説明

電力供給システム及び電力供給方法

【課題】電気負荷における不必要なエネルギ消費を確実に抑制できるようにする。
【解決手段】電力を供給する対象である電気負荷15に対しPWM制御可能な半導体スイッチ14を接続する。また、電力供給源であるバッテリ11や発電機12が接続された電源ライン13の電圧値を電圧センサ17で検出する。そして、負荷制御部16が、電圧センサ17によって検出される電源ライン13の電圧値と、電気負荷15の性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて、電気負荷15に接続された半導体スイッチ14をPWM制御することで、電気負荷15に対して供給される実効電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される電源から各電気負荷に対して電力を供給する電力供給システム及び電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される電気負荷に対して電力を供給する電力供給システムは、一般に、電力供給源としてバッテリ(蓄電池)や発電機を備え、電気負荷に接続された半導体スイッチ等のスイッチ素子を制御することにより、これら蓄電池や発電機から電気負荷への電力供給を制御するように構成されている。また、近年では、単一の駆動電圧によって駆動する電気負荷のみならず、駆動電圧が異なる複数の電気負荷(例えば12V系負荷と36V系負荷)を混載する車両も多く開発されており、これにともない、これら駆動電圧が異なる電気負荷に対して電力を供給する電力供給システムも提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照。)。
【0003】
ところで、以上のような電力供給システムにおいては、車両の二酸化炭素排出規制等の要望から、いかに不必要なエネルギ消費を減少させるかが重要な課題となっている。すなわち、電気負荷での不必要なエネルギ消費量を減少させることができれば、発電機の駆動トルクを減少することができ、その分、エンジンの燃料消費量の削減、ひいては、排出される二酸化炭素量の削減を図ることができる。このような背景から、蓄電池の充電状態を検知し、これに基づいて発電機の発電電圧を最適に制御することにより、電力供給システムにおける不必要なエネルギ消費を減少させる試みがなされている(例えば、特許文献3や特許文献4等を参照。)。
【特許文献1】特開2001−145333号公報
【特許文献2】特開2003−252128号公報
【特許文献3】特開2004−194364号公報
【特許文献4】特開2004−68664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献3や特許文献4に記載された従来の電力供給システムにおいても、各電気負荷にて消費されるエネルギが電力供給源である蓄電池の電圧又は発電機の発電電圧に依存することから、各電気負荷の機能を十分に発揮することができる電圧である性能保証電圧範囲の下限値よりも高い電圧が蓄電池や発電機から当該電気負荷に対して供給されている状況においては、不必要なエネルギ消費を十分に抑制できないという問題があった。
【0005】
具体的には、車両には、12V系負荷として、例えば灯火系バルブや、ウィンドウシールドの曇りを晴らす熱線、各種のモータ等が搭載されているが、これらの各電気負荷はそれぞれ、その機能(灯火系バルブの明るさ、熱線による発熱量、モータのトルクや回転速度等)を十分に発揮できる電圧範囲として性能保証電圧範囲が定められており、その下限値は通常12Vより若干低い値となるように設計がなされている。このとき、例えば14Vといった12Vよりも高い発電電圧が発電機から供給されている場合には、各電気負荷は必要とされる以上の性能で所定の機能を実行することになり、その分不必要なエネルギを消費するという事態を招来することとなる。
【0006】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、電気負荷における不必要なエネルギ消費を確実に抑制することができる電力供給システム及び電力供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、前記目的を達成するために、電力を供給する対象である負荷に対しPWM制御可能なスイッチ素子を接続し、電力供給電源が接続された電源ラインの電圧値と、負荷の性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて、負荷に接続されたスイッチ素子をPWM制御することで、負荷に対して供給される実効電力を制御するようにしている。