説明

電力変換システムの放電装置

【課題】車両が衝突した場合、主機(モータジェネレータ10)に接続されるインバータIVの入力端子に接続されるコンデンサ16を確実に放電することが困難なこと。
【解決手段】シリーズレギュレータ40は、コンデンサ16の電圧を降圧してU相の下側アームのドライブユニットDUに出力する。放電制御用フライバックコンバータFBdは、シリーズレギュレータ40の出力を入力としてU相の上側アームのドライブユニットDUに電力を出力する。衝突が検知されると、フォトカプラ54をオフ操作することで、シリーズレギュレータ54がオン状態となり、これにより放電制御が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の直列接続体を備えて且つ直流電源の電力を所定に変換する電力変換回路と、該電力変換回路の出力端子および前記直流電源間に介在するキャパシタと、前記電力変換回路および前記キャパシタと前記直流電源との間の電気経路を開閉する開閉手段とを備える電力変換システムに適用され、前記開閉手段が開状態とされる状況下、前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子を操作することで前記キャパシタの充電電圧を規定電圧以下に放電制御する放電制御手段を備える電力変換システムの放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車載主機としてのモータジェネレータに接続されるインバータ等は、その入力電圧が非常に高くなるため、通常、車載制御装置等によって構成される車載低電圧システムから絶縁された車載高電圧システムとされる。そして、インバータの各スイッチング素子の駆動回路の電源は、車載低電圧システム内のバッテリに1次側が接続された絶縁型コンバータによって構成される。
【0003】
ところで、上記インバータの入力端子には、通常、インバータの一対の入力端子間の電圧を平滑化する等の目的でコンデンサが接続される。そして、このコンデンサは、インバータの停止時に放電することが望まれる。
【0004】
そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、インバータの高電位側のスイッチング素子と低電位側のスイッチング素子とを同時にオン状態とすることで、インバータの入力端子に接続されるコンデンサの両電極を短絡し、コンデンサを放電させるものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、例えば車両が衝突した場合等、車両に異常が生じることで低電圧システムと高電圧システムとの接続が遮断されると、駆動回路の電力供給ができず、ひいては上記放電制御を実行することができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の直列接続体を備えて且つ直流電源の電力を所定に変換する電力変換回路と、該電力変換回路の出力端子および前記直流電源間に介在するキャパシタとを備えるシステムが搭載される部材に異常が生じる場合であっても、キャパシタの放電制御を好適に実行することができる電力変換システムの放電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の直列接続体を備えて且つ直流電源の電力を所定に変換する電力変換回路と、該電力変換回路の出力端子および前記直流電源間に介在するキャパシタと、前記電力変換回路および前記キャパシタと前記直流電源との間の電気経路を開閉する開閉手段とを備える電力変換システムに適用され、前記開閉手段が開状態とされる状況下、前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子を操作することで前記キャパシタの充電電圧を規定電圧以下に放電制御する放電制御手段を備える電力変換システムの放電装置において、前記放電制御手段によって操作される前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子のいずれか一方の駆動回路に対する給電電圧を前記キャパシタの電圧を降圧することで生成する第1電源と、前記放電制御手段によって操作される前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子のいずれか他方の駆動回路に対する給電電圧を前記第1電源を給電手段として生成する第2電源とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記発明では、放電制御手段によって操作される高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の駆動回路のエネルギ供給源がキャパシタであるため、電力変換システムが搭載される部材に異常が生じた場合であっても、駆動回路への電力供給をより確実に行なうことができる。しかも第2電源を第1電源を給電手段として生成するため、第2電源に要求される耐圧を低下させることも可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2電源は、絶縁型コンバータを備えて構成されることを特徴とする。
