説明

電力線通信システム、電力線通信装置及びコネクタ装置

【課題】給電装置との間で充電ケーブルを介した電力線通信を行う機能を備えた車輌において、電力線通信を実現するための装置の小型化を可能とする電力線通信システム、電力線通信装置及びコネクタ装置を提供する。
【解決手段】電力線通信に必要なカップリングトランス15をコネクタ装置3に設ける。カップリングトランス15は、コネクタ装置3の筒状部32に嵌合される円環状のトロイダルコア15aにAC線11及び信号配線13をそれぞれ巻回して構成する。コネクタ装置3の筒状部32には、トロイダルコア15aに巻回されたAC線11及び信号配線13を納める切り欠きを形成する。また、AC線11にコイル17aを接続し、AC線12にコンデンサ17bを接続し、コイル17a及びコンデンサ17bをAC線11、12に沿って設けられる配線17cで接続してフィルタ回路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車等の外部給電によるバッテリの充電が可能な車輌と、外部の給電装置とが充電ケーブルを介して電力線通信を行う電力線通信システム、またこのシステムのために車輌に搭載される電力線通信装置及びコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ及びバッテリ等の装置を搭載し、バッテリに蓄積した電力にてモータを駆動することで走行する電気自動車及びハイブリッド自動車が普及し始めている。電気自動車は外部の給電装置からバッテリへの充電を行う必要があり、またハイブリッド自動車であっても外部の給電装置からバッテリへの充電を可能としたプラグインハイブリッド自動車がある。外部からバッテリへの充電を行う車輌においては、外部の給電装置に接続された充電ケーブルのプラグを車輌に設けられた給電口のコネクタ装置に接続して、給電装置から車輌のバッテリへ充電ケーブルを介した電力供給が行われ、バッテリが充電される。
【0003】
特許文献1においては、互いに区画された直流受電部及び交流受電部を単一構造の受電コネクタ内に配置すると共に、受電コネクタの開口端面全域を開閉自在に覆う第1のキャップと、この第1のキャップに設けられて、交流受電部に対応する位置に開口された透設孔を閉塞可能にする第2のキャップとを有する構成とし、交流受電部及び直流受電部を集約して一体化構造とした電気自動車用充電コネクタが提案されている。
【0004】
一方で、給電装置から車輌のバッテリへの充電を行う場合、充電制御のための情報、及び、充電量又は課金の管理等を行うための情報を、車輌及び給電装置の間で送受信する通信機能が必要となる。
【0005】
特許文献2においては、複数の電動車輌と供給管理装置とが電力線通信を行い、各々が交流電力を供給可能に構成された複数の電動車輌から共通の電力消費部への交流電力の供給を可能とした電力システムが提案されている。この電力システムでは、電力線通信により供給開始指示を受信した複数の車輌が識別ID(IDentifier)を他の車輌へ送信し、いずれかの車輌がマスターであると決定して他の車輌へマスターの通知を送信する。マスターの車輌は、自身の周期に従う交流電圧を生成し、他の車両はマスターの車輌に同期した交流電圧を生成し、複数の車輌が連携して電力負荷への電力供給を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−192826号公報
【特許文献2】特開2008−035665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の電力システムのように、車輌と外部の装置とが電力線通信を行うためには、電力線に信号を重畳させると共に電力線に重畳された信号を取り出すためのカップリングトランスなどの部品を回路基板に実装した電力線通信装置(PLC(Power Line Communication)車載器)を車輌に搭載する必要がある。カップリングトランスなどの部品は小型化するにもある程度の限度があるため、PLC車載器(の回路基板)が大型化する傾向があった。電気自動車などの車輌では多数の電子機器が搭載され、車輌内における機器の配設スペースは限られているため、PLC車載器の小型化が望まれる。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、給電装置との間で充電ケーブルを介した電力線通信を行う機能を備えた車輌において、電力線通信を実現するための装置の小型化を可能とする電力線通信システム、電力線通信装置及びコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電力線通信システムは、車輌及び給電装置を充電ケーブルで接続し、該充電ケーブルを介して前記車輌に搭載された電力線通信装置及び前記給電装置の間で電力線通信を行う電力線通信システムにおいて、前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、前記電力線通信装置は、前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線間に接続されたフィルタ回路と、一方又は両方の電力供給用内部配線に設けられた一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを有し、前記給電装置は、前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線間に接続されたフィルタ回路と、一方又は両方の電力供給用内部配線に設けられた一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを有し、前記電力線通信装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路と、前記充電ケーブルの2本の電力供給用配線と、前記給電装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路とによって、電流ループ回路を構成するようにしてあり、前記電力線通信装置及び前記給電装置は、各信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電力線通信システムは、前記電力線通信装置が、前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を有し、該コネクタ装置は、前記充電ケーブルとの接続を行うための複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、前記2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線と、前記コネクタ本体に設けられ、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部と、該筒状部の外回りに配された環状磁性体と、該環状磁性体に巻回された信号配線とを有し、一方又は両方の電力供給用内部配線は、前記環状磁性体に巻回されており、前記環状磁性体、前記一方又は両方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により、前記電力線通信装置の電磁誘導式の信号変換器が構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