説明

電力変換装置

【課題】電力変換装置におけるノイズ処理対策。
【解決手段】電力変換装置(10)は、整流回路(11)とコンデンサ(14)を有して脈動する直流電圧を出力する直流リンク部(12)とインバータ回路(13)とを備えたものを対象としている。直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)、又は整流回路(11)の出力電流(iin)をスイッチング信号の1キャリア毎に検出する検出回路(20)と、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアの検出値に基づいて今回のキャリアの検出値を予測する予測部(31)と、予測部(31)で予測された検出値と、検出回路(20)で検出された今回のキャリアの検出値とに基づいて制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値を決定する決定部(32)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された電力をスイッチングして所定の電力に変換するものに関し、特に、検出値へのノイズ処理方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、整流回路(コンバータ回路)とインバータ回路を有した電力変換装置には、直流リンク部に比較的大容量の電解コンデンサが用いられていた。このような電力変換装置では、直流リンク部の電圧変動が小さくなる。このため、電力変換装置にノイズが発生する場合、ノイズフィルタ等を用いることでノイズを抑制するようにしていた。
【0003】
一方、直流リンク部に比較的小容量のコンデンサを設けて直流リンク部の電圧に脈動(リプル)を発生させつつ、電源電圧に同期させて負荷の電流を脈動させることで、入力電流の導通幅を広げて力率改善を実現したものがある(例えば特許文献1を参照)。この電力変換装置は、直流リンク部の電圧変動が大きく、ノイズフィルタを用いると該電圧の検出タイミングが遅れてしまう。すなわち、ノイズフィルタを用いることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−51589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に示すような電力変換装置では、回路の電圧や電流を検知し、該検知した値を電力変換装置の制御に使用するものがある。
【0006】
しかしながら、電力変換装置にノイズが発生した場合、上記電圧や電流にノイズ成分が重畳されるため、正しい値を検知することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、電力変換装置の制御における、検出値へのノイズの影響を抑制することを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、交流電源(1)から供給された交流電力をスイッチングして所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換し、接続された負荷(2)に供給する変換部(10a)と、該変換部(10a)を制御するスイッチング信号を出力する制御部(30)とを備えた電力変換装置であって、上記変換部(10a)の電圧、又は電流を上記スイッチング信号の1キャリア毎に検出する検出部(20)と、少なくとも上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアの検出値に基づいて今回のキャリアの検出値を予測する予測部(31)と、該予測部(31)で予測された検出値と、上記検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値とに基づいて上記制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値を決定する決定部(32)とを備えている。
【0009】
上記第1の発明では、変換部(10a)は、交流電源(1)から供給された交流電力をスイッチング信号に基づいてスイッチングして所定電圧及び所定周波数の交流電力に変換し、接続された負荷(2)に供給する。
【0010】
ここで、検出部(20)は、スイッチング信号の1キャリア毎に変換部(10a)の電圧、又は電流を検出する。予測部(31)は、少なくとも上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアの検出値に基づいて今回のキャリアの検出値を予測する。決定部(32)は、予測部(31)で予測された今回のキャリアの検出値と、検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値とに基づいて制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値を決定する。決定された検出値は制御部(30)で使用する。制御部(30)は、決定部(32)で決定された検出値に基づいて変換部(10a)にスイッチング信号を出力する。変換部(10a)は、交流電源(1)から供給された交流電力をスイッチング信号に基づいてスイッチングして交流に変換し、負荷(2)に供給する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記変換部(10a)は、上記スイッチングによる電圧変動を吸収するコンデンサ(14)を備え、上記検出部(20)は、上記コンデンサ(14)の電圧、又は変換部(10a)の入出力電流を上記スイッチング信号の1キャリア毎に検出するよう構成されている。
【0012】
上記第2の発明では、コンデンサ(14)は、スイッチングに起因する電圧の脈動(リプル)を吸収する。そして、検出部(20)は、スイッチング信号の1キャリア毎にコンデンサ(14)の電圧、又は変換部(10a)の入出力電流を検出する。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記変換部(10a)は、上記交流電源(1)の交流電圧を全波整流する整流回路(11)と、脈動する直流電圧を出力する直流リンク部(12)と、該直流リンク部(12)の直流をスイッチングして交流に変換し、接続された負荷(2)に供給するインバータ回路(13)とを備える一方、上記制御部(30)は、上記インバータ回路(13)を制御するスイッチング信号を出力するよう構成され、上記コンデンサ(14)は、上記整流回路(11)の出力側に並列接続され、上記検出部(20)は、上記直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)、又は上記整流回路(11)の出力電流(iin)を上記スイッチング信号の1キャリア毎に検出するよう構成されている。
