電力変換器
【課題】スイッチング素子が故障に至る前に、短絡保護や過電圧抑制が可能で応答性能の高い電力変換器を提供することである。
【解決手段】短絡判定手段5は、第1の比較手段7aによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧が第1の基準電圧発生手段6aの正基準電圧以上となってから所定時間内に、第2の比較手段7bによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧が第2の基準電圧発生手段6aの負基準電圧以下となったときは、スイッチング素子1の短絡と判定する。
【解決手段】短絡判定手段5は、第1の比較手段7aによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧が第1の基準電圧発生手段6aの正基準電圧以上となってから所定時間内に、第2の比較手段7bによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧が第2の基準電圧発生手段6aの負基準電圧以下となったときは、スイッチング素子1の短絡と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用スイッチング素子を用いた電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用スイッチング素子を応用した電力変換器は、スイッチング素子の大容量化・高速化に伴い、その応用範囲を着実に広げている。このような電力用スイッチング素子において、特に、最近応用分野を伸ばしてきたのがMOSゲート型のスイッチング素子であるIGBTやMOSFETである。
【0003】
IGBTやMOSFETは、オン・オフ状態を自己継続しないノンラッチング型のスイッチング素子であり、サイリスタ等のラッチング型のスイッチング素子に比べて、ゲート駆動による高い制御性が可能な点が大きな利点である。短絡時においても、ゲート電圧を絞ることにより短絡電流を減じることができるため、IGBTのゲート電圧を絞ることによる短絡保護方式を適用した電力変換器が実用化されている。
【0004】
短絡事故が発生した際のスイッチング素子を保護するものとして、スイッチング素子がオン状態の時のコレクタ電圧を検出し、このコレクタ電圧が基準値よりも高い時に過電流や短絡状態であると検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、半導体素子のゲート駆動回路からゲートに流れ込むオンゲート電流または半導体素子のゲートよりゲート駆動回路へ流れ込むオフゲート電流を健全時の電流と比較して短絡故障を検出するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−197724号公報
【特許文献2】特開2007−202238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものでは、スイッチング素子のコレクタ電圧を検出することで短絡を検出し遮断を行うものであるが、短絡を検出するまでの時間が長く、スイッチング素子が破壊する可能性がある。
【0007】
また、特許文献2のものは、スイッチング素子が破壊などして短絡状態で動作できない状態(故障)になったことを検出するものであり、スイッチング素子が通常動作ができる状態において短絡をできるようにしたものではない。
【0008】
通常、スイッチング素子がターンオンすると、スイッチング素子の主電極間の電圧はスイッチング素子で決まる非常に低い電圧となるが、スイッチング素子の短絡時には、直流電圧および主回路のインダクタンスと短絡電流で決まる電圧が発生する。短絡電流はスイッチング素子の特性によって決まるが、定格電流の数倍から十数倍の非常に大きな電流であり、大きな電流が流れると大きな損失が発生し、スイッチング素子が破壊してしまうことになる。そこで、早期に短絡を検出し保護動作を行う必要がある。
【0009】
しかし、ターンオンの過渡時には高耐圧のスイッチング素子ほどコレクタ電圧が減少するのに時間がかかるので、コレクタ電圧を検出して短絡検出するものでは、スイッチング素子がオンするまでの一定期間はマスクする必要がある。この結果、短絡や過電流を検出するまでの時間が比較的長くかかってしまい、スイッチング素子が破壊する可能性がある。さらに、過大な電流を遮断するために、サージ電圧が発生しスイッチング素子が破壊する可能性もある。
【0010】
また、通常動作時においては、スイッチング素子をオンさせるために、スイッチング素子のゲート端子にゲート抵抗を介して約+15V程度の電圧を印加する。そうすると、ゲート抵抗によって制限されたゲート電流がゲート端子へ流れ、スイッチング素子はオンを行う。オフさせるためには、スイッチング素子のゲート端子にゲート抵抗を介して約−15V程度の電圧を印加する。そうすると、スイッチング素子のゲート電荷がゲート端子から流れ出し、スイッチング素子はオフを行う。このとき、ゲート電流は検出されておらず制御はしていない。
【0011】
従って、オン・オフ時のゲート電流はゲート抵抗で決まり、オン時の突入電流やオフ時の過電圧が発生し、スイッチング素子が破壊する可能性がある。また、スイッチング素子の応答速度もゲート抵抗で決まる。ゲート抵抗を下げると過電圧や損失などにも影響するため、抵抗値の小さいゲート抵抗を使って応答速度を上げることは困難である。
【0012】
本発明の目的は、スイッチング素子が故障に至る前に、短絡保護や過電圧抑制が可能で応答性能の高い電力変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係わる電力変換器は、スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、正の基準電圧を発生する第1の基準電圧発生手段と、負の基準電圧を発生する第2の基準電圧発生手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第1の基準電圧発生手段の正の基準電圧とを比較する第1の比較手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第2の基準電圧発生手段の負の基準電圧とを比較する第2の比較手段と、前記第1の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第1の基準電圧発生手段の正基準電圧以上となってから所定時間内に前記第2の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第2の基準電圧発生手段の負基準電圧以下となったときは前記スイッチング素子の短絡と判定する短絡判定手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スイッチング素子が故障に至る前に、短絡保護や過電圧抑制が可能で応答性能の高い電力変換器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。スイッチング素子1にはフライホイールダイオード2が並列接続され、スイッチング素子1はゲート回路3によって駆動される。これによりスイッチング素子1の素子電流Icが制御される。ゲート回路3からスイッチング素子1のゲートに与えられるゲート電流Igは、ゲート電流検出手段4で検出され、第1の比較手段7a及び第2の比較手段7bに入力される。
【0016】
第1の比較手段7aは、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧と第1の基準電圧発生手段6aの正の基準電圧とを比較する。また、第2の比較手段7bは、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧と第2の基準電圧発生手段6bの負の基準電圧とを比較する。
