説明

電力変換装置

【課題】当接プレートの滑り、位置ずれ等を抑制し、耐振性を向上させることができると共に、ケース内への当接プレートの配設を精度良く行うことができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置1は、半導体モジュール2と冷却管31とを積層してなる半導体積層ユニット4をケース5内に収容してなる。半導体積層ユニット4には、半導体積層ユニット4を加圧する加圧部材6が配設されている。加圧部材6は、半導体積層ユニット4に当接する当接プレート61と、当接プレート61を半導体積層ユニット4に向かって押圧するバネ部材62とからなる。当接プレート61には、ケース5に設けた被係合部50に係合する係合部60が設けられており、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合により、当接プレート61の積層方向Xへの移動を規制することなく、積層方向Xに直交する方向の位置決めがされるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体モジュールとその複数の半導体モジュールを冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、DC−DCコンバータ回路やインバータ回路等の電力変換回路は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いられることがある。
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等では、交流モータから大きな駆動トルクを確保するため大きな駆動電流が必要となってきている。そのため、交流モータ向けの駆動電流を生成する電力変換回路においては、その電力変換回路を構成するIGBT等の電力用半導体素子を含む半導体モジュールからの発熱が大きくなる傾向にある。
【0003】
そこで、図16に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュール92を均一に冷却することができるように、複数の半導体モジュール92とその複数の半導体モジュール92を冷却する複数の冷却管931とを積層してなる半導体積層ユニット94をケース95内に収容してなる電力変換装置91が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このような電力変換装置91において、半導体積層ユニット94における積層方向Xの一方の端部には、半導体積層ユニット94を積層方向Xに加圧する加圧部材96が配設されている。加圧部材96は、半導体積層ユニット94の一方の端部に当接する当接プレート961と、その当接プレート961を半導体積層ユニット94に向かって押圧するバネ部材962とからなる。そして、半導体積層ユニット94は、バネ部材962の押圧力が当接プレート961を介して作用することにより、積層方向Xに保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−27805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図16の電力変換装置91において、半導体積層ユニット94における積層方向Xの一方の端部に当接する当接プレート961は、バネ部材962の押圧力によって積層方向Xに保持されているが、積層方向Xに直交する方向に対して移動を規制するような構造になっていない。そのため、半導体積層ユニット94を振動の大きい機器等に搭載する場合には、半導体積層ユニット94とバネ部材962との間において、当接プレート961が積層方向Xに直交する方向に滑り、位置ずれ等を起こすおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、当接プレートの滑り、位置ずれ等を抑制し、耐振性を向上させることができると共に、ケース内への当接プレートの配設を精度良く行うことができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットを、ケース内に収容してなる電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の一方の端部には、該半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材が配設されており、
該加圧部材は、上記半導体積層ユニットの上記一方の端部に当接する当接プレートと、該当接プレートを上記半導体積層ユニットに向かって押圧するバネ部材とからなり、
上記当接プレートには、上記ケースに設けた被係合部に係合する係合部が設けられており、
上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合により、上記当接プレートにおける上記積層方向への移動を規制することなく、該積層方向に直交する方向の位置決めがされるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電力変換装置において、上記当接プレートには、上記ケースに設けた被係合部に係合する係合部が設けられている。そして、上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合により、上記当接プレートにおける積層方向に直交する方向(以下、適宜、「直交方向」という)の位置決めがされるよう構成されている。そのため、上記当接プレートは、上記直交方向への移動が規制される。これにより、振動等による上記当接プレートの上記直交方向への滑り、位置ずれ等を抑制することができ、耐振性を向上させることができる。
また、上記当接プレートの上記係合部を上記ケースの上記被係合部に係合させるだけで、上記当接プレートの上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。これにより、上記ケース内への上記当接プレートの配設を精度良く行うことができる。
【0010】
