説明

電力施設におけるアンモニアの触媒的酸化方法

【課題】本発明は、アンモニアによる窒素酸化物(NO)の還元のための選択的接触還元(SCR)に付された煙道ガスに起因する過剰アンモニア(NH)ガス(「アンモニア・スリップ」)の酸化による除去のための方法に関する。より具体的には、本発明の方法は、窒素酸化物(NO)の形成を最小限にしながら、アンモニアおよび一酸化炭素(CO)の両方の酸化を触媒するために、ゼオライト、1つもしくは複数の貴金属および卑金属化合物からなるアンモニア酸化触媒を用いる。本発明は、煙道および排出ガスを処理するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア注入による窒素酸化物(NO)の選択的接触還元(SCR)に付された煙道ガスからの過剰アンモニア(NH)の触媒的酸化による除去のための方法に関する。より具体的には、本発明は、窒素酸化物(NO)へのアンモニアの最小触媒作用を伴う、アンモニア(NH)の窒素(N)への、ならびに一酸化炭素(CO)の二酸化炭素(CO)への酸化を選択的且つ効率的に触媒する酸化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の家庭および仕事で用いられる多量の電力は、ボイラー中で化石燃料(すなわち、石炭、石油またはガス)を燃やす発電所で作り出される。その結果生じる高温排出ガス(時として「煙道ガス」とも呼ばれる)はガスタービンを回し、または水を沸騰させて、蒸気を生じ、これが蒸気タービンを回し、そしてタービンは発電機と協同して、電力を生産する。煙道ガス流はその後、空気予熱器、例えば煙道ガスからの熱を移動させる回転ホイール熱交換器を通過して、その後、燃焼器に流れ込む。部分冷却煙道ガスは、空気予熱器から排気筒に向けられる。
【0003】
煙道ガスは、石炭が一次燃料源として用いられる場合、汚染物質、例えばイオウ酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)および煤の微粒子を含有する。大気中へのこれらの汚染物質のすべての排出は、これらの煙道ガス構成成分のレベルを大きく制限する国および地方の規制を受けている。
【0004】
環境規制により必要とされるような発電所からのNO放出レベル低減に応じるために、多数の化石燃料燃焼発電装置は、選択的接触還元(SCR)または選択的非接触還元(SNCR)技術を装備している。SCRでは、用いられる最も一般的な方法は、酸化バナジウム触媒の存在下でアンモニアまたは尿素ベースの試薬を注入することであるが、この場合、アンモニアは、窒素の酸化物を還元するよう反応する。SCRは、一般的には、SNCRより低温で成し遂げられる。SCR系は、典型的には、300℃〜450°Cの範囲の煙道ガス温度で稼動する。米国特許第5,104,629号は、一つの既知の型のSCR設備を例示する。
【0005】
SNCRでは、用いられる最も一般的な方法は、アンモニアまたは尿素ベースの試薬を上部の炉に注入して、触媒を使用することなく窒素の酸化物を低減する。SNCR系は、850℃〜1150℃の範囲の煙道ガス温度で稼動する。米国特許第3,900,554号、第4,208,386号および第4,325,924号は、既知の型のSNCR適用を例示する。
【0006】
火力発電所では、SCRおよびSNCR系のためのアンモニア注入系が、典型的には煙道ガス流の高温および高ダスト領域に取り付けられるが、これは典型的には灰回収前である。SCRおよびSNCR技術に伴う共通の一問題は、アンモニアスリップとして知られている多少の残留アンモニアが下流構成成分および工程に負の影響を及ぼす:例えば空気予熱器付着物、飛散灰汚染、ならびに大気中へのアンモニアガス放出という点である。アンモニアスリップ問題は、SCR触媒表面劣化、そして煙道ガス速度、温度ならびにアンモニアおよびNOの濃度における不適当な分布の結果としてさらに悪化される。
【0007】
目下の方法に伴うさらなる問題は、アンモニア注入増大は窒素の酸化物をより効率的に除去するが、しかしその時、過剰のアンモニアが煙道ガス中のアンモニアスリップ増大を引き起こす、ということである。火力発電所では、この過剰アンモニアは、さらに、結果的に生じる石炭ベースの飛散灰を汚染する。
【0008】
天然ガスまたは石油を基礎にした発電所においてさえ、排気中のアンモニアの環境的作用は望ましくない。EPAは、NOを低減することを目指す種々の規制イニシアティブを制定した。化石燃料の燃焼はNO放出の主因である、と確定された。これらの制御規制は、1990年の大気浄化法の第IV編(CAAA90)下で、EPAにより確立された。1997年7月に、EPAは、新規発生源実施基準における別の変更を提案したが、これらの改正は、SCR技術により達成され得る実施に基づいていた。
【0009】
簡単に上記したように、ボイラーなどからの排出ガスの処理は、以下の欠点を提示する:
(1)多少のアンモニアが処理ガス中に除去されないまま残ること;
(2)低NO分解速度;ならびに
(3)多量のアンモニア消費。
【0010】
欠点(1)および(2)は相互に関連する。
【0011】
例えば、NO分解を上げるためにアンモニア供給が増大される場合、処理ガス中の残留アンモニアの割合は高くなる。この残留アンモニアは、大気中に排出することが現行規制により許されている量を超えることがある。したがって、既知の方法の酸化窒素分離効率は、大気中に放出され得る未反応アンモニアの量により限定される。
【0012】
その上、燃焼設備に及ぼす負荷の変動は、アンモニアが導入される時点で、最適温度範囲から外れた値に温度を変更し、これが次に、分解速度を低減して、残留アンモニアの比率を増大傾向にする。小比率の場合でも、残留アンモニアは排出ガスの硫酸含量と迅速に反応して、酸性硫酸アンモニウムを生成する。この生成物は、相対的に低温の領域で後部伝熱面に、例えば空気予熱器の加熱面およびボイラーの関連部分に固着して、圧力損失を引き起こし、燃焼設備の稼動を妨げ、それらの結果として起こる腐蝕のために設備の材料を攻撃するようになる。