【0014】
上記第3の発明では、整流回路(11)は、出力された交流を全波整流する。直流リンク部(12)は、交流電圧の脈動(電圧変動)を含んだ直流をインバータ回路(13)に出力する。
【0015】
ここで、検出部(20)は、スイッチング信号の1キャリア毎に直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)、又は整流回路(11)の出力電流(iin)を検出する。予測部(31)は、少なくとも制御部(30)で使用された前回以前のキャリアの検出値に基づいて今回のキャリアの検出値を予測する。決定部(32)は、予測部(31)で予測された今回のキャリアの検出値と、検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値とに基づいて制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値を決定する。決定された検出値は制御部(30)で使用する。制御部(30)は、決定部(32)で決定された検出値に基づいてインバータ回路(13)にスイッチング信号を出力する。インバータ回路(13)は、直流リンク部(12)の直流をスイッチングして交流に変換し、負荷(2)に供給する。このときインバータ回路(13)では、スイッチングに起因する電圧の脈動(リプル)が発生する。コンデンサ(14)は、整流回路(11)の交流電圧の脈動(リプル)を吸収せず、インバータ回路(13)のスイッチングの脈動(リプル)を吸収する。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1つにおいて、上記検出部(20)は、1キャリア毎に複数の検出値を検出するよう構成され、上記決定部(32)は、上記予測部(31)で予測された検出値と、上記検出部(20)で検出された今回のキャリアの各検出値とのそれぞれの偏差を求め、最も偏差の小さい検出値を上記制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値と決定するよう構成されている。
【0017】
上記第4の発明では、検出部(20)は、1キャリア毎に複数の検出値を検出する。そして、決定部(32)は、予測部(31)で予測された検出値と、検出部(20)で検出された今回のキャリアの各検出値とのそれぞれの偏差を求める。そして、決定部(32)は、この偏差が最も小さくなる上記検出部(20)で検出された検出値を制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値と決定する。
【0018】
第5の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1つにおいて、上記決定部(32)は、上記予測部(31)で予測された検出値と、上記検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値との偏差が所定の値よりも大きい場合、該予測された検出値を上記制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値と決定するよう構成されている。
【0019】
上記第5の発明では、決定部(32)は、予測部(31)で予測された検出値と、検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値との偏差と所定の値とを比較する。この偏差が所定の値よりも大きい場合、決定部(32)は、検出部(20)での検出値がノイズの影響を受けている可能性が高いと判断し、予測部(31)で予測された検出値を制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値と決定する。一方、上記偏差が所定の値以下であれば、決定部(32)は、検出部(20)での検出値がノイズの影響を受けている可能性が低いと判断し、検出部(20)での検出値を制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値と決定する。
【0020】
第6の発明は、上記第1〜第5の発明の何れか1つにおいて、上記予測部(31)は、上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアの検出値と、所定の近似式とに基づいて予測される検出値を算出するよう構成されている。
【0021】
上記第6の発明では、予測部(31)は、少なくとも上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアの検出値と、所定の近似式とに基づいて予測される今回のキャリアの検出値を算出する。
【0022】
例示として、直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)、又は上記整流回路(11)の出力電流(iin)は、交流電圧の脈動(電圧変動)を含んでいるため、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアの検出値から今回のキャリアの検出値を予測するのは容易ではない。
【0023】
ところが、本発明では、少なくとも上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアの検出値と所定の近似式とに基づいて予測するため、上記交流電圧の脈動(電圧変動)を含んだ今回のキャリアの検出値を予測することができる。
【0024】
決定部(32)は、予測部(31)で予測された検出値と、検出部(20)で検出された検出値とに基づいて制御部(30)が使用する検出値を決定する。
【0025】
第7の発明は、上記第1〜第6の発明の何れか1つにおいて、上記検出部(20)は、キャリアの極値において上記検出値を検出するよう構成されている。
