説明

電力制御装置および電力制御方法

【課題】電子機器が駆動する負荷状態に応じて、本来、電子機器が駆動するために必要とする最適な動作制御をし、当該電子機器の駆動に応じた省電力制御を実現する電力制御装置および電力制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の電力制御装置は、電子機器の消費電力を制御する電力制御装置であって、電子機器の消費電力を取得する消費電力取得部と、消費電力取得部によって取得された消費電力に基づいて、電子機器の消費電力の移動平均を算出する移動平均算出部と、移動平均算出部によって算出された移動平均に基づいて、電子機器が駆動する負荷状態を判定する負荷状態判定部と、電子機器を、負荷状態判定部によって判定された負荷状態に対応する上限を設定する制限モードで動作させるか、当該上限を設定しない制限解除モードで動作させるかを制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の消費電力を制御する電力制御装置および電力制御方法に関し、より特定的には、電子機器が駆動する負荷状態に応じて、電子機器の動作を制御する電力制御装置および電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、携帯型ノートパソコン等では、充電を繰り返しながら利用できる電池が格納されるバッテリパックを備え、AC(Alternating Current)電源のない場所であってもバッテリを駆動させることによって、システム本体を動作させている。
【0003】
そこで、このような携帯型ノートパソコン等に代表される携帯型電子機器については、AC電源のない場所であっても、長時間、使用できるように、いわゆる低消費電力技術が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されるコンピュータ装置では、バッテリパックから供給される電力に基づいて、CPU(Central Processing Unit)を、高パフォーマンスで動作させるか、低パフォーマンスで動作させるかを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−182522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術におけるコンピュータ装置では、バッテリ等からCPUに供給する電力およびバッテリ情報に基づいて、CPUに供給する電源電力を制御しており、CPUの使用状況(負荷状態)に応じてCPUの動作を制御していない。その結果、例えば、必要以上に省電力制御がなされ、電子機器におけるCPUのパフォーマンスが発揮されないという問題があった。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、電子機器が駆動する負荷状態に応じて、本来、電子機器が駆動するために必要とする最適な動作制御をし、当該電子機器の駆動に応じた省電力制御を実現する電力制御装置および電力制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電力制御装置は、電子機器の消費電力を制御する電力制御装置であって、電子機器の消費電力を取得する消費電力取得部と、消費電力取得部によって取得された消費電力に基づいて、電子機器の消費電力の移動平均を算出する移動平均算出部と、移動平均算出部によって算出された移動平均に基づいて、電子機器が駆動する負荷状態を判定する負荷状態判定部と、電子機器を、負荷状態判定部によって判定された負荷状態に対応する上限を設定する制限モードで動作させるか、当該上限を設定しない制限解除モードで動作させるかを制御する制御部とを備える。
【0009】
また、好ましい制御部は、負荷状態判定部によって判定された負荷状態に対応する上限を設定する制限期間であるか、当該上限を設定しない制限解除期間であるかを示すタイミング信号に基づいて、制限モードか制限解除モードかを選択することを特徴とする。
【0010】
また、好ましい負荷状態判定部は、移動平均算出部によって算出された移動平均に基づいて、電子機器の消費電力に対応して予め設定されている負荷帯を判定することを特徴とする。
【0011】
さらに、好ましくは、制御部は、制限モードでは、負荷帯に対応して、電子機器に供給される電源電力の上限を設定するか、または電子機器のCPUに電力の上限を設定するか、または電子機器のCPUの周波数の上限を設定することを特徴とする。
【0012】