【0012】
高電位側のスイッチング素子の駆動回路と低電位側のスイッチング素子の駆動回路との間の電位差は大きくなりうる。このため、第1電源から第2電源へと電力を供給するに際しては、電位差の大きい領域において電力を伝播させることが要求される。この点、上記発明では、絶縁型コンバータを利用することで、高電位側のスイッチング素子の駆動回路と低電位側のスイッチング素子の駆動回路とを絶縁しつつ電力を伝播させることができ、ひいては第2電源に高耐圧の素子を用いる必要性が生じない。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記電力変換システムは、車載低電圧システムから絶縁された車載高電圧システムであり、前記高電位側のスイッチング素子の駆動回路と前記低電位側のスイッチング素子の駆動回路とは、基板上に隣接して配置されており、前記絶縁型コンバータを構成するトランスは、前記高電位側のスイッチング素子の駆動回路と前記低電位側のスイッチング素子の駆動回路との間に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記第1電源は、シリーズレギュレータを備えて且つ、前記低電位側のスイッチング素子の駆動回路に対する給電電圧を生成することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記シリーズレギュレータは、前記キャパシタの正極と出力端子との間にスイッチング素子が複数直列に接続されて構成されることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、シリーズレギュレータを構成する各1つのスイッチング素子の入力端子および出力端子間に要求される耐圧を低減することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記電力変換回路は、回転機に接続される直流交流変換回路であり、前記直流交流変換回路と前記直流電源との間には昇圧コンバータが設けられており、前記キャパシタは、前記昇圧コンバータの出力端子に接続されるものであることを特徴とする。
【0018】
上記発明の場合、キャパシタの電圧が特に高くなりやすいため、第1の電源を構成するスイッチング素子に要求される耐圧が特に高くなりやすい。このため、上記請求項5記載の発明特定事項の利用価値が特に大きい。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換回路は、回転機に接続される直流交流変換回路であることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記放電制御手段は、前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子の双方をオン状態とすることにより前記キャパシタの両電極を短絡させる処理を行うことで前記キャパシタの充電電圧を規定電圧以下に放電制御することを特徴とする。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換システムの搭載される部材に異常が生じたか否かを判断する判断手段を備え、前記放電制御手段は、前記判断手段によって異常が生じたと判断される場合に前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子の双方をオン状態とすることで前記キャパシタの両電極を短絡させることにより前記キャパシタの充電電圧を規定電圧以下に放電制御する異常時放電制御手段であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるドライバユニットの回路構成を示す図。
【図3】同実施形態にかかる異常時の放電制御を示すタイムチャート。
【図4】ゲート印加電圧と電流との関係を示す図。
【図5】同実施形態にかかる基板レイアウトを示す図。
【図6】第2の実施形態にかかる電源の配置を示す図。
【図7】上記各実施形態の変形例にかかる電源の配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電力変換システムの放電装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態のシステム構成を示す。図示されるモータジェネレータ10は、車載主機であり、駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータIVと、リレーSMR2および抵抗体14並びにリレーSMR1の並列接続体とを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、高電圧バッテリ12は、その端子電圧が例えば百V以上の高電圧となるものである。また、インバータIV1の入力端子のうち、リレーSMR1,SMR2よりもインバータIV側には、コンデンサ16が並列接続されている。