これにより、本発明においては、負荷の性能保証電圧範囲の下限値よりも大きい電圧値で電力供給手段からの電力が供給される場合であっても、性能保証電圧範囲の下限値が連続的に当該負荷に対して印加されたときと同等の状況を作り出すことができ、負荷に対して供給する実効電力の最適化を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷に対して供給する実効電力の最適化を図ることができることから、当該負荷における不必要なエネルギ消費を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した電力供給システムの具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、本発明を適用した第1の実施形態の電力供給システムについて説明する。
【0011】
本実施形態の電力供給システムは、車両に搭載された12V系の電気負荷に対して電力供給を行うものであり、電気負荷に対して供給する実効電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御によって最適化するものである。
【0012】
具体的には、この電力供給システムは、図1に示すように、電力供給電源として、12V近傍の電圧を放電する蓄電池としてのバッテリ11と、12V近傍の電圧を発電する発電機12とを備える。これらバッテリ11及び発電機12は電源ライン13に接続されており、これらバッテリ11及び発電機12からの電力は、電源ライン13を介して、半導体スイッチ14に接続された12V系の電気負荷15に対して供給される。なお、図1においては、12V系の電気負荷15として2つの電気負荷を図示しているが、実際の車両においては、例えば、各種灯火系バルブや熱線類、各種モータ等、12V系の電気負荷15として多数の電気負荷が搭載されている。
【0013】
また、本実施形態の電力供給システムは、各電気負荷15への電力供給を制御するための負荷制御部16を備える。この負荷制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を有し、電気負荷15のそれぞれをオン/オフするためのオン/オフ入力信号D1がユーザの操作に応じて入力されると、これら電気負荷15のそれぞれに接続された半導体スイッチ14に対してオン/オフ出力信号D2を供給する。これにより、オン/オフ出力信号D2に応じて電気負荷15のそれぞれに接続された半導体スイッチ14の開閉が切替えられて、電気負荷15に対する電力供給が制御される。
【0014】
また、負荷制御部16は、電力供給対象となる各電気負荷15の性能保証電圧範囲の下限値を記憶しており、電気負荷15をオン状態とする場合には、電源ライン13に接続された電圧センサ17によって検出される電圧値を読み込んで、この電圧値と、記憶している電気負荷15の性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて、半導体スイッチ14をPWM制御することで、電気負荷15に供給される実効電力を最適化する。なお、半導体スイッチ14は、PWM制御を行うために必要な高速スイッチングを行うことができる機能を有している。
【0015】
ここで、本実施形態の電力供給システムでの電力供給対象となる各電気負荷15は、それぞれ、バッテリ11によって放電可能な12V近傍の電圧により、要求される機能を十分に発揮可能なように設計されている。したがって、電気負荷15は、それぞれ、電源ライン13を介して、性能保証電圧範囲の下限値を越える電圧(12V系の場合、一般には16Vまでの電圧)が供給された場合には、要求される機能よりも高い性能で当該機能を実行するように設計されている。より具体的には、電気負荷15としての灯火系バルブは、性能保証電圧範囲の下限値を越える電圧がバッテリ11及び発電機12から供給された場合には、要求される明るさよりも明るく点灯する。また、電気負荷15としての熱線は、性能保証電圧範囲の下限値を越える電圧がバッテリ11及び発電機12から供給された場合には、要求される発熱量よりも多く発熱する。さらに、電気負荷15としてのモータは、性能保証電圧範囲の下限値を越える電圧がバッテリ11及び発電機12から供給された場合には、要求されるトルク及び回転速度よりも高トルク及び高回転速度で駆動する。
【0016】
なお、以下では、要求される機能を満足できる最低電圧値、すなわち、性能保証電圧範囲の下限値を最低電圧値VLと称し、電圧センサ17によって検出される電源ライン13の電圧値、すなわちバッテリ11及び発電機12に依存する電圧値を電源電圧値VBと称するものとする。
【0017】