さらに、好ましくは、負荷帯は、複数の負荷帯に区分されることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、電子機器は、携帯型パソコン、携帯情報端末および携帯電話機のいずれかであることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の電力制御方法は、電子機器の消費電力を制御する電力制御装置が実行する電力制御方法であって、電子機器の消費電力を取得する消費電力取得ステップと、消費電力取得ステップで取得された消費電力に基づいて、電子機器の消費電力の移動平均を算出する移動平均算出ステップと、移動平均算出ステップで算出された移動平均に基づいて、電子機器が駆動する負荷状態を判定する負荷状態判定ステップと、電子機器について、負荷状態判定ステップで判定された負荷状態に対応する上限を設定して動作させる制限期間であるか、当該上限を設定しないで動作させる制限解除期間であるかを判定する制限期間判定ステップと、制限期間判定ステップで制限期間であると判定された場合、負荷状態判定ステップで判定された負荷状態に対応する上限を設定し、制限期間判定ステップで制限解除期間であると判定された場合、当該上限を設定しないで、電子機器を動作させるように制御する電子機器制御ステップとを含む。
【0015】
また、上記目的を達成するために、上述した本発明の電力制御装置の各構成が行うそれぞれの処理は、一連の処理手順を与える電力制御方法として捉えることができる。この方法は、一連の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムの形式で提供される。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で、コンピュータに導入されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明の電力制御装置および電力制御方法によれば、電子機器が駆動する負荷状態に応じて、本来、電子機器が駆動するために必要とする最適な動作制御をすることができ、当該電子機器の駆動に応じた省電力制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力制御装置および電力制御方法を用いたコンピュータ装置10の概略構成を示す図
【図2】本発明の一実施形態に係る電力制御装置100の概略を示す機能ブロック図
【図3】本発明の一実施形態に係る電力制御装置100が実行する電力制御方法300の処理の流れを示すフローチャート
【図4】CPU200の消費電力および移動平均を示す図
【図5】CPU200の消費電力の移動平均と、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定した後のCPU200の消費電力とを示す図
【図6】CPU200を、制限期間に制限モードで動作させ、制限解除期間に制限解除モードで動作させた場合における、CPU200の消費電力の移動平均の算出方法を示す図
【図7】CPU200の消費電力および移動平均と、図6に示したように制限解除期間を設けた場合における、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定した後のCPU200の消費電力とを示す図
【図8】CPU200の消費電力と、制限解除期間を設けない場合および制限解除期間を設けた場合における制限後のCPU200の消費電力との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力制御装置および電力制御方法を用いたコンピュータ装置10の概略構成を示す図である。図1において、コンピュータ装置10は、EC(エンベデッドコントローラ)/KBC(キーボードコントローラ)電源制御マイコン11と、PCH(プラットフォームコントロールハブ)12と、LCD(Liquid Crystal Display)輝度制御13と、ポインティングデバイス制御14と、バッテリ制御15と、ファン制御16と、CPU200とを備える。
【0019】
なお、本実施形態では、例えば、ノートパソコン等に代表される携帯型パソコンについて説明するが、本発明の一実施形態に係る電力制御装置および電力制御方法は、携帯型パソコンに限定して適用されるものではない。例えば、本発明の一実施形態に係る電力制御装置および電力制御方法は、携帯情報端末および携帯電話機に適用されても構わない。
【0020】
EC/KBC電源制御マイコン11は、PECI(Platform Environment Control Interface)3.0を介して、CPU200と通信可能であって、CPU200の消費電力を取得し、さらに、CPU200を制御する。例えば、EC/KBC電源制御マイコン11は、CPUに供給する電源電力を制御したり、CPUが駆動する電力を制御したり、CPUが駆動する周波数を制御したりする。なお、ここでは、EC/KBC電源制御マイコン11とCPU200とは、PECI3.0を介して通信する構成であるが、当該構成に限定されるものではない。例えば、CPU200の電流および電圧を監視して、CPU200の消費電力を算出できる構成であればよい。
【0021】