【0025】
インバータIVは、パワー素子としての高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnの直列接続体が3つ並列接続されて構成されている。そして、これら高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnの接続点が、モータジェネレータ10の各相にそれぞれ接続されている。
【0026】
上記高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnのそれぞれの入出力端子間(コレクタおよびエミッタ間)には、高電位側のフリーホイールダイオードFDpおよび低電位側のフリーホイールダイオードFDnのカソードおよびアノードが接続されている。なお、上記スイッチング素子Swp,Swnは、いずれも絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)にて構成されている。また、スイッチング素子Swp,Swnは、その入力端子および出力端子間に流れる電流と相関を有する微少電流を出力するセンス端子Stを備えている。
【0027】
センス端子Stの出力する微少電流は、シャント抵抗19を流れ、これによる電圧降下量が、スイッチング素子Sw#(#=p,n)を駆動するためのドライブユニットDU(図中、U相のみ明記)に取り込まれる。ドライブユニットDUは、シャント抵抗19における電圧降下量に基づき、スイッチング素子Sw#の入力端子および出力端子間に流れる電流が閾値電流Ith以上となると判断される場合に、スイッチング素子Sw#を強制的にオフ状態とする機能を有する。
【0028】
一方、制御装置30は、低電圧バッテリ20を電源とする電子制御装置である。制御装置30は、制御対象としてのモータジェネレータ10の制御量を制御すべく、上記インバータIVを操作する。詳しくは、制御装置30は、図示しない各種センサの検出値等に基づき、インバータIVのU相、V相、およびW相のそれぞれについてのスイッチング素子Swpを操作する操作信号gup,gvp,gwpと、スイッチング素子Swnを操作する操作信号gun,gvn,gwnとを生成し出力する。これにより、スイッチング素子Swp,Swnは、それらの導通制御端子(ゲート)に接続されるドライブユニットDUを介して制御装置30により操作される。
【0029】
ちなみに、インバータIVを備える高電圧システムと、制御装置30を備える低電圧システムとは、図示しないフォトカプラ等の絶縁手段によって絶縁されており、上記操作信号g*#(*=u,v,w、#=p,n)は、絶縁手段を介して高電圧システムに出力される。
【0030】
上記ドライブユニットDUは、通常時用フライバックコンバータFBnを電源とするものである。通常時用フライバックコンバータFBnは、低電圧バッテリ20の電力を上側アームや下側アームに供給するための絶縁型コンバータである。すなわち、トランス32の1次側コイル32aには、電源用スイッチング素子34が閉操作されることで低電圧バッテリ20のエネルギが蓄えられる。この際、2次側コイル32においては、電流が流れることがダイオード36によって阻止される。これに対し、電源用スイッチング素子34が開操作されることで2次側コイル32bに電流が流れ、通常時用コンデンサ38が充電される。この通常時用コンデンサ38の充電エネルギが、ドライブユニットDUの消費エネルギとなる。なお、図1には、通常時用フライバックコンバータFBnがU相の上下アームのドライブユニットDUの電源となることのみが示されているが、実際には、V相、W相のドライブユニットDUの電源ともなっている。このため、トランス32の2次側コイル32bは、実際には6個である。もっとも、下側アームの電位が共通であることに鑑みれば、下側アーム用の2次側コイルを共通としてもよく、この場合、2次側コイル32bは4個となる。
【0031】
ところで、制御装置30は、自身に作用する力に基づき加速度を検出する加速度検出手段(Gセンサ22)の検出値に基づき、車両の衝突を検知し、衝突が検知された場合、コンデンサ16を強制的に放電させる処理を行なわせる機能を有する。この異常時放電制御に際しては、車両に異常が生じていることから、通常時用フライバックコンバータFBnがドライブユニットDUの電源として機能しないおそれがある。そこで本実施形態では、異常時放電制御時におけるドライブユニットDUの電源として、コンデンサ16の電圧を降圧するシリーズレギュレータ40と、シリーズレギュレータ40の出力を入力とする放電用フライバックコンバータFBdとを別途備えている。
【0032】