電力線通信システムは、前記信号配線と、前記一方又は両方の電力供給用内部配線とは、前記環状磁性体に重ねて巻回されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電力線通信装置は、車輌に接続された充電ケーブルを介して外部装置との間で電力線通信を行う電力線通信装置において、前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線間に接続されたフィルタ回路と、一方又は両方の電力供給用内部配線に設けられた一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを備え、該信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電力線通信装置は、前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を備え、該コネクタ装置は、前記充電ケーブルとの接続を行うための複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、前記2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線と、前記コネクタ本体に設けられ、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部と、該筒状部の外回りに配された環状磁性体と、該環状磁性体に巻回された信号配線とを有し、一方又は両方の電力供給用内部配線は、前記環状磁性体に巻回されており、前記環状磁性体、前記一方又は両方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により前記信号変換器が構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る電力線通信装置は、前記信号配線と、前記一方又は両方の電力供給用内部配線とは、前記環状磁性体に重ねて巻回されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るコネクタ装置は、複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線とを備えるコネクタ装置において、前記コネクタ本体に設けられ、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部と、該筒状部の外回りに配された環状磁性体と、該環状磁性体に巻回された信号配線とを備え、一方又は両方の電力供給用内部配線は、前記環状磁性体に巻回されており、前記環状磁性体、前記一方又は両方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により電力線通信のための電磁誘導式の信号変換器が構成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記信号配線と、前記一方又は両方の電力供給用内部配線とは、前記環状磁性体に重ねて巻回されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記環状磁性体が、前記筒状部に外嵌するようにしてあり、前記筒状部には、前記環状磁性体に巻回された前記一方又は両方の電力供給用内部配線の巻回部分を収める切り欠きが形成してあることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記切り欠きは、前記環状磁性体に巻回された前記一方又は両方の電力供給用内部配線の巻回部分と共に、前記環状磁性体に巻回された前記信号配線を収めるよう形成してあることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るコネクタ装置は、複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線とを備えるコネクタ装置において、一方の電力供給用内部配線が挿通し、且つ、他方の電力供給用内部配線が挿通しないように配された環状磁性体と、該環状磁性体に巻回された信号配線とを備え、前記環状磁性体、前記一方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により電力線通信のための電磁誘導式の信号変換器が構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記2本の電力供給用内部配線の間に接続されたフィルタ回路を更に備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記フィルタ回路が、複数の電子部品で構成され、該複数の電子部品は、前記電力供給用内部配線に沿って設けられる配線で接続してあることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記2本の電力供給用内部配線の間に接続されたサージ保護用の保護素子を更に備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記電力供給用内部配線中に設けられたヒューズを更に備えることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、2本の電力供給用配線(単相3線式の交流給電における2本のAC(Alternating Current)線(即ち接地用配線以外の2本の配線))を含む充電ケーブル
を接続することによって、車輌に搭載された電力線通信装置と給電装置とが充電ケーブルを介した電力線通信を行う。電力線通信装置及び給電装置は、充電ケーブルの電力供給用配線に接続される2つの電力供給用内部配線間に接続したフィルタ回路と、一方又は両方の電力供給用内部配線に設けた電磁誘導式の信号変換器とを備える。
なお電力線通信装置の信号変換器と給電装置の信号変換器とを一方の電力供給用内部配線に設ける場合は、充電ケーブルの一方の(共通の)電力供給用配線に接続される電力供給用内部配線にそれぞれ設ける。またフィルタ回路は、コイル及び/又はコンデンサ等で構成することができる。信号変換器は、一方又は両方の電力供給用内部配線を磁性体のコアに巻き付けて1次コイルとし、電力線通信回路などに接続される信号配線を同コアに巻き付けて2次コイルとして構成することができる。
この構成では、車輌及び給電装置間を充電ケーブルで接続した場合に、電力線通信装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路と、充電ケーブルの2本の電力供給用配線と、給電装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路とによって、閉じられた電流ループ回路が構成される。車輌の電力線通信装置及び給電装置は、それぞれが有する信号変換器を利用して充電ケーブル(一方又は両方の電力供給用内部配線及び電力供給用配線)に対する信号の重畳及び重畳された信号の取り出しを行うことができ、電力線通信を行うことができる。