【0013】
上記のように、処理排出ガス中に除去されないまま残るアンモニアは、実際的操作の邪魔になる主要障害物を提供する。その結果、アンモニア供給には上限があり、当然ながら、NO分解速度は低い。これは、高温非触媒性脱窒の実行における一問題であった。さらに、高温領域で導入されるアンモニアは、分解それ自体のための付随的反応を受けて、アンモニアの過剰消費またはNO分解反応に関して等価のものより多いという欠点(3)を生じる。この傾向は、アンモニア注入の量が分解速度増大を見越して増大される場合、顕著になる。これは、慣用的に得られるべきNO分解速度に関する別の限定因子であった。
【0014】
NOおよびアンモニア両方の最大可能反応のためには、効率的にアンモニアおよびNOの反応を成し遂げることが重要である。反応が不完全である場合、NOまたはアンモニアのいずれか(または両方)がスタックを通過して、大気に放出され得る。NOおよびアンモニアはともに、汚染物質として分類され、それらの放出は合法的限度内に維持されるべきである。さらに、硫酸/硫酸水素アンモニウムの形成、および/または飛散灰凝集のため、空気予熱器の低温端部での温度によって、過剰のアンモニアスリップは隣接空気予熱器過熱素子間の空間の詰まりを引き起こし得る。これは、熱交換器の圧力損失増大、装置の腐蝕を、したがって長期間の不安定稼動およびその他の欠点を生じさせることになる。
【0015】
さらに、多数の火力発電所は、購入者にそれを売却することにより収集飛散灰を処理し、購入者はさらに商業用途(すなわち、コンクリート混合物用の軽量骨材)のために飛散灰を加工処理する。石炭火力発電所で作り出される飛散灰は、一般に、ポゾラン混合材としての、ならびにセメントの部分的代替のためのコンクリート用途に用いられる。飛散灰は、コンクリートおよびモルタルの高アルカリ性条件下で反応して付加的セメント質化合物を形成するアルミノケイ酸塩ガラスからなる。飛散灰は、高性能コンクリート中の必須構成成分である。飛散灰は、密度および長期強度増大、浸透性低減、ならびに化学的攻撃に対する耐久性改良を含めた多数の有益な特質をコンクリートに提供する。また、飛散灰は、新鮮なコンクリートの使用可能性を改良する。
【0016】
アンモニア汚染飛散灰がポートランドセメントベースのモルタルおよびコンクリート用途に用いられる場合、アンモニウム塩が水に溶解して、NHを形成する。セメントアルカリにより作り出される高pH(pH>12)条件下では、アンモニウム陽イオン(NH)は溶解アンモニアガス(NH)に転化される。アンモニアガスは、新鮮なモルタルまたはコンクリート混合物から空気中に出て、コンクリート作業員をそれに曝露する。アンモニアガスの発生速度は、アンモニア濃度、混合強度、曝露表面積、および周囲温度に左右される。発生するアンモニアはコンクリートの品質(強度、浸透性など)に測定可能な作用を及ぼさないと考えられるが、一方、アンモニアガスの影響は軽度に不快から潜在的な健康障害までに及び得る。ヒトの鼻は、5〜10ppmのレベルでアンモニア臭を検出する。OSHA閾値および許容限度は、時間加重平均値(TWA)(8時間)および短時間曝露限界値(STEL)(15分)に関して、それぞれ25および35ppmに設定されている。150〜200ppmのアンモニアガス濃度が、一般的不快を作り出し得る。400〜700ppmの濃度で、アンモニアガスは顕著な刺激を生じ得る。500ppmでは、アンモニアガスは直ちに健康にとって危険である。2,000ppmでは、数分以内に死が起こり得る。
【0017】
OSHA曝露限度以外に、飛散灰中の許容可能レベルのアンモニアに関する最新の規制、産業またはASTM標準またはガイドラインは存在しない。しかしながら産業経験に基づいて、100mg/kg未満のアンモニア濃度を有する飛散灰は、調合済みコンクリート中の注目すべき臭いを生じるとは思われない。場所および天候条件によって、100〜200mg/kgの範囲のアンモニア濃度を有する飛散灰は、不愉快なまたは安全でないコンクリート配置および仕上げ作業環境を生じ得る。200mg/kgを超えるアンモニア濃度を有する飛散灰は、調合済みコンクリート用途に用いられる場合、許容不可能な臭いを生じる。
【0018】
アンモニア満載灰を用いて製造されるコンクリートから発生するアンモニアガスにヒトが曝露される危険のほかに、火力発電所のゴミ投棄場および池におけるアンモニア満載灰の処分も、ヒトおよび環境に対する潜在的危険を生じ得る。飛散灰中のアンモニウム塩化合物は、極度に可溶性である。水と接触すると、アンモニウム塩は水中に滲出し、地下水ならびに隣接する川および小川に運ばれて、潜在的環境損害、例えば地下水汚染、魚の死および富栄養化を引き起こす。アンモニアガスは、西部亜歴青炭の燃焼から発生されるもののように、アルカリ性飛散灰の湿潤時にも発生し得る。アルカリ性飛散灰の水分状態調節および湿式処分は、発電所作業員をアンモニアガスに曝す。
【0019】
米国特許第5,233,934号(Krigmontら)は、SNCR処理とその後のSCR処理を利用して煙道ガス中のNOを低減する制御方法を開示する。Krigmontらの方法は、SNCR段階でのNO除去を最大にして、一定のアンモニアスリップ制限に付して、SCR段階のための付加的アンモニアを注入するよう試みる。
【0020】
米国特許第5,510,092号(Mansourら)は複合SNCR/SCR法を開示するが、この場合、SCRは一次NO還元のために用いられ、そしてSCR流出物のNO含量が予め選択された設計最大値を超える場合のみ、NHがSNCRゾーンに注入される。
【0021】
米国特許出願公開番号2003/0202927号(Minkaraら)は、火力発電所ならびに他の炭化水素燃料を用いる施設の両方からのアンモニアの濃度および放出を低減するための方法を開示する。Minkaraらの出願における方法は、アンモニア酸化触媒、具体的には二酸化マンガンをSCR系の下流に付加して、アンモニアを煙道ガス中に存在する残留酸素と反応させることにより、望ましくないアンモニアスリップを除去する。