以上のように構成される本実施形態の電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、図2に示すような一連の手順にしたがって、電気負荷15に接続された半導体スイッチ14をPWM制御することにより、電気負荷15に対して供給される実効電力の最適化を図る。なお、ここでは、説明の便宜上、1つの電気負荷15を制御対象として、当該電気負荷15に要求される機能を満足できる最低電圧値VLを越える電源電圧値VBが供給されている場合に、当該電気負荷15でのエネルギ消費が、最低電圧値VLが連続的に電気負荷15に対して印加されたときと同等となるように、当該電気負荷15に対する電力供給を制御するものとして説明するが、この負荷制御部16による制御は、電力供給対象となる全ての電気負荷15に対して並行して行われるものである。
【0018】
まず、負荷制御部16は、図2に示すように、ステップS1において、オン/オフ入力信号D1がオン状態を示すものであるか否かを判定する。すなわち、負荷制御部16は、制御対象とする電気負荷15を駆動させるような操作がユーザによって行われたか否かを判定する。ここで、負荷制御部16は、オン/オフ入力信号D1がオフ状態を示すものであった場合には、電気負荷15に対して電力供給を行う必要がないことから、オン状態を示すオン/オフ入力信号D1が入力されるまで待機する。一方、負荷制御部16は、オン/オフ入力信号D1がオン状態を示すものであった場合には、ステップS2において、電圧センサ17によって検出される電源ライン13の電源電圧値VBを読み込み、ステップS3において、電源ライン13の電源電圧値VBが電気負荷15に要求される機能を満足できる最低電圧値VLよりも高いか否かを判定する。
【0019】
ここで、電源電圧値VBが最低電圧値VLよりも高い状態とは、電気負荷15が要求される機能を十分に発揮しており、過剰なエネルギを消費している状態である。そのため、電源電圧値VBが最低電圧値VLよりも高いと判定した場合には、負荷制御部16は、当該電気負荷15のエネルギ消費量を減少させるべく、ステップS4において、当該電気負荷15に接続された半導体スイッチ14を、デューティ比=(最低電圧値VL/電源電圧値VB)でPWM制御する。このように、負荷制御部16は、デューティ比を(最低電圧値VL/電源電圧値VB)に設定して半導体スイッチ14をPWM制御することによって、最低電圧値VLよりも大きい電源電圧値VBが供給される場合であっても、電気負荷15に対して供給される実効電力を、最低電圧値VLが連続的に当該電気負荷15に対して印加されたときに消費される電力と同等にすることができる。
【0020】
一方、負荷制御部16は、電源電圧値VBが最低電圧値VL以下であると判定した場合には、電気負荷15に対して最大限の電力供給が行われるように、ステップS5において、デューティ比を1として当該電気負荷15に接続された半導体スイッチ14をPWM制御する。なお、PWM制御を行う際の半導体スイッチ14のスイッチング周波数は、電気負荷15の種類に応じて異なる値とすることが望ましい。具体的には、電気負荷15が灯火系バルブや熱線等である場合には、半導体スイッチ14のスイッチング周波数を200Hz以下程度に設定し、電気負荷15がモータである場合には、その慣性に応じて1kHz〜20Hz程度に設定する。勿論、半導体スイッチ14のスイッチング周波数の値は、電気負荷15が要求される機能を満足できるレベルを実現できる値であれば、以上の例に限らず任意の値に設定してもよい。
【0021】
次に、負荷制御部16は、ステップS6において、オン/オフ入力信号D1がオフ状態を示すものに変化したか否かを判定し、引き続きオン状態を示すものであった場合には、制御を継続するために、ステップS2からの処理を繰り返す一方で、オフ状態を示すものに変化した場合には、そのまま一連の処理を終了する。なお、負荷制御部16は、ステップS2からステップS6までの処理を、例えば10msec程度のルーチン周期で実行する。勿論、このルーチン周期の値は、電気負荷15が要求される機能を満足できるレベルを実現できる値であれば、以上の例に限らず任意の値に設定してもよい。
【0022】
以上のように、本実施形態の電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、半導体スイッチ14をPWM制御することにより、電気負荷15に対して供給される実効電力を最適化することができる。
【0023】
ところで、本実施形態の電力供給システムにおいては、図2に示す一連の手順にしたがった処理が行われることで、電気負荷15の省エネルギ駆動を行うことが可能となるが、電気負荷15によっては、全ての状況で省エネルギ駆動するのではなく、状況によってはできる限り高い電圧を当該電気負荷15に対して印加し、要求される機能よりも高い性能で当該機能を実行した方が望ましい場合もある。例えば、冬場における乗車直後に用いられることが多いPTCヒータ(Positive Temperature Coefficient)等の暖房機器やウィンドウシールドの曇りを晴らす熱線のような電気負荷15を駆動制御する際には、乗員のニーズに応じて、急速に暖房したり、急速にウィンドウシールドの曇りを晴らしたりするように、当該電気負荷15を駆動するのが望ましい場合がある。
