説明

電力変換装置

【課題】構造を簡素化することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、並列接続された一対の電力変換部10R,10Lと、電力変換部10R,10Lを制御するための制御基板52と、制御基板52を保持する筐体51と、を備えている。各電力変換部10R,10Lにおけるチョークコイル17R,17Lの出力側のチョークコイルバスバ3R,3Lのそれぞれは、チョークコイル17R,17Lと制御基板52とを電気的に接続しつつ該制御基板52を機械的に支持する。従って、ケーブル等によって制御基板を電力変換部に個別に物理的に結合する必要性を低減できると共に、筐体51に設けられるボス54を削減して筐体51形状の簡略化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このような電力変換装置では、放熱器のボスにネジを挿入してネジ止めすることで、パワーモジュールが放熱器に固定支持されると共にプリント配線板が放熱器に固定支持される。そして、ケーブルやハンダ等によってプリント配線板がパワーモジュールに電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−209072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年の電力変換装置にあっては、並列接続された複数の電力変換部と、電力変換部を制御するための制御基板と、を備える場合がある。この場合、上述した従来技術では、前述のように、ケーブル等によって制御基板を電力変換部に個別に物理的に結合して制御基板を電力変換部に電気的に接続するため、複雑な構造となるおそれがある。特に、電力変換部が並列接続されることに相まって、複雑な構造となるという上記おそれは顕著となる。
【0005】
そこで、本発明は、構造を簡素化することができる電力変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力変換装置は、並列接続された一対の電力変換部と、電力変換部を制御するための制御基板と、制御基板を保持するベースプレートと、を備え、電力変換部におけるチョークコイルの出力側のバスバは、チョークコイルと制御基板とを電気的に接続しつつ該制御基板を機械的に支持することを特徴とする。
【0007】
この電力変換装置では、バスバによってチョークコイルと制御基板とを電気的に接続しつつ該制御基板を機械的に支持している。従って、ケーブル等によって制御基板を電力変換部に個別に物理的に結合する必要性を低減できると共に、ベースプレートに設けられる制御基板用の保持部(例えば、制御基板支え用のボス等)を削減でき、ベースプレート形状の簡略化が可能となる。従って、電力変換装置の構造を簡素化することができる。
【0008】
また、バスバは、ベースプレートに絶縁部材を介して固定されていることが好ましい。この場合、バスバによって制御基板を確実に機械的に支持することが可能となる。
【0009】
また、バスバは、チョークコイルの少なくとも一部を構成するコイル部と、断面コの字状を呈し制御回路基板に電気的に接続しつつ該制御回路基板を支持する接続支持部と、を含んで構成されていることが好ましい。この場合、チョークコイルとバスバとが一体的に形成されることになり、構造を簡素化するという上記作用効果が好適に奏される。
【0010】
また、複数の電力変換部は、トランス部、トランス部の1次側に配置されたスイッチング回路部、トランス部の2次側に配置されチョークコイルを含む平滑回路部、及びトランス部の2次側に配置されたノイズフィルタ回路部をそれぞれ備え、制御基板は、平滑回路部で平滑化したトランス部の2次側出力を検出し、検出した2次側出力に基づいてスイッチング回路部を制御する制御部と、平滑回路部で平滑化した2次側出力の一部を利用して、制御部に電力を供給する補助電源部と、を備え、複数の電力変換部のうち一の電力変換部においてのバスバである第1バスバは、制御部が2次側出力を検出するための検出ラインを構成し、複数の電力変換部のうち他の電力変換部においてのバスバである第2バスバは、補助電源部へ2次側出力の一部を供給するための供給ラインを構成することが好ましい。この場合、検出ラインと供給ラインとが別系統にされることから、制御部による2次側出力の検出にノイズの悪影響が及ぶのを抑制することができる。
【0011】