【0022】
米国特許出願公開番号2006/0182672号(Tranら)は、SCR系の下流に置かれた二次触媒を用いてSCRに付された煙道ガスからの過剰量のアンモニアガスを酸化により除去する方法を開示する。Tranらによれば、二次触媒は、チタニアのような金属酸化物上の貴金属およびバナジウムを含む。
【0023】
上記のように、良好に作業し、最低値のNOを生じるためのアンモニアによる窒素の酸化物のSCRに関しては、過剰量のアンモニアを用い得ることが好ましい。しかしながら、用いられるアンモニアの質がSCRを通してNOを有効に除去するのに十分に高い場合、過剰アンモニアの一部は未変化で触媒を通り抜けて、煙道ガス中にアンモニアスリップとして出て、排出ガス中の有毒反応ガスの問題を生み出す。特に火力発電所からの煙道ガス中に出る過剰アンモニアにより作り出される別の大きな問題は、コンクリートを製造するためにセメントと混合して用いるよう意図される飛散灰をアンモニアが汚染する、ということである。したがって、一次SCR触媒から下流のアンモニアスリップを最小限にするための安全且つ効率的な方法に対する必要性が存在する。アンモニア排出を低く保つために、酸化触媒が、アンモニア「スリップ」をNに転化するために下流に用いられ得る。残念ながら、慣用的酸化触媒は、NHからNへの反応を触媒するだけでなく、NHからNOへの反応も触媒する。したがって、NHからNへの反応を選択的且つ効率的に触媒する酸化触媒を見出すことが、当該技術分野における長年の努力目標であった。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、煙道ガス中のアンモニアの除去方法であって、アンモニアが選択的接触還元剤として、窒素の酸化物を還元するための一次触媒とともに用いられる方法に関する。本発明は、選択的接触還元(SCR)系を装備した定常燃焼源により発生される煙道ガス流を処理するための、ならびに未反応アンモニアを窒素に選択的に酸化するための方法であって、以下の:(a)上記未反応アンモニアを含有する上記煙道ガス流を酸化剤の存在下でアンモニア酸化触媒と接触させるステップ(ここで、上記アンモニア酸化触媒はゼオライト、貴金属および卑金属化合物を含む);ならびに(b)それにより上記未反応アンモニアを窒素に酸化するステップを包含する方法を提供する。本発明の方法は、SCR条件下で窒素の酸化物を還元するために煙道ガスにアンモニアを付加し、そして任意の未反応アンモニアを、ゼオライト、1つもしくは複数の貴金属および卑金属を含有する二次アンモニア酸化触媒で酸化して、煙道ガス中のアンモニア含量を低減することを包含する。一実施形態において、本発明のアンモニア酸化触媒は、一次SCR触媒から下流に置かれ、出て行く煙道ガス中のアンモニアおよびCO濃度を、窒素酸化物への最小の触媒作用で低減する。別の実施形態では、1つもしくは複数の希土類金属が、アンモニア酸化触媒を安定化するために任意に付加され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】種々の金属酸化物を含有する触媒のアンモニア転化に関する選択性を比較するグラフを表す。
【図2】ゼオライト、チタニアまたはアルミナ支持体を用いたアンモニア転化に関する選択性および反応性を比較するグラフを表す。
【図3】ゼオライト、チタニアまたはアルミナ支持体を用いた銅を含有する触媒のアンモニア転化に関する選択性を比較するグラフを表す。
【図4】本発明の触媒のエイジング中のアンモニア転化、排気アンモニアおよび排気NOを示すグラフを表す。
【図5】種々のゼオライト支持体上に白金および銅を含有する触媒を用いた種々の温度でのアンモニアの転化を比較するグラフを表す。
【図6】ゼオライト支持体上に載せられた金属の性質を示すグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
煙道ガスおよび排出ガスからの窒素酸化物の放出、例えば火力発電所におけるガスタービンエンジンにより生成される排出物を低減するために、窒素酸化物を含有する排出ガス流にアンモニアが付加され、次に、アンモニアを用いる窒素酸化物の還元を触媒するために、ガス流が高温で適切な触媒と接触させられる。窒素およびHOを形成するためのアンモニアを用いる窒素酸化物の還元は、適切な触媒により触媒されて、酸素によるアンモニアの酸化を優先的に生じ、それゆえ、当該方法はしばしば、窒素酸化物の「選択的」接触還元(「SCR」)と呼ばれる。窒素酸化物のSCRは、以下の反応により表され得る:
4NO+4NH+O→4N+6HO (1)
2NO+4NH+O→3N+6HO (2)
【0027】
SCR法に用いられる触媒は、理想的には、高温使用条件化で、例えば400℃以上で、水熱条件下で、イオウ化合物の存在下で、良好な触媒活性を保持し得るべきである。高温および水熱条件はしばしば、実際に、例えばガスタービンエンジン排出物の処理に際して見られる。イオウまたはイオウ化合物の存在が、石炭火力発電所の、ならびにイオウ含有燃料、例えば燃料油などで燃料を供給されるタービンまたはその他のエンジンの、排出ガスを処理するに際して、見られる。
【0028】
理論的には、反応を完了に至らせるのに好都合であるよう、且つガス流中のアンモニアの不適切な混合を抑えるために、存在する窒素酸化物と完全に反応するのに必要とされる化学量論的量より多くのアンモニアを提供することが、SCR法では望ましい。しかしながら、実際には、触媒からの未反応アンモニアの放出がそれ自体、空気汚染問題を生じさせるため、化学量論的量を上回る有意の過剰量のアンモニアは普通提供されない。未反応アンモニアのこのような放出は、アンモニアが化学量論的または亜化学量論的量でのみ存在する場合でさえ、ガス流中のアンモニアの不完全反応および/または不十分な混合の結果として、起こり得る。高アンモニア濃度のチャンネルが不十分な混合によりガス流中に形成され、そして微粒子触媒床を用いる場合と異なり、チャンネル間のガス混合の機会がないため、それを通り抜けて伸びる一体式ハニカム型基板支持体を含む触媒を利用する場合、特に重要である。
