説明

電力変換装置

【課題】直列接続された第1スイッチと第2スイッチの同時オン状態を防止することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置1は、IGBT110a〜110fと、MOSFET111a〜111fと、駆動回路12〜14とを備えている。IGBT110a、110dは直列接続されている。IGBT110a、110dのゲートとエミッタの間には、MOSFET111a、111dがそれぞれ接続されている。駆動回路12は、IGBT110dがオフしてから、MOSFET111aによるIGBT110aのオフ状態の保持を解除する。IGBT110aがオフしてから、MOSFET111dによるIGBT110dのオフ状態の保持を解除する。そのため、直列接続されたIGBT110a、110dがともにオン状態となることはない。従って、直列接続されたIGBT110a、110dの同時オン状態を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチのオフ状態を保持するオフ保持回路を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置として、コンバータ装置やインバータ装置がある。これらの装置は、直列接続された2つのトランジスタを少なくとも1組備え、これらのトランジスタを相補的にオン、オフさせることで電力を変換している。
【0003】
ところで、トランジスタを駆動する回路として、例えば特許文献1に開示されているトランジスタ駆動回路装置がある。このトランジスタ駆動回路装置は、IGBTを駆動するものであり、ゲートドライブ回路と、電流ドライバと、ゲート放電トランジスタと、放電トランジスタ断続回路とを備えている。ゲートドライブ回路は、外部入力信号に基づいてIGBTをオン、オフするための制御電圧を出力する。電流ドライバは、ゲートドライブ回路及びIGBTに接続され、制御電圧をIGBTの駆動に必要な電力レベルに増幅し、IGBTのゲートに供給する。一方、ゲート放電トランジスタは、IGBTのゲートとエミッタに間に接続されている。放電トランジスタ断続回路は、ゲートドライブ回路、電流ドライバ及びゲート放電トランジスタに接続され、ゲートドライブ回路と電流ドライバの出力に基づいて、IGBTのオン時には、ゲート放電トランジスタをオフさせ、IGBTがオフ時には、ゲート放電トランジスタをオンさせる。IGBTのオン時には、ゲート放電トランジスタがオフしているため、外部入力信号に基づいてIGBTをオンさせることができる。一方、IGBTのオフ時には、ゲート放電トランジスタがオンし、IGBTのゲート電位が低電位であるエミッタ電位に固定されるため、IGBTのオン状態を保持することができる。そのため、IGBTのゲートにノイズ電圧が印加されてもIGBTを確実にオフさせことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−208831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、電力変換装置は、直列接続された2つのトランジスタを相補的にオン、オフさせることで電力を変換している。直列接続された2つのトランジスタが同時にオンすると、大電流が流れ、トランジスタが破損してしまう。そのため、トランジスタのオン、オフの切換わり時には、両トランジスタがともにオフするデッドタイムが設けられている。前述したトランジスタ駆動回路装置の場合、一方のIGBTに対する外部入力信号と、他方のIGBTに対する外部入力信号のタイミングを調整することにより、デッドタイムが設けられる。しかし、回路遅延等により外部入力信号のタイミングがずれると、外部入力信号におけるデッドタイムがなくなり、直列接続されたIGBTが同時にオンする可能性がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、直列接続された第1スイッチと第2スイッチの同時オン状態を防止することができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、第2スイッチがオフしてから、第1オフ保持回路による第1スイッチのオフ状態の保持を解除するとともに、第1スイッチがオフしてから、第2オフ保持回路による第2スイッチのオフ状態の保持を解除することで、直列接続された第1スイッチと第2スイッチの同時オン状態を防止できることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、第1スイッチと、第1スイッチに直列