【0017】
短絡判定手段5は、第1の比較手段7aによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流が第1の基準電圧発生手段6aの正基準電圧以上となってから所定時間内に、第2の比較手段7bによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流が第2の基準電圧発生手段6bの負基準電圧以下となったときはスイッチング素子2の短絡と判定するものである。
【0018】
次に、動作を説明する。図2は本発明の実施の形態における電力変換器の通常動作時のゲート電流Ig及び素子電流Icの波形図である。電力変換器はゲート回路3によって、スイッチング素子1を駆動して電流をオンオフしている。図2に示すように、ゲート電流Igが時点t1で正方向に流れると、スイッチング素子1はオンし、素子電流Icは急峻な傾きで流れる。このときの急峻な電流は、スイッチング素子1と対となるアームのフライホイールダイオード(FWD)2が逆回復状態にあり、スイッチング素子1と対となるアームのFWD2とで直流回路を短絡した状態にあるためである。
【0019】
一方、図3は、本発明の実施の形態における電力変換器の短絡時のゲート電流Ig及び素子電流Icの波形図である。
【0020】
スイッチング素子1が直流電圧を短絡したときには、ゲート電流Igが時点t1で正方向に流れると、定格電流の何倍もの電流がスイッチング素子に流れる。ここで、スイッチング素子1の素子電流Icとスイッチング素子1のゲート電圧には深い関係があり、一般にゲート電圧が高いほど大きな素子電流Icを流すことができる。
【0021】
逆に、スイッチング素子1に短絡電流のような大電流が流れると、ゲート電圧は上昇する。一方で、ゲート回路3の電圧はスイッチング素子1がオンしているときは約15V程度である。このため、スイッチング素子1の短絡時に過大な電流が流れると、スイッチング素子1のゲート電圧がゲート回路3の電圧よりも高くなり、スイッチング素子1からゲート回路3へ電流が流れ込む。
【0022】
この結果、短絡時には図3に示すように、スイッチング素子1をオンさせるためのゲート電流が時点t1で流れた後、短絡したためにオンさせる電流とは逆方向のゲート電流時点t2でが流れることになる。つまり、オン時のゲート電流Igが正負に振れたかを判定することで、通常のオンか短絡かを判定できることになる。
【0023】
この判定を実現するために、第1の実施の形態では、ゲート電流検出手段4の出力を二つの比較手段7a、7bに入力する。比較手段7a、7bには、それぞれ基準電圧発生手段6a、6bの出力も入力され、ゲート電流検出手段4の信号と比較される。基準電圧発生手段6a、6bはそれぞれ正負の基準電圧を発生し、そのレベルよりもゲート電流検出手段4の出力が大きいかを比較し、短絡判定手段5へ結果を出力する。短絡判定手段5では、まず正の基準電圧よりもゲート電流検出手段4の出力が大きいかを検出する。そして、検出された場合には、そこから指定した所定時間の間に、負の基準電圧よりゲート電流検出手段4の出力が小さい信号があれば短絡とみなし、ゲート回路3によりゲート電圧を絞り短絡保護を行うことが可能になる。
【0024】
以上の説明では、ゲート電流検出手段4でゲート電流Igを電圧で検出し、第1の基準電圧発生手段6aの正の基準電圧、第2の基準電圧発生手段6bの負の基準電圧と比較するようにしたが、ゲート電流検出手段4でゲート電流Igを電流で検出し、正の基準電流、負の基準電流と比較するようにしてもよい。
【0025】
第1の実施の形態によれば、ゲート電流検出手段の出力の時間変化を検出することで、スイッチング素子が故障に至る前に早期に短絡を検出し、スイッチング素子を保護することが可能になる。
【0026】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、ゲート電流検出手段4に加えてゲート電圧検出手段8を設け、ミラー期間判定手段9により、ゲート電流が流れ込んでいて、かつゲート電圧が一定となっているときにミラー期間と判定し、スイッチング素子1のオフ時の電圧を抑制するようにしたものである。
【0027】
スイッチング素子1にはフライホイールダイオード2が並列接続され、スイッチング素子1はゲート回路3によって駆動される。これによりスイッチング素子1の素子電流Icが制御される。ゲート回路3からスイッチング素子1のゲートに与えられるゲート電流Igは、ゲート電流検出手段4で検出され、比較手段7に入力される。基準電圧発生手段6は、スイッチング素子1のオフ時基準電圧を発生する。比較手段7は、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧と基準電圧発生手段6からのオフ時基準電圧(負の基準電圧)とを比較する。
【0028】
ミラー期間判定手段9は、比較手段7によりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流が基準電圧発生手段6のオフ時基準電圧以下となっている状態で、ゲート電圧検出手段8で検出されたゲート電圧がほぼ一定となるミラー期間を検出したときは、スイッチング素子1のオフ時の電圧を抑制するようにゲート回路3に指令を出力する。
【0029】
次に、動作を説明する。スイッチング素子1がオフするとき、ゲート回路3は約−15Vを印加してゲート電流を負方向に流す。これにより、スイッチング素子1のゲート・エミッタ間容量に蓄えられていた電荷が放電され、スイッチング素子1のゲート電圧は減少していく。次に、ゲート・コレクタ間の帰還容量からゲート電流が流れ込んでくる。このとき、ゲート・エミッタ間容量の放電はほとんど行われなくなるため、ゲート電圧はほぼ一定となる。最後に、ゲート・エミッタ間容量が放電され、コレクタ電圧が増加し始め、ゲート電圧は−15Vまで低下しオフが完了する。
【0030】
ここで、ゲート電圧がほぼ一定となる期間をミラー期間と呼ぶ。図4では、ゲート電流検出手段4により、オフ時のゲート電流Igが流れ込んでいることを検出している。また、ゲート電圧検出手段8により、ゲート電圧Vgを検出し、ミラー期間判定手段9に入力する。ミラー期間判定手段9はゲート電流Igが流れ込んでいて、かつ、ゲート電圧Vgが一定となっているとき、ミラー期間と判定する。
【0031】
ミラー期間と判定されたとき、ゲート回路3のゲート抵抗を大きくしたり、スイッチング素子1から引き出すゲート電流Igを小さくしたりすることで、オフ時のサージ電圧を抑制することが可能になる。特に、過電流時には通常よりも大きな電流を遮断することになるため、短絡検出後の遮断ではミラー期間を検出したらオフ条件を変えることにより、スイッチング素子1が破壊することなくオフすることが可能になる。
【0032】
第2の実施の形態によれば、ゲート電流とゲート電圧とを検出することでミラー期間を判定し、スイッチング素子1のオフ時の電圧を抑制することが可能になる。
【0033】
(第3の実施の形態)
図5は本発明の第3の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第3の実施の形態は、ゲート電圧検出手段8で検出されたゲート電圧を微分する微分手段10を設け、ミラー期間判定手段9は、微分手段10で得られたゲート電圧の微分値が零である期間をミラー期間として検出するようにしたものである。図4と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0034】
図5に示すように、ゲート電圧検出手段8にで検出されたゲート電圧を微分する微分手段10が追加され、その微分手段10の出力がミラー期間判定手段9に入力されている。
【0035】
第2の実施の形態では、ゲート電流が負方向に流れていて、かつ、ゲート電圧が一定となったときにミラー期間であると判定していた。しかし、この一定となる電圧は素子特性や素子電流Icなどによって変化するため、ある設定電圧値と単純に比較してミラー期間であると判断すると信頼性が保てない場合がある。その信頼性を持たせるためには、ゲート電圧検出手段8の回路構成が複雑になる。