また、上記電力変換装置は、上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合により、上記当接プレートにおける上記直交方向への移動は規制されるが、上記積層方向への移動は規制されないよう構成されている。そのため、上記バネ部材が上記当接プレートを介して上記半導体積層ユニットを上記積層方向に押圧する力は、上記の係合によって妨げられることはない。これにより、上記加圧部材によって上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧(押圧)して保持するという機能は、確実に発揮することができる。
【0011】
このように、本発明によれば、当接プレートの滑り、位置ずれ等を抑制し、耐振性を向上させることができると共に、ケース内への当接プレートの配設を精度良く行うことができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における、電力変換装置の構造を示す平面説明図。
【図2】実施例1における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図3】実施例1における、電力変換装置の構造の他の例を示す拡大説明図。
【図4】実施例1における、電力変換装置の構造の他の例を示す拡大説明図。
【図5】実施例2における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図6】実施例2における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図7】実施例3における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図8】実施例4における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図9】図8におけるA−A線矢視断面図。
【図10】実施例5における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図11】実施例6における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図12】図11におけるB−B線矢視断面図。
【図13】実施例7における、電力変換装置の構造を示す拡大説明図。
【図14】図13におけるC−C線矢視断面図。
【図15】実施例8における、電力変換装置の構造を示す平面説明図。
【図16】従来における、電力変換装置の構造を示す平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、上記電力変換装置としては、例えば、DC−DCコンバータやインバータ等がある。また、上記電力変換装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いることができる。
上記半導体積層ユニットを構成する上記半導体モジュールと上記冷却管とは、直接密着していてもよいし、熱伝導性を有する絶縁材等を介して密着していてもよい。
【0014】
また、上記当接プレートの上記係合部及び上記ケースの上記被係合部は、互いに係合する凹状又は凸状に形成されている構成とすることができる(請求項2)。
この場合には、上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合がより一層容易となる。また、両者の係合により、上記当接プレートの上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0015】
また、上記当接プレートには、該当接プレートを上記積層方向に貫通する貫通孔からなる上記係合部が設けられており、上記ケースには、該ケースの内壁面から上記当接プレートに向かって上記積層方向に突出する突出部からなる上記被係合部が設けられており、上記係合部内に上記被係合部を挿通させて両者が係合している構成とすることができる(請求項3)。
この場合には、簡易な構成で上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部とを係合させることができる。また、両者の係合により、上記当接プレートの上記積層方向への移動を規制することなく、上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0016】
また、上記当接プレートには、該当接プレートにおける上記バネ部材に押圧される面から上記ケースに向かって上記積層方向に突出する突出部からなる上記係合部が設けられており、上記ケースには、該ケースを上記積層方向に貫通する貫通孔からなる上記被係合部が設けられており、上記係合部を上記被係合部内に挿通させて両者が係合している構成とすることができる(請求項4)。
この場合には、簡易な構成で上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部とを係合させることができる。また、両者の係合により、上記当接プレートの上記積層方向への移動を規制することなく、上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0017】
また、上記当接プレートには、該当接プレートの一部を上記積層方向に直交する方向に延ばして形成された上記係合部が設けられており、上記ケースには、上記係合部に対応する位置に凹状に形成された上記被係合部が設けられている構成とすることができる(請求項5)。
この場合には、上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合により、上記当接プレートの上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。また、上記当接プレートを上記積層方向に直交する方向に延ばした部分において、上記ケース内の他の部材(例えば、冷却管への冷却媒体の導入及び排出を行う部材等)を保持することができる。これにより、組み付け性、耐振性の向上を図ることができる。
【0018】