接続される第2スイッチと、第1スイッチに接続され、第1スイッチのオフ状態を保持する第1オフ保持回路と、第2スイッチに接続され、第2スイッチのオフ状態を保持する第2オフ保持回路と、第1スイッチ、第2スイッチ、第1オフ保持回路及び第2オフ保持回路に接続され、第1スイッチをオン、オフするとともに、第2スイッチを第1スイッチと相補的にオン、オフし、第1スイッチがオフ状態のとき、第1スイッチのオフ状態を保持するように第1オフ保持回路を駆動するとともに、第2スイッチがオフ状態のとき、第2スイッチのオフ状態を保持するように第2オフ保持回路を駆動する駆動回路と、を備えた電力変換装置において、駆動回路は、第2スイッチがオフしてから、第1オフ保持回路による第1スイッチのオフ状態の保持を解除するとともに、第1スイッチがオフしてから、第2オフ保持回路による第2スイッチのオフ状態の保持を解除することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、駆動回路は、第2スイッチがオフしてから第1スイッチのオフ保持状態を解除して、第1スイッチをオン可能な状態にする。また、第1スイッチがオフしてから第2スイッチのオフ保持状態を解除して、第2スイッチをオン可能な状態にする。そのため、直列接続された第1スイッチと第2スイッチとがともにオン状態となることはない。従って、直列接続された第1スイッチと第2スイッチの同時オン状態を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の電力変換装置は、駆動回路は、第1スイッチをオン、オフするための第1スイッチ駆動信号を出力するとともに、第2スイッチを第1スイッチと相補的にオン、オフするための第2スイッチ駆動信号を出力し、第2スイッチ駆動信号に基づいて第1オフ保持回路による第1スイッチのオフ状態の保持を解除するとともに、第1スイッチ駆動信号に基づいて第2オフ保持回路による第2スイッチのオフ状態の保持を解除することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第1スイッチ駆動信号及び第2スイッチ駆動信号によって、第1スイッチ及び第2スイッチがオフすることを知ることができる。そのため、第2スイッチがオフしてから、確実に、第1スイッチのオフ保持状態を解除することができる。また、第1スイッチがオフしてから、確実に、第2スイッチのオフ保持状態を解除することができる。従って、直列接続された第1スイッチと第2スイッチの同時オン状態を確実に防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の電力変換装置は、駆動回路は、外部から入力される第1スイッチを駆動するための第1スイッチ駆動指令信号に基づいて第1スイッチ駆動信号に出力するとともに、外部から入力される第2スイッチを第1スイッチと相補的にオン、オフするための第2スイッチ駆動指令信号に基づいて第2スイッチ駆動信号を出力し、第1スイッチ駆動指令信号と第2スイッチ駆動信号に基づいて第1オフ保持回路による第1スイッチのオフ状態の保持を解除するとともに、第2スイッチ駆動指令信号と第1スイッチ駆動指令に基づいて第2オフ保持回路による第2スイッチのオフ状態の保持を解除することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1スイッチ駆動指令信号及び第2スイッチ駆動指令信号に基づいて第1スイッチ及び第2スイッチがオンすることをより早く知ることができる。そのため、第1スイッチがオンするときに、確実に、第1スイッチのオフ保持状態を解除することができる。また、第2スイッチがオンするときに、確実に、第2スイッチのオフ保持状態を解除することができる。
【0014】
請求項4に記載の電力変換装置は、駆動回路は、第1スイッチ駆動信号に基づいて第1オン保持回路による第1スイッチのオフ状態の保持を開始するとともに、第2スイッチ駆動信号に基づいて第2オフ保持回路による第2スイッチのオフ状態の保持を開始することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1スイッチ駆動信号及び第2スイッチ駆動信号によって、第1スイッチ及び第2スイッチがオフすることを知ることができる。そのため、第1スイッチがオフしてから、確実に、第1スイッチのオフ状態の保持を開始することができる。また、第2スイッチがオフしてから、確実に、第2スイッチのオフ状態の保持を開始することができる。
【0016】
