作動薬、拮抗薬、アロステリックモジュレーター、部分作動薬、部分拮抗薬、及び同様のものを得るために、記載されているフォーマットのいずれを用いることもできる。
【0051】
非反応性細胞の集合の中にある反応性細胞の受容体の同一性に関心がある場合、受容体の同一性に関して、その反応性細胞を直接、抗体、PCR、又は、当技術分野で知られている他の方法を用いて検査することができ、あるいは、それらの細胞を例えばレーザを用いて単離し、さらに増殖させ、反応している受容体の同一性に関して特徴付を行うことができる。本発明のアッセイは、対象とするシグナル伝達経路に参加するいかなる未知のタンパク質を特徴付けるのにも適しており、例えば、Gタンパク質結合性を脱オーファン化する手段、及び特定のGタンパク質によって活性化又は抑制されるシクラーゼを同定する手段を提供する。例えば、候補Gタンパク質及びシクラーゼに対応するRNA干渉、より詳細には短鎖干渉RNA(siRNAs)を用いて、異なったGタンパク質及びシクラーゼを、アッセイ中に細胞内で選択的に抑制することができ、それによって、これら及び他の作用因子の上方調節又は下方調節が有する、cAMP産生への影響を特徴付けることが可能となる。
【0052】
なおさらに、本発明は、カチオン(例えばカルシウム)流入又は膜電位のいずれかの変化の検出を可能にし、既存の薬剤スクリーニングに適合したモニタリングの方法を提供する。従って、好ましい実施形態では、本発明は、とりわけ、キメラGアルファタンパク質も発現する細胞におけるcAMP濃度変化のハイスループットスクリーニングを可能にする。そのようなキメラアルファタンパク質には、Gαsiタンパク質が含まれることがあるが、これらに限定されない。別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのキメラアルファ、及び、本発明のCNGが宿主細胞の染色体に安定に組み込まれている。前記宿主細胞は、少なくとも1つの内在性及び異種GPCRを発現する。さらに別の好ましい実施形態では、キメラアルファタンパク質が共有結合によってGPCRに連結されている。
【0053】
別の態様では、本発明は、任意選択で外因性又は異種GPCRをコードする核酸分子から、細胞内でGPCRを発現すること、チャンネルをcAMPに対してより高感度にする1つ又は複数の変異を含みうる環状ヌクレオチド作動性チャンネルを発現すること、及び、チャンネルの活性を測定すること、によってGPCRの活性を検出する方法を提供し、その際、上記チャンネルの活性がGPCRの活性を示す。CNGチャンネルは、外因性の核酸、又は細胞のゲノムから発現させることができる。
【0054】
一部の実施形態では、色素、例えば蛍光イメージングシステムによって検出できる蛍光色素の使用が測定に伴うことがある。一部の好ましい色素には、有機小分子及び遺伝的にコードされたタンパク質分子を用いたフォーマットでのCa2+感受性色素及び電位感受性色素が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、単一細胞におけるCNGチャンネル活性の活性化の測定が、測定に伴うことがある。これは、顕微鏡又はFACS(蛍光活性化細胞選別装置)を用いた蛍光検出など、当業者に知られているいかなる方法を用いて行ってもよい。顕微鏡を使用する場合には、顕微鏡をコンピュータシステムに連結することが望ましい場合がある。コンピュータシステムは、個々の細胞を追跡し、統計的分析を行うのに用いることができる。
【0055】
非色素指示体も、ここに記載するアッセイのいずれにも利用することができる。例えば、膜電位測定用の、GFPベースの指示体が存在する。アエクロイン(aequroin)タンパク質は、カルシウム流入の指標として光を生成する。ナトリウム及びカリウムなどの他のカチオンを測定するには、他の指示体が知られており、利用可能である。従って、本発明は、例えば蛍光指示体及び発光指示体を含めた任意の適切な指示体物質を用いて行うことができる。
【0056】
一部の実施形態では、その方法は、96ウェル及び384ウェルなどのマルチウェルプレートで実施するように構成することができ、測定は、マルチウェルマイクロプレートリーダーで行うことができる。適当な読み取り機の例には、CCDカメラを備えた蛍光定量ベースの読み取り機、及び蛍光定量ベースの走査性マイクロプレートリーダーが含まれる。
【0057】
一部の実施形態では、本発明の方法の実施前、実施中、又は実施後に、細胞を固体表面に付着させることが望ましい場合がある。適当な固体表面には、スライド及びマルチウェルプレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
場合によっては、本発明の方法の感度を増大させるのが望ましい場合がある。これは、例えば、測定前に細胞をcAMP類似体で前処置することによって実現できる。適当な類似体には、光励起性のケージド類似体が含まれる。
【0059】
本発明の方法は、無差別共役のGタンパク質を発現する細胞を用いて実施することができる。無差別共役のGタンパク質は、細胞のゲノムから発現されるもの、及び/又は、外因性の核酸から発現されるものでよい。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、GPCRによって媒介された測定されるべき活性がイオン流動でありうる。これらの場合、イオン流動は、限定されるものではないが、色素の分光特性の変化を測定すること又はパッチクランプ法、を含めた当業者に知られた任意の方法で測定することができる。
【0061】
別の態様では、本発明は、受容体及び少なくとも1つの環状ヌクレオチド作動性(CNG)チャンネルを発現する細胞を化合物と接触させること、並びに、CNGチャンネルの活性化を測定することによって受容体のリガンドを同定する方法を提供し、上記CNGチャンネルの活性化は、上記化合物が上記受容体のリガンドであることを示す。一部の実施形態では、上記受容体が上記細胞の内在性のものではない場合があり、及び/又は、cAMPに対するチャンネルの感度を増大させるために上記CNGチャンネルに操作が施されている場合がある。CNG及び/又はGPCRチャンネルは、外因性の核酸及び/又は細胞のゲノムから発現されたものでよい。CNGチャンネル活性化の測定は、限定されるものではないが、色素の使用を含めた、当業者に知られている任意の方法によって行うことができる。適当な色素の例には、イメージングシステムによって検出できる蛍光色素がある。好ましくは、色素は、Ca2+感受性色素及び/又は電位感受性色素でありうる。
【0062】
リガンドを同定する方法は、単一細胞におけるCNGチャンネル活性の活性化を測定することによって、単一細胞上で用いることができる。このタイプの方法は、顕微鏡を用いた蛍光検出の使用を利用する場合がある。顕微鏡を用いる場合には、顕微鏡をコンピュータシステムと連結させることが望ましい場合がある。コンピュータシステムは、個々の細胞を追跡し、統計的分析を行うのに用いることができる。
【0063】
リガンドを同定する方法は、マルチウェル、すなわち96ウェル、384ウェル、1536ウェルなどのフォーマットで用いることができ、測定は、マイクロプレートリーダーで行うことができる。適当な読み取り機は、CCDカメラを備えた蛍光定量ベースの読み取り機、及び/又は、蛍光定量ベースの走査性マイクロプレートリーダーでありうる。
【0064】
リガンドを同定する方法は、固体表面に付着した細胞を使用する場合がある。細胞は、これらの方法ステップにおける1つ又は複数のステップの実施前、実施中、又は実施後に付着させることができる。適当な固体表面には、スライド及びマルチウェルプレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明の方法は、例えば蛍光活性化細胞選別装置(FACS)による分析を用いて、非接着性の細胞でも実施できる。細胞の[Ca2+及び膜電位をモニターするためのFACSを用いたプロトコールはよく確立されており、CNGチャンネルの活性をモニターするために容易に適用することができる(Lazzarら、1986年、J Biol Chem、261:9710−9713;Shapiro、2000、Methods、21:271−279)。
【0066】
リガンドを同定する方法は、リガンドと接触させる前に、cAMP類似体、例えば光励起性のケージド類似体で前処置された細胞を使用する場合がある。
【0067】
リガンドを同定する方法は、無差別共役のGタンパク質を発現する1つ又は複数の細胞を用いて使用することができる。
【0068】
一部の実施形態では、リガンドを同定する方法は、イオン流動の測定を含む測定ステップを含む場合がある。イオン流動の測定は、色素の分光特性の変化によるもの、及び/又はパッチクランプ法など、当業者に知られている任意の方法によって行うことができる。
【0069】
別の態様では、本発明は、細胞を薬剤及び受容体のリガンドと接触させることによって、GPC受容体によって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法を提供し、上記細胞は、野生型又はcAMPに対するCNGチャンネルの感度を増大させるように構築されたCNGを含み、CNGチャンネルの活性化を測定する、環状ヌクレオチド作動性(CNG)チャンネルの少なくとも1つと、上記受容体とを発現する。一部の実施形態では、薬剤存在下におけるCNGチャンネルの活性化を、薬剤非存在下におけるチャンネルの活性化と比較することが望ましい場合がある。通常、CNGチャンネルの活性化の相違は、薬剤がその活性を調節することを示す。CNGチャンネルは、外因性の核酸及び/又は細胞のゲノムから発現されたものでよい。CNGチャンネルの活性化の測定は、色素の使用を伴うことがある。適当な色素の例には、UVベースのイメージングシステムによって検出できる蛍光色素がある。色素は、Ca2+感受性色素及び/又は電位感受性色素でありうる。本発明の色素は、アッセイの実施前又は実施中に外因的に細胞に添加することができる。別法では、本発明の色素は、細胞によってプローブとして外因的に発現される場合がある。前記プローブは、一過性発現又は安定発現のために、前記細胞に導入することができる。
【0070】
GPC受容体によって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法は、単一細胞におけるCNGチャンネル活性の活性化を測定することによって単一細胞で実施することができる。そのような測定を行う方法は、当業者に知られており、それらには、顕微鏡を用いたUVベースの蛍光によるものが含まれる。顕微鏡を用いる場合には、顕微鏡をコンピュータシステムと連結させることが望ましい場合がある。コンピュータシステムは、個々の細胞を追跡して、統計的分析を行うものでありうる。
【0071】
GPC受容体によって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法は、マルチウェル、すなわち、96ウェル、384ウェルなどのフォーマットを使用するように構成される場合がある。このタイプの構成は、マルチウェルマイクロプレートリーダー、例えば、CCDカメラを備えた蛍光定量ベースの読み取り機、及び/又は、蛍光定量ベースの走査マイクロプレートリーダーを利用することができる。
【0072】
GPC受容体によって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法は、固体支持体に付着した細胞で行うことができる。細胞は、それらの方法における1つ又は複数のステップの実施前、実施中、又は実施後に付着させることができる。適当な固体支持体には、スライド及びマルチウェルプレートが含まれる。
【0073】
GPC受容体によって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法は、環状ヌクレオチド類似体で前処置された細胞を用いて行うことができる。適当な類似体には、光励起性のケージド類似体が含まれる。
【0074】
GPC受容体によって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法は、いずれも、無差別共役のGタンパク質を発現する細胞を用いて行うことができる。
【0075】
本発明は、本発明の方法を実施するのに適したキットをさらに提供する。そのようなキットは、通常、本発明の1つ又は複数の細胞を適当な容器中に含有するであろう。キットは、任意選択で、緩衝液、及び/又は塩、及び/又は色素など、1つ又は複数の試薬を含みうる。色素を含有する場合には、通常、それらは、電位感受性色素及び/又はCa2+感受性色素であろう。
[A.定義]
【0076】
以下の記述には、当業者に知られている多数の用語及び句が使用されている。解釈の明快性及び一貫性の観点で、特定の用語及び句の定義を提供する。
【0077】
ここで使用する場合、「蛍光消光」は、試料の蛍光強度を低下させるいかなる過程も指す。一般的教示は、例えば、「Principles of Fluorescence Spectroscopy」(Joseph R.Lakowicz、1983年、第1版、Kluwer Academic/Plenum Publishers社、ニューヨーク)に見出すことができる。蛍光を消光するいくつかの方法を以下に説明する。
【0078】
1.他の分子との衝突が関与する衝突消光で、励起エネルギーを、放出光としてではなく熱として喪失する。この過程は、溶液試料中で常に、ある程度存在し、この過程を誘発するのに特に効率的な化学種を衝突クエンチャーと呼ぶ(例えば、ヨウ化物イオン、分子状酸素、ニトロキシドラジカル)。
【0079】
2.静的消光。クエンチャーと蛍光色素との相互作用によって、安定的な非蛍光複合体が形成される。通常、この複合体は、蛍光色素とは異なる吸収スペクトルを有するので、吸光変化の存在がこのタイプの消光の指標となる(比較すると、衝突消光は、一過性の励起状態相互作用なので、吸収スペクトルに影響を与えない)。静的消光の特別なケースが自己消光であり、この場合、蛍光色素とクエンチャーとが同一の化学種である。自己消光は、トレーサー色素の高濃度溶液中で特に顕著である。
【0080】
3.共鳴エネルギー移動。これは、衝突消光と同様に、励起状態相互作用であるが、関与する2つの分子が衝突する必要はなく、100オングストローム以上の距離を越えて起こりうる。光子の吸収によって一方の色素(ドナー)が励起されるが、蛍光光子を放出する代わりに、電子カップリングによって励起がアクセプター分子に移行する。この交換の結果、励起されたアクセプターと、基底状態のドナーとが生じる。シグナルに関しては、アクセプターがそれ自体で蛍光であるか、あるいは非蛍光であるかに応じて、結果は、(ドナーのみのスペクトルと比較して)より長い波長の蛍光となるか、あるいは、無蛍光である。
【0081】
4.内部フィルター効果。これは、消光過程とは対照的に、測定における人為現象である。それは、吸光度が非常に高い試料で起こる(吸光は、蛍光色素それ自体による場合も、試料中の他の吸光成分による場合もあり、いずれであるかは問題でない)。これらの条件下では、入射する励起光のすべてが、試料の正面で吸収される。従来の90度の検出構成では、検出器の焦点が合わせられる地点にまで、励起光を十分に深く貫通させることができない。その結果、試料の吸光度が増大するのに従って、検出される蛍光が低減する。予測されるように、内部フィルター効果の規模は、励起経路及び発光検出経路の間の幾何学的な相関関係と試料の厚さとに依存する。内部フィルター効果(及び他の人為現象)を回避するためには、励起波長で測定された試料吸光度が0.1を超えないようにすることが、概ね賢明である。
【0082】
ここで使用する場合、「実質的に相互作用する」は、ある分子が別の分子に及ぼす影響の大きさ、例えばGPCRがGタンパク質に及ぼす影響の大きさを指す。ある相互作用の結果、生理作用を有することができる規模の検出可能な反応が生じた場合に、その相互作用は実質的である。
【0083】
ここで使用する場合、細胞の「ゲノム」は、細胞の染色体上に含まれる遺伝物質を指す。
【0084】
ここで使用する場合、「GPCRによって媒介された活性」は、GPCRによって媒介されたシグナル伝達によって影響を受けることがあるいかなる細胞過程も意味する。この句には、環状ヌクレオチド産生、Ca2+流入、イノシトール三リン酸(IP)及びジアシルグリセロールの産生、並びに同様のものが含まれると解釈されるが、これらに限定されない。
【0085】
場合によっては、既知の他のGPCRに対する相同性によって、推定上のGPCRが同定されることがある。ヌクレオチド配列レベル又はアミノ酸配列レベルでの相同性又は同一性は、配列類似性探索用に作られたblastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastxプログラム(Altschulら、Nucleic Acids Res 25:3389−3402、1997年、及び、Karlinら、Proc Natl Acad Sci USA 87:2264−2268、1990年、これらの両方を全て参照により本明細書に援用する)によって利用されているアルゴリズムを用いたBLAST(ベーシック局所アラインメント探索ツール)分析によって判定する。BLASTプログラムによって使用されているアプローチは、最初に、クエリー配列とデータベース配列との間で類似したセグメントを、ギャップ有り及びギャップ無しで考慮し、次に、同定された全ての一致に関して、統計的な有意性を評価し、最後に、予め選択された有意性閾値を満たす一致のみを要約して示すというものである。配列データベースの類似性探索に関する基本的な考察については、Altschulら(Nature Genetics 6:119−129、1994年)を参照し、その全てを参照により本明細書に援用する。ヒストグラム、記述、アラインメント、期待値(すなわち、データベース配列に対する一致を報告するための統計的な有意性閾値)、カットオフ、マトリックス、及びフィルター(低複雑性)に関する探索パラメータは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastn、及びtblastxによって使用されているデフォルトスコアリングマトリックスはBLOSUM62マトリックス(Henikoffら、Proc Natl Acad Sci USA 89:10915−10919、1992年、この開示を全て参照により本明細書に援用する)であり、長さ(ヌクレオチド塩基又はアミノ酸)が85を越えるクエリー配列に推奨される。
【0086】