また、ノイズフィルタ回路部は、第1及び第2バスバ間に設けられていることが好ましい。この場合、ノイズフィルタ回路部によって、補助電源部からのノイズが検出ラインを介して制御部へ混入する(回り込む)のを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力変換装置の構造を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1の電力変換装置の一部を分解して示す概略斜視図を示す
【図3】図1の電力変換装置を示すブロック図である。
【図4】図1の電力変換素子のチョークコイルを示す概略斜視図である。
【図5】図4のチョークコイルの要部を背面側から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る電力変換装置を示す概略斜視図、図2は図1の電力変換装置の一部を分解して示す概略斜視図、図3は図1の電力変換装置を示すブロック図である。図1〜3に示すように、本実施形態の電力変換装置1は、例えばハイブリッドカーや電気自動車等に用いられる車載用の降圧型DC−DCコンバータであり、高圧バッテリ等から入力された直流電力の電圧を降圧して出力端子T2から直流電圧を出力し、低圧バッテリ2(図3参照)に充電(給電)する。
【0016】
電力変換装置1は、その外囲を構成する筐体51(ベースプレート)と、電力を伝送し変換する一対の電力変換部10R,10Lと、電力変換部10R,10Lを制御するための制御基板52と、を備えている。筐体51は、例えばアルミニウム等の金属で形成され、その内部にて電力変換部10R,10Lを収容すると共に制御基板52を保持する。
【0017】
図2,3に示すように、電力変換部10R,10Lは、互いに並列接続された同様な回路構成とされ、電流バランスするよう構成されている。なお、ここでは、電力変換部10Rが、マスター電源側とされ、電力変換部10Lが、スレイブ電源側とされている。これら電力変換部10R,10Lは、電圧を変換するトランス(トランス部)11R,11Lをそれぞれ有している。ここでのトランス11R,11Lとしては、その1次側巻線の巻数Npと2次側巻線の巻数Nsとの巻線比Ns/Npが1未満であり、入力電圧を所定電圧に降圧する降圧型の降圧トランスが用いられている。トランス11R,11Lの1次側(入力側)導電路(電力(電圧)変換部の導電経路、電力変換部の電源ライン)には、入力フィルタ12が設けられている。
【0018】
入力フィルタ12は、コンデンサ等を含み、入力端子T1(図2参照)からの入力電圧・入力電流におけるノイズを除去する。そして、入力フィルタ12は、ノイズ除去した入力を各電力変換部10R,10Lの各スイッチング回路(スイッチング回路部)13R,13Lへ分岐して出力する。スイッチング回路13R,13Lは、トランス11R,11Lの1次側にそれぞれ設けられ、FET等のスイッチング素子を複数含んで構成されている。スイッチング回路13R,13Lは、スイッチング素子のON/OFFを制御基板52のドライブ信号に応じて制御し、入力フィルタ12から出力された直流の出力電圧を交流の電圧へと変換する。スイッチング回路13R,13Lとしては、例えば、フルブリッジ型、ハーフブリッジ型、プッシュプル型又はフォワード型等のものが挙げられる。
【0019】
また、電力変換部10R,10Lのそれぞれにおいてトランス11R,11Lの2次側(出力側)導電路には、整流回路14R,14L、平滑回路(平滑回路部)15R,15L、ノイズフィルタ回路(ノイズフィルタ回路部)16R,16Lが、入力側から出力側に向けてこの順にそれぞれ設けられている。
【0020】
整流回路14R,14Lは、ダイオード等の整流素子をそれぞれ含み、トランス11R,11Lの2次側交流出力電圧(以下、単に「2次側出力」という)をそれぞれ整流する。整流回路14R,14Lとしては、半波整流型、センタタップ型やブリッジ型等の全波整流型等のものが挙げられる。平滑回路15Rは、チョークコイル17R及びコンデンサ18Rを含み、平滑回路15Lは、チョークコイル17L及びコンデンサ18Lを含んでいる。これら平滑回路15R,15Lは、各整流回路14R,14Lで整流された2次側出力を平滑化し、交流の2次側出力を直流電圧へと変換する。
【0021】
ノイズフィルタ回路16Rは、インダクタ19R及びコンデンサ20で構成され、ノイズフィルタ回路16Lは、インダクタ19L及びコンデンサ20で構成されている。つまり、これらノイズフィルタ回路16R,16Lでは、コンデンサ20が共通に構成されている。ノイズフィルタ回路16R,16Lは、各平滑回路15R,15Lで平滑化された2次側出力のノイズ(特に、スイッチングノイズや整流ノイズ等の高周波ノイズ)を除去する。また、トランス11R,11Lの2次側導電路においてノイズフィルタ回路16R,16Lの出力側には、ノイズフィルタ回路21が設けられている。