請求項5に記載の電力変換装置は、車両に搭載され、電力を変換することを特徴とする。この構成によれば、車両に搭載された電力変換装置において、直列接続された第1スイッチと第2スイッチの同時オン状態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態におけるモータ制御装置の回路図である。
【図2】IGBTに対する駆動指令信号及び駆動信号、並びに、MOSFETに対する駆動信号のタイミングチャートである。
【図3】図2に対して、一方の駆動指令信号のタイミングがずれた場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、実施形態を挙げ本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載され、直流電力を交流電力に変換して3相交流モータM1に供給するモータ制御装置に適用した例を示す。
【0019】
まず、図1を参照してモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態におけるモータ制御装置の回路図である。
図1に示すモータ制御装置1(電力変換装置)は、バッテリB1の出力する直流電圧を3相交流電圧に変換して3相交流モータM1に供給し、3相交流モータM1を駆動する装置である。つまり、直流電力を交流電力に変換して3相交流モータM1を駆動する装置である。モータ制御装置1は、平滑コンデンサ10と、電力変換回路11と、駆動回路12〜14と、制御回路15とを備えている。
【0020】
平滑コンデンサ10は、バッテリB1の直流電圧を平滑するための素子である。平滑コンデンサ10の正極端子及び負極端子は、バッテリB1の正極端子及び負極端子にそれぞれ接続されている。
【0021】
電力変換回路11は、平滑コンデンサ10によって平滑されたバッテリB1の直流電圧を3相交流電圧に変換し、3相交流モータM1に供給する回路である。つまり、直流電力を交流電力に変換して3相交流モータM1に供給する回路である。電力変換回路11は、IGBT110a〜110c(第1スイッチ)と、IGBT110d〜110f(第2スイッチ)と、MOSFET111a〜111c(第1オフ保持回路)と、MOSFET111d〜111f(第2オフ保持回路)とを備えている。
【0022】
IGBT110a〜110fは、オン、オフすることで直流電圧を3相交流電圧に変換するためのスイッチング素子である。IGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fは、それぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT110a〜110cのエミッタ端子が、IGBT110d〜110fのコレクタ端子にそれぞれ接続されている。直列接続された3組のIGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fは、並列接続されている。IGBT110〜112のコレクタ端子は平滑コンデンサ10の正極端子に、IGBT113〜115のエミッタ端子は平滑コンデンサ10の負極端子にそれぞれ接続されている。IGBT110a、110dのゲート端子は駆動回路12に、IGBT110b、110eのゲート端子は駆動回路13に、IGBT110c、110fのゲート端子は駆動回路14にそれぞれ接続されている。また、直列接続されたIGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fの直列接続点に形成されるU、V、W相端子は、3相交流モータM1にそれぞれ接続されている。
【0023】
MOSFET111a〜111fは、IGBT110a〜110fのオフ状態を保持するためのスイッチング素子である。MOSFET111a〜111fは、IGBT110a〜110fのゲートをエミッタに接続することで、IGBT110a〜110fのオフ状態を保持する。MOSFET111a〜111fのドレインはIGBT110a〜110fのゲートに、ソースはIGBT110a〜110fのエミッタにそれぞれ接続されている。また、MOSFET111a、111dのゲート端子は駆動回路12に、MOSFET111b、111eのゲート端子は駆動回路13に、MOSFET111c、111fのゲート端子は駆動回路14にそれぞれ接続されている。
【0024】
