電力線上でのノイズおよび過電流の評価
本明細書は、電力線でノイズおよび過電流に関係するパラメータを評価する手法を開示する。これらの手法は特に、部分放電の特性を明らかにすること、また、ノイズまたは過電流の出所を特定することに適している。
【発明の詳細な説明】
【著作権通告】
【0001】
本特許文書の開示の一部は著作権保護の対象となる材料を含んでいる。著作権所有者は本特許文書または特許開示の複製に異議を唱えないが、一切の著作権を留保する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、配電用電力線に関し、より具体的には、ノイズまたは過電流の出所を特定することを目的とする電力線上でのノイズおよび過電流の評価に関する。
【背景技術】
【0003】
本節に記述されたアプローチは追究し得るアプローチであって、必ずしも以前に着想または追究されたアプローチではない。したがって、別段の断りがない限り、本節に記述されたアプローチは、本願の請求項に対する先行技術ではなく、本節に含まれることにより先行技術と認められない。
【0004】
部分放電(Partial discharge,PD)は、経年劣化、物理的損傷、または非常に高い電場への曝露(exposure)等により損傷を被った電力ケーブルの絶縁体で生じる現象である。PDは、ケーブル、コネクタ、避雷器、および他の高電圧装置を害する。不完全なオーバーヘッドインシュレータ(overhead insulator)も周波数と位相特性がPDに似たノイズの発生を許すことがある。PDは持続期間がナノ秒以下の短いパルスを発生させる。PDパルスはAC電圧の特定位相で発生する傾向があり、また電力周波数か電力周波数の二倍と概ね同期する傾向がある。PDはライン同期ノイズまたはライントリガノイズ(line−triggered noise)として知られるノイズの一種である。PDパルスは、1キロヘルツ〜数百メガヘルツ範囲を通常含む連続広帯域スペクトルを有する。
【0005】
米国特許7,532,012は、PDパルスを捕捉する手法を説明しているほか、PDパルス等のライン周波数同期現象に関係する波形と、ライン周波数を有さない「イングレス(ingress)」と呼ばれる外部干渉とを区別するために波形を評価するパラメータを説明している。PD由来として区別される波形の場合は、これらのパラメータはPDの強度を定量化するのにも役立つ。
【0006】
劣化ケーブルは、アークやそれ自体をクリアする一時的短絡から、非常に短い高電流パルスを被ることもある。劣化ケーブルを識別することが望まれる。より具体的には、劣化ケーブルが完全に故障する前に具体的な位置を特定することが望まれる。
【0007】
本明細書は、PDおよび過電流を区別および定量化し、PDまたは過電流の出所を特定する手法を開示する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書は、電力線でノイズおよび過電流に関係するパラメータを評価する手法を開示する。これらの手法は特に、部分放電(PD)の特性を明らかにすること、またノイズまたは過電流の出所を特定することに適している。
【0009】
手法のひとつは、(a)電気ケーブルで感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(b)前記電気ケーブルで前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断することと、(c)前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(d)前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断することと、を含む方法である。
【0010】
もうひとつの手法は、(a)電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブル上で感知されるPD複数パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定することと、(b)前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出(yielding)することと、(c)前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和(PD sum)を産出することと、を含む。
【0011】
もうひとつの手法は、(a)電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定することと、(b)前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定することと、(c)前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断することと、を含む方法である。
【0012】
本明細書はまた、これらの方法を遂行するシステムと、これらの方法を遂行するためプロセッサを制御する命令を収容する記憶媒体と、を開示する。
【0013】
加えて、システムが提供され、該システムは、
(i)閉じられたときに電力線からノイズを通過させ、且つ開いているときに前記ノイズを通過させない、スイッチと、
(ii)前記スイッチの下流に位置し、増幅出力を生成する、増幅器と、
(iii)チャネルであって、
(a)特定の周波数帯域内にある前記増幅出力のスペクトル成分を通過させることにより、フィルタ済み出力を産出するフィルタと、
(b)前記フィルタ済み出力の値を複数の時間に検出することにより、一連の値を産出する検出器と、を有する、チャネルと、
(iv)プロセッサであって、
(a)前記スイッチが開いているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第1の基線値(baseline value)を得、
(b)前記スイッチが閉じているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第2の基線値を得、且つ
(c)前記第2の基線値と前記第1の基線値との差を判断することにより、増幅器ノイズを上回る電力線ノイズの余剰分を表す余剰値を産出する、プロセッサと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は配電システムの一部分の図であり、同システムには、ケーブル上に部分放電(PD)を検出するための部品が配置されている。
【図2】図2はPD検出器のブロック図である。
【図3】図3は配電システムの一部分の図であり、同システムは、配電システム内の複数の位置でPDを検出するよう構成されたPD検出器と結合器とからなるネットワークを含む。
【図4】図4は、PD検出器の単一チャネルにおける電力周波数信号の単一サイクルのバックグラウンドノイズのグラフである。
【図5A】図5AはPD検出器の1チャネルの出力における信号のグラフであり、同信号は単一のPDパルスを含む。
【図5B】図5Bは図5Aと同じ信号のグラフであり、データ点は閾を超えている。
【図6A】図6Aは、PD検出器の1チャネルで捕捉された2つのPDパルスの記録のグラフである。
【図6B】図6Bは、PD検出器の別のチャネルで捕捉された図6Aと同じ2つのPDパルスの記録である。
【図7】図7はサンプリングされた信号のグラフであり、それぞれのサンプルは、単一電力周波数サイクルでPD検出器の単一チャネルにおいて個々のタイムビンに、例えば4度の位相に、相当する。
【図8】図8はPD検出器でマックスホールドモードとシングルサイクルモードとの切り替えを制御するステートマシン(state machine)の状態図である。
【図9】図9はピーク電流記録器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
複数の図面に共通する部品または機能は、それぞれの図面で同じ参照番号で示されている。
【0016】
電力線通信システムにおいて、電力周波数は通常は50−60ヘルツ(Hz)の範囲内であり、データ通信信号周波数は約1メガヘルツ(MHz)を上回り、通常は1MHz−50MHzの範囲内である。電力線通信のためのデータ結合器は、電力線とモデム等の通信装置との間でデータ通信信号を結合する。
【0017】
誘導結合器はこのようなデータ結合器の一例である。誘導結合器は、芯と、芯の一部分を取り巻く巻線と、を含む。芯は磁性材料で作られ、開口部を含む。誘導結合器は変圧器として働き、電力線上に配置される。電力線は開口部の中に通され、変圧器の一次巻線として機能し、誘導結合器の巻線は変圧器の二次巻線として機能する。データ通信信号は芯を介して電力線と二次巻線との間で結合される。二次巻線は通信装置へ結合される。
【0018】
誘導結合器のさらなる用途においては、相導体または中性導体のまわりに誘導結合器を置き、部分放電(PD)によって生じる高周波エネルギーを感知する。ケーブルおよび絶縁体状態の連続感知やデータ通信を含む機能の組み合わせによって達成される相乗効果はとりわけ有利である。
【0019】
容量結合器もPD感知と通信に利用される。ただし高電圧キャパシタでは、ケーブルまたは絶縁体PDとの区別が困難な内部PDが発生しやすい。このため、容量結合器もPD感知に利用されるが、この用途には誘導結合器のほうが適している。
【0020】
図1は配電システム100の一部分の図であり、同システムには、ケーブル上にPDを検出するための部品が配置されている。システム100は、中電圧地下ケーブル、すなわちケーブル105と、配電変圧器101と、接地棒118と、誘導結合器すなわち結合器120と、PD検出器130と、を含む。
【0021】
結合器120は磁芯(図示せず)を含み、磁芯の中には開口部(図示せず)がある。結合器120は変圧器として働き、ケーブル105上に配置される。ケーブル105は開口部の中に通され、結合器120の一次巻線として機能する。結合器120はまた、ケーブル125を経由しPD検出器130へ至るリードを有する二次巻線を含む。ケーブル105は同心中性導体110を有し、同心中性導体110は編組線112としてより合わされ、開口部の中に通され、接地棒118へ至る。
【0022】
開口部の中に編組線112を通すことにより、結合器二次側への中性電流誘導はキャンセルされる。その結果、結合器120は、電力周波数電流とPDおよびイングレスによる電流とを含む電流を、ケーブル105の相導体で感知する。感知された電流は結合器120の二次巻線で入手可能であるため、ケーブル125経由で信号として提示される。
【0023】
ケーブル105における結合器120の代替配置では、またはマルチフェーズ電力ケーブルのようにケーブル105が同心中性導体110を含まない場合は、結合器120は相線の絶縁体106上に直接置かれる。この場合は、望ましくは、相導体の絶縁が故障したときに故障電流をグラウンドへ送ることができる堅牢な接地導電シールドの中に結合器120が包まれる。あるいは、編組線112上に結合器120を配置する。
【0024】
配電変圧器101はエルボコネクタ(elbow connector)107経由でケーブル105により給電される。配電変圧器101は、接地棒118へ接続された中性導体115と、二次端子140と、を有する。配電変圧器101は二次端子140から電力周波数の低電圧を提供する。ケーブル105上の電圧(および電流)の位相と二次端子140上の低電圧の位相との間には、概ね一定の位相関係がある。この位相関係は配電変圧器101の負荷変動によって若干変化することがある。
【0025】
PD検出器130は、結合器120からケーブル125経由で感知電流を受け取り、二次端子140からケーブル145経由で電力周波数の低電圧を受け取る。電力周波数の低電圧は、PD検出器130に位相基準を提供する。PD検出器130はケーブル105でPDを検出するため結合器120からの感知電流を処理し、出力135を提供する。出力135は通信リンク(図1に図示せず)へ接続され、PD監視データストリームは遠隔監視装置(図1に図示せず)へ到達する。
【0026】
結合器120は電力線通信データ結合器としても機能する。つまり、ケーブル125はモデム等の通信装置(図1に図示せず)へも配線され、結合器120はケーブル105と通信装置との間でデータ通信信号を結合するため使用される。
【0027】
図2はPD検出器130のブロック図である。PD検出器130は、スイッチ205と、ピーク電流記録器211と、増幅器210と、マイクロコントローラ240と、トリガ回路270と、5つのチャネルに、具体的にはCH1、CH2、CH3、CH4、およびCH5に、編成された一群の部品と、を含む。マイクロコントローラ240はマルチプレクサ245と、アナログ・デジタル変換器(A/D)265と、プロセッサ250と、メモリ255と、を含む。
【0028】
プロセッサ250は、命令に応答し、且つ命令を実行する、論理回路からなる。
【0029】
メモリ255は、コンピュータプログラムにより符号化されるコンピュータ可読媒体である。プロセッサ250の動作を制御するため、メモリ255に記憶されたデータと命令はプロセッサ250によって読み取られ、実行される。メモリ255はランダムアクセスメモリ(RAM)として、ハードドライブとして、読み取り専用メモリ(ROM)として、またはこれらの組み合わせとして、実装される。プログラムモジュール260はメモリ255の1コンポーネントである。
【0030】
プログラムモジュール260は命令を収容し、この命令がプロセッサ250によって読み取られると、プロセッサ250はPD検出器130によって採用された方法の操作を遂行する。ここで用いる用語「モジュール」は、単独コンポーネントとして、または複数の従属コンポーネントからなる一体構成として、具現される機能的操作を意味する。したがってプログラムモジュール260は、単一のモジュールとして、または互いに協働する複数のモジュールとして、実装される。さらに、ここではメモリ255にインストールされソフトウェアとして実装されたプログラムモジュール260を説明するが、ハードウェア(例えば電子回路)として、ファームウェアとして、ソフトウェアとして、またはこれらの組み合わせとして、プログラムモジュール260を実装することもできる。
【0031】
プログラムモジュール260は予めメモリ255に読み込まれたものとして表示されているが、記憶媒体275にてプログラムモジュール260を構成し、後ほどメモリ255に読み込むこともできる。記憶媒体275もまたコンピュータプログラムにより符号化されるコンピュータ可読媒体であり、プログラムモジュール260を実体的な形式で記憶する従来の非一時的記憶媒体であってよい。記憶媒体275は、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、磁気テープ、読み取り専用メモリ、光学式記憶媒体、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ、デジタル多用途ディスク、ジップドライブ等の媒体で実装できる。あるいはランダムアクセスメモリとして、または遠隔記憶システム(図示せず)に配置されネットワーク(図示せず)を介してメモリ255へ結合される電子記憶装置として、記憶媒体275を実装することもできる。
【0032】
CH1は、バンドパスフィルタ215Aと、対数(ログ)検出器220Aと、ピーク検出器225Aと、サンプル・アンド・ホールド(S/H)230Aと、からなる。チャネルCH2〜CH5は、バンドパスフィルタ215B−215E、ログ検出器220B−220E、ピーク検出器225B−225E、およびS/H 230B−230EによりCH1と同様に構成される。好適な実装において、バンドパスフィルタ215A−Eは表面音波(SAW)フィルタである。