また、EC/KBC電源制御マイコン11は、SMBus(System Management Bus)を介して、LCD輝度制御13、キーボードおよびマウス等のポインティングデバイス制御14、バッテリ制御15、およびファン制御16を管理している。なお、EC/KBC電源制御マイコン11が制御/管理する機能について、ここでは、一例を示すものであって、その他、電源スイッチの監視制御等、EC/KBC電源制御マイコン11は、多種の制御および管理機能を有している。
【0022】
以下、EC/KBC電源制御マイコン11が制御/管理するCPUの動作制御機能について、詳しく説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係る電力制御装置100の概略を示す機能ブロック図である。図2において、電力制御装置100は、消費電力取得部110と、移動平均算出部120と、負荷状態判定部130と、制御部140とを備え、CPU200の消費電力を制御している。
【0024】
消費電力取得部110は、CPU200で消費されている消費電力を取得する。なお、消費電力取得部110は、電流および電圧を監視することによって、CPU200で消費されている消費電力を取得しても構わない。
【0025】
移動平均算出部120は、消費電力取得部110によって取得された消費電力に基づいて、当該CPU200の消費電力の移動平均を算出する。より詳細には、実際のCPU200の消費電力は、細かく変動するものであるため、CPU200の消費電力の時系列データを平滑化する移動平均を算出する。なお、移動平均には、例えば、単純移動平均、加重移動平均、および指数移動平均等が含まれる。
【0026】
負荷状態判定部130は、移動平均算出部120によって算出された移動平均に基づいて、CPU200が駆動する負荷状態を判定する。上述したように、実際のCPU200の消費電力は、細かく変動するものであるため、負荷状態判定部130は、平滑化されたCPU200の消費電力の移動平均を用いて、CPU200が駆動する負荷状態を判定する。
【0027】
制御部140は、CPU200の動作を制御する。具体的には、制御部140は、CPU200を制限モードで動作させるか、制限解除モードで動作させるかを制御する。ここで、制限モードとは、負荷状態判定部130によって判定された負荷状態に対応する上限が設定された状態を示し、制限解除モードとは、当該上限が設定されていない状態を示す。
【0028】
なお、制御部140は、負荷状態判定部130によって判定された負荷状態に対応する上限を設定する制限期間であるか、当該上限を設定しない制限解除期間であるかを示すタイミング信号(図示せず)に基づいて、制限モードと制限解除モードとの切り替えを制御する。
【0029】
このように、電力制御装置100は、CPU200で消費されている消費電力に基づいて、CPU200が駆動する負荷状態に応じて、CPU200の動作を制御している。
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る電力制御装置100が実行する電力制御方法について、処理の流れを詳しく説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る電力制御装置100が実行する電力制御方法300の処理の流れを示すフローチャートである。図3において、電力制御方法300は、消費電力取得ステップS310と、移動平均算出ステップS320と、負荷状態判定ステップS330と、制限期間判定ステップS340と、電源電力上限設定ステップS350と、電源電力上限設定解除ステップS360と、電源電力供給ステップS370とを含む。ここでは、一例として、制御部140は、CPU200に供給する電源電力を制御することによって、CPU200の動作を制御するものとしている。
【0031】
消費電力取得ステップS310において、消費電力取得部110は、CPU200の消費電力を取得する。
【0032】
移動平均算出ステップS320において、移動平均算出部120は、消費電力取得ステップで取得された消費電力に基づいて、当該CPU200の消費電力の移動平均を算出する。図4は、CPU200の消費電力および移動平均を示す図である。図4において、横軸を時間軸として、CPU200の消費電力(細点線で示す)と、CPU200の消費電力の移動平均(太実線)とを示している。CPU200の消費電力の波形は、実際には、さらに細かく変動が激しいものであって、ここでは、概略的に示している。したがって、移動平均算出部120は、変動が激しいCPU200の消費電力に基づいて、移動平均を算出することによって、CPU200の消費電力の時系列データを平滑化している。
【0033】
負荷状態判定ステップS330において、負荷状態判定部130は、移動平均算出ステップS320で算出された移動平均に基づいて、CPU200が駆動する負荷状態を判定する。上述したように、CPU200の消費電力の波形は、実際には、さらに細かく変動が激しいものであるため、負荷状態判定部130は、平滑化されたCPU200の消費電力の移動平均を用いて、CPU200が駆動する負荷状態を判定する。
【0034】