駆動回路12〜14は、制御回路15から入力されるIGBT110a〜110fに対する駆動指令信号に基づいて、IGBT110a〜110f及びMOSFET111a〜111fを駆動する回路である。駆動回路12は、制御回路15から入力されるIGBT110a、110dに対する駆動指令信号に基づいて、IGBT110a、110dを駆動するための駆動信号を出力する。また、IGBT110aに対する駆動指令信号と、IGBT110dに対する駆動信号に基づいて、MOSFET111aを駆動するための駆動信号を出力する。さらに、IGBT110dに対する駆動指令信号と、IGBT110aに対する駆動信号に基づいてMOSFET111dを駆動するための駆動信号を出力する。駆動回路12のIGBT110a、110dに対する駆動指令信号の入力端子IN1、IN2は、制御回路15にそれぞれ接続されている。IGBT110a、110dに対する駆動信号の出力端子OUT1、OUT2は、IGBT110a、110dのゲートにそれぞれ接続されている。MOSFET111a、111fに対する駆動信号の出力端子OFK1、OFK2は、MOSFET111a、111dのゲートにそれぞれ接続されている。駆動回路13、14も駆動回路12と同様の構成である。
【0025】
制御回路15は、外部から入力される指令、及び、3相交流モータM1の相電流等に基づいてIGBT110a〜110fに対する駆動指令信号を出力する回路である。制御回路15のIGBT110a〜110fに対する駆動指令信号の出力端子は、駆動回路12〜14の駆動指令信号の入力端子IN1、IN2にそれぞれ接続されている。
【0026】
次に、図1〜図3を参照してモータ制御装置の動作について説明する。ここで、図2は、IGBTに対する駆動指令信号及び駆動信号、並びに、MOSFETに対する駆動信号のタイミングチャートである。図3は、図2に対して、一方の駆動指令信号のタイミングがずれた場合のタイミングチャートである。なお、IGBT110a、110dに対する駆動指令信号は、ハイレベルがオフ、ローレベルがオンを指示するものであり、IGBT110a、110dを相補的にオン、オフさせるように設定されている。また、IGBTに対する駆動信号は、ローレベルがオフ、ハイレベルがオンを指示するものである。さらに、MOSFETに対する駆動信号は、ローレベルがオフ、つまりオフ保持解除状態、ハイレベルがオン、つまりオフ保持状態を指示するものである。
【0027】
まず、モータ制御装置の概略動作について説明する。図1において、制御回路15は、外部から入力される指令、及び、3相交流モータM1の相電流等に基づいてIGBT110a〜110fに対する駆動指令信号を出力する。駆動回路12〜14は、制御回路15から入力されるIGBT110a〜110fに対する駆動指令信号に基づいてIGBT110a〜110f及びMOSFET111a〜111fをオン、オフしてバッテリB1の直流電圧を3相交流電圧に変換し、3相交流モータM1に供給する。
【0028】
次に、駆動回路12〜14の動作について説明する。ここでは、駆動回路12を例に挙げ、動作について説明する。図1において、駆動回路12は、IGBT110aをオン、オフするとともに、IGBT110dをIGBT110aと相補的にオン、オフする。また、IGBT110aがオフ状態のとき、IGBT110aのオフ状態を保持するようにMOSFET111aを駆動する。その際、IGBT110dがオフしてから、MOSFET111aによるIGBT110aのオフ状態の保持を解除する。さらに、IGBT110dがオフ状態のとき、IGBT110dのオフ状態を保持するようにMOSFET111dを駆動する。その際、IGBT110aがオフしてから、MOSFET111dによるIGBT110dのオフ状態の保持を解除する。
【0029】
さらに、具体的に説明する。図1において、制御回路15は、IGBT110a、110dに対する駆動指令信号を出力する。図2に示すように、IGBT110a、110dに対する駆動指令信号には、IGBT110a、110dをともにオフするためのデッドタイムが設けられている。
【0030】
図1において、駆動回路12は、図2に示すように、IGBT110aに対する駆動指令信号がオフからオンになると、IGBT110aに対する駆動信号をオフからオンする(t1)。一方、IGBT110adに対する駆動指令信号がオンからオフになると、IGBT110aに対する駆動信号をオンからオフする(t2)。
【0031】
また、図1において、駆動回路12は、図2に示すように、IGBT110dに対する駆動指令信号がオンからオフになると、IGBT110dに対する駆動信号をオンからオフする(t3)。一方、IGBT110dに対する駆動指令信号がオフからオンになると、IGBT110dに対する駆動信号をオフからオンする(t4)。
【0032】