blastnでは、N(すなわち、ミスマッチ残基に対するペナルティスコア)に対するM(すなわち、一致を示す1対の残基に対するリワードスコア)の比率によってスコアリングマトリックスが設定され、M及びNのデフォルト値は、それぞれ+5及び−4である。4つのblastnパラメータは以下の通りに調整した。すなわち、Q=10(ギャップ生成ペナルティ);R=10(ギャップ伸長ペナルティ);wink=1(クエリーに沿って各wink番目の位置でワードヒットを生成させる);及び、gapw=16(ギャップつきアラインメントがその中で生成させるウィンドウ幅を設定する)である。Blastpにおける同等のパラメータ設定は、Q=9;R=2;wink=1;及び、gapw=32であった。配列間のBestfit比較は、GCGパッケージバージョン10.0で利用可能であるが、これは、DNAパラメータとして、GAP=50(ギャップ生成ペナルティ)及びLEN=3(ギャップ伸長ペナルティ)を用い、タンパク質比較における同等の設定は、GAP=8及びLEN=2である。
【0087】
ここで使用する場合、「ストリンジェントな条件」は、(1)例えば、洗浄に低イオン強度及び高熱、例えば、50℃の0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDSを利用するもの、又は、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤、例えば、50%(vol/vol)ホルムアミド、及び750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウムを含有する42℃の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/pH6.5、50mMリン酸ナトリウム緩衝液を利用するものである。別の例は、42℃の50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDS、及び10%デキストラン硫酸中でのハイブリダイゼーション、並びに、0.2×SSC及び0.1% SDS中、42℃での洗浄である。当業者ならば、明確かつ検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るのに適したストリンジェンシー条件を、容易に決定及び改変できる。好ましい分子は、配列番号1又は3の相補鎖に、上記の条件下でハイブリッド形成する分子であって、機能タンパク質をコードする分子である。さらに好ましいハイブリッド形成分子は、配列番号1又は3のオープンリーディングフレームの相補鎖に、上記の条件下でハイブリッド形成する分子である。
【0088】
ここで使用する場合、核酸分子が「単離されている」と言及されるのは、その核酸分子が、他のポリペプチドをコードする夾雑核酸分子から実質的に分離されている場合である。
【0089】
本発明は、上記のコード核酸分子の断片をさらに提供する。ここで使用する場合、コード核酸分子の断片は、タンパク質全体をコードする配列の小さな部分を意味する。断片の大きさは、意図されている使用目的によって決定されよう。例えば、活性なタンパク質部分をコードするようにその断片が選択されている場合、その断片は、そのタンパク質の機能領域をコードするのに十分な大きさである必要があろう。例えば、推定上の抗原性領域に対応するペプチドをコードする断片を調製することができる。その断片を核酸プローブ又はPCRプライマーとして用いる場合には、プロービング/プライミング中に得る擬陽性の数が比較的少なくなるように断片長が選択される。
【0090】
プローブとして、あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用の特異的プライマー、又は、本発明のタンパク質をコードする合成遺伝子配列に特異的なプライマーとして使用される本発明のコード核酸分子の断片(すなわち合成オリゴヌクレオチド)は、化学的技法、例えばMatteucciら(J Am Chem Soc 103:3185−3191、1981年)のホスホトリエステル法によって、あるいは自動合成法を用いて、容易に合成することができる。加えて、より大きなDNAセグメントは、遺伝子の様々なモジュールセグメントを規定する一群のオリゴヌクレオチドを合成し、続いて、それらのオリゴヌクレオチドを連結して、完全な改変遺伝子を構築するなど、周知の方法によって容易に調製することができる。
【0091】
環状ヌクレオチド作動性(活性化)イオンチャンネルは、視覚及び嗅覚のシグナル伝達を媒介することで最もよく知られているが、それらは他の細胞型及び組織でも発現されている。天然の組織では、これらのチャンネルはヘテロ多量体であり、異なったヘテロマーが、異なったヌクレオチド感受性、イオン導電性(選択性)、及びCa2+調節を示す。分子クローニング及びゲノム配列決定の進展によって、ヒト及びマウスにおいて、環状ヌクレオチド作動性チャンネルのサブユニットをコードする6つの遺伝子の存在が明らかになった。これらのチャンネルサブユニットに関する採用されている命名法は、それらの配列相関によって定義された系統的に異なる2つのサブファミリー、CNGA及びCNGBを認識する。CNGAサブファミリーは、CNGA1(CNG1/CNGα1/RCNC1);CNGA2(CNG2/CNGα3/OCNC1);CNGA3(CNG3/CNGα2/CCNC1);及び、CNGA4(CNG5/CNGα4/OCNC2/CNGB2)を含む。CNGBサブファミリーの中で、桿体光受容体、嗅覚ニューロン、及び他の組織で発現されるメンバーは、CNGB1(CNG4/CNGβ1/RCNC2、及びスプライシング変種CNG4.3)と名付けられており、錐体光受容体で、そしておそらく他の組織でも見出されるメンバーはCNGB3(CNG6/CNGβ2/CCNC2)である(Bradley、J.ら、「Nomenclature for ion channel subunits」、Science、2001年12月7日;294:2095−6)。他の生物に由来するチャンネルも、相同性に基づいて上記のサブファミリーに分類できることが当業者には理解され、そのようなチャンネルも本発明に適用できることが予期される。
【0092】
ここで使用する場合、「変異体」又は「変異型」CNGチャンネルは、改変されたアミノ酸配列を有するサブユニットを含むものである。アミノ酸配列の改変には、N末端切除、C末端切除、アミノ酸残基欠失、付加、保存性又は非保存性のアミノ酸残基置換が含まれうるが、これらに限定されない。変異体CNGチャンネルサブユニットは、1つ若しくは複数、2つ以上、又は3つ以上の改変をアミノ酸配列に含むものでありうる。変異体CNGチャンネルは、α及びβなど、少なくとも2つの異なったサブユニットタイプで構成されるヘテロマーでもよい。変異体CNGチャンネルは、異なった変異を有するサブユニットを含むヘテロマーでもよい。変異体CNGチャンネルは、少なくとも1つの変異体サブユニットと、少なくとも1つの野生型サブユニットとを含むヘテロマーでもよい。変異体CNGチャンネルは、天然の細胞供給源で発現された場合に通常構成される野生型サブユニットのすべてに対応するサブユニットを含むヘテロマーでもよく、その場合には、それらのサブユニットのうち少なくとも1つが、少なくとも1つのアミノ酸配列改変を含む。変異体CNGチャンネルは、そのCNGチャンネルを発現するように形質転換された組換え体細胞と同じ種に由来するサブユニットで構成されたものでもよい。変異体CNGチャンネルは、そのCNGチャンネルを発現するように形質転換された組換え体細胞と異なる種に由来するサブユニットで構成されたものでもよい。変異体CNGチャンネルは、異なった複数の種に由来するサブユニットで構成されたものでもよい。変異体CNGチャンネルは、限定されるものではないが、例えば、ラット、マウス、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、及び他の任意の哺乳動物又は脊椎動物、ショウジョウバエ及び他の昆虫、並びに線虫を含めた、任意の種に由来するサブユニットを含むものでありうる。
【0093】
ここで使用する場合、「野生型」CNGチャンネルは、それらのサブユニットのアミノ酸配列に変異が導入されていない、天然源から単離されたサブユニット、あるいは、天然源から単離されたサブユニットと比較して変異を有するが、その変異がチャンネルの機能又は活性を実質的に改変しないサブユニットで構成されたものである。好ましくは野生型CNGチャンネルは、α及びβなど、少なくとも2つの異なったサブユニットタイプで構成されるヘテロマーである。野生型CNGチャンネルは、一部の好ましい実施形態では、第3の異なったサブユニットを含む場合がある。野生型CNGチャンネルは、天然の細胞供給源で発現された場合に通常構成されるサブユニット全てを含むヘテロマーでもよい。野生型CNGチャンネルは、そのCNGチャンネルを発現するように形質転換された組換え体細胞と同じ種に由来するサブユニットで構成されたものでもよい。野生型CNGチャンネルは、そのCNGチャンネルを発現するように形質転換された組換え体細胞と異なる種に由来するサブユニットで構成されたものでもよい。野生型CNGチャンネルは、異なった複数の種に由来するサブユニットで構成されたものでもよい。野生型CNGチャンネルは、限定されるものではないが、例えば、ラット、マウス、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、及び他の任意の哺乳動物又は脊椎動物、ショウジョウバエ及び他の昆虫、並びに線虫を含めた、任意の種に由来するサブユニットも含みうる。本発明のCNGチャンネルサブユニットは、宿主細胞に導入するために、単一又は複数のベクター上に存在する場合がある。例えば、野生型α/βヘテロマーCNGチャンネルの場合、α及びβサブユニットをコードする配列が、宿主細胞に導入される単一のベクターに含有されていてもよく、あるいは、それらは、別々に、若しくは同時に宿主細胞に導入される別々のベクター上にあってもよい。
【0094】
ここで使用する場合、「電位感受性色素」又は「膜電位色素」には、脱分極された細胞の中に入り、細胞内タンパク質又は膜に結合して、増強された蛍光を発する色素が含まれる。電位感受性色素には、カルボシアニン、ローダミン、オキソノール、及びメロシアニンビスバルビツル酸オキソノールが含まれるが、これらに限定されない。電位感受性色素及び膜電位色素には、宿主細胞による発現のためにベクターに組み込むことのできる核酸配列によってコードされたプローブも含まれる。
【0095】
ここで使用する場合、「カルシウム感受性色素」には、細胞内カルシウムレベルの増大に反応して、増強された蛍光を発する色素が含まれる。カルシウム感受性色素には、Fura−2、Fluo−3、Fluo−4、及びCalcium Green−1が含まれるが、これらに限定されない。カルシウム感受性色素には、宿主細胞による発現のためにベクターに組み込むことのできる核酸配列によってコードされたプローブも含まれ、例えば、限定されるものではないが、アエウオリン(Aeuorin)(Euroscreen社)と、カメレオン(Cameleon)など、緑色蛍光タンパク質(GFP)ベースのカルシウムセンサーとが含まれる。
[B.技法]
【0096】
本発明は、コード配列を含有する組換え体DNA分子(rDNA)をさらに提供する。好ましいコード配列は、野生型又は変異型のGPCR、Gタンパク質、及び/又はCNGチャンネルのうちの1つ又は複数をコードするものである。ここで使用する場合、rDNA分子は、in situの分子操作が施されたDNA分子である。rDNA分子を生成する方法は当技術分野で周知であり、例えば、Sambrookら(「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989年)を参照してほしい。好ましいrDNA分子の中では、コードDNA配列が、発現制御配列及び/又はベクター配列に作動可能に連結している。
【0097】
本発明のタンパク質コード配列が作動可能に連結されるベクター配列及び/又は発現調節配列の選択は、当技術分野では周知なように、所望の機能特性、例えばタンパク質発現、及び、形質転換される宿主細胞に直接的に依存する。本発明で企図されるベクターは、少なくとも、rDNA分子中に含まれる構造遺伝子の複製又は宿主染色体への挿入、そして、好ましくは発現も指示できるものである。
【0098】
作動可能に連結されたタンパク質コード配列の発現を調節するのに使用される発現制御エレメントは、当技術分野で公知であり、それらには、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、及び他の調節エレメントが含まれるが、これらに限定されない。誘導性プロモーターは、宿主細胞培地中の栄養物に反応するものなど、制御が容易なものが好ましい。
【0099】
コード配列を含有するrDNA分子を形成させるのに、真核細胞に適合した発現ベクター、好ましくは哺乳類細胞に適合した発現ベクターを用いることができる。限定されるものではないが、ウイルスベクター及びプラスミドを含めた真核細胞発現ベクターは、当技術分野で周知であり、いくつかの販売業者から入手できる。通常、そのようなベクターは、所望のDNAセグメントの挿入に好都合な制限部位を含有する状態で供給される。そのようなベクターの典型的なものは、pSVL及びpKSV−10(Pharmacia社)、pBPV−1/pML2d(International Biotechnologies,Inc.社)、pTDT1(ATCC、#31255)、並びに同様の真核細胞発現ベクターである。
【0100】
本発明で使用するrDNA分子を構築するのに使用される真核細胞発現ベクターは、真核細胞で効果的な選択マーカー、好ましくは薬剤抵抗性選択マーカーをさらに含む場合がある。薬物耐性マーカーの例は、それを発現することによってネオマイシン耐性が得られる遺伝子、すなわち、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である(Southernら、J Mol Anal Genet 1:327−341、1982年)。別法では、選択マーカーを別々のプラスミド上におくことができ、これら2つのベクターを、宿主細胞の同時形質導入によって導入し、その選択マーカーに適した薬物中で培養することによって選択する。
【0101】
上記核酸分子を、次に、好ましくは、上述の通り、適切な調節配列と作動可能に連結するように配置して、タンパク質オープンリーディングフレームを含有する発現ユニットを形成させる。適当な宿主を形質転換するのに発現ユニットを用い、組換体タンパク質の産生を可能にする条件下で、形質転換された宿主を培養する。
【0102】
組換体タンパク質を発現させるために、様々な哺乳類細胞培養系も利用することができる。哺乳類発現系の例には、Gluzman(Cell 23:175、1981年)によって記載されたサル腎臓繊維芽細胞のCOS−7系、並びに、適合したベクター発現できる他の細胞系、例えば、C127、3T3、CHO、HeLa、及びBHK細胞系が含まれる。哺乳類発現ベクターは、複製開始点、適当なプロモーター、及びエンハンサーを含み、そして、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングドナー部位及びアクセプター部位、転写終結配列、並びに5’隣接非転写配列のうち必要な任意のものも含むであろう。必要な非転写遺伝エレメントを提供するのに、SV40のスプライシング部位及びポリアデニル化部位に由来するDNA配列を用いることができる。上記ステップのそれぞれは、様々な方法で実施することができる。例えば、ゲノム断片から所望のコード配列を取得して、適当な宿主で、直接使用することができる。様々な宿主の中で機能できる発現ベクターの構築は、上述の通り、適当なレプリコン及び調節配列を用いて実現できる。調節配列、発現ベクター、及び形質転換法は、遺伝子の発現に使用される細胞のタイプに依存しており、以前に詳細に論じられている。適当な制限部位が、通常通り利用可能でない場合には、それらを、これらのベクターに挿入するための切り出し可能な遺伝子が得られるように、コード配列の末端に付加することができる。
【0103】
発現ベクターの他の変形形態には、対象の遺伝子と、他のポリペプチドとの間の融合タンパク質が含まれる。その適用には、可視化(緑色蛍光タンパク質、すなわちGFP、及び変種など)、又は、タンパク質精製(ポリヒスチジン、又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、すなわちGSTなど)のための手段が含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
詳細には、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、及びアンチセンス分子が企図されており、さらに、代替バックボーンに基づいた核酸、又は、天然源に由来若しくは合成の代替塩基を含む核酸も企図されている。しかし、そのような核酸は、本発明によるタンパク質をコードする核酸の相補鎖、適切なストリンジェンシー条件下でそれにハイブリッド形成する核酸、又はコードする核酸、を含む従来技術におけるいかなる核酸よりも新規かつ非自明のものとして定義される。
【0105】
本発明のコード核酸分子は、診断及びプローブを目的とした検出可能な標識を含有するようにさらに修飾することができる。そのような様々な標識は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載のコード分子類と共に容易に用いることができる。適当な標識には、ビオチン、放射性同位元素標識されたヌクレオチド、及び同様のものが含まれるが、これらに限定されない。当業者ならば、本発明の核酸分子の被標識変種を得るために、そのようないかなる標識も容易に利用することができる。
【0106】
ヌクレオチド配列の欠失、付加、又は改変によって、コードされているタンパク質の活性を破壊せずに、核酸分子の一次構造に改変を施すことができる。そのような置換又は他の改変はによって、本発明で企図されている範囲に含まれるアミノ酸配列を有するタンパク質が得られる。
[II.特定の実施形態]
【0107】
A.Gタンパク質共役受容体
現在のところ、匂い物質受容体及び味覚受容器を除いて、ゲノムデータベースから同定することのできるGPCR遺伝子が約400ある。これらのうち、約200の受容体のリガンドが同定されており、その残部が「オーファン受容体」として残っている。これらオーファンGPCRの作動薬及び/又は拮抗薬の治療効果の可能性を明らかにする鍵は、それらの天然の生物学的リガンドを同定して、それらの生物学的機能及び疾患関連性を解明する能力にある。リガンドが既知であるGPCRに関しては、GPCRによって媒介される活性を調節する薬剤を同定することによって、臨床上の可能性の評価に用いるこれらの受容体に対して高い親和性と望ましい機能性とを備えた医薬品の開発が可能となる(概説には、Debouck及びMetcalf、2000年、Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol、40:193−208;並びに、Howardら、2001年、Trends Pharmacol.Sci.22:132−140を参照のこと)。