【0022】
ノイズフィルタ回路21は、インダクタ22及びコンデンサ23を含み、ノイズフィルタ回路16R,16Lでノイズ除去されて出力バスバ24を介して合流された2次側出力におけるノイズをさらに除去する。なお、上記インダクタ19R,19L,22は、高周波ノイズ対策用コイル等が用いられており、例えばバスバを、UI型のコア(磁心)で挟んで構成される。また、出力バスバ24は、電力変換部10R,10Lが互いに等インピーダンスとなるよう配線及び配置されている。
【0023】
制御基板52は、電力変換部10R,10Lを制御する制御ユニット(制御部)30と、制御ユニット30に電力を供給する補助電源(補助電源部)35と、を有している。制御ユニット30は、電圧検出部31とコントローラ32とを含んで構成されている(図3参照)。電圧検出部31は、2次側出力の電圧値を検出(センス)する。コントローラ32は、電圧検出部31で検出した電圧値に基づいてスイッチング回路13R,13Lへドライブ信号を出力し、スイッチング回路13R,13Lを制御する。この制御ユニット30は、例えば、低圧バッテリ2に充電される電圧が一定となるようにスイッチング回路13R,13Lを制御する。制御ユニット30によるスイッチング回路13R,13Lの制御としては、例えばPWM制御や位相シフト制御等が挙げられる、
【0024】
補助電源35は、2次側出力の一部を利用して制御ユニット30に電力を供給する制御ユニット30用の電源である。ここでの補助電源35は、スイッチング回路を有している、つまり、スイッチング電源で構成されている。
【0025】
このような制御基板52には、該制御基板52を筐体51内に固定するためのネジN1が挿通される貫通孔53が、その外縁部に複数形成されている。制御基板52の裏面52aにおいて貫通孔53のうち一の貫通孔53xの周囲には、金属パターンから成り電圧検出部31に接続された導通部が形成されていると共に、他の貫通孔53yの周囲には、金属パターンから成り補助電源35に接続された導通部が形成されている。
【0026】
ここで、第1電力変換部10Rにおける平滑回路15Rのチョークコイル17Rの出力側には、チョークコイルバスバ(第1バスバ)3Rが設けられている。チョークコイルバスバ3Rは、チョークコイル17Rをノイズフィルタ回路16Rに接続すると共に、チョークコイル17Rと制御基板52とを電気的に接続しつつ該制御基板52を機械的に支持する。
【0027】
また、第2電力変換部10Lにおける平滑回路15Lのチョークコイル17Lの出力側には、チョークコイルバスバ(第2バスバ)3Lが設けられている。チョークコイルバスバ3Lは、チョークコイル17Lをノイズフィルタ回路16Lに接続すると共に、チョークコイル17Lと制御基板52とを電気的に接続しつつ該制御基板52を機械的に支持する。
【0028】
図4は、図1の電力変換素子のチョークコイルを示す概略斜視図であり、図5は、図4のチョークコイルの要部を背面側から見た概略斜視図である。なお、電力変換部10R,10Lの各チョークコイル17R、17L及び各チョークコイルバスバ3R,3Lは、互いに同様な構成となっているため、ここでは、チョークコイル17R及びチョークコイルバスバ3Rのみを説明する。
【0029】
図4,5に示すように、チョークコイル17Rは、円筒状のボビン61と、ボビン61の周囲に所定ターン(ここでは、3ターン)巻回するよう構成されたコイル62と、コイル62を上下に挟むように設けられたコア63(図4参照)と、を含んで構成されている。コイル62の下端部には、入力側のバスバであるチョークコイルバスバ64が設けられている。また、コイル62の上端部には、出力側のバスバである上記チョークコイルバスバ3Rが設けられている。
【0030】
チョークコイルバスバ3Rは、銅等の金属で形成され、屈曲又は屈折された板状を呈している。このチョークコイルバスバ3Rは、コイル62の上端部を構成するコイル部5と、制御基板52に電気的に接続しつつ該制御基板52を機械的に支持する接続支持部6と、を含んでいる。
【0031】
コイル部5は、ボビン61の外周面に沿うように延在している。接続支持部6は、断面コの字状を呈している。具体的には、接続支持部6は、コイル部5に立設された支柱部6xの先端側に対し、制御基板52の裏面52a(図2参照)に当接する当接部6yが直角に曲がるように延びて構成されている。この当接部6yには、ネジN1(図2参照)が挿通される貫通孔6zが形成されている。
【0032】