シリーズレギュレータ40は、複数(ここでは、4個を例示)の抵抗体44とツェナーダイオード48との直列接続体を備えており、これがコンデンサ16に並列接続されている。そして、抵抗体44には、複数のNチャネルMOS型電界効果トランジスタ(スイッチング素子42)が並列接続されている。ここで、最高電位のスイッチング素子42の入力端子と導通制御端子との間には、最高電位の抵抗体44が接続され、中間のスイッチング素子42の導通制御端子同士は、抵抗体44によって接続されている。さらに、最低電位のスイッチング素子42の導通制御端子と出力端子間は、抵抗体46によって接続されている。
【0033】
上記ツェナーダイオード48には、フォトカプラ54の2次側のフォトトランジスタの入力端子および出力端子が並列接続されている。これにより、フォトカプラ54がオンとなることで、ツェナーダイオード48がオフとなり、スイッチング素子42はオフ状態となる。これに対し、フォトカプラ54がオフとなると、ツェナーダイオード48がオン状態となり、シリーズレギュレータ40の出力電圧がツェナーダイオード48のブレークダウン電圧まで上昇する。そしてシリーズレギュレータ40の出力電流がゼロよりも大きくなる場合、抵抗体46に電流が流れることから、その電圧降下によって、最低電位のスイッチング素子42がオンする。この際、中間電位の抵抗体44は、いずれも最低電位以外のスイッチング素子42の入力端子および導通制御端子間の電圧を抵抗体46の電圧降下量とするように機能する。このため、全てのスイッチング素子42がオン状態に切り替わる。この際、これらスイッチング素子42は非飽和領域で動作し、各スイッチング素子42の出力端子および入力端子間の電圧は、コンデンサ16の電圧からツェナーダイオード48のブレークダウン電圧を減算した値をスイッチング素子42の数によって均等分割した値程度となる。
【0034】
上記フォトカプラ54の1次側のフォトダイオードは、制御装置30によって出力される異常時放電指令disが論理「H」となることでオン状態となる。異常時放電指令disは、制御装置30が起動されている状況下、衝突が生じない限り論理「H」とされる。これは、衝突が生じて制御装置30によってフォトカプラ54を操作することができなくなった場合であっても、シリーズレギュレータ40をオン状態とするための設定である。
【0035】
一方、放電用フライバックコンバータFBdは、電源用スイッチング素子64が閉状態とされることで、トランス60の1次側コイル60aにシリーズレギュレータ40の出力エネルギを蓄える。この際、トランス60の2次側コイル60bにおいては、ダイオード66によって電流の流れが阻止される。そして、電源用スイッチング素子64が開状態となることで、ダイオード66を介して放電用コンデンサ68に電流が出力される。なお、放電用フライバックコンバータFBdの出力電圧(放電用コンデンサ68の出力電圧)は、シリーズレギュレータ40の出力電圧程度となるように、電源用スイッチング素子64のオン・オフの1周期に対するオン時間の時比率が下側アームのドライブユニットDUによって操作される。この処理は、シリーズレギュレータ40の出力電圧がU相下側アームのドライブユニットDUに印加されることをトリガとして行われる。
【0036】
図2に、U相のスイッチング素子Sw#のドライブユニットDUのうち、特にスイッチング素子Sw#をオン・オフする駆動回路部の構成を示す。
【0037】
図示されるように、U相の上側アームおよび下側アームのそれぞれのドライブユニットDUにおいて、通常時用コンデンサ38の電圧が、充電用スイッチング素子70およびゲート抵抗72を介してスイッチング素子Sw#の導通制御端子(ゲート)に印加される。また、スイッチング素子Sw#のゲートは、ゲート抵抗72および放電用スイッチング素子74を介してスイッチング素子Sw#の出力端子(エミッタ)に接続され、これがゲートの放電経路となる。充電用スイッチング素子70や放電用スイッチング素子74は、操作信号gu#に応じて通常時用駆動制御部76によってオン・オフ操作される。これにより、スイッチング素子Sw#は、通常時用駆動制御部76によってオン・オフ操作されることとなる。
【0038】
U相のドライブユニットDUは、さらに、異常時放電指令disが論理「L」となることで、シリーズレギュレータ40がオンとなって且つ放電用コンデンサ68が充電されることをトリガとして、スイッチング素子Sw#をオン・オフ操作するための専用の回路を備えている。
【0039】
ここで、U相の下側アームのドライブユニットDUにおいては、シリーズレギュレータ40の出力電圧(ダイオード52の出力電圧)が、充電用スイッチング素子82およびゲート抵抗72を介してスイッチング素子Swnのゲートに印加される。また、ゲートは、ゲート抵抗72および放電用スイッチング素子84を介してスイッチング素子Swnのエミッタに接続されている。そして、充電用スイッチング素子82および放電用スイッチング素子84は、シリーズレギュレータ40の出力電圧が印加されることで異常時用駆動制御部86によってオン操作される。
【0040】