【0108】
B.環状ヌクレオチド作動性チャンネル
脊椎動物の環状ヌクレオチド作動性(CNG)チャンネルは、cGMP及びcAMPの細胞質中濃度によって制御されるカチオンチャンネルである(概説には、Kaupp、1995年、Curr.Opin.Neurobiol.5:434−442;Finnら、1996年、Annu.Rev.Physio.58:395−426;Zogotta及びSiegelbaum、1996年、Annu.Rev.Neurosci、19:235−263;並びに、Liら、1997年、Q.Rev.Biophys.30:177−193を参照のこと)。これらのチャンネルは、混成イオン(Na+、K+、及びCa2+)によって伝達されるカチオン電流の伝導をもたらし、電気的興奮及びCa2+シグナル伝達の両方を、細胞内環状ヌクレオチド濃度の変化と共役させる働きをもつ。脊椎動物の光受容体及び嗅覚感覚受容体では、CNGチャンネルが膜電位を脱分極させ、細胞の興奮及び適応に関与する多数のCa2+調節タンパク質の活性を決定する(概説には、Kaupp及びKoch、1992年、Annu.Rev.Physio 54:153−175;並びに、Koch、1995年、Cell Calcium 18:314−321を参照)。
【0109】
CNGチャンネルは、通常、相同的なα及びβサブユニットを含有するヘテロ多量体である。一部のCNGチャンネルは、第3のサブユニットも有する。例えば、ラット嗅覚CNGチャンネル(GenBankアクセッション番号AF068572)における第3のサブユニットが記載されている。それらは、電位開口型チャンネルスーパーファミリーのメンバーであるが、電位感受性ではなく、その代わりに環状ヌクレオチド濃度の変化に反応する。現在、CNGチャンネルのサブユニットをコードする6つのヒト遺伝子が同定されている。ヒトCNGチャンネルのアラインメントを、図8のパネルA〜Cに示す。いくつかの哺乳類CNGチャンネルのアラインメントを、図9のパネルA及びBに示す。
【0110】
CNGチャンネルのサブユニットは、通常、細胞質側のN末端、6本の膜貫通セグメント、及び細胞質側のC末端からなる。5番目及び6番目の膜貫通セグメントの間に、孔の裏打ちに重要なドメイン(Pドメイン)が同定されている。様々なアミノ酸残基が、イオン特異性及び活性化特性に関係があるとされている(Gavazzoら、2000年、J.Gen.Phys 116:311−15、Varnumら、1995年、Neuron 15:619−625を参照)。
【0111】
ラット嗅覚CNGチャンネル(CNGA2)は、哺乳類細胞で異種的に発現された場合、cAMPの最大半減実効濃度(EC50)が68μMであるcAMP活性化チャンネルを形成する(Dhallanら、1990年)。CNGB2、又はCNGB2及びCNCβ1b(GenBankアクセッション番号AF068572)と同時発現された場合には、cAMPのEC50が10.3及び4μMに低下する(Boenigkら、1999年)。これらの野生型CNGチャンネルは、ここに開示された方法を適用することによって、GPCR活性化のモニタリングに直接使用することができる。本発明の野生型CNGチャンネルは、第3のサブユニット、例えば、ラット嗅覚CNGチャンネル(GenBank AF06572)の第3のサブユニット、又はラット若しくは他の種でそれに相当するものも含みうる。しかし、CNGチャンネルの変異体及びキメラコンストラクトは、GPCR活性化の検出感度をさらに増大させるのに用いることができる。従って、本発明は、野生型CNGチャンネルと、以下の3つの領域、すなわち、環状ヌクレオチド結合ドメイン、C−リンカー領域、及び環状ヌクレオチドがCNGチャンネルを開口させる効力を増強するNH末端、に1つ又は複数の変異を有するCNGチャンネルとの両方を含む(Altenhofenら、1991年;Gordon及びZagotta、1995年;Varnumら、1995年;Zongら、1998年;Paolettiら、1999年;LiとLester、1999年;Shapiroら、2000年;Scottら、2000年;Richら2001年;Mottigら、2001年;及び本明細書の開示)。
【0112】
本発明のCNGチャンネルサブユニットは、宿主細胞に導入するための単一又は複数のベクター上に存在する場合がある。例えば、野生型のα/βヘテロマーCNGチャンネルの場合、α及びβサブユニットのコード配列が宿主細胞に導入される単一のベクターに含まれている場合も、あるいは、別々に、又は同時に宿主細胞に導入される別々のベクター上にある場合もある。
【0113】
C.Gタンパク質
様々なGアルファサブユニットをコードする20を超える遺伝子を含めた多数のヘテロ3量体Gタンパク質がクローニングされている。アミノ酸配列及び機能的相同性に基づいて、様々なGサブユニットが6つのファミリーに分類されている。これらの6つのファミリーは、G、G、G、Golf、G、及びG12と呼ばれる。細胞質Ca2+の放出をもたらすGを除いて、他のすべてのGタンパク質が、環状ヌクレオチド、主としてcAMPを介して、それらのシグナルを媒介する(Watson及びArkinstall、「The G−Protein−Linked Receptor Facts Book」、Academic Press社、ロンドン、1994年)。
【0114】
ある種のGタンパク質は、それらのGサブユニットが、通常は他のファミリーのGタンパク質と共役するGPCRと共役するのを可能にするので、「無差別共役」のGタンパク質であると考えられている。例えば、Gαファミリーの2つのメンバー、ヒトGα16及びそのマウス相同体Gα15が無差別共役のGタンパク質である。これらのGサブユニットを有するGタンパク質は、様々なGPCRと相互作用するが、それらは、依然として自らの下流エフェクターの活性化を行う。Negulescuらに交付された米国特許第6004808号を参照のこと。
【0115】
D.アデニリルシクラーゼ
3’,5’環状アデノシン一リン酸(cAMP)は、細菌からヒトまでの種における原型的なセカンドメッセンジャーである。哺乳類では、cAMPは少なくとも9つのアデニリルシクラーゼ(AC)アイソザイムのファミリーによって生成される。哺乳類ACは、Ca2+/カルモジュリン、プロテインキナーゼA及びCによるリン酸化、抑制性Gタンパク質αサブユニット(Giα)、並びにGタンパク質β及びγサブユニット(Gβγ)によるそれらの活性化又は阻害が相互に異なっている。すべての哺乳類ACが、GTPが結合した促進性Gタンパク質αサブユニット(Gsα)によって活性化され、AC9以外のすべてが降圧薬であるフォルスコリンによって活性化される。既知の哺乳類ACは、12本の膜貫通ヘリックス及び2つの細胞質触媒ドメインからなる(Hurley、J.H.、Curr Opin Struct Biol.1998年12月;8(6):770−7)。
【0116】
Gsα及びフォルスコリンによるそれらの調節に加えて、哺乳類アデニル酸シクラーゼは、他のGタンパク質、Ca+2シグナル、及びリン酸化による複雑な調節を受けている。Giファミリーのメンバー(Gi、Go、Gz)は、様々なホルモン及び神経伝達物質(すなわち、アデノシン、エピネフリン、及びカナビノイド)によって活性化できることが知られている。活性化によって、Giファミリーのタンパク質は、2つの潜在的調節因子、すなわちGα及びGβγを放出する。アデニリルシクラーゼの阻害は、Gi、Go、又はGzのαサブユニットを介して、あるいは、Gβγを介して媒介されうる。タイプV及びタイプVI酵素(主として心臓で発現される)など、アデニリルシクラーゼのある種のサブタイプでは、酵素活性がGiαによって抑制され、Gβγによって改変されない。
【0117】
特定のクラスのACの量は、細胞型相互で異なるであろう。この理由から、そして、上述した活性化又は阻害における相違から、少なくとも第1のアデニリルシクラーゼの発現をさらに改変することによって、本発明の特性を改変できることが理解されよう。そのような改変には、1つ又は複数の異種ACの導入(プラスミドベクター又はウイルスベクターを利用して、一過性発現されたもの、及び宿主ゲノムに安定に組み込まれたもの両方)、あるいは、1つ又は複数の内在性ACの上方制御又は下方制御が含まれうるが、これらに限定されない。前記上方制御又は下方制御を実現する方法は多数あり、当業者に知られている。特定の改変の選択は、細胞型、Gタンパク質結合、様々な阻害剤又は活性物質の調節作用、及び本発明が適用される方法に依存している。
【0118】
E.宿主細胞
本発明は、さらに、宿主細胞を提供し、これらの宿主細胞は、1つ又は複数のGPCR及び/又はGタンパク質及び/又はCNGチャンネルをコードする核酸分子で形質転換されたものでありうる。宿主細胞には、組換え体CNGチャンネルの発現と併せて本発明の方法で使用できる内在性のGPCR及び/又はGタンパク質を有する細胞又は細胞系も含まれることがある。好ましい細胞は真核細胞である。本発明の実施に有用な真核細胞には、哺乳類細胞が含まれるが、これらに限定されない。いかなる細胞でも、その細胞系が細胞培養法に適合しており、発現ベクターの増幅及び遺伝子産物の発現に適合している限り使用できる。好ましい真核宿主細胞には、酵母、昆虫、及び哺乳類細胞、好ましくは、マウス、ラット、サル、又はヒト細胞系に由来する細胞など脊椎動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。好ましい真核宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばATCCからCCL61として入手できるもの、ATCCからCRL1658として入手できるNIH Swissマウス胚細胞(NIH/3T3)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスL細胞、ジャーカット細胞、SF9、アフリカツメガエル卵母細胞、153DG44細胞、HEK細胞、PC12細胞、ヒトTリンパ球細胞、及びCos−7細胞、並びに、同様の真核宿主細胞が含まれる。
【0119】
本発明のrDNA分子を用いた適切な細胞宿主の形質導入は、周知の方法によって実現され、その方法は、通常、使用されるベクター及び利用される宿主系のタイプに依存する。rDNAsを含有するベクターを用いた脊椎動物細胞の形質転換に関しては、通常、エレクトロポレーション、カチオン性脂質又は塩処理法が利用され、例えば、Grahamら(Virol 52:456、1973年)、及びWiglerら(Proc Natl Acad Sci USA 76:1373−1376、1979年)を参照できる。同様に、Invitrogen/Life Technologies社、Promega社、及びQiagen社などが販売するものを含めた、多数のオプションが市販されている。
【0120】
形質転換に成功した細胞、すなわち、本発明のrDNA分子を含有する細胞は、選択マーカーを有するものの選択を含めた周知の技法によって同定することができる。例えば、本発明のrDNAを導入することによって得られた細胞をクローン化して、単一コロニーを産生することができる。それらのコロニーに由来する細胞を採取し、溶解して、Southern(J Mol Biol 98:503、1975)又はBerentら(Biotech 3:208、1985年)によって記載された方法などを用いて、rDNAが存在するかどうかそれらのDNA内容物を検査するか、あるいは、それらの細胞によって産生されたタンパク質を免疫学的方法によってアッセイする。
【0121】
F.アッセイフォーマット
本発明は、GPCRによって媒介される活性の存在及び/又は調節をアッセイする様々な方法を提供する。好ましい実施形態では、CNGチャンネルの活性化によるcAMP産生の検出がそれに伴う場合がある。一部の実施形態では、GPCRの活性化と、Gタンパク質及びアデニルシクラーゼを介したcAMP産生へのシグナル伝達との結果として生じたcAMPによる活性化の結果として、本発明の宿主細胞のCa2+流入をアッセイする。
【0122】
一部の実施形態では、Ca2+流入に対して、色素の1つ又は複数の分光特性の変化で反応する色素を本発明の細胞に添加する。一部の実施形態では、色素がCa2+に直接結合して、観測可能な分光特性の変化を起こす。このタイプの色素の一例がfura−2である。
【0123】
他の実施形態では、CNGチャンネルの活性化によって生じたイオン流動の結果として生成する膜電位の変化に反応する色素を細胞に添加することができる。このタイプの色素は、当業者には公知のものであり(Zochowskiら、2000年、Biological Bulletin 198:1−21を参照)、例えばMolecular Devices Inc.社から購入できる。
【0124】
CNGチャンネルは、カルシウム感受性色素Fura−2を用いてCa2+レベルの検出を目的とするアッセイにおけるcAMPセンサーとして提案されている(Richら、2000年、J.Gen.Physiol.116:147−161)。CNGチャンネルアルファサブユニットの変異体が多数同定されており、それには、C460W(Gordonら、1997年、Neuron 19:431−441)、E583M(Varnumら、Neuron 15,619−925)、及びY565Aの変化が含まれる(Li及びLester、1998年、Mol.Pharmacol.55:873−882)。これらの変異体はcAMPに対するCNGチャンネルの感受性を増大させたが、改善後の感受性もマルチウェルフォーマットで使用するにはまだ十分でない。現在までに報告されている中で最も良い場合では、cAMP誘導に反応したCa2+レベルの上昇をスペクトロフルオリメータによって検出するのに3〜4×10細胞を必要とした(Richら、2001年、J.Gen.Physiol.118:63−77)。対照的に、典型的なマルチウェルアッセイは、1ウェルあたり約20〜50000細胞が使用され、これは、Ca2+感受性蛍光色素用に必要とするよりも、約100倍少ない数の細胞である。
【0125】
これらのアッセイ及び本発明の方法で使用できる電位感受性色素は、細胞膜電位に関することに長い間使用されてきたものである(概説として、Zochowskiら、Biol.Bull.198:1−21を参照のこと)。いくつかのクラスの蛍光色素が開発され、それらには、カルボシアニン、ローダミン、オキソノール、及びメロシアニンが含まれ、これらはMolecular Probes社(オレゴン州ユージーン)から入手できる。3つのビスバルビツル酸オキソノールは、しばしばDiBAC色素と呼ばれ、最大励起波長約490nm(DiBAC4(3))、530nm(DiSBAC2(3))、及び590nm(DiBAC4(5))を有する、スペクトルの異なる電位差測定プローブのファミリーを形成する。これらの色素は、脱分極した細胞に入り、そこで、細胞内タンパク質又は膜に結合して、蛍光の増大と、赤方スペクトルシフトとを示す(Eppsら、1994年、Chem.Phys.Lipids 69:137−150)。脱分極が進むと、これらの陰イオン性色素がより多く流入し、それによって蛍光が増大する。報告によれば、DiBAC4(3)が最も高い電位感受性を有する(Braunerら、Biochim.Biophys.Acta 771:208−216)。FLIPR(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)などのハイスループットプラットホームにおける膜電位アッセイ用に同様のアッセイが開発された。cAMPは、Ca2+に加えてNa+及びK+の流動も誘導するので、CNGチャンネルの存在下において、Na+及びK+の流動の結果として起こる膜電位の変化は、細胞内cAMP蓄積の指標として用いることができる。
【0126】
色素分光特性の変化の検出は、当業者に知られているいかなる方法で行ってもよい。好ましい実施形態では、スペクトル、すなわち蛍光特性の変化を検出するのに顕微鏡イメージングを用いて、本発明のアッセイを単一細胞について行うか、あるいは、マルチウェルフォーマットで、マイクロプレートリーダーを用いて分光特性を測定する。
【0127】
単一細胞イメージングに適した構成の1つは、コンピュータシステムを備えた顕微鏡を使用するものである。Carl Zeiss社からのATTOのAttofluor(登録商標)RatioVision(登録商標)リアルタイムデジタル蛍光アナライザー(ATTO社、メリーランド州ロックビル)は、生存細胞及び調製された被検物中の蛍光プローブを分析するための完全に統合されたワークステーションである。カルシウムは、リアルタイムで可視化することができる。このシステムは、これらのイオンを別々に、あるいは組み合わせて同時に観測することができ、その組合せは、使用するプローブの光学特性によってのみ制限される。標準的なイメージングシステムは、Fura−2(カルシウム用)とGFP(形質導入用)との併用など、複数の色素の実験を同一の細胞で同一の期間にわたって行うことができる。複数の色素から得られる比率イメージ及びグラフィカルデータは、オンラインで表示される。
【0128】
本発明のアッセイをマルチウェルフォーマットで行う場合には、使用される色素の分光特性の変化を検出するのに適した装置は、マルチウェルマイクロプレートリーダーである。適当な装置は市販されており、例えば、Molecular Devices社から購入できる(FLEXstation(商標)マイクロプレートリーダー及び液体輸送システム、又はFLIPR(登録商標)システム)。これらのシステムは、Fluo−3、Fluo−4、及びCalciumGreen−1などの市販されている色素を用いて使用することができる。これらの指示体はすべて可視光の波長域で励起される。
【0129】
Molecular Devices社のFLIPR蛍光定量イメージングプレートリーダー(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)は、ホスホリパーゼシグナル伝達経路を活性化するGq共役型サブクラスの受容体の活性化に反応して起こる細胞内からの一過性カルシウム放出を、カルシウム感受性蛍光色素で検出するハイスループットスクリーニングアッセイに使用されてきた。他のGPCRには、無差別共役のGタンパク質を使用し、混成の結果が得られた。本発明まで、GPCR受容体活性化のリアルタイム速度論情報を生み出すcAMPアッセイに匹敵するアッセイは存在しなかった。さらに、GPCRリガンドによって活性化された単一細胞中のcAMP蓄積を、イメージングプラットホーム中の生存細胞で直接検査する簡単な方法も存在しなかった。
【0130】