図5は、CPU200の消費電力の移動平均と、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定した後のCPU200の消費電力とを示す図である。図5(a)には、CPU200の消費電力の移動平均を用いて、CPU200の消費電力に対応する負荷帯が示されている。図5(a)において、CPU200の消費電力に対応する負荷帯は、高負荷、中負荷、低負荷、および無負荷に区分されている。負荷状態判定ステップS330において、負荷状態判定部130は、移動平均算出ステップS320で移動平均算出部120によって平滑化されたCPU200の消費電力の移動平均に基づいて、CPU200の駆動について、高負荷か、中負荷か、低負荷か、または無負荷かを判定している。
【0035】
例えば、CPU200の消費電力の移動平均が第1の閾値以上第2の閾値未満である場合、負荷状態判定部130は、CPU200が駆動している負荷状態を低負荷であると判定し、CPU200の消費電力の移動平均が第2の閾値以上第3の閾値未満である場合、負荷状態判定部130は、CPU200が駆動している負荷状態を中負荷であると判定し、CPU200の消費電力の移動平均が第3の閾値以上である場合、負荷状態判定部130は、CPU200が駆動している負荷状態を高負荷であると判定すればよい。なお、高負荷、中負荷、低負荷、および無負荷で示される負荷帯の区分、および当該負荷帯の区分に対応する第1〜第3の閾値は、例えば、メモリ等の記録手段に予め記録されていればよい。
【0036】
なお、本実施形態では、負荷帯の区分は、高負荷、中負荷、低負荷、および無負荷で示される4区分であるが、これらに限定されるものではなく、1つの閾値を用いて、2区分であっても構わないし、4つ以上の閾値を用いて、さらに多くの区分を用いても構わない。
【0037】
制限期間判定ステップS340において、制御部140は、CPU200について、負荷状態判定ステップS330で判定された負荷状態に対応する上限を設定して動作させる制限期間であるか、当該上限を設定しないで動作させる制限解除期間であるかを判定する。ここで、制限期間および制限解除期間は、例えば、電源制御装置100、およびCPU200の性能等に基づいて、予め設定されているものとし、制御部140は、当該予め設定された制限期間または制限解除期間を示すタイミング信号を受信して、制限期間および制限解除期間を判定すればよい。
【0038】
そして、制御部140は、以降のステップにおいて、CPU200を、制限期間は制限モードで動作させて、制限解除期間は制限解除モードで動作させるように制御する。具体的には、制限期間判定ステップS340において、制御部140は、制限期間であると判定した場合、電源電力上限設定ステップS350の処理に進み、制限解除期間であると判定した場合、電源電力上限設定解除ステップS360の処理に進む。
【0039】
その後、制御部140は、電源電力上限設定ステップS350または電源電力上限設定解除ステップS360で電源電力の上限を設定するか解除するかを制御した上で、電源電力供給ステップS370において、CPU200に電源電力を供給する。
【0040】
以下、電源電力上限設定ステップS350および電源電力上限設定解除ステップS360における制御部140が実行する処理について、詳細に説明する。
【0041】
電源電力上限設定ステップS350において、制御部140は、負荷状態判定ステップS330で判定されたCPU200が駆動している負荷状態に対応して、CPU200に供給する電源電力の上限を設定する。より具体的には、例えば、CPU200が駆動する負荷が低負荷である場合、高負荷または中負荷で必要とされる電源電力をCPU200に供給することは効率が悪い。したがって、CPU200が駆動する負荷が低負荷である場合、CPU200には、低負荷で必要とされる電源電力が供給されれば十分であるため、制御部140は、低負荷に対応する上限を設定することによって、CPU200に必要以上の電源電力を供給しないように制御する。
【0042】
ここで、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定した後のCPU200の消費電力について、説明する。図5(b)には、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定した後のCPU200の消費電力が示されている。図5(b)において、一旦、低負荷に対応する上限を設定して、CPU200に供給する電源電力を制限すれば、それ以降、CPU200は制限された電源電力で駆動するため、CPU200の消費電力は上がらないまま維持される。そして、CPU200の消費電力は上がらないまま維持されれば、CPU200の消費電力の移動平均も低いままであるため、負荷帯の区分は、低負荷が維持される。
【0043】
換言すれば、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定する前のCPU200の消費電力の移動平均(図5(a)に示す)を見ると、負荷帯の区分が、一旦、低負荷になったとしても、その後、中負荷および高負荷に遷移している。本来、CPU200に高い電源電力を供給して、CPU200を高速に駆動させたい場合であっても(中負荷および高負荷)、一旦、低負荷に対応する電源電力に制限されれば、負荷帯の区分は、低負荷が維持されるおそれがある。