一方、低電位側のスイッチング素子Swnのセンス端子Stから出力される微少電流によるシャント抵抗19の電圧降下量は、ピークホールド90を介してコンパレータ92の非反転入力端子に印加される。コンパレータ92の反転入力端子には、所定の周波数を有する信号を出力する発振器94の出力信号(キャリア)が印加される。これにより、コンパレータ92では、上記電圧降下量の方がキャリアよりも大きくなる場合に論理「H」となる信号を出力する。
【0041】
これに対し、U相の上側アームのドライブユニットDUでは、充電用スイッチング素子82、放電用スイッチング素子84、異常時用駆動制御部86に加えて、充電用スイッチング素子82と放電用コンデンサ68との間に、放電用コンデンサ68の電圧VHを降圧するレギュレータ88を備えている。一方、上記コンパレータ92の出力信号は、発熱制御用操作量Mhとして、フォトカプラ100の1次側(フォトダイオード)に出力される。フォトカプラ100の2次側(フォトトランジスタ)の出力端子は、スイッチング素子Swpのエミッタに接続され、入力端子は、抵抗体を介して放電用コンデンサ68に接続される。そして、フォトカプラ100の出力信号は、上側アームの異常時用駆動制御部56に入力される。これにより、高電位側のスイッチング素子Swpは、フォトカプラ100がオフ状態となる間オン操作されることとなる。
【0042】
上記高電位側のスイッチング素子Swpの付近には、その温度を検出する感温ダイオードSDが設けられている。詳しくは、感温ダイオードSDのカソード側は、スイッチング素子Swpのエミッタに接続されており、アノード側は、放電用コンデンサ68を給電手段とする定電流回路104の出力端子に接続されている。そして、アノード側の電圧が電圧比較回路106に取り込まれ、電圧比較回路106の出力信号は、レギュレータ88に取り込まれる。そして、レギュレータ88では、感温ダイオードSDによって検出される温度に応じて、出力電圧VL(<VH)を可変設定する。ちなみに、感温ダイオードSDの出力電圧と検出対象の温度とは負の相関を有する。
【0043】
図3に、異常時放電指令disに基づく放電制御の態様を示す。詳しくは、図3(a)に、異常時放電指令disの推移を示し、図3(b)に、ピークホールド90の出力信号(一点鎖線)と発振器94の出力するキャリアとの推移を示し、図3(c)に、U相の高電位側のスイッチング素子Swpの状態の推移を示し、図3(d)に、U相の低電位側のスイッチング素子Swnの状態の推移を示す。図示されるように、本実施形態では、U相の低電位側のスイッチング素子Swnをオン状態に維持しつつ、高電位側のスイッチング素子Swpを、オン状態およびオフ状態に周期的に切り替える。これにより、高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnの双方が同時期にオン状態となる期間が存在し、この期間においてコンデンサ16の両電極間がスイッチング素子Swp,Swnを介して短絡状態とされることで、コンデンサ16が放電される。
【0044】
この際、先の図2に示したドライブユニットDUの構成の故に、図3(e)および図3(f)に示すように、高電位側のスイッチング素子Swpのゲート印加電圧の方が低電位側のスイッチング素子Swnのゲート印加電圧よりも低くなる。ここで、図3(e)は、高電位側のスイッチング素子Swpのゲート・エミッタ間電圧Vgeの推移を示し、図3(f)は、低電位側のスイッチング素子Swnのゲート・エミッタ間電圧Vgeの推移を示す。
【0045】
こうした構成によれば、高電位側のスイッチング素子Swpは、非飽和領域において駆動されて且つ、低電位側のスイッチング素子Swnは、飽和領域において駆動されることとなる。ここで、飽和領域とは、図4に示すように、出力電流(コレクタ電流Ic)に応じてスイッチング素子の入力端子および出力端子間の電圧(コレクタエミッタ間電圧Vce)が大きくなる領域のことである。一方、非飽和領域とは、コレクタ電流が増加することなくコレクタエミッタ間電圧Vceが増大する領域のことである。非飽和領域となるコレクタ電流Icは、ゲート印加電圧(ゲート・エミッタ間電圧Vge)が大きいほど大きくなる。
【0046】
このため、低電位側のスイッチング素子Swnよりも高電位側のスイッチング素子Swpのゲート印加電圧を低くすることで、高電位側のスイッチング素子Swpの方が低電位側のスイッチング素子Swnよりも非飽和領域の電流が小さくなる。これにより、放電制御によって高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnを流れる電流は高電位側のスイッチング素子Swpの非飽和領域の電流に制限されることとなる。なお、高電位側のスイッチング素子Swpの非飽和領域の電流は、上記ドライブユニットDUが規定する閾値電流Ith未満となるように設定することが望ましい。
【0047】