【0033】
スイッチ205は開いている状態で図示されているが、閉じられると、ケーブル125(図1参照)からの信号206を増幅器210へ結合する。信号206は、電力周波数電流と、結合器120により感知されるPDおよびイングレスによる電流と、を含む。増幅器210は信号206を増幅し、信号212を出力する。したがって、信号212は信号206を増幅したものである。信号はチャネルCH1〜CH5の各々へ配信される。
【0034】
それぞれのバンドパスフィルタ215A−215Eは異なる中心周波数に調整され、広帯域幅(例えば1MHz)を有する。このため、チャネルCH1〜CH5は、それぞれ異なる周波数帯で結合器120からの信号を「リスン(listen)」する。1つ以上のバンドパスフィルタ(例えば215A)は低中心周波数を有するため、ケーブル105でPDは著しく減衰しないが、他のバンドパスフィルタ(例えば215E)は高中心周波数を有するため、単位距離当たりの減衰は著しい。バンドパスフィルタ215A−215Eの周波数帯は、望ましくはラジオ放送等の既知イングレス源の周波数を回避するよう選ばれる。
【0035】
チャネルCH1について検討する。バンドパスフィルタ215Aは信号212を受信し、バンドパスフィルタ215Aの通過帯域内にある信号212の周波数を通過させ、信号217Aを産出する。ログ検出器220Aは信号271Aを受信し、信号222Aにより示された対数表現に変換する。ピーク検出器225Aは信号222Aを受信し、これのピーク値を検出し、信号227Aを産出する。S/H 230Aは信号227Aのピーク値をサンプリングし、保持し、信号235Aを産出する。
【0036】
PD源はPD検出器130に近接し、強い信号を生成する場合がある。あるいはPD源は結合器120から離れていて、弱いPD信号を生成し、これがケーブル105上に伝播するにつれ大幅に減衰する場合もある。したがって、PD信号の大きさは広いダイナミックレンジにまたがる。このため、信号206、212、および217Aもまた広いダイナミックレンジにおよぶ。ログ検出器220Aは広いダイナミックレンジを有する信号217Aを処理できる。ただしここで説明するパラメータは、計算上の便宜のため、振幅の対数表現ではなく線形表現から、あるいは振幅圧縮を提供する他の何らかの非対数機能から、計算することもできる。
【0037】
チャネルCH2〜CH5はチャネルCH1と同様に動作し、信号253B−235Eをそれぞれ産出する。
【0038】
トリガ回路270は、信号269として示された電力周波数の低電圧をケーブル145経由で受信し、電力線同期信号272を生成する。あるいは信号269を受信する代わりに、トリガ回路270は信号212を受信し、信号212から電力周波数成分を抽出することもできる。ただし、電力線同期信号272は電力周波数のサイクル当たり1パルスとして、例えば60Hzサイクル当たり1パルスとして、あるいは50Hzサイクル当たり1パルスとして、現れる。
【0039】
マイクロコントローラ240は、信号235A−235Eと、電力線同期信号272と、を受信する。信号235A−235Eはマルチプレクサ245へ入力され、マルチプレクサ245の出力からA/D 265へ選択的に配信される。A/D 265は信号235A−235Eをデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号はメモリ255へ配信される。マルチプレクサ245の動作と信号235A−235Eの選択および配信は後ほど詳述する。
【0040】
マイクロコントローラ240は制御線242を通じてスイッチ205を制御するほか、S/H 235A−235Eを制御する。信号235A−235Eはアナログ信号である。S/H 235A−235Eの目的は、信号235A−235Eのアナログ値を短時間にわたり安定に保つことである。これにより、信号235A−235Eをマルチプレクサ245に通し、A/D 265により規則的にデジタルデータに変換することができる。
【0041】
信号235Aについて検討する。信号235Aのサンプル配列からなるデータはA/D 265によってデジタル化される。例えば、配列は90個の値からなると仮定する。それぞれの値は4度の位相区間に相当し、全部で360度の1電力周波数サイクル、すなわち360度/4度=90度となる。この場合、タイムビンと呼ばれる各区間は、60Hzの電力周波数の場合に1/60/90秒、すなわち185.19マイクロ秒の持続期間を有し、50Hzの電力周波数の場合に222.22μsの持続期間を有する。このタイミングはマイクロコントローラ240のタイマー(図示せず)により電力線同期信号272から導き出される。信号235Aのサンプル配列の最初は、信号269すなわち電力周波数の低電圧の正のゼロ交差(positive-going zero-crossing)の後に起こる信号272におけるロジック遷移によってトリガされる。それぞれのデータサンプルは、それぞれのタイムビンの中で、信号217Aすなわちバンドパスフィルタ215Aの出力の、振幅のピーク値の対数に比例する。90個の値はメモリ255へ配信される。したがって、マイクロコントローラ240は1回の電力周波数サイクルでチャネルCH1から90個の値を取得する。
【0042】
マイクロコントローラ240、より具体的にはプロセッサ250は、プログラムモジュール260に従ってS/H 230A−230Eを制御し、マルチプレクサ245はチャネルCH1〜CH5の各々につき90個の値を取得し、PDパルスの特性を明らかにするため値を評価し、評価の結果を出力135経由で提供する。マイクロコントローラ240は単一の電力周波数サイクルで値を取得する。あるいは後述する特定の状況下では複数の電力周波数サイクルで値を取得する。
【0043】
図3は、配電システムすなわちシステム300の一部分の図であり、同システムは、システム300内の複数の位置でPDを検出するよう構成されたPD検出器と結合器とからなるネットワークを含む。システム300は、配電変圧器303、329、および349と、電力ケーブル320、340、および355と、結合器302、332、および352と、PD検出器304、333、および353と、を含む。配電変圧器303と、結合器302と、PD検出器304は、位置305に配置されている。配電変圧器329と、結合器332と、PD検出器333は、位置330に配置されている。配電変圧器349と、結合器352と、PD検出器353は、位置350に配置されている。システム300はまた、監視装置365を含む。
【0044】
配電変圧器303、329、および349の一次側は一列に配置されたケーブル320、340、および355によって給電され、電力はケーブル355から供給される。配電変圧器329は電力ケーブル340から電力を受け取り、電力ケーブル320を通じて電力を下流に送る。
【0045】
PD検出器304、333、および353は上述したPD検出器130と同様に動作し、出力310、335、および360を通じて結果を提供する。
【0046】
結合器332は、リピータとして構成された通信ノード(図示せず)へ接続できる。このようなノードにはPD検出器333を組み込むことができる。同様に、結合器302はPD検出器304が組み込まれた通信ノードへ接続でき、結合器352はPD検出器353が組み込まれた通信ノードへ接続できる。
【0047】
監視装置365は、プロセッサ370と、ユーザインターフェイス375と、メモリ380と、を含む。プロセッサ370は、命令に応答し、且つ命令を実行する、論理回路からなる。メモリ380は、プロセッサ370によって読み取られる命令をプログラムモジュール385に含み、この命令がプロセッサ370によって読み取られると、プロセッサ370は監視装置365によって採用された方法の操作を遂行する。プログラムモジュール385は予めメモリ380に読み込まれたものとして表示されているが、記憶媒体390にてプログラムモジュール385を構成し、後ほどメモリ380に読み込むこともできる。メモリ380はメモリ255で説明した実施形態のいずれかで実装でき、記憶媒体390は記憶媒体275で説明した実施形態のいずれかで実装できる。
【0048】
ユーザが情報やコマンド選択をプロセッサ370へ伝達できるようにするため、ユーザインターフェイス375はキーボードや音声認識サブシステム等の入力装置を含む。ユーザインターフェイス375はまた、ディスプレイやプリンタ等の出力装置を含む。マウス、トラックボール、ジョイスティック等のカーソル制御装置は、ユーザがディスプレイ上でカーソルを操作し、追加的情報やコマンド選択をプロセッサ370へ伝達することを可能にする。
【0049】
システム300ではPD検出器304、333、および353が別々の位置305、330、または350にあり、システム300はそれぞれの位置305、330、および350で検出される電力線状態の指示を得る。監視装置365は出力310、335、および360(図3で円A、B、およびCにより結合)を受信し、これらの出力に基づきケーブルまたは装置が損傷しているか否かを判断する。監視装置365は、修理や予防保守のため現場視察の必要性を伝える報告書をユーザインターフェイス375を通じて提供する。
【0050】
PDとは無関係に、劣化ケーブルは、アークやそれ自体をクリアする一時的短絡から、約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡的高電流パルスを被ることもある。図2を再び参照し、そのようなパルスはピーク電流記録器211(図9でより詳細に図示)によって測定される。ピーク電流記録器211は、ケーブル105の相導体を流れる電流に比例する電圧を結合器120からケーブル125経由で受け取る。ピーク電流記録器211はケーブル105を流れる最高瞬間電流を測定し、これをマルチプレクサ245の入力として提供する。ピーク電流記録器211は、本明細書で後述するピーク電流測定のときに使用される。
【0051】
以下、PD評価のためのパラメータを検討する。
【0052】
ノイズフロアパラメータ
図1および2を再び参照する。
【0053】
バンドパスフィルタ215A−215Eの通過帯域周波数は、望ましくはアクティブな通信および放送用帯域を、すなわち顕著なイングレス源を、回避するよう選択するべきである。ただし、フィルタスカートの周波数で、例えばバンドパスフィルタ215Aのスカートの周波数で、送信器がアクティブなら、イングレス振幅を取るに足りない値まで低減するにあたってフィルタ減衰は不十分である。
【0054】
データ記録は単一の電力周波数サイクルで、または複数の電力周波数サイクルで、行われる。複数のサイクルは必ずしも連続していない。ここでは単一サイクルの記録を「シングルサイクルモード」と呼称する。複数サイクルの記録は、例えば5サイクルの記録は、スペクトル分析器で使われる「マックスホールド」と同様の「マックスホールド」として処理されるため、ここでは複数サイクルの記録を「マックスホールドモード」と呼称する。「マックスホールドモード」では、複数のスイープまたはサイクルで記録されるサンプルの中でタイムビンの最高振幅が保持される。
【0055】
回線周波数同期PDと他の信号を区別する一手法では、各チャネルの出力で内部ノイズフロアを測定する。例えば、CH1の内部ノイズフロアは、増幅器210によって発生する、バンドパスフィルタ215Aの通過帯域内に含まれる、内部ノイズを表す。図2に見られるように、このような測定はスイッチ205が開いている状態で行われる。
【0056】
プロセッサ250はPD検出器130を制御し、プログラムモジュール260の命令に従ってノイズフロアを評価する。
【0057】
図4は、PD検出器130の単一チャネルすなわちチャネルCH1における電力周波数信号の単一サイクルの内部バックグラウンドノイズすなわちノイズ405の、グラフである。ノイズ405は、スイッチ205が開いている場合のチャネルCH1の内部ノイズである。位相軸すなわちx軸は、電力周波数の位相を表し、0−360度範囲は単一サイクルに、例えば60Hz電力周波数の16.6ミリ秒(ms)に、相当する。ゼロ度は電圧の正のゼロ交差位相を表す。図4のグラフは90個の離散データ値を表すものだが、明瞭にするため、90個のデータ値を結ぶ線が描かれている。
【0058】
基線410と呼ばれるノイズフロアの最低部は90個のサンプルの中で最も低い値と定義される。図4の基線410は36dBのところにあり、0dB基準はシステム利得と検出器特性によって決まる固定電力レベルである。この分析では絶対信号レベルが使用されないため、全ての信号レベルは固定基準レベルより上のdBで表される。
【0059】
結合器が接続されていない状態でも、すなわちスイッチ205が開いている状態でも、各チャネルの瞬間出力は、例えば信号235Aは、最も低い基線410値の上で変動する。この変動の振幅は主にチャネルの内部ノイズとフィルタの帯域幅に左右される。例えば、図4のノイズ405は36dBから43dBまで変動している。この変動はノイズ変動420と呼称する。これは7dBの、すなわち43dB−36dB=7dBの、値を持つ。閾430は、内部バックグラウンドノイズが決して超えないと見込まれるレベルに設定される。図4の閾430は、基線410とノイズ変動420の和を僅かに上回る44dBである。
【0060】
後述する方法では、ノイズフロアは、スイッチ205が開いている状態で測定されるほか、スイッチ205が閉じている状態でも測定される。スイッチ205が開いている状態で行われる測定を「初期基線410」と呼称し、スイッチ205が閉じている状態で行われる測定を「現在基線410」と呼称する。
【0061】
好適な実装において、ログ検出器はエンベロープ検出器であり、これの0dB基準レベルはバックグラウンドノイズレベルより下に設定される。この場合、ログ検出器の出力は単極であり、例えば常に正である。このため、ログ検出器220Aの出力はゼロ以上であり、したがって信号235Aもまたゼロ以上である。したがって、スイッチ205を閉じた状態でノイズフロアを測定する場合にPDパルスが存在すると、PDパルスによって信号235Aの振幅は単一タイムビンで正の方向にさらに増大する。殆どのPDパルスで、PDパルスが発生するタイムビンはバックグラウンドノイズの最低値410が発生するタイムビンと異なる。このため、スイッチが閉じている状態で行われる基線410の測定値は、PDパルスの有無にかかわらずほぼ同じ低い値を有する。
【0062】
PDパルスは通常、電力周波数位相の特定の位相区間にわたって不在である。一方、電力線と同期しない信号は多くの場合、連続する搬送波を有し、基線410を引き上げる。基線410の値を周期的に監視して現在基線410を得、スイッチ205が開いた状態で測定された初期基線410にこれを比較することにより、マイクロコントローラ240は、PD検出器130の設置時とその後の監視中にある特定のチャネルの信号がかなりのイングレスを含むか否かを評価できる。
【0063】
基線410はチャネルCH1〜CH5で異なる場合があり、1つのチャネルでもシングルサイクルモードとマックスホールドモードで異なる場合がある。マックスホールドモードは電力線周波数と同期しないイングレスに対し、特にこのようなイングレスが連続するのではなく脈動する場合に、より敏感である。
【0064】
チャネルCH1〜CH5の各々につき、初期基線410はスイッチ205が開いた状態で測定され、現在基線410はスイッチ205が閉じた状態で測定される。
【0065】