【0026】
上記第7の発明では、検出部(20)は、キャリアの極値において、検出値を検出する。
【0027】
例示として、インバータ回路(13)でのスイッチングは、キャリアに基づいて行われる。インバータ回路(13)でスイッチングが行われると、直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)や、整流回路(11)の出力電流(iin)の値が変動する(以下、これをキャリアリプルという。)。
【0028】
まず、直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)の場合、ゼロベクトル区間(キャリアの極値を含む区間)外では、直流リンク部(12)から直流電流(idc)が流れているため、コンデンサ(14)が放電して出力電圧(Vdc)が降下(すなわち電圧変動)する。このときの出力電圧(Vdc)の値は、キャリアリプルの影響を受けているため、該影響を除いた出力電圧(Vdc)の値との差異が大きい。
【0029】
一方、ゼロベクトル区間においては、スイッチングがすべてオンであるため、直流電流(idc)が流れない。このため、コンデンサ(14)が充電して直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)は上昇する。このときの出力電圧(Vdc)の値は、キャリアリプルの影響を除いた出力電圧(Vdc)の値とほぼ等しくなる。
【0030】
次に、整流回路(11)の出力電流(iin)の場合、ゼロベクトル区間外では、上述したように直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)が小さくなるため、整流回路(11)の出力電流(iin)が大きくなる。このときの出力電流(iin)の値は、キャリアリプルの影響を受けているため、該影響を除いた出力電流(iin)の値との差異が大きい。
【0031】
一方、ゼロベクトル区間においては、スイッチングがすべてオンであるため、上述したように直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)が大きくなる。このため、コンデンサ(14)に流れる出力電流(iin)が小さくなる。このときの出力電流(iin)の値は、キャリアリプルの影響を除いた出力電流(iin)の値とほぼ等しくなる。
【0032】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記検出部(20)で検出された検出値を同一キャリアの極大値又は極小値の何れか一方の検出値になり続けるように補正する検出補正部を備えている。
【0033】
上記第8の発明では、検出補正部は、例えば極大値において検出部(20)が検出した検出値を同一キャリアの極小値における検出値に近づくよう補正する。また、極小値において検出した検出値を同一キャリアの極大値における検出値に近づくよう補正する。これにより、同じタイミングの検出値を制御部(30)に使用し続けることができる。
他の制御タイミングと同じタイミングで制御を行うことができる。
【0034】
第9の発明は、上記第1〜第8の発明の何れか1つにおいて、上記予測部(31)は、前回以前のキャリアにおいて上記制御部(30)に使用された検出値を今回のキャリアの検出値として予測するよう構成されている。
【0035】
上記第9の発明では、予測部(31)は、前回以前のキャリアにおいて上記制御部(30)に使用された検出値を今回のキャリアの検出値と予測する。
【0036】
決定部(32)は、予測部(31)で予測された今回のキャリアの検出値と、検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値とに基づいて制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値を決定する。
【発明の効果】
【0037】
上記第1の発明によれば、検出部(20)、予測部(31)及び決定部(32)を設けたため、今回のキャリアの検出値を、予測された検出値と検出部(20)で検出された検出値とに基づいて決定することができる。つまり、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアでの検出値から予測された検出値に基づいているため、ノイズの影響による誤った検出値が決定されるのを防止することができる。これにより、ノイズの影響を排除した検出値を制御部(30)で使用することができる。この結果、電力変換装置の制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0038】
上記第2の発明によれば、コンデンサ(14)の電圧、又は変換部(10a)の入出力電流を検出するようにしたため、今回のキャリアの検出値を、予測された検出値と検出部(20)で検出された検出値とに基づいて決定することができる。つまり、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアでの検出値から予測された検出値に基づいているため、ノイズの影響による誤った検出値が決定されるのを防止することができる。これにより、ノイズの影響を排除した検出値を制御部(30)で使用することができる。この結果、電力変換装置の制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0039】
上記第3の発明によれば、検出部(20)、予測部(31)及び決定部(32)を設けたため、今回のキャリアの検出値を予測された検出値と検出部(20)で検出された検出値とに基づいて決定することができる。つまり、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアでの検出値から予測された検出値に基づいているため、ノイズの影響による誤った検出値が決定されるのを防止することができる。これにより、ノイズの影響を排除した検出値を制御部(30)で使用することができる。この結果、いわゆるコンデンサレスインバータの制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0040】