【0024】
そこで、本実施形態の電力供給システムにおいては、このような状況に対応すべく、制御対象の電気負荷15に対して省エネルギ駆動を行うことが可能な状況であるか否かを判定し、可能であると判定した場合にのみ、電気負荷15の省エネルギ駆動を行うようにしてもよい。
【0025】
具体的には、本実施形態の電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、図2に示した一連の手順に代えて、図3に示すような一連の手順にしたがって、半導体スイッチ14をPWM制御することにより、電気負荷15に対して供給する電力の最適化を図るようにしてもよい。
【0026】
すなわち、負荷制御部16は、図3に示すように、ステップS1においてオン/オフ入力信号D1がオン状態を示すものであった場合に、ステップS11において、制御対象の電気負荷15に対して省エネルギ駆動を行うことが可能な状況であるか否かを判定する。例えば、上述した冬場における乗員のニーズに応えるような制御を行う場合には、負荷制御部16は、外気温度を検出する図示しない外気温センサによって検出される外気温度値に基づいて、電気負荷15に対して省エネルギ駆動を行うことが可能な状況であるか否かを判定することができる。
【0027】
そして、負荷制御部16は、電気負荷15の省エネルギ駆動を行うことが可能な状況であると判定した場合には、ステップS2以降の処理へと移行し、電圧センサ17によって検出される電源ライン13の電源電圧値VBと電気負荷15に要求される機能を満足できる最低電圧値VLとに基づいて、当該電気負荷15に接続された半導体スイッチ14のPWM制御を行う。一方、負荷制御部16は、電気負荷15の省エネルギ駆動を行うことが可能な状況でないと判定した場合には、ステップS5へと処理を移行し、電気負荷15に対して最大限の電力供給が行われるように、デューティ比を1として当該電気負荷15に接続された半導体スイッチ14をPWM制御する。
【0028】
このように、本実施形態の電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、制御対象の電気負荷15に対して省エネルギ駆動を行うことが可能な状況であるか否かを判定し、可能であると判定した場合にのみ、電気負荷15の省エネルギ駆動を行うことにより、乗員のニーズと電気負荷15に対して供給される実効電力の最適化とを両立させることも可能となる。
【0029】
以上詳細に説明したように、本実施形態の電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、電圧センサ17によって検出される電源電圧値VBと電気負荷15に要求される機能を満足できる最低電圧値(性能保証電圧範囲の下限値)VLとに基づいて、当該電気負荷15に接続された半導体スイッチ14をPWM制御することにより、電気負荷15に対して供給される実効電力の最適化を図るようにしている。したがって、本実施形態の電力供給システムによれば、電気負荷15の性能保証電圧範囲の下限値よりも大きい電源電圧値が供給される場合であっても、性能保証電圧範囲の下限値が連続的に当該電気負荷15に対して印加されたときと同等の状況を作り出すことができ、電気負荷15における不必要なエネルギ消費を確実に抑制することができる。そして、その結果として、発電機12の駆動トルクを確実に減少して、エンジンの燃料消費量の削減、ひいては、排出される二酸化炭素量の削減を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態の電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、制御対象の電気負荷15に対して省エネルギ駆動を行うことが可能な状況であるか否かを判定し、可能であると判定した場合に上述した半導体スイッチ14のPWM制御により電気負荷15の省エネルギ駆動を行うようにすれば、乗員のニーズと電気負荷15に対して供給される実効電力の最適化とを両立させることも可能となる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、本発明を適用した第2の実施形態の電力供給システムについて説明する。
【0032】