【0036】
そこで、第3の実施の形態では、ゲート電圧検出手段8の出力を微分手段10に入力し、微分手段10はゲート電圧Vgを微分してミラー期間判定手段9に入力している。ミラー期間判定手段9はゲート電流Igが流れていて、かつ、微分出力が零になったときミラー期間であると判定する。一定になるゲート電圧Vgはスイッチング素子1や素子電流Icなどによって変化するが、微分出力は零になるため、スイッチング素子1や素子電流Icなどによらずミラー期間の判定することが可能になる。
【0037】
第3の実施の形態によれば、ゲート電圧検出手段8の回路構成を複雑にすることなく、ミラー期間を判定することが可能になる。
【0038】
(第4の実施の形態)
図6は本発明の第4の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第4の実施の形態は、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流を積分手段11で積分し、ミラー期間判定手段9は、積分手段11で得られたゲート電流Igの積分である電荷量とゲート電圧検出手段8で検出されたゲート電圧との相関関係に基づいてミラー期間を検出するようにしたものである。
【0039】
第3の実施の形態では、ゲート電流Igが負方向に流れていて、かつ、ゲート電圧Vgの微分値が零となったときにミラー期間であると判定していたが、ゲート電圧Vgの検出値にはノイズが乗り、正しく判定できない可能性がある。そこで、第4の実施の形態ではゲート電流検出手段Igの出力を積分手段11に入力し、その結果をミラー期間判定手段9に入力している。
【0040】
ここで、スイッチング素子1をオフする時には、まず、ゲート・エミッタ間容量に蓄えられていた電荷が放電している。このとき、ゲート・エミッタ間の容量に残っている電荷量Qと電圧VにはQ=CV(Cは定数)の関係がある。Cは定数であるので、電荷量Qと電圧Vは比例の関係にあることになる。例えば、ある電荷量Qが放電されれば、上記式で決定される電圧V=Q/Cだけ、ゲート電圧Vgは低下する。電荷量とは電流の積分値であるため、ゲートから放電される電荷量はゲート電流Igを積分することで得られる。そして、積分値(電荷量)の上昇とゲート電圧Vgの低下は比例関係のまま変化していく。
【0041】
ミラー期間では、ゲート・エミッタ間容量からは放電されず、ゲート・コレクタ間の帰還容量からゲート電流が流れ込んでくる。このため、ゲート電流Igの積分値は上昇し続けるが、ゲート電圧Vgは変化しなくなる。従って、ゲート電流Igの積分値から予想されるゲート電圧低下と実際のゲート電圧Vgの低下が一致しなくなる。このとき、ミラー期間であると判定できることになる。
【0042】
第4の実施の形態によれば、ゲート電圧Vgの検出値にはノイズが乗った場合であっても、ミラー期間を正しく判定することが可能になる。
【0043】
(第5の実施の形態)
図7は本発明の第5の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第5の実施の形態は、図6に示した第4の実施の形態に対し、ゲート電圧検出手段8を取り除いたものである。
【0044】
第4の実施の形態では、ゲート電流Igの積分値とゲート電圧Vgとを比較してミラー期間を判定したミラー期間におけるゲート電圧Vgは素子電流Icによって変動する。また、ゲート電圧Vgもある電圧で一定とはならず変動することも多い。このため、ゲート電圧Vgとの比較ではミラー期間を判定できない可能性がある。
【0045】
そこで、第5の実施の形態では、ゲート電流検出手段4の出力を積分手段11で積分し、その出力のみをミラー期間判定手段9へ入力している。スイッチング素子1のゲート容量の電荷とゲート電圧Vgの関係はスイッチング素子1によって決まる。例えば、スイッチング素子1がオンするとき、スイッチング素子1のゲートに電流を注入する。このときの電流値を積分するとゲートの電荷が得られる。ゲート電荷とゲート電圧との関係はデータシートから得られるため、ゲート電圧Vgが一定となる期間のゲート電荷の範囲も容易に知ることができる。このため、ゲート電流Igを積分して得られた電荷量がある範囲にあるとき、ミラー期間であると判断できる。
【0046】
第5の実施の形態によれば、ゲート電圧Vgが変動した場合であっても、ゲート電流の積分出力を検出することでミラー期間を判定することが可能になる。
【0047】
(第6の実施の形態)
図8は本発明の第6の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第6の実施の形態は、第2の実施の形態乃至第5の実施の形態に対し、ミラー期間判定手段9で検出されたミラー期間中にゲート電流Igを調整するゲート電流調整手段12を設けたものである。
【0048】
スイッチング素子1がオンするとき、対となるフライホイールダイオード2は逆回復をするために過電圧が発生する。この過電圧はフライホイールダイオード2が導通状態からオフするために発生し、オンするスピードが速い方が過電圧も大きくなる。従って、ゲート回路3のゲート抵抗を大きくするなどしてゲート電流を小さくし、ゆっくりとオンさせることで、この過電圧を抑えることができるが、その場合、スイッチング素子1の損失が大きくなってしまう。
【0049】
そこで、第5の実施の形態では、ミラー期間判定手段9によりミラー期間であると判定したときには、ゲート電流調整手段12にてゲート電流を調整できるようにしている。これにより、まずゆっくりとオンさせて過電圧を抑え、ミラー期間になったとき、ゲート電流を大きくすることでオンの速度を上げ、損失を抑えることが可能になる。
【0050】
第6の実施の形態によれば、ミラー期間であると判定したときにゲート電流調整するので、スイッチング素子1の損失を低減できる。
【0051】
(第7の実施の形態)
図9は本発明の第7の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第7の実施の形態は、図8に示した第6の実施の形態に対し、スイッチング素子1の素子電流Icを検出する電流検出手段13を設け、ゲート電流調整手段13は、電流検出手段13で検出されたスイッチング素子1の素子電流Icの大きさに基づきゲート電流Igを調整するようにしたものである。
【0052】
第6の実施の形態では、ミラー期間であるときにゲート電流を調整しているが、スイッチング素子1にかかる過電圧は素子電流Icにより変化する。例えば、スイッチング素子1がオフするとき、大きい電流を遮断するとき過電圧が大きくなる。このため、ミラー期間時に一律にゲート電流を調節するのでは、スイッチング素子1の損失が大きくなってしまう。
【0053】
そこで、第7の実施の形態では、ゲート電流調整手段12に電流検出手段13の出力を入力し、素子電流Icの電流値が大きいときには過電圧が大きいため、ゲート電流Igの注入を抑える。一方、素子電流Icの電流値が小さいときには過電圧は小さいため、ゲート電流Igを多く注入して速やかに遮断し損失を抑えることができる。
【0054】
第7の実施の形態によれば、スイッチング素子1の素子電流Icに応じてゲート電流の調整量を制御することで、適切にスイッチング素子1の損失を抑えることが可能になる。
【0055】
(第8の実施の形態)
図10は本発明の第8の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第8の実施の形態は、図8に示した第6の実施の形態に対し、スイッチング素子1の素子電圧を検出する電圧検出手段14を設け、ゲート電流調整手段12は、電圧検出手段14で検出されたスイッチング素子1の素子電圧の大きさに基づきゲート電流Igを調整するようにしたものである。
