説明

電力変換装置

【課題】冗長システムの中で待機系を構成する場合であっても光発光素子の寿命を短縮させない監視回路を有する電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換器1を構成するパワーデバイス11と、第1の光絶縁回路を介して第1の電気信号に変換してパワーデバイス11にオンオフ信号を与えるゲート回路2と、パワーデバイス11のGE間電圧からパワーデバイスの健全性を監視する監視回路3とで構成する。監視回路3は、装置の運転モードが運転系であるときは、GE間電圧を光信号に変換し、第2の光絶縁回路を介して電気信号に変換して異常検出回路41に与えるようにし、運転モードが待機系であるときは、GE間電圧をパルス信号に変換し、これを光信号に変換して第2の光絶縁回路を介して第2の電気信号に変換し、その出力を復元手段40によって復元した後異常検出回路41に与えてパワーデバイス11の健全性を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に係り、特に監視回路に用いられる光素子の寿命を向上した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、通常複数個のパワーデバイスを用いた電力変換器がその主回路の中核となるが、これらのパワーデバイスの健全性の監視を素早く行い、異常なパワーデバイスが発見されたときには、装置を停止させてトラブルの波及を防ぐなどのニーズが増加してきている。パワーデバイスの健全性の監視を行う方法としては、パワーデバイスにオンオフ指令を与えるゲート回路の出力と、パワーデバイスの端子電圧を監視する監視回路の出力とを比較して論理判断する手法が一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−143864号公報(全体)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された手法を高電圧の電力変換装置に適用する場合、監視回路の絶縁のために監視信号の送信側に発光素子を用いるのが普通である。そして、発光素子に付随するコネクタの接触不良などによる異常と区別するため、パワーデバイスのオフ時に発光し、オン時に消灯するようにする。
【0005】
このような回路構成とした場合、通常の電力変換装置であればパワーデバイスはゲート回路からのオンオフ指令に従って動作するので発光素子が連続発光するようなことはない。しかしながら、電力変換装置が全体の冗長システムの中で待機系を構成するような場合には、パワーデバイスは常時オフとなるため、発光素子が連続発光し、発光素子の寿命を短縮してしまう恐れがあった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、冗長システムの中で待機系を構成する場合であっても発光素子の寿命を短縮させない監視回路を有する電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電力変換装置は、冗長システムを構成し、運転系と待機系の2つの運転モードを有する電力変換装置であって、電力変換器を構成するパワーデバイスと、基準ゲート信号を光変換し、第1の光絶縁回路を介して第1の電気信号に変換して前記パワーデバイスにオンオフ信号を与えるゲート回路と、前記パワーデバイスのゲート・エミッタ間のGE間電圧から当該パワーデバイスの健全性を監視する監視回路とを具備し、前記監視回路は、前記運転モードが運転系であるときは、前記GE間電圧を光信号に変換し、第2の光絶縁回路を介して第2の電気信号に変換して異常検出回路に与え、この信号と前記基準ゲート信号との比較によって前記パワーデバイスの健全性を監視し、前記運転モードが待機系であるときは、前記GE間電圧を所定周期で所定パルス幅のパルス信号に変換し、これを光信号に変換して第2の光絶縁回路を介して第2の電気信号に変換し、その出力を復元手段によって復元した後異常検出回路に与え、この復元された信号と前記基準ゲート信号との比較によって前記パワーデバイスの健全性を監視するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、冗長システムの中で待機系を構成する場合であっても光発光素子の寿命を短縮させない監視回路を有する電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る電力変換装置のブロック構成図。
【図2】本発明の一実施例に係る電力変換装置のフィードバック復元回路の回路構成図。