本実施形態は、蓄電池としてのバッテリの充電状態を検知し、これに基づいて、発電機の発電電圧を最適化する機能を有する電力供給システムに本発明を適用した例である。なお、本実施形態の電力供給システムにおいて、電気負荷への電力供給の最適化に関わる基本部分については上述した第1の実施形態と同様であるので、以下、第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
本実施形態の電力供給システムは、図4に示すように、上述したバッテリ11、発電機12、半導体スイッチ14、電気負荷15、負荷制御部16、電圧センサ17、及び電源ライン13の他に、発電機12を制御する発電制御部21を備える。
【0034】
発電制御部21は、電圧センサ17によって検出される電源電圧値に基づいて、バッテリ11の充電状態を検知する。すなわち、発電制御部21は、電圧センサ17によって検出される電源電圧値と発電機12の発電電圧値との差分に基づいて、バッテリ11の放電電圧を推定し、当該バッテリ11の充電状態を検知する。そして、発電制御部21は、検知したバッテリ11の充電状態に基づいて、不必要に高電力の発電を行わないように発電機12の駆動回転数を制御し、発電電圧を最適化する。
【0035】
このような電力供給システムにおいては、バッテリ11の放電電圧と最適化された発電機12の発電電圧とに基づく電力が、所定の電源ライン13を介して、半導体スイッチ14に接続された電気負荷15に対して供給されることになる。そして、この電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、先に図2又は図3に示したような一連の手順にしたがって、半導体スイッチ14をPWM制御することにより、第1の実施形態の電力供給システムと同様に、電気負荷15に対して供給される実効電力の最適化を図ることができる。
【0036】
以上詳細に説明したように、本実施形態の電力供給システムにおいては、電圧センサ17によって検出される電源電圧値に基づいて、バッテリ11の充電状態を検知し、検知したバッテリ11の充電状態に基づいて、発電機12の発電電圧を制御する発電制御部21を備えることにより、発電機12の発電電圧を最適化しつつ、電気負荷15に対して供給される実効電力の最適化を図ることができる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、本発明を適用した第3の実施形態の電力供給システムについて説明する。
【0038】
本実施形態は、駆動電圧が異なる複数の電気負荷(12V系負荷と36V系負荷)を混載する車両の電力供給システムに本発明を適用した例であり、12V系の電気負荷と36V系の電気負荷それぞれに対して供給される実効電力をPWM制御によって最適化するものである。
【0039】
本実施形態の電力供給システムは、図5に示すように、低電圧用の電力供給電源として、12V近傍の電圧を放電する低電圧蓄電池としてのバッテリ11aを備えるとともに、高電圧用の電力供給電源として、36V近傍の電圧を放電する高電圧蓄電池としてのバッテリ11bと、36V近傍の電圧を発電する発電機31とを備える。バッテリ11aは電源ライン13aに接続されており、バッテリ11aから供給される電力は、電源ライン13aを介して、半導体スイッチ14aに接続された12V系の電気負荷15aに対して供給される。一方、バッテリ11b及び発電機31から供給される電力は、電源ライン13bに接続されており、電源ライン13bを介して、半導体スイッチ14bに接続された36V系の電気負荷15bに対して供給されるとともに、36V近傍の直流電圧を12V近傍の直流電圧に変換するDC−DCコンバータ32によって電圧変換された後、電源ライン13aを介して、半導体スイッチ14aに接続された12V系の電気負荷15aに対しても供給される。すなわち、この電力供給システムは、36V系の電力供給電源から供給される電力を、DC−DCコンバータ32で降圧して12V系の電気負荷11aに対しても供給可能な多電圧電源構成とされる。
【0040】
また、本実施形態の電力供給システムでは、電源ライン13aに電圧センサ17a、電源ライン13bに電圧センサ17bがそれぞれ接続され、これら電圧センサ17a,17bによって各電源ライン13a,13bの電圧値(12V系の電源電圧値および36V系の電源電圧値)を検出できるようになっている。
【0041】
このような電力供給システムにおいて、負荷制御部16は、電気負荷15a,15bのそれぞれをオン/オフするためのオン/オフ入力信号D1がユーザの操作に応じて入力されると、これら電気負荷15a,15bのそれぞれに接続された半導体スイッチ14a,14bに対してオン/オフ出力信号D2を供給する。これにより、オン/オフ出力信号D2に応じて電気負荷15a,15bのそれぞれに接続された半導体スイッチ14a,14bの開閉が切替えられて、電気負荷15a,15bに対する電力供給が制御される。
【0042】