ある特定のチャネルで現在基線410が初期基線410より高い場合は、当該チャネルがある程度のイングレスを有することを意味する。現在基線410が初期基線410より大幅に高い場合は、例えば5dB高い場合は、当該チャネルはかなりのイングレスに晒されており、PD検出感度が鈍くなっているとみなすことができる。この高い基線410を補償するため、基線410より上に突出するパルスの振幅に増加分を加えることができる。この増加分が大きければ、例えば10dBなら、チャネルはPD検出にとって不適格とみなされる。
【0066】
プロセッサ250はPD検出器130の製造試験中に基線410を評価し、PD検出器130の内部ノイズレベルを記録する。PD検出器130が現場に配置されたら、プロセッサ250は基線410を評価し、特定のチャネルでイングレスを検出し、かなりのイングレスがある場合は、当該チャネルをPD定量化または局限化から外す。
【0067】
(i)閉じられたときに電力線からノイズを通過させ、且つ開いているときに前記ノイズを通過させない、スイッチと、
(ii)前記スイッチの下流に位置し、増幅出力を生成する、増幅器と、
(iii)チャネルであって、
(a)特定の周波数帯域内にある前記増幅出力のスペクトル成分を通過させることにより、フィルタ済み出力を産出するフィルタと、
(b)前記フィルタ済み出力の値を複数の時間に検出することにより、一連の値を産出する検出器と、を有する、チャネルと、
(iv)プロセッサであって、
(a)前記スイッチが開いているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第1の基線値を得、
(b)前記スイッチが閉じているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第2の基線値を得、且つ
(c)前記第2の基線値と前記第1の基線値との差を判断することにより、増幅器ノイズを上回る電力線ノイズの余剰分を表す余剰値を産出する、プロセッサと、を含むシステムが提供される。
【0068】
最高ピーク振幅
図5Aは1チャネルの出力における信号のグラフであり、同信号は単一のPDパルスすなわちPDパルス540を含む。
【0069】
図5Bは図5Aと同じ信号のグラフであり、データ点は閾430を超えている。図5Bは図5Aから導き出されたものである。図5Aの全てのデータ点から閾430すなわち44dBを引き、負の結果はゼロに設定する。すると、図5Bに見られるように平坦な下限の上にPDパルス540Aが現れる。
【0070】
図3のシステム300を再び参照する。ある特定のPD検出器で、PDパルスは単一電力周波数サイクルの中で発生せず、さもなければ1つ以上のPDパルスが発生する。
【0071】
位置330にあるPD検出器333について検討する。これのチャネルのいずれか1つをチャネルMと呼称し、他のチャネルはチャネルNと呼称することにする。チャネルMおよびNは異なる中心周波数を有する。また、システム300のどこかで発生するPDパルスは、チャネルMの帯域通過範囲に入るスペクトルエネルギーと、チャネルNの帯域通過範囲に入るスペクトルエネルギーと、を含む。
【0072】
図6Aは、PD検出器333のチャネルNで捕捉された2つのPDパルスの記録のグラフである。2つのパルスはそれぞれPDパルス605およびPDパルス610と呼称される。PDパルス605は約80度の位相で発生し、PDパルス610は約265度の位相で発生している。
【0073】
図6Bは、PD検出器333のチャネルMで捕捉された図6Aと同じ2つのPDパルスの記録であり、ひとつは約80度、もうひとつは約265度のところにある。図6Bにおいて、2つのパルスはPDパルス615およびPDパルス620と呼称される。
【0074】
明瞭に述べると、2つのPDパルスの各々はチャネルNとチャネルMで捕捉されている。2つのPDパルスの最初のPDパルスは約80度で発生しており、チャネルNではPDパルス605として捕捉され、チャネルMではPDパルス615として捕捉されている。2つのPDパルスの二番目のPDパルスは約265度で発生しており、チャネルNではPDパルス610として捕捉され、チャネルMではPDパルス620として捕捉されている。
【0075】
チャネルNすなわち図6Aにおいて、PDパルス605はPDパルス610より大きい振幅を有する。この場合、PDパルス605は最も高い振幅すなわち24dBを有し、これはVpeakNと呼称され、記録される。この最高振幅サンプルの位相すなわち80度はΦNと呼称され、記録される。したがって、チャネルNのピークPDパルスはデータペア(ΦN、VpeakN)により呼称される。チャネルMでもこれと同じPDパルスが最高振幅サンプルである(図6B参照)。より具体的に、PDパルス615は10dBの振幅を有し、データペア(ΦM、VpeakM)により呼称される。ΦNに等しいΦMは、2つのチャネルMおよびNがそれぞれの周波数帯で同じPDパルスを記録したことを意味する。
【0076】
今度は位置305にあるPD検出器304と位置350にあるPD検出器353について検討する。3つのPD検出器304、333、および353はそれぞれチャネルMおよびNを含み、同じ位相、すなわち80度で最も高いピークを記録している。例えば、チャネルMの中心周波数はチャネルNのそれより大きく、それぞれのピーク値はテーブル1の通りと仮定する。
【表1】
【0077】
PD検出器304、333、および353からのデータは監視装置365へ伝達され、そこで表1のデータが処理される。
【0078】
システム300内のPD源がPDパルスを生成する場合は、PDパルスの最高周波数成分が減衰され、PDパルスを検出するのはPD検出器304、333、および353のいずれかである。
【0079】
監視装置365で遂行されるPD源の位置の第1の近似法は、(a)隣接PD検出器からなるグループでPDが存在する最高周波数チャネルを判断する、この場合、グループはPD検出器304、333、および353からなり、チャネルMが最高周波数チャネルである、(b)最高周波数チャネルから最高ピーク値を得る、この場合、チャネルMは値5dB、10dB、および7dBを有する、且つ(c)これらの値のうち最も高い値を有するPD検出器をPD源に最も近いPD検出器として選択する、この場合、位置330にあるPD検出器333が最も高い値、すなわち10dBを有する。したがって、PD源は位置330の近くにある可能性が最も高い。
【0080】
(a)電気ケーブルで感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(b)前記電気ケーブルで前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断することと、(c)前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(d)前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断することと、を含む方法が提供される。
【0081】
PD和
最高ピーク振幅パラメータは、PD放電の重大度を表すパラメータによって補足される。ここではこれを「PD和」と呼称する。これは、単一チャネルで単一サイクルにサンプリングされた閾430を超過する振幅値の和として定義される。例えば図5Bを参照されたい。図6Aでは、PD和はPDパルス605の下の部分とPDパルス610の下の部分との和に相当する。PD和はPDパルスの振幅と持続期間にともない増加する。
【0082】
図7はサンプリングされた信号のグラフであり、それぞれのサンプルは、単一電力周波数サイクルでPD検出器の単一チャネルにおいて個々のタイムビンに、例えば4度の位相に、相当する。第1のPDパルスの場合、サンプル705は80度の位相で取得され、サンプル710は84度で取得されている。したがって、第1のPDパルスは1タイムビンより大きい持続期間を有する。第2のPDパルスの場合、サンプル720は264度で取得され、サンプル715は268度で取得されている。したがって、第2のPDパルスも1タイムビンより大きい持続時間を有する。図7において、PD和はサンプル705、710、715、および720の振幅値の和に等しい。
【0083】
通常は、故障位置のPDによって1サイクル中に放電は発生しないか、1つの放電が発生するか、または多くても2つの放電が発生する。ただし、PDパルスの位相は複数のサイクルにわたって数度ずつ異なることがある。例えば最初のサイクルでは86度に出現し、二番目のサイクルでは90度に出現する。マックスホールドモード記録は、複数のサイクルにわたって異なる位相角度で発生した複数の放電を捕捉する。
【0084】
PD和は、シングルサイクルモードよりマックスホールドモードが使われる場合により敏感なPD指標となる。なぜなら、シングルサイクルモードで対象となるのは単一の電力周波数サイクルであって、この単一サイクル中にPDが発生しなければ、PDは検出されないからである。PDが間欠的に出現する状況でも、つまり全てのサイクルではなく一部のサイクルでしかPDが出現しない場合でも、マックスホールドモードを使えばPD和はゼロ以外になる。
【0085】
PD源(例えばケーブル、コネクタ等)が劣化するにつれ、PDパルスはより低い瞬間電圧レベルで発生するため、放電はより広い位相範囲にわたって分散する。したがって、マックスホールドモード記録のPD和は、電源電圧ピークで放電するケーブルの場合に小さい値から始まるが(例えば90度または270度)、ケーブルが劣化するにつれて放電の位相拡散に比例して増加する。したがって、マックスホールドモードのPD和はPDの振幅と位相拡散に対し敏感である。
【0086】
マックスホールドモード記録のときに、PD和は一桁台の値から、例えば単発的PDパルスから、数千まで、例えば全てのサイクルに出現する重度のPDまで、変化することがある。ユーザにとって扱いやすい範囲でPD和を表現する簡便な手段は「PD重大度」であり、ここではこれを20log(PD和+1)と定義する。PD重大度は通常、ゼロから約70の範囲におよび、シングルサイクルモードよりマックスホールドモードで高くなる。マックスホールドモードで測定されたPD重大度から補償係数を減算することにより、シングルサイクルモードで測定されたPD重大度にマックスホールドモードで測定されたPD重大度を比較することができる。
【0087】
例えば、マックスホールドモードでは35のPD重大度が測定され、シングルサイクルモードではこれと同じ信号が21として測定される。マックスホールドの測定値から14を減算すると、シングルサイクルモードに等しい値21が得られる。
【0088】
(a)電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブルで感知される部分放電(PD)パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定することと、(b)前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出することと、(c)前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出することと、を含む方法が提供される。
【0089】
マックスホールド・シングルサイクルステートマシン
上述したように、PDパルスの記録はシングルサイクルモードとマックスホールドモードのいずれかで行える。電力ケーブルや装置でPDが見られるようになったばかりのときには、PDパルスは殆どの電力周波数信号サイクルで発生しない可能性がある。このため、特にPDが数分に一度しか活発でない場合には、シングルサイクルモードでPDをまったく検出できない可能性がある。したがって、最初は、複数のサイクルにわたって、例えば5サイクルにわたって、最高信号点を検出するマックスホールドモードを使用すると有利である。
【0090】
PD源が、例えば電力ケーブルや装置が、劣化し、PDが広まると、マックスホールドモードでは、複数のサイクルで記録された放電の著しい重複が見られるようになる。つまり、PDパルスは複数のサイクルで同じ位相に通常発生し、重複するため、マックスホールドモードではPD和が増加しない。ただし通常は、PD源がさらに劣化するにつれてこれらの放電の位相拡散は増大する。例えば、最初は90度で発生していたPDパルスがその後拡散し、86度から94度の範囲にまたがることがある。多数の高振幅点は記録を飽和させる傾向がある。この場合はシングルサイクルモードに切り替えるのが望ましい。後ほどPDが減少した場合は、PD検出器をマックスホールドモードに戻すべきである。
【0091】
つまり、PD活動レベルが低い場合はPD和が低くなる傾向があり、PD活動の記録にはマックスホールドモードが適している。PD活動レベルが高い場合はPD和が高くなる傾向があり、PD活動の記録にはシングルサイクルモードが適している。マックスホールドモードとシングルサイクルモードの自動切り替えはPD検出器のダイナミックレンジを増大させ、ブランクでもなく飽和もしていない波の波形分析を可能にする。
【0092】
ステートマシンを使用すれば、PD和の閾レベルで2つの記録モードを切り替えることができる。この場合は、必要以上の切り替えを防ぐためある程度のヒステリシスが導入される。両モードで比較できる尺度を使用するため、マックスホールドモードで測定されたPD和は補償係数で割ることができる。
【0093】
図8はPD検出器130(図2)でマックスホールドモードとシングルサイクルモードとの切り替えを制御するステートマシンの状態図である。このステートマシンはマイクロコントローラ240にて、例えばプログラムモジュール260の命令に従って作動するプロセッサ250によって、実現できる。
【0094】
記録はマックスホールドモードで始まる。マックスホールドモード記録の始めにPD和はゼロに戻され、複数の電力周波数サイクルにわたり、例えば5サイクルにわたり、記録が行われる。記録の後には記録中に取得されたデータに基づいてPD和が計算される。PD和を補償係数で割ったものが値500を上回ると、PD検出器130はシングルサイクルモードに切り替わる。PD和を補償係数で割ったものが500以下なら、PD検出器130はマックスホールドモードにとどまる。
【0095】
シングルサイクルモードでは記録の始めにPD和がゼロに戻され、単一電力周波数サイクルにわたって記録が行われる。記録の後には記録中に取得されたデータに基づいてPD和が計算される。PD和が300以上なら、PD検出器130はシングルサイクルモードにとどまる。PD和が300未満なら、PD検出器130はマックスホールドモードに切り替わる。
【0096】
原データスケール−線形または対数
上述したPDパラメータは、具体的には基線、ノイズ変動、最高ピーク振幅、PD和、およびPD重大度は、シングルサイクルモードとマックスホールドモードの両方で計算される。それぞれのデータサンプル(例えば信号235Aのサンプル)の値は、バンドパスフィルタ(例えばバンドパスフィルタ215A)の出力(例えば信号217A)の対数に比例する。あるいは、これらの値はフィルタ出力(例えば信号217A)の振幅に正比例する。
【0097】
警報基準(特に急激な変化に関係する警報)
図3を再び参照する。予防し得る故障に先立ち定期メンテナンスのスケジュールを組む目的で、給電線上に1つ以上の欠陥を見つけ、ケーブルおよび装置の劣化を追跡するため、上述したPDパラメータは、具体的には基線、ノイズ変動、最高ピーク振幅、PD和、およびPD重大度は、監視装置365へ伝達される。これにより、機能停止を防いで費用のかかる緊急サービスを最小限に抑えることができるほか、費用のかかるケーブルの一斉交換を回避し、ケーブルを引き続き長期間使用することができる。
【0098】