電力線通信方式では2つの電力供給用内部配線間に信号変換器を接続して信号の重畳及び取り出しを行う構成が一般的であるが、この構成では大型のチョークコイルなどを備える必要があるため、電力線通信装置が大型化する虞がある。これに対して本発明の構成では、チョークコイルなどを備える必要がない。ただし本発明の構成では信号変換器のコアをなす磁性体が、信号変換器を電力供給用内部配線間に接続する一般的な構成と比較して大型化する虞があるが、後述のように信号変換器のコアは、充電ケーブル接続のためのコネクタ装置と一体的に設けることができる。
【0025】
本発明においては、充電ケーブルが接続されるコネクタ装置に電力線通信のための信号変換器を設け、電力線通信装置の小型化(コネクタ装置を含めた車輌内における電力線通信のための装置全体での小型化)を実現する。
コネクタ装置は、充電ケーブルとの接続を行うための複数の接続端子を収容するコネクタ本体に、接続端子に接続された複数の内部配線を挿通させる筒状部を設け、この筒状部の外回りに信号変換器のコアをなす環状磁性体を配する。筒状部を挿通する複数の内部配線には2本の電力供給用内部配線を含み、環状磁性体には一方又は両方の電力供給用内部配線を巻回すると共に、電力線通信の信号を伝達する信号配線を巻回して設ける。環状磁性体に巻回された一方又は両方の電力供給用内部配線及び信号配線が1次コイル及び2次コイルとなり、電磁誘導式の信号変換器が構成される。
これにより、電力線通信装置の回路基板などには大型の信号変換器を設ける必要がないため、電力線通信装置を小型化することができ、更には車輌内の他の機器(例えばボディECU(Electronic Control Unit))などとCPU(Central Processing Unit)を共通化して電力線通信装置を一体化することも可能となる。
【0026】
また、本発明においては、1次コイルをなす電力供給用内部配線と、2次コイルをなす信号配線とを、環状磁性体に重ねて巻回する。例えば、環状磁性体にまず信号配線を巻回し、その上から電力供給用内部配線を巻回する(巻回の順番は逆でもよい)。これにより漏れ磁束が低減され、電力線通信の通信特性が向上する。
【0027】
また、本発明においては、コネクタ装置の筒状部には、環状磁性体に巻回された一方又は両方の電力供給用内部配線の巻回部分を収める切り欠きを形成する。これにより、環状磁性体は電力供給用内部配線が巻回された状態でコネクタ装置の筒状部に外嵌させることができ、コネクタ装置の組み立てなどを容易化することができる。
【0028】
また、本発明においては、電力供給用内部配線の巻回部分と共に、環状磁性体に巻回された信号配線の巻回部分を収めるよう切り欠きを形成する。これにより、環状磁性体に巻回された電力供給用内部配線及び信号配線を切り欠きに収めることができるため、コネクタ装置の組み立てなどを容易化することができる。また特に、電力供給用内部配線及び信号配線を重ねて環状磁性体に巻回する構成の場合、これらの巻回部分を一の切り欠きに収めることで、コネクタ装置を小型化することができる。
【0029】
また、本発明においては、コネクタ装置の筒状部の外回りに環状磁性体を設けるのではなく、一方の電力供給用内部配線を環状磁性体に挿通させて設ける構成とする。この構成では、他方の電力供給用内部配線は環状磁性体を挿通せず、信号配線は環状磁性体に巻回して設けられる。なお、一方の電力供給用配線は、環状磁性体に巻回して設けてもよく、環状磁性体に巻回せずに挿通するのみであってもよい。
【0030】
また、本発明においては、2本の電力供給用内部配線の間にフィルタ回路を接続する。電力線通信装置の回路基板などではなく、2本の電力供給用内部配線に直接的にフィルタ回路を接続する構成とすることによって、電力線通信装置を更に小型化することができる。
なお、2本の電力供給用内部配線が接続される車輌の充電器又はコンバータ等の装置が、電力供給用内部配線間に接続すべきフィルタ回路のコイル又はコンデンサ等を有する場合、これらのコイル又はコンデンサ等をフィルタ回路として用いてもよい。
【0031】
また、本発明においては、2つの電力供給用内部配線間に接続されるフィルタ回路がコイル及びコンデンサ等の複数の電子部品で構成される場合、これら複数の電子部品をそれぞれ配線で接続する必要がある。この場合に、電子部品が接続される電力供給用内部配線に沿って設けられる配線にて、複数の電子機器を接続する。これにより、電力供給用内部配線を車輌内に敷設する際に、電子部品を接続する配線を電力供給用内部配線に沿って敷設することができる。
【0032】
また、本発明においては、2つの電力供給用内部配線間にサージ保護用の保護素子を接続する。保護素子としては、例えばバリスタなどを用いることができる。車輌の充電中に落雷などが発生し、雷サージなどの影響で車輌の充電系統に過大な電圧がかかった場合であっても、車輌の給電口に設けられるコネクタ装置に保護素子を設けることにより、コネクタ装置より車輌内部の装置をサージから保護することができる。
なお、接続端子から電力供給用内部配線の巻回部分までの間に保護素子を接続した場合には、車輌のより外側でサージの侵入を防止できる。
また、電力供給用内部配線の巻回部分から車輌の充電器などの内部装置までの間に保護素子を接続した場合には、環状磁性体を筒状部の外回りに配する際に保護素子が妨げとならないため、保護素子を有するコネクタ装置の組立容易化などを実現できる。
【0033】
また、本発明においては、電力供給用内部配線中にヒューズを設ける。ヒューズは2本の電力供給用内部配線のいずれに設けてもよい。上記のようにコネクタ装置に保護素子を接続する構成とした場合、ヒューズは保護素子よりも車輌の外側(接続端子と保護素子との間)に設けることが好ましい。車輌の充電中に外部から過大な電流が流れ込んだ場合であっても、ヒューズによって電力供給用内部配線が遮断されるため、過大な電流が以降の受電系統に流れ込むことを防止できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明による場合は、車輌及び給電装置を充電ケーブルで接続することで、電力供給用の2つの配線とこれらの間に接続された2つのフィルタ回路とによって電流ループ回路を構成すると共に、車輌及び給電装置には電力供給用の一方又は両方の内部配線に電磁誘導式の信号変換器を設けて信号の重畳及び取り出しを行う構成とすることにより、信号変換器を電力供給用の内部配線間に接続する電力線通信の構成で必要なチョークコイルなどを備える必要がなく、電力線通信装置の小型化に寄与することができる。
【0035】
また本発明による場合は、充電ケーブルが接続されるコネクタ装置に電力線通信のための信号変換器を設ける。例えば、コネクタに設けた筒状部に2本の電力供給用内部配線を挿通し、筒状部の外回りに設けた環状磁性体に一方又は両方の電力供給線を巻回すると共に、電力線通信の信号を伝達する信号配線を巻回して設ける構成とすることにより、環状磁性体、一方又は両方の電力供給線、及び信号配線により電磁誘導式の信号変換器が構成される。よって電力線通信装置の回路基板などに信号変換器を設ける必要がなく、電力線通信装置の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る電力線通信システムに対応した電気自動車の内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図4】図3に示したフィルタ回路の一例を示す図表である。
【図5】実施の形態1に係るコネクタ装置の構成を示す外観斜視図である。