【0029】
一次SCR触媒は、産業において知られている、窒素の酸化物を還元する任意の形態の触媒であり得る。窒素酸化物還元という目的のために、押出均一触媒を有するのが好ましい。このような一実施形態は、バナジアおよびチタニアの、任意にタングステンの混合物を含有する押出均一ハニカム型触媒である。このような触媒は、当該産業内でよく知られており、典型的には約5ppmから約10ppmまでのアンモニアスリップ値を提供する。触媒被覆ハニカムまたはプレートも用いられ得る。
【0030】
煙道ガス流、特に天然ガスを燃料とする発電所のような固定発生源から放出されるものは、最新の州および連邦国家大気質規制下で容認されるものより多くの量でアンモニアを含有する。このような過剰量のアンモニアは、最新の州および連邦国家大気質規制により容認される最大レベルを下回るレベルの窒素酸化物を処理排出ガス流が含有するよう、窒素へのガス流中の窒素酸化物のレベルを低減するための、SCR触媒の存在下で排出ガス中へのアンモニア流の注入に起因する。したがって、排出ガス流中の窒素酸化物の量を付随的に有意に増大することなく、それが大気中に放出される前に、このような規制により容認される最大値より低いレベルにアンモニアの量を低減するために排出ガス流をさらに処理することが必要である。
【0031】
SCR触媒床を出る排出ガス流は、全体的酸素レベルが少なくとも約14重量%であるよう、典型的には、約5〜約20ppmのアンモニア、約5〜約50ppmの一酸化炭素、約5〜約15%の二酸化炭素、約5〜約15重量%の水(蒸気の形態の)、および約70〜約90重量%の空気を含有する。本発明の方法において、ガス流中のアンモニアは、本発明のアンモニア酸化触媒の存在下で空気中の酸素により窒素に選択的に酸化される。排出ガス流中に存在する任意の一酸化炭素は、同時に二酸化炭素に酸化される。
【0032】
ガス流中のアンモニアを窒素に選択的に酸化するための本発明の方法は、アンモニア含有煙道ガス流を、酸化剤、例えば空気の存在下で、約200℃〜約450℃の温度で、本発明のアンモニア酸化触媒と接触させることを包含する。酸化剤は、典型的には、処理されるべき排出ガス流中にすでに存在する空気の形態の酸素である。しかしながら、必要な場合、反応中の酸素含量が少なくとも10重量%であることを保証するために、空気の補足的供給が排出ガス流中に注入され得る。
【0033】
本発明は、一次SCR触媒から下流に置かれ得るアンモニア酸化触媒を組入れる。このようにして、SCR触媒を通過するアンモニアスリップは、アンモニア酸化触媒をアンモニアが通過する場合に酸化される。アンモニア酸化触媒は、いくつかの有益な特徴、例えば:非常に低い量の酸素(約2%)を有する煙道ガス条件下でより低いレベル(2ppm未満)にアンモニアスリップを低減すること、COレベルを低減し、そして実質的にSOレベルを保持するといった特徴を保有しなければならない。アンモニア酸化は、以下の反応により起こる:
4NH+3O→2N+6HO (3)
2NH+2O→NO+3HO (4)
4NH+5O→4NO+6HO (5)
【0034】
本明細書中に開示される本発明は、望ましくないアンモニアスリップを除去するために、それを煙道ガス中に存在する残留酸素と反応させることにより、SCR系の下流に置かれ得る高効率的アンモニア酸化触媒を付加する。意外にも、本発明のアンモニア酸化触媒は、煙道ガス中に少量の残留酸素があるに過ぎない条件下でさえ、この目的のために用いられ得る、ということが判明した。しかしながら、上記のように、反応中の酸素含量が少なくとも10重量%であることを保証するために、空気の補足的供給が排出ガス流中に注入され得る。
【0035】
アンモニア除去のために用いられる酸化触媒の性能、特に(窒素酸化物というよりむしろ)元素窒素への優先的転化が温度依存性である、ということも判明した。すなわち、高温は窒素酸化物の形成に好都合である傾向があるが、一方、低温は触媒反応の速度を低下させる傾向がある。当業者が理解するように、中間最適温度は、アンモニアスリップからの元素窒素の形成に好都合である異なる触媒系に関して確定され得る。中間温度でも、NOおよびNOの多少の形成は起こり得る。しかしながら、その量は、適切な工程条件、すなわち、反応温度、空間速度および特定触媒組成を選択することにより最小限にすることができる。
【0036】
普通は、酸化触媒の作動温度は、SCR触媒の作動温度に近いままでなければならない。ほとんどの貴金属に関して、酸化触媒温度は約105℃〜350℃の範囲であるべきで、最大作動温度範囲は約100℃〜700℃である、ということが判明した。本発明のアンモニア酸化触媒に関する典型的作動温度は、約200℃〜約450℃であり、約300℃から約450℃まで、約325℃から約375℃までの作動温度も例示される(例えば、図5参照)。許容可能な触媒空間速度は、約5,000〜150,000時間−1の範囲である、ということも判明した。
【0037】
本発明に従って処理され得る排出ガス流は、しばしば固有に、相当量の酸素を含有する。例えば、タービンエンジンの典型的排出ガスは、約2〜15容量%の酸素および約20〜500容量百万分率(ppm)の窒素酸化物を含有し、窒素酸化物は普通NOおよびNOの混合物を含む。通常は、存在する窒素酸化物すべてを還元するために必要とされるアンモニアの化学量論的量を上回る過剰量が用いられる場合でさえ、残留アンモニアを酸化するのに十分な酸素がガス流中に存在する。しかしながら、アンモニアの化学量論量を上回る極多量が用いられる場合、あるいは処理されるべきガス流が酸素を欠くがまたは酸素含量が低い場合、適切な酸素が残留または過剰アンモニアの酸化のための二次触媒ゾーンに存在することを保証するために、酸素含有ガス、通常は空気が、一次触媒ゾーンと二次触媒ゾーンの間に導入され得る。
【0038】
SCR触媒から下流に置かれるアンモニア酸化触媒は、以下の判定基準を有することが望ましい:
(a)煙道ガス温度、酸素濃度および流量でアンモニアを酸化し得る物質;
(b)イオウおよび窒素の酸化物の存在下で機能し得る物質;
(c)アンモニアの酸化の副反応により最小量の窒素の酸化物を生成する物質;
(d)アンモニアの流出レベルが2ppm以下になるようNOの還元を増大する物質;
(e)COのレベルを低減する物質;ならびに
(f)SOレベルを保持する物質;
【0039】
一実施形態では、本発明のアンモニア酸化触媒は、窒素酸化物を還元するのに関与するSCR触媒系から下流に置かれる。別の実施形態では、本発明のアンモニア酸化触媒は、SCR系に組入れられ得る。例えば、アンモニア酸化触媒は、SCR触媒基板上のSCR触媒に付加されるか、またはそれと混合され、あるいはアンモニア酸化触媒は、SCR触媒から下流のSCR触媒と同一基板上にゾーン被覆され得る。本発明のアンモニア酸化触媒は、ゼオライト、1つもしくは複数の貴金属および一卑金属を含む。
【0040】
ゼオライトは、ゼオライトの種類ならびにゼオライト格子中に含まれる陽イオンの種類および量によって、直径約3〜10オングストロームの範囲であるかなり均一な孔サイズを有するアルミノケイ酸塩結晶性物質である。短期イオウ被毒に対する耐性ならびに酸素によるアンモニアの酸化に関する高レベルの活性を維持する能力は、短期イオウ被毒に起因するイオウ酸化物分子、および/または長期イオウ被毒に起因する硫酸塩沈着物の存在下で、細孔系中への反応体分子COおよびNHの、そして細孔系からの生成物分子N、COおよびHOの適切な動きを可能にするのに十分な大きさの孔サイズも示すゼオライトにより提供されることが見出された。適切なサイズの細孔系は、3つの結晶学的寸法全部で相互連結される。ゼオライト技術分野の当業者に周知であるように、ゼオライトの結晶構造は、多少規則的に繰り返し起こる連結、交差などを有する複雑な細孔構造を示す。特定の特質、例えば所定の直径寸法または横断形状を有する孔は、その孔が他の同様の孔と交差しない場合、一次元的であると言われる。孔が所定の平面内でのみ他の同様の孔と交差する場合、その特質を有する孔は2つの(結晶学的)寸法で相互連結されると言われる。孔が同一平面にならびに他の平面にある他の同様の孔と交差する場合、このような同様の孔は3つの寸法で相互連結される、すなわち、「三次元的」であると言われる。硫酸塩被毒に対して高度に耐性であり、酸素によるアンモニアの酸化に良好な活性を提供する、そして高温、水熱条件および硫酸塩毒を受けた場合でさえ良好な活性を保持するゼオライトは、少なくとも約5オングストロームの孔直径を示す孔を有し、三次元で相互連結されるゼオライトである、ということが判明した。別の実施形態では、少なくとも約7オングストロームの孔直径を有し、三次元で相互連結されるのが好ましい。
【0041】
本発明の触媒組成物は、少なくとも約2のシリカ対アルミナ比を、ならびに少なくとも約5オングストローム、例えば約5〜8オングストロームの平均動的孔直径を有する孔により3つすべての結晶学的寸法で相互連結される細孔構造を有するゼオライトを含む。別の実施形態では、約2.5から約12.5までのシリカ対アルミナ比が好ましい。図2および3で表されるような実験データは、他の触媒支持体、例えばチタニア、シリカおよびアルミナのような金属酸化物と比較してより良好なアンモニア酸化選択性を提供するためのゼオライトを示した。典型的には、任意の既知のゼオライトが、本発明のアンモニア酸化触媒中に用いられ得る。ゼオライトは、天然または合成ゼオライト、例えばフォージャサイト、チャバサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、フェリエナイト、シリカライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、ZSMゼオライト、ZSM−5、オフレタイトまたはベータゼオライトであり得る。好ましいゼオライトとしては、モルデナイト、フェリエライト、Y型ゼオライトおよびベータゼオライトが挙げられる。
【0042】
任意の既知の卑金属は、本発明のアンモニア酸化触媒とともに用いられ得る。卑金属は、任意の卑金属化合物または錯体、例えば、卑金属酸化物、卑金属塩、卑金属−酸素錯体(多数の金属および酸素原子を含む(例えば、O−Cu−O−Cu−O−Cu−O))、または卑金属イオンであり得る。異なる卑金属化合物は、ゼオライトに対応して用いられる卑金属の量を変えることにより達成され得る、ということを出願人等は見出した(図6参照)。一実施形態では、卑金属−酸素錯体(多数の金属および酸素原子を含む(例えば、O−Cu−O−Cu−O−Cu−O))が好ましい。好ましい卑金属−酸素錯体としては、銅、バナジウム、マンガン、亜鉛、ジルコニウムおよびモリブデンの錯体が挙げられる。別の実施形態では、卑金属酸化物が好ましい。好ましい金属酸化物としては、銅酸化物、バナジウム酸化物、マンガン酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、モリブデン酸化物およびそれらの対応するイオンが挙げられるが、銅酸化物が最も好ましい。典型的には、アンモニア酸化触媒に付加される卑金属化合物の量は、ゼオライトに対応して約2重量%〜約20重量%の範囲である。別の実施形態では、ゼオライトに対して約2重量%から約10重量%までの卑金属化合物が付加される。さらに別の実施形態では、Y型ゼオライトが用いられる場合、卑金属化合物は約5重量%から約16重量%までであり、モルデナイト、ベータ型、フェリエライトまたはZSM−5型ゼオライトが用いられる場合は、約3重量%から約8重量%までである。図1で表されるような実験データは、窒素へのアンモニア転化に関して他の金属酸化物より選択的であるべき銅酸化物を示した。さらに重要なことは、銅酸化物は、窒素酸化物の過剰生成を生じることなく、相当量のアンモニアを転化すると思われるということである。
【0043】
