説明

電力メータ連携型センサ装置

【課題】負荷機器の動作状態を監視するとともに、通信機能を備える電力メータに対して負荷機器の動作状態を通知することを可能にする。
【解決手段】センサ装置Sは、負荷機器への配電路を通過する電流を計測する電流センサ21と、配電路を伝送路に用いて負荷機器への配電路に挿入された電力メータと通信することにより電流センサ21で計測した情報を電力メータに通知する電力線搬送通信部23とを器体内に備える。電流センサ21は、トロイダルコアに検出用巻線を巻回した変流器を備え、トロイダルコアは配電路をクランプするように開閉可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有するとともに他機器の管理機能を有する電力メータと連携し、電力メータで用いる情報を収集する電力メータ連携型センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会という観点で、温室効果ガスの排出量の削減、化石燃料依存からの脱却などが提唱され、それに伴って、太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギの大規模な導入が提案されている。ただし、再生可能エネルギは出力が不安定であるという問題があり、また、小規模な発電設備の並列運転を行うことにより周波数変動が生じる可能性があり、再生可能エネルギを大規模に導入すると送電電力の品質の低下につながるという問題が懸念されている。
【0003】
このような問題に対処するために、発電設備において電力の品質を管理するのはもちろんのこと、発電所から需要家に至る送電網での経路の制御や需要家における負荷機器の制御を行うことによって、電力の供給側と需要側との間の電力の無駄を抑制する技術の導入が提案されている。この種の技術には、電力の需要側が必要とする電力を監視し、監視した電力に応じて電力の供給側に対して必要な電力を要求するとともに、負荷機器の使用環境に応じて負荷機器の制御を行うことが必要になる。
【0004】
そこで、需要側の電力を監視する電力メータに通信機能を設け、通信機能を用いることにより、電力の供給側への要求を行うとともに、負荷機器の使用環境の監視や負荷機器の制御を行うことが提案されている。つまり、通信機能を有するとともに他機器(負荷機器など)の管理機能を有する電力メータ(いわゆる、スマートメータ)を用いることが考えられている。このような機能を実現するために、負荷機器の使用環境や負荷機器での使用電力を監視して電力メータに通知することが必要である。
【0005】
ところで、負荷機器には、室温や照度を検出するとともに、室温や照度が目標値に近付くように制御する構成のものが知られている。しかしながら、この種の負荷機器は自己完結的に制御を行っているのみであり、複数の負荷機器を関係付けて制御させることはできない。
【0006】
たとえば、特定の負荷機器における消費電力が他の負荷機器に比較して大きい場合に、当該負荷機器での消費電力が低減されるように負荷機器を制御すれば、使用する電力を大きく低減させることができると考えられるが、このような制御を自動化することはできない。
【0007】
一方、特許文献1には、主幹ブレーカを流れる電流の大きさを検出する変流器を分電盤に設け、変流器を用いて計測した電流量に基づいてコントローラにおいて電気使用情報を生成し、信号線を介してコントローラと接続された住宅情報盤が電気使用情報を受け取ることによって、住宅情報盤において電気使用情報を報知することを可能にする技術が記載されている。
【0008】
すなわち、コントローラでは、変流器を用いて計測した電流量が、あらかじめ設定された警報基準量を超えてから所定の時間が経過するまでの間に所定の電流量まで低下しない場合には、電気の使いすぎを住宅情報盤に報知させる機能を有している。さらに、負荷機器にリレーを設けてあり、警報基準量を超えることにより住宅情報盤に電気の使いすぎが報知されるときには、あらかじめ定めた優先順位の順で負荷機器への電力供給を遮断することも記載されている。
【0009】