【図6】実施の形態1に係るコネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図7】実施の形態1に係るコネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図8】実施の形態2に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図9】実施の形態2に係るコネクタ装置の構成を示す外観斜視図である。
【図10】実施の形態2に係るコネクタ装置の構成を示す外観斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図12】実施の形態3に係るコネクタ装置の一構成例を示す外観斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図14】実施の形態4に係るコネクタ装置の一構成例を示す外観斜視図である。
【図15】図15は、実施の形態5に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図16】本発明の実施の形態5に係る電力線通信システムに対応した電気自動車の内部構成を示すブロック図である。
【図17】実施の形態5に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図18】実施の形態5に係るコネクタ装置の構成を示す外観斜視図である。
【図19】実施の形態5に係るコネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図20】実施の形態5に係るコネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図21】実施の形態5に係るコネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図22】実施の形態5に係るコネクタ装置の構成を示す正面図である。
【図23】実施の形態5に係るコネクタ装置の構成を示す背面図である。
【図24】実施の形態5に係る電力線通信システムの効果を説明するための模式図である。
【図25】実施の形態6に係るコネクタ装置の構成を示す外観斜視図である。
【図26】実施の形態6に係るコネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図27】実施の形態6に係る電力線通信システムの効果を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。本実施の形態では、電気自動車(車輌)のバッテリを充電するために充電スタンド(給電装置)と電気自動車とを充電ケーブルにて接続した際、充電制御、ユーザ認証又は課金管理等の情報を、充電ケーブルを利用した電力線通信によって、電気スタンドと電気自動車との間で送受信する構成を例に説明する。
【0038】
電気自動車及び充電スタンドを接続する充電ケーブルは、交流電圧が印加される2本の電力供給用配線(以下、単にAC線という)71、72と、接地電位に接続される接地用配線(図1において図示は省略する)とを含んでいる。本実施の形態では、2本のAC線と1本の接地用配線とによる3線式の交流電圧を充電スタンドから電気自動車へ供給する。
【0039】
充電スタンドは、充電ケーブルのAC線71、72に接続され、電源からの交流電圧が印加される電力供給用の2本の内部配線(以下、単にAC線という)51、52を有している。また充電スタンドでは、2本のAC線51、52間にコンデンサ56が接続され、一方のAC線51には、充電ケーブルの接続点からコンデンサ56の接続点までの間にカップリングトランス(電磁誘導式の信号変換器)55が設けられている。なお、AC線51、52間のコンデンサ56は、バンドパスフィルタ回路を構成するものである。またカップリングトランス55は、1次側がAC線51に接続され、2次側が充電スタンド内の電力線通信部(図示は省略する)に接続されている。
【0040】
同様に、電気自動車は、充電ケーブルのAC線71、72に接続され、充電スタンド及び充電ケーブルからの電力を車輌内の充電器へ導く電力供給用の2本の内部配線(以下、単にAC線という)11、12を有している。また電気自動車では、2本のAC線11、12間にコンデンサ16が接続され、一方のAC線11には、充電ケーブルの接続点からコンデンサ16の接続点までの間にカップリングトランス15が設けられている。なお、AC線11、12間のコンデンサ16は、バンドパスフィルタ回路を構成するものであるが、充電器内に同様のコンデンサが搭載されている場合にはこのコンデンサと共用としてもよい。またカップリングトランス15は、1次側がAC線11に接続され、2次側が電気自動車内の電力線通信部(図1において図示は省略する)に接続されている。
【0041】
充電スタンド及び電気自動車を充電ケーブルで接続することによって、充電スタンドのAC線51、充電ケーブルのAC線71及び電気自動車のAC線11が接続された通電経路と、充電スタンドのAC線52、充電ケーブルのAC線72及び電気自動車のAC線12が接続された通電経路との2つの電力供給用の経路が構成される。このとき、カップリングトランス15が設けられた電気自動車のAC線11と、カップリングトランス55が設けられた充電スタンドのAC線51とが充電ケーブルの同一のAC線71を介して接続されるように、充電ケーブルの接続位置の位置決めが行われる構成であることが好ましい。充電スタンド及び電気自動車が充電ケーブルで接続された状態では、上記の2つの電力供給用の経路とコンデンサ16、56とによって閉じられた電流ループ回路が構成され、このループ内に配されたカップリングトランス15、55によりAC線11、51、71に対する信号の重畳及び重畳された信号の取り出しを行うことができ、充電スタンド及び電気自動車間で電力線通信を行うことができる。
【0042】
図2は、本発明に係る電力線通信システムに対応した電気自動車の内部構成を示すブロック図であり、電気自動車の充電及び通信に係るブロックを示してある。本実施の形態に係る電気自動車1には、ボディECU2、コネクタ装置3、充電器4、バッテリ5及びパワーマネジメントECU6等が搭載されている。本実施の形態に係る電気自動車1では、電力線通信を行うために必要なカップリングトランス15をコネクタ装置3に設け、電力線通信により送受信する情報の処理又は信号の処理を行う電力線通信部22をボディECU2に設けることによって、電力線通信を行うための機能をボディECU2及びコネクタ装置3に分散・統合した構成である。即ち、ボディECU2の電力線通信部22及びコネクタ装置3のカップリングトランス15によって本実施の形態に係る電力線通信装置が構成されている。
【0043】
ボディECU2は、電気自動車1のドアのロック/アンロック制御、又は、ヘッドライトなどの点灯制御等を行うものであり、制御部21、電力線通信部22、無線通信部23、CAN(Controller Area Network)通信部24及び電源回路25等を備えて構成され
ている。制御部21は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置で構成され、ボディECU2内の各部の動作制御及び各種の演算処理等を行っている。特に本実施の形態において制御部21は、電気自動車1のパワーマネジメントECU6とデータの授受が可能に構成されており、パワーマネジメントECU6から与えられた送信データを電力線通信部22へ与えて電力線通信によるデータ送信を行うと共に、電力線通信部22が電力線通信により受信した受信データをパワーマネジメントECU6へ与える処理を行う。