【図3】本発明の一実施例に係る電力変換装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1乃至図3を参照して本発明の一実施例について説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施例に係る電力変換装置のブロック構成図である。電力変換器1の主回路にはパワーデバイス11が使用されている。他のパワーデバイスについてはそれらの図示を省略しているが、後述するゲート回路2及び監視回路3との関係はパワーデバイス11の場合と同様となる。
【0012】
パワーデバイス11のゲート端子にはゲート回路2からゲート信号が供給される。ゲート回路2には図示しない電力変換器1用の制御装置からゲート基準信号が供給される。このゲート基準信号を発光素子21によって光信号に変換し、光ファイバー等を介して高圧側の受光素子22に伝送する。受光素子22において光信号を再び電気信号に変換し、ゲートドライブ部23によって信号増幅を行ってパワーデバイス11のゲート端子にゲート信号を供給する。
【0013】
パワーデバイス11のゲート端子とエミッタ端子間の電圧、所謂GE間電圧は監視回路3に設けられた電圧検出回路31によって検出される。電圧検出回路31によって検出されたGE間電圧は、切換器32の入力となる。切換器32が運転系側に選択されているときは、このGE間電圧をそのまま出力回路33に与える。また、切換器32が待機系側に選択されているときは、このGE間電圧をパルス出力変換回路34によって所定周期で所定幅のパルス出力に変換して出力回路33に与える。
【0014】
切換器32を切換制御するための構成を以下に説明する。待機信号検出回路36は電圧検出回路31の電圧を検出し、この検出電圧が所定値以上で且つ所定時間継続したとき、すなわちパワーデバイス11が所定時間オフしたとき「1」を出力してAND回路35の一方の入力とする。また、ゲート入力監視回路37はゲートドライブ部23の入力信号を監視し、この信号がゼロであるとき、または所定時間ゼロを継続したときに「1」を出力してAND回路35の他方の入力とする。そしてAND回路35のAND条件が成立したとき、切換器32を待機系側に切換える。切換器32を再び運転系に戻す条件としては、例えばゲート入力監視回路37がゲート信号を検出したときとすれば良い。
【0015】
出力回路33の出力信号は発光素子38によって光信号に変換され、光ファイバー等を介して低圧側の受光素子39に伝送される。ここで、出力回路3は、パワーデバイス11がオフ、すなわちGE間電圧が所定値以上あるとき発光素子38を発光させるようにする。そして、受光素子39において光信号を再び電気信号に変換し、フィードバック復元回路40に与える。
【0016】
フィードバック復元回路40の内部構成の一例を図2に示す。図2に示したように、フィードバック復元回路40はモノマルチ回路40Aと切換器40Bとから成る。切換器40Bは図示しない電力変換器1用の制御装置から与えられる切換信号によって待機系と運転系とが選択切換される。運転系が選択された場合は、受光素子30から与えられたフィードバック信号はそのまま異常検出回路41に出力され、待機系が選択された場合は、モノマルチ回路40を介して異常検出回路41に出力される。尚、切換信号は上述した電力変換器1用の制御装置が運転系か待機系かのステータス信号を持っているので、この電力変換器1用の制御装置から得るのが通常であるが、基準ゲート信号が所定時間以上オフであることから待機系であることを判断する構成としても良い。
【0017】
フィードバック復元回路40によって復元された電圧信号は、異常検出回路41において上述した図示しない制御装置から与えられるゲート基準信号と比較され、パワーデバイス11の健全性の確認が行われる。すなわち基準ゲート信号がオンのとき、電圧信号が所定値未満(パワーデバイス11オンで発光素子39消灯。)で正常、基準ゲート信号がオフのとき、電圧信号が所定値以上で正常となり、そうでなければ異常となる。
【0018】
以上説明した本発明の一実施例の構成における一連の動作を、図3の動作説明図を参照して説明する。図3は電力変換装置が運転系で運転している状態から時刻t=T1で待機系となり、時刻t=T3で再び運転系に復帰したときの各部の動作を図示している。各部とは上段からパワーデバイスのオンオフ動作、復元前の電圧信号(受光素子39の出力)、そして復元後の電圧信号(フィードバック復元回路40の出力)である。
【0019】
まず、運転系の運転状態においては、パワーデバイスは与えられたゲート信号に従ってオンオフを繰り返す。このとき、復元前の電圧信号は前述したように、パワーデバイスがオンで消灯、オフで発光を繰り返す。そして復元後の電圧信号は復元前の電圧信号と同一の信号となるが、発光素子39が発光したハイレベル状態でパワーデバイス11がオフしていることを示す。
【0020】