また、上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合状態においては、上記係合部及び上記被係合部の少なくとも一方により、上記バネ部材における上記積層方向に直交する方向の位置決めがされることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記当接プレートの上記係合部及び上記ケースの上記被係合部により、上記当接プレートだけでなく、上記バネ部材についても上記直交方向の位置決めをすることができる。
【0019】
また、上記係合部及び上記被係合部は、上記当接プレート及び上記ケースにそれぞれ1又は複数設けることができる。
また、上記係合部及び上記被係合部は、両者が係合することによって上記当接プレートにおける上記積層方向への移動を規制することなく、該積層方向に直交する方向の位置決めがされるよう構成されていれば、様々な係合構造を採用することができる。
なお、上記積層方向に直交する方向(直交方向)とは、上記積層方向に直交する平面に平行な方向のことである。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置について、図を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1、図2に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュール2と、その複数の半導体モジュール2を両主面から冷却する複数の冷却管31とを積層してなる半導体積層ユニット4を、ケース5内に収容してなる。
【0021】
半導体積層ユニット4における積層方向Xの一方の端部(前端部)401には、半導体積層ユニット4を積層方向Xに加圧する加圧部材6が配設されている。
加圧部材6は、半導体積層ユニット4の一方の端部(前端部)401に当接する当接プレート61と、その当接プレート61を半導体積層ユニット4に向かって押圧するバネ部材62とからなる。
【0022】
当接プレート61には、ケース5に設けた被係合部50に係合する係合部60が設けられており、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合により、当接プレート61における積層方向Xへの移動を規制することなく、積層方向Xに直交する方向(直交方向)の位置決めがされるよう構成されている。
以下、これを詳説する。
【0023】
図1に示すごとく、半導体積層ユニット4は、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管31とを交互に積層してなる。半導体モジュール2は、IGBT等のスイッチング素子やFWD等のダイオードを内蔵してなる(図示略)。
複数の冷却管31は、その長手方向(横方向Y)の両端部311、312において、隣り合う冷却管31同士が変形可能な連結管32によって連結されて、一つの冷却器3を構成している。冷却器3は、アルミニウム又はその合金からなる。
【0024】
また、冷却器3は、ケース5の外部から冷却媒体を導入するための冷媒導入管331と、ケース5の外部に冷却媒体を排出するための冷媒排出管332とを有する。冷媒導入管331及び冷媒排出管332は、冷却器3の積層方向Xの一方の端部(前端部)301に接続されている。また、冷媒導入管331及び冷媒排出管332は、その一端をケース5の外部に露出させている。
【0025】
冷媒導入管331から導入された冷却媒体は、冷媒導入管331側の連結管32を適宜通り、各冷却管31に分配されると共にその長手方向(横方向Y)に流通する。そして、冷却媒体は、各冷却管31を流れる間に、半導体モジュール2との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、冷媒排出管332側の連結管32を適宜通り、冷媒排出管332から排出される。
【0026】
なお、冷却器3内に流通させる冷却媒体としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷媒を用いることができる。
【0027】
同図に示すごとく、ケース5は、略長方形状の底板部51、その底板部51の四辺からそれぞれ略垂直に立設された前板部52、後板部53、一対の側板部54からなる。底板部51に対向するケース5の開口部は、電力変換装置1の完成時においては蓋(天板部)で覆われるが、図ではこの蓋を省略している。また、ケース5は、アルミニウム又はその合金からなる。
【0028】
同図に示すごとく、半導体積層ユニット4の後端部402は、ケース5の後板部53に当接している。
また、半導体積層ユニット4の前端部401には、半導体積層ユニット4を積層方向Xに加圧する加圧部材6が配設されている。加圧部材6は、半導体積層ユニット4の前端部401に当接する当接面611を有する当接プレート61と、その当接プレート61の当接面611とは反対側の押圧面612を半導体積層ユニット4に向かって押圧するバネ部材62とからなる。
【0029】
当接プレート61は、半導体積層ユニット4の前端部401に面接触した状態で配設されている。また、当接プレート61は、炭素鋼からなる平板状の金属板により構成されている。
バネ部材62は、当接プレート61とケース5の前板部52との間に配設されている。バネ部材62は、螺旋状に形成されたコイルバネにより構成されている。
【0030】
図1、図2に示すごとく、当接プレート61には、円筒状の係合部60が設けられている。具体的には、係合部60は、当接プレート61の押圧面612において、バネ部材62の横方向Yの両脇にそれぞれ設けられている。係合部60は、当接プレート61の押圧面612から突出する突出部の内側にその先端側に開口した凹部を設けることにより、凹状に形成されている。本例では、当接プレート61の押圧面612に円筒状のボス部を固定することにより、凹状の係合部60が形成されている。
【0031】
また、当接プレート61に対向するケース5の前板部52には、当接プレート6の係合部60に対応する位置に、円柱状の被係合部50が設けられている。被係合部50は、ケース5の前板部52から突出するように設けられており、凸状に形成されている。本例では、ケース5の前板部52にピン、ボルト等を溶接することにより、凸状の被係合部50が形成されている。