【0044】
電力線通信部22は、コネクタ装置3に設けられたカップリングトランス15に信号配線13を介して接続されている(ただし、信号配線13は、カップリングトランス15のトロイダルコア15aに巻回されることで2次コイルを構成するものであり、カップリングトランス15の一部でもある)。電力線通信部22は、制御部21から与えられた送信データに応じた信号を信号配線13に出力することでカップリングトランス15によるAC線11への信号重畳を行い、充電ケーブルを介した充電スタンドへのデータ送信を行う。また電力線通信部22は、信号配線13上の信号を取得することによって、AC線11に重畳された充電スタンドからの信号を取り出し、この信号に応じた受信データを制御部21へ与える。
【0045】
無線通信部23は、ユーザが所持する携帯電話器など、車輌内外の通信機器との間で無線通信を行うものである。CAN通信部24は、電気自動車1に搭載された他の装置との間で有線の通信を行うものである。無線通信部23及びCAN通信部24は、制御部21から与えられたデータの送信を行うと共に、受信したデータを制御部21へ与える。電源回路25は、電気自動車1のバッテリ5(又は別のバッテリであってもよい)から供給される電力を、電圧値の調整などを行ってボディECU2内の各部へ供給する。
【0046】
コネクタ装置3は、電気自動車1に充電ケーブルを接続するためのものであり、複数の接続端子が設けられたコネクタ本体30と、電力線通信用のカップリングトランス15及びフィルタ回路17とを備えて構成されている。コネクタ本体30に設けられた2つの接続端子にはAC線11、12が接続されており、AC線11、12はフィルタ回路17を介して電気自動車1の充電器4に接続されている。なおフィルタ回路17は、例えば図1に示すようにAC線11、12間に接続したコンデンサ16にて実現される。
【0047】
コネクタ装置3に設けられるカップリングトランス15は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15aに、一方のAC線11及び信号配線13を巻回させて構成される。また他方のAC線12は、トロイダルコア15aを挿通して設けられる。なお、コネクタ装置3の詳細な構成については後述する。
【0048】
充電器4は、充電スタンドから供給される電力にてバッテリ5の充電を行うものである。充電スタンドは、例えば電圧が200Vであり、且つ、周波数が50Hz又は60Hzの交流電圧によって電力供給を行うものであるため、充電器4は交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ5へ印加することによって充電を行う。バッテリ5は、電気自動車を走行させるモータ(図示は省略する)の駆動電力を蓄積するものであり、例えばリチウムイオン電池などである。パワーマネジメントECU6は、電気自動車の充電に係る制御を行うものであり、ボディECU2の電力線通信部22による電力線通信にて充電スタンドからの情報(例えば供給電力の電圧値、周波数又は課金情報等)を取得し、取得した情報に基づいて充電器4などの動作を制御することで、充電制御を行う。
【0049】
図3は、実施の形態1に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。図3に示す電力線通信システムの構成は、図1に示した電力線通信システムの構成と略等価であり、トロイダルコア15a、55aを利用したカップリングトランス15、55の構成を具体的に示したものである。なお、電気自動車1のカップリングトランス15と充電スタンドのカップリングトランス55とは略同じ構成であるため、以下では電気自動車1のカップリングトランス15の構成について説明し、充電スタンドのカップリングトランス55については説明を省略する。
【0050】
電力線通信のために電気自動車1のコネクタ装置3に設けられるカップリングトランス15は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15aを用いて構成されている。カップリングトランス15は、一方のAC線11をトロイダルコア15aに(1回転以上)巻回させ、他方のAC線12をトロイダルコア15a内に挿通させると共に、電力線通信部22に接続される信号配線13をトロイダルコア15aに(1回転以上)巻回させた構成である。この構成により、トロイダルコア15aに巻回されたAC線11及びトロイダルコア15aに挿通されたAC線12が一次コイルとなり、トロイダルコア15aに巻回された信号配線13が2次コイルとなって、カップリングトランス15として機能する。
【0051】
また図3に示す例では、AC線11、12間に接続されるフィルタ回路17は、コイル17a及びコンデンサ17bを直列接続した構成である。詳しくは、フィルタ回路17は、一方のAC線11にコイル17aの一端が接続され、コイル17aの他端にコンデンサ17bの一端が接続され、コンデンサ17bの他端が他方のAC線12に接続された構成である。なおフィルタ回路17の構成は図示のものに限らず、電力線通信の通信速度、通信経路の抵抗値及び容量値等、又は、トロイダルコア15aの特性等を考慮し、これらに適した回路構成とすることができる。
【0052】
図4は、図3に示したフィルタ回路17の一例を示す図表であり、フィルタ回路17のコイル17a及びコンデンサ17bについて回路定数の具体例を示したものである。例えば、電力線通信を周波数2〜30MHzの高速通信で行う場合、フィルタ回路17のコイル17aのインダクタンスは10μH以上であることが好ましく、コンデンサ17bの容量は5〜15nF程度であることが好ましい。また例えば、電力線通信を周波数10〜150kHzの低速通信で行う場合、フィルタ回路17のコイル17aのインダクタンスは500μH以上であることが好ましく、コンデンサ17bの容量は0.5〜1.5μF程度であることが好ましい。
【0053】
図5は、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成を示す外観斜視図であり、電気自動車1に搭載された場合に車輌内側となる部分の外観を、一部の部品を分解した状態で図示したものである。また、図6及び図7は、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成を示す側面図であり、図6は図5における奥方からコネクタ装置3を見た構成であり、図7は図5における下方からコネクタ装置3を見た構成である。
【0054】
コネクタ装置3は、2本のAC線11、12及び1本の接地用配線14等が接続される複数の接続端子(図示は省略する)を収容するコネクタ本体30を備えている。コネクタ本体30は、略矩形の板状をなす取付部31と、取付部31の一面の中央に突設された円筒状の筒状部32とを備えている。取付部31の四隅にはそれぞれ取付孔33が形成してあり、電気自動車1の車体の所定位置にねじ等でコネクタ本体30を取り付けることができるようにしてある。なおコネクタ本体30は、筒状部32が設けられた側が車体の内側となるように取り付けられる。
【0055】