上記第4の発明によれば、予測された検出値と各検出値のそれぞれとの、最も小さい偏差となる検出値に決定するようにしたため、予測された検出値に最も近い検出値を制御部(30)で使用することができる。これにより、ノイズの影響を受けた検出値が制御部(30)で使用されるのを防止することができる。この結果、電力変換装置の制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0041】
上記第5の発明によれば、予測された検出値と検出部(20)での検出値との偏差に基づき検出値を決定するようにしたため、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアでの検出値から予測された検出値とかけ離れた検出値が制御部(30)で使用されるのを防止することができる。これにより、ノイズの影響を受けた検出値が制御部(30)で使用されるのを防止することができる。この結果、電力変換装置の制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0042】
上記第6の発明によれば、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアの検出値から所定の近似式を用いて今回のキャリアの検出値を予測するようにしたため、今回のキャリアの検出値の予測精度を向上させることができる。これにより、ノイズの影響を受けた検出値が制御部(30)で使用されるのを防止することができる。この結果、電力変換装置の制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0043】
上記第7の発明によれば、キャリアの極値となるタイミングで検出値を検知するようにしたため、キャリアリプルに影響されることなく、変換部(10a)の電圧、又は電流を検知することができる。
【0044】
上記第8の発明によれば、検出補正部を設けたため、検出値を異なる極値での検出値に補正することができる。これにより、同じタイミングの検出値を制御部(30)に使用し続けることができる。
【0045】
上記第9の発明によれば、前回以前のキャリアにおいて制御部(30)で使用された検出値を予測された検出値としたため、ノイズの影響による誤った検出値が決定されるのを防止することができる。これにより、ノイズの影響を排除した検出値を制御部(30)で使用することができる。この結果、電力変換装置の制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図2】本実施形態1に係る電力変換装置の構成の一部を拡大した回路図である。
【図3】本実施形態1に係る出力電圧のキャリアリプルの影響を示すグラフである。
【図4】その他の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図5】その他の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0048】
〈発明の実施形態1〉
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る電力変換装置(10)は、リアクトル(15)と、コンバータ回路(11)と、直流リンク部(12)と、インバータ回路(13)と、検出回路(20)と、制御演算回路(29)とを有する本体部(10a)を備えている。本体部(10a)は、単相の交流電源(1)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、モータ(2)に供給するように構成されいる。この本体部(10a)は、本発明に係る変換部を構成している。尚、本実施形態1のモータ(2)は、突極性を有した三相交流モータであり、空気調和装置の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動するためのものである。また、モータ(2)は、本発明に係る負荷を構成している。
【0049】
上記コンバータ回路(11)は、交流電源(1)に接続され、交流電源(1)が出力した交流を直流に全波整流する。本実施形態1では、図示はしないが、4つのダイオードがブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。これらのダイオードは、交流電源(1)の交流電圧を全波整流して、直流電圧に変換する。尚、コンバータ回路(11)は、本発明に係る整流回路を構成している。
【0050】
上記直流リンク部(12)は、コンデンサ(14)を備えている。コンデンサ(14)は、コンバータ回路(11)の出力側に並列接続され、該コンデンサ(14)の両端に生じた直流電圧(直流リンク部(12)の出力電圧:Vdc)がインバータ回路(13)の入力ノードに接続されている。このコンデンサ(14)は、例えばフィルムコンデンサによって構成する。このコンデンサ(14)は、インバータ回路(13)のスイッチング素子がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じる電圧変動(リプル)のみを平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、コンデンサ(14)は、コンバータ回路(11)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。そのため、直流リンク部(12)が出力する直流電圧(Vdc)は脈動し、通常の負荷状態における脈動では、最大電圧が最小電圧の2倍以上となる。本実施形態1では、交流電源(1)は、単相交流電源なので、直流電圧(Vdc)は、電源周波数(例えば50Hz)の2倍の周波数で脈動する。
【0051】
上記インバータ回路(13)は、入力ノードが直流リンク部(12)のコンデンサ(14)に並列に接続され、直流リンク部(12)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続されたモータ(2)に供給するようになっている。本実施形態1のインバータ回路(13)は、複数のスイッチング素子がブリッジ結線されて構成されている。このインバータ回路(13)は、三相交流をモータ(2)に出力するので、図2に示すように、6個のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えている。詳しくは、インバータ回路(13)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおいて、上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)と下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)との中点が、それぞれモータ(2)の各相のコイル(図示は省略)に接続されている。そして、インバータ回路(13)は、これらのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、直流リンク部(12)から入力された直流電圧(Vdc)をスイッチングして三相交流電圧に変換し、モータ(2)へ供給する。