【0032】
そして、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50とは、互いに係合している。これにより、当接プレート61における積層方向Xへの移動を規制することなく、積層方向Xに直交する方向(横方向Y、上下方向等を含む直交方向)の位置決めがされる。
【0033】
具体的には、図2に示すごとく、係合部60は、被係合部50を内部に挿入した状態において、係合部60の内側面601と被係合部50の外側面501との係わり合いによって上記直交方向への移動が規制される。これにより、係合部60が設けられた当接プレート61は、上記直交方向への移動が規制され、その直交方向の位置決めがされる。なお、係合部60の内側面601と被係合部50の外側面501との間には、小さな隙間が設けられている。
【0034】
一方、同図に示すごとく、係合部60の底面602と被係合部50の先端面502との間には、積層方向XにギャップGが設けてある。そのため、係合部60は、積層方向Xに移動することができるようになっている。すなわち、係合部60が設けられた当接プレート61は、積層方向Xへの移動が規制されないようになっている。
【0035】
これにより、図1、図2に示すごとく、バネ部材62によって当接プレート61が積層方向Xに押圧され、この当接プレート61によって半導体積層ユニット4が積層方向Xに押圧される。そして、半導体積層ユニット4は、ケース5の後板部53と当接プレート61との間で、バネ部材62の付勢力によって積層方向Xに押圧保持される。
【0036】
次に、本例の電力変換装置1における作用効果について説明する。
本例の電力変換装置1において、当接プレート61には、ケース5に設けた被係合部50に係合する係合部60が設けられている。そして、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合により、当接プレート61における積層方向Xに直交する方向(直交方向)の位置決めがされるよう構成されている。そのため、当接プレート61は、上記直交方向への移動が規制される。これにより、振動等による当接プレート61の上記直交方向への滑り、位置ずれ等を抑制することができ、耐振性を向上させることができる。
また、当接プレート61の係合部60をケース5の被係合部50に係合させるだけで、当接プレート61の上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。これにより、ケース5内への当接プレート61の配設を精度良く行うことができる。
【0037】
また、電力変換装置1は、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合により、当接プレート61における上記直交方向への移動は規制されるが、積層方向Xへの移動は規制されないよう構成されている。そのため、バネ部材62が当接プレート61を介して半導体積層ユニット4を積層方向Xに押圧する力は、上記の係合によって妨げられることはない。これにより、加圧部材6によって半導体積層ユニット4を積層方向Xに加圧(押圧)して保持するという機能は、確実に発揮することができる。
【0038】
また、本例では、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50は、それぞれ互いに係合する凹状及び凸状に形成されている。そのため、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合がより一層容易となる。また、両者の係合により、当接プレート61の上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0039】
このように、本例によれば、当接プレート61の滑り、位置ずれ等を抑制し、耐振性を向上させることができると共に、ケース5内への当接プレート61の配設を精度良く行うことができる電力変換装置1を提供することができる。
【0040】
なお、本例では、図1、図2に示すごとく、当接プレート61とケース5の前板部52とに、互いに係合する凹状に形成された係合部60と凸状に形成された被係合部50とをそれぞれ設けたが、これとは逆に、図3に示すごとく、当接プレート61とケース5の前板部52とに、互いに係合する凸状に形成された係合部60と凹状に形成された被係合部50とをそれぞれ設ける構成とすることもできる。
【0041】
また、本例では、図1、図2に示すごとく、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50をバネ部材62であるコイルバネよりも外側に設けたが、例えば、図4に示すごとく、バネ部材62の内側に設ける構成とすることもできる。この場合には、係合部60及び被係合部50によってバネ部材62の位置ずれ等を防止することができる。
【0042】
(実施例2)
本例は、図5、図6に示すごとく、加圧部材6のバネ部材62を変更した例である。
図5に示す例では、加圧部材6のバネ部材62は、板バネにより構成されている。バネ部材62の両端部621は、ケース5内に配設された一対の支承ピン63に係止させてある。また、当接プレート61の係合部60は、バネ部材62の中央に設けられた貫通孔622に貫通させてある。
図6に示す例では、加圧部材6のバネ部材62は、積層方向Xに伸縮可能な皿バネにより構成されている。
その他は、実施例1と同様の構成であり、同様の作用効果を有する。
【0043】
(実施例3)
本例は、図7に示すごとく、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50の配設位置を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合状態においては、係合部60及び被係合部50がバネ部材62を保持している。すなわち、バネ部材62は、バネ部材62の上記直交方向の外周近傍に設けられた係合部60及び被係合部50によって外側から保持され、上記直交方向の位置決めがされている。
【0044】