特に本実施形態では、高電位側のスイッチング素子Swpの温度を制御量として、これを感温ダイオードSDによって検出し、この検出値が過度に高くならないようにフィードバック制御する。ここで、フィードバック制御量を高電位側のスイッチング素子Swpの温度としたのは、上記放電制御によって生じる発熱量の大部分が、非飽和領域で駆動される高電位側のスイッチング素子Swpによるものとなることに鑑みたものである。先の図2に示したように、温度フィードバック制御の操作量として、本実施形態では、スイッチング素子Swpのゲートへの印加電圧を採用した。これにより、図3(e)に示すように、感温ダイオードSDの出力電圧が低下する場合(感温ダイオードSDによって検出される温度が高くなる場合)、印加電圧を低下させる。これにより、高電位側のスイッチング素子Swpの非飽和領域の電流を低減することができることから、放電電流を低減することができる。
【0048】
本実施形態では、さらに、先の図3に示した態様にて放電制御を行なうことで、ピークホールド90の出力信号の値が大きいほど(放電電流が大きいほど)、高電位側のスイッチング素子Swpのオン、オフの1周期に対するオン時間の時比率が小さくなるように制御する。これにより、放電電流が大きい場合に、単位時間(例えばキャリアの1周期)内における発熱量を低減する制御がなされることから、単位時間当たりの発熱量が過度に大きくなることを回避することができる。
【0049】
このように、本実施形態では、通常時用フライバックコンバータFBnによる電力供給が遮断されたとしても、異常時放電制御を確実に行なうことができる。特にこの際、下側アームのドライブユニットDUの電源を、複数のスイッチング素子42が直列接続されたシリーズレギュレータ40とすることで、この電源を構成するスイッチング素子42の入力端子および出力端子間に要求される耐圧を低減することができる。また、上側アームの電源を放電用フライバックコンバータFBdとすることで、電源の回路規模を極力小さくすることもできる。
【0050】
図5に、本実施形態にかかるシリーズレギュレータ40やトランス60の基板レイアウトを示す。なお、図において、スイッチング素子Swp、Swnを備えるパワーカードPCは、基板の鉛直下方に設けられている。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0052】
(1)放電制御のための電源を、コンデンサ16の電圧を降圧するシリーズレギュレータ40と、放電用フライバックコンバータFBdとによって構成した。これにより、車両の衝突時等であっても、ドライブユニットDUへの電力供給をより確実に行なうことができる。しかも放電用フライバックコンバータFBdの入力をシリーズレギュレータ40の出力とすることで、放電用フライバックコンバータFBdの耐圧を低下させることもできる。
【0053】
(2)シリーズレギュレータ40を、コンデンサ16の正極と出力端子との間にスイッチング素子42が複数直列に接続される構成とした。これにより、各1つのスイッチング素子42の入力端子および出力端子間に要求される耐圧を低減することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0054】
図6に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図6において、先の図1に示した部材に対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0055】
図示されるように、本実施形態では、インバータIVと高電圧バッテリ12との間に、昇圧コンバータCVが設けられている。すなわち、インバータIVの入力端子には、コンデンサ122が接続されるとともに、これに並列に、高電位側のスイッチング素子Swpと低電位側のスイッチング素子Swnとの直列接続体が接続されている。そして、これら高電位側のスイッチング素子Swpと低電位側のスイッチング素子Swnとの接続点は、リアクトル120を介してコンデンサ16に接続されている。さらに、高電位側のスイッチング素子Swpと低電位側のスイッチング素子Swnとのそれぞれの入力端子および出力端子間には、フリーホイールダイオードFDp、FDnのカソードおよびアノードが接続されている。
【0056】
こうした構成において、シリーズレギュレータ40の入力を、コンデンサ122の電圧とする。ここで、コンデンサ122の電圧は、高電圧バッテリ12以上に高くなる。このため、コンデンサ122の電圧を降圧するシリーズレギュレータ40が備えるスイッチング素子42に要求される耐圧は、特に高くなりやすい。この点、本実施形態では、スイッチング素子42を複数直列接続することで、スイッチング素子42に要求される耐圧を低減している。
【0057】
なお、シリーズレギュレータ40の入力をコンデンサ16の充電電圧とすることも考えられる。しかし、この場合、車両の衝突によってコンデンサ16の両電極が短絡した場合には、シリーズレギュレータ40の出力電圧がゼロとなることから、コンデンサ122を放電させることができない。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
「シリーズレギュレータについて」
