説明

電力エネルギー供給システム

【課題】電力エネルギーをいったん位置エネルギーとして蓄積するための設備が小規模で良く、設置場所の制約も少なく、エネルギー損失が小さく、電力エネルギーを安定的に供給可能なシステムを提供する。
【解決手段】重量構造物1と、この重量構造物1を昇降可能であって電力エネルギー供給源3からの電力エネルギーを重量構造物1の位置エネルギーとして蓄積するエネルギー蓄積装置4と、重量構造物1の位置エネルギーを電力エネルギーに変換する第二電源装置5とを備える。電力エネルギー供給源3からの電力エネルギーによって、エネルギー蓄積装置4を介して重量構造物1を持ち上げることで、いったん電力エネルギーを重量構造物1の位置エネルギーとして変換して蓄積しておき、必要な時に重量構造物1の位置エネルギーを重力による運動エネルギーに変換しさらに第二電源装置5で電力エネルギーに変換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の重力を利用して電力エネルギーを一時的に蓄積して安定供給する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電装置や、太陽光発電装置は、化石燃料などを使用しないので、大気汚染や二酸化炭素の排出を伴わないクリーンエネルギー源として注目されている。風力発電装置は、風車を風力によって回転させ、この風車に連結した発電機によって電力を発生させるものである。また、太陽光発電装置は、太陽光エネルギーを太陽電池パネルにより光電変換して電力を発生させるものである。
【0003】
ところが風力発電装置は、出力される電力が風力に依存され、太陽光発電装置は、出力される電力が天候や太陽の高度や日照時間などに依存されることから、安定した電力を得ることができないといった問題がある。
【0004】
そこで従来、例えば図5に示されるように、高所と低所とにそれぞれ貯水池(下池103及び上池104)を設け、風力発電装置などの自然エネルギー発電装置101で得られた電力によって揚水ポンプ102を回転させて、下池103から上池104へ揚水し、電力需要が高くなった時には上池104から下池103へ水を放流してその運動エネルギーにより水車105を介して発電機106を回転させ、電力を供給するシステムが開発されている。すなわちこのシステムは、いったん自然エネルギー発電装置101で得られた電力を上池104への揚水によって水の位置エネルギーとして蓄積し、必要な時に、この蓄積された位置エネルギーを電力エネルギーに変換して供給するようにしたものである(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−274769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の電力エネルギー供給システムによれば、エネルギーを蓄積するための構成が大規模で、電力エネルギーを電力需要部まで搬送するのにも大きな設備が必要になるため、施工コストが高く、下池103と上池104の水頭差によって、取り出されるエネルギー量が変化してしまい、しかもエネルギー損失が大きいという問題があった。また、下池103と上池104の間には標高差が必要であるため平地では施工できず、したがって設置場所の制約があり、設置に長期間の工期が必要であるといった問題もあった。
【0007】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、電力エネルギーをいったん位置エネルギーとして蓄積するための設備が小規模で良く、設置場所の制約も少なく、エネルギー損失が小さく、電力エネルギーを安定的に供給可能なシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る電力エネルギー供給システムは、重量構造物と、この重量構造物を昇降可能であって電力エネルギー供給源からの電力エネルギーを前記重量構造物の位置エネルギーとして蓄積するエネルギー蓄積装置と、前記重量構造物の位置エネルギーを電力エネルギーに変換する第二電源装置とを備えるものである。
【0009】
この構成によれば、電力エネルギー供給源からの電力エネルギーによって、エネルギー蓄積装置を介して重量構造物を持ち上げることで、いったん電力エネルギーを重量構造物の位置エネルギーとして変換して蓄積しておき、必要な時に重量構造物の位置エネルギーを重力による運動エネルギーに変換しさらに第二電源装置で電力エネルギーに変換することができる。
【0010】
請求項2の発明に係る電力エネルギー供給システムは、請求項1に記載の構成において、エネルギー蓄積装置が、重量構造物を支持する液圧ジャッキと、電力エネルギー供給源からの電力エネルギーによって駆動する電動機及びこの電動機に連結されて前記液圧ジャッキに前記重量構造物をジャッキアップするための液圧を供給する液圧ポンプからなり、第二電源装置が、前記重量構造物のジャッキダウンに際して前記液圧ジャッキから排出される作動液により駆動する液圧モータ及びこれに連結された発電機からなるものである。