特許文献1に記載の技術は、住宅内の負荷機器に供給する個々の電流量ではなく合計の電流量を計測し、計測した電流量が警報基準量を超えるときには、少なくとも一部の負荷機器への電力供給を停止させることにより、負荷機器で使用される電流量を制限する技術であり、電力消費の増加を抑制することから、温室効果ガスの排出量削減に寄与していると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−225438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、住宅内に複数の負荷機器が存在する場合、各負荷機器の動作状態に負荷機器の動作を関連付けて制御すれば、個々の負荷機器が自己完結的に動作を制御する場合や主幹ブレーカを流れる電流の大きさを検出する場合に比較して、同目的を達成するのに要する投入エネルギー量が少なくなると考えられる。
【0012】
すなわち、自己完結的な制御のために環境の情報を用いる負荷機器、あるいは特許文献1に記載の技術のように、住宅内のすべての負荷機器の動作を統合した情報を用いて供給電流を制限するシステムを用いたとしても、負荷機器の使用環境を評価するのに必要な量の情報を収集し、かつ収集した情報を用いて各負荷機器を連携させて制御することはできないから、エネルギーの利用効率を十分に高めることはできない。
【0013】
一方、負荷機器の使用環境の監視や負荷機器の制御が可能であるとともに電力供給側への要求が可能である電力メータを用いる場合に、各負荷機器の動作状態を個々に監視するとともに、負荷機器を個別に制御することができれば、負荷機器を使用することによる快適性を維持しながらも、住宅全体としての消費電力量を低減することが可能になる。
【0014】
しかしながら、一般的な負荷機器には、動作状態を監視して他装置に通知する機能は設けられていないから、たとえば、HA端子を備える負荷機器であったとしても、動作状態に応じて適正に制御することは困難である。
【0015】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、負荷機器の動作状態を監視するとともに、通信機能を備える電力メータに対して負荷機器の動作状態を通知することを可能にし、ひいては、負荷機器によるエネルギーの利用効率を高めることができる電力メータ連携型センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述の目的を達成するために、負荷機器への配電路を通過する電流を計測する電流センサと、配電路を伝送路に用いて負荷機器への配電路に挿入された電力メータと通信することにより電流センサで計測した情報を電力メータに通知する電力線搬送通信部とを器体内に備えることを特徴とする。
【0017】
電流センサは、トロイダルコアに検出用巻線を巻回した変流器を備え、トロイダルコアは配電路をクランプするように開閉可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成によれば、配電路の通過電流を電流センサにより計測し、配電路を伝送路に用いて計測した電流量を電力メータに通知することができるので、電流量を監視する機能を有していない負荷機器であっても、当該負荷機器への配電路に流れる電流量を監視することが可能になり、結果的に電力メータでは、負荷機器の動作状態を個別に認識することが可能になり、負荷機器で消費される電流量に応じて負荷機器を制御することにより、エネルギーの利用効率を高めることが可能になる。
【0019】
また、配電路をクランプする電流センサを用いている場合には、負荷機器に電力を供給している配電路を通過する電流量を後付けで簡単に計測することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上のシステム構成図である。
【図3】同上とともに用いる電力メータを示すブロック図である。
【図4】同上の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に説明するセンサ装置Sは、図2に示すように、電力の需要家である住宅や事業所に設置される電力メータMとの間でデータ通信を行う機能を有し、負荷機器Lの使用環境に関する情報を通信を用いて電力メータMに通知することによって、電力メータMによる各種の負荷機器Lの制御や監視を可能にするものである。
【0022】
すなわち、以下の実施形態で用いる電力メータMは、負荷機器Lへの配電路Lpに挿入され、電力の供給側(発電設備や送電網)および需要側(センサ装置Sや負荷機器L)との間で通信する機能を有している。また、センサ装置Sにより計測される負荷機器Lの使用環境に関する情報を用いて、負荷機器Lの制御を行い、また電力の供給側への要求を行う機能を有している。以下では、需要家が住宅である場合を例として説明するが、需要家は事業所であってもよい。
【0023】