また、チョークコイルバスバ3R,64には、該チョークコイルバスバ3R,64を筐体51に固定するための固定部7がそれぞれ設けられている。具体的には、固定部7にあっては、チョークコイルバスバ3Rにおいてコイル部5と接続支持部6との間に設けられていると共に、チョークコイルバスバ64の基端側(コイル62側)に設けられている。この固定部7には、筐体51との固定用のネジN2が挿通される貫通孔7xが形成されている。これにより、絶縁性の部材からなる絶縁スペーサ(絶縁部材)8a及び絶縁板(絶縁部材)8bを介して(ここでは、各チョークコイルバスバ3R,64を、絶縁スペーサ8aと絶縁板8bとで挟むようにして)ネジN2が固定部7の貫通孔7xに挿通されることで、チョークコイルバスバ3R、64が筐体51のボス56に絶縁性を有して固定される。
【0033】
以上に説明した電力変換装置1では、図2に示すように、制御基板52の保持部として筐体51に立設されたボス54上、及びチョークコイルバスバ3R,3Lの接続支持部6上に制御基板52が載置される。このとき、制御基板52の貫通孔53とボス54とが連通し、且つ、貫通孔53x,53yと接続支持部6の当接部6yの貫通孔6z(図4参照)とが連通する状態とされると共に、当接部6yが制御基板52の裏面52aの導通部に当接され、これらが互いに導通する状態とされる。そして、この状態で、貫通孔53にネジN1が挿入されて螺着されることで、制御基板52が筐体51のボス54に固定される。
【0034】
加えて、貫通孔53xにネジN1が挿入されて螺着されることで、制御基板52がチョークコイルバスバ3Rで機械的に支持され固定されながら、制御基板52の電圧検出部31とチョークコイル17Rの出口側とが電気的に接続される。その結果、電圧検出部31によって2次側出力を検出する検出ラインが、電力変換部10Rにおける平滑回路15Rとノイズフィルタ回路16Rとの間の導電路にチョークコイルバスバ3Rとして設けられることとなる(図3参照)。
【0035】
併せて、貫通孔53yにネジN1が挿入されて螺着されることで、制御基板52がチョークコイルバスバ3Lで機械的に支持され固定されながら、制御基板52の補助電源35とチョークコイル17Lの出口側とが電気的に接続される。その結果、補助電源35へ2次側出力の一部を供給するための供給ラインが、電力変換部10Lにおける平滑回路15Lとノイズフィルタ回路16Lとの間の導電路にチョークコイルバスバ3Lとして設けられることとなる(図3参照)。
【0036】
以上、本実施形態では、チョークコイルバスバ3R,3Lによってチョークコイル17R,17Lと制御基板52とを電気的に接続しつつ該制御基板52を機械的に支持している。すなわち、チョークコイルバスバ3R,3Lを基板支持兼導通可能な構造である分岐バスバ構造とし、これらチョークコイルバスバ3R,3Lでもって電気的及び機械的に制御基板52をチョークコイル17R,17Lに接続している。よって、ケーブル等によって制御基板52を電力変換部10R,10Lに個別に物理的に結合する必要性を低減できると共に、筐体51に設けられるボス54を削減して該筐体51形状の簡略化が可能となる。従って、電力変換装置1の構造を簡素化することができ、部品コストの削減が可能となる。
【0037】
さらに、このように筐体51のボス54を削減できるため、次の効果を奏する。すなわち、筐体51の小型化及び低コスト化が実現可能となる。これと共に、筐体51がダイカストで形成される場合、その金型の突起部が削減され、成型性が向上し歩留りの向上が図れ、さらに、金型寿命の向上が可能となる。また、ボス54の根本に発生するヒートクラックを抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、上述したように、チョークコイルバスバ3R,3Lが筐体51に絶縁スペーサ8a及び絶縁板8bを介して固定されているため、チョークコイルバスバ3R,3Lのたわみを防いで一層リジットな状態で制御基板52を確実に支持することができる。併せて、チョークコイルバスバ3R、3Lと筐体51とが絶縁スペーサ8a及び絶縁板8bを介して熱的に接続されているため、チョークコイル17R,17Lの熱を筐体51に積極的に伝えて放熱することができ、かかる熱が制御基板52側に伝わるのを抑制することが可能となる。特に、チョークコイルバスバ3R,3Lでは、上述したように、コイル部5と接続支持部6との間に固定部7が設けられていることから、コイル部5で発生する熱が制御基板52に伝わるのを抑制することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、上述したように、チョークコイルバスバ3R,3Lがチョークコイル17R,17Lの一部を構成しており、これらが一体的に形成されている。よって、電力変換装置1の構造を一層簡素化することができる。