【0011】
この構成によれば、電力エネルギー供給源からの電力エネルギーによって駆動する電動機に連結された液圧ポンプが、液圧ジャッキに液圧を供給することによって、重量構造物がジャッキアップされ、これによって電力エネルギー供給源からの電力エネルギーが重量構造物の位置エネルギーとしていったん蓄積される。また、蓄積されたエネルギーを電力エネルギーとして取り出す場合には、前記液圧ジャッキの液圧を開放することにより前記重量構造物をジャッキダウンさせ、これに伴い液圧ジャッキから排出される作動液によって駆動する液圧モータに連結された発電機が発電を行う。
【0012】
請求項3の発明に係る電力エネルギー供給システムは、請求項1に記載の構成において、電力エネルギー供給源が自然エネルギー発電装置からなるものである。なお、自然エネルギー発電装置とは、風力、太陽光、潮力などの自然エネルギーを電力エネルギーに変換する装置をいう。
【0013】
この構成によれば、出力が風力に依存される風力発電装置や、出力が天候や太陽の高度や日照時間などに依存される太陽光発電装置などのような、自然エネルギー発電装置からの不安定な電力エネルギーを、いったん重量構造物の位置エネルギーとして蓄積しておき、必要な時に安定した電力エネルギーを取り出すことができる。
【0014】
請求項4の発明に係る電力エネルギー供給システムは、請求項1に記載の構成において、電力エネルギー供給源が、深夜電力を供給可能な商用電源からなるものである。
【0015】
この構成によれば、商用電源から安価な深夜電力によって入手した電力エネルギーを、いったん重量構造物の位置エネルギーとして蓄積しておき、電力が高価になる時間帯に取り出すことによって、高価な電力の使用を軽減することができる。
【0016】
請求項5の発明に係る電力エネルギー供給システムは、請求項1に記載の構成において、重量構造物が建物からなり、位置エネルギーを変換した電力エネルギーが前記建物内の各種負荷に供給されるものである。
【0017】
この構成によれば、電力エネルギーを建物の位置エネルギーとして蓄積し、蓄積された位置エネルギーを変換した電力エネルギーが前記建物内の各種負荷に供給されるため、エネルギーの搬送距離が極めて短いものとなる。
【0018】
請求項6の発明に係る電力エネルギー供給システムは、請求項2に記載の構成において、液圧ポンプと液圧モータが液圧回転装置で兼用され、電動機と発電機が電磁装置で兼用されたものである。
【0019】
この構成によれば、電力エネルギー供給源からの電力エネルギーによって、電磁装置が電動機として駆動し、これに連結された液圧回転装置が液圧ポンプとして液圧ジャッキに液圧を供給することによって、重量構造物がジャッキアップされ、これによって電力エネルギー供給源からの電力エネルギーが重量構造物の位置エネルギーとしていったん蓄積される。また、蓄積されたエネルギーを電力エネルギーとして取り出す場合には、前記液圧ジャッキの液圧を開放することにより前記重量構造物をジャッキダウンさせ、これに伴い液圧ジャッキから排出される作動液によって、前記液圧回転装置が液圧モータとして駆動され、これに連結された電磁装置が発電機として機能し、発電を行う。
【発明の効果】
【0020】
請求項1又は2の発明に係る電力エネルギー供給システムによれば、電力エネルギー供給源からの電力エネルギーをいったん重量構造物の位置エネルギーとしてエネルギー蓄積装置に蓄積し、蓄積された位置エネルギーを、必要に応じて電力エネルギーに変換して供給することができるものであり、重量構造物の位置エネルギーを利用するため、エネルギー蓄積装置としての設備が小規模で良く、設置場所の制約も少なくすることができる。また、重量構造物の重量を利用しているので、第二電源装置で取り出される電力エネルギーのレベルが安定する。
【0021】
請求項3の発明に係る電力エネルギー供給システムによれば、自然エネルギー発電装置からの不安定な電力エネルギーを、いったん重量構造物の位置エネルギーとして蓄積することで、安定した電力エネルギーとして取り出すことができる。
【0022】
請求項4の発明に係る電力エネルギー供給システムによれば、深夜電力によって安価な電力エネルギーを入手して蓄積しておき、電力が高価になる時間帯に、蓄積したエネルギーを取り出すことによって電気料金を軽減することができる。
【0023】
請求項5の発明に係る電力エネルギー供給システムによれば、送電距離が短いので、電力エネルギーの搬送に要する設備が小規模で良く、したがって設備のコストを低減でき、しかも送電過程での抵抗発熱によるエネルギー損失を小さく抑えることができる。
【0024】