コネクタ本体30の取付部31の他面には、円筒状をなし、充電の際に充電ケーブルが挿入して接続されるケーブル接続部34が設けられている。ケーブル接続部34は、AC線11、12及び接地用配線14に接続された複数の接続端子が内部に収容されており、充電ケーブルとの電気的接続がなされる。またケーブル接続部34には、充電ケーブルを接続しない際に接続端子が露出することを防止すべく、開口部分を閉塞するように開閉可能にカバー35が設けられている。
【0056】
ケーブル接続部34内に収容された複数の接続端子に接続されるAC線11、12及び接地用配線14は、コネクタ本体30の取付部31の表裏を貫通し、筒状部32内を挿通する態様で設けられている。筒状部32を挿通して電気自動車1の内部へ配される一方のAC線11は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15aに巻回される。また他方のAC線12及び接地用配線14は、トロイダルコア15aに巻回されず、トロイダルコア15a内を挿通して電気自動車1の内部へ配される。またトロイダルコア15aには、ボディECU2の電力線通信部22に接続される信号配線13が巻回して設けられている。
【0057】
カップリングトランス15を構成するためのトロイダルコア15aは、コネクタ本体30の筒状部32の外側に嵌合するようにしてあり、トロイダルコア15aにAC線11及び信号配線13を巻回した後、トロイダルコア15aを筒状部32に嵌合させることで、コネクタ装置3の組み立てが行われる。
【0058】
また筒状部32には、トロイダルコア15aを嵌合させた際に、トロイダルコア15aに巻回されたAC線11及び信号配線13を収容するための2つの切り欠き32a及び32bが形成されている。切り欠き32a及び32bは、筒状部32の突端に達するように、筒状部32の軸方向へ略矩形に切り欠かれた形状をなしている。
【0059】
AC線11、12及び接地用配線14は、導電線を絶縁体で覆ったものである。一方のAC線11は、トロイダルコア15aに巻回された部分から充電器4に至るまでの適所にて、絶縁体の一部が取り除かれて露出した導電線の部分に、コイル17aの一方の端子が半田付け又は溶接等の方法で接続されている。同様に、他方のAC線12は、筒状部32から延出して充電器4に至るまでの適所にて、絶縁体の一部が取り除かれて露出した導電線の部分に、コンデンサ17bの一方の端子が半田付け又は溶接等の方法で接続されている。コイル17aの他方の端子とコンデンサ17bの他方の端子は、AC線11、12に沿って配された配線17cにて接続されている。これにより、AC線11、12の間に接続されたフィルタ回路17が構成される。
【0060】
2本のAC線11、12は、電気自動車1内にて並べて充電器4まで配されるが、コイル17aの接続位置とコンデンサ17bの接続位置とは、AC線11、12の長さ方向に関して適宜の距離を離してあり、この距離に略等しい長さの配線17cによってコイル17a及びコンデンサ17bが接続されている。これにより、AC線11、12と配線17cとを並べて電気自動車1内に配設することが容易化でき、これらの配線を束ねて適所で折り曲げて配設することも容易である。
【0061】
以上の構成の電力線通信システムは、電力線通信に必要なカップリングトランス15をコネクタ装置3に設け、カップリングトランス15への信号を入出力して電力線通信に係る処理を行う電力線通信部22をボディECU2に設ける構成とすることによって、電気自動車1における電力線通信装置の配設スペースを節約することができる。カップリングトランス15は、コネクタ装置3の筒状部32に嵌合される円環状のトロイダルコア15aにAC線11及び信号配線13をそれぞれ巻回して構成することによって、カップリングトランス15を有さない従来のコネクタ装置と比較して、装置サイズの大型化を最小限に抑えてコネクタ装置3にカップリングトランス15を設けることができる。またサイズの大きいトロイダルコア15aをコネクタ装置3に設けることができるため、トロイダルコア15aを有するカップリングトランス15を用いた電力線通信の通信精度を向上できる。
【0062】
また、電気自動車1及び充電スタンドを充電ケーブルにて接続して、2つの電力供給用の経路(AC線11、71、51の経路及びAC線12、72、52の経路)を構成し、電気自動車1及び充電スタンドにて2つの経路間にそれぞれフィルタ回路を接続して、2つの電力供給用の経路及び2つのフィルタ回路によって閉じられた電流ループ回路を構成することで、一方の経路に設けたカップリングトランス15及び55を利用して電気自動車1及び充電スタンドが電力線通信を行うことができる。2本のAC線11、12間にカップリングトランスを接続して電力線通信を行うのではなく、一方のAC線11にカップリングトランス17を設けて電力線通信を行う構成とすることにより、電気自動車1内にて大型のチョークコイルなどをAC線11、12に接続する必要がなく、装置を小型化することができる。
【0063】
また、コネクタ装置3の筒状部32には、トロイダルコア15aに巻回されたAC線11及び信号配線13を納める切り欠き32a、32bを形成することによって、AC線11及び信号配線13が巻回されたトロイダルコア15aを容易に筒状部32に嵌合させることができるため、コネクタ装置3の組み立てなどを容易化することができる。
【0064】
また、AC線11にコイル17aを接続し、AC線12にコンデンサ17bを接続し、コイル17a及びコンデンサ17bをAC線11、12に沿って設けられる配線17cで接続してフィルタ回路17を構成することにより、ボディECU2又は電力線通信装置等の装置の回路基板にフィルタ回路17を搭載する必要がないため、装置を小型化することができる。またAC線11、12を電気自動車1内に敷設する際に、コイル17a及びコンデンサ17bを接続する配線17cを、AC線11、12と共に容易に敷設することができる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、電力線通信装置の信号処理を行う電力線通信部22をボディECU2に設ける構成としたが、これに限るものではなく、電気自動車1内にボディECU2とは別体の電力線通信装置を搭載し、この電力線通信装置に電力線通信部22を設ける構成としてもよい。この場合であっても、電力線通信装置の回路基板にはカップリングトランス17を搭載する必要がないため、電力線通信装置を小型化できる。また、電力線通信装置の信号処理を行う電力線通信部22を、ボディECU2以外のCPUを有するECUに統合してもよい。
【0066】
また、電力線通信機能を備える車輌として電気自動車1を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、プラグインハイブリッド自動車など、外部からバッテリへの充電を行う機能を有するその他の車輌であってもよい。また、電力線通信機能を備える給電装置として充電スタンドを例に説明を行ったが、これに限るものではなく、充電ケーブルを介して車輌への給電を行う機能を有する他の装置であってもよい。例えばユーザが自宅のコンセントに充電ケーブルを接続して車輌への充電を行う場合、自宅の配電盤などに電力線通信装置を設けるなどの構成であってもよい。また更には、充電ケーブル内に電力線通信を行う回路を搭載する構成であってもよい。