【0040】
また、本実施形態では、上述したように、チョークコイルバスバ3Rによって検出ラインが構成され、チョークコイルバスバ3Lによって供給ラインが構成されるため、これら検出ラインと供給ラインとを別系統にすることができる。加えて、チョークコイルバスバ3R,3L間にノイズフィルタ回路16R,16Lが設けられることになるため、補助電源35からノイズがチョークコイルバスバ3R(検出ライン)を介して電圧検出部31へ混入する(回り込む)のをノイズフィルタ回路16R,16Lによって抑制することができる。その結果、電圧検出部31でノイズの無い高品質な信号を検出でき、2次側出力を精度よく検出することができる。
【0041】
このとき、本実施形態のように構成されたチョークコイルバスバ3Rによれば、2次側出力の電圧をチョークコイル17Rから直接検出することが可能となるため、最小のインピーダンス(最短経路)で電圧検出することができる。よって、電圧検出にノイズの悪影響が及び難く、一層高精度な電圧検出が可能となり、電力変換装置1としての精度を向上することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上述したように、導電路においてチョークコイルバスバ3R,3L間に2つのノイズフィルタ回路16R,16Lが設けられることになるため、補助電源35からのノイズが電圧検出部31へ混入するのを抑制するという上記効果は顕著である。
【0043】
また、本実施形態では、上述したように、第1及び第2電力変換部10R,10Lのそれぞれで互いに同じチョークコイル17R,17Lが用いられていると共に、互いに同じチョークコイルバスバ3R,3Lが用いられている。よって、部品コストの削減及び金型数削減が可能となると共に、第1及び第2電力変換部10R,10Lの出力側インピーダンスを好適に等しくすることができ、出力の均等化を図ることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、上述したように、制御基板52の縁部に貫通孔53x,53yが形成されており、チョークコイルバスバ3R,3Lによる制御基板52を支持位置が該制御基板52の端部(縁部)付近とされている。よって、制御基板52の振動共振周波数を高め、振動によって制御基板52に搭載された搭載部品の破損を防止することができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る電力変換装置は、実施形態に係る上記電力変換装置1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0046】
例えば、上記実施形態では、チョークコイルバスバ3R,3Lが絶縁スペーサ8a及び絶縁板8bを介して筐体51に固定されているが、チョークコイルバスバ3R,3L自体の剛性が高い場合等には、チョークコイルバスバ3R,3Lが筐体51に固定されていなくともよい。また、絶縁スペーサ8a及び絶縁板8bに代えて、絶縁シート等を用いてもよく、絶縁性を保ちつつ熱的に接続できる構造であればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、チョークコイルバスバ3R,3Lの一部を断面コの字状を呈する接続支持部に構成したが、この構成に限定されるものではなく、制御基板52に対し電気的に接続しつつ機械的に支持できれば、種々の構成を採用することが可能である。
【0048】
なお、電力変換装置1としては、上記降圧型DC−DCコンバータに限定されるものではなく、昇圧型DC−DCコンバータでもよく、また、多出力型のものでもよい。さらに、AC−DCコンバータ等であってもよい。また、ノイズフィルタ回路は、インダクタ(コイル)のみのL型の回路構成でもよいし、LCL型の回路構成でもよいし、CLC型の回路構成でもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、トランス11R,11Lの出力電圧を2次側出力として検出しているが、出力電流又は出力電力等を2次側出力として検出してもよい。また、上記実施形態では、コンデンサ20がノイズフィルタ回路16R,16Lで共通になるよう設けられているが、これらノイズフィルタ回路16R,16Lのそれぞれにおいては、コンデンサが別々に設けられていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、並列接続された電力変換部10R,10Lの双方にて2次側出力をそれぞれ検出するよう構成してもよく、この場合、検出した各検出値のそれぞれによってスイッチング回路13R,13Lをそれぞれ制御してもよい。