本発明の一部の実施形態では、cAMPの細胞内濃度を増大させるように設計された化合物で、本発明の細胞を処理することができる。例えば、光子に対する反応によって放出することのできる「ケージド」cAMP類似体で細胞を処理することができる(Corrieら、「Bioorganic Photochemistry」、第2巻、243〜305ページ、Wiley and Sons社、Chichester、UK、及び、Hagenら、1996年、Biochemistry 35:7762−7771を参照のこと)。
【0131】
G.GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法
本発明の付加的なの実施形態は、GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法を提供する。その活性に関与するタンパク質に結合する薬剤、又はこれらのタンパク質の発現に影響を与える薬剤は、前記タンパク質の機能に影響を与える場合もあれば、与えない場合もある。薬剤の機能的作用の検査には、1)リガンド結合への影響、2)Gタンパク質共役シグナル伝達経路への影響、及び、3)受容体の下方制御/脱感作の活性化又は阻害が含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
本発明の一実施形態では、記載した物質及び方法を、GPCRのリガンドを同定するのに使用することができる。この実施形態は、「オーファン受容体」、すなわち、そのリガンドがまだ同定されていない受容体のリガンドを同定するのに有用であろう。リガンドは、本発明の細胞を、推定上のリガンドである化合物と接触させることによって同定することができる。この細胞は、cAMPに対する感度が増大するように変異導入されたものを含めた、対象のGPCRを発現する核酸、任意選択でCNGチャンネルを発現する少なくとも1つの核酸で形質導入されたものでよい。GPCRの活性化は、CNGチャンネルの活性化を測定することによってアッセイする。例えば、カルシウム感受性色素及び/又は電位感受性色素を細胞に添加することができ、さらに、推定上のリガンドの存在下及び非存在下で、その色素の分光特性の変化を測定することができる。化合物は、CNGチャンネルの開口と、それに伴う色素の分光特性の変化とを誘導した場合に、リガンドとして同定される。
【0133】
本発明の別の実施形態では、GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤の能力を、例えばリガンド結合性を改変することによって測定することができる。リガンド結合性の改変は、試験されている薬剤が、標的GPCRの既知のリガンドの結合性を調節する能力によって評価することができる。これは、細胞内に形質導入されたGPCRが、以前に同定されているリガンドを有する場合、上述のアッセイを用いて実現することができる。別法として、同定されたリガンドを有する内在性GPCRを用いることもできる。薬剤の存在下及び非存在下で、以前に同定されているリガンドが活性を誘導する能力をアッセイする。薬剤は、その薬剤の存在下における活性が、その薬剤の非存在下における活性とは異なっている場合に、すなわち、大きいか、少ないか、あるいは、速度論的性質がそれとは異なっている場合に、GPCRによって媒介された活性を調節するものである。阻害曲線など、データ分析の標準的方法を用いて、試験されている薬剤の作用を分析するのに使用される。
【0134】
Gタンパク質共役シグナル伝達経路の活性化の改変は、Gタンパク質依存性シグナル伝達システムに共役した活性受容体の存在を必要とする。これは、一例として、Gα16などの無差別共役のGタンパク質と共に、そのGPCRで同時形質導入された細胞系を調製することによって実現できる。このGタンパク質は、万能アダプターとして機能し、GPCRパートナーによって活性化された場合、カルシウム動員をもたらす(Marcheseら、Trends Pharmacol Sci、20:370−375、1999年)。次に、カルシウム動員は、上述したアッセイを使用することによって容易に評価される。例えば、Molecular Probes社から購入可能な細胞内カルシウム蛍光プローブが多数ある。細胞内カルシウム濃度の変化は、蛍光強度及び/又はプローブの特性の変化をもたらし、製造業者の指示に従って蛍光プレートリーダーを用いることによって検出できる。その後、適当な濃度、通常、約10pMと1mMとの間の濃度における対象の薬剤の存在下で細胞をインキュベートして、その結果起こる細胞内カルシウム濃度の変化を測定することによって、その受容体によるGタンパク質共役シグナル伝達に、薬剤が影響を与えるということの確認を得る。標準的な用量反応曲線を作成して、分析する。
【0135】
H.GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤の使用
GPCRの作動薬又は拮抗薬など、GPCRによって媒介された1つ又は複数の活性を調節する薬剤は、GPCRの機能及び活性に付随する過程を調節するのに用いることができる。一部の実施形態では、GPCRによって媒介された活性を調節する、すなわち増大させるか、低下させるか、あるいは活性の速度論的性質を改変する薬剤を、GPCRによって媒介された1つ又は複数の活性に随伴する生物学的及び病理学的過程を調節するのに使用することができる。
【0136】
ここで使用する場合、その脊椎動物又は哺乳動物が本発明のGPCRタンパク質によって媒介された病理学的又は生物学的過程の調節を必要とする限り、対象は、いかなる脊椎動物でもよいが、好ましくは哺乳動物である。「哺乳動物」という用語は、哺乳綱に属する個体と定義されている。本発明は、ヒト対象の治療に特に有用である。
【0137】
病理学的過程は、有害効果を生成する生物的過程のカテゴリーを指す。例えば、特定のGPCRによって媒介された活性又は活性のレベルが疾患又は他の病理学的状態に関連している場合がある。ここで使用する場合、薬剤が病理学的過程を調節するというのは、その薬剤が病理学的過程の程度又は厳しさを軽減する場合である。例えば、GPCRによって媒介された活性は、生体アミンの他の受容体に関連した障害など、Gタンパク質シグナル伝達障害に関連している場合がある(例えば、上記の背景のセクションを参照)。
【0138】
本発明の薬剤は、単独で与えることも、特定の病理学的過程を調節する他の薬剤と併せて与えることもできる。例えば、他の既知の薬物と併せて本発明の薬剤を投与することができる。ここで使用する場合、2つの薬剤を併せて投与するというのは、それら2つの薬剤を同時に投与するか、あるいは、それらの薬剤が同時に作用するような仕方で独立的に投与する場合である。
【0139】
本発明の薬剤は、非経口経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、又は口腔経路で投与することができる。代替的に、又は併発的に、投与が経口経路による場合もある。投与される用量は、受容者の年齢、健康、及び体重と、併用治療している場合には、その種類、治療の頻度、及び望まれている作用の性質とに依存するであろう。
【0140】
I.GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤
薬剤の適用が、GPCRによって媒介された活性を調節するかどうか判定するために、候補薬剤をスクリーニングすることができる。これは、例えば、GPCRによって媒介された活性の異常を特徴とする疾患を有する特定の患者を治療するのに、ある特定の薬物が有効であるかどうか決定するのに有用となる場合がある。候補薬剤によってその活性が影響を受けて、活性が正常に戻るか、あるいは、より正常に近くなるように改変された場合には、その薬剤は、その疾患の治療に指示されるものでありうる。同様に、疾患状態で発現されたものに類似した活性を誘導する薬剤は禁忌的でありうる。
【0141】
本発明によれば、同定されたリガンドを有するGPCRは、細胞、例えば疾患細胞に対する候補薬物又は候補薬剤の作用を評価するアッセイの基礎として用いることができる。GPCRによって媒介された活性、例えばCa2+流入を調節する能力を求めて、候補薬物又は候補薬剤をスクリーニングすることができる。
【0142】
GPCRによって媒介された活性の調節をモニターするアッセイでは、CNG活性の変化をモニタリングするのに利用可能ないかなる方法も使用できるが、上述したアッセイフォーマットのうち1つ又は複数を用いて実施するのが好ましい。
【0143】
上記の方法でアッセイする薬剤は、無作為に選択しても、あるいは合理的に選択若しくは設計してもよい。ここで使用する場合、薬剤を無作為に選択するというのは、単独で、若しくは、結合パートナーなどの随伴基質を伴って、本発明のタンパク質との会合に関与する特定の配列を考慮せずに無作為にその薬剤を選択する場合である。無作為に選択された薬剤の例は、化学ライブラリー若しくはペプチドコンビナトリアルライブラリー、又は生物の増殖ブロスの使用である。
【0144】
ここで使用する場合、薬剤を合理的に選択若しくは設計するというのは、標的部位の配列及び/又はその立体配座を、薬剤の作用との関連において考慮に入れた、ランダムではない根拠に基づいて薬剤を選択する場合である。これらの部位を構成するペプチド配列を利用することによって、薬剤を合理的に選択したり、あるいは合理的に設計したりすることができる。例えば、合理的に選択されたペプチド薬剤は、そのアミノ酸配列が、任意の機能的コンセンサス部位に同一であるか、若しくはその類縁体であるペプチドである場合がある。
【0145】
本発明の薬剤は、例えば、ペプチド、小分子、ビタミン誘導体である場合があり、さらには、炭水化物、脂質、オリゴヌクレオチド、並びに、共有結合及び非共有結合性のこれらの組合せである場合がある。機能に影響を与えるために、ドミナントネガティブタンパク質、これらのタンパク質をコードするDNA、これらのタンパク質に対する抗体、これらのタンパク質のペプチド断片、又は、これらのタンパク質の模倣体を細胞に導入することができる。ここで使用する場合、「模倣体」は、親ペプチドとは化学的に異なるが、親ペプチドに組織分布的かつ機能的に類似した構造を提供するための、ペプチド分子の一領域又はいくつかの領域の改変を指す(Grant(1995年)、「Molecular Biology and Biotechnology」、Meyers(編集)、VCH Publishers社を参照)。当業者ならば、本発明の薬剤の構造的性質には限界がないことを容易に認識できる。
【0146】
J.GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤を含む組成物
本発明の薬剤を含む組成物は、単独で与えることも、特定の病理学的過程を調節する他の組成物及び/又は薬剤と併せて与えることもできる。例えば、他の既知の薬物と併せて本発明の薬剤を投与することができる。ここで使用する場合、2つの薬剤を併せて投与するというのは、それら2つの組成物及び/又は薬剤を同時に投与するか、あるいは、それらの薬剤が同時に作用するような仕方で独立的に投与する場合である。
【0147】
本発明の薬剤を含む組成物は、非経口経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、又は口腔経路で投与することができる。代替的に、又は併発的に、投与が経口経路による場合もある。投与される用量は、受容者の年齢、健康、及び体重と、併用治療している場合には、その種類、治療の頻度、及び望まれている作用の性質とに依存するであろう。
【0148】
本発明は、GPCRによって媒介された活性を調節する1つ又は複数の薬剤を含有する組成物をさらに提供する。個々の必要量は可変的であるが、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当技術分野の技術の範囲内にある。典型的な用量は、体重1kgあたり0.1から100μgを含む。好ましい用量は、体重1kgあたり0.1から10μgを含む。最も好ましい用量は、体重1kgあたり0.1から1μgを含む。
【0149】
薬理学的な活性薬剤に加えて、本発明の組成物は、作用部位に到達するために薬学的に使用できる製剤に、活性化合物を加工する過程を促進する賦形剤及び補助剤を含む薬学的に許容される適当な担体を含有しうる。非経口投与するのに適した剤形には、水溶性形態にある活性化合物の水溶液、例えば水溶性塩類の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液を、適当な油性注射懸濁液として投与することができる。適当な親油性溶剤又は親油性媒体には、例えば、脂肪油、例えば胡麻油、合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリドが含まれる。水性注入懸濁液は、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含めた、懸濁液の粘着性を増強する物質を含有しうる。場合によっては、懸濁液は安定化剤も含有しうる。細胞内に送達するための薬剤を封入するのに、リポソームを用いることもできる。
【0150】
本発明による全身性投与用の製剤は、経腸投与、非経口投与、又は局所投与用に処方することができる。実際に、活性成分の全身性投与を実現するのに、3つのタイプすべての剤形を同時に用いることができる。
【0151】
経口投与に適した剤形には、硬質又は軟質ゼラチンカプセル、丸剤、コーティング錠を含めた錠剤、エリキシール、懸濁液、シロップ又は吸入剤、及びこれらの徐放性形態が含まれる。
【0152】
本発明の組成物は、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、及びマウスなど、通常は哺乳動物においてin vivoで、あるいはin vitroで利用することができる。
【0153】
これ以上の説明がなくとも、当業者ならば、以上の記述と、以下の例示的な実施例とを用いて、本発明の化合物を生成及び利用して、特許請求の方法を実施できるものと考えられる。従って以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をとりわけて指し示すものであり、いかなる意味においても、この開示の残部を限定するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0154】

(実施例1)
[単一細胞イメージングアッセイ]
図2は、単一細胞イメージングアッセイの結果を示す。この実施例では、CNGチャンネル(配列番号3)で2日間、一時的に形質導入されたHEK293細胞に、カルシウム蛍光色素を添加した。詳細には、MATRIGEL(Becton Dickinson社、カリフォルニア州サンノゼ)でプレコーティングされた、Fisher社ブランドの顕微鏡カバーガラス#1上で、細胞を培養し、5μMのfura−2 AM(Molecular Probes社、カリフォルニア州サニーベイル)を含有する培養培地(10%ウシ胎仔血清を含むDMEM)中、37℃で、0.5時間インキュベートした。カルシウム蛍光は、Attofluor(登録商標)RatioVision(登録商標)リアルタイム蛍光イメージング装置(ATTO、Rockville、MD)で記録した。このシステムは、Fura−2(カルシウム用)とGFP(形質導入マーカー)との組合せなど、複数の蛍光プローブを、同一の細胞で同一の期間にわたって用いた実験を行うことができる。複数の色素から得られる比率イメージ及びグラフィカルデータは、オンラインで表示される。この実施例は、CNGチャンネルを発現する単一細胞の中の細胞質遊離カルシウム濃度の変化をリアルタイムでモニターすることによって、Gs共役GPCR及びアデニリルシクラーゼの活性化を検出できることを実証する。図2中の矢印で示された時間にノルエピネフリン(NE)及びフォルスコリン(forsk)を添加したところ、GFP陽性細胞、すなわちGFP形質導入細胞で、細胞質中カルシウム濃度の上昇が開始された。2つの代表的な画像は、NEを添加する前(パネルA)及び後(パネルB)に撮ったものであり、個々の細胞の反応を示している。カルシウム蛍光の変化を、GFP陽性の細胞集団と全細胞集団とでそれぞれ平均し、図式的に示した(パネルC)。
【0155】
(実施例2)
[マルチウェルフォーマットにおけるカルシウム感受性色素と電位感受性色素との比較]
この実施例では、マイクロプレートリーダーFLEXstation(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)を用いて記録を行い、また、カルシウムアッセイ及び膜電位アッセイの両方に、アッセイキットに伴って提供されたプロトコールを採用した。図3は、cAMPのEC50値が配列番号3のものより低く、従って、cAMP変化に対してより感受性であると予測される変異型CNGチャンネル(配列番号5)(Richら、2001年、J.Gen.Phys.118:63−77)を用いたマルチウェルアッセイの結果を示す。図3Aは、CNGチャンネルで一時的に形質導入された細胞でCa2+感受性色素、fluo−4を用いて測定された、イソプロテレノール(β2アドレナリン受容体の作動薬)に対する反応を示す。飽和用量である10μMのイソプロテレノールで細胞を刺激した後でも、色素の蛍光に有意な変化がなかった。図3Bは、Gq経路を介した細胞内カルシウム貯蔵動員の陽性対照として、ムスカリン受容体作動薬であるカルバコールで活性化した結果を示す。この処置の結果として、細胞内Ca2+濃度の観察可能な変化がみられた。
【0156】
CNGチャンネル及び膜電位色素が細胞内cAMPの検出に有用であることを確認するため、アデニリルシクラーゼの活性化物質であるフォルスコリンを用いて細胞内cAMPを生成させた。CNGチャンネル(配列番号5)で一時的に形質導入されたHEK293細胞に室温で約0.5時間、電位感受性色素の添加を行った。図4は、フォルスコリンを添加した際に、マイクロプレートリーダーを用いることによって、電位感受性色素の存在下において、細胞内cAMPを容易に検出できることを示す。
【0157】
(実施例3)
[変異体CNGチャンネルを膜電位色素と共に用いた、GPCR活性化に反応した細胞内cAMPのアッセイ]
図5は、膜電位アッセイキット(Molecular Probes社、カリフォルニア州サニーベイル)の電位感受性色素を用いた同様のアッセイの結果を示す。電位感受性色素を再構成するには、この市販キットで供給された緩衝溶液の代わりに、0.1mM MgCl、1mM EGTAで補足され、pH7.3に滴定されたDPBS(2価イオンを含まないダルベッコリン酸緩衝塩)を用いた。CNGチャンネル(配列番号5)で一時的に形質導入されたHEK293細胞に室温で約0.5時間、電位感受性色素の添加を行った。β−アドレナリン受容体を活性化するイソプロテレノールの0.1μMという低い濃度では、容易に検出可能な蛍光シグナルの変化がみられたが、これは、図3Aに示したように、カルシウム感受性色素を用いた場合、10μMのイソプロテレノールでも検出可能な変化がなかったことと比較される。同様に、図6は、膜電位色素を別のCNGチャンネル変異体(配列番号7)と共に用いた結果を示す。