【0052】
上記検出回路(20)は、図1に示すように、電圧検出部(21)と、電流検出部(22)とを備えた回路であって、本発明に係る検出部を構成している。検出回路(20)で検出された直流電圧(Vdc)、及び出力電流(iin)は、デジタルデータに変換され、検出値として制御演算回路(29)に出力される。
【0053】
上記電圧検出部(21)は、直流リンク部(12)から出力された直流電圧(Vdc)を検出する。尚、直流電圧(Vdc)は、本発明に係る出力電圧を構成している。検出される直流電圧(Vdc)は、交流電源(1)の電源周波数の2倍の周波数で脈動する直流電圧である。上記電圧検出部(21)では、直流電圧(Vdc)をスイッチングのためのキャリアの1周期毎に複数回検出している。尚、本実施形態1では、スイッチングのためのキャリアは三角波に構成されている。
【0054】
具体的に、電圧検出部(21)は、図3に示すように、キャリアの山及び谷のタイミングで直流電圧(Vdc)を2回、A点・B点において検出している。尚、キャリアの山は、本発明に係る極大値を構成し、谷は、本発明に係る極小値を構成している。そして、山及び谷は、本発明に係る極値を構成している。電圧検出部(21)は、2回検出することで、直流電圧(Vdc)の電圧の変動を検出し易くしている。こうすることで、後述する決定部(32)が、複数の検出値に基づいて直流電圧(Vdc)の検出値を決定することができるため、制御部(30)が行うインバータ回路(13)のスイッチングにおいてノイズの影響を受けにくくなる。
【0055】
ここで、キャリアリプルが直流電圧(Vdc)の検出値に与える影響について説明する。インバータ回路(13)でのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングは、キャリアに基づいて行われる。インバータ回路(13)でスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングが行われると、直流リンク部(12)の直流電圧(Vdc)や、コンバータ回路(11)からの出力電流(iin)の値が変動する。このスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオン又はオフの影響による値の変動をキャリアリプルという。
【0056】
まず、電圧検出部(21)は、図3に示すように、キャリアの極値である山(A点)、及び谷(B点)で直流電圧(Vdc)を検出する。A点又はB点を含むゼロベクトル区間では、上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)又は下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)がすべてオンであるため、直流電流(idc)は流れない。このため、コンデンサ(14)は充電され、直流電圧(Vdc)は大きくなる。このときの直流電圧(Vdc)の値は、キャリアリプルの影響を除いた直流電圧(Vdc)の値(図3における直線上の値)とほぼ等しくなる。
【0057】
一方、C点を含むゼロベクトル区間外では、直流電流(idc)が流れるため、コンデンサ(14)は放電され、直流電圧(Vdc)は小さくなる。このときの直流電圧(Vdc)の値は、キャリアリプルの影響を受けているため、キャリアリプルの影響を除いた直流電圧(Vdc)の値(図3における直線上の値)との差異が大きくなる。
【0058】
以上より、電圧検出部(21)は、キャリアの山及び谷のタイミングで直流電圧(Vdc)を2回、A点・B点において検出している。
【0059】
上記電流検出部(22)は、コンバータ回路(11)の出力側の電流である出力電流(iin)を検出する。尚、出力電流(iin)は、本発明に係る出力電流を構成している。検出される出力電流(iin)は、交流電源(1)の電源周波数の2倍の周波数で脈動する直流電流である。上記電流検出部(22)では、出力電流(iin)をスイッチングのためのキャリアの1周期毎に複数回検出している。
【0060】
具体的には、電流検出部(22)は、図3に示すように、キャリアの1周期毎に出力電流(iin)を2回、A点・B点において検出している。電流検出部(22)は、2回検出することで、出力電流(iin)の電流変動を検出し易くしている。こうすることで、後述する決定部(32)が、複数の検出値に基づいて出力電流(iin)の検出値を決定することができるため、制御部(30)が行うインバータ回路(13)のスイッチングにおいてノイズの影響を受けにくくなる。
【0061】
ここで、キャリアリプルが出力電流(iin)の検出値に与える影響について説明する。
【0062】
まず、電流検出部(22)は、図3に示すように、キャリアの極値である山(A点)、及び谷(B点)で出力電流(iin)を検出している。A点又はB点を含むゼロベクトル区間では、上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)又は下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)がすべてオンであるため、直流電流(idc)は流れない。このため、直流電圧(Vdc)は大きくなる。したがって、出力電流(iin)は小さくなる。このときの出力電流(iin)の値は、キャリアリプルの影響を除いた出力電流(iin)の値(図3における直線上の値)とほぼ等しくなる。
【0063】
一方、C点を含むゼロベクトル区間外では、直流電流(idc)が流れるため、直流電圧(Vdc)は小さくなる。このため、出力電流(iin)は大きくなる。このときの出力電流(iin)の値は、キャリアリプルの影響を受けているため、キャリアリプルの影響を除いた出力電流(iin)の値(図3における直線上の値)との差異が大きくなる。