シリーズレギュレータとしては、先の図1等において例示したものに限らない。例えば、スイッチング素子42として、バイポーラトランジスタを採用してもよい。また、スイッチング素子42の直列接続数としては、「4」に限らない。ただし、複数であることが望ましい。
「第1電源について」
第1電源としては、シリーズレギュレータに限らない。例えばフライバックコンバータ等の絶縁型コンバータであってもよい。また、絶縁型コンバータに限らず、降圧チョッパ等の非絶縁型コンバータであってもよい。さらに、第1電源としては、低電位側のスイッチング素子Swnの駆動回路の電源に限らない。
「第2電源について」
第2電源としては、放電用フライバックコンバータFBdに限らず、例えばフォワードコンバータであってもよい。また、絶縁型コンバータにも限らない。例えば、シリーズレギュレータ40の出力端子の電位をシフトさせるレベルシフタであってもよい。また、シリーズレギュレータ40の正極側から上側アームの放電用コンデンサ68側へと進む方向を順方向とするダイオードを備えて構成してもよい。
「異常時放電制御手段について」
温度フィードバック制御や発熱量のフィードバック制御はこれを行わなくてもよい。
【0058】
高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnの双方をオン状態とすることで放電制御を行なうものとしては、インバータIVのスイッチング素子Swp,Swnを用いるものに限らず、例えば昇圧コンバータCVのスイッチング素子Swp,Swnを用いるものであってもよい。
【0059】
また、異常時放電制御手段としては、高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnの双方をオン状態とすることで放電制御を行なうものにも限らない。例えばモータジェネレータ10に無効電流を流す手段であってもよい。
【0060】
さらに、異常時放電制御の実行条件としては、フォトカプラ54をオフさせるものに限らない。例えばフォトカプラ54がオフとなる状態と、通常時用コンデンサ38への電力供給が途絶える状態との双方の状態が成立することとしてもよい。
【0061】
なお、高電位側のスイッチング素子Swpおよび低電位側のスイッチング素子Swnの双方をオン状態とすることで行われる放電制御を、異常時に限らず、通常時において、リレーSMR1を開状態に切り替える都度行ってもよい。
「ドライブユニットDUについて」
U相のドライブユニットDUとしては、通常時における充電用スイッチング素子70および放電用スイッチング素子74と、異常時における充電用スイッチング素子82および放電用スイッチング素子84とを各別に備えるものに限らない。例えば、これらを共有する代わりに、上側アームについては、充電用スイッチング素子の入力端子に電圧を印加する手段を、通常時と異常時とで異ならせてもよい。
【0062】
また、閾値電流Ith以上となることでスイッチング素子Sw#を強制的にオフ状態とする機能を備えていなくてもよい。
「基板レイアウトについて」
基板レイアウトとしては、先の図5に例示したものに限らない。例えば、トランス60をU相の領域とV相の領域との間に配置してもよい。
「直流交流変換回路について」
放電制御に際して高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の双方がオン状態とされる直流交流変換回路(インバータIV)としては、車載主機としての回転機と高電圧バッテリ12との間の電力の授受を仲介するものに限らない。例えば、空調装置の備える回転機等、主機以外の回転機と高電圧バッテリ12との間の電力の授受を仲介するものであってもよい。
【0063】
また、直流交流変換回路としては、インバータIVに限らず、Hブリッジ回路であってもよい。
「電力変換回路について」
異常時放電制御に用いられる電力変換回路としては、直流交流変換回路に限らず、先の図6に示した昇圧コンバータCVであってもよい。また、電力変換回路を昇圧コンバータCVのみから構成して且つ、その入力端子を直流電源(2次電池)に直接接続してもよい。この場合であっても、コンデンサ122の放電制御が所望されるなら、本発明の適用は有効である。
(そのほか)
・上記昇圧コンバータCVの高電位側のスイッチング素子Swpを削除して文字通りの昇圧コンバータとしてもよい。ちなみに、実施例で例示した昇圧コンバータCVは、実際には降圧コンバータとしても機能する。
【0064】
・上記第2の実施形態において、図7に示すように、シリーズレギュレータ40の入力を、コンデンサ16としてもよい。
【0065】
・放電制御に用いる高電位側のスイッチング素子Swpや低電位側のスイッチング素子Swnとしては、IGBTに限らず、例えばパワーMOS型電界効果トランジスタ等の電界効果トランジスタであってもよい。
【0066】
・車両としては、ハイブリッド車に限らず、例えば車載主機のために貯蔵されるエネルギ資源が電気エネルギのみとなる電気自動車等であってもよい。
【0067】