さらに、図1において、駆動回路12は、図2に示すように、IGBT110aに対する駆動指令信号がオフからオンに変化する過程で閾値L1以下になり、かつ、IGBT110dに対する駆動信号がオンからオフに変化する過程で閾値L2以下になると、MOSFET111aに対する駆動信号をオンからオフする(t5)。ここで、閾値L1は、駆動指令信号のオンレベルとオフレベルの間であって、オフレベルに近い値に設定されている。また、閾値L2は、駆動信号のオンレベルとオフレベルの間であって、オフレベルに近い値に設定されている。これにより、図1において、MOSFET111aがオンからオフし、IGBT110aのオフ状態の保持が解除されオフ保持解除状態となる。一方、図2に示すように、IGBT110aに対する駆動信号がオンからオフになると、MOSFET111aに対する駆動信号をオフからオンする(t6)。これにより、図1において、MOSFET111aがオフからオンし、IGBT110aのオフ状態を保持するオフ保持状態となる。
【0033】
加えて、図1において、駆動回路12は、図2に示すように、IGBT110dに対する駆動信号がオンからオフになると、MOSFET111dに対する駆動信号をオフからオンする(t7)。これにより、図1においてMOSFET111dがオフからオンし、IGBT110dのオフ状態を保持するオフ保持状態となる。一方、IGBT110dに対する駆動指令信号がオフからオンに変化する過程で閾値L1以下になり、かつ、IGBT110aに対する駆動信号がオンからオフに変化する過程で
閾値L2以下になると、MOSFET111dに対する駆動信号をオンからオフする(t8)。これにより、図1において、MOSFET111dがオンからオフし、IGBT110dのオフ状態の保持が解除されオフ保持解除状態となる。
【0034】
ところで、図1において、制御回路15の回路遅延によって、制御回路15から出力されるIGBT110dに対する駆動指令信号のみが遅延すると、図3に示すように、図2において、IGBT110aに対する駆動指令信号がオフからオンに、IGBT110dに対する駆動指令信号がオンからオフになる期間に存在したデッドタイムが消滅してしまう。しかし、このような場合でも、前述した動作によって、IGBT110aに対する駆動信号がオフからオンに、IGBT110dに対する駆動信号がオンからオフになる期間にデッドタイムが形成されることとなる。つまり、駆動指令信号におけるデッドタイムが消滅しても、駆動指令信号にはデッドタイムが形成されることとなる。そのため、IGBT110a、110dの同時オン状態を防止することができる。
【0035】
最後に、効果について説明する。本実施形態によれば、駆動回路12は、IGBT110dがオフしてからIGBT110aのオフ保持状態を解除して、IGBT110aをオン可能な状態にする。また、IGBT110aがオフしてからIGBT110dのオフ保持状態を解除して、IGBT110dをオン可能な状態にする。そのため、直列接続されたIGBT110a、110dがともにオン状態となることはない。従って、車両に搭載されたモータ制御装置1において、直列接続されたIGBT110a、110dの同時オン状態を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、駆動回路12は、IGBT110a、110dに対する駆動信号によって、IGBT110a、110dがオフすることを知ることができる。そのため、IGBT110dがオフしてから、確実に、IGBT110aのオフ保持状態を解除することができる。また、IGBT110aがオフしてから、確実に、IGBT110dのオフ保持状態を解除することができる。従って、直列接続されたIGBT110a、110dの同時オン状態を確実に防止することができる。
【0037】
さらに、本実施形態によれば、駆動回路12は、IGBT110a、110dに対する駆動指令信号に基づいてIGBT110a、110dがオンすることをより早く知ることができる。そのため、IGBT110aがオンするときに、確実に、IGBT110aのオフ保持状態を解除することができる。また、IGBT110dがオンするときに、確実に、IGBT110dのオフ保持状態を解除することができる。
【0038】
加えて、本実施形態によれば、駆動回路12は、IGBT110a、110dに対する駆動信号によって、IGBT110a、110dがオフすることを知ることができる。そのため、IGBT110aがオフしてから、確実に、IGBT110aのオフ状態の保持を開始することができる。また、IGBT110dがオフしてから、確実に、IGBT110dのオフ状態の保持を開始することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、直流電力を交流電力に変換するモータ制御装置に適用した例を挙げているが、これに限られるものではない。例えば、直流電力を異なる電圧の直流電力に変換するコンバータ装置に適用してもよい。