請求項6の発明に係る電力エネルギー供給システムによれば、液圧回転装置が液圧ポンプ及び液圧モータとして共用され、電磁装置が電動機及び発電機として共用されるため、配管構造を簡素化して低コストで設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による電力エネルギー供給システムの第一の形態を示す概略構成説明図である。
【図2】第一の形態におけるエネルギーの経路を示すブロック図である。
【図3】本発明による電力エネルギー供給システムの第二の実施の形態を示す概略構成説明図である。
【図4】第二の形態におけるエネルギーの経路を示すブロック図である。
【図5】従来の技術による電力エネルギー供給システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る電力エネルギー供給システムの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2は第一の形態を示すものである。
【0027】
図1において、参照符号1は重量構造物、参照符号2はこの重量構造物1の下側地盤に構築された基礎、参照符号3は電力エネルギー供給源、参照符号4は重量構造物1を昇降可能であって電力エネルギー供給源3からの電力エネルギーE1を重量構造物1の位置エネルギーE2として蓄積するエネルギー蓄積装置、参照符号5は重量構造物1の位置エネルギーE2を電力エネルギーE4に変換する第二電源装置である。
【0028】
重量構造物1は、例えばオフィスビルのような、鉄筋コンクリート造の建物などからなるものであって、内部には照明設備や空調設備、給湯機、通信機器、音響・映像機器など、種々の電力需要部(負荷)6が存在している。
【0029】
電力エネルギー供給源3は、図2に示されるように、風力発電装置31や太陽光発電装置32などの自然エネルギー発電装置、及び深夜電力を供給可能な商用電源33から選択されたものである。
【0030】
図1に示されるように、エネルギー蓄積装置4は、重量構造物1を昇降可能に支持する多数の油圧ジャッキ41を備えており、さらに図2に示されるように、電力エネルギー供給源3(風力発電装置31,太陽光発電装置32,商用電源33など)からの電力エネルギーE1によって駆動する電動機42及びこの電動機42に連結されて油圧ジャッキ41に重量構造物1をジャッキアップするための油圧を、作動油タンク44からの作動油の圧送により供給する油圧ポンプ43と、作動油タンク44から油圧ポンプ43を経由して油圧ジャッキ41へ延びる給油路45と、この給油路45に設けられて油圧ジャッキ41側への作動油の流れのみを許容し逆方向の流れを遮断する逆止弁46等からなる。なお、油圧ジャッキ41は請求項2に記載された液圧ジャッキに相当し、油圧ポンプ43は、請求項2に記載された液圧ポンプに相当する。
【0031】
また、第二電源装置5は、重量構造物1のジャッキダウンに際してエネルギー蓄積装置4の油圧ジャッキ41から排出される作動油の圧力により回転される油圧モータ51及びこれに連結された発電機52と、油圧ジャッキ41から油圧モータ51を経由して作動油タンク44へ延びる排油路53と、この排油路53に設けられた開閉弁54等からなる。
【0032】
以上の構成において、風力発電装置31や太陽光発電装置32により発電された電力あるいは商用電源33による深夜電力など、電力エネルギー供給源3からの電力エネルギーE1は、この電力エネルギーE1によって駆動するエネルギー蓄積装置4を介して重量構造物1を持ち上げることで、いったん重量構造物1の位置エネルギーE2としてエネルギー蓄積装置4に蓄積される。
【0033】
詳しくは、開閉弁54によって排油路53を閉塞した状態で、電力エネルギー供給源3からの電力エネルギーE1を電動機42に投入すると、これによって駆動される電動機42が油圧ポンプ43を回転させ、作動油タンク44の作動油を、給油路45を介して油圧ジャッキ41に圧送するので、この油圧ジャッキ41によって重量構造物1がジャッキアップされる。
【0034】
また、エネルギー蓄積装置4(油圧ジャッキ41)に蓄積されたエネルギーを取り出す場合には、油圧ジャッキ41の油圧を開放することで重量構造物1をジャッキダウンさせ、すなわち位置エネルギーE2を作動油の運動エネルギーE3に変換し、さら第二電源装置5で電力エネルギーE4に変換する。
【0035】
詳しくは、開閉弁54を開弁することによって油圧ジャッキ41の油圧を開放すると、重量構造物1が自らの重量によって油圧ジャッキ41の作動油を排油路53を介して作動油タンク44へ還流しながら降下して行き、このときの作動油の流れによって、油圧モータ51が駆動して発電機52を回転させ、これにより発電された電力エネルギーE4を、重量構造物(建物)1内の種々の電力需要部(負荷)6へ供給する。
【0036】