【0158】
(実施例4)
[膜電位色素と共に、同時発現されたGPCR及びCNGチャンネルを用いた、細胞内cAMPのアッセイ]
本発明のアッセイは、外因的に導入されたGPCRを用いて行うことができる。HEK273細胞に、タイプIドーパミン受容体をコードするDNAを、変異型CNGチャンネル(配列番号7)と共に同時形質導入した。図7は、この受容体を、その天然リガンドであるドーパミンで活性化した結果を示す。膜電位色素(Molecular Probes社、カリフォルニア州サニーベイル)の存在下において、ドーパミンを添加した直後に用量依存的な蛍光シグナルが得られる。
【0159】
(実施例5)
[一時的に形質導入された細胞におけるオーファンGPCRのリガンドの同定]
野生型又は変異型のCNGチャンネルタンパク質及び対象のGPCRをコードする遺伝子は、標準的な形質導入技法を用いて標的細胞に形質導入することができる(Ausueblら、「Current Protocols in Molecular Biology」(2001年)、John Wiley & Sons社)。形質導入の2日後には、コンフルエントな細胞単層を生成するため、96ウェルプレートには1ウェルあたり50000細胞、384ウェルプレートには1ウェルあたり10000細胞を用い、プレーティング容積を、96ウェルプレートには100μL/ウェル、384ウェルプレートには25μL/ウェルとすればよい。
【0160】
細胞プレートは、終夜のインキュベーション後にインキュベーターから取り出すことができる。膜電位色素(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)を含む等容積の添加緩衝液を、各ウェルに添加することができ(96ウェルプレートには100μL/ウェル、384ウェルプレートには25μL/ウェル)、細胞プレートを37℃で30分間さらにインキュベートする。プレートは、インキュベーション後にFLIPR又はFlexStationを用いて直接アッセイすることができる。
【0161】
天然の合成リガンド候補コレクションを得て、試験を行うために1nMから10μMまでの範囲の濃度に希釈することができる。膜電位アッセイは、膜電位アッセイのためのFLIPRシステムマニュアル(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)に記載の通り、化合物を添加した後、直ちに行う。そのようなアッセイは、Ca++感受性色素(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)の存在下で行うこともできる。
【0162】
(実施例6)
[GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤の同定]
GPCRによって媒介された1つ又は複数の活性を調節する薬剤として機能する能力のあるものを求めて、化合物のスクリーニングを行うことができる。本発明に従って調製された細胞を化合物と接触させることができ、さらに、GPCRによって媒介された1つ又は複数の活性をアッセイすることができる。一例として、CNGチャンネルタンパク質及び対象のGPCRをコードする遺伝子を発現する安定細胞系を得ることができる(Ausueblら、「Current Protocols in Molecular Biology」(2001年)、John Wiley&Sons社)。GPCR遺伝子は、内在性供給源のものでも、外因性供給源のものでもよい。コンフルエントな細胞単層を生成するため、プレーティング容積を、96ウェルプレートには100μL/ウェル、また、384ウェルプレートには25μL/ウェルとして、96ウェルプレートには1ウェルあたり50000細胞、そして、384ウェルプレートには1ウェルあたり10000細胞を用いることができる。
【0163】
細胞プレートは、終夜のインキュベーション後にインキュベーターから取り出すことができる。膜電位色素(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)を含む等容積の添加緩衝液を、次に各ウェルに添加し(96ウェルプレートには100μL/ウェル、384ウェルプレートには25μL/ウェル)、細胞プレートを37℃で30分間さらにインキュベートする。プレートは、インキュベーション後にFLIPRを用いて直接アッセイすることができる。化合物のライブラリーを得て、試験を行うために1nMから10μMまでの範囲の濃度に希釈することができる。膜電位アッセイは、膜電位アッセイのためのFLIPRシステムマニュアル(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)に記載の通り、化合物を添加した後、直ちに行う。そのようなアッセイは、膜電位色素及びCa2+感受性色素(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベイル)両方の存在下で行うこともできる。
【0164】
(実施例7)
[384ウェルプレート中のHEK 293−CNG細胞を膜電位色素と共に用いたホモジニアスカイネティックアッセイ]
細胞集団を、安定的に形質転換してCNGチャンネルを発現させ、付着細胞又は懸濁液培養条件のいずれかにおいて樹立する。それらの細胞を収集し、10%FBSを含有するDMEM(高グルコース)中に1×10細胞/mlに調整する。384ウェルマイクロプレート(Corning社;3712)に、細胞懸濁液を1ウェルあたり20μl分配し、アッセイの前に16〜24時間インキュベートする。アッセイの直前に、細胞プレートのウェルを顕微鏡で観察して、むらなく広がった集密細胞集団の存在を確認する。
【0165】
膜電位色素(膜電位試薬キット、成分A、Molecular Devices社、R−7056)の原液は、キット中の色素1ボトルを、20mM HEPES(pH7.0)で補足されたダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)10mlに溶解することによって調製し、各1mlの部分に分割して、−80℃で保存する。色素添加緩衝液は、アッセイの当日に、384ウェルプレート1枚あたり色素ストック1mlを、20mM、pH7.0のHEPESで補足されたDPBS9mlで希釈することによって調製する。1ウェルあたりの20μlの色素添加緩衝液を、384ウェル細胞プレートに添加する。プレートを室温、すなわち約20〜25℃で1〜7hインキュベートする。インキュベーション中に、試験化合物の希釈液を化合物緩衝液(10mM EGTAを含む色素添加緩衝液;pH7.2)で調製する。
【0166】
その後、色素が添加された細胞プレートを、FLIPR384、FLEXstation、又は他の蛍光マイクロプレートリーダーに搭載し、蛍光マイクロプレートリーダーの説明書に従ってアッセイする。例えば、FLIPR384では、488nmの励起フィルターと540〜590nmの吸収フィルターとを使用し;FLEXstation及び他の蛍光マイクロプレートリーダーでは、色素の吸光及び蛍光の最大点に近い波長、例えば、Molecular Devices社の膜電位色素、R−7056には540nmの励起と560nmの蛍光とを使用する。試験化合物を溶解させた化合物緩衝液を、1ウェルあたり10μl添加し、結果を記録する。
【0167】
この実施例では、HTSプラットホーム、FLIPR(Molecular Devices社)にCNGチャンネルアッセイを適合させた。詳細には、CNGチャンネル(配列番号7)を発現する、安定的に形質転換されたHEK 293H細胞系をcAMPアッセイに用いた。細胞は、Multidrop 384ディスペンサー(Titertek Instruments,Inc.社)を用いて、MATRIGEL(Becton Dickinson社、354234)でコーティングされた384ウェルプレートに播種した。cAMP反応のCNGチャンネルアッセイにおけるウェル間変異性を、4分間の記録で評価し、図10に示した。記録開始の30秒後に、イソプロテレノール(最終濃度1μM)をカラム1〜12のウェルに添加し、対照として、化合物緩衝液を、カラム13〜24のウェルに添加した(図10)。図10A及び10Bでは、それぞれ、HEK293H−CNG細胞系及びCNGを欠失した親細胞系が使用された。イソプロテレノールに対する用量依存性反応を、別の記録で得た。様々な用量のイソプロテレノールに反応して得られた複数の蛍光軌跡を重ねあわせた(図10C)。データの一貫性は、図10Aのプレートから得られた1μMイソプロテレノールでの複数の反応曲線を重ねあわせることによって、図10Dに実証されている。
【0168】
(実施例8)
[HEK 293H−CNG細胞をカルシウム感受性色素と共に用いたカイネティックアッセイ]
細胞集団、例えば、HEK293又はHEK 293Hを安定的に形質転換して、CNGチャンネル、例えば配列番号7を発現させ、付着細胞又は懸濁液培養条件のいずれかにおいて樹立した。それらの細胞を収集し、10%FBSを含有するDMEM(高グルコース)中に1×10細胞/mlに調整する。384ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり20μlの細胞懸濁液を分注するか、あるいは、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μlの細胞懸濁液を分注し、アッセイ前に16〜24時間インキュベートする。アッセイの直前に、細胞プレートのウェルを顕微鏡で観察して、むらなく広がったコンフルエントな細胞集団の存在を確認する。
【0169】
カルシウム感受性色素Fluo−4 AM(Molecular Probes社、F−14202)を、DMSO中に4mM原液として調製し、−20℃で保存する。アッセイの当日に、原液をハンクス平衡塩類溶液(HBSS、pH7.2)中に最終色素溶液濃度を4μMまで希釈する。細胞への色素の添加は、ウェル内のDMEM+FBSをHBSS色素溶液で置換して、室温で1時間インキュベーションすることによって行う。インキュベーション中に化合物プレートを調製する。試験化合物は、HBS、又は10mM CaClで補足されたHBSで溶解させる。
【0170】
その後、色素が添加された細胞プレートを、FLIPR384、FLEXstation、又は他の蛍光マイクロプレートリーダーに搭載し、蛍光マイクロプレートリーダーの説明書に従ってアッセイする。
【0171】
この実施例では、CNGチャンネル(配列番号7)を発現する安定的に形質転換されたHEK 293H細胞系におけるカルシウム取込みをアッセイした。記録開始の30秒後に、最終濃度0.3、1.0、3.0、10.0、30.0、及び300.0nMのイソプロテレノールをウェルに添加した。対照ウェルには、緩衝溶液のみ添加した。イソプロテレノールに対する用量依存性反応を記録し、様々な用量のイソプロテレノールに反応して得られた複数の蛍光軌跡を重ねあわせて、図11に示した。
【0172】
(実施例9)
[単一細胞イメージングアッセイ]
この実施例では、CNG遺伝子(配列番号7)を発現する安定的に形質転換されたHEK 293H細胞を、電位感受性色素(Molecular Devices社、R−7056)を用いてアッセイした。細胞は、MATRIGELでプレコーティングされた96ウェルプレートに播種した。膜電位蛍光は、Pathway HTイメージングプラットホーム(ATTO社、Rockville、MD)で、同一の細胞で同一の期間にわたって記録した。任意決定の強度範囲を280〜650として、共焦点蛍光強度イメージを図12に示した。画像は、イソプロテレノールの添加前と、最終1μMに添加した15、30、及び45秒後に、図12Aに示した時間系列で取得した。50×50μmのイメージング領域1つを図12Aに示した。撮影された71細胞で得られた蛍光軌跡の平均を図12Bに示した。イソプロテレノールを添加した時間を矢印で示した。
【0173】
(実施例10)
[野生型サブユニット及び変異を含有するサブユニットからなるCNGチャンネルを用いた細胞内cAMPのアッセイ]
野生型α+βサブユニットのヘテロマーCNGチャンネル、様々な変異を含むαサブユニットのホモマーCNGチャンネル、又は、野生型αサブユニットのみのホモマーCNGチャンネルで一時的に形質導入された細胞における、cAMP上昇に対する相対蛍光反応を調査した。この実施例では、記録をとる2日前に、HEK293細胞を、野生型のラット嗅覚CNGチャンネルαサブユニット(NCBI LocusID25411、配列番号1)プラスβサブユニット(NCBI LocusID85258)、変異C460R/E583M、C460H/E583M、C460W/Y565A/E583M(配列番号7)、又はY565A(配列番号3)を含有するラット嗅覚CNGチャンネルαサブユニット、及びαサブユニット(NCBI Locus ID25411、配列番号1)のみで形質導入した。色素添加緩衝液含有膜電位色素(Molecular Devices社、R−7056)で細胞は室温でインキュベートされた。実施例8にある通りに、イソプロテレノールを化合物緩衝液で最終濃度300nMまで溶解させ、矢印で印した時に添加した(図13)。図13は、野生型のα及びβサブユニットで構成されたヘテロマーCNGチャンネルを発現する細胞におけるイソプロテレノール反応が、ホモマー野生型αサブユニットによって形成されたCNGチャンネル、又はC460R/E583M、C460H/E583M、C460W/Y565A/E583M、若しくはY565A変異を含有するαサブユニットホモマーを発現する細胞における反応より大きいか、あるいはそれらと同程度であることを示す(図13)。
【0174】
(実施例11)
[CNGチャンネルアッセイと、従来の転写アッセイ及びcAMP ELISAアッセイとの感度比較]
cAMP抗体の競合的結合、又はcAMP応答エレメント(CRE)によって調節されている遺伝子の転写の原理に基づいて、多数のcAMPアッセイ技法が開発された。cAMP特異的な抗体を用いたアッセイでは、cAMPをアッセイ媒体に放出するために細胞溶解を必要とする。その結果、細胞数が減少するのに従って、アッセイ感度が損なわれる。遺伝子レポーターアッセイでは、CREの転写が様々なシグナル伝達経路によって非特異的に影響を受ける場合があるので、偽陽性及び偽陰性の記録がより多いことが予測される。対照的に、CNGチャンネルアッセイは、従来の間接的なcAMPアッセイ技術に付随する問題を回避するために、細胞内cAMPの直接的な生理的リードアウトを提供する。CNGチャンネルは、原形質膜を標的とし、アデニリルシクラーゼと共局在するので、局所的なcAMP上昇の高感度の検出が可能である。CNGチャンネルアッセイにおける蛍光リードアウトは、単一の生存細胞の活性に由来するので、細胞数が減少しても、間接測定で起こりうるような、アッセイ感度の低下が起こらない。
【0175】
CNGチャンネルアッセイを、ELISAベースの抗cAMP抗体結合アッセイ(Amersham社製Biotrakキット、キットの指示に従って使用した)、及び96ウェルフォーマットの従来のCRE−ルシフェラーゼ遺伝子レポーターアッセイと比較した。フォルスコリンに対する用量反応曲線を、すべての3つのアッセイフォーマットに対して同一のリガンド濃度を用いて作成した。図14は、CNGチャンネルアッセイを用いると、反応曲線が全体として左に移行することを示し、CNGチャンネルアッセイでは、低濃度のフォルスコリンによって、ELISA及び遺伝子レポーターアッセイフォーマットにおけるものより有意に大きな反応が誘導されることを実証する。これはCNGチャンネルアッセイが、これら従来のcAMPアッセイより高感度であることを示す。
【0176】
(実施例12)
[異なったファミリーのGs共役GPCRのCNGチャンネルアッセイ]
Gs共役GPCRのカイネティックアッセイとしてのCNGチャンネルアッセイの感度を示すため、アッセイ用のGs共役GPCRを、クラスB(セクレチンファミリー)及びクラスA(例えば、生体内アミン、ペプチド、プロスタノイド、及びアデノシンの受容体が含まれる)から無作為に選択した。表1に記載するGPCRの同族作動薬による活性化を、CNGチャンネルアッセイを適用して検査した。CNGチャンネルアッセイは、これらすべてのGPCRのリードアウトに成功した。これは、Gs共役CPCRの活性化の正確な反応速度測定を、リガンドファミリーに関係なく提供するCNGアッセイの性能を実証するものである。他の薬理学分析とのそれらの関連性を例示するために、試験された3つのGPCRの用量反応曲線を図15に示した。
【0177】
【表1】

【0178】
(実施例13)
[無差別共役のGタンパク質及びGタンパク質キメラを用いたアッセイと比較したCNGチャンネルアッセイの有効性]
以前には、細胞内カルシウムの上昇を測定するのに、無差別共役のGタンパク質Gα16及びGタンパク質キメラGαqsを用いたカルシウム蛍光アッセイが使用されてきた。しかし、Gα16又はGαqsのいずれを用いたGPCR活性化測定も間接的である。何故なら、それらは両方とも、一部のGs共役GPCRの活性を、ホスホリパーゼCに媒介された細胞内カルシウムの上昇に再転換するためである。Gα16及びGαqsの共役効率は、Gs共役GPCR相互で異なるので、最終的なカルシウムシグナルリードアウトは受容体相互で異なっている。
【0179】
この実施例では、チラミン受容体の活性化をCNGチャンネルアッセイを用いて検査し、Gα16及びGαqsを用いたカルシウム蛍光アッセイと比較した。CNGチャンネル、Gα16、又はGαqsを含んだほぼ同量のプラスミドを、チラミン受容体も一時的に発現するHEK293細胞での一過性発現に使用した。Molecular Devices社提供のプロトコールに従って、カルシウムアッセイを行った。Gα16、Gαqs、及びCNGチャンネルをそれぞれ発現する細胞における反応の平均を得るために、それぞれのチラミン濃度について3回の記録をとった。図16に示す通り、チラミン受容体の活性化は、膜電位色素を用いたCNGチャンネルアッセイを使用すれば検出可能であるが、Gα16又はGαqsとカルシウム色素を用いたカルシウム蛍光アッセイでは検出できない(図16)。
【0180】
(実施例14)
[CNGチャンネルアッセイを適用した、GPCRの作動薬及び拮抗薬の同定]