【0040】
また、本実施形態では、本発明におけるスイッチとしてIGBTを用いた例を挙げているが、これに限られるものではない。例えば、MOSFETやバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1・・・モータ制御装置(電力変換装置)、10・・・平滑コンデンサ、11・・・電力変換回路、110a〜110c・・・IGBT(第1スイッチ)、110d〜110f・・・IGBT(第2スイッチ)、111a〜111c・・・MOSFET(第1オフ保持回路)、111d〜111f・・・MOSFET(第2オフ保持回路)、12〜14・・・駆動回路、15・・・制御回路、B1・・・バッテリ、M1・・・3相交流モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチと、
前記第1スイッチに直列接続される第2スイッチと、
前記第1スイッチに接続され、前記第1スイッチのオフ状態を保持する第1オフ保持回路と、
前記第2スイッチに接続され、前記第2スイッチのオフ状態を保持する第2オフ保持回路と、
前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第1オフ保持回路及び前記第2オフ保持回路に接続され、前記第1スイッチをオン、オフするとともに、前記第2スイッチを第1スイッチと相補的にオン、オフし、前記第1スイッチがオフ状態のとき、前記第1スイッチのオフ状態を保持するように前記第1オフ保持回路を駆動するとともに、前記第2スイッチがオフ状態のとき、前記第2スイッチのオフ状態を保持するように前記第2オフ保持回路を駆動する駆動回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記駆動回路は、前記第2スイッチがオフしてから、前記第1オフ保持回路による前記第1スイッチのオフ状態の保持を解除するとともに、前記第1スイッチがオフしてから、前記第2オフ保持回路による前記第2スイッチのオフ状態の保持を解除することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記第1スイッチをオン、オフするための第1スイッチ駆動信号を出力するとともに、前記第2スイッチを前記第1スイッチと相補的にオン、オフするための第2スイッチ駆動信号を出力し、前記第2スイッチ駆動信号に基づいて前記第1オフ保持回路による前記第1スイッチのオフ状態の保持を解除するとともに、前記第1スイッチ駆動信号に基づいて前記第2オフ保持回路による前記第2スイッチのオフ状態の保持を解除することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、外部から入力される前記第1スイッチを駆動するための第1スイッチ駆動指令信号に基づいて前記第1スイッチ駆動信号に出力するとともに、外部から入力される前記第2スイッチを前記第1スイッチと相補的にオン、オフするための第2スイッチ駆動指令信号に基づいて前記第2スイッチ駆動信号を出力し、前記第1スイッチ駆動指令信号と前記第2スイッチ駆動信号に基づいて前記第1オフ保持回路による前記第1スイッチのオフ状態の保持を解除するとともに、前記第2スイッチ駆動指令信号と前記第1スイッチ駆動指令に基づいて前記第2オフ保持回路による前記第2スイッチのオフ状態の保持を解除することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記第1スイッチ駆動信号に基づいて前記第1オン保持回路による前記第1スイッチのオフ状態の保持を開始するとともに、前記第2スイッチ駆動信号に基づいて前記第2オフ保持回路による前記第2スイッチのオフ状態の保持を開始することを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
車両に搭載され、電力を変換することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−252609(P2010−252609A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102307(P2009−102307)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】