そして、油圧ジャッキ41の内部の油圧は重量構造物1の重量によって与えられるものであって、重量構造物1のジャッキアップ量によって変化するものではないため、重量構造物1をジャッキダウンさせることによって油圧ジャッキ41から流出される作動油の圧力は一定であり、したがって第二電源装置5で変換される電力レベルも一定となり、安定したエネルギーを供給することができる。
【0037】
ここで、エネルギー蓄積装置4によって蓄積できるエネルギーEの量は、重量構造物1の重量をW、ジャッキアップによる重量構造物1の上昇距離をΔhとすれば、
E=W・Δh
となる。具体的には、重量構造物1が例えば6階建の鉄筋コンクリート造りの建築物であって、平面面積が100m2、重量が20,000tであった場合、20cmのジャッキアップによって蓄積されるエネルギーの量は約39.2MJであり、電力に換算すると約10.9kWhとなる。これは、最新の省エネルギー設備を備えたこの規模のオフィスビルを1日稼動させるのには、充分な電力量である。
【0038】
先に説明したように、例えば風力発電装置31は、出力される電力が風力に依存され、太陽光発電装置32は、出力される電力が天候や太陽の高度や日照時間などに依存されることから、安定した電力を得ることができないといった問題があったが、上記構成によれば、このような自然エネルギー発電装置からの不安定な電力エネルギーE1を、いったん重量構造物1の位置エネルギーE2として蓄積することで、安定した電力エネルギーE4として取り出すことができる。
【0039】
一方、電力需要は時間的な格差があり、昼間の時間帯は電力需要が高いのに対し、深夜は比較的電力需要が低くなるので電力供給に余剰を生じており、このような余剰電力の消費を促進するために、安価な深夜電力料金が設定されている。そして上記構成によれば、このような余剰の深夜電力を安価に入手してエネルギー蓄積装置4によりいったん重量構造物1の位置エネルギーE2として蓄積しておき、電力需要が逼迫しかつ高価になる時間帯に、蓄積した位置エネルギーE2を電力エネルギーE4として取り出すことで、電力需要を平均化すると共に、電気料金を軽減することができる。
【0040】
また、この形態では、エネルギー蓄積装置4によって蓄積された位置エネルギーE2を、このエネルギー蓄積装置4が設置された重量構造物1内の電力需要部6で消費するため、送電距離が短く、このため電力エネルギーE4の搬送に要する設備が小規模で良く、送電過程での抵抗発熱による電力損失も小さく抑えられる。
【0041】
しかも、重量構造物1の重量を利用するものであるため、位置エネルギーを得るための標高差は不要であり、したがって設置場所の制約が少なく、土木工事なども不要であるため、比較的短期間で施工することができる。
【0042】
次に図3及び図4は、本発明に係る電力エネルギー供給システムの第二の形態を示すものである。
【0043】
この実施の形態において、先に説明した第一の形態と異なるところは、第一の形態におけるエネルギー蓄積装置4の機能と第二電源装置5の機能を兼ねるエネルギー可逆変換ユニット7が設けられた点にある。その他の構成は、基本的に図1及び図2と同様とすることができる。
【0044】
詳しくは、エネルギー可逆変換ユニット7は、図4に示されるように、油圧ジャッキ71と、作動油タンク72と、両者間を延びる油給排路73を備えており、油給排路73に設けられて油圧ポンプと油圧モータの機能を兼ねる油圧回転装置74と、この油圧回転装置74に回動連結されて電動機と発電機の機能を兼ねる電磁装置75と、油給排路73に設けられた切換弁76と、電力エネルギー供給源3(風力発電装置31,太陽光発電装置32,商用電源33など)から電磁装置75への電力エネルギーの供給又は電磁装置75から電力需要部6への電力エネルギーの供給を切り換える切換スイッチユニット77とを備える。なお、油圧ジャッキ71は請求項2に記載された液圧ジャッキに相当し、油圧回転装置74は、請求項6に記載された液圧回転装置に相当する。
【0045】
油圧回転装置74は、電磁装置75によって回転されて、油給排路73を通じて作動油を油圧ジャッキ71へ送り、あるいはこの油圧ジャッキ71から油給排路73を通じて排出される作動油の運動エネルギーを受けて電磁装置75を回転させるものである。
【0046】
一方、電磁装置75は電動機と発電機とが可逆的に兼用されるものであって、電動発電機又は発電電動機とも呼ばれ、すなわち電力を入力することによって電動機として機能して油圧回転装置74を回転させ、油圧回転装置74からの回転力を入力することによって発電機として機能するものである。
【0047】
以上の構成において、風力発電装置31や太陽光発電装置32により発電された電力あるいは商用電源33による深夜電力など、電力エネルギー供給源3からの電力エネルギーE1は、エネルギー蓄積装置として機能するエネルギー可逆変換ユニット7を介して重量構造物1を持ち上げることで、いったん重量構造物1の位置エネルギーE2として蓄積される。