【0051】
なお、図3では、導電路においてノイズフィルタ回路15R,15Lの後段側(出力側)にチョークコイルバスバ3R,3Lがそれぞれ接続された例が示されているが、チョークコイルバスバ3Rについてはコンデンサ18Rとインダクタ19Rとの間に、チョークコイルバスバ3Lについてはコンデンサ18Lとインダクタ19Lとの間に、それぞれ接続されていれば勿論よい。
【0052】
また、トランス11R,11Lの巻線比は、上述したものに限定されず、種々の巻き線比としてもよい。また、スイッチング回路13R,13L、整流回路14R,14L及び平滑回路15R,15Lについても、上述したものに限定されず、種々のものを用いることができ、例えば平滑回路15R(15L)としては、コンデンサ18R(18L)のみの平滑回路を用いてもよい。また、本発明のベースプレートは、上記筐体51のように外周壁を有するものであってもよいし、外周壁を有しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…電力変換装置、3R…チョークコイルバスバ(バスバ、第1バスバ)、3L…チョークコイルバスバ(バスバ、第2バスバ)、5…コイル部、6…接続支持部、8a…絶縁スペーサ(絶縁部材)、8b…絶縁板(絶縁部材)、10R…電力変換部(一の電力変換部)、10L…電力変換部(他の電力変換部)、11R,11L…トランス(トランス部)、13R,13L…スイッチング回路(スイッチング回路部)、15R,15L…平滑回路(平滑回路部)、16R,16L…ノイズフィルタ回路(ノイズフィルタ回路部)、17R,17L…チョークコイル、30…制御ユニット(制御部)、35…補助電源(補助電源部)、51…筐体(ベースプレート)、52…制御基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数の電力変換部と、
前記電力変換部を制御するための制御基板と、
前記制御基板を保持するベースプレートと、を備え、
前記電力変換部におけるチョークコイルの出力側のバスバは、前記チョークコイルと前記制御基板とを電気的に接続しつつ該制御基板を機械的に支持することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記バスバは、前記ベースプレートに絶縁部材を介して固定されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記バスバは、前記チョークコイルの少なくとも一部を構成するコイル部と、断面コの字状を呈する接続支持部と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記複数の電力変換部は、トランス部、前記トランス部の1次側に配置されたスイッチング回路部、前記トランス部の2次側に配置され前記チョークコイルを含む平滑回路部、及び前記トランス部の2次側に配置されたノイズフィルタ回路部をそれぞれ備え、
前記制御基板は、前記平滑回路部で平滑化した前記トランス部の2次側出力を検出し、検出した前記2次側出力に基づいて前記スイッチング回路部を制御する制御部と、前記平滑回路部で平滑化した前記2次側出力の一部を利用して、前記制御部に電力を供給する補助電源部と、を備え、
前記複数の電力変換部のうち一の電力変換部においての前記バスバである第1バスバは、前記制御部が前記2次側出力を検出するための検出ラインを構成し、
前記複数の電力変換部のうち他の電力変換部においての前記バスバである第2バスバは、前記補助電源部へ前記2次側出力の一部を供給するための供給ラインを構成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記ノイズフィルタ回路部は、導電路において前記第1及び第2バスバ間に設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の電力変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−139598(P2011−139598A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298007(P2009−298007)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】