ケーブルや装置を修理または交換するため作業班を差し向けると、そのつど多大な費用がかかるため、警報を生成する基準を定めると有益である。警報を受けた管理者は機能停止が起こる前に特定の位置に注意を向けることができる。上述したパラメータは絶対閾の超過に基づく「基準警報」と呼ばれる警報を生成するほか、増分閾の超過に基づく「変化警報」と呼ばれる警報を生成する。
【0099】
PD検出器の設置段階には複数チャネルのPDレベルがメモリに記憶される。絶対閾に達する前には、すなわち基準警報が生成される前には、1つ以上のチャネルにおけるPDパラメータの増加に応じて変化警報を発出できる。このときメモリに記憶された値は新たなPDレベルによって更新される。短い間隔で再発する変化警報はケーブルの急激な劣化と解釈でき、管理者は疑わしい位置に注意を向けることができる。
【0100】
例えば、PD検出器333(図3)のチャネル1〜5のいずれかでPD重大度が値40に達するかこれを上回る場合は、基準警報が監視装置365へ送信される。これとは別に、PD重大度が以前に測定したレベルから大幅に増加する場合は(例えば値23から10増えて値33になると)、変化警報が送信される。
【0101】
ピーク電流測定
上述したように、劣化ケーブルは、アークやそれ自体をクリアする一時的短絡から、非常に短い高電流パルスを被ることもある。そのようなパルスはピーク電流記録器211(図2)によって測定できる。図3を再び参照する。PD検出器304、333、および353はピーク電流記録器211を含む。
【0102】
誘導結合器302、332、および352、PD検出器304、333、および353、ならびに例えば電力線通信、無線、または他の媒体によりPD検出器304、333、および353を監視装置365へ接続するデータ通信基盤を利用し、電流パルスのレベルをPD検出器304、333、および353により記録することができる。電流パルスが一定のレベルを、例えばケーブルの最大電流定格を、超過する場合には、マイクロコントローラ240から(これの出力135を経由し)監視装置365へ警報を送信できる。監視装置365は、例えばヒトによって監視される。監視装置365へ送信された警報を評価することによって電力ケーブルのメンテナンスを行うか否かを判断する。
【0103】
電力ケーブルによって給電される全ての機器がケーブルの短絡により機能停止する場合を検討する。各PD検出器のピーク電流検出器は該当するPD検出器の位置でケーブルの電流を測定する。短絡より上流の位置では、すなわちケーブルの給電点とPD検出器との間では、非常に高い故障電流が測定されるが、下流のPD検出器では、ヒューズ等の保護装置がケーブルを給電点から切り離すまでは、正常負荷電流が測定される。ケーブル上に測定される電流のパターンは短絡の凡その位置を示す。ただし、PD検出器が故障のため自身の電力が失われる前にこの情報を伝えることができなければ、この情報は失われる。
【0104】
好適な実施形態において、それぞれのPD検出器は、例えばPD検出器304は、バッテリ(図示せず)等、独自の予備電源を有する。これにより、PD検出器304は監視装置365へ警報を送信するまで作動状態に保たれる。電力線上に配置された複数のPD検出器304、333、および353で、機能停止前のピーク電流のパターンは短絡故障の位置を示す。例えば、電力入力位置と故障位置との間にあるPD検出器では故障電流が測定されるが、故障より先のPD検出器では正常負荷電流だけが測定される。
【0105】
(a)電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定することと、(b)前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定することと、(c)前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断することと、を含む方法が提供される。この閾は電力ケーブルの最大電流定格に設定してよい。第1の電流と第2の電流は連続する。あるいは、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である。プロセッサ370はプログラムモジュール385に従ってこの方法を遂行する。
【0106】
図9はピーク電流記録器211(図2参照)の回路図である。ピーク電流記録器211は、イングレスおよびPDを拒絶するため増幅器およびローパスフィルタ、すなわち増幅器−フィルタ905と、両極の電流ピークに対し等しく敏感な全波整流器910と、信号をA/D変換器の入力範囲にスケールする増幅器915と、ピーク検出器920と、を含む。ピーク検出器920はキャパシタC44を有し、キャパシタC44はアナログメモリとして機能し、デジタルデータメモリへ転送される最新の最高値を記憶する。
【0107】
正常動作で、ピーク電流値は、給電線電流の二乗平均平方根(rms)値に正弦波形の2の平方根に等しい波高率を掛けたものに等しくなる。200アンペアrms定格の典型的ケーブルの場合、正常ピーク電流値は282アンペアに達する。この値を超過すると監視装置365へ警報が送信される。
【0108】
ここで説明した手法は例であって、本開示を制限するものとして解釈すべきものではない。当業者によって様々な代案、組み合わせ、および変更が考案され得ることを理解されたい。例えば、ここで説明したプロセッサ関連のステップは、別段の指定がない限り、あるいはステップそのものによって決定づけられる場合を除き、任意の順序で遂行できる。本開示は、添付の請求項の範囲内にあるこのような代案、変更、および差異を包含する。
【0109】
用語「comprises」または「comprising」は、機能、整数、ステップ、または部品の存在を明記するものとして解釈すべきものであって、1つ以上の他の機能、整数、ステップ、または部品、またはこれらのグループの存在を排除するものとして解釈すべきものではない。
【著作権通告】
【0001】
本特許文書の開示の一部は著作権保護の対象となる材料を含んでいる。著作権所有者は本特許文書または特許開示の複製に異議を唱えないが、一切の著作権を留保する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、配電用電力線に関し、より具体的には、ノイズまたは過電流の出所を特定することを目的とする電力線上でのノイズおよび過電流の評価に関する。
【背景技術】
【0003】
本節に記述されたアプローチは追究し得るアプローチであって、必ずしも以前に着想または追究されたアプローチではない。したがって、別段の断りがない限り、本節に記述されたアプローチは、本願の請求項に対する先行技術ではなく、本節に含まれることにより先行技術と認められない。
【0004】
部分放電(Partial discharge,PD)は、経年劣化、物理的損傷、または非常に高い電場への曝露(exposure)等により損傷を被った電力ケーブルの絶縁体で生じる現象である。PDは、ケーブル、コネクタ、避雷器、および他の高電圧装置を害する。不完全なオーバーヘッドインシュレータ(overhead insulator)も周波数と位相特性がPDに似たノイズの発生を許すことがある。PDは持続期間がナノ秒以下の短いパルスを発生させる。PDパルスはAC電圧の特定位相で発生する傾向があり、また電力周波数か電力周波数の二倍と概ね同期する傾向がある。PDはライン同期ノイズまたはライントリガノイズ(line−triggered noise)として知られるノイズの一種である。PDパルスは、1キロヘルツ〜数百メガヘルツ範囲を通常含む連続広帯域スペクトルを有する。
【0005】
米国特許7,532,012は、PDパルスを捕捉する手法を説明しているほか、PDパルス等のライン周波数同期現象に関係する波形と、ライン周波数を有さない「イングレス(ingress)」と呼ばれる外部干渉とを区別するために波形を評価するパラメータを説明している。PD由来として区別される波形の場合は、これらのパラメータはPDの強度を定量化するのにも役立つ。
【0006】
劣化ケーブルは、アークやそれ自体をクリアする一時的短絡から、非常に短い高電流パルスを被ることもある。劣化ケーブルを識別することが望まれる。より具体的には、劣化ケーブルが完全に故障する前に具体的な位置を特定することが望まれる。
【0007】
本明細書は、PDおよび過電流を区別および定量化し、PDまたは過電流の出所を特定する手法を開示する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書は、電力線でノイズおよび過電流に関係するパラメータを評価する手法を開示する。これらの手法は特に、部分放電(PD)の特性を明らかにすること、またノイズまたは過電流の出所を特定することに適している。
【0009】
手法のひとつは、(a)電気ケーブルで感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(b)前記電気ケーブルで前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断することと、(c)前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(d)前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断することと、を含む方法である。
【0010】
もうひとつの手法は、(a)電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブル上で感知されるPD複数パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定することと、(b)前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出(yielding)することと、(c)前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和(PD sum)を産出することと、を含む。
【0011】
もうひとつの手法は、(a)電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定することと、(b)前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定することと、(c)前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断することと、を含む方法である。
【0012】
本明細書はまた、これらの方法を遂行するシステムと、これらの方法を遂行するためプロセッサを制御する命令を収容する記憶媒体と、を開示する。
【0013】
加えて、システムが提供され、該システムは、
(i)閉じられたときに電力線からノイズを通過させ、且つ開いているときに前記ノイズを通過させない、スイッチと、
(ii)前記スイッチの下流に位置し、増幅出力を生成する、増幅器と、
(iii)チャネルであって、
(a)特定の周波数帯域内にある前記増幅出力のスペクトル成分を通過させることにより、フィルタ済み出力を産出するフィルタと、
(b)前記フィルタ済み出力の値を複数の時間に検出することにより、一連の値を産出する検出器と、を有する、チャネルと、
(iv)プロセッサであって、
(a)前記スイッチが開いているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第1の基線値(baseline value)を得、
(b)前記スイッチが閉じているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第2の基線値を得、且つ
(c)前記第2の基線値と前記第1の基線値との差を判断することにより、増幅器ノイズを上回る電力線ノイズの余剰分を表す余剰値を産出する、プロセッサと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は配電システムの一部分の図であり、同システムには、ケーブル上に部分放電(PD)を検出するための部品が配置されている。
【図2】図2はPD検出器のブロック図である。
【図3】図3は配電システムの一部分の図であり、同システムは、配電システム内の複数の位置でPDを検出するよう構成されたPD検出器と結合器とからなるネットワークを含む。
【図4】図4は、PD検出器の単一チャネルにおける電力周波数信号の単一サイクルのバックグラウンドノイズのグラフである。
【図5A】図5AはPD検出器の1チャネルの出力における信号のグラフであり、同信号は単一のPDパルスを含む。
【図5B】図5Bは図5Aと同じ信号のグラフであり、データ点は閾を超えている。
【図6A】図6Aは、PD検出器の1チャネルで捕捉された2つのPDパルスの記録のグラフである。
【図6B】図6Bは、PD検出器の別のチャネルで捕捉された図6Aと同じ2つのPDパルスの記録である。
【図7】図7はサンプリングされた信号のグラフであり、それぞれのサンプルは、単一電力周波数サイクルでPD検出器の単一チャネルにおいて個々のタイムビンに、例えば4度の位相に、相当する。
【図8】図8はPD検出器でマックスホールドモードとシングルサイクルモードとの切り替えを制御するステートマシン(state machine)の状態図である。
【図9】図9はピーク電流記録器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
複数の図面に共通する部品または機能は、それぞれの図面で同じ参照番号で示されている。
【0016】
電力線通信システムにおいて、電力周波数は通常は50−60ヘルツ(Hz)の範囲内であり、データ通信信号周波数は約1メガヘルツ(MHz)を上回り、通常は1MHz−50MHzの範囲内である。電力線通信のためのデータ結合器は、電力線とモデム等の通信装置との間でデータ通信信号を結合する。
【0017】
誘導結合器はこのようなデータ結合器の一例である。誘導結合器は、芯と、芯の一部分を取り巻く巻線と、を含む。芯は磁性材料で作られ、開口部を含む。誘導結合器は変圧器として働き、電力線上に配置される。電力線は開口部の中に通され、変圧器の一次巻線として機能し、誘導結合器の巻線は変圧器の二次巻線として機能する。データ通信信号は芯を介して電力線と二次巻線との間で結合される。二次巻線は通信装置へ結合される。
【0018】
誘導結合器のさらなる用途においては、相導体または中性導体のまわりに誘導結合器を置き、部分放電(PD)によって生じる高周波エネルギーを感知する。ケーブルおよび絶縁体状態の連続感知やデータ通信を含む機能の組み合わせによって達成される相乗効果はとりわけ有利である。
【0019】
容量結合器もPD感知と通信に利用される。ただし高電圧キャパシタでは、ケーブルまたは絶縁体PDとの区別が困難な内部PDが発生しやすい。このため、容量結合器もPD感知に利用されるが、この用途には誘導結合器のほうが適している。
【0020】
図1は配電システム100の一部分の図であり、同システムには、ケーブル上にPDを検出するための部品が配置されている。システム100は、中電圧地下ケーブル、すなわちケーブル105と、配電変圧器101と、接地棒118と、誘導結合器すなわち結合器120と、PD検出器130と、を含む。
【0021】
結合器120は磁芯(図示せず)を含み、磁芯の中には開口部(図示せず)がある。結合器120は変圧器として働き、ケーブル105上に配置される。ケーブル105は開口部の中に通され、結合器120の一次巻線として機能する。結合器120はまた、ケーブル125を経由しPD検出器130へ至るリードを有する二次巻線を含む。ケーブル105は同心中性導体110を有し、同心中性導体110は編組線112としてより合わされ、開口部の中に通され、接地棒118へ至る。