【0056】
第6の実施の形態では、ミラー期間であるときに、ゲート電流を調整しているが、インバータなどの電力変換器では、通常よりも高い直流電圧が印加されることがある。直流電圧が高い時には、スイッチング素子1の耐量とのマージンが小さくなるため、通常と同じゲート注入では、スイッチング素子1が破壊する可能性がある。
【0057】
そこで、第8の実施の形態では、ゲート電流調整手段12に電圧検出手段14の出力を入力し、直流電圧が高い時には過電圧を通常よりも抑える必要があるため、ゲート電流の注入を通常よりも抑える。これにより、直流電圧が高いときでも、過電圧を抑制してオフすることが可能になる。
【0058】
第8の実施の形態によれば、素子電圧に応じてゲート電流の調整量を制御することで、スイッチング素子1の過電圧を抑えることが可能になる。
【0059】
(第9の実施の形態)
図11は本発明の第9の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第9の実施の形態は、図8に示した第6の実施の形態に対し、スイッチング素子1の素子温度を検出する素子温度検出手段15を設け、ゲート電流調整手段12は、素子温度検出手段15で検出されたスイッチング素子1の素子温度の大きさに基づきゲート電流Igを調整するようにしたものである。
【0060】
第6の実施の形態では、ミラー期間であるときにゲート電流を調整しているがスイッチング素子1は温度によって特性が変化し、規定値以下で使用する必要があり、ミラー期間であるときにゲート電流を調整するだけでは、温度には対応できない。
【0061】
そこで、第9の実施の形態では、ゲート電流調整手段12に素子温度検出手段15の出力を入力し、スイッチング素子1の温度が高い時にはゲート電流Igを通常よりも多く注入して損失を抑え、スイッチング素子1の温度上昇を抑制することが可能になる。
【0062】
第9の実施の形態によれば、素子温度に応じてゲート電流Igの調整量を制御することで、スイッチング素子1の損失を抑えることが可能になる。
【0063】
以上の各実施の形態ににおいては、スイッチング素子1としてはIGBTを例にとって説明したが、IGBTに限らず電圧で制御されるノンラッチング型のスイッチング素子であれば、MOSFETなどにも同様に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図2】本発明の実施の形態における電力変換器の通常動作時のゲート電流及び素子電流の波形図。
【図3】本発明の実施の形態における電力変換器の短絡時のゲート電流及び素子電流の波形図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【図10】本発明の第8の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【図11】本発明の第9の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【符号の説明】
【0065】
1…スイッチング素子、2…フライホイールダイオード、3…ゲート回路、4…ゲート電流検出手段、5…短絡判定手段、6…基準電圧発生手段、7…比較手段、8…ゲート電圧検出手段、9…ミラー期間判定手段、10…微分手段、11…積分手段、12…ゲート電流調整手段、13…電流検出手段、14…電圧検出手段、15…素子温度検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用スイッチング素子を用いた電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用スイッチング素子を応用した電力変換器は、スイッチング素子の大容量化・高速化に伴い、その応用範囲を着実に広げている。このような電力用スイッチング素子において、特に、最近応用分野を伸ばしてきたのがMOSゲート型のスイッチング素子であるIGBTやMOSFETである。
【0003】
IGBTやMOSFETは、オン・オフ状態を自己継続しないノンラッチング型のスイッチング素子であり、サイリスタ等のラッチング型のスイッチング素子に比べて、ゲート駆動による高い制御性が可能な点が大きな利点である。短絡時においても、ゲート電圧を絞ることにより短絡電流を減じることができるため、IGBTのゲート電圧を絞ることによる短絡保護方式を適用した電力変換器が実用化されている。
【0004】
短絡事故が発生した際のスイッチング素子を保護するものとして、スイッチング素子がオン状態の時のコレクタ電圧を検出し、このコレクタ電圧が基準値よりも高い時に過電流や短絡状態であると検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、半導体素子のゲート駆動回路からゲートに流れ込むオンゲート電流または半導体素子のゲートよりゲート駆動回路へ流れ込むオフゲート電流を健全時の電流と比較して短絡故障を検出するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−197724号公報
【特許文献2】特開2007−202238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものでは、スイッチング素子のコレクタ電圧を検出することで短絡を検出し遮断を行うものであるが、短絡を検出するまでの時間が長く、スイッチング素子が破壊する可能性がある。
【0007】
また、特許文献2のものは、スイッチング素子が破壊などして短絡状態で動作できない状態(故障)になったことを検出するものであり、スイッチング素子が通常動作ができる状態において短絡をできるようにしたものではない。
【0008】
通常、スイッチング素子がターンオンすると、スイッチング素子の主電極間の電圧はスイッチング素子で決まる非常に低い電圧となるが、スイッチング素子の短絡時には、直流電圧および主回路のインダクタンスと短絡電流で決まる電圧が発生する。短絡電流はスイッチング素子の特性によって決まるが、定格電流の数倍から十数倍の非常に大きな電流であり、大きな電流が流れると大きな損失が発生し、スイッチング素子が破壊してしまうことになる。そこで、早期に短絡を検出し保護動作を行う必要がある。
【0009】
しかし、ターンオンの過渡時には高耐圧のスイッチング素子ほどコレクタ電圧が減少するのに時間がかかるので、コレクタ電圧を検出して短絡検出するものでは、スイッチング素子がオンするまでの一定期間はマスクする必要がある。この結果、短絡や過電流を検出するまでの時間が比較的長くかかってしまい、スイッチング素子が破壊する可能性がある。さらに、過大な電流を遮断するために、サージ電圧が発生しスイッチング素子が破壊する可能性もある。
【0010】
また、通常動作時においては、スイッチング素子をオンさせるために、スイッチング素子のゲート端子にゲート抵抗を介して約+15V程度の電圧を印加する。そうすると、ゲート抵抗によって制限されたゲート電流がゲート端子へ流れ、スイッチング素子はオンを行う。オフさせるためには、スイッチング素子のゲート端子にゲート抵抗を介して約−15V程度の電圧を印加する。そうすると、スイッチング素子のゲート電荷がゲート端子から流れ出し、スイッチング素子はオフを行う。このとき、ゲート電流は検出されておらず制御はしていない。
【0011】
従って、オン・オフ時のゲート電流はゲート抵抗で決まり、オン時の突入電流やオフ時の過電圧が発生し、スイッチング素子が破壊する可能性がある。また、スイッチング素子の応答速度もゲート抵抗で決まる。ゲート抵抗を下げると過電圧や損失などにも影響するため、抵抗値の小さいゲート抵抗を使って応答速度を上げることは困難である。
【0012】