また、負荷制御部16は、電力供給対象となる各電気負荷15a,15bの性能保証電圧範囲の下限値を記憶しており、電気負荷15aをオン状態とする場合には、電源ライン13aに接続された電圧センサ17aによって検出される電圧値を読み込んで、この電圧値と、記憶している電気負荷15aの性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて、半導体スイッチ14aをPWM制御し、また、電気負荷15bをオン状態とする場合には、電源ライン13bに接続された電圧センサ17bによって検出される電圧値を読み込んで、この電圧値と、記憶している電気負荷15bの性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて、半導体スイッチ14bをPWM制御することで、これらの各電気負荷15a,15bに供給される実効電力を最適化する。
【0043】
本実施形態の電力供給システムにおいても、上述した第1の実施形態の電力供給システムと同様に、負荷制御部16の制御のもとで、先に図2又は図3に示したような一連の手順にしたがって、半導体スイッチ14a,14bをPWM制御する。これにより、電力供給システムにおいては、電気負荷15aは勿論のこと電気負荷15bに対して供給される実効電力も最適化することができる。
【0044】
以上詳細に説明したように、本実施形態の電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、電圧センサ17aによって検出される電圧値と電気負荷15aの性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて半導体スイッチ14aをPWM制御し、また、電圧センサ17bによって検出される電圧値と電気負荷15bの性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて半導体スイッチ14bをPWM制御することで、駆動電圧が異なる複数の電気負荷15a,15bが搭載されている場合であっても、これらの各電気負荷15a,15bに供給される実効電力をそれぞれ最適化することができる。
【0045】
(第4の実施形態)
次に、本発明を適用した第4の実施形態の電力供給システムについて説明する。
【0046】
本実施形態の電力供給システムは、上述した第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせ、低電圧用の電気負荷と高電圧用の電気負荷とを混載した場合に、発電機の発電電圧を最適化しつつ、駆動電圧が異なる複数の電気負荷に対して供給される実効電力をPWM制御によって最適化するものである。したがって、この第4の実施形態の説明においては、第2の実施形態及び第3の実施形態の説明と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施形態の電力供給システムでは、図6に示すように、電源ライン13aにバッテリ11aが接続され、電源ライン13bにバッテリ11b及び発電機31が接続されている。そして、バッテリ11aからの電力は半導体スイッチ14aに接続された12V系の電気負荷15aに供給され、バッテリ11b及び発電機31からの電力は、半導体スイッチ14bに接続された36V系の電気負荷15bに供給されるとともに、DC−DCコンバータ32によって電圧変換された後に、半導体スイッチ14aに接続された12V系の電気負荷15aに対しても供給される。また、電源ライン13aには電圧センサ17a、電源ライン13bには電圧センサ17bがそれぞれ接続され、これら電圧センサ17a,17bによって各電源ライン13a,13bの電圧値を検出できるようになっている。
【0048】
さらに、本実施形態の電力供給システムでは、発電機31を制御する発電制御部21を備える。発電制御部21は、電圧センサ17bによって検出される電圧値に基づいて、36V系のバッテリ11bの充電状態を検知し、検知した充電状態に基づいて、不必要に高電力の発電を行わないように発電機31の駆動回転数を制御し、発電電圧を最適化する。
【0049】
このような電力供給システムにおいては、バッテリ11aの放電電圧と最適化された発電機31の発電電圧とに基づく電力が、電源ライン13bを介して、半導体スイッチ14bに接続された電気負荷15bに対して供給されるとともに、DC−DCコンバータ32で降圧された後、電源ライン13aを介して、半導体スイッチ14aに接続された電気負荷15aに対しても供給されることになる。そして、この電力供給システムにおいては、負荷制御部16の制御のもとで、先に図2又は図3に示したような一連の手順にしたがって、半導体スイッチ14a,14bをPWM制御することにより、上述した第3の実施形態の電力供給システムと同様に、電気負荷15a,15bに対して供給される実効電力の最適化を図ることができる。