【0064】
以上より、電流検出部(22)は、キャリアの1周期毎に出力電流(iin)を2回、A点・B点において検出している。
【0065】
上記制御演算回路(29)は、制御部(30)、予測部(31)及び決定部(32)を備えている。
【0066】
上記制御部(30)は、インバータ回路(13)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)にスイッチング信号を出力するものである。制御部(30)は、モータ(2)の各相(u相、v相、w相)の指令値とキャリアとが交差する箇所でスイッチング信号を出力する。したがって、モータ(2)の各相の指令値を変更することによってスイッチングのタイミングを調整している。タイミングの調整には、決定部(32)で決定された、直流リンク部(12)の直流電圧(Vdc)の検出値やコンバータ回路(11)からの出力電流(iin)の検出値が使用される。
【0067】
上記予測部(31)は、上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアにおける検出値に基づいて今回のキャリアの検出値を予測するものである。具体的に本実施形態1では、予測部(31)は、前回(1キャリア前)のキャリアにおける直流電圧(Vdc)及び出力電流(iin)の検出値を、今回のキャリアの直流電圧(Vdc)及び出力電流(iin)の検出値として予測している。
【0068】
上記決定部(32)は、上記予測部(31)で予測された検出値と、上記検出回路(20)で検出された検出値とに基づいて今回のキャリアの検出値を決定するものである。
【0069】
具体的に、本実施形態1では、決定部(32)は、予測部(31)で予測された直流電圧(Vdc)の検出値と、電圧検出部(21)で検出された今回のキャリアのA点及びB点における直流電圧(Vdc)の検出値との偏差をそれぞれ比較する。
【0070】
そして、偏差の小さい方の点(例えばA点とする)における電圧検出部(21)の検出値が、ノイズの影響が少ないと判断されるため、A点における電圧検出部(21)で検出された直流電圧(Vdc)の検出値を今回のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値として決定する。決定された検出値は、制御部(30)で使用する。尚、後述するように、山であるA点における直流電圧(Vdc)の検出値を半キャリア後の谷(B点)の検出値に近付けるように補正してもよい。
【0071】
また、本実施形態1では、決定部(32)は、予測部(31)で予測された出力電流(iin)の検出値と、電流検出部(22)で検出された今回のキャリアのA点及びB点における出力電流(iin)の検出値との偏差をそれぞれ比較する。
【0072】
そして、偏差の小さい方の点(例えばA点とする)における電流検出部(22)の検出値が、ノイズの影響が少ないと判断されるため、A点における電流検出部(22)で検出された出力電流(iin)の検出値を今回のキャリアの出力電流(iin)の検出値として決定する。決定された検出値は、制御部(30)で使用する。尚、後述するように、山であるA点における出力電流(iin)の検出値を半キャリア後の谷(B点)の検出値に近付けるように補正してもよい。
【0073】
−実施形態1の効果−
本実施形態1によれば、検出回路(20)、予測部(31)及び決定部(32)を設けたため、今回のキャリアの検出値を予測された検出値と検出回路(20)で検出された検出値とに基づいて決定することができる。つまり、制御部(30)で使用された前回のキャリアでの検出値に基づいているため、ノイズの影響による誤った検出値が決定されるのを防止することができる。これにより、ノイズの影響を排除した検出値を制御部(30)で使用することができる。この結果、いわゆるコンデンサレスインバータの制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0074】
また、予測された検出値と各検出値のそれぞれとの、最も小さい偏差となる検出値に決定するようにしたため、予測された検出値に最も近い検出値を制御部(30)で使用することができる。これにより、ノイズの影響を受けた検出値が制御部(30)で使用されるのを防止することができる。この結果、いわゆるコンデンサレスインバータの制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。
【0075】
また、キャリアの山又は谷となるタイミングで検出値を検知するようにしたため、キャリアリプルに影響されることなく、直流電圧(Vdc)、又は出力電流(iin)を検知することができる。
【0076】
−実施形態1の変形例1−
次に、本実施形態1の変形例1について説明する。本変形例1に係る電力変換装置(10)は、実施形態1のものとは、予測部(31)の構成が異なっている。
【0077】
具体的には、本変形例1に係る予測部(31)は、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値と、1次近似式とから今回のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値を予測するようにしている。以下にその手順を示す。
【0078】
まず、1キャリア前(前回)の直流電圧(Vdc)の検出値(Vdc[1])と、2キャリア前(前々回)の直流電圧(Vdc)の検出値(Vdc[2])を以下の近似式に代入する。
【0079】
Vdc=2×Vdc[1]−Vdc[2]
これにより、得られたVdcを今回のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値と予測する。尚、1キャリア前(前回)や2キャリア前(前々回)の直流電圧(Vdc)の検出値とは、1キャリア前(前回)又は2キャリア前(前々回)において制御部(30)で使用された直流電圧(Vdc)の検出値をいう。
【0080】
−変形例1の効果−