【0022】
開口部の中に編組線112を通すことにより、結合器二次側への中性電流誘導はキャンセルされる。その結果、結合器120は、電力周波数電流とPDおよびイングレスによる電流とを含む電流を、ケーブル105の相導体で感知する。感知された電流は結合器120の二次巻線で入手可能であるため、ケーブル125経由で信号として提示される。
【0023】
ケーブル105における結合器120の代替配置では、またはマルチフェーズ電力ケーブルのようにケーブル105が同心中性導体110を含まない場合は、結合器120は相線の絶縁体106上に直接置かれる。この場合は、望ましくは、相導体の絶縁が故障したときに故障電流をグラウンドへ送ることができる堅牢な接地導電シールドの中に結合器120が包まれる。あるいは、編組線112上に結合器120を配置する。
【0024】
配電変圧器101はエルボコネクタ(elbow connector)107経由でケーブル105により給電される。配電変圧器101は、接地棒118へ接続された中性導体115と、二次端子140と、を有する。配電変圧器101は二次端子140から電力周波数の低電圧を提供する。ケーブル105上の電圧(および電流)の位相と二次端子140上の低電圧の位相との間には、概ね一定の位相関係がある。この位相関係は配電変圧器101の負荷変動によって若干変化することがある。
【0025】
PD検出器130は、結合器120からケーブル125経由で感知電流を受け取り、二次端子140からケーブル145経由で電力周波数の低電圧を受け取る。電力周波数の低電圧は、PD検出器130に位相基準を提供する。PD検出器130はケーブル105でPDを検出するため結合器120からの感知電流を処理し、出力135を提供する。出力135は通信リンク(図1に図示せず)へ接続され、PD監視データストリームは遠隔監視装置(図1に図示せず)へ到達する。
【0026】
結合器120は電力線通信データ結合器としても機能する。つまり、ケーブル125はモデム等の通信装置(図1に図示せず)へも配線され、結合器120はケーブル105と通信装置との間でデータ通信信号を結合するため使用される。
【0027】
図2はPD検出器130のブロック図である。PD検出器130は、スイッチ205と、ピーク電流記録器211と、増幅器210と、マイクロコントローラ240と、トリガ回路270と、5つのチャネルに、具体的にはCH1、CH2、CH3、CH4、およびCH5に、編成された一群の部品と、を含む。マイクロコントローラ240はマルチプレクサ245と、アナログ・デジタル変換器(A/D)265と、プロセッサ250と、メモリ255と、を含む。
【0028】
プロセッサ250は、命令に応答し、且つ命令を実行する、論理回路からなる。
【0029】
メモリ255は、コンピュータプログラムにより符号化されるコンピュータ可読媒体である。プロセッサ250の動作を制御するため、メモリ255に記憶されたデータと命令はプロセッサ250によって読み取られ、実行される。メモリ255はランダムアクセスメモリ(RAM)として、ハードドライブとして、読み取り専用メモリ(ROM)として、またはこれらの組み合わせとして、実装される。プログラムモジュール260はメモリ255の1コンポーネントである。
【0030】
プログラムモジュール260は命令を収容し、この命令がプロセッサ250によって読み取られると、プロセッサ250はPD検出器130によって採用された方法の操作を遂行する。ここで用いる用語「モジュール」は、単独コンポーネントとして、または複数の従属コンポーネントからなる一体構成として、具現される機能的操作を意味する。したがってプログラムモジュール260は、単一のモジュールとして、または互いに協働する複数のモジュールとして、実装される。さらに、ここではメモリ255にインストールされソフトウェアとして実装されたプログラムモジュール260を説明するが、ハードウェア(例えば電子回路)として、ファームウェアとして、ソフトウェアとして、またはこれらの組み合わせとして、プログラムモジュール260を実装することもできる。
【0031】
プログラムモジュール260は予めメモリ255に読み込まれたものとして表示されているが、記憶媒体275にてプログラムモジュール260を構成し、後ほどメモリ255に読み込むこともできる。記憶媒体275もまたコンピュータプログラムにより符号化されるコンピュータ可読媒体であり、プログラムモジュール260を実体的な形式で記憶する従来の非一時的記憶媒体であってよい。記憶媒体275は、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、磁気テープ、読み取り専用メモリ、光学式記憶媒体、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ、デジタル多用途ディスク、ジップドライブ等の媒体で実装できる。あるいはランダムアクセスメモリとして、または遠隔記憶システム(図示せず)に配置されネットワーク(図示せず)を介してメモリ255へ結合される電子記憶装置として、記憶媒体275を実装することもできる。
【0032】
CH1は、バンドパスフィルタ215Aと、対数(ログ)検出器220Aと、ピーク検出器225Aと、サンプル・アンド・ホールド(S/H)230Aと、からなる。チャネルCH2〜CH5は、バンドパスフィルタ215B−215E、ログ検出器220B−220E、ピーク検出器225B−225E、およびS/H 230B−230EによりCH1と同様に構成される。好適な実装において、バンドパスフィルタ215A−Eは表面音波(SAW)フィルタである。
【0033】
スイッチ205は開いている状態で図示されているが、閉じられると、ケーブル125(図1参照)からの信号206を増幅器210へ結合する。信号206は、電力周波数電流と、結合器120により感知されるPDおよびイングレスによる電流と、を含む。増幅器210は信号206を増幅し、信号212を出力する。したがって、信号212は信号206を増幅したものである。信号はチャネルCH1〜CH5の各々へ配信される。
【0034】
それぞれのバンドパスフィルタ215A−215Eは異なる中心周波数に調整され、広帯域幅(例えば1MHz)を有する。このため、チャネルCH1〜CH5は、それぞれ異なる周波数帯で結合器120からの信号を「リスン(listen)」する。1つ以上のバンドパスフィルタ(例えば215A)は低中心周波数を有するため、ケーブル105でPDは著しく減衰しないが、他のバンドパスフィルタ(例えば215E)は高中心周波数を有するため、単位距離当たりの減衰は著しい。バンドパスフィルタ215A−215Eの周波数帯は、望ましくはラジオ放送等の既知イングレス源の周波数を回避するよう選ばれる。
【0035】
チャネルCH1について検討する。バンドパスフィルタ215Aは信号212を受信し、バンドパスフィルタ215Aの通過帯域内にある信号212の周波数を通過させ、信号217Aを産出する。ログ検出器220Aは信号271Aを受信し、信号222Aにより示された対数表現に変換する。ピーク検出器225Aは信号222Aを受信し、これのピーク値を検出し、信号227Aを産出する。S/H 230Aは信号227Aのピーク値をサンプリングし、保持し、信号235Aを産出する。
【0036】
PD源はPD検出器130に近接し、強い信号を生成する場合がある。あるいはPD源は結合器120から離れていて、弱いPD信号を生成し、これがケーブル105上に伝播するにつれ大幅に減衰する場合もある。したがって、PD信号の大きさは広いダイナミックレンジにまたがる。このため、信号206、212、および217Aもまた広いダイナミックレンジにおよぶ。ログ検出器220Aは広いダイナミックレンジを有する信号217Aを処理できる。ただしここで説明するパラメータは、計算上の便宜のため、振幅の対数表現ではなく線形表現から、あるいは振幅圧縮を提供する他の何らかの非対数機能から、計算することもできる。
【0037】
チャネルCH2〜CH5はチャネルCH1と同様に動作し、信号253B−235Eをそれぞれ産出する。
【0038】
トリガ回路270は、信号269として示された電力周波数の低電圧をケーブル145経由で受信し、電力線同期信号272を生成する。あるいは信号269を受信する代わりに、トリガ回路270は信号212を受信し、信号212から電力周波数成分を抽出することもできる。ただし、電力線同期信号272は電力周波数のサイクル当たり1パルスとして、例えば60Hzサイクル当たり1パルスとして、あるいは50Hzサイクル当たり1パルスとして、現れる。
【0039】
マイクロコントローラ240は、信号235A−235Eと、電力線同期信号272と、を受信する。信号235A−235Eはマルチプレクサ245へ入力され、マルチプレクサ245の出力からA/D 265へ選択的に配信される。A/D 265は信号235A−235Eをデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号はメモリ255へ配信される。マルチプレクサ245の動作と信号235A−235Eの選択および配信は後ほど詳述する。
【0040】
マイクロコントローラ240は制御線242を通じてスイッチ205を制御するほか、S/H 235A−235Eを制御する。信号235A−235Eはアナログ信号である。S/H 235A−235Eの目的は、信号235A−235Eのアナログ値を短時間にわたり安定に保つことである。これにより、信号235A−235Eをマルチプレクサ245に通し、A/D 265により規則的にデジタルデータに変換することができる。
【0041】
信号235Aについて検討する。信号235Aのサンプル配列からなるデータはA/D 265によってデジタル化される。例えば、配列は90個の値からなると仮定する。それぞれの値は4度の位相区間に相当し、全部で360度の1電力周波数サイクル、すなわち360度/4度=90度となる。この場合、タイムビンと呼ばれる各区間は、60Hzの電力周波数の場合に1/60/90秒、すなわち185.19マイクロ秒の持続期間を有し、50Hzの電力周波数の場合に222.22μsの持続期間を有する。このタイミングはマイクロコントローラ240のタイマー(図示せず)により電力線同期信号272から導き出される。信号235Aのサンプル配列の最初は、信号269すなわち電力周波数の低電圧の正のゼロ交差(positive-going zero-crossing)の後に起こる信号272におけるロジック遷移によってトリガされる。それぞれのデータサンプルは、それぞれのタイムビンの中で、信号217Aすなわちバンドパスフィルタ215Aの出力の、振幅のピーク値の対数に比例する。90個の値はメモリ255へ配信される。したがって、マイクロコントローラ240は1回の電力周波数サイクルでチャネルCH1から90個の値を取得する。
【0042】
マイクロコントローラ240、より具体的にはプロセッサ250は、プログラムモジュール260に従ってS/H 230A−230Eを制御し、マルチプレクサ245はチャネルCH1〜CH5の各々につき90個の値を取得し、PDパルスの特性を明らかにするため値を評価し、評価の結果を出力135経由で提供する。マイクロコントローラ240は単一の電力周波数サイクルで値を取得する。あるいは後述する特定の状況下では複数の電力周波数サイクルで値を取得する。
【0043】
図3は、配電システムすなわちシステム300の一部分の図であり、同システムは、システム300内の複数の位置でPDを検出するよう構成されたPD検出器と結合器とからなるネットワークを含む。システム300は、配電変圧器303、329、および349と、電力ケーブル320、340、および355と、結合器302、332、および352と、PD検出器304、333、および353と、を含む。配電変圧器303と、結合器302と、PD検出器304は、位置305に配置されている。配電変圧器329と、結合器332と、PD検出器333は、位置330に配置されている。配電変圧器349と、結合器352と、PD検出器353は、位置350に配置されている。システム300はまた、監視装置365を含む。
【0044】
配電変圧器303、329、および349の一次側は一列に配置されたケーブル320、340、および355によって給電され、電力はケーブル355から供給される。配電変圧器329は電力ケーブル340から電力を受け取り、電力ケーブル320を通じて電力を下流に送る。
【0045】
PD検出器304、333、および353は上述したPD検出器130と同様に動作し、出力310、335、および360を通じて結果を提供する。
【0046】
結合器332は、リピータとして構成された通信ノード(図示せず)へ接続できる。このようなノードにはPD検出器333を組み込むことができる。同様に、結合器302はPD検出器304が組み込まれた通信ノードへ接続でき、結合器352はPD検出器353が組み込まれた通信ノードへ接続できる。
【0047】
監視装置365は、プロセッサ370と、ユーザインターフェイス375と、メモリ380と、を含む。プロセッサ370は、命令に応答し、且つ命令を実行する、論理回路からなる。メモリ380は、プロセッサ370によって読み取られる命令をプログラムモジュール385に含み、この命令がプロセッサ370によって読み取られると、プロセッサ370は監視装置365によって採用された方法の操作を遂行する。プログラムモジュール385は予めメモリ380に読み込まれたものとして表示されているが、記憶媒体390にてプログラムモジュール385を構成し、後ほどメモリ380に読み込むこともできる。メモリ380はメモリ255で説明した実施形態のいずれかで実装でき、記憶媒体390は記憶媒体275で説明した実施形態のいずれかで実装できる。
【0048】
ユーザが情報やコマンド選択をプロセッサ370へ伝達できるようにするため、ユーザインターフェイス375はキーボードや音声認識サブシステム等の入力装置を含む。ユーザインターフェイス375はまた、ディスプレイやプリンタ等の出力装置を含む。マウス、トラックボール、ジョイスティック等のカーソル制御装置は、ユーザがディスプレイ上でカーソルを操作し、追加的情報やコマンド選択をプロセッサ370へ伝達することを可能にする。
【0049】
システム300ではPD検出器304、333、および353が別々の位置305、330、または350にあり、システム300はそれぞれの位置305、330、および350で検出される電力線状態の指示を得る。監視装置365は出力310、335、および360(図3で円A、B、およびCにより結合)を受信し、これらの出力に基づきケーブルまたは装置が損傷しているか否かを判断する。監視装置365は、修理や予防保守のため現場視察の必要性を伝える報告書をユーザインターフェイス375を通じて提供する。
【0050】
PDとは無関係に、劣化ケーブルは、アークやそれ自体をクリアする一時的短絡から、約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡的高電流パルスを被ることもある。図2を再び参照し、そのようなパルスはピーク電流記録器211(図9でより詳細に図示)によって測定される。ピーク電流記録器211は、ケーブル105の相導体を流れる電流に比例する電圧を結合器120からケーブル125経由で受け取る。ピーク電流記録器211はケーブル105を流れる最高瞬間電流を測定し、これをマルチプレクサ245の入力として提供する。ピーク電流記録器211は、本明細書で後述するピーク電流測定のときに使用される。
【0051】
以下、PD評価のためのパラメータを検討する。
【0052】
ノイズフロアパラメータ
図1および2を再び参照する。
【0053】