なお、バネ部材62は、係合部60及び被係合部50をバネ部材62の外周近傍に複数設けて保持してもよいし、係合部60及び被係合部50自体をバネ部材62の外周を覆うように円筒状に設けて保持してもよい。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0045】
本例の場合には、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50により、当接プレート61だけでなく、バネ部材62についても上記直交方向の位置決めをすることができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0046】
(実施例4)
本例は、図8に示すごとく、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、当接プレート61には、当接プレート61を積層方向Xに貫通する貫通孔からなる係合部60が設けられている。また、ケース5の前板部52には、前板部52の内壁面521から当接プレート61に向かって積層方向Xに突出する突出部からなる被係合部50が設けられている。
そして、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50は、係合部(貫通孔)60内に被係合部(突出部)50を挿通させて係合している。
【0047】
なお、図9(a)〜(c)に示すごとく、係合部60及び被係合部50は、係合部(貫通孔)60内に被係合部(突出部)50を挿通させるため、被係合部50の先端が冷却管31に干渉しないように、冷却管31よりも上側又は下側に設ける必要がある。
例えば、図9(a)のように、冷却管31よりも上側に2つ、下側に2つ、合計4つ設けることができる。また、図9(b)のように、冷却管31よりも上側に1つ、下側に2つ、合計3つ設けることができる。また、図9(c)のように、冷却管31よりも上側に1つ、下側に1つ、合計2つ設けることができる。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0048】
本例の場合には、簡易な構成で当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50とを係合させることができる。また、両者の係合により、当接プレート61の積層方向Xへの移動を規制することなく、上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0049】
(実施例5)
本例は、図10に示すごとく、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、当接プレート61には、当接プレート61におけるバネ部材62に押圧される押圧面612からケース5の前板部52に向かって積層方向Xに突出する突出部からなる係合部60が設けられている。また、ケース5の前板部52には、前板部52を積層方向Xに貫通する貫通孔からなる被係合部50が設けられている。
そして、当接プレート61の係合部60及びケース5の被係合部50は、係合部(突出部)60を被係合部(貫通孔)50内に挿通させて係合している。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0050】
本例の場合には、簡易な構成で当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50とを係合させることができる。また、両者の係合により、当接プレート61の積層方向Xへの移動を規制することなく、上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0051】
(実施例6)
本例は、図11、図12に示すごとく、当接プレート61の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、当接プレート61には、当接プレート61の一部を積層方向Xに直交する方向(直交方向)に延ばして形成された係合部60が設けられている。具体的には、係合部30は、当接プレート61の横方向Yの両端部613、614の一部をそれぞれケース5の一対の側板部54に向けて、冷媒導入管331又は冷媒排出管332の下側を通過するように延ばして形成されている。
【0052】
また、ケース5の一対の側板部54には、各係合部60に対応する位置に凹状に形成された被係合部50が設けられている。
そして、当接プレート61の係合部60がケース5の被係合部50内に挿入されることにより、両者が互いに係合している。なお、係合部60と被係合部50との間には、積層方向XにギャップGが設けてある。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0053】
本例の場合には、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合により、当接プレート61の積層方向Xへの移動を規制することなく、上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(実施例7)
本例は、図13、図14に示すごとく、当接プレート61の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、当接プレート61には、当接プレート61の一部を積層方向Xに直交する方向(直交方向)に延ばして形成された係合部30が設けられている。具体的には、係合部30は、当接プレート61の横方向Yの両端部613、614をそれぞれケース5の一対の側板部54に向けて延ばして形成されている。また、当接プレート61は、冷媒導入管331及び冷媒排出管332をそれぞれ貫通孔615、616に挿通させている。
【0055】
また、ケース5の一対の側板部54には、各係合部30に対応する位置に凹状に形成された被係合部50が設けられている。
そして、当接プレート61の係合部60がケース5の被係合部50内に挿入されることにより、両者が互いに係合している。なお、係合部60と被係合部50との間には、積層方向XにギャップGが設けてある。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0056】