【0044】
したがって、負荷状態判定部130によって判定された負荷状態に対応する上限を設定しない制限解除期間を設けて、制御部140は、CPU200を制限解除モードで動作させている。
【0045】
電源電力上限設定解除ステップS360において、制御部140は、CPU200の駆動に応じて、所望の電源電力をCPU200に供給するように制御する。具体的には、例えば、CPU200が駆動する負荷が低負荷である場合、電源電力上限設定ステップS350で、一旦、低負荷に対応する上限を設定されていた場合であっても、制限解除期間では、当該設定された上限を解除して、CPU200が駆動するために、本来、必要とする電源電力を供給するようにする。ここで、CPU200が駆動するために、本来、必要とする電源電力とは、必ずしも、高負荷または中負荷で必要とされる電源電力とは限らず、無負荷または低負荷で必要とされる低い電源電力も含まれる。
【0046】
ここで、本発明の一実施形態に係るCPU200の消費電力の移動平均の算出方法について、説明する。図6は、CPU200を、制限期間に制限モードで動作させ、制限解除期間に制限解除モードで動作させた場合における、CPU200の消費電力の移動平均の算出方法を示す図である。図6において、100[ms]毎にCPU200の消費電力を取得して、100[ms]毎に取得された5回分の消費電力に基づいて、CPU200の消費電力の移動平均が算出されている。
【0047】
なお、ここでは、CPU200の消費電力の移動平均は、100[ms]毎に取得された5回分の消費電力に重み付けをせずに単純な平均を算出する単純移動平均として、説明するが、CPU200の消費電力の移動平均は、その他の移動平均であっても構わない。例えば、加重移動平均では、100[ms]毎に取得された5回分の消費電力において、直近から徐々に線形的に減少する重み付けをして(係数を掛けて)、移動平均が算出される。また、指数移動平均では、100[ms]毎に取得された5回分の消費電力において、直近から徐々に指数関数的に減少する重み付けをして(係数を掛けて)、移動平均が算出される。
【0048】
1周期(1000[ms])のうち、900[ms]は制限期間であって、100[ms]は制限解除期間とする。具体的には、先ず、移動平均算出部120は、0〜100[ms]、100〜200[ms]、200〜300[ms]、300〜400[ms]、および400〜500[ms]の5回分の消費電力に基づいて、CPU200の消費電力の移動平均を算出する(第1の移動平均)。そして、負荷状態判定部130は、第1の移動平均に基づいて、CPU200が駆動する負荷状態を判定する。ここで、制限期間である500〜600[ms]では、制御部140は、負荷状態判定部130によって判定された負荷状態に対応して、CPU200に供給する電源電力の上限を設定した上で、CPU200に電源電力を供給する。
【0049】
次に、100[ms]ずらして、移動平均算出部120は、100〜200[ms]、200〜300[ms]、300〜400[ms]、400〜500[ms]、および500〜600[ms]の5回分の消費電力に基づいて、CPU200の消費電力の移動平均を算出する(第2の移動平均)。そして、負荷状態判定部130は、第2の移動平均に基づいて、CPU200が駆動する負荷状態を判定する。ここで、制限期間である600〜700[ms]では、制御部140は、負荷状態判定部130によって判定された負荷状態に対応して、CPU200に供給する電源電力の上限を設定した上で、CPU200に電源電力を供給する。
【0050】
同様に、第3の移動平均および第4の移動平均が算出されて、CPU200に供給する電源電力の上限が設定された上で、CPU200に電源電力が供給される。
【0051】
ここまでは、CPU200に供給される電源電力が制限された状態において、CPU200の消費電力の移動平均を算出し、当該算出された移動平均に基づいて、さらに、繰り返して、CPU200に供給される電源電力が制限されている。
【0052】
第5の移動平均に関して、移動平均算出部120は、400〜500[ms]、500〜600[ms]、600〜700[ms]、700〜800[ms]、および800〜900[ms]の5回分の消費電力に基づいて、CPU200の消費電力の移動平均を算出する。しかし、制限解除期間である900〜1000[ms]では、制御部140は、設定されていたCPU200に供給する電源電力の上限を解除した上で、CPU200に電源電力を供給する。換言すれば、制限解除期間である900〜1000[ms]では、CPU200が駆動するために、本来、CPU200が必要とする電源電力を供給する。
【0053】