CNGチャンネルアッセイは、GPCRリガンドを同定するのに用いることができる。この実施例では、β−アドレナリン受容体の作動薬又は拮抗薬である化合物を求めて、アドレナリン様化合物のパネルを探索するのに、CNGチャンネルアッセイを用いた。CNGチャンネル遺伝子(配列番号7)を発現する安定的に形質転換されたHEK293H細胞を96ウェルプレートに播種し、上記の実施例に記載した通りに培養した。図17Bに示す通り、96ウェルプレートのカラム1〜11に試験化合物のアレイをつくり、カラム12は、対照として緩衝液のみにした。記録開始の20秒後に、最終濃度1μMの試験化合物を細胞プレートに添加した。cAMPの上昇を誘起するために、開始120秒後に最終濃度10μMのイソプロテレノールを添加した。記録の継続時間は230秒であった。作動薬は、試験化合物の添加直後、かつイソプロテレノールの添加前における蛍光の増大を検出することによって同定した。図17Aにおいて、それらには中空の円で印が付けられている。拮抗薬は、イソプロテレノール刺激に対する細胞の反応の遅延又は消失によって同定し、図17Aでは中実の正方形によって印が付けられている。
【0181】
(実施例15)
[エンドポイントアッセイ]
CNGチャンネルアッセイは、エンドポイントアッセイを行うのに用いることもできる。CNGチャンネルの脱感作から引き起こされる蛍光反応の衰退は、細胞外カルシウムをEGTAでキレート化すること、及びホスホジエステラーゼの阻害剤を補足することによって効果的に排除された。CNGチャンネル遺伝子を発現する安定的に形質転換された細胞を384ウェルプレートに播種し、上記の実施例に記載した通りに培養した。フォルスコリンは、最終濃度30μMのEGTAを含有する化合物緩衝液中に溶解させた。フォルスコリン又は化合物緩衝液のみでインキュベートされた細胞の蛍光強度は、フォルスコリン刺激後の様々な時点に、FLEXstation(Molecular Devices社)を用いて測定した。フォルスコリンで処理したことによって、刺激の90分後に、5.3±0.5×10RFU(30μMフォルスコリン、n=192)の蛍光強度がもたらされたが、これは、1.9±0.1×10RFU(緩衝液対照、n=192)に対して、2.8倍の増大を表す。
【0182】
(実施例16)
[蛍光クエンチャーの同定]
色素クエンチャー(表1)の事前選択は、概して、それらの物理化学的特性、すなわち、(1)水溶性であること、(2)吸収スペクトルが蛍光指示薬の発光スペクトルと重なること、(3)自発蛍光が低いこと、及び、(4)細胞から完全に排除されること、すなわち細胞内の蛍光に影響を与えないことに基づいている(Sahlinら、1983年)。吸光色素クエンチャーによる細胞外蛍光の効果的な消光は、0.1〜10mMの濃度で実現される(図18)(Sahlinら、1983年、「Differentiation between attached and ingested immune complexes by a fluorescence quenching cytofluorometric assay」、J.Immunol.Methods 60:115−124;Wanら、1993年、「A rapid and simple microfluorometric phagocytosis assay」、J.Immunol.Methods 162:1−7)。正に帯電した色素は、負に帯電した蛍光電位色素であるHLB30602に対して、無細胞溶液中で大きな消光効果を有する(表2)。しかし、多くのクエンチャーは、細胞によってそれらが十分に排除されないため、細胞ベースのアッセイでの使用に適さない(Sahlinら、1983年)。例えば、知られている多数の正帯電色素クエンチャーの存在下では、細胞反応が完全に失われた(図19)。本発明の前には、細胞ベースのアッセイに対する干渉がほとんどないか、あるいは全くないクエンチャー色素を、その色素の分子構造又はその物理化学特性に基づいて選択するには、どうすればよいか知られていなかった。
【0183】
薬理学な干渉が最も少ない候補クエンチャーを同定するために、20対のリガンド−受容体ペアに対する色素クエンチャーの機能スクリーニングを行った(表3)。試験されたリガンドの化学的組成には、ペプチドと、アデノシン、脂質、モノアミンなどの有機小分子とが含まれる。記載した発明を用いてスクリーニングされたクエンチャーの中では、多くのものが、最大反応に影響を与えずにリガンドの効力(EC50)を低下させることが判明した。他のクエンチャーは、このアッセイで、最大反応を抑制するものとして同定された(ブロムフェノールブルー、図20、21)。トリパンブルー、HLB30701、HLB30702、及びHLB30703(図20、表2)など、多数の色素クエンチャーが、リガンドが小有機化合物であるアッセイでの使用に適している。しかし、本発明者らは、これらのクエンチャーのいくつかが、ペプチドリガンドに対するアッセイ反応を妨害することを発見した。
【0184】
例えば、トリパンブルーは、グルカゴンの効力を有意に低下させた(図22、23、表3)。本発明の機能スクリーニングで、ニトラジンイエロー(図25)及びニトロレッド(図26)が同定された。これらのクエンチャーは、ペプチド及び小分子リガンドの最も高感度のアッセイを提供することが判明した(表3)。例えば、ペプチドであるVIP及びGIPの用量反応曲線は、クエンチャーとしてニトラジンイエローを用いることによって、市販の電位色素アッセイキット(Molecular Devices社、R−8034)の中にある非開示のクエンチャーと比較して、約1桁、左に移行する(図23、24)。
【0185】
【表2】

【0186】
【表3】

【0187】
(実施例17)
[CNGチャンネル孔変異]
網膜及び嗅覚器組織からのCNGチャンネルは、タンパク質レベルで高い相同性を有する。しかし、それらのCNGチャンネルは、特異性が大きく異なり、それぞれcGMP又はcAMPに主として反応する。網膜のCNGチャンネルに関して発表されたいくつかの構造−機能研究によって、これらの特異性に影響を与える単一部位変化が開示された。他の論文は、活性化されたチャンネルを通過するイオンのアイデンティティ、又は環状ヌクレオチドに対するチャンネルの感度に影響を与える他の位置及び変化を開示した。これらの変化は、cAMPに対する特異性及び感度、並びに、ハイスループットスクリーニングでcAMPセンサーとして適用するための有効性を強化する試みにおいて、ラット嗅覚チャンネルCNGA2(以前には、rOCNC1と呼ばれた)に、変異の組合せを導入するための手引きを提供するものであった。選択された部位か、又はアミノ酸変化のアイデンティティのいずれかが、ラットCNGA2チャンネルでも、記載されたものと同様に機能するであろうかどうかは自明なことではなかった。また、それらの多重突然変異が、協調して機能することによって、望ましい累積的な効果が得られる、望ましい個別の効果を有する変異が同定されたかどうかも自明ではなかった。
【0188】
桿体のcGMP作動性チャンネルに関して公表された電気生理学データ(Eismannら、1994年、「A single negative charge within the pore region of a cGMP−gated channel controls rectification,Ca blockage,and ionic selectivity」、PNAS、91:1109−1113)に基づいていて、E342G及びE342N変異を、ラットCNGA2(ラットCNGA2の塩基配列については配列番号2を参照のこと)と、ウシ嗅覚CNGA2チャンネル(Gavazzoら、2000年、「A point mutation in the pore region alters gating,Ca blockage,and permeation of olfactory cyclic nucleotide−gated channels」、J.Gen.Physio.116:311−325)とに導入し、チャンネルを通過するカルシウム流動に影響を与えた。電位色素又はカルシウム検出色素を用いた場合、この位置に変異を有するラットCNGA2が、高処理量スクリーニングアッセイで、改善された信号雑音比を与えることが、本発明のCNGを使用することによって初めて示された。
【0189】
ラットCNGA2における他の2つの部位、すなわちC460及びE583(ラットCNGA2の塩基配列については配列番号2を参照のこと)で、いくつかのアミノ酸変化を生成させた。これらの2つの部位におけるアミノ酸の変異又は修飾は、cAMPに対するチャンネルの感度及び選択性を増大させることが示されている(Varnumら、1995年、「Molecular mechanism for ligand discrimination of cyclic nucleotide−gated channel」、Neuron 15:619−25;Brownら、1998年、「Movement of gating machinery during the activation of rod cyclic nucleotide−gated channels」、Biophys.J.75:825−833;Richら、2001年、「In vivo assessment of local phosphodiesterase activity using tailored cyclic nucleotide−gated channels as cAMP sensors」、J.Gen.Physio.118:63−77)。
【0190】
要約すると、ラットCNGA2チャンネルのいくつかの部位に変異を導入し、それらがアッセイのシグナル及び感度を増大させることを見出した。試験された変異には、E342G、E342N、E342D、E342Q、及びE342K;C460R、C460L、C460W、及びC460H;並びに、E583Q、E583M、E583V、E583A、E583L、E583F、及びE583Kが含まれる。これらの変異を含有するラットCNGA2チャンネルをHEK293細胞で一時的に発現した後、それらの機能を試験した。細胞外カルシウムの存在下に、アデノシンA2B受容体を発現する細胞を、作動薬であるNECAで処理した場合に、活発な反応を与えるものとして、E342G変異及びE342N変異が同定された。
【0191】
E342G変異を有するラットCNGA2を含有する安定細胞系を作製した。チャンネル孔変異体を用いたアッセイでは、膜電位感受性色素又はカルシウム感受性色素のいずれかを用いた際に、シグナル対バックグラウンド比が有意に改善されていることが判明した(図27)。チャンネル孔変異をもたないCNGチャンネルを用いたアッセイでは、チャンネル孔を通したカチオン流動を細胞外イオンが遮断するので、CNGチャンネルの活性化を介して媒介される電位変化を明らかにするためには、カルシウムイオンをキレート化するために、EGTAを含有させなければならない。本発明者らは、細胞外アッセイ溶液にEGTAを加えることによって、細胞膜がわずかに脱分極し、その結果、ベースラインの蛍光が約40%増大することを見出した。EGTAのこの効果は、貯蔵に応じて作用するカチオン流動の活性化によって生じるものかもしれない。CNGチャンネルを用いたアッセイでは、このベースラインドリフトが除去されたので、シグナルが約40%増大する。NECA及びイソプロテレノールの用量反応性の関係を、CNGの三重変異体(E342G、C460W、E583M)細胞系を用い、膜電位色素であるHLB30602を使用して取得した(図27、A、B)。EGTAは、他にも作用を及ぼし、それらには、細胞形態変化の誘導も含まれる。EGTAの存在下では、細胞が丸まり、培養基質から脱離を開始した。CNGチャンネル孔変異体の使用は、EGTAの使用に伴うこれらの問題を解決した。チャンネル孔変異は、カルシウム透過性の増大にも寄与するので、カルシウム色素を用いたアッセイが一層強力なものとなる。フォルスコリン及びPGE1の用量反応性の関係を、CNGの三重の変異体(E342G、C460W、E583M)細胞系を用い、カルシウム色素であるfluo−4を使用して取得した(図27、A、B)。
【0192】
さらに、部位342、460、及び583に変異を有するラットCNGA2誘導体を構築し、試験した。そのような変異体の1つであるE342G、C460R、E583Lは、いくつかの特有の特性を有する機能性のホモマーチャンネルを生成することが判明した。それらの特性には、(1)より高感度であること;(2)対雑音信号性能が改善されていること;(3)アッセイ条件が、Ca−キレート剤であるEGTAを使用する必要性を回避し、より生理的であること;及び(4)HTSオペレーションにおける化合物の送達を促進することが含まれる。
【0193】
(実施例18)
[Gi共役GPCRのアッセイ及びGs−iキメラの使用]
Gi共役受容体は、全GPCRの約45%を構成し、これは、HTSアッセイを開発するのが最も困難な受容体のグループでもある。Gi受容体はcAMP濃度を下方制御するので、それらの活性化を検出するアッセイは、通常、フォルスコリン又はGs共役受容体の活性化によるcAMPの上方制御の抑制に基づく。この上方制御/下方制御の均衡は、微妙であり、かつ受容体に依存するものであり、その結果、現在のcAMPアッセイでは、Gi受容体活性化のための適切な検出ウィンドウが得られないことが多い。Gi共役GPCRの伝統的な機能性cAMPアッセイは、通常、アデニリルシクラーゼ(AC)をフォルスコリンで刺激するか、Gs共役受容体をその作動薬で活性化して、その後、cAMP濃度を低下させるために、Gi共役受容体を活性化することによって行う。この種のアッセイは、受容体の活性化が、高レベルに活性化された蛍光シグナルを引き戻すものであるので、比喩的に「逆向アッセイ」と呼ばれる。本発明者らのリアルタイムcAMPアッセイは、AC活性化と、それに続くDRD2受容体活性化との全過程の毎秒おきの検査を可能にした(図28A)。PDE阻害剤なしで、細胞をフォルスコリンによって刺激し、その後、ドーパミンを添加した。ドーパミンの添加は、フォルスコリンで誘導された蛍光シグナルを直ちに低下させ、約7分以内にフォルスコリンの前のレベル近くまで引き戻す(図28A)。図28Aは、96ウェルプレート中で、FLEXstationプレートリーダーを用いて測定されたCNG−DRD2細胞系のドーパミンに対する動態反応を示す。1μMのドーパミンに対する最大反応には、約400秒以内に到達した。
【0194】
反応速度分析に加えて、細胞をフォルスコリン及びドーパミンと共に同時に15分間インキュベートし、それに続いて、蛍光シグナルを測定することによって、エンドポイントデータも取得した(図28B)。図28Bは、96ウェルプレート中で、FLEXstationプレートリーダーを用いて測定したCNG−DRD2細胞のエンドポイントアッセイの結果を示す。PDE阻害剤の非存在下に、細胞を、10μMのフォルスコリン及び様々な濃度のドーパミンで処理した。蛍光示度は、ベースライン用に化合物添加の前に取得し、化合物添加の15分後に誘導用に取得した。
【0195】
代替アプローチとして、本発明者らは、人工的なGs−iキメラタンパク質を介して、アデニリルシクラーゼを活性化するように、Gi共役受容体の再転換を行い、Gs共役受容体に関して「順方向アッセイ」を形成させる(Komatsuzakiら、1997年、FEBS Lett 406:165−70;Drewら、2002年、Biochim Biophys Acta 1592:185−92)。これを実現するために、本発明者らは、キメラGタンパク質のコレクション、すなわち、Gs−i1、Gs−i3、Gs−iz、及びGs−ioを構築し、導入した。このアプローチは、あまり生理的ではないが、アッセイシグナルを改善し、かつアッセイ手順を単純化し、それによって、他の方法では難しいある種のGi標的に対するHTSを可能にする。Gs−iアプローチは、HTSに広く採用されているGq−iアプローチ(Milligan及びRees、1999年、TiPS 20:118−124)に類似したストラテジーである。さらに、CNG−cAMP技法は、シグナル振幅及びシグナル安定性の改善を含めた、FLIPRによるGq共役アッセイより優れたいくつかの追加の利点を有する。そのような安定した蛍光シグナルは、標準的な蛍光プレートリーダーで検出することができ、この技法のより広範な適応を可能にする。
【0196】
キメラGs−iタンパク質はN末端Gsを含み、C末端最終の5アミノ酸残基が、Gi1(DCGLF;配列番号20)、Gi3(ECGLY;配列番号21)、Gio、(GCGLY;配列番号22)及び、Giz(YIGLC;配列番号23)タンパク質に由来するもので置換されている。このストラテジーの可能性を評価するために設計された実験で、本発明者らは、Gs−i3キメラG−タンパク質を構築した。HEK293−CNGA2CEバックグラウンドに、Gs−i3及びソマトスタチン受容体5(SSTR5)を同時形質導入することによって、本発明者らは、SSTR5に依存した蛍光シグナルの増大を動態研究で観測した。これは、Gi共役型のSSTR5が、Gs経路に転向され、その結果、細胞cAMPの増大が起きたことを示す(図28C)。一時的に形質導入されたSSTR5受容体の反応の振幅は、Gs受容体のものと同程度であった。図28Cは、Gi共役SSTR5受容体及びGs−i3キメラGタンパク質で一時的に同時形質導入されたHEK293H−CNG細胞系における、ソマトスタチン(SST)に対する動態反応を示す。記録はFLEXstationを用いて96ウェルプレート中で行った。細胞はMP色素を用いて標識した。ソマトスタチンで刺激した後、FlexStationを用いて蛍光強度を3分間記録した。
【0197】
本発明者らは、HEK293H−CNGA2細胞におけるSSTR5::Gs−i3安定細胞系も樹立した。この細胞系のアッセイは、Gs−i3がGi共役SSTR5をGs経路を介して転向しうることのみならず、そのシグナルの振幅がGs受容体細胞系のものに匹敵することも明らかにした(図28D)。図28Dは、CNG、SSTR5、及びキメラGs−i3タンパク質を安定的に発現する細胞系であるHEK293H−CNG:SSTR5::Gs−i3の、ソマトスタチン(SST)に対する反応のエンドポイントアッセイの結果を示すグラフである。記録はFLEXstationを用いて384ウェルプレート中で行った。細胞はMP色素を用いて標識した。蛍光強度は、様々な濃度のソマトスタチンを添加する前(F)、及び添加した10分後(F10)に記録した。用量反応曲線は、データをヒル等式にあてはめることによって、作成した。
【0198】
(実施例19)
[蛍光活性化細胞選別装置(FACS)へのCNG cAMPアッセイの適用]