本発明の目的は、スイッチング素子が故障に至る前に、短絡保護や過電圧抑制が可能で応答性能の高い電力変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係わる電力変換器は、スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、正の基準電圧を発生する第1の基準電圧発生手段と、負の基準電圧を発生する第2の基準電圧発生手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第1の基準電圧発生手段の正の基準電圧とを比較する第1の比較手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第2の基準電圧発生手段の負の基準電圧とを比較する第2の比較手段と、前記第1の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第1の基準電圧発生手段の正基準電圧以上となってから所定時間内に前記第2の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第2の基準電圧発生手段の負基準電圧以下となったときは前記スイッチング素子の短絡と判定する短絡判定手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スイッチング素子が故障に至る前に、短絡保護や過電圧抑制が可能で応答性能の高い電力変換器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。スイッチング素子1にはフライホイールダイオード2が並列接続され、スイッチング素子1はゲート回路3によって駆動される。これによりスイッチング素子1の素子電流Icが制御される。ゲート回路3からスイッチング素子1のゲートに与えられるゲート電流Igは、ゲート電流検出手段4で検出され、第1の比較手段7a及び第2の比較手段7bに入力される。
【0016】
第1の比較手段7aは、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧と第1の基準電圧発生手段6aの正の基準電圧とを比較する。また、第2の比較手段7bは、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧と第2の基準電圧発生手段6bの負の基準電圧とを比較する。
【0017】
短絡判定手段5は、第1の比較手段7aによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流が第1の基準電圧発生手段6aの正基準電圧以上となってから所定時間内に、第2の比較手段7bによりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流が第2の基準電圧発生手段6bの負基準電圧以下となったときはスイッチング素子2の短絡と判定するものである。
【0018】
次に、動作を説明する。図2は本発明の実施の形態における電力変換器の通常動作時のゲート電流Ig及び素子電流Icの波形図である。電力変換器はゲート回路3によって、スイッチング素子1を駆動して電流をオンオフしている。図2に示すように、ゲート電流Igが時点t1で正方向に流れると、スイッチング素子1はオンし、素子電流Icは急峻な傾きで流れる。このときの急峻な電流は、スイッチング素子1と対となるアームのフライホイールダイオード(FWD)2が逆回復状態にあり、スイッチング素子1と対となるアームのFWD2とで直流回路を短絡した状態にあるためである。
【0019】
一方、図3は、本発明の実施の形態における電力変換器の短絡時のゲート電流Ig及び素子電流Icの波形図である。
【0020】
スイッチング素子1が直流電圧を短絡したときには、ゲート電流Igが時点t1で正方向に流れると、定格電流の何倍もの電流がスイッチング素子に流れる。ここで、スイッチング素子1の素子電流Icとスイッチング素子1のゲート電圧には深い関係があり、一般にゲート電圧が高いほど大きな素子電流Icを流すことができる。
【0021】
逆に、スイッチング素子1に短絡電流のような大電流が流れると、ゲート電圧は上昇する。一方で、ゲート回路3の電圧はスイッチング素子1がオンしているときは約15V程度である。このため、スイッチング素子1の短絡時に過大な電流が流れると、スイッチング素子1のゲート電圧がゲート回路3の電圧よりも高くなり、スイッチング素子1からゲート回路3へ電流が流れ込む。
【0022】
この結果、短絡時には図3に示すように、スイッチング素子1をオンさせるためのゲート電流が時点t1で流れた後、短絡したためにオンさせる電流とは逆方向のゲート電流時点t2でが流れることになる。つまり、オン時のゲート電流Igが正負に振れたかを判定することで、通常のオンか短絡かを判定できることになる。
【0023】
この判定を実現するために、第1の実施の形態では、ゲート電流検出手段4の出力を二つの比較手段7a、7bに入力する。比較手段7a、7bには、それぞれ基準電圧発生手段6a、6bの出力も入力され、ゲート電流検出手段4の信号と比較される。基準電圧発生手段6a、6bはそれぞれ正負の基準電圧を発生し、そのレベルよりもゲート電流検出手段4の出力が大きいかを比較し、短絡判定手段5へ結果を出力する。短絡判定手段5では、まず正の基準電圧よりもゲート電流検出手段4の出力が大きいかを検出する。そして、検出された場合には、そこから指定した所定時間の間に、負の基準電圧よりゲート電流検出手段4の出力が小さい信号があれば短絡とみなし、ゲート回路3によりゲート電圧を絞り短絡保護を行うことが可能になる。
【0024】
以上の説明では、ゲート電流検出手段4でゲート電流Igを電圧で検出し、第1の基準電圧発生手段6aの正の基準電圧、第2の基準電圧発生手段6bの負の基準電圧と比較するようにしたが、ゲート電流検出手段4でゲート電流Igを電流で検出し、正の基準電流、負の基準電流と比較するようにしてもよい。
【0025】
第1の実施の形態によれば、ゲート電流検出手段の出力の時間変化を検出することで、スイッチング素子が故障に至る前に早期に短絡を検出し、スイッチング素子を保護することが可能になる。
【0026】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、ゲート電流検出手段4に加えてゲート電圧検出手段8を設け、ミラー期間判定手段9により、ゲート電流が流れ込んでいて、かつゲート電圧が一定となっているときにミラー期間と判定し、スイッチング素子1のオフ時の電圧を抑制するようにしたものである。
【0027】
スイッチング素子1にはフライホイールダイオード2が並列接続され、スイッチング素子1はゲート回路3によって駆動される。これによりスイッチング素子1の素子電流Icが制御される。ゲート回路3からスイッチング素子1のゲートに与えられるゲート電流Igは、ゲート電流検出手段4で検出され、比較手段7に入力される。基準電圧発生手段6は、スイッチング素子1のオフ時基準電圧を発生する。比較手段7は、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流Igに対応した電圧と基準電圧発生手段6からのオフ時基準電圧(負の基準電圧)とを比較する。
【0028】
ミラー期間判定手段9は、比較手段7によりゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流が基準電圧発生手段6のオフ時基準電圧以下となっている状態で、ゲート電圧検出手段8で検出されたゲート電圧がほぼ一定となるミラー期間を検出したときは、スイッチング素子1のオフ時の電圧を抑制するようにゲート回路3に指令を出力する。
【0029】
次に、動作を説明する。スイッチング素子1がオフするとき、ゲート回路3は約−15Vを印加してゲート電流を負方向に流す。これにより、スイッチング素子1のゲート・エミッタ間容量に蓄えられていた電荷が放電され、スイッチング素子1のゲート電圧は減少していく。次に、ゲート・コレクタ間の帰還容量からゲート電流が流れ込んでくる。このとき、ゲート・エミッタ間容量の放電はほとんど行われなくなるため、ゲート電圧はほぼ一定となる。最後に、ゲート・エミッタ間容量が放電され、コレクタ電圧が増加し始め、ゲート電圧は−15Vまで低下しオフが完了する。