さらに、第6の移動平均に関して、CPU200が駆動するために、本来、CPU200が必要とする電源電力が供給された状態において、移動平均算出部120は、CPU200の消費電力の移動平均を算出する。したがって、当該移動平均は、CPU200が駆動する本来の負荷状態を反映している。
【0054】
その結果、一旦、低負荷に対応する上限を設定されていた場合であっても、制限解除期間では、当該設定された上限を解除して、CPU200が駆動するために、本来、必要とする電源電力を供給するようにするため、CPU200が駆動する本来の負荷状態を反映して、CPU200に電力を供給することができる。
【0055】
電源電力供給ステップS370において、制御部140は、上述したようにCPU200に供給する電源電力の上限を設定するか解除するかを制御した上で、CPU200に電源電力を供給する。
【0056】
図7は、CPU200の消費電力および移動平均と、図6に示したように制限解除期間を設けた場合における、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定した後のCPU200の消費電力とを示す図である。図7(b)において、一旦、低負荷に対応する上限を設定して、CPU200に供給する電源電力を制限した場合であっても、上述したように制限解除期間を設けることによって、それ以降、CPU200が駆動する本来の負荷状態を反映させることができている。より具体的には、図5(b)と図7(b)とを比較して見ると、図5(b)では、負荷帯の区分が、一旦、低負荷になった場合、その後、負荷帯の区分は低負荷が維持されてしまうが、図7(b)では、負荷帯の区分が、一旦、低負荷になった場合であっても、その後、本来のCPU200の消費電力に応じて、負荷帯の区分は中負荷および高負荷に遷移している。
【0057】
また、図6に示したように制限解除期間を設けた場合における、CPU200が駆動する負荷状態に対応する上限を設定した後のCPU200の消費電力は、早期に、本来のCPU200の消費電力に追従することができる。
【0058】
図8は、CPU200の消費電力と、制限解除期間を設けない場合および制限解除期間を設けた場合における制限後のCPU200の消費電力との関係を示す図である。図8(a)では、CPU200の消費電力の移動平均と、制限解除期間を設けない場合における制限後のCPU200の消費電力との関係を示している。図8(b)では、CPU200の消費電力および当該消費電力の移動平均と、制限解除期間を設けた場合における制限後のCPU200の消費電力との関係を示している。
【0059】
例えば、負荷区分が中負荷から低負荷に遷移する場合、制限解除期間を設けない場合における制限後のCPU200の消費電力は、図8(a)に示すように、緩やかに変動して、負荷区分が中負荷から低負荷に遷移している。一方、負荷区分が中負荷から低負荷に遷移する場合、制限解除期間を設けた場合における制限後のCPU200の消費電力は、図8(b)に示すように、即座に変動して、負荷区分が中負荷から低負荷に遷移している。制限解除期間を設けて、本来、CPU200が必要とする電源電力を供給することによって、CPU200が駆動する本来の負荷状態を反映しているため、早期に、本来のCPU200の消費電力に追従することができる。
【0060】
以上のように、本発明の一実施形態に係る電力制御装置100および電力制御方法300によれば、CPU200が駆動する負荷状態に応じて、本来、CPU200が駆動するために必要とする最適な動作制御をすることができ、当該CPU200の駆動に応じた省電力制御を実現することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、制御部140は、CPU200に供給する電源電力を制御することによって、CPU200の動作を制限して電子機器の省電力制御を実現していたが、CPU200の動作を制御する手段は、これに限定されるものではない。
【0062】
例えば、制御部140が、CPU200に対して、CPU200が駆動する電力を制限するように制御しても構わない。具体的には、制御部140は、制限期間では、CPU200が駆動している負荷状態に対応して、CPU200に対して、CPU200が駆動する電力の上限を設定させた上で、CPU200の動作を制御する。一方、制御部140は、制限解除期間では、CPU200に対して当該設定された上限を解除させた上で、CPU200の動作を制御する。その結果、CPU200は、自身が消費する電力を抑制しつつ、CPU200が駆動する負荷状態に応じて、本来、CPU200が駆動するために必要とする最適な動作制御をすることができ、当該CPU200の駆動に応じた省電力制御を実現することができる。
【0063】
