説明

電力系統安定化装置

【課題】直流エネルギー貯蔵装置の充電率制御を行うことで、放電末、満充電になりづらくし、有限な電池容量を効果的に使用することができ、より効果的に有効電力の変動を抑えることができる電力系統安定化装置を得る。
【解決手段】風力発電機5の有効電力の発電量及び蓄電池1の満充電時及び放電末時における電池制御信号を入力し、上位盤からの電力指令値と5の発電量の差分から有効電力の差分を求め、その差分を抑制するため、交直変換装置2の出力指令を演算出力する出力指令値演算回路121と、1の充電率と充電率目標値の偏差に基づき交直変換装置2を構成している電力用半導体のゲート信号に対して補正を与えるための出力補正値を出力する充電率制御回路123と、121で演算した出力指令値と123からの出力補正値を加算して2に対する出力指令値を、ゲート制御回路126に与える加算回路124を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電池等の直流エネルギー貯蔵装置の直流電力を、交直電力変換装置により交流電力に変換して交流電力系統に供給すること、又は交流電力を交直電力変換装置により直流電力に変換して直流エネルギー貯蔵装置に蓄えることにより、前記交流電力系統において発生する有効電力の変動を抑制する電力系統安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の電力系統安定化装置の一例として特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、電力系統安定化装置における直流エネルギー貯蔵装置の電気量の充電状態であるSOCを一定範囲内に収めるように交直電力変換装置を制御方法が記載されている。そして、その具体例として鉛電池の充電量と放電量等から鉛電池のSOCを検出し、この検出したSOCに応じて鉛電池の放電と充電を決定するしきい値にオフセットを加えるようにしたものである。
【0003】
このように構成することにより、電力系統に流れ込む有効電力を一定に保ちながら、直流エネルギー貯蔵装置のSOCを、鉛電池を過充電によって損傷させず、かつ過放電によって寿命を低下させない一定範囲内で、一定に保つことができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明だけでは必ずしも十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2001−157364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1の発明は、電池容量までは電力変動を抑えこむことはできるが、満充電、もしくは放電末にて制御ができない状態となり、電力変動抑制ができなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、直流エネルギー貯蔵装置の充電率制御を行わない場合と比較し、より効果的に有効電力の変動を抑えることができ、結果的に交流電力系統の変動を抑制できる電力系統安定化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、直流エネルギー貯蔵装置の直流電力を、交直変換装置により交流電力に変換して交流電力系統に供給すること、又は交流電力を交直電力変換装置により直流電力に変換して直流エネルギー貯蔵装置に蓄えることにより、前記交流電力系統において発生する有効電力の変動を抑制する電力系統安定化装置において、前記直流エネルギー貯蔵装置の充電率が充電率目標値になるように制御するものであって、前記交直変換装置を構成している電力用半導体に与えるゲート信号を補正する前記交直変換装置の制御装置を具備した電力系統安定化装置である。
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、直流エネルギー貯蔵装置の直流電力を、交直変換装置により交流電力に変換して交流電力系統に供給すること、又は交流電力を交直電力変換装置により直流電力に変換して直流エネルギー貯蔵装置に蓄えることにより、前記交流電力系統において発生する有効電力の変動を抑制する電力系統安定化装置において、前記交直変換装置を構成している電力用半導体のゲート信号を出力するゲート制御回路と、前記直流エネルギー貯蔵装置の充電率と充電率目標値の偏差に基づき前記ゲート制御回路の出力であるゲート信号に対して補正を与えるための出力補正値を出力する充電率制御回路と、前記直流エネルギー貯蔵装置の満充電時及び放電末時において前記交流電力系統に発生する有効電力の変動を抑制するための前記交直変換装