【0030】
ここで、ゲート電圧がほぼ一定となる期間をミラー期間と呼ぶ。図4では、ゲート電流検出手段4により、オフ時のゲート電流Igが流れ込んでいることを検出している。また、ゲート電圧検出手段8により、ゲート電圧Vgを検出し、ミラー期間判定手段9に入力する。ミラー期間判定手段9はゲート電流Igが流れ込んでいて、かつ、ゲート電圧Vgが一定となっているとき、ミラー期間と判定する。
【0031】
ミラー期間と判定されたとき、ゲート回路3のゲート抵抗を大きくしたり、スイッチング素子1から引き出すゲート電流Igを小さくしたりすることで、オフ時のサージ電圧を抑制することが可能になる。特に、過電流時には通常よりも大きな電流を遮断することになるため、短絡検出後の遮断ではミラー期間を検出したらオフ条件を変えることにより、スイッチング素子1が破壊することなくオフすることが可能になる。
【0032】
第2の実施の形態によれば、ゲート電流とゲート電圧とを検出することでミラー期間を判定し、スイッチング素子1のオフ時の電圧を抑制することが可能になる。
【0033】
(第3の実施の形態)
図5は本発明の第3の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第3の実施の形態は、ゲート電圧検出手段8で検出されたゲート電圧を微分する微分手段10を設け、ミラー期間判定手段9は、微分手段10で得られたゲート電圧の微分値が零である期間をミラー期間として検出するようにしたものである。図4と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0034】
図5に示すように、ゲート電圧検出手段8にで検出されたゲート電圧を微分する微分手段10が追加され、その微分手段10の出力がミラー期間判定手段9に入力されている。
【0035】
第2の実施の形態では、ゲート電流が負方向に流れていて、かつ、ゲート電圧が一定となったときにミラー期間であると判定していた。しかし、この一定となる電圧は素子特性や素子電流Icなどによって変化するため、ある設定電圧値と単純に比較してミラー期間であると判断すると信頼性が保てない場合がある。その信頼性を持たせるためには、ゲート電圧検出手段8の回路構成が複雑になる。
【0036】
そこで、第3の実施の形態では、ゲート電圧検出手段8の出力を微分手段10に入力し、微分手段10はゲート電圧Vgを微分してミラー期間判定手段9に入力している。ミラー期間判定手段9はゲート電流Igが流れていて、かつ、微分出力が零になったときミラー期間であると判定する。一定になるゲート電圧Vgはスイッチング素子1や素子電流Icなどによって変化するが、微分出力は零になるため、スイッチング素子1や素子電流Icなどによらずミラー期間の判定することが可能になる。
【0037】
第3の実施の形態によれば、ゲート電圧検出手段8の回路構成を複雑にすることなく、ミラー期間を判定することが可能になる。
【0038】
(第4の実施の形態)
図6は本発明の第4の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第4の実施の形態は、ゲート電流検出手段4で検出されたゲート電流を積分手段11で積分し、ミラー期間判定手段9は、積分手段11で得られたゲート電流Igの積分である電荷量とゲート電圧検出手段8で検出されたゲート電圧との相関関係に基づいてミラー期間を検出するようにしたものである。
【0039】
第3の実施の形態では、ゲート電流Igが負方向に流れていて、かつ、ゲート電圧Vgの微分値が零となったときにミラー期間であると判定していたが、ゲート電圧Vgの検出値にはノイズが乗り、正しく判定できない可能性がある。そこで、第4の実施の形態ではゲート電流検出手段Igの出力を積分手段11に入力し、その結果をミラー期間判定手段9に入力している。
【0040】
ここで、スイッチング素子1をオフする時には、まず、ゲート・エミッタ間容量に蓄えられていた電荷が放電している。このとき、ゲート・エミッタ間の容量に残っている電荷量Qと電圧VにはQ=CV(Cは定数)の関係がある。Cは定数であるので、電荷量Qと電圧Vは比例の関係にあることになる。例えば、ある電荷量Qが放電されれば、上記式で決定される電圧V=Q/Cだけ、ゲート電圧Vgは低下する。電荷量とは電流の積分値であるため、ゲートから放電される電荷量はゲート電流Igを積分することで得られる。そして、積分値(電荷量)の上昇とゲート電圧Vgの低下は比例関係のまま変化していく。
【0041】
ミラー期間では、ゲート・エミッタ間容量からは放電されず、ゲート・コレクタ間の帰還容量からゲート電流が流れ込んでくる。このため、ゲート電流Igの積分値は上昇し続けるが、ゲート電圧Vgは変化しなくなる。従って、ゲート電流Igの積分値から予想されるゲート電圧低下と実際のゲート電圧Vgの低下が一致しなくなる。このとき、ミラー期間であると判定できることになる。
【0042】
第4の実施の形態によれば、ゲート電圧Vgの検出値にはノイズが乗った場合であっても、ミラー期間を正しく判定することが可能になる。
【0043】
(第5の実施の形態)
図7は本発明の第5の実施の形態に係わる電力変換器の構成図である。この第5の実施の形態は、図6に示した第4の実施の形態に対し、ゲート電圧検出手段8を取り除いたものである。
【0044】
第4の実施の形態では、ゲート電流Igの積分値とゲート電圧Vgとを比較してミラー期間を判定したミラー期間におけるゲート電圧Vgは素子電流Icによって変動する。また、ゲート電圧Vgもある電圧で一定とはならず変動することも多い。このため、ゲート電圧Vgとの比較ではミラー期間を判定できない可能性がある。
【0045】
そこで、第5の実施の形態では、ゲート電流検出手段4の出力を積分手段11で積分し、その出力のみをミラー期間判定手段9へ入力している。スイッチング素子1のゲート容量の電荷とゲート電圧Vgの関係はスイッチング素子1によって決まる。例えば、スイッチング素子1がオンするとき、スイッチング素子1のゲートに電流を注入する。このときの電流値を積分するとゲートの電荷が得られる。ゲート電荷とゲート電圧との関係はデータシートから得られるため、ゲート電圧Vgが一定となる期間のゲート電荷の範囲も容易に知ることができる。このため、ゲート電流Igを積分して得られた電荷量がある範囲にあるとき、ミラー期間であると判断できる。
【0046】
第5の実施の形態によれば、ゲート電圧Vgが変動した場合であっても、ゲート電流の積分出力を検出することでミラー期間を判定することが可能になる。
【0047】
(第6の実施の形態)
図8は本発明の第6の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第6の実施の形態は、第2の実施の形態乃至第5の実施の形態に対し、ミラー期間判定手段9で検出されたミラー期間中にゲート電流Igを調整するゲート電流調整手段12を設けたものである。
【0048】
スイッチング素子1がオンするとき、対となるフライホイールダイオード2は逆回復をするために過電圧が発生する。この過電圧はフライホイールダイオード2が導通状態からオフするために発生し、オンするスピードが速い方が過電圧も大きくなる。従って、ゲート回路3のゲート抵抗を大きくするなどしてゲート電流を小さくし、ゆっくりとオンさせることで、この過電圧を抑えることができるが、その場合、スイッチング素子1の損失が大きくなってしまう。
【0049】
そこで、第5の実施の形態では、ミラー期間判定手段9によりミラー期間であると判定したときには、ゲート電流調整手段12にてゲート電流を調整できるようにしている。これにより、まずゆっくりとオンさせて過電圧を抑え、ミラー期間になったとき、ゲート電流を大きくすることでオンの速度を上げ、損失を抑えることが可能になる。