貴金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムまたは金が用いられ得る。白金は、貴金属の中で最も活性であることが見出されており、したがって白金が好ましい。本発明のアンモニア酸化触媒は、約0.1〜約100g/ftの貴金属負荷を含有し得る。約0.5〜約60g/ft、約1.0〜約10g/ft、約1.0〜約5g/ft、および約5g/ftの貴金属の負荷も例示される。別の実施形態では、本発明のアンモニア酸化触媒は、約0.02重量%〜約0.20重量%の貴金属、例えば白金を含有し得る。約0.02重量%〜約0.17重量%の貴金属含量も例示される。概して、貴金属は、当該技術分野における任意の既知の手段により、アンモニア酸化触媒上に組入れられ得る。例えば貴金属は、ゼオライト上に1つもしくは複数の貴金属の化合物および/または錯体を分散することにより、アンモニア酸化触媒上に組入れられ得る。本明細書中で用いる場合、「化合物」という用語は、焼成時に、または触媒の使用時に、分解するか、またはそうでなければ触媒的に活性な形態(これはしばしば酸化物であるが、しかし必ずそうであるわけではない)に転化する、触媒的に活性な化合物(または「触媒構成成分」)の任意の塩、錯体などを意味する。1つもしくは複数の貴金属触媒化合物の化合物または錯体は、支持体物質を湿潤するかまたは含浸する、触媒物質の他の構成成分と悪反応しない、そして加熱時および/または真空適用時に揮発または分解により触媒から除去され得る、任意の液体中に溶解され得るかまたは懸濁され得る。一般的には、経済的および環境的両局面から、可溶性化合物または錯体の水溶液が好ましい。例えば適切な水溶性白金群金属化合物は、クロロ白金酸、アミン可溶化白金水酸化物、ロジウム塩化物、ロジウム硝酸塩、ヘキサアンミンロジウム塩化物、パラジウム硝酸塩またはパラジウム塩化物などである。化合物含有液は、触媒のバルク支持体粒子の孔中に含浸され、含浸物質は乾燥され、好ましくは液体を除去するために焼成され、白金群金属を支持体物質に結合する。いくつかの場合、液体(例えば晶化の水として存在し得る)の除去の完了は、触媒が利用され、高温排出ガスに付されるまで起こり得ない。焼成工程中、または少なくとも触媒の使用の初期段階中、このような化合物は、貴金属またはその化合物の触媒的活性形態に転化される。
【0044】
別の実施形態では、1つもしくは複数の希土類金属が任意に付加されて、アンモニア酸化触媒を安定化し得る。1つもしくは複数の希土類金属、例えばセシウム(Ce)またはサマリウム(Sm)を用いてゼオライトを処理することは、触媒の水熱安定性を改良する、ということを本発明人等が見出した。理論に縛られずに考えると、わずかに酸性である希土類金属は、ゼオライトの骨組みからのアルミニウム酸化物の分割を生じ、このアルミニウム酸化物は次に、アルミニウム酸化物鎖として再結合され、これがゼオライトの骨組みに連結されるかまたはそれと会合される。希土類金属(例えば、セリウムまたはサマリウム)は、完全脱アルミニウム化ならびにゼオライトからのアルミニウム酸化物の除去を引き起こすほど酸性ではない。典型的には、希土類金属は、pH2〜4の希土類金属塩の水溶液を用いてゼオライトに付加されて、ゼオライト上の約0.25〜1重量%のレベルのランタニドを提供する。
【0045】
概して、本発明のアンモニウム酸化触媒を調製するために、任意の既知の方法が用いられ得る。例えば、本発明のゼオライト交換型触媒は、ゼオライトが金属塩浴中で、一定pHおよび温度で数時間、撹拌されるイオン交換法を用いて調製され得る。次に、その結果生じる物質はろ過され、乾燥され、焼成される。次に、粉末を粉砕することによりスラリーが調製され、その後、基板(例えば、ハニカム)上に被覆される。所望の金属負荷を達成するためのこの伝統的イオン交換法の使用を用いる多イオン交換段階が、必要とされ得る。
【0046】
別の実施形態では、本発明のアンモニア酸化触媒は、初期湿潤法により調製され得る。この方法を用いて、金属は、初期湿潤含浸を用いて組入れられる。当該方法は、如何なる過剰溶液も用いずにゼオライトにより吸着され得る最大量の金属塩溶液を用いて、ゼオライト物質、例えばY型ゼオライト粉末を含浸することを包含する。所望の金属負荷を達成するために、ゼオライト中への金属の含浸または交換のために用いられる溶液は、高い金属塩濃度および非常に低い含水量を、典型的には10重量%未満の総水量を有さなければならない。次に含浸ゼオライトは、基板上に被覆される前に、濾過され、洗浄され、焼成されて、スラリー化される。
【0047】
さらに別の実施形態では、本発明のアンモニア触媒は、スラリー法を用いて調製され得る。スラリー法は、本明細書中に上記されたアンモニア酸化触媒の調製のための一段階工程である。当該工程は、ゼオライト、金属硝酸塩、金属硫酸塩または金属塩化物(例えば、銅硝酸塩、銅硫酸塩または銅塩化物)の形態の卑金属錯体および水を含有するスラリーの形成を包含する。任意に、本明細書中に上記したような希土類イオンは、基板上にスラリーを被覆する前にスラリーに付加され得る。スラリーは、典型的には、少なくとも30分間ボールミル粉砕され、次に浸漬被覆により基板(例えば、ハニカム)上に沈着され得る。約30分から約10時間まで、または約1時間のボールミル粉砕も例示される。典型的には、スラリーは、少なくとも20重量%の総含水量を含有する。少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%または少なくとも60重量%の含水量も例示される。スラリー被覆基板は、使用前に乾燥され、焼成され得る(例えば、500〜550℃で2〜6時間)。この方法に従って、金属交換がスラリー段階で実行されて、当該技術分野で用いられる高価なイオン交換段階を回避させる。意外にも、スラリー法を用いて製造されるアンモニア酸化触媒は、伝統的イオン交換法または初期湿潤法により調製されるアンモニア酸化触媒より良好な活性および安定性を示す。さらに、スラリー法により調製されるアンモニア酸化触媒は、ゼオライト全体を通して金属のより均一な分布を示す。このスラリー法は、明らかに、本明細書中に開示されるようなアンモニア酸化触媒を調製するために用いられ得るが、一方、他の型の触媒の調製にこのスラリー法を用いることができることを当業者は認識する。例えば、本明細書中に開示されるスラリー法は、自動車の排気の低減のために基板上に支持される他の触媒、特にハニカム型基板上にウォッシュコートされるものを調製するために用いられ得る。