置に対する出力指令値を演算出力する出力指令値演算回路と、前記出力指令値演算回路で演算した出力指令値と、前記充電率制御回路からの出力補正値に基づき前記交直変換装置に対する出力指令値を、前記ゲート制御回路に与えて前記ゲート制御回路からのゲート信号出力を補正する補正回路とを具備した電力系統安定化装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、直流エネルギー貯蔵装置を併設した電力安定化装置において、前記直流エネルギー貯蔵装置の充電率を制御する制御手段を設けることで、有限なエネルギー貯蔵装置の容量を効果的に使用し、有効電力変動をより効果的に抑えることができる電力系統安定化装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電力系統安定化装置の実施形態の概略構成を示す図。
【図2】図1の要部を説明するためのブロック図。
【図3】図2の充電率制御回路の第1の例を説明するための図。
【図4】図2の充電率制御回路の充電率目標値を50%にしたときの波形図。
【図5】本発明の作用効果を説明するための風力発電機の出力変動と、交流電力系統の有効電力の変動波形を示す図。
【図6】図2の充電率制御回路の第2の例を説明するための図。
【図7】図2の充電率制御回路の第3の例を説明するための図。
【図8】図2の充電率制御回路の第4の例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は図1に示すように、従来の電力系統安定化装置に、交直変換装置の制御装置12を具備したことを特徴としている。従来の電力系統安定化装置の第1の例として、直流エネルギー貯蔵装置例えば蓄電池1の直流電力を、交直変換装置(パワーコンディショナPCSとも言う)2により交流電力に変換し、これを昇圧変圧器4で昇圧して交流電力系統3に供給し、また交流電力系統3には自然エネルギを利用した発電機例えば風力発電機5(電力変動源の一例)の出力である交流電力を変圧器6を介して交流電力系統3に供給し、さらに交流電力系統3には、昇圧変圧器7を介して上位の交流電力系統8が接続されている。
【0013】
また、従来の電力系統安定化装置の第2の例として、前述の第1の例とは逆で例えば交流発電設備(図示せず)からの交流電力を交直電力変換装置により直流電力に変換して直流エネルギー貯蔵装置に蓄えるようにしたものである。
【0014】
このような構成において、風力発電機5又は交流発電設備は交流電力系統3における有効電力の変動要素であるが、蓄電池1の直流電力を、交直変換装置2により交流電力に変換して交流電力系統3に供給もしくは吸収することにより、前記有効電力の変動要素の影響を抑制することができる。
【0015】
本発明の交直変換装置の制御装置12は、蓄電池1の充電率が充電率目標値例えば50%
になるように制御するものであって、交直変換装置2を構成している電力用半導体(図示せず)に与えるゲート信号を補正するものである。
【0016】
制御装置12の入力側には、風力発電機5の発電量を検出するための例えば計器用変圧器(PT)9により発電機電圧及び計器用変流器(CT)10により発電機電流が検出され、これらは図2の発電量検出回路122に入力され、ここで風力発電機5の発電量が検出される。また制御装置12の入力側には、交流電力系統3の交流電圧を検出する計器用変圧器11が設けられている。さらに、制御装置12の入力側には、蓄電池1の充電率検出器(図示せず)で検出した充電率(SOC)及び蓄電池制御信号として満充電信号及び放電末信号が入力されている。さらにまた、制御装置12の入力側には、例えば上位盤13からの電力指令値が入力されている。
【0017】
図2は、制御装置12を説明するためのブロック図であり、これは以下に述べる出力指令値演算回路121と、発電量検出回路122と、充電率制御回路123と、加算回路124と、PLL(Phase Locked Loop) 回路125と、ゲート制御回路126を備えている。
【0018】
ゲート制御回路126は前記交直変換装置2を構成している電力用半導体のゲート信号を出力するもので、前述の計器用変圧器11によって検出された交流電力系統3の系統電圧を、PLL(Phase Locked Loop)回路125に入力して位相基準を求め、この位相基準と、後述するパワーコンディショナ出力指令値により演算する基づきゲート信号を出力する。
【0019】
発電量検出回路122は、前記計器用変圧器9により検出した発電機電圧及び前記計器用変流器10に検出した発電機電流に基づき風力発電機5の有効電力の変動量を検出する。
【0020】