また、制御部140が、CPU200が駆動する周波数を制限するように、CPUの動作を制御しても構わない。具体的には、制御部140は、制限期間では、CPU200が駆動している負荷状態に対応して、CPU200が駆動する周波数(クロック)の上限を設定した上で、CPU200の動作を制御する。一方、制御部140は、制限解除期間では、CPU200に対して当該設定された上限を解除した上で、CPU200の動作を制御する。その結果、CPU200が消費する電力を抑制しつつ、CPU200が駆動する負荷状態に応じて、本来、CPU200が駆動するために必要とする最適な動作制御をすることができ、当該CPU200の駆動に応じた省電力制御を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、電子機器の消費電力を制御する電力制御装置等に利用可能であって、特に、省電力消費が要求される携帯型パソコン、携帯情報端末および携帯電話機等に有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 コンピュータ装置
11 EC/KBC電源制御マイコン
12 PCH
13 LCD輝度制御
14 ポインティングデバイス制御
15 バッテリ
16 ファン
100 電力制御装置
110 消費電力取得部
120 移動平均算出部
130 負荷状態判定部
140 制御部
200 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の消費電力を制御する電力制御装置であって、
前記電子機器の消費電力を取得する消費電力取得部と、
前記消費電力取得部によって取得された消費電力に基づいて、前記電子機器の消費電力の移動平均を算出する移動平均算出部と、
前記移動平均算出部によって算出された移動平均に基づいて、前記電子機器が駆動する負荷状態を判定する負荷状態判定部と、
前記電子機器を、前記負荷状態判定部によって判定された負荷状態に対応する上限を設定する制限モードで動作させるか、当該上限を設定しない制限解除モードで動作させるかを制御する制御部とを備える、電力制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記負荷状態判定部によって判定された負荷状態に対応する上限を設定する制限期間であるか、当該上限を設定しない制限解除期間であるかを示すタイミング信号に基づいて、前記制限モードか制限解除モードかを選択することを特徴とする、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記負荷状態判定部は、前記移動平均算出部によって算出された移動平均に基づいて、前記電子機器の消費電力に対応して予め設定されている負荷帯を判定することを特徴とする、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記制限モードでは、前記負荷帯に対応して、前記電子機器に供給される電源電力の上限を設定することを特徴とする、請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記制限モードでは、前記負荷帯に対応して、前記電子機器のCPU(Central Processing Unit)に電力の上限を設定することを特徴とする、請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記制限モードでは、前記負荷帯に対応して、前記電子機器のCPU(Central Processing Unit)の周波数の上限を設定することを特徴とする、請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記負荷帯は、複数の負荷帯に区分されることを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記電子機器は、携帯型パソコン、携帯情報端末および携帯電話機のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電力制御装置。
【請求項9】
電子機器の消費電力を制御する電力制御装置が実行する電力制御方法であって、
前記電子機器の消費電力を取得する消費電力取得ステップと、
前記消費電力取得ステップで取得された消費電力に基づいて、前記電子機器の消費電力の移動平均を算出する移動平均算出ステップと、
前記移動平均算出ステップで算出された移動平均に基づいて、前記電子機器が駆動する負荷状態を判定する負荷状態判定ステップと、
前記電子機器について、前記負荷状態判定ステップで判定された負荷状態に対応する上限を設定して動作させる制限期間であるか、当該上限を設定しないで動作させる制限解除期間であるかを判定する制限期間判定ステップと、
前記制限期間判定ステップで制限期間であると判定された場合、前記負荷状態判定ステップで判定された負荷状態に対応する上限を設定し、前記制限期間判定ステップで制限解除期間であると判定された場合、当該上限を設定しないで、前記電子機器を動作させるように制御する電子機器制御ステップとを含む、電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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