【0067】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。図8に示す電力線通信システムの構成は、トロイダルコア15a、55aを利用したカップリングトランス15、55の構成を具体的に示したものであり、図1に示した電力線通信システムの構成と略等価である。なお、電気自動車1のカップリングトランス15と充電スタンドのカップリングトランス55とは略同じ構成であるため、以下では電気自動車1のカップリングトランス15の構成について説明し、充電スタンドのカップリングトランス55については説明を省略する。
【0068】
実施の形態2のコネクタ装置3に設けられるカップリングトランス15は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15aを用いて構成されている。カップリングトランス15のトロイダルコア15aには、一方のAC線11を挿通させると共に、電力線通信部22に接続される信号配線13を(1回転以上)巻回させてある。なおAC線11は、トロイダルコア15aに1回以上巻回させてもよい。また他方のAC線12は、トロイダルコア15a内を挿通しない。この構成により、トロイダルコア15aに挿通されたAC線11が一次コイルとなり、トロイダルコア15aに巻回された信号配線13が2次コイルとなって、カップリングトランス15として機能する。またAC線11、12間に接続されるフィルタ回路17は、コイル17a及びコンデンサ17bを直列接続した構成である(実施の形態1のフィルタ回路17と同じ構成である)。
【0069】
図9及び図10は、実施の形態2に係るコネクタ装置3の構成を示す外観斜視図である。実施の形態2に係るコネクタ装置3のカップリングトランス15を構成するトロイダルコア15aは、コネクタ本体30の円筒部32より直径が小さい円環状をなしており、円筒部32には嵌合されない。トロイダルコア15aには、一方のAC線11が巻回して設けられると共に、電力線通信部22に接続される信号配線13が巻回して設けられている。他方のAC線12はトロイダルコア15a内を挿通しないように配される。トロイダルコア15aは、コネクタ装置3又は電気自動車1の車体等に固定してもよく、固定せずにAC線11、12及び接地用配線14等と共に束ねて電気自動車1内に敷設してもよい。
【0070】
なお、実施の形態2に係るコネクタ装置3のその他の構成は、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成と同じである。
【0071】
以上の構成の実施の形態2に係るコネクタ装置3は、トロイダルコア15aとこれに巻回したAC線11及び信号配線13とによってカップリングトランス15が構成され、信号配線13に接続された電力線通信部22がAC線11に対する信号の重畳及び重畳された信号の取り出しを行って、電力線通信を行うことができる。トロイダルコア15aをコネクタ本体30の筒状部32に嵌合させない構成とすることによって、コネクタ本体30の構成に関係なくトロイダルコア15aのサイズなどを決定することができる。
【0072】
なお、図9及び図10に示したコネクタ装置3は、一方のAC線11をトロイダルコア15aに巻回した構成であるが、これに限らず、図8に示したようにAC線11をトロイダルコア15a内に挿通するのみの構成であってもよい。トロイダルコア15aは円筒部32より直径が小さい構成としたが、これに限らず、円筒部32と直径が同じ又は円筒部32より直径が大きい構成であってもよい。
【0073】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。実施の形態3に係る電力線通信システムでは、電気自動車の2本のAC線11、12間にバリスタ18が接続されると共に、一方のAC線12中にヒューズ19が設けられる。バリスタ18の接続位置は、AC線11のカップリングトランス15と充電ケーブルが接続される接続端子との間の位置である。またヒューズ19の配設位置は、AC線12において、充電ケーブルが接続される接続端子からバリスタ18の接続位置までの間である。
【0074】
バリスタ18は、端子間の電圧が低い場合に抵抗値が高く、端子間に高電圧が印加された場合に抵抗値が低くなる抵抗素子であり、サージなどの影響でAC線11、12間に高電圧が印加された場合にAC線11、12間をバイパスすることによって、電気自動車の奥方に設けられる充電器などに高電圧が印加されることを防止するためのものである。
【0075】
ヒューズ19は、低格電流以上の大電流が流れた場合に溶断することによって電流経路を遮断する素子である。サージなどの影響で外部からAC線12に大電流が流れ込んだ場合、ヒューズ19がAC線12を遮断することによって、奥方の充電器などに大電流が流れ込むことを防止することができる。
【0076】
図12は、実施の形態3に係るコネクタ装置3の一構成例を示す外観斜視図である。図12に示す実施の形態3のコネクタ装置3は、図5に示した実施の形態1に係るコネクタ装置3に対してバリスタ18を追加して構成したものである。なお、図12においてヒューズ19は図示を省略してある。
【0077】
バリスタ18は2端子の回路部品である。バリスタ18の一方の端子は、AC線11の筒状部32からの延出部分からトロイダルコア15aに巻回された部分までの適所に接続されている。またバリスタ18の他方の端子は、AC線12の筒状部32からの延出部分からコンデンサ17bが接続された部分までの適所に接続されている。バリスタ18の端子とAC線11、12との接続は、AC線11、12の絶縁体の一部を取り除いて露出させた導電線の部分に、バリスタ18の端子を半田付け又は溶接等することで行われている。
【0078】
以上の構成の実施の形態3に係るコネクタ装置3は、AC線11、12間にバリスタ18を接続すると共に、AC線12中にヒューズ19を配設する構成とすることによって、電気自動車1の充電中に落雷などが発生し、サージ電圧又は電流が侵入した場合であっても、これらによって充電器4などの電気自動車1内の機器が破壊されることを防止できる。
【0079】
また、筒状部32からのAC線11、12の延出部分から、トロイダルコア15aにAC線11が巻回された部分までの間にバリスタ18を接続する構成とすることにより、電気自動車1のより外側でのサージによる破壊防止を実現できる。特に、サージによるカップリングトランス15の破壊防止を実現できる。
【0080】
なお、実施の形態3に係るコネクタ装置3のその他の構成は、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。実施の形態4に係る電力線通信システムでは、実施の形態3に係る電力線通信システムと同様に、電気自動車の2本のAC線11、12間にバリスタ18が接続されると共に、一方のAC線12中にヒューズ19が設けられる。ただし実施の形態4に係る電力線通信システムでは、バリスタ18の接続位置は、AC線11のカップリングトランス15とフィルタ回路をなすコンデンサ16との間の位置である。またヒューズ19の配設位置は、AC線12において、充電ケーブルが接続される接続端子からバリスタ18の接続位置までの間である。バリスタ18及びヒューズ19の役割は、実施の形態3に係る電力線通信システムのものと同じである。
【0082】