出力指令値演算回路121は交流電力系統3に発生する有効電力の変動、具体的には前記発電量検出回路122で検出した風力発電機5の有効電力の変動量及び前記蓄電池1の満充電時及び放電末時における電池制御信号を入力し、交流電力系統3に発生する有効電力の変動量を求め、その有効電力の変動量を抑制するため、前記交直変換装置2によって、パワーコンディショナの出力量を演算する。
【0021】
充電率制御回路123は、蓄電池1の充電率と充電率目標値の偏差に基づきゲート制御回路126の出力であるゲート信号に対して補正を与えるための出力補正値を出力する。
【0022】
加算回路124は、前記出力指令値演算回路121で演算した出力指令値と、前記充電率制御回路123からの出力補正値を加算して前記交直変換装置2に対する出力指令値を、前記ゲート制御回路126に与える。
【0023】
ゲート制御回路126は、PLL回路125からの位相基準と前記出力指令値演算回路121からの前記交直変換装置2に対する出力指令値からゲート信号出力を、前記交直変換装置2を構成する電力用半導体のゲートに与える。
【0024】
図3は、充電率制御回路123を説明するための図で、内部には比較回路1231を備え、比較回路1231に有する入力端子の一方(−端子)には、蓄電池1の充電率を検出する蓄電池充電率検出回路(図示せず)の検出値SOCを入力させ、また比較回路1231に有する入力端子の他方(+端子)には、図示しない充電率目標値を50%に設定可能な設定器の出力端子が接続され、比較回路1231の出力端子から出力補正値が出力される。
【0025】
以上述べたように本発明の実施形態によれば、蓄電池1の充電率を制御することにより、交流電力系統3に発生する有効電力の変動を、前述した特許文献1のように蓄電池1の充電率制御を行わない場合に比較して有効電力の変動を効果的に抑制できる。放電末、満充電になりづらくし、有限な電池容量を効果的に使用することができる。図5に示すように風力発電機5の有効電力に変動が生じても交流電力系統3に発生する有効電力の変動を、抑制できる。
【0026】
特に、風力発電機のように自然エネルギを利用した発電機における有効電力変動は予測しがたいため、有効電力変動の対策を行わない場合には蓄電池1の容量までは有効電力変動が抑制できたとしても、蓄電池1が満充電状態、もしくは放電末状態となるまで運転を継続すると、有効電力変動が抑制できない。
【0027】
また、蓄電池1の充電率目標値を50%に設定したことにより、図4に示すように蓄電池1は充電動作及び放電動作のいずれにも動作することができる。
【0028】
図6は本発明の第2の実施形態の充電率制御回路123Aのみを示すものである。充電率制御回路123Aは、比較回路1231とゲイン設定器1232を備え、比較器1231により充電率目標値及び蓄電池1の現在の充電率との偏差を求め、ゲイン設定器1232で前記偏差に対してゲインを設定可能とし、ゲイン設定器1232で設定したゲインを、交直変換装置2の出力に反映させるようにしたものである。
【0029】
図7は本発明の第3の実施形態の充電率制御回路123Bのみを示すものである。充電率制御回路123Bは、充電率目標値及び蓄電池1の現在の充電率の偏差を求め、この偏差がしきい値設定器1236で設定したしきい値以上なったとき、第2のゲイン設定器1234から第1のゲイン設定器1233に切換可能に構成したものである。なお、1235は絶対値回路、1237は比較器である。
【0030】
図8は本発明の第4の実施形態の充電率制御回路123Cのみを示すものである。充電率制御回路123Cは、充電率目標値設定回路1240に未来の有効電力の変動量を予測するパラメータを使用し、前記比較回路1231の入力端子の一つである充電率目標値に反映させるようにしたものである。具体的には、将来発電量が増える方向であれば、充電率目標値設定回路1240の充電率を下げる方向に、また将来発電量が減る方向であれば、充電率目標値設定回路1240の充電率を上げる方向に反映させるようにしたものである。
【0031】
本発明の第5の実施形態として、気象例えば遠方の風速の変化から有効電力の変動量を予測し、この予測に基づき前記充電率制御回路の充電率目標値を補正するようにしたものである。
【0032】
本発明の第6の実施形態として、図示しない遅延回路を前記充電率制御回路123、123A、123B、123Cの入力側及び出力側のいずれか、或いは前記入力側及び出力側の中間部位に設けたり、前記ゲイン設定器の代りに比例積分回路を設けようにしたものである。
【符号の説明】
【0033】