本変形例1によれば、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアの検出値から近似式を用いて今回のキャリアの検出値を予測するようにしたため、今回のキャリアの検出値の予測精度を向上させることができる。これにより、ノイズの影響を排除した検出値を制御部(30)で使用することができる。この結果、いわゆるコンデンサレスインバータの制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0081】
−実施形態1の変形例2−
次に、本実施形態1の変形例2について説明する。本変形例2に係る電力変換装置(10)は、実施形態1のものとは、予測部(31)の構成が異なっている。
【0082】
具体的には、本変形例2に係る予測部(31)は、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値と、2次近似式とから今回のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値を予測するようにしている。以下にその手順を示す。
【0083】
まず、1キャリア前(前回)の直流電圧(Vdc)の検出値(Vdc[1])と、2キャリア前(前々回)の直流電圧(Vdc)の検出値(Vdc[2])と3キャリア前の直流電圧(Vdc)の検出値(Vdc[3])を以下の近似式に代入する。
【0084】
Vdc=3×Vdc[1]−3×Vdc[2]+Vdc[3]
これにより、得られたVdcを今回のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値と予測する。尚、3キャリア前の直流電圧(Vdc)の検出値とは、3キャリア前において制御部(30)で使用された直流リンク部(12)の直流電圧(Vdc)の検出値をいう。その他の構成、作用・効果は上記実施形態1の変形例1と同様である。
【0085】
〈発明の実施形態2〉
次に、本発明の実施形態2について説明する。本実施形態2に係る電力変換装置(10)は、実施形態1に係る電力変換装置(10)とは、検出回路(20)と決定部(32)の構成が異なっている。
【0086】
具体的には、本実施形態2に係る検出回路(20)では、電圧検出部(21)は、直流リンク部(12)から出力された直流電圧(Vdc)を、キャリアの所定のタイミングで1回検出している。また、電流検出部(22)は、コンバータ回路(11)の出力側の電流である出力電流(iin)を、キャリアの所定のタイミング(図3のC点)で1回検出している。
【0087】
上記決定部(32)は、予測部(31)で予測された直流電圧(Vdc)の検出値と、電圧検出部(21)で検出された今回のキャリアのC点における直流電圧(Vdc)の検出値との偏差を求める。
【0088】
次に、決定部(32)は、この偏差が30V以下であるか否かを比較し、30V以下であれば、C点における電圧検出部(21)で検出された検出値はノイズの影響が少ないと判断し、この検出値を今回のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値として決定する。
【0089】
一方、決定部(32)は、この偏差が30Vよりも大きければ、C点における電圧検出部(21)で検出された検出値は、ノイズの影響が大きいと判断し、予測部(31)で予測された直流電圧(Vdc)の検出値を今回のキャリアの直流電圧(Vdc)の検出値として決定する。尚、上記偏差の基準である30Vは例示であって、これに限られない。
【0090】
また、本実施形態2では、決定部(32)は、予測部(31)で予測された出力電流(iin)の検出値と、電流検出部(22)で検出された今回のキャリアのC点における出力電流(iin)の検出値との偏差を求める。
【0091】
次に、決定部(32)は、この偏差が所定値以下であるか否かを比較し、所定値以下であれば、C点における電流検出部(22)で検出された検出値はノイズの影響が少ないと判断し、この検出値を今回のキャリアの出力電流(iin)の検出値として決定する。
【0092】
一方、決定部(32)は、この偏差が所定値よりも大きければ、C点における電流検出部(22)で検出された検出値は、ノイズの影響が大きいと判断し、予測部(31)で予測された出力電流(iin)の検出値を今回のキャリアの出力電流(iin)の検出値として決定する。
【0093】
−本実施形態2の効果−
本実施形態2によれば、予測された検出値と検出回路(20)での検出値との偏差に基づき検出値を決定するようにしたため、制御部(30)で使用された前回以前のキャリアでの検出値から予測された検出値とかけ離れた検出値が制御部(30)で使用されるのを防止することができる。これにより、ノイズの影響を受けた検出値が制御部(30)で使用されるのを防止することができる。この結果、いわゆるコンデンサレスインバータの制御における検出値へのノイズの影響を抑制することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0094】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1について、以下のような構成としてもよい。
【0095】
本実施形態1では、検出回路(20)では、検出値の検出回数を2回としたが、本発明はこれに限られず、2回よりも多く検出してもよい。これにより、直流電圧(Vdc)や出力電流(iin)の変動を検出し易くなる。
【0096】
また、本発明は、上記実施形態1又は2について、以下のような構成としてもよい。
【0097】
上記実施形態1又は2では、制御部(30)の制御の開始タイミングが谷(B点)であるため、山であるA点における検出値を半キャリア後の谷(B点)の検出値に近付けるように、A点における検出値を補正する検出補正部(図示なし)を設けるようにしてもよい。
【0098】
また、電圧検出部(21)が直流リンク部(12)の直流電圧(Vdc)を検出するようにしたが、本発明はこれに限られず、検出対象は、本体部(10a)における電圧であればよい。例えば、交流電源(1)から出力される電源電圧(Vin)や、電力変換装置(10)からモータ(2)に出力される電圧を検出してもよい。
【0099】
また、同じく電流検出部(20)がコンバータ回路(11)の出力側の電流である出力電流(iin)を検出するようにしたが、本発明はこれに限られず、検出対象は、本体部(10a)における電流であればよい。例えば、交流電源(1)の出力電流や、モータ(2)を流れる電流を検出してもよい。