【0048】
詳しくは、切換弁76を、油圧ジャッキ71側への作動油の流れを許容し、油圧回転装置74側への逆流を遮断する給油ポート76a側へ移行させると共に、切換スイッチユニット77の切換によって電力エネルギー供給源3からの電力エネルギーE1を電磁装置75へ投入すると、これによって電動機として機能する電磁装置75が駆動して油圧回転装置74を回転させる。このため油圧回転装置74が油圧ポンプとして機能し、作動油タンク72の作動油を油圧ジャッキ71に圧送するので、この油圧ジャッキ71によって重量構造物1がジャッキアップされる。
【0049】
また、エネルギー可逆変換ユニット7(油圧ジャッキ71)に蓄積されたエネルギーを取り出す場合には、油圧ジャッキ71の油圧を開放することで重量構造物1をジャッキダウンさせ、すなわち重量構造物1の位置エネルギーE2を作動油の運動エネルギーに変換し、エネルギー可逆変換ユニット7において電力エネルギーE4に変換する。
【0050】
詳しくは、切換弁76を、作動油タンク72側への作動油の流れを許容する排油ポート76b側へ移行させることによって油圧ジャッキ71の油圧を開放すると共に、切換スイッチユニット77の切換によって電力エネルギー供給源3と電磁装置75の間を遮断し、電磁装置75と電力需要部6との間を接続すると、重量構造物1が自らの重量によって油給排路73を介して油圧ジャッキ71の作動油を作動油タンク72へ還流しながら降下して行き、このときの作動油の流れによって、油圧回転装置74が油圧モータとして機能し、電磁装置75を回転させる。このため電磁装置75は発電機として機能し、電力エネルギーE4を発生して重量構造物(建物)1内の種々の電力需要部(負荷)6へ供給する。
【0051】
したがって、第一の形態と同様、自然エネルギー発電装置からの不安定な電力エネルギーあるいは安価に入手可能な深夜電力による電力エネルギーE1を、いったん重量構造物1の位置エネルギーE2として蓄積することで、安定した安価な電力エネルギーE4として取り出すことができる。
【0052】
加えて、この形態によれば、油圧回転装置74が油圧ポンプ及び油圧モータとして共用され、電磁装置75が電動機及び発電機として共用されるため、配管構造を簡素化して一層低コストで設置することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 重量構造物
2 基礎
3 電力エネルギー供給源
31 風力発電装置
32 太陽光発電装置
33 商用電源
4 エネルギー蓄積装置
41 油圧ジャッキ(液圧ジャッキ)
42 電動機
43 油圧ポンプ(液圧ポンプ)
45 給油路
5 第二電源装置
51 油圧モータ
52 発電機
53 排油路
6 電力需要部
7 エネルギー可逆変換ユニット
71 油圧ジャッキ(液圧ジャッキ)
74 油圧回転装置(液圧回転装置)
75 電磁装置
76 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量構造物と、この重量構造物を昇降可能であって電力エネルギー供給源からの電力エネルギーを前記重量構造物の位置エネルギーとして蓄積するエネルギー蓄積装置と、前記重量構造物の位置エネルギーを電力エネルギーに変換する第二電源装置とを備えることを特徴とする電力エネルギー供給システム。
【請求項2】
エネルギー蓄積装置が、重量構造物を支持する液圧ジャッキと、電力エネルギー供給源からの電力エネルギーによって駆動する電動機及びこの電動機に連結されて前記液圧ジャッキに前記重量構造物をジャッキアップするための液圧を供給する液圧ポンプからなり、第二電源装置が、前記重量構造物のジャッキダウンに際して前記液圧ジャッキから排出される作動液により駆動する液圧モータ及びこれに連結された発電機からなることを特徴とする請求項1に記載の電力エネルギー供給システム。
【請求項3】
電力エネルギー供給源が自然エネルギー発電装置からなることを特徴とする請求項1に記載の電力エネルギー供給システム。
【請求項4】
電力エネルギー供給源が、深夜電力を供給可能な商用電源からなることを特徴とする請求項1に記載の電力エネルギー供給システム。
【請求項5】
重量構造物が建物からなり、位置エネルギーを変換した電力エネルギーが前記建物内の各種負荷に供給されることを特徴とする請求項1に記載の電力エネルギー供給システム。
【請求項6】
液圧ポンプと液圧モータが液圧回転装置で兼用され、電動機と発電機が電磁装置で兼用されたことを特徴とする請求項2に記載の電力エネルギー供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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