【0048】
典型的には、本発明のアンモニア酸化触媒は、基質上に適用される。基質は、排出ガス処理触媒を調製するために典型的に用いられる物質のいずれかであり、好ましくは、ハニカム構造を有するメタルセラミックまたは耐火セラミックを含む。任意の適切な基板、例えば、通路がそれを通る流体流を受け入れ易いよう、担体の入口面または出口面からそれを通って伸びる複数の微細な平行ガス流通路を有する種類の一体式基板が用いられ得る。それらの流体入口からそれらの流体出口まで本質的に真直ぐな経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒物質と接触するよう、アンモニア酸化触媒が「ウォッシュコート」として被覆される壁により限定される。一体式担体の流動通路は、任意の適切な横断形状およびサイズ、例えば台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、卵形、円形などのものであり得る。このような構造は、横断面1平方インチ当たり約60〜約600またはそれ以上のガス入り口開口(すなわち「セル」)を含有し得る。
【0049】
セラミック基板は、任意の適切な耐熱性物質、例えばコージライト、コージライト−αアルミナ、窒化ケイ素、ムライト・ジルコン、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ジルコンケイ酸塩、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、アルミナ、アルミノシリケートなどから製造され得る。
【0050】
本発明の一実施形態では、アンモニア酸化触媒に有用な基質は、好ましくは、事実上金属製であり、1つもしくは複数の金属または合金で構成され得る。金属製基質は、種々の形状、例えば波形シートまたは一体式形態で用いられ得る。好ましい金属製支持体は、耐熱性金属および合金、例えばチタンおよびステンレススチール、ならびに鉄が実質的または主要構成成分であるその他の合金を含む。このような合金は、ニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムのうちの1つまたは複数を含有し得るし、これらの金属の総量は、有益には、少なくとも15重量%の合金、例えば10〜25重量%のクロム、3〜8重量%のアルミニウムおよび20重量%までのニッケルを含み得る。合金は、少量または微量の1つまたは複数の他の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタンなども含有し得る。金属担体の表面は、高温で、例えば1000℃以上で酸化されて、担体の表面に酸化物層を形成することにより合金の耐蝕性を改良し得る。
【0051】
アンモニア酸化触媒は、微粒子、あるいはセラミックまたは金属構造、例えば上記のハニカム構造上のコーティングの形態であり得る。本発明の触媒は、粒状触媒の充填床として、あるいは造形片、例えばプレート、サドル、管などとして用いるための押出物、ペレット、錠剤または任意の他の適切な形状の粒子の形態でも提供され得る。
【0052】
基板上に触媒を沈着するための種々の沈着方法が当該技術分野で知られている。基板上に触媒を沈着するための方法としては、例えば、液体ビヒクル中の触媒を沈着してスラリーを形成すること、スラリー中に基板を浸漬することによりスラリーで基板を湿潤すること、基板上にスラリーを噴霧することなどが挙げられる。
【実施例1】
【0053】
51.25gの金属硫酸塩を81,89gの脱イオン水に付加し、硫酸銅が溶解するまで磁気撹拌器上で撹拌した。189.7gのDT51 TiOを徐々に銅溶液に付加した。溶液を150℃で一晩乾燥させて、400℃で2時間焼成した。150gの焼成粉末を225gの脱イオン水に付加し、ワーリング・ブレンダーを用いて1分間剪断した。スラリーを、1”×1”×6”コルジエライト・ハニカム型基質上に1.7g/inの標的負荷でウォッシュコートして、550℃で2時間焼成した。
【0054】
この手順を反復して、V、MnO、CuO、ZnOおよびMoOを含有するコルジエライト・ハニカム型基板を調製した。アンモニア転化および排気NOに関して、基板を試験した。結果を、図1に示す。
【実施例2】
【0055】
25gのCu酢酸塩・一水和物(FW=199.65)または29gのCu硝酸塩・2.5水和物(FW=232.59)を、室温で撹拌しながら、2リットルビーカー中の脱イオン水 1800ml中に溶解した。溶液が透明になったら、220gのゼオライトを徐々に付加した。ゼオライト、TiOまたはAl粉末を上記溶液に付加した。懸濁液を室温で一晩撹拌した。濾過により、固形粉末を液体から分離した。ケークを脱イオン水で3回(毎回水200ml)洗浄し、100℃で炉乾燥した。粉末を、空気中で5時間、500℃で焼成した。次に、焼成粉末をスラリーにして、コルジエライト・ハニカム型基板上に浸漬被覆した。
【0056】
種々の温度で、アンモニア転化および排気NOに関して、ハニカム型基板を試験した。結果を、図2および3に示す。
【実施例3】
【0057】
114.4gの脱イオン水および49.77gの硝酸銅(II)を、ワーリング・ブレンダーカップに付加し、硝酸銅が溶解するまで混合した。121.5gのY型ゼオライト粉末を、継続的に混合しながら徐々にブレンダーに付加した。次に、スラリーを、1”×1”×6”コルジエライト・ハニカム型基質上に1.7g/inの標的負荷でウォッシュコートして、550℃で2時間焼成した。375℃で150時間、次に450℃でさらに150時間でのエイジング中、排気アンモニアおよびNO、ならびにアンモニア転化に関して、被覆基板を試験した。結果を、図4に示す。