バンドパスフィルタ215A−215Eの通過帯域周波数は、望ましくはアクティブな通信および放送用帯域を、すなわち顕著なイングレス源を、回避するよう選択するべきである。ただし、フィルタスカートの周波数で、例えばバンドパスフィルタ215Aのスカートの周波数で、送信器がアクティブなら、イングレス振幅を取るに足りない値まで低減するにあたってフィルタ減衰は不十分である。
【0054】
データ記録は単一の電力周波数サイクルで、または複数の電力周波数サイクルで、行われる。複数のサイクルは必ずしも連続していない。ここでは単一サイクルの記録を「シングルサイクルモード」と呼称する。複数サイクルの記録は、例えば5サイクルの記録は、スペクトル分析器で使われる「マックスホールド」と同様の「マックスホールド」として処理されるため、ここでは複数サイクルの記録を「マックスホールドモード」と呼称する。「マックスホールドモード」では、複数のスイープまたはサイクルで記録されるサンプルの中でタイムビンの最高振幅が保持される。
【0055】
回線周波数同期PDと他の信号を区別する一手法では、各チャネルの出力で内部ノイズフロアを測定する。例えば、CH1の内部ノイズフロアは、増幅器210によって発生する、バンドパスフィルタ215Aの通過帯域内に含まれる、内部ノイズを表す。図2に見られるように、このような測定はスイッチ205が開いている状態で行われる。
【0056】
プロセッサ250はPD検出器130を制御し、プログラムモジュール260の命令に従ってノイズフロアを評価する。
【0057】
図4は、PD検出器130の単一チャネルすなわちチャネルCH1における電力周波数信号の単一サイクルの内部バックグラウンドノイズすなわちノイズ405の、グラフである。ノイズ405は、スイッチ205が開いている場合のチャネルCH1の内部ノイズである。位相軸すなわちx軸は、電力周波数の位相を表し、0−360度範囲は単一サイクルに、例えば60Hz電力周波数の16.6ミリ秒(ms)に、相当する。ゼロ度は電圧の正のゼロ交差位相を表す。図4のグラフは90個の離散データ値を表すものだが、明瞭にするため、90個のデータ値を結ぶ線が描かれている。
【0058】
基線410と呼ばれるノイズフロアの最低部は90個のサンプルの中で最も低い値と定義される。図4の基線410は36dBのところにあり、0dB基準はシステム利得と検出器特性によって決まる固定電力レベルである。この分析では絶対信号レベルが使用されないため、全ての信号レベルは固定基準レベルより上のdBで表される。
【0059】
結合器が接続されていない状態でも、すなわちスイッチ205が開いている状態でも、各チャネルの瞬間出力は、例えば信号235Aは、最も低い基線410値の上で変動する。この変動の振幅は主にチャネルの内部ノイズとフィルタの帯域幅に左右される。例えば、図4のノイズ405は36dBから43dBまで変動している。この変動はノイズ変動420と呼称する。これは7dBの、すなわち43dB−36dB=7dBの、値を持つ。閾430は、内部バックグラウンドノイズが決して超えないと見込まれるレベルに設定される。図4の閾430は、基線410とノイズ変動420の和を僅かに上回る44dBである。
【0060】
後述する方法では、ノイズフロアは、スイッチ205が開いている状態で測定されるほか、スイッチ205が閉じている状態でも測定される。スイッチ205が開いている状態で行われる測定を「初期基線410」と呼称し、スイッチ205が閉じている状態で行われる測定を「現在基線410」と呼称する。
【0061】
好適な実装において、ログ検出器はエンベロープ検出器であり、これの0dB基準レベルはバックグラウンドノイズレベルより下に設定される。この場合、ログ検出器の出力は単極であり、例えば常に正である。このため、ログ検出器220Aの出力はゼロ以上であり、したがって信号235Aもまたゼロ以上である。したがって、スイッチ205を閉じた状態でノイズフロアを測定する場合にPDパルスが存在すると、PDパルスによって信号235Aの振幅は単一タイムビンで正の方向にさらに増大する。殆どのPDパルスで、PDパルスが発生するタイムビンはバックグラウンドノイズの最低値410が発生するタイムビンと異なる。このため、スイッチが閉じている状態で行われる基線410の測定値は、PDパルスの有無にかかわらずほぼ同じ低い値を有する。
【0062】
PDパルスは通常、電力周波数位相の特定の位相区間にわたって不在である。一方、電力線と同期しない信号は多くの場合、連続する搬送波を有し、基線410を引き上げる。基線410の値を周期的に監視して現在基線410を得、スイッチ205が開いた状態で測定された初期基線410にこれを比較することにより、マイクロコントローラ240は、PD検出器130の設置時とその後の監視中にある特定のチャネルの信号がかなりのイングレスを含むか否かを評価できる。
【0063】
基線410はチャネルCH1〜CH5で異なる場合があり、1つのチャネルでもシングルサイクルモードとマックスホールドモードで異なる場合がある。マックスホールドモードは電力線周波数と同期しないイングレスに対し、特にこのようなイングレスが連続するのではなく脈動する場合に、より敏感である。
【0064】
チャネルCH1〜CH5の各々につき、初期基線410はスイッチ205が開いた状態で測定され、現在基線410はスイッチ205が閉じた状態で測定される。
【0065】
ある特定のチャネルで現在基線410が初期基線410より高い場合は、当該チャネルがある程度のイングレスを有することを意味する。現在基線410が初期基線410より大幅に高い場合は、例えば5dB高い場合は、当該チャネルはかなりのイングレスに晒されており、PD検出感度が鈍くなっているとみなすことができる。この高い基線410を補償するため、基線410より上に突出するパルスの振幅に増加分を加えることができる。この増加分が大きければ、例えば10dBなら、チャネルはPD検出にとって不適格とみなされる。
【0066】
プロセッサ250はPD検出器130の製造試験中に基線410を評価し、PD検出器130の内部ノイズレベルを記録する。PD検出器130が現場に配置されたら、プロセッサ250は基線410を評価し、特定のチャネルでイングレスを検出し、かなりのイングレスがある場合は、当該チャネルをPD定量化または局限化から外す。
【0067】
(i)閉じられたときに電力線からノイズを通過させ、且つ開いているときに前記ノイズを通過させない、スイッチと、
(ii)前記スイッチの下流に位置し、増幅出力を生成する、増幅器と、
(iii)チャネルであって、
(a)特定の周波数帯域内にある前記増幅出力のスペクトル成分を通過させることにより、フィルタ済み出力を産出するフィルタと、
(b)前記フィルタ済み出力の値を複数の時間に検出することにより、一連の値を産出する検出器と、を有する、チャネルと、
(iv)プロセッサであって、
(a)前記スイッチが開いているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第1の基線値を得、
(b)前記スイッチが閉じているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第2の基線値を得、且つ
(c)前記第2の基線値と前記第1の基線値との差を判断することにより、増幅器ノイズを上回る電力線ノイズの余剰分を表す余剰値を産出する、プロセッサと、を含むシステムが提供される。
【0068】
最高ピーク振幅
図5Aは1チャネルの出力における信号のグラフであり、同信号は単一のPDパルスすなわちPDパルス540を含む。
【0069】
図5Bは図5Aと同じ信号のグラフであり、データ点は閾430を超えている。図5Bは図5Aから導き出されたものである。図5Aの全てのデータ点から閾430すなわち44dBを引き、負の結果はゼロに設定する。すると、図5Bに見られるように平坦な下限の上にPDパルス540Aが現れる。
【0070】
図3のシステム300を再び参照する。ある特定のPD検出器で、PDパルスは単一電力周波数サイクルの中で発生せず、さもなければ1つ以上のPDパルスが発生する。
【0071】
位置330にあるPD検出器333について検討する。これのチャネルのいずれか1つをチャネルMと呼称し、他のチャネルはチャネルNと呼称することにする。チャネルMおよびNは異なる中心周波数を有する。また、システム300のどこかで発生するPDパルスは、チャネルMの帯域通過範囲に入るスペクトルエネルギーと、チャネルNの帯域通過範囲に入るスペクトルエネルギーと、を含む。
【0072】
図6Aは、PD検出器333のチャネルNで捕捉された2つのPDパルスの記録のグラフである。2つのパルスはそれぞれPDパルス605およびPDパルス610と呼称される。PDパルス605は約80度の位相で発生し、PDパルス610は約265度の位相で発生している。
【0073】
図6Bは、PD検出器333のチャネルMで捕捉された図6Aと同じ2つのPDパルスの記録であり、ひとつは約80度、もうひとつは約265度のところにある。図6Bにおいて、2つのパルスはPDパルス615およびPDパルス620と呼称される。
【0074】
明瞭に述べると、2つのPDパルスの各々はチャネルNとチャネルMで捕捉されている。2つのPDパルスの最初のPDパルスは約80度で発生しており、チャネルNではPDパルス605として捕捉され、チャネルMではPDパルス615として捕捉されている。2つのPDパルスの二番目のPDパルスは約265度で発生しており、チャネルNではPDパルス610として捕捉され、チャネルMではPDパルス620として捕捉されている。
【0075】
チャネルNすなわち図6Aにおいて、PDパルス605はPDパルス610より大きい振幅を有する。この場合、PDパルス605は最も高い振幅すなわち24dBを有し、これはVpeakNと呼称され、記録される。この最高振幅サンプルの位相すなわち80度はΦNと呼称され、記録される。したがって、チャネルNのピークPDパルスはデータペア(ΦN、VpeakN)により呼称される。チャネルMでもこれと同じPDパルスが最高振幅サンプルである(図6B参照)。より具体的に、PDパルス615は10dBの振幅を有し、データペア(ΦM、VpeakM)により呼称される。ΦNに等しいΦMは、2つのチャネルMおよびNがそれぞれの周波数帯で同じPDパルスを記録したことを意味する。
【0076】
今度は位置305にあるPD検出器304と位置350にあるPD検出器353について検討する。3つのPD検出器304、333、および353はそれぞれチャネルMおよびNを含み、同じ位相、すなわち80度で最も高いピークを記録している。例えば、チャネルMの中心周波数はチャネルNのそれより大きく、それぞれのピーク値はテーブル1の通りと仮定する。
【表1】
【0077】
PD検出器304、333、および353からのデータは監視装置365へ伝達され、そこで表1のデータが処理される。
【0078】
システム300内のPD源がPDパルスを生成する場合は、PDパルスの最高周波数成分が減衰され、PDパルスを検出するのはPD検出器304、333、および353のいずれかである。
【0079】
監視装置365で遂行されるPD源の位置の第1の近似法は、(a)隣接PD検出器からなるグループでPDが存在する最高周波数チャネルを判断する、この場合、グループはPD検出器304、333、および353からなり、チャネルMが最高周波数チャネルである、(b)最高周波数チャネルから最高ピーク値を得る、この場合、チャネルMは値5dB、10dB、および7dBを有する、且つ(c)これらの値のうち最も高い値を有するPD検出器をPD源に最も近いPD検出器として選択する、この場合、位置330にあるPD検出器333が最も高い値、すなわち10dBを有する。したがって、PD源は位置330の近くにある可能性が最も高い。
【0080】
(a)電気ケーブルで感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(b)前記電気ケーブルで前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断することと、(c)前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、(d)前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断することと、を含む方法が提供される。
【0081】
PD和
最高ピーク振幅パラメータは、PD放電の重大度を表すパラメータによって補足される。ここではこれを「PD和」と呼称する。これは、単一チャネルで単一サイクルにサンプリングされた閾430を超過する振幅値の和として定義される。例えば図5Bを参照されたい。図6Aでは、PD和はPDパルス605の下の部分とPDパルス610の下の部分との和に相当する。PD和はPDパルスの振幅と持続期間にともない増加する。
【0082】
図7はサンプリングされた信号のグラフであり、それぞれのサンプルは、単一電力周波数サイクルでPD検出器の単一チャネルにおいて個々のタイムビンに、例えば4度の位相に、相当する。第1のPDパルスの場合、サンプル705は80度の位相で取得され、サンプル710は84度で取得されている。したがって、第1のPDパルスは1タイムビンより大きい持続期間を有する。第2のPDパルスの場合、サンプル720は264度で取得され、サンプル715は268度で取得されている。したがって、第2のPDパルスも1タイムビンより大きい持続時間を有する。図7において、PD和はサンプル705、710、715、および720の振幅値の和に等しい。
【0083】
通常は、故障位置のPDによって1サイクル中に放電は発生しないか、1つの放電が発生するか、または多くても2つの放電が発生する。ただし、PDパルスの位相は複数のサイクルにわたって数度ずつ異なることがある。例えば最初のサイクルでは86度に出現し、二番目のサイクルでは90度に出現する。マックスホールドモード記録は、複数のサイクルにわたって異なる位相角度で発生した複数の放電を捕捉する。
【0084】
PD和は、シングルサイクルモードよりマックスホールドモードが使われる場合により敏感なPD指標となる。なぜなら、シングルサイクルモードで対象となるのは単一の電力周波数サイクルであって、この単一サイクル中にPDが発生しなければ、PDは検出されないからである。PDが間欠的に出現する状況でも、つまり全てのサイクルではなく一部のサイクルでしかPDが出現しない場合でも、マックスホールドモードを使えばPD和はゼロ以外になる。
【0085】
PD源(例えばケーブル、コネクタ等)が劣化するにつれ、PDパルスはより低い瞬間電圧レベルで発生するため、放電はより広い位相範囲にわたって分散する。したがって、マックスホールドモード記録のPD和は、電源電圧ピークで放電するケーブルの場合に小さい値から始まるが(例えば90度または270度)、ケーブルが劣化するにつれて放電の位相拡散に比例して増加する。したがって、マックスホールドモードのPD和はPDの振幅と位相拡散に対し敏感である。
【0086】
マックスホールドモード記録のときに、PD和は一桁台の値から、例えば単発的PDパルスから、数千まで、例えば全てのサイクルに出現する重度のPDまで、変化することがある。ユーザにとって扱いやすい範囲でPD和を表現する簡便な手段は「PD重大度」であり、ここではこれを20log(PD和+1)と定義する。PD重大度は通常、ゼロから約70の範囲におよび、シングルサイクルモードよりマックスホールドモードで高くなる。マックスホールドモードで測定されたPD重大度から補償係数を減算することにより、シングルサイクルモードで測定されたPD重大度にマックスホールドモードで測定されたPD重大度を比較することができる。
【0087】