【0050】
第6の実施の形態によれば、ミラー期間であると判定したときにゲート電流調整するので、スイッチング素子1の損失を低減できる。
【0051】
(第7の実施の形態)
図9は本発明の第7の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第7の実施の形態は、図8に示した第6の実施の形態に対し、スイッチング素子1の素子電流Icを検出する電流検出手段13を設け、ゲート電流調整手段13は、電流検出手段13で検出されたスイッチング素子1の素子電流Icの大きさに基づきゲート電流Igを調整するようにしたものである。
【0052】
第6の実施の形態では、ミラー期間であるときにゲート電流を調整しているが、スイッチング素子1にかかる過電圧は素子電流Icにより変化する。例えば、スイッチング素子1がオフするとき、大きい電流を遮断するとき過電圧が大きくなる。このため、ミラー期間時に一律にゲート電流を調節するのでは、スイッチング素子1の損失が大きくなってしまう。
【0053】
そこで、第7の実施の形態では、ゲート電流調整手段12に電流検出手段13の出力を入力し、素子電流Icの電流値が大きいときには過電圧が大きいため、ゲート電流Igの注入を抑える。一方、素子電流Icの電流値が小さいときには過電圧は小さいため、ゲート電流Igを多く注入して速やかに遮断し損失を抑えることができる。
【0054】
第7の実施の形態によれば、スイッチング素子1の素子電流Icに応じてゲート電流の調整量を制御することで、適切にスイッチング素子1の損失を抑えることが可能になる。
【0055】
(第8の実施の形態)
図10は本発明の第8の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第8の実施の形態は、図8に示した第6の実施の形態に対し、スイッチング素子1の素子電圧を検出する電圧検出手段14を設け、ゲート電流調整手段12は、電圧検出手段14で検出されたスイッチング素子1の素子電圧の大きさに基づきゲート電流Igを調整するようにしたものである。
【0056】
第6の実施の形態では、ミラー期間であるときに、ゲート電流を調整しているが、インバータなどの電力変換器では、通常よりも高い直流電圧が印加されることがある。直流電圧が高い時には、スイッチング素子1の耐量とのマージンが小さくなるため、通常と同じゲート注入では、スイッチング素子1が破壊する可能性がある。
【0057】
そこで、第8の実施の形態では、ゲート電流調整手段12に電圧検出手段14の出力を入力し、直流電圧が高い時には過電圧を通常よりも抑える必要があるため、ゲート電流の注入を通常よりも抑える。これにより、直流電圧が高いときでも、過電圧を抑制してオフすることが可能になる。
【0058】
第8の実施の形態によれば、素子電圧に応じてゲート電流の調整量を制御することで、スイッチング素子1の過電圧を抑えることが可能になる。
【0059】
(第9の実施の形態)
図11は本発明の第9の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図である。この第9の実施の形態は、図8に示した第6の実施の形態に対し、スイッチング素子1の素子温度を検出する素子温度検出手段15を設け、ゲート電流調整手段12は、素子温度検出手段15で検出されたスイッチング素子1の素子温度の大きさに基づきゲート電流Igを調整するようにしたものである。
【0060】
第6の実施の形態では、ミラー期間であるときにゲート電流を調整しているがスイッチング素子1は温度によって特性が変化し、規定値以下で使用する必要があり、ミラー期間であるときにゲート電流を調整するだけでは、温度には対応できない。
【0061】
そこで、第9の実施の形態では、ゲート電流調整手段12に素子温度検出手段15の出力を入力し、スイッチング素子1の温度が高い時にはゲート電流Igを通常よりも多く注入して損失を抑え、スイッチング素子1の温度上昇を抑制することが可能になる。
【0062】
第9の実施の形態によれば、素子温度に応じてゲート電流Igの調整量を制御することで、スイッチング素子1の損失を抑えることが可能になる。
【0063】
以上の各実施の形態ににおいては、スイッチング素子1としてはIGBTを例にとって説明したが、IGBTに限らず電圧で制御されるノンラッチング型のスイッチング素子であれば、MOSFETなどにも同様に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図2】本発明の実施の形態における電力変換器の通常動作時のゲート電流及び素子電流の波形図。
【図3】本発明の実施の形態における電力変換器の短絡時のゲート電流及び素子電流の波形図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係わる電力変換器の構成図。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【図10】本発明の第8の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【図11】本発明の第9の実施の形態に係わる電力変換器のミラー期間判定手段及びゲート回路部分の構成図。
【符号の説明】
【0065】
1…スイッチング素子、2…フライホイールダイオード、3…ゲート回路、4…ゲート電流検出手段、5…短絡判定手段、6…基準電圧発生手段、7…比較手段、8…ゲート電圧検出手段、9…ミラー期間判定手段、10…微分手段、11…積分手段、12…ゲート電流調整手段、13…電流検出手段、14…電圧検出手段、15…素子温度検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、正の基準電圧を発生する第1の基準電圧発生手段と、負の基準電圧を発生する第2の基準電圧発生手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第1の基準電圧発生手段の正の基準電圧とを比較する第1の比較手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第2の基準電圧発生手段の負の基準電圧とを比較する第2の比較手段と、前記第1の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第1の基準電圧発生手段の正基準電圧以上となってから所定時間内に前記第2の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第2の基準電圧発生手段の負基準電圧以下となったときは前記スイッチング素子の短絡と判定する短絡判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項2】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、前記スイッチング素子のオフ時基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記基準電圧発生手段のオフ時基準電圧とを比較する比較手段と、前記スイッチング素子のオフ時ゲート電圧を検出するためのゲート電圧検出手段と、前記比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記基準電圧発生手段のオフ時基準電圧以下となっている状態で前記ゲート電圧検出手段で検出されたゲート電圧がほぼ一定となるミラー期間を検出したときは前記スイッチング素子のオフ時の電圧を抑制するミラー期間判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項3】
前記ゲート電圧検出手段で検出されたゲート電圧を微分する微分手段を設け、前記ミラー期間判定手段は、前記微分手段で得られたゲート電圧の微分値が零である期間をミラー期間として検出することを特徴とする請求項2記載の電力変換器。