【実施例4】
【0058】
218.8gのゼオライトを156.2gの脱イオン水に付加し、30分間、ボールミル粉砕した。0.6gの白金「A」溶液を6.2gの脱イオン水に付加し、次に、ボールミル粉砕Y型ゼオライト溶液に付加して、20分間混合した。59.7gの硝酸銅を35.8gの脱イオン水に付加し、硝酸銅が溶解するまで混合した。次に、硝酸銅をY型ゼオライトおよび白金ボールミル粉砕溶液に付加し、20分間混合した。7.2gの酢酸および3.6gの脱イオン水を付加し、20分間混合した。18.5gのLudox AS 40および0.5gの2−オクタノールを付加した。混合物をボールミル粉砕して、1〜7ミクロンの粒子サイズを達成した。混合物を粉砕機から取り出して、スラリー含水率41%に調整した。スラリーを、1”×1”×6”コルジエライト・ハニカム型基板上に1.7g/inの標的負荷でウォッシュコートして、550℃で2時間焼成した。
【0059】
この手順を反復して、ZSM−5、モルデナイト、フェリエライト、USYおよびZD06022USYを含有するコルジエライト・ハニカム型基板を調製した。種々の温度でのアンモニア転化に関して、基板を試験した。結果を、図5に示す。
【実施例5】
【0060】
49.77gの硝酸銅(II)を、114.4gの脱イオン水とともにワーリング・ブレンダーカップに付加し、硝酸銅が溶解するまで混合した。121.5gのCBV500型ゼオライト粉末を、混合しながら徐々にブレンダーに付加した。次に、スラリーを、1”×1”×6”コルジエライト・ハニカム型基板上に1.7g/inの標的負荷で被覆して、550℃で2時間焼成した。最終ウォッシュコートは、ゼオライトに対応して13.6重量%のCuを含有した。ウォッシュコートを剥がし取り、昇温還元法(TPR)により分析して、その結果生じるCu金属化合物種を確定した。
【0061】
適量の硝酸銅(II)および水を用いて当該手順を反復して、ゼオライトに対して6重量%、10重量%、16重量%および20重量%のCuを含有するウォッシュコートしたハニカムを得た。ウォッシュコートを剥がし取り、昇温還元法(TPR)により分析して、その結果生じるCu金属化合物種を確定した。
【0062】
図6のピーク224および312により示されているように、6重量%および10重量%で、Cuを銅イオン(Cu2+)としてゼオライト中に交換により導入した。図6でピーク287により示されるように、13.6重量%および16重量%で、Cuは金属−酸素錯体(多数の金属および酸素原子を含む(例えば、O−Cu−O−Cu−O−Cu−O))として存在した。そして図6のピーク259により示されるように、20重量%ではCuは酸化銅(CuO)として存在した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的接触還元(SCR)系を装備した固定燃焼源により発生される煙道ガス流を処理するための、ならびに未反応アンモニアを窒素に選択的に酸化するための方法であって、以下の:
(a)前記未反応アンモニアを含有する前記煙道ガス流を酸化剤の存在下でアンモニア酸化触媒と接触させるステップ(ここで、前記アンモニア酸化触媒はゼオライト、貴金属および卑金属化合物を含む);ならびに
(b)それにより前記未反応アンモニアを窒素に酸化するステップ
を包含する方法。
【請求項2】
前記アンモニア酸化触媒が、前記選択的接触還元系から下流に置かれる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アンモニア酸化触媒が、前記選択的接触還元系に付加される請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記貴金属が、白金、パラジウム、ロジウムおよび金からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記貴金属が白金である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記貴金属負荷が約0.1 g/ftから約100 g/ftまでである請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記貴金属含量が、前記ゼオライトの総重量の約0.02重量%〜約0.20重量%である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記卑金属化合物が、前記ゼオライトの総重量の約2重量%〜約20重量%である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記卑金属化合物が、銅、バナジウム、マンガン、亜鉛、ジルコニウムおよびモリブデン金属化合物からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ゼオライトが、モルデナイト、フェリエライト、Y型ゼオライト、ZSM−5およびベータ・ゼオライトからなる群から選択される請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−540230(P2010−540230A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527132(P2010−527132)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077632
【国際公開番号】WO2009/045833
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(507276151)ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー (47)
【氏名又は名称原語表記】BASF Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, NJ 07932, USA
【Fターム(参考)】