FACS分析及び細胞選別は、臨床研究及び基礎研究の両方で広範に使用されている。セカンドメッセンジャーであるcAMPの測定は、抗原、ホルモン、及び他の様々な化学的刺激及び物理的刺激に対する、細胞の生物反応の迅速な機能アッセイを提供できる。現在のところ生存細胞の中のcAMP濃度をFACSを用いて測定するのに利用できるいかなる有効なアプローチも存在せず、また、cAMPのための小分子指示体もない。さらに、伝統的なcAMP競合イムノアッセイは、単一細胞に対して感受性をもたず、細胞を溶解させる必要があるので、FACSには適用することができない。従って、ここでは、cAMPセンサーとしてのCNGチャンネルの使用と、カルシウム色素及び膜電位色素の使用とを併用する方法を記述する。細胞の[Ca2+及び膜電位のモニターにFACSを用いるプロトコールは確立されており、CNGチャンネル活性をモニターするために、容易に採用することができる(Lazzarら、1986年、J Biol Chem、261:9710−9713;Shapiro、2000年、Methods、21:271−279)。
【0199】
FACSによる生存細胞内cAMPのモニターにCNG技術を適用にするのを容易にするためには、アッセイされるべき細胞でCNGチャンネルを迅速に発現させるプロトコールを開発することが望ましい。市販のcDNAリポソーム形質導入キット(例えば、リポフェクトアミン(商標)2000、FuGENEなど)を用いた場合、CNGチャンネルを発現するのに約2〜3日かかる。さらに、これらの市販キットを用いた形質導入効率は、これらのキットを用いる細胞型に応じて変動的である。従って、これらの現在の形質導入方法が提供するCNGセンサー技術の利用は、極めて限定されたものでしかない。CNGチャンネルを発現するためのアデノウイルスの使用が試みられている(Faganら、2001年、FEBS Lett.500:85−90)。細胞は、アデノウイルスCNGチャンネルを感染させてから約24時間後にアッセイすることができる。CNGチャンネルのより迅速な発現を可能にする方法は、生存細胞内のcAMPのFACS分析にさらに有用である可能性がある。そのような方法は、アッセイ時間を短縮するのみでなく、CNG発現の潜在的な毒素産生作用及びアポプトーシス作用も回避するであろう。エレクトロポレーションプロトコールを用いたRNA形質導入によって、GFPタンパク質の定量的な発現が確立されている(Teruelら、1999年、J Neurosci Methods、93:37−48)。このRNA形質導入法は、CNGの迅速な発現を可能にし、細胞試料のcAMPアッセイを8時間以内に行うのを可能にするであろう。アッセイされるべき細胞でCNGを迅速に発現するために、他の遺伝子送達法も開発及び適用することができる(Kanedaら、2002年、Mol Ther.、6:219−226を参照のこと)。
【0200】
(実施例20)
[CNGチャンネル技術を用いた、受容体脱オーファン化及び化合物プロファイリングのための、Gs、Gi、及びGq GPCRの同時スクリーニング]
750を超えるヒトGPCR遺伝子のうち、少なくとも367が内因性リガンドに結合すると予測されている。このグループの中では、224のGPCRに関してリガンドが同定されており、リガンドも機能も知られていない、残り143のオーファン受容体が残されている(Vassilatisら、2003年、Vassilatis DK、「The G protein−coupled receptor repertoires of human and mouse」、Proc Natl Acad Sci USA;2003年;100:4903−4908)。市販されている全薬物のうち約40%が、わずか30のGPCRを標的としたものなので、機能の特徴付けが行われていないGPCRのプールの中には、まだ相当数の潜在的にドラッガブルなGPCR標的が存在すると推論するのが合理的である。従って、受容体脱オーファン化[オーファン受容体のリガンド(作動薬又は拮抗薬)、共役Gタンパク質、及び機能の同定]を可能にするアッセイが、創薬において活発に探求されている。本明細書に記載したCNG技術は、普遍的なカルシウムリードアウトフォーマットによるオーファンGPCR受容体のスクリーニングを可能にする新規かつ有利なツールを代表するものである。
【0201】
以下に実証されるように、オーファンGPCR DNA(内在性受容体、又は一時的若しくは安定的に形質導入された外因性受容体)を発現するHEK 293−CNG細胞は、受容体がGq、Gs、又はGiと機能的に共役しているかどうか直接的に試験することができる。その反応、詳細にはその反応のカイネティクスに基づいて、活性されたオーファン受容体の同定と、Gタンパク質共役の決定との両方を行うことが可能である。さらに、このアプローチは、他の方法では、カルシウムシグナルを生成しないであろうGs/i GPCRへの「人工的」な連結を提供する、無差別共役のGタンパク質(例えばGα16)の導入を必要としない。好ましい一実施形態では、このアプローチは、機能的なCNGを導入することができる広範な細胞型において、内在性受容体の同定、脱オーファン化、及びその共役の同定に用いることができる。
【0202】
このモデルを試験するために、外因性のGi共役D2ドーパミン受容体(LocusID 1813)を安定的に発現するHEK 293−CNG(配列番号8)細胞を用いるプロトコールを設計した。細胞を96ウェルプレートに播種し(15000細胞/ウェル)、終夜培養し、そして、蛍光カルシウム指示体であるFura−2(5μM)で標識した。液体分注機能を有する自動化イメージングプラットホームであるPathwayHT(Atto Bioscience社)を用いて、単一細胞のカルシウム動態イメージングを行った。Gq共役GPCRの活性化は、細胞内カルシウム貯蔵の放出をもたらす。対照的に、Gs共役受容体の活性化は、アデニリルシクラーゼを刺激して、環状AMP(cAMP)レベルの上昇をもたし、一方、Gi共役受容体は、アデニリルシクラーゼを抑制して、cAMP濃度を低下させる。
【0203】
図29に示すように、内在性Gq共役ムスカリン受容対を活性化する第1の化合物(1)、この場合はカルバコール(100μM)を添加すると、急速かつ一過性のカルシウムの上昇(Gqによって媒介された内部カルシウム放出の特徴)を誘導し;内在性のGs共役GPCRであるβ−アドレナリン受容体を活性化(この場合、イソプロテレノール、1μM)すると、より緩徐であるが持続的なカルシウム反応(cAMPによって活性されたCNGチャンネルを通るカルシウム流入による)を引き起こし、一方、Gi共役D2ドーパミン受容体を活性化(この場合、300nMドーパミン)するか、又は、化合物緩衝液のみを添加した場合には、カルシウムレベルは影響を受けない。続いて、既知のcAMP作動薬(2)[この場合3μMフォルスコリン、アデニリルシクラーゼ(AC)を直接活性化する]を添加した場合、対照(化合物緩衝液のみ)ではcAMP濃度の上昇が観測されるが、Gi共役D2受容体も活性化されている場合には観測されない(活性化されたGiがアデニリルシクラーゼを抑制するならば予測されるであろう)。シグナルの減少の程度は、第1の試験化合物の効力に比例すると予測される。
【0204】
この例では、ACを直接刺激することによって、cAMP濃度が誘導されたが、いかなるGs共役受容体の活性化も、このアッセイでACを活性化するのに使用できたであろうことが、当業者には明らかであろう。Gq−GPCRで観測された第1の一過性カルシウム増加の後に、持続的なカルシウム反応が続くのがさらに観測される場合がある(ACの活性化の結果であるcAMP濃度の上昇と、それに続くCNGの活性化による)。Gs−GPCRの場合には、第1のカルシウム反応は、影響を受けないか(例えば、ここで示されている場合のように、第1のリガンドが、cAMP活性化に向けて最大の効力/有効性を示す)あるいは、さらに促進される。本発明者らは、クエンチャーの存在によって、カルシウムイメージングが影響を受けない(信号対雑音/感度)ことをさらに示した。従って、CNG−293細胞を用いたGs/Gi/Gqスクリーニングは、操作性及び速度を実質的に増強する、単純な2ステップホモジニアスフォーマット(色素添加及び化合物添加、洗浄を必要としない)として有望である。従って、本発明は、受容体共役の単純な2ステップ脱オーファン化及び測定を可能にする。
【0205】
別の好ましい実施形態では、本発明は、リガンドプロファイリングスクリーニングに適している。この適用では、GPCRの複数のコレクション、通常は、複数の受容体ファミリーに対する、化合物の作用(作動薬/拮抗薬/アロステリックモジュレーター)を試験する。上述のように、対象の受容体を発現する細胞を化合物と接触させて、その反応を評価することによって、作動薬、作動薬の阻害剤、又は、作動薬若しくは拮抗薬のモジュレーターについて調査することができる。各反応カイネティクスは、作動薬/拮抗薬又はモジュレーターのみでなく、共役に関する指標でもあるので、脱オーファン化及び受容体共役の結果を追加するコンビナトリアルアッセイを開発することもできる。
【0206】
さらに別の実施形態では、本発明を用いたイメージングベースの脱オーファン化スクリーニング又はリガンドプロファイリングスクリーニングを、96ウェルプレート中、384ウェルプレート中、又は1536ウェルプレート中で行うか、あるいは、細胞マイクロアレイプラットホームで実施することができる(この場合、複数のGPCR遺伝子が空間的に個別の位置に導入され、細胞がそれらのDNA上で増殖することによって、細胞集団のアレイが提供され、1スポット内にある各集合は異なったGPCRを含有することができる。前記アレイは、マイクロタイタープレートの同一ウェル内に作製することができる)。このアプローチは、脱オーファン化スクリーニング及びリガンドプロファイリングスクリーニングを含めた、本発明を使用する受容体アッセイに、かつてない速度と多重性とを提供するものである。
【0207】
上記の実施例に関して、本発明を詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱せずに、様々な変更を加えることができると理解される。従って、本発明は、添付された特許請求の範囲によってのみ限定される。本出願で参照した、すべての引用された特許、特許出願、及び刊行物を、全体として参照により本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】GPCRからCNGチャンネルへのシグナル伝達経路を示す図である。
【図2A】内在性GPCRのリガンドで刺激される前に、変異型ラットCNGチャンネル遺伝子(配列番号3)で形質導入されたHEK239細胞の写真を示す図である。
【図2B】Gs共役受容体である内在性β2−アドレナリン受容体を活性化するノルエピネフリン(NE)で刺激した後の細胞を示す図である。シグナルは、カルシウム感受性蛍光色素であるFura−2(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン)を用い、蛍光顕微鏡を使用することによって検出される。
【図2C】100個の細胞の細胞内Ca2+濃度の結果を、ATTOグラフ(ATTO社、メリーランド州ロックビル)を用いることによって、時間の関数として統合的に示した図である。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するプラスミドを、CNG遺伝子と共に宿主細胞に形質導入した。
【図3A】変異型CNGチャンネル遺伝子(配列番号5)で形質導入され、さらに、cAMPの蓄積とCNGチャンネルの活性化とがもたらす内在性のGs共役β2−アドレナリン受容体のリガンドで刺激された細胞の細胞内Ca2+濃度を、時間の関数として示すグラフである。濃度の測定は、市販のマイクロプレートリーダーによって細胞内の色素(Fura−2)の蛍光を測定することによって行った。
【図3B】CNGチャンネルで形質導入され、さらに、貯蔵された細胞内Ca2+の動員をもたらすGq共役GPCRを活性化するリガンドで刺激された細胞の細胞内Ca2+濃度を、時間の関数として示すグラフである。
【図4】変異型CNGチャンネル遺伝子(配列番号7)で形質導入され、さらに、CNGの活性化がもたらす直接的なアデニリルシクラーゼ活性化物質であるフォルスコリンによって刺激された細胞の膜電位を、時間の関数として示すグラフである。膜電位の測定は、市販されている電位感受性色素キットをマルチウェルプレートリーダー中で用いて行った。
【図5】変異型CNGチャンネル遺伝子(配列番号5)で形質導入され、cAMPの産生とCNGチャンネルの活性化をもたらす内在性のGs共役β2−アドレナリン受容体のリガンドで刺激された細胞の膜電位を、時間の関数として示すグラフである。膜電位の測定は、市販されている電位感受性色素キットをマルチウェルプレートリーダー中で用いて行った。
【図6】三重変異体CNGチャンネル遺伝子(配列番号7)で形質導入され、示されている濃度における、CNGチャンネルの活性化をもたらす内在性のGs共役β2−アドレナリン受容体のリガンドで刺激された細胞の膜電位を、時間の関数として示すグラフである。膜電位の測定は、市販されている電位感受性色素キットをマルチウェルプレートリーダー中で用いて行った。
【図7】変異型CNGチャンネル遺伝子(配列番号7)と、異種性のGs共役GPCRであるドーパミン受容体D1の両方で形質導入され、さらにドーパミンで刺激された細胞の膜電位を、時間の関数として示すグラフである。膜電位の測定は、市販されている電位感受性色素キットをマルチウェルプレートリーダー中で用いて行った。
【図8A】ヒトCNGチャンネルであるCNGA1(配列番号9)、CNGA2(配列番号10)、CNGA3(配列番号11)、CNGB1(配列番号12)、CNGB2(配列番号13)、及びCNGB3(配列番号14)の配列アラインメントを示す図である。この多重アラインメントのコンセンサス配列も示されている(配列番号19)。
【図8B】ヒトCNGチャンネルであるCNGA1(配列番号9)、CNGA2(配列番号10)、CNGA3(配列番号11)、CNGB1(配列番号12)、CNGB2(配列番号13)、及びCNGB3(配列番号14)の配列アラインメントを示す図である。この多重アラインメントのコンセンサス配列も示されている(配列番号19)。
【図8C】ヒトCNGチャンネルであるCNGA1(配列番号9)、CNGA2(配列番号10)、CNGA3(配列番号11)、CNGB1(配列番号12)、CNGB2(配列番号13)、及びCNGB3(配列番号14)の配列アラインメントを示す図である。この多重アラインメントのコンセンサス配列も示されている(配列番号19)。
【図9A】以下の哺乳動物、すなわち、ヒト(配列番号10)、ラット(配列番号2)、マウス(配列番号15)、ウサギ(配列番号16)、及び雄ウシ(配列番号17)のCNGA2チャンネルの配列アラインメントを示す図である。この多重アラインメントのコンセンサス配列も示されている(配列番号18)。
【図9B】以下の哺乳動物、すなわち、ヒト(配列番号10)、ラット(配列番号2)、マウス(配列番号15)、ウサギ(配列番号16)、及び雄ウシ(配列番号17)のCNGA2チャンネルの配列アラインメントを示す図である。この多重アラインメントのコンセンサス配列も示されている(配列番号18)。
【図10A】1μMのイソプロテレノールに対するHEK293H−CNG細胞の反応を示す図である。
【図10B】1μMのイソプロテレノールに対する非形質転換体であるHEK293H親細胞の反応を示す図である。
【図10C】0(対照)、1nM、3nM、10nM、30nM、0.1μM、0.3μM、及び1μMのイソプロテレノールに対するHEK293H−CNG細胞の用量反応曲線を示す図である。
【図10D】CNG活性化の測定におけるウェル相互の読み取り一貫性を示す図である。
【図11】0(対照)、0.3、1、3、10、30、及び300nMのイソプロテレノールに対するHEK293H−CNG細胞の用量依存的なカルシウム取込みを示す図である。
【図12】図12Aは、1μMのイソプロテレノールを添加する直前、並びに添加の15、30、及び45秒後における、同一生存細胞の電位感受性蛍光を示す図である。図12Bは、撮影された71細胞の、バックグラウンド修正された平均蛍光を示す図である。
【図13】野生型ヘテロマー(α+β)サブユニット、野生型ホモマー(α)サブユニット、又は1箇所(Y565A)、2箇所(C460R/E583M、C460H/E583M)、又は3箇所(C460W/Y565A/E583M)の置換変異を含む変異体ホモマーCNGチャンネルで構成されたCNGチャンネルの感受性を示す図である。
【図14】CNGチャンネルアッセイと、従来のCRE及びELISAアッセイとの間の比較を示す図である。各アッセイフォーマットを、フォルスコリン刺激に対する用量反応性として示す。
【図15】様々なリガンドのGPCRの活性化に対するCNGチャンネルアッセイの感度を示す図である。代表的な用量反応曲線は、それぞれ、作動薬であるPTHrP(ペプチド)、ヒスタミン(モノアミン)、及び5HT(モノアミン)に対する、副甲状腺ホルモン受容体1(PTHR1)、ヒスタミン受容体H2(HRH2)、及び5−ヒドロキシトリプタン4受容体(5−HT4)の反応に関するものである。
【図16】チラミン受容体の活性化を検出するための、膜電位色素を用いたCNGチャンネルアッセイ、及び無差別共役のGタンパク質(Gα16)又はキメラGタンパク質(Gαqs)を用いたカルシウムアッセイの用量反応性の比較を示す図である。
【図17A】図17Bに示すアドレナリン様化合物のパネルに対するHEK293H−CNG細胞の反応を示す図である。
【図17B】アドレナリン様化合物のパネルを示す図である。
【図18】膜不透性吸光色素であるエバンスブルーによる細胞外蛍光の濃度依存的な消光を示すグラフである。濃度依存的な蛍光消光は、シュテルン−ホルマーの式に適合する。大部分の測定蛍光量は、細胞外色素蛍光が寄与するものなので、図中の滑らかな曲線は、総蛍光に対する最も良い非線形適合となっている。消光半減濃度は0.38g/Lであり、これは0.34mMのエバンスブルーに相当する。
【図19】正電荷を有する色素クエンチャーがいかに細胞反応を妨害しうるかを示すグラフである。CNGチャンネル及びグルカゴン受容体ASC0089を発現する安定的な293H細胞系に、5μMの電位色素HLB30602を室温で1時間、クエンチャー色素の存在下に添加した。グルカゴンに対する細胞反応は、正電荷を有する色素クエンチャーである、アシッドバイオレット17(AV17)、ジアジンブラック(DB)及びHLB30818を用いた際に消失した。トリパンブルー(TB)は、負に帯電した色素である。
【図20】HLB30701、HLB30702、HLB30703、及びトリパンブルーを含めた、事前に選択された負帯電色素クエンチャーのほとんどが、作動薬であるNECAに対するアデノシン受容体A2Bの反応のアッセイに適していることを示すグラフである。しかし、負帯電色素であるブロムフェノールブルー(BpB)は、NECAの効力に影響を与えずに、NECA反応を低減させた。
【図21】グルカゴン刺激に対する反応が、色素クエンチャーであるHLB30702、トリパンブルー(TB)、及びブロムフェノールブルー(BpB)によって妨害されたことを示すグラフである。トリパンブルーは、最大反応を抑制しなかったが、クエンチャーであるHLB30701、HLB30703、及びMolecular Devices社製の市販の色素キット(MDC、カタログ番号R−8034)と比較して、グルカゴンの効力を約1桁低下させた。