図14は、実施の形態4に係るコネクタ装置3の一構成例を示す外観斜視図である。図14に示す実施の形態4のコネクタ装置3は、図5に示した実施の形態1に係るコネクタ装置3に対してバリスタ18を追加して構成したものである。なお、図14においてヒューズ19は図示を省略してある。
【0083】
バリスタ18の一方の端子は、AC線11のトロイダルコア15aに巻回された部分からコイル17aが接続された部分までの適所に接続されている。またバリスタ18の他方の端子は、AC線12の筒状部32からの延出部分からコンデンサ17bが接続された部分までの適所に接続されている。バリスタ18の端子とAC線11、12との接続は、AC線11、12の絶縁体の一部を取り除いて露出させた導電線の部分に、バリスタ18の端子を半田付け又は溶接等することで行われている。
【0084】
以上の構成の実施の形態4に係るコネクタ装置3は、AC線11、12間にバリスタ18を接続すると共に、AC線12中にヒューズ19を配設する構成とすることによって、実施の形態3に係るコネクタ装置3と同様に、電気自動車1の充電中に落雷などが発生し、サージ電圧又は電流が侵入した場合であっても、これらによって充電器4などの電気自動車1内の機器が破壊されることを防止できる。
【0085】
また、トロイダルコア15aにAC線11が巻回された部分から、フィルタ回路17が接続された部分までの間にバリスタ18を接続する構成とすることにより、トロイダルコア15aを筒状部32に嵌合させる際に、バリスタ18が嵌合作業の妨げとなることがないため、コネクタ装置3の組み立てを容易化することができる。
【0086】
上述の実施の形態1〜4に係る電力線通信システムは、電気自動車側の一方のAC線11にカップリングトランス15の1次コイルが設けられ、同様に充電スタンド側の一方のAC線51にカップリングトランス55の1次コイルが設けられた構成であるが(図1等参照)、これに限るものではない。
【0087】
なお、実施の形態4に係るコネクタ装置3のその他の構成は、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0088】
(実施の形態5)
図15は、実施の形態5に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。また、図16は、本発明の実施の形態5に係る電力線通信システムに対応した電気自動車1の内部構成を示すブロック図である。実施の形態5に係る電力線通信システムは、充電スタンド側の両方のAC線51、52にカップリングトランス55の1次コイルをそれぞれ設け、これらに対応する2次コイルを充電スタンド内の電力線通信部に接続した構成である。
【0089】
同様に、電気自動車1側の両方のAC線11、12にカップリングトランス15の1次コイルをそれぞれ設け、これらに対応する2次コイルを電気自動車1内のボディECU2が有する電力線通信部22に接続した構成である。ボディECU2の電力線通信部22は、コネクタ装置3に設けられたカップリングトランス15に信号配線13を介して接続されている(ただし、信号配線13は、カップリングトランス15のトロイダルコア15aに巻回されることで2次コイルを構成するものであり、カップリングトランス15の一部でもある)。
【0090】
実施の形態5に係るコネクタ装置3に設けられるカップリングトランス15は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15aに、両方のAC線11、12及び信号配線13を巻回させて構成される。なお、コネクタ装置3の詳細な構成については後述する。
【0091】
図17は、実施の形態5に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。図17に示す電力線通信システムの構成は、図15に示した電力線通信システムの構成と略等価であり、トロイダルコア15a、55aを利用したカップリングトランス15、55の構成を具体的に示したものである。なお、電気自動車1のカップリングトランス15と充電スタンドのカップリングトランス55とは略同じ構成であるため、以下では電気自動車1のカップリングトランス15の構成について説明し、充電スタンドのカップリングトランス55については説明を省略する。
【0092】
実施の形態5に係るコネクタ装置3に設けられるカップリングトランス15は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15aを用いて構成され、一方のAC線11をトロイダルコア15aに(1回転以上)巻回させ、他方のAC線12をトロイダルコア15aに(1回転以上)巻回させ、電力線通信部22に接続される信号配線13をトロイダルコア15aに(1回転以上)巻回させた構成である。この構成により、トロイダルコア15aに巻回されたAC線11、12が一次コイルとなり、トロイダルコア15aに巻回された信号配線13が2次コイルとなって、カップリングトランス15として機能する。
【0093】
なお両AC線11、12は、その巻回方向が逆向きとなるように、トロイダルコア15aに巻回される。即ち、各AC線11、12を流れる電流によって生じるトロイダルコア15a内の磁束が同じ向きとなるように、両AC線11、12の巻回方向を設定してある。これにより、電気自動車1及び充電スタンド間で送受信される電力線通信のための信号が差動信号となり、電力線通信の耐ノイズ特性を向上することができる。またカップリングトランス15の1次コイルの巻き数が増加するため、通信特性を向上することができる。
【0094】
充電スタンド及び電気自動車1を充電ケーブルで接続することによって、充電スタンドのAC線51、充電ケーブルのAC線71及び電気自動車のAC線11が接続された通電経路と、充電スタンドのAC線52、充電ケーブルのAC線72及び電気自動車のAC線12が接続された通電経路との2つの電力供給用の経路が構成される。実施の形態5に係る電力線通信システムでは、充電スタンド及び電気自動車1内において、両方の通電経路に1次コイルが設けられた構成であるため、充電ケーブルの接続方向は任意である。充電スタンド及び電気自動車1が充電ケーブルで接続された状態では、上記の2つの電力供給用の経路とコンデンサ16、56とによって閉じられた電流ループ回路が構成され、このループ内に配されたカップリングトランス15、55によりAC線11、12、51、52、71、72に対する信号の重畳及び重畳された信号の取り出しを行うことができ、充電スタンド及び電気自動車間で電力線通信を行うことができる。
【0095】
図18は、実施の形態5に係るコネクタ装置3の構成を示す外観斜視図であり、電気自動車1に搭載された場合に車輌内側となる部分の外観を図示したものである。また、図19〜図21は、実施の形態5に係るコネクタ装置3の構成を示す側面図であり、図19は図18における上方からコネクタ装置3を見た構成であり、図20は図18における手前側からコネクタ装置3を見た構成であり、図21は図18における下方からコネクタ装置3を見た構成である。また、図22は、実施の形態5に係るコネクタ装置3の構成を示す正面図であり、図23は、実施の形態5に係るコネクタ装置3の構成を示す背面図である。
【0096】
コネクタ装置3は、2本のAC線11、12及び1本の接地用配線14等が接続される複数の接続端子(図示は省略する)を収容するコネクタ本体30を備えている。コネクタ本体30は、略矩形の板状をなす取付部31と、取付部31の一面の中