例えば、マックスホールドモードでは35のPD重大度が測定され、シングルサイクルモードではこれと同じ信号が21として測定される。マックスホールドの測定値から14を減算すると、シングルサイクルモードに等しい値21が得られる。
【0088】
(a)電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブルで感知される部分放電(PD)パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定することと、(b)前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出することと、(c)前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出することと、を含む方法が提供される。
【0089】
マックスホールド・シングルサイクルステートマシン
上述したように、PDパルスの記録はシングルサイクルモードとマックスホールドモードのいずれかで行える。電力ケーブルや装置でPDが見られるようになったばかりのときには、PDパルスは殆どの電力周波数信号サイクルで発生しない可能性がある。このため、特にPDが数分に一度しか活発でない場合には、シングルサイクルモードでPDをまったく検出できない可能性がある。したがって、最初は、複数のサイクルにわたって、例えば5サイクルにわたって、最高信号点を検出するマックスホールドモードを使用すると有利である。
【0090】
PD源が、例えば電力ケーブルや装置が、劣化し、PDが広まると、マックスホールドモードでは、複数のサイクルで記録された放電の著しい重複が見られるようになる。つまり、PDパルスは複数のサイクルで同じ位相に通常発生し、重複するため、マックスホールドモードではPD和が増加しない。ただし通常は、PD源がさらに劣化するにつれてこれらの放電の位相拡散は増大する。例えば、最初は90度で発生していたPDパルスがその後拡散し、86度から94度の範囲にまたがることがある。多数の高振幅点は記録を飽和させる傾向がある。この場合はシングルサイクルモードに切り替えるのが望ましい。後ほどPDが減少した場合は、PD検出器をマックスホールドモードに戻すべきである。
【0091】
つまり、PD活動レベルが低い場合はPD和が低くなる傾向があり、PD活動の記録にはマックスホールドモードが適している。PD活動レベルが高い場合はPD和が高くなる傾向があり、PD活動の記録にはシングルサイクルモードが適している。マックスホールドモードとシングルサイクルモードの自動切り替えはPD検出器のダイナミックレンジを増大させ、ブランクでもなく飽和もしていない波の波形分析を可能にする。
【0092】
ステートマシンを使用すれば、PD和の閾レベルで2つの記録モードを切り替えることができる。この場合は、必要以上の切り替えを防ぐためある程度のヒステリシスが導入される。両モードで比較できる尺度を使用するため、マックスホールドモードで測定されたPD和は補償係数で割ることができる。
【0093】
図8はPD検出器130(図2)でマックスホールドモードとシングルサイクルモードとの切り替えを制御するステートマシンの状態図である。このステートマシンはマイクロコントローラ240にて、例えばプログラムモジュール260の命令に従って作動するプロセッサ250によって、実現できる。
【0094】
記録はマックスホールドモードで始まる。マックスホールドモード記録の始めにPD和はゼロに戻され、複数の電力周波数サイクルにわたり、例えば5サイクルにわたり、記録が行われる。記録の後には記録中に取得されたデータに基づいてPD和が計算される。PD和を補償係数で割ったものが値500を上回ると、PD検出器130はシングルサイクルモードに切り替わる。PD和を補償係数で割ったものが500以下なら、PD検出器130はマックスホールドモードにとどまる。
【0095】
シングルサイクルモードでは記録の始めにPD和がゼロに戻され、単一電力周波数サイクルにわたって記録が行われる。記録の後には記録中に取得されたデータに基づいてPD和が計算される。PD和が300以上なら、PD検出器130はシングルサイクルモードにとどまる。PD和が300未満なら、PD検出器130はマックスホールドモードに切り替わる。
【0096】
原データスケール−線形または対数
上述したPDパラメータは、具体的には基線、ノイズ変動、最高ピーク振幅、PD和、およびPD重大度は、シングルサイクルモードとマックスホールドモードの両方で計算される。それぞれのデータサンプル(例えば信号235Aのサンプル)の値は、バンドパスフィルタ(例えばバンドパスフィルタ215A)の出力(例えば信号217A)の対数に比例する。あるいは、これらの値はフィルタ出力(例えば信号217A)の振幅に正比例する。
【0097】
警報基準(特に急激な変化に関係する警報)
図3を再び参照する。予防し得る故障に先立ち定期メンテナンスのスケジュールを組む目的で、給電線上に1つ以上の欠陥を見つけ、ケーブルおよび装置の劣化を追跡するため、上述したPDパラメータは、具体的には基線、ノイズ変動、最高ピーク振幅、PD和、およびPD重大度は、監視装置365へ伝達される。これにより、機能停止を防いで費用のかかる緊急サービスを最小限に抑えることができるほか、費用のかかるケーブルの一斉交換を回避し、ケーブルを引き続き長期間使用することができる。
【0098】
ケーブルや装置を修理または交換するため作業班を差し向けると、そのつど多大な費用がかかるため、警報を生成する基準を定めると有益である。警報を受けた管理者は機能停止が起こる前に特定の位置に注意を向けることができる。上述したパラメータは絶対閾の超過に基づく「基準警報」と呼ばれる警報を生成するほか、増分閾の超過に基づく「変化警報」と呼ばれる警報を生成する。
【0099】
PD検出器の設置段階には複数チャネルのPDレベルがメモリに記憶される。絶対閾に達する前には、すなわち基準警報が生成される前には、1つ以上のチャネルにおけるPDパラメータの増加に応じて変化警報を発出できる。このときメモリに記憶された値は新たなPDレベルによって更新される。短い間隔で再発する変化警報はケーブルの急激な劣化と解釈でき、管理者は疑わしい位置に注意を向けることができる。
【0100】
例えば、PD検出器333(図3)のチャネル1〜5のいずれかでPD重大度が値40に達するかこれを上回る場合は、基準警報が監視装置365へ送信される。これとは別に、PD重大度が以前に測定したレベルから大幅に増加する場合は(例えば値23から10増えて値33になると)、変化警報が送信される。
【0101】
ピーク電流測定
上述したように、劣化ケーブルは、アークやそれ自体をクリアする一時的短絡から、非常に短い高電流パルスを被ることもある。そのようなパルスはピーク電流記録器211(図2)によって測定できる。図3を再び参照する。PD検出器304、333、および353はピーク電流記録器211を含む。
【0102】
誘導結合器302、332、および352、PD検出器304、333、および353、ならびに例えば電力線通信、無線、または他の媒体によりPD検出器304、333、および353を監視装置365へ接続するデータ通信基盤を利用し、電流パルスのレベルをPD検出器304、333、および353により記録することができる。電流パルスが一定のレベルを、例えばケーブルの最大電流定格を、超過する場合には、マイクロコントローラ240から(これの出力135を経由し)監視装置365へ警報を送信できる。監視装置365は、例えばヒトによって監視される。監視装置365へ送信された警報を評価することによって電力ケーブルのメンテナンスを行うか否かを判断する。
【0103】
電力ケーブルによって給電される全ての機器がケーブルの短絡により機能停止する場合を検討する。各PD検出器のピーク電流検出器は該当するPD検出器の位置でケーブルの電流を測定する。短絡より上流の位置では、すなわちケーブルの給電点とPD検出器との間では、非常に高い故障電流が測定されるが、下流のPD検出器では、ヒューズ等の保護装置がケーブルを給電点から切り離すまでは、正常負荷電流が測定される。ケーブル上に測定される電流のパターンは短絡の凡その位置を示す。ただし、PD検出器が故障のため自身の電力が失われる前にこの情報を伝えることができなければ、この情報は失われる。
【0104】
好適な実施形態において、それぞれのPD検出器は、例えばPD検出器304は、バッテリ(図示せず)等、独自の予備電源を有する。これにより、PD検出器304は監視装置365へ警報を送信するまで作動状態に保たれる。電力線上に配置された複数のPD検出器304、333、および353で、機能停止前のピーク電流のパターンは短絡故障の位置を示す。例えば、電力入力位置と故障位置との間にあるPD検出器では故障電流が測定されるが、故障より先のPD検出器では正常負荷電流だけが測定される。
【0105】
(a)電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定することと、(b)前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定することと、(c)前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断することと、を含む方法が提供される。この閾は電力ケーブルの最大電流定格に設定してよい。第1の電流と第2の電流は連続する。あるいは、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である。プロセッサ370はプログラムモジュール385に従ってこの方法を遂行する。
【0106】
図9はピーク電流記録器211(図2参照)の回路図である。ピーク電流記録器211は、イングレスおよびPDを拒絶するため増幅器およびローパスフィルタ、すなわち増幅器−フィルタ905と、両極の電流ピークに対し等しく敏感な全波整流器910と、信号をA/D変換器の入力範囲にスケールする増幅器915と、ピーク検出器920と、を含む。ピーク検出器920はキャパシタC44を有し、キャパシタC44はアナログメモリとして機能し、デジタルデータメモリへ転送される最新の最高値を記憶する。
【0107】
正常動作で、ピーク電流値は、給電線電流の二乗平均平方根(rms)値に正弦波形の2の平方根に等しい波高率を掛けたものに等しくなる。200アンペアrms定格の典型的ケーブルの場合、正常ピーク電流値は282アンペアに達する。この値を超過すると監視装置365へ警報が送信される。
【0108】
ここで説明した手法は例であって、本開示を制限するものとして解釈すべきものではない。当業者によって様々な代案、組み合わせ、および変更が考案され得ることを理解されたい。例えば、ここで説明したプロセッサ関連のステップは、別段の指定がない限り、あるいはステップそのものによって決定づけられる場合を除き、任意の順序で遂行できる。本開示は、添付の請求項の範囲内にあるこのような代案、変更、および差異を包含する。
【0109】
用語「comprises」または「comprising」は、機能、整数、ステップ、または部品の存在を明記するものとして解釈すべきものであって、1つ以上の他の機能、整数、ステップ、または部品、またはこれらのグループの存在を排除するものとして解釈すべきものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ケーブル上で感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、
前記電気ケーブル上で前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断することと、
前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、
前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断することと、
を備える、方法。
【請求項2】
電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブル上で感知される部分放電(PD)複数パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定することと、
前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出することと、
前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出することと、
を備える、方法。
【請求項3】
前記PD和が警報閾値を超過する場合に警報を発出することをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PD和は第1の時間における第1のPD和であって、
前記方法はさらに、
時間の経過後に前記測定することと、減算することと、合計することとを繰り返すことにより、第2の時間における第2のPD和を産出することと、
前記第2のPD和と前記第1のPD和との差が閾値を上回る場合に警報を発出することと、を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定することと、
前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定することと、
前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断することと、
を備える、方法。
【請求項6】
前記第1の電流と前記第2の電流は、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
閉じられたときに電力線からノイズを通過させ、且つ開いているときに前記ノイズを通過させない、スイッチと、
前記スイッチの下流に位置し、増幅出力を生成する、増幅器と、
チャネルであって、
特定の周波数帯域内にある前記増幅出力のスペクトル成分を通過させることにより、フィルタ済み出力を産出するフィルタと、
前記フィルタ済み出力の値を複数の時間に検出することにより、一連の値を産出する検出器と、を有する、チャネルと、
プロセッサであって、
(a)前記スイッチが開いているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第1の基線値を得、
(b)前記スイッチが閉じているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第2の基線値を得、且つ
(c)前記第2の基線値と前記第1の基線値との差を判断することにより、増幅器ノイズを上回る電力線ノイズの余剰分を表す余剰値を産出する、プロセッサと、
を備える、システム。
【請求項8】
前記プロセッサはまた、
(d)前記余剰値が所定の閾を超過する場合に前記チャネルを部分放電検出器として不適格とみなす、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備えるシステムであって、該命令は前記プロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上で感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定し、
前記電気ケーブル上で前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断し、
前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定し、且つ
前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断する、システム。