本例の場合には、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50との係合により、当接プレート61の積層方向Xへの移動を規制することなく、上記直交方向の位置決めを容易に行うことができる。また、当接プレート61を上記直交方向に延ばした部分(両端部613、614)において、冷媒導入管331及び冷媒排出管332を保持することができる。これにより、組み付け性、耐振性の向上を図ることができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0057】
(実施例8)
本例は、図15に示すごとく、ケース5内に内部構造体59を配設した例である。
本例では、同図に示すごとく、半導体積層ユニット4の前端部401とケース5の前板部52との間には、内部構造体59が配設されている。内部構造体59には、例えばリアクトル等の電子部品が収容されている。また、半導体積層ユニット4の前端部401は、内部構造体59に当接している。
【0058】
また、半導体積層ユニット4の後端部402には、加圧部材6が配設されている。当接プレート61は、当接面611を半導体積層ユニット4の後端部402に面接触させた状態で配設されている。バネ部材62は、当接プレート61の押圧面612とケース5の後板部53との間に配設されている。
【0059】
また、当接プレート61には、係合部60が設けられており、当接プレート61に対向するケース5の後板部53には、当接プレート6の係合部60に対応する位置に、被係合部50が設けられている。そして、当接プレート61の係合部60とケース5の被係合部50とは、互いに係合している。これにより、当接プレート61における積層方向Xへの移動を規制することなく、積層方向Xに直交する方向(直交方向)の位置決めがされる。
【0060】
また、バネ部材62によって当接プレート61が積層方向Xに押圧され、この当接プレート61によって半導体積層ユニット4が積層方向Xに押圧される。そして、半導体積層ユニット4は、ケース5内の内部構造体59と当接プレート61との間で、バネ部材62の付勢力によって積層方向Xに押圧保持される。
その他は、実施例1と同様の構成であり、同様の作用効果を有する。
【0061】
すなわち、加圧部材6は、上述した実施例1〜7のように半導体積層ユニット4の前端部401に配設されていてもよいし、本例のように半導体積層ユニット4の後端部402に配設されていてもよい。
また、上述した実施例1〜7の構成は、本例のように加圧部材6が半導体積層ユニット4の後端部402に配設されている構成であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
31 冷却管
4 半導体積層ユニット
5 ケース
50 被係合部
6 加圧部材
60 係合部
61 当接プレート
62 バネ部材
X 積層方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットを、ケース内に収容してなる電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の一方の端部には、該半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材が配設されており、
該加圧部材は、上記半導体積層ユニットの上記一方の端部に当接する当接プレートと、該当接プレートを上記半導体積層ユニットに向かって押圧するバネ部材とからなり、
上記当接プレートには、上記ケースに設けた被係合部に係合する係合部が設けられており、
上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合により、上記当接プレートにおける上記積層方向への移動を規制することなく、該積層方向に直交する方向の位置決めがされるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記当接プレートの上記係合部及び上記ケースの上記被係合部は、互いに係合する凹状又は凸状に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記当接プレートには、該当接プレートを上記積層方向に貫通する貫通孔からなる上記係合部が設けられており、上記ケースには、該ケースの内壁面から上記当接プレートに向かって上記積層方向に突出する突出部からなる上記被係合部が設けられており、上記係合部内に上記被係合部を挿通させて両者が係合していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記当接プレートには、該当接プレートにおける上記バネ部材に押圧される面から上記ケースに向かって上記積層方向に突出する突出部からなる上記係合部が設けられており、上記ケースには、該ケースを上記積層方向に貫通する貫通孔からなる上記被係合部が設けられており、上記係合部を上記被係合部内に挿通させて両者が係合していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記当接プレートには、該当接プレートの一部を上記積層方向に直交する方向に延ばして形成された上記係合部が設けられており、上記ケースには、上記係合部に対応する位置に凹状に形成された上記被係合部が設けられていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の電力変換装置において、上記当接プレートの上記係合部と上記ケースの上記被係合部との係合状態においては、上記係合部及び上記被係合部の少なくとも一方により、上記バネ部材における上記積層方向に直交する方向の位置決めがされることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−211853(P2011−211853A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78234(P2010−78234)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】