電力メータMは、通信技術や情報技術を活用することにより、センサ装置Sにより計測される負荷機器Lの使用環境の情報を受け取るとともに、負荷機器Lを制御し、また電力の供給側に電力の供給や制限を要求する機能を有している。この種の電力メータは、スマートグリッドと称する技術において、住宅Hにおける電力利用の制御を行うために、住宅Hに設置されるネットワーク制御型の電力メータであり、スマートグリッドと称する技術においては、スマートメータとして知られている。この種の電力メータは、検針の機能に加えて、無線と有線との通信機能および監視した情報に応じて負荷機器Lを制御する機能を有している。
【0024】
電力メータMの基本的な構成を図3に示す。電力メータMは、電力量計としての機能を有しており、住宅Hでの電力の使用量を計測するメータ回路部11を備える。メータ回路11は、住宅Hに配線される配線路Lpを流れる電流および配電路Lpの線間の電圧を計測し、使用電力の瞬時値および積算値を求める機能を有する。
【0025】
また、電力メータMには、検針値などを表示するための表示器DPを駆動する機能、およびセンサ装置Sから取得した負荷機器Lの使用環境に関する情報に基づいて負荷機器Lの制御内容を決定する機能を有した制御部12が設けられる。制御部12は、センサ装置Sと負荷機器Lとを対応付けるとともに、センサ装置Sにより検出される負荷機器Lの使用環境に対する各負荷機器Lの制御内容を対応付けている。
【0026】
電力メータMには、住宅Hに設置した負荷機器Lやセンサ装置Sとの間で通信を行うための近距離通信部13と、インターネットのような広域網に接続するための広域通信部14とが設けられる。近距離通信部13には、ZigBee(商標)と称する規格で無線伝送路によるデータ通信を行う無線通信部13aと、宅内で電力線搬送通信を行う有線通信部13bとが設けられる。同様に、広域通信部14にも、ISM帯域の電波を用いた無線伝送路によるデータ通信を行う無線通信部14aと、宅外で電力線搬送通信を行う有線通信部14bとが設けられる。
【0027】
近距離通信部13では、住宅Hの適所に設置されたセンサ装置Sから受信した情報をメータ回路部11に通知し、メータ回路部11では、受信した情報に応じて負荷機器Lを制御するか、広域網に情報を送出する。また、電力メータMには、商用電源に接続された配電路Lpから電源が供給され内部回路に給電する電源回路15が設けられる。
【0028】
以下では、本実施形態において用いるセンサ装置Sについて説明する。図1に示すように、センサ装置Sは、交流電流を検出する電流センサ21を備えている。電流センサ21は、トロイダルコアに検出用巻線を巻装した変流器であって、トロイダルコアの一部を開閉可能に形成した周知の構造を有している。この構造の電流センサ21によって電線を通過する電流を計測するには、当該電線をトロイダルコアの中央孔に挿通する必要がある。そこで、トロイダルコアを開くことにより、トロイダルコアの内側に電線を出し入れすることを可能にし、電線を入れた状態でトロイダルコアを閉じることにより当該電線をトロイダルコアの中央孔に挿通した状態でクランプすることが可能になっている。
【0029】
センサ装置Sには、電力メータMとの通信のための通信手段としての電力線搬送通信部23が設けられており、上述した電流センサ21に対応するセンサ回路22の出力は、電力線搬送通信部23により電力線搬送用の通信信号に変換される。電力線搬送通信部23では、商用電源の周波数よりも十分に高い周波数(たとえば、数百kHz〜数MHz)の搬送信号を電流センサ21の出力の情報で変調した通信信号を生成し、商用電源の電圧に重畳して伝送する機能を有している。
【0030】
電力線搬送通信部23は、配電路Lpに接続される端子(図示せず)を備えており、たとえば、壁などに配置されるコンセントC(図2参照)において配電路Lpを接続する端子に、センサ装置Sの端子を電気的に接続することが可能になっている。したがって、コンセントCに接続される負荷機器Lに通電する電流量を計測する際には、センサ装置SをコンセントCとともに配電路Lpに接続し、さらに、コンセントCに接続されている配電路Lpの一部をクランプすることによって、配電路Lpから負荷機器Lに給電される電流量を検出し、かつ配電路Lpを通して電流量の情報を電力メータMに送信することが可能になる。つまり、配電路Lpの配線施工時ではなく、後付けでセンサ装置Sを配電路Lpに取り付けることが可能であり、施工作業が容易になる。
【0031】