・放電装置としては、車両に搭載されるものに限らず、例えば住宅に設けられる直流電源の電力を交流に変換する電力変換システムに適用されるものであってもよい。この場合、異常時とは、例えば地震等が検知された場合とすればよい。
【符号の説明】
【0068】
10…モータジェネレータ、12…高電圧バッテリ(直流電源の一実施形態)、16…コンデンサ、30…制御装置、40…シリーズレギュレータ、FBd…放電用フライバックコンバータ、Swp…高電位側のスイッチング素子、Swn…低電位側のスイッチング素子Swn、DU…ドライブユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の直列接続体を備えて且つ直流電源の電力を所定に変換する電力変換回路と、該電力変換回路の出力端子および前記直流電源間に介在するキャパシタと、前記電力変換回路および前記キャパシタと前記直流電源との間の電気経路を開閉する開閉手段とを備える電力変換システムに適用され、前記開閉手段が開状態とされる状況下、前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子を操作することで前記キャパシタの充電電圧を規定電圧以下に放電制御する放電制御手段を備える電力変換システムの放電装置において、
前記放電制御手段によって操作される前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子のいずれか一方の駆動回路に対する給電電圧を前記キャパシタの電圧を降圧することで生成する第1電源と、
前記放電制御手段によって操作される前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子のいずれか他方の駆動回路に対する給電電圧を前記第1電源を給電手段として生成する第2電源とを備えることを特徴とする電力変換システムの放電装置。
【請求項2】
前記第2電源は、絶縁型コンバータを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の電力変換システムの放電装置。
【請求項3】
前記電力変換システムは、車載低電圧システムから絶縁された車載高電圧システムであり、
前記高電位側のスイッチング素子の駆動回路と前記低電位側のスイッチング素子の駆動回路とは、基板上に隣接して配置されており、
前記絶縁型コンバータを構成するトランスは、前記高電位側のスイッチング素子の駆動回路と前記低電位側のスイッチング素子の駆動回路との間に配置されていることを特徴とする請求項2記載の電力変換システムの放電装置。
【請求項4】
前記第1電源は、シリーズレギュレータを備えて且つ、前記低電位側のスイッチング素子の駆動回路に対する給電電圧を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換システムの放電装置。
【請求項5】
前記シリーズレギュレータは、前記キャパシタの正極と出力端子との間にスイッチング素子が複数直列に接続されて構成されることを特徴とする請求項4記載の電力変換システムの放電装置。
【請求項6】
前記電力変換回路は、回転機に接続される直流交流変換回路であり、
前記直流交流変換回路と前記直流電源との間には昇圧コンバータが設けられており、
前記キャパシタは、前記昇圧コンバータの出力端子に接続されるものであることを特徴とする請求項5記載の電力変換システムの放電装置。
【請求項7】
前記電力変換回路は、回転機に接続される直流交流変換回路であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換システムの放電装置。
【請求項8】
前記放電制御手段は、前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子の双方をオン状態とすることにより前記キャパシタの両電極を短絡させる処理を行うことで前記キャパシタの充電電圧を規定電圧以下に放電制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力変換システムの放電装置。
【請求項9】
前記電力変換システムの搭載される部材に異常が生じたか否かを判断する判断手段を備え、
前記放電制御手段は、前記判断手段によって異常が生じたと判断される場合に前記高電位側のスイッチング素子および前記低電位側のスイッチング素子の双方をオン状態とすることで前記キャパシタの両電極を短絡させることにより前記キャパシタの充電電圧を規定電圧以下に放電制御する異常時放電制御手段であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電力変換システムの放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−244521(P2011−244521A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112013(P2010−112013)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】