次に、時刻t=T1で電力変換装置が待機系に切換わると、パワーデバイスはオフ状態となり、発光素子は連続発光状態となる。そして所定時間経過後、待機信号検出回路36が信号判別を行い、時刻t=T2で切換器32が運転系から待機系に切換わる。これにより、直ちにパルス出力変換回路34の動作によって、連続オフ信号(所定値以上のGK間電圧)はパルス信号に変換される。このパルス信号は発光素子38から与えられ、図3に示すような所定周期で所定幅のパルス信号となり、パルス幅分の短時間だけ発光する。そして、このパルス信号が受光素子39を介してフィードバック復元回路40に与えられると、図2に示したモノマルチ回路40Aの作用によってパルス信号は連続信号に変換復元され、図3に示すようなパワーデバイス連続オフ信号が得られる。
【0021】
そして時刻t=T3において再び運転系となると、例えばゲート入力監視回路37の出力が受光素子22の出力においてゲート信号(運転パルス)を検出した瞬間0となり切換器32は再び運転系を選択する。
【0022】
上記において、パルス出力変換回路34が発生するパルスの周期とパルス幅は以下のように決める。まずパルス周期であるが、これは周期を長く取れば取るほど発光素子の発光時間を短縮できるが、あまり周期を長く取ると、復元信号に遅れが生じ、パワーデバイスの異常検出が遅れることが考えられる。この異常検出の許容遅れ時間の最大値は1秒程度であるので周期は1秒以下とするのが良い。
【0023】
次にパルス幅であるが、パルス幅が短いほど発光素子の発光時間を短縮できる。しかしながらこのパルス幅を短くし過ぎると、フィードバック復元回路40が正常に動作できない恐れが生じる。従って、パルス幅は20ミリ秒以上確保するようにする。尚、モノマルチ回路40Aは、このパルスをトリガパルスとしてこのパルスのパルス周期程度のパルスを出力可能となるようなものを選定する。
【符号の説明】
【0024】
1 電力変換器
2 ゲート回路
3 監視回路
11 パワーデバイス
21 発光素子
22 受光素子
23 ゲートドライブ部
31 電圧検出回路
32 切換器
33 出力回路
34 パルス出力変換回路
35 AND回路
36 待機信号検出回路
37 ゲート入力監視回路
38 発光素子
39 受光素子
40 フィードバック波形復元回路
40A モノマルチ回路
40B 切換器
41 異常検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長システムを構成し、運転系と待機系の2つの運転モードを有する電力変換装置であって、
電力変換器を構成するパワーデバイスと、
基準ゲート信号を光変換し、第1の光絶縁回路を介して第1の電気信号に変換して前記パワーデバイスにオンオフ信号を与えるゲート回路と、
前記パワーデバイスのゲート・エミッタ間のGE間電圧から当該パワーデバイスの健全性を監視する監視回路と
を具備し、
前記監視回路は、
前記運転モードが運転系であるときは、前記GE間電圧を光信号に変換し、第2の光絶縁回路を介して第2の電気信号に変換して異常検出回路に与え、この信号と前記基準ゲート信号との比較によって前記パワーデバイスの健全性を監視し、
前記運転モードが待機系であるときは、前記GE間電圧を所定周期で所定パルス幅のパルス信号に変換し、これを光信号に変換して第2の光絶縁回路を介して第2の電気信号に変換し、その出力を復元手段によって復元した後異常検出回路に与え、この復元された信号と前記基準ゲート信号との比較によって前記パワーデバイスの健全性を監視するようにしたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記GE間電圧が所定時間の間所定値以上で、且つ前記第1の電気信号がオフ信号のとき、前記運転モードが待機系となったと判断して前記GE間電圧をパルス信号に変換するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記基準ゲート信号または前記第1の電気信号がオン信号となったとき、前記運転モードが運転系となったと判断するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記復元手段は、前記パルス信号をモノマルチ回路に与えることによることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記パルス信号の周期は1秒以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記パルス信号のパルス幅は20ミリ秒以上であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−223787(P2011−223787A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91991(P2010−91991)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】