【0050】
以上詳細に説明したように、本実施形態の電力供給システムにおいては、電圧センサ17bによって検出される電圧値に基づいて、バッテリ11bの充電状態を検知し、検知したバッテリ11bの充電状態に基づいて、発電機31の発電電圧を制御する発電制御部21を備え、負荷制御部16の制御のもとで、駆動電圧が異なる複数の電気負荷15a,15bのそれぞれに接続された半導体スイッチ14a,14bをPWM制御することにより、発電機31の発電電圧を最適化しつつ、各電気負荷15a,15bに対して供給される実効電力の最適化を図ることができる。
【0051】
なお、以上説明した電力供給システムは本発明の一適用例であり、本発明が以上の例に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば具体的なハードウェア構成などにおいて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施形態の電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の電力供給システムにおいて、電気負荷に対して電力を供給する際の一連の手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態の電力供給システムにおいて、電気負荷に対して電力を供給する際の一連の手順の他の例を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】第3の実施形態の電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【図6】第4の実施形態の電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
11,11a,11b バッテリ
12,31 発電機
13,13a,13b 電源ライン
14,14a,14b 半導体スイッチ
15,15a,15b 電気負荷
16 負荷制御部
17,17a,17b 電圧センサ
21 発電制御部
32 DC−DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給電源が接続された電源ラインの電圧値を検出する電源電圧検出手段と、
電力を供給する対象である負荷に接続されたPMW制御可能なスイッチ素子と、
前記電源電圧検出手段によって検出される電圧値と前記負荷の性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて前記負荷に接続されたスイッチ素子をPWM制御して、前記負荷に対して供給される実効電力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記負荷の省エネルギ駆動を行うことが可能な状況であるか否かを判定し、可能であると判定した場合に、前記電源電圧検出手段によって検出される電圧値と前記負荷の性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて前記負荷に接続されたスイッチ素子をPWM制御することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電源電圧検出手段によって検出される電圧値をVB、前記負荷の性能保証電圧範囲の下限値をVLとしたとき、VB>VLの場合に、前記負荷に接続されたスイッチ素子を、デューティ比=(VL/VB)でPWM制御することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記電力供給電源は、蓄電池及び発電機であり、
前記電源電圧検出手段によって検出される電圧値に基づいて、前記蓄電池の充電状態を検知し、検知した充電状態に基づいて、前記発電機の発電電圧を制御する発電制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項5】
電力供給電源が接続された電源ラインの電圧値を検出し、検出した電源ラインの電圧値と電力を供給する対象である負荷の性能保証電圧範囲の下限値とに基づいて、前記負荷に接続されたスイッチ素子をPWM制御することで、前記負荷に対して供給される実効電力を制御することを特徴とする電力供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−304515(P2006−304515A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123859(P2005−123859)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】