【請求項10】
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備えるシステムであって、該命令は前記プロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブルで感知される部分放電(PD)パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定し、
前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出し、且つ
前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出する、システム。
【請求項11】
前記命令により、前記プロセッサは、前記PD和が警報閾値を超過する場合に警報を発出する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記PD和は第1の時間における第1のPD和であって、
前記命令により、前記プロセッサは、
時間の経過後に前記測定、減算、および合計を繰り返すことにより、第2の時間における第2のPD和を産出し、
前記第2のPD和が前記第1のPD和を閾値分より多く上回る場合に警報を発出する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備えるシステムであって、該命令は前記プロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定する操作と、
前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定する操作と、
前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断する操作とを遂行する、システム。
【請求項14】
前記第1の電流と前記第2の電流は、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
命令を収容する非一時的記憶媒体であって、該命令はプロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上で感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定し、
前記電気ケーブル上で前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断し、
前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定し、且つ
前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断する、非一時的記憶媒体。
【請求項16】
命令を収容する非一時的記憶媒体であって、該命令はプロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブルで感知される部分放電(PD)パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定し、
前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果振幅を産出し、且つ
前記結果振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出する、非一時的記憶媒体。
【請求項17】
前記命令により、前記プロセッサは、前記PD和が警報閾値を超過する場合に警報を発出する、請求項16に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項18】
前記PD和は第1の時間における第1のPD和であって、
前記命令により、前記プロセッサは、
時間の経過後に前記測定、減算、および合計を繰り返すことにより、第2の時間における第2のPD和を産出し、
前記第2のPD和が前記第1のPD和を閾値分より多く上回る場合に警報を発出する、請求項16に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項19】
命令を収容する非一時的記憶媒体であって、該命令はプロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定する操作と、
前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定する操作と、
前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断する操作と、遂行する、非一時的記憶媒体。
【請求項20】
前記第1の電流と前記第2の電流は、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である、請求項19に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項1】
電気ケーブル上で感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、
前記電気ケーブル上で前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断することと、
前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定することと、
前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断することと、
を備える、方法。
【請求項2】
電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブル上で感知される部分放電(PD)複数パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定することと、
前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出することと、
前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出することと、
を備える、方法。
【請求項3】
前記PD和が警報閾値を超過する場合に警報を発出することをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PD和は第1の時間における第1のPD和であって、
前記方法はさらに、
時間の経過後に前記測定することと、減算することと、合計することとを繰り返すことにより、第2の時間における第2のPD和を産出することと、
前記第2のPD和と前記第1のPD和との差が閾値を上回る場合に警報を発出することと、を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定することと、
前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定することと、
前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断することと、
を備える、方法。
【請求項6】
前記第1の電流と前記第2の電流は、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
閉じられたときに電力線からノイズを通過させ、且つ開いているときに前記ノイズを通過させない、スイッチと、
前記スイッチの下流に位置し、増幅出力を生成する、増幅器と、
チャネルであって、
特定の周波数帯域内にある前記増幅出力のスペクトル成分を通過させることにより、フィルタ済み出力を産出するフィルタと、
前記フィルタ済み出力の値を複数の時間に検出することにより、一連の値を産出する検出器と、を有する、チャネルと、
プロセッサであって、
(a)前記スイッチが開いているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第1の基線値を得、
(b)前記スイッチが閉じているときの前記一連の値の最低値を判断することにより、第2の基線値を得、且つ
(c)前記第2の基線値と前記第1の基線値との差を判断することにより、増幅器ノイズを上回る電力線ノイズの余剰分を表す余剰値を産出する、プロセッサと、
を備える、システム。
【請求項8】
前記プロセッサはまた、
(d)前記余剰値が所定の閾を超過する場合に前記チャネルを部分放電検出器として不適格とみなす、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備えるシステムであって、該命令は前記プロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上で感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定し、
前記電気ケーブル上で前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断し、
前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定し、且つ
前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断する、システム。
【請求項10】
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備えるシステムであって、該命令は前記プロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブルで感知される部分放電(PD)パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定し、
前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果複数振幅を産出し、且つ
前記結果複数振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出する、システム。
【請求項11】
前記命令により、前記プロセッサは、前記PD和が警報閾値を超過する場合に警報を発出する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記PD和は第1の時間における第1のPD和であって、
前記命令により、前記プロセッサは、
時間の経過後に前記測定、減算、および合計を繰り返すことにより、第2の時間における第2のPD和を産出し、
前記第2のPD和が前記第1のPD和を閾値分より多く上回る場合に警報を発出する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備えるシステムであって、該命令は前記プロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定する操作と、
前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定する操作と、
前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断する操作とを遂行する、システム。
【請求項14】
前記第1の電流と前記第2の電流は、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
命令を収容する非一時的記憶媒体であって、該命令はプロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上で感知される部分放電パルスの第1のスペクトル成分の最高振幅を測定し、
前記電気ケーブル上で前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅が発生した電力周波数信号の位相を判断し、
前記位相で前記部分放電パルスの第2のスペクトル成分の最高振幅を測定し、且つ
前記第1のスペクトル成分の前記最高振幅と前記第2のスペクトル成分の前記最高振幅との関係に基づき、前記部分放電パルスが発生した前記電気ケーブル上の位置を判断する、非一時的記憶媒体。
【請求項16】
命令を収容する非一時的記憶媒体であって、該命令はプロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電気ケーブル上の電力信号の1サイクルの複数の位相にわたって前記電気ケーブルで感知される部分放電(PD)パルスのスペクトル成分の複数のピーク振幅を測定し、
前記複数のピーク振幅からバックグラウンドノイズレベルを減算することにより、結果振幅を産出し、且つ
前記結果振幅を合計することにより、前記電気ケーブル上のPD活動の大きさを表すPD和を産出する、非一時的記憶媒体。
【請求項17】
前記命令により、前記プロセッサは、前記PD和が警報閾値を超過する場合に警報を発出する、請求項16に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項18】
前記PD和は第1の時間における第1のPD和であって、
前記命令により、前記プロセッサは、
時間の経過後に前記測定、減算、および合計を繰り返すことにより、第2の時間における第2のPD和を産出し、
前記第2のPD和が前記第1のPD和を閾値分より多く上回る場合に警報を発出する、請求項16に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項19】
命令を収容する非一時的記憶媒体であって、該命令はプロセッサにより読み取り可能であり、該命令が前記プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサは、
電力ケーブル上の第1の位置で閾を超過する第1の電流の第1の大きさを測定する操作と、
前記電力ケーブル上の第2の位置で前記閾を超過しない第2の電流の第2の大きさを測定する操作と、
前記第1の大きさと前記第2の大きさとの関係に基づき、前記電力ケーブル上の故障の位置を判断する操作と、遂行する、非一時的記憶媒体。
【請求項20】
前記第1の電流と前記第2の電流は、持続期間が約1ミリ秒〜約500ミリ秒の過渡電流である、請求項19に記載の非一時的記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2013−521513(P2013−521513A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−557113(P2012−557113)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027116
【国際公開番号】WO2011/109674
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(503233211)アンビエント・コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027116
【国際公開番号】WO2011/109674
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(503233211)アンビエント・コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】
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