1…蓄電池、2…交直変換装置、3…交流電力系統、4…昇圧変圧器、5…風力発電機、6…変圧器、7…降圧変圧器、8…上位の交流電力系統、9…計器用変圧器、10…計器用変流器、11…計器用変圧器、12…交直変換装置の制御装置、121…出力指令値演算回路、122…発電量検出回路、123…充電率制御回路、123A…充電率制御回路、123B…充電率制御回路、123C…充電率制御回路、124…加算回路、125…PLL回路、126…ゲート制御回路、1231…比較回路、1232…ゲイン設定器、1233…第1のゲイン設定器、1234…第2のゲイン設定器、1236…しきい値設定器、1240…充電率目標値設定回路、13…上位盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流エネルギー貯蔵装置の直流電力を、交直変換装置により交流電力に変換して交流電力系統に供給すること、又は交流電力を交直電力変換装置により直流電力に変換して直流エネルギー貯蔵装置に蓄えることにより、前記交流電力系統において発生する有効電力の変動を抑制する電力系統安定化装置において、
前記直流エネルギー貯蔵装置の充電率が充電率目標値になるように制御するものであって、前記交直変換装置を構成している電力用半導体に与えるゲート信号を補正する前記交直変換装置の制御装置を具備したことを特徴とする電力系統安定化装置。
【請求項2】
直流エネルギー貯蔵装置の直流電力を、交直変換装置により交流電力に変換して交流電力系統に供給すること、又は交流電力を交直電力変換装置により直流電力に変換して直流エネルギー貯蔵装置に蓄えることにより、前記交流電力系統において発生する有効電力の変動を抑制する電力系統安定化装置において、
前記交直変換装置を構成している電力用半導体のゲート信号を出力するゲート制御回路と、
前記直流エネルギー貯蔵装置の充電率と充電率目標値の偏差に基づき前記ゲート制御回路の出力であるゲート信号に対して補正を与えるための出力補正値を出力する充電率制御回路と、
前記直流エネルギー貯蔵装置の満充電時及び放電末時において前記交流電力系統に発生する有効電力の変動を抑制するための前記交直変換装置に対する出力指令値を演算出力する出力指令値演算回路と、
前記出力指令値演算回路で演算した出力指令値と、前記充電率制御回路からの出力補正値に基づき前記交直変換装置に対する出力指令値を、前記ゲート制御回路に与えて前記ゲート制御回路からのゲート信号出力を補正する補正回路と、
を具備したことを特徴とする電力系統安定化装置。
【請求項3】
前記充電率目標値を50%としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力系統安定化装置。
【請求項4】
前記充電率制御回路は、前記充電率目標値及び前記直流エネルギー貯蔵装置の実際の充電率との偏差を求め、この偏差を前記交直変換装置の出力に反映させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電力系統安定化装置。
【請求項5】
前記充電率制御回路は、充電率目標値及び前記直流エネルギー貯蔵装置の現在の充電率との偏差を求め、前記偏差に対してゲインを設定可能とし、これで設定したゲインを、前記交直変換装置の出力に反映させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電力系統安定化装置。
【請求項6】
前記充電率制御回路は、充電率目標値及び前記直流エネルギー貯蔵装置の現在の充電率の偏差を求め、前記偏差がしきい値以上なったとき、前記充電率の偏差のゲインを切換可能に構成したことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載の電力系統安定化装置。
【請求項7】
未来の有効電力の変動量を予測するパラメータを使用し、前記充電率制御回路の充電率目標値に反映させるようにしたことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の電力系統安定化装置。
【請求項8】
気象の変化から有効電力の変動量を予測し、この予測に基づき前記充電率制御回路の充電率目標値を補正するようにしたことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の電力系統安定化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−100487(P2012−100487A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247734(P2010−247734)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】