電力メータMの有線通信部13bは、電力線搬送用の通信信号を受信し、電流センサ21の出力の情報を復調する機能を有している。したがって、電力メータMは、センサ装置Sから送信された電流センサ21により検出した電流量の情報を取得する。ここに、宅内には、通常は複数台のセンサ装置Sが設けられ、電力メータMへのデータ伝送をマルチホッピングで行うことが可能である。すなわち、複数台のセンサ装置Sが配置されていれば、電力メータMとの距離が大きいセンサ装置Sであっても他のセンサ装置Sを中継に用いることによって、電力メータMへの情報の伝送が可能になる。また、センサ装置Sは、個々のセンサ装置Sを識別するための識別情報(アドレス)が設定される。
【0032】
センサ装置Sは電力線搬送通信を行うために配電路Lpに接続されるから、センサ装置Sでは配電路Lpから受電する。すなわち、センサ装置Sは配電路Lpから受電する電源回路24を備え、電源回路24において配電路Lpから受電した電力を用いて内部電源を生成する。このように本実施形態のセンサ装置Sは、使用時に電源が確保されるから、電池のような別途の電源を必要とせず、電池交換の必要もないものである。
【0033】
上述した電流センサ21、センサ回路22、電力線搬送通信部23、電源回路24は、図4に示す形状の器体20に収納される。センサ装置Sの器体20は、電流センサ21の一部を開閉可能にする形状であれば、とくに制限はないが、壁などに配置されるコンセントCの背面側に配置できる程度に小型に形成する必要がある。また、コンセントCではなくテーブルタップに配置したり、負荷機器Lに内蔵させたりすることも可能である。
【0034】
上述したように、本実施形態のセンサ装置Sは、負荷機器Lに通電する電流量を計測しするとともに、計測した電流量を通信により電力メータMに通知する機能を有しているので、電流量を計測する機能および電力メータMに電流量を通知する機能を持たない負荷機器Lであっても、センサ装置Sを適宜に配置しておくことによって、負荷機器Lに通電した電流量を計測するとともに電力メータMに通知することが可能になる。
【0035】
すなわち、電力メータMでは、負荷機器Lごとに消費した電流量を認識することができるから、負荷機器Lで消費した電流量に応じて負荷機器Lの制御を行ったり、電力の供給側に負荷機器Lで消費した電流量の通知を行ったりすることが可能になる。このことは、需要家において負荷機器Lを適正に制御して電力の利用効率を高めたり、電力の供給側に対して送電による損失の少ない経路で送電させたりすることを可能とし、結果的に、省エネルギの効果が期待できる。
【0036】
このように、電力メータMは、センサ装置Sにより計測した負荷機器Lの使用環境に関する情報を通信機能により得るとともに、通信機能を用いて負荷機器Lの制御を行うから、構内ネットワークを構築していることになり、電力の供給がなされていれば、住宅内ネットワークとしての機能によってセンサ装置Sが計測した使用環境の情報に基づいて負荷機器Lを制御することが可能になる。
【0037】
一方、電力メータMには、電力の供給側との通信機能もあり、上述したように、電力メータMは、インターネットのような広域網を用いることもできる。すなわち、電力メータMは、住宅内ネットワークと広域網のような外部ネットワークとのゲートウェイとしても機能する。
【符号の説明】
【0038】
20 器体
21 電流センサ
22 センサ回路
23 電力線搬送通信部
24 電源回路
L 負荷機器
Lp 配電路
M 電力メータ
S センサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷機器への配電路を通過する電流を計測する電流センサと、配電路を伝送路に用いて負荷機器への配電路に挿入された電力メータと通信することにより電流センサで計測した情報を電力メータに通知する電力線搬送通信部とを器体内に備えることを特徴とする電力メータ連携型センサ装置。
【請求項2】
前記電流センサは、トロイダルコアに検出用巻線を巻回した変流器を備え、トロイダルコアは前記配電路をクランプするように開閉可能であることを特徴とする請求項1記載の電力メータ連携型センサ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−102746(P2011−102746A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257521(P2009−257521)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】