【図22】クエンチャー色素の存在下におけるグルカゴンの用量反応性を示すグラフである。細胞系:ASC0089(GCGR)。グルカゴンの効力は、クエンチャーとしてニトラジンイエローを用いることによって増大した。
【図23】クエンチャー色素の存在下におけるVIPの用量反応性を示すグラフである。細胞系:ASC0145(VIP2R)。VIPの効力は、クエンチャーとしてニトラジンイエローを用いることによって、Molecular Devices社製の市販の色素キット(MDC、カタログ番号R−8034)を使用した場合と比較して、1桁を越える増大を示した。
【図24】クエンチャー色素の存在下におけるGIPの用量反応性を示すグラフである。細胞系:ASC0133(GIPR)。GIPの効力は、クエンチャーとしてニトラジンイエローを用いることによって、Molecular Devices社製の市販の色素キット(MDC、カタログ番号R−8034)を使用した場合と比較して、1桁の増大を示した。
【図25】ニトラジンイエローの化学式を示す図である。
【図26】ニトロレッドの化学式を示す図である。
【図27A】CNGA2変異体(E342G、C460W、E583M)を発現する安定的なHEK293細胞系を用いたアッセイ結果を示す図である。孔変異E342Gを有するCNGチャンネルと共に電位色素を用いたアッセイでは、細胞外空間からカルシウムを除去するために、EGTAを添加する必要性はもはやない。電位色素を用いたアッセイは、0.9−2mMの細胞外カルシウムの存在下、化合物をDPBS中に溶解して行った。
【図27B】CNGA2変異体(E342G、C460W、E583M)を発現する安定的なHEK293細胞系を用いたアッセイ結果を示す図である。孔変異E342Gを有するCNGチャンネルと共に電位色素を用いたアッセイでは、細胞外空間からカルシウムを除去するために、EGTAを添加する必要性はもはやない。電位色素を用いたアッセイは、0.9−2mMの細胞外カルシウムの存在下、化合物をDPBS中に溶解して行った。
【図27C】CNGA2変異体(E342G、C460W、E583M)を発現する安定的なHEK293細胞系を用いたアッセイ結果を示す図である。孔変異E342Gを有するCNGチャンネルと共に電位色素を用いたアッセイでは、細胞外空間からカルシウムを除去するために、EGTAを添加する必要性はもはやない。孔変異E342Gを有するCNGチャンネルと共にカルシウム色素を用いるアッセイでは、30mMのCaClを含有する培地中に化合物を溶解させ、CaClの最終濃度が約8mMとなるようにした。
【図27D】CNGA2変異体(E342G、C460W、E583M)を発現する安定的なHEK293細胞系を用いたアッセイ結果を示す図である。孔変異E342Gを有するCNGチャンネルと共に電位色素を用いたアッセイでは、細胞外空間からカルシウムを除去するために、EGTAを添加する必要性はもはやない。孔変異E342Gを有するCNGチャンネルと共にカルシウム色素を用いるアッセイでは、30mMのCaClを含有する培地中に化合物を溶解させ、CaClの最終濃度が約8mMとなるようにした。
【図28A】FLEXstationプレートリーダーを用いて96ウェルプレート中で測定されたCNG−DRD2細胞系におけるドーパミンに対する動態反応を示すグラフである。
【図28B】FLEXstationプレートリーダーを用いて96ウェルプレート中で測定された、CNG−DRD2細胞のエンドポイントアッセイの結果を示すグラフである。
【図28C】Gi共役SSTR5受容体及びGs−i3キメラG−タンパク質で同時にトランジェントに形質導入されたHEK293H−CNG細胞系におけるソマトスタチン(SST)に対する動態反応を示すグラフである。記録はFLEXstationを用いて96ウェルプレート中で行った。
【図28D】CNG、SSTR5、及びキメラGs−i3タンパク質を安定的に発現する細胞系であるHEK293H−CNG:SSTR5::Gs−i3の、ソマトスタチン(SST)に対する反応のエンドポイントアッセイの結果を示すグラフである。記録はFLEXstationを用いて384ウェルプレート中で行った。
【図29】Gq、Gs、及びGi−GPCRを活性化した後のカルシウム反応を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異型の環状ヌクレオチド作動性(CNG)チャンネルをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、
(a)2価のカチオンに媒介された、カチオン流動の遮断、を低減する少なくとも1つの変異と、
b)チャンネルを、変異を含まないチャンネルよりもcAMPに対して高感度にする少なくとも1つの変異と、
を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記CNGチャンネルは、CNGA2である、請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記CNGA2チャンネルは、ラットCNGA2である、請求項2記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
2価カチオンに媒介されたカチオンの遮断を低減する前記少なくとも1つの変異は、E342G及びE342Nからなる群から選択される、請求項3記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
チャンネルを、変異を含まないチャンネルよりもcAMPに対して高感度にする前記少なくとも1つの変異は、C460R、C460H、及びE583Lからなる群から選択される、請求項3記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
プロモーターに作動可能に連結した請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド、を含むベクター。
【請求項7】
前記ベクターは、発現プラスミド、レトロウイルス、及びアデノウイルスからなる群から選択される、請求項6記載のベクター。
【請求項8】
請求項1記載の単離されたポリヌクレオチドを含む第1の核酸、を含む宿主細胞。
【請求項9】
前記宿主細胞は、BHK細胞、マウスL細胞、ジャーカット細胞、153DG44細胞、HEK細胞、CHO細胞、PC12細胞、ヒトTリンパ球細胞、Cos−7細胞、及び初代培養細胞からなる群から選択される、請求項8記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記単離されたポリヌクレオチドは、宿主染色体に安定的に組み込まれている、請求項8記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記宿主細胞は、少なくとも第1の内在性GPCRを発現する、請求項8記載の宿主細胞。
【請求項12】
第2のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含む第2の核酸をさらに含み、
前記第2のポリヌクレオチドは、異種のGタンパク質共役受容体(GPCR)をコードする配列を含む、
請求項11記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記内在性GPCRは、過剰発現している、請求項11記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記第1の核酸及び前記第2の核酸は、1個の分子又は異なった分子、の一部である、請求項12記載の宿主細胞。
【請求項15】
前記第1の核酸及び前記第2の核酸のうち少なくとも1つは、ウイルス及びプラスミドからなる群から選択される、請求項12記載の宿主細胞。
【請求項16】
前記第1の核酸及び前記第2の核酸のうち少なくとも1つは、細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項12記載の宿主細胞。
【請求項17】
前記第1の核酸及び前記第2の核酸のうち少なくとも1つは、細胞のゲノムの一部ではない、請求項12記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記宿主細胞は、哺乳動物の細胞である、請求項11記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記宿主細胞は、BHK細胞、マウスL細胞、ジャーカット細胞、153DG44細胞、HEK細胞、CHO細胞、PC12細胞、ヒトTリンパ球細胞、Cos−7細胞、及び初代培養細胞からなる群から選択される、請求項18記載の宿主細胞。
【請求項20】
前記環状ヌクレオチド作動性チャンネルは、変異型CNGチャンネルであり、
チャンネルを、その変異を含まないチャンネルよりcAMPに対して高感度にする少なくとも2つの変異を含む、
請求項11記載の宿主細胞。
【請求項21】
前記環状ヌクレオチド作動性チャンネルは、変異型CNGチャンネルであり、
チャンネルを、その変異を含まないチャンネルよりcAMPに対して高感度にする少なくとも3つの変異を含む、
請求項20記載の宿主細胞。
【請求項22】
前記CNGチャンネルは、CNGA2である、請求項8記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記CNGA2チャンネルは、ラットCNGA2である、請求項22記載の宿主細胞。
【請求項24】
2価カチオンに媒介されたカチオンの遮断を低減する前記少なくとも1つの変異が、E342G及びE342Nからなる群から選択される、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
チャンネルを、変異を含まないチャンネルよりcAMPに対して高感度にする前記少なくとも1つの変異は、C460R、C460H、及びE583Lからなる群から選択される、請求項24記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記宿主細胞は、CNGA4及びCNG4.3からなる群から選択される少なくとも1つの付加的なCNGサブユニットをさらに発現する、請求項8記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記第2のポリヌクレオチドは、変異導入又は末端切除された、Gタンパク質共役受容体をコードする配列、を含む、請求項12記載の宿主細胞。
【請求項28】
第3のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含む第2の核酸をさらに含み、
前記第3のポリヌクレオチドは、前記少なくとも1つの内在性GPCRと相互作用するGタンパク質をコードする配列を含む、
請求項11記載の宿主細胞。
【請求項29】
第3のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含む第3の核酸をさらに含み、
前記第3のポリヌクレオチドは、前記内在性GPCR及び異種GPCRのうちの少なくとも1つと相互作用するGタンパク質をコードする配列を含む、
請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記Gタンパク質は、G、G、G、Golf、G、G12、及びGs−iキメラGタンパク質からなる群から選択される、請求項28記載の宿主細胞。
【請求項31】
キメラGタンパク質、異種Gタンパク質、及び異種アデニリルシクラーゼをコードする配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドをさらに含む、請求項11又は12記載の宿主細胞。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチドをコードする配列のうち少なくとも2つは、単一のベクター上にある、請求項31記載の宿主細胞。
【請求項33】
前記ベクターは、プラスミド又はウイルスからなる群から選択される、請求項32記載の宿主細胞。
【請求項34】
前記アデニリルシクラーゼは、アデニリルシクラーゼタイプV及びタイプVIからなる群から選択される、請求項31記載の宿主細胞。
【請求項35】
cAMPの細胞内濃度の変化を検出する方法であって、
(a)請求項1記載のポリヌクレオチドを細胞に発現させるステップと、
(b)チャンネルの活性を測定するステップと、
を含み、
前記チャンネルの活性は、細胞内cAMP変化を示す、方法。
【請求項36】
前記活性は、膜電位指示体及びカチオン感受性指示体からなる群から選択される指示体を用いて測定される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記指示体は、蛍光指示体及び発光指示体からなる群から選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記カチオンは、カルシウム、ナトリウム、及びカリウムからなる群から選択される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記方法は、マイクロプレートアッセイ、細胞イメージング分析、FACS分析、放射性同位元素分析、及び電子生理学プラットホームからなる群から選択される、請求項35記載の方法。
【請求項40】
GPCRの活性を検出する方法であって、
(a)請求項11又は12記載の宿主細胞に、CNGチャンネル及びGPCRを発現させるステップと、
(b)前記チャンネルの活性を測定するステップと、
を含み、
前記チャンネルの活性は、GPCRの活性を示す、方法。
【請求項41】
受容体のリガンドを同定する方法であって、
(a)前記受容体及び請求項1記載の変異型のCNGチャンネルを発現している細胞を化合物と接触させるステップと、
(b)前記CNGチャンネルの活性化を測定するステップと
を含み、
前記CNGチャンネルの活性化は、前記化合物が前記受容体のリガンドであることを示す、方法。
【請求項42】
GPCRによって媒介された活性を調節する薬剤を同定する方法であって、
(a)請求項11記載の宿主細胞を、前記薬剤及び前記受容体のリガンドと接触させるステップと、
(b)CNGチャンネルの活性化を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項43】
(c)前記CNGチャンネルの活性化を、前記薬剤の非存在下における前記チャンネルの活性化と比較するステップ、をさらに含み、
前記CNGチャンネルの活性化の相違は、前記薬剤が前記活性を調節することを示す、請求項43記載の方法。
【請求項44】
請求項8記載の細胞を含有する容器、を含むキット。
【請求項45】
緩衝液、塩、クエンチャー、及び指示体からなる群から選択される少なくとも1つの試薬をさらに含む、請求項44記載のキット。
【請求項46】
電位感受性指示体及びカチオン感受性指示体からなる群から選択される少なくとも1つの指示体をさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項47】
前記クエンチャーは、ニトラジンイエロー及びニトロレッドからなる群から選択される、蛍光色素及びクエンチャーの調合物。
【請求項48】
前記調合物は、生存細胞ベースのアッセイで使用される、請求項47記載の蛍光色素及びクエンチャーの調合物。
【請求項49】
前記蛍光色素は、膜電位色素及びカルシウム色素からなる群から選択される、請求項47記載の調合物。
【請求項50】
前記カルシウム色素は、Fluo3、Fluo4、及びFura−2からなる群から選択される、請求項49記載の調合物。
【請求項51】
請求項47記載の蛍光色素及びクエンチャーの調合物を用いた、CNGチャンネルの活性を検出する方法であって、
(a)前記蛍光色素及びクエンチャーの調合物の存在下において、細胞にCNGを発現させるステップと、
(b)CNGチャンネルの活性を測定するステップと、
を含み、
蛍光レベルの変化は、前記CNGチャンネルの活性を示す、方法。
【請求項52】
前記蛍光レベルは、CNGチャンネル活性に反応して上昇又は低下する、請求項51記載の方法。
【請求項53】
請求項47記載の蛍光色素及びクエンチャーの調合物を用いた、GPCRの活性を検出する方法であって、
(a)前記蛍光色素及びクエンチャーの調合物の存在下において、内在性又は異種のGPCRを細胞に発現させるステップと、
(b)CNGチャンネルの活性を測定するステップと
を含み、
蛍光レベルの変化は、前記CNGチャンネルの活性を示し、
それによって、前記GPCRの活性を示す、方法。
【請求項54】
生物学的に不活性の蛍光クエンチャーを同定する方法であって、
(a)候補クエンチャー分子のコレクションを準備するステップと、
(b)少なくとも5つの受容体のパネルを提供するステップであり、
前記受容体は、少なくとも3つのタイプから選択され、
生体内アミン、アデノシン、脂質、アルカロイド、アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質を含めたファーマコフォアによって識別されるステップと、
(c)活性化ファーマコフォアの存在下、並びに候補クエンチャー分子の前記コレクションのメンバーの存在下及び非存在下で、前記受容体の活性をアッセイするステップと、
を含み、
生物学的に不活性の蛍光クエンチャーは、受容体の前記パネルの活性化に対して影響を及ぼさない、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図27D】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図28D】
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【図29】
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【公表番号】特表2007−509631(P2007−509631A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538312(P2006−538312)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/036022
【国際公開番号】WO2005/041758
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(304039641)アットー バイオサイエンス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】