【0100】
また、本発明は、いわゆるマトリクスコンバータにも適用できる。図4は、本体部(10a)がマトリクスコンバータに構成された例を示す図である。この例では、三相の交流電源(1)と接続された9個のスイッチング素子(S1,S2,…,S9)で三相交流をスイッチングしてモータ(2)に三相交流を供給する。
【0101】
また、交流電源(1)として三相の交流電源を採用することも可能である。図5は、交流電源として三相の交流電源(1)を用いた場合の電力変換装置(10)の構成例を示す図である。同図に示すように、コンバータ回路(11)は、6つのダイオード(D1〜D6)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。これらのダイオード(D1〜D6)は、三相の交流電源(1)の交流電圧を全波整流して、直流電圧に変換する。このコンバータ回路(11)の構成では、直流リンク部(12)の電圧脈動の周波数が電源周波数の6倍になる。
【0102】
また、本発明は、上記回路構成以外にも、電力変換装置全般の回路について適用することができる。
【0103】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明は、電力変換装置について有用である。
【符号の説明】
【0105】
11 コンバータ回路
12 直流リンク部
13 インバータ回路
14 コンデンサ
20 検出回路
29 制御演算回路
30 制御部
31 予測部
32 決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(1)から供給された交流電力をスイッチングして所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換し、接続された負荷(2)に供給する変換部(10a)と、該変換部(10a)を制御するスイッチング信号を出力する制御部(30)とを備えた電力変換装置であって、
上記変換部(10a)の電圧、又は電流を上記スイッチング信号の1キャリア毎に検出する検出部(20)と、
少なくとも上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアの検出値に基づいて今回のキャリアの検出値を予測する予測部(31)と、
該予測部(31)で予測された検出値と、上記検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値とに基づいて上記制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値を決定する決定部(32)とを備えている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記変換部(10a)は、上記スイッチングによる電圧変動を吸収するコンデンサ(14)を備え、
上記検出部(20)は、上記コンデンサ(14)の電圧、又は変換部(10a)の入出力電流を上記スイッチング信号の1キャリア毎に検出するよう構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記変換部(10a)は、上記交流電源(1)の交流電圧を全波整流する整流回路(11)と、脈動する直流電圧を出力する直流リンク部(12)と、該直流リンク部(12)の直流をスイッチングして交流に変換し、接続された負荷(2)に供給するインバータ回路(13)とを備える一方、
上記制御部(30)は、上記インバータ回路(13)を制御するスイッチング信号を出力するよう構成され、上記コンデンサ(14)は、上記整流回路(11)の出力側に並列接続され、
上記検出部(20)は、上記直流リンク部(12)の出力電圧(Vdc)、又は上記整流回路(11)の出力電流(iin)を上記スイッチング信号の1キャリア毎に検出するよう構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つにおいて、
上記検出部(20)は、1キャリア毎に複数の検出値を検出するよう構成され、
上記決定部(32)は、上記予測部(31)で予測された検出値と、上記検出部(20)で検出された今回のキャリアの各検出値とのそれぞれの偏差を求め、最も偏差の小さい検出値を上記制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値と決定するよう構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1つにおいて、
上記決定部(32)は、上記予測部(31)で予測された検出値と、上記検出部(20)で検出された今回のキャリアの検出値との偏差が所定の値よりも大きい場合、該予測された検出値を上記制御部(30)で使用する今回のキャリアの検出値と決定するよう構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つにおいて、
上記予測部(31)は、上記制御部(30)に使用された前回以前のキャリアの検出値と、所定の近似式とに基づいて予測される検出値を算出するよう構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1つにおいて、
上記検出部(20)は、1キャリアの極値において上記検出値を検出するよう構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7において、
上記検出部(20)で検出された検出値を同一キャリアの極大値又は極小値の何れか一方の検出値になり続けるように補正する検出補正部を備えている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1つにおいて、
上記予測部(31)は、前回以前のキャリアにおいて上記制御部(30)に使用された検出値を今回のキャリアの検出値として予測するよう構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−151976(P2012−151976A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8027(P2011−8027)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】