【請求項4】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、前記スイッチング素子のオフ時ゲート電圧を検出するためのゲート電圧検出手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧を積分する積分手段と、前記積分手段で得られたゲート電流の積分である電荷量と前記ゲート電圧検出手段で検出されたゲート電圧との相関関係に基づいてミラー期間を検出するミラー期間判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項5】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、前記スイッチング素子のオフ時ゲート電圧を検出するためのゲート電圧検出手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧を積分しゲート電荷を求める積分手段と、前記スイッチング素子のゲート容量の電荷とゲート電圧との関係を予め記憶しておき前記積分手段で得られたゲート電荷と予め記憶しておいたゲート容量の電荷とゲート電圧との関係に基づきミラー期間を検出するミラー期間判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項6】
前記ミラー期間判定手段で検出されたミラー期間中にゲート電流を調整するゲート電流調整手段を具備することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電力変換器。
【請求項7】
前記スイッチング素子の素子電流を検出する電流検出手段を設け、前記ゲート電流調整手段は、前記電流検出手段で検出された前記スイッチング素子の素子電流の大きさに基づきゲート電流を調整することを特徴とする請求項6に記載の電力変換器。
【請求項8】
前記スイッチング素子の素子電圧を検出する電圧検出手段を設け、前記ゲート電流調整手段は、前記電圧検出手段で検出された前記スイッチング素子の素子電圧の大きさに基づきゲート電流を調整することを特徴とする請求項6に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記スイッチング素子の素子温度を検出する素子温度検出手段を設け、前記ゲート電流調整手段は、前記素子温度検出手段で検出された前記スイッチング素子の素子温度の大きさに基づきゲート電流を調整することを特徴とする請求項6に記載の電力変換器。
【請求項1】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、正の基準電圧を発生する第1の基準電圧発生手段と、負の基準電圧を発生する第2の基準電圧発生手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第1の基準電圧発生手段の正の基準電圧とを比較する第1の比較手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記第2の基準電圧発生手段の負の基準電圧とを比較する第2の比較手段と、前記第1の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第1の基準電圧発生手段の正基準電圧以上となってから所定時間内に前記第2の比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記第2の基準電圧発生手段の負基準電圧以下となったときは前記スイッチング素子の短絡と判定する短絡判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項2】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、前記スイッチング素子のオフ時基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧と前記基準電圧発生手段のオフ時基準電圧とを比較する比較手段と、前記スイッチング素子のオフ時ゲート電圧を検出するためのゲート電圧検出手段と、前記比較手段により前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧が前記基準電圧発生手段のオフ時基準電圧以下となっている状態で前記ゲート電圧検出手段で検出されたゲート電圧がほぼ一定となるミラー期間を検出したときは前記スイッチング素子のオフ時の電圧を抑制するミラー期間判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項3】
前記ゲート電圧検出手段で検出されたゲート電圧を微分する微分手段を設け、前記ミラー期間判定手段は、前記微分手段で得られたゲート電圧の微分値が零である期間をミラー期間として検出することを特徴とする請求項2記載の電力変換器。
【請求項4】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、前記スイッチング素子のオフ時ゲート電圧を検出するためのゲート電圧検出手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧を積分する積分手段と、前記積分手段で得られたゲート電流の積分である電荷量と前記ゲート電圧検出手段で検出されたゲート電圧との相関関係に基づいてミラー期間を検出するミラー期間判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項5】
スイッチング素子のゲート電流を検出するためのゲート電流検出手段と、前記スイッチング素子のオフ時ゲート電圧を検出するためのゲート電圧検出手段と、前記ゲート電流検出手段で検出されたゲート電流に対応した電圧を積分しゲート電荷を求める積分手段と、前記スイッチング素子のゲート容量の電荷とゲート電圧との関係を予め記憶しておき前記積分手段で得られたゲート電荷と予め記憶しておいたゲート容量の電荷とゲート電圧との関係に基づきミラー期間を検出するミラー期間判定手段とを具備することを特徴とする電力変換器。
【請求項6】
前記ミラー期間判定手段で検出されたミラー期間中にゲート電流を調整するゲート電流調整手段を具備することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電力変換器。
【請求項7】
前記スイッチング素子の素子電流を検出する電流検出手段を設け、前記ゲート電流調整手段は、前記電流検出手段で検出された前記スイッチング素子の素子電流の大きさに基づきゲート電流を調整することを特徴とする請求項6に記載の電力変換器。
【請求項8】
前記スイッチング素子の素子電圧を検出する電圧検出手段を設け、前記ゲート電流調整手段は、前記電圧検出手段で検出された前記スイッチング素子の素子電圧の大きさに基づきゲート電流を調整することを特徴とする請求項6に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記スイッチング素子の素子温度を検出する素子温度検出手段を設け、前記ゲート電流調整手段は、前記素子温度検出手段で検出された前記スイッチング素子の素子温度の大きさに基づきゲート電流を調整することを特徴とする請求項6に記載の電力変換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−225506(P2009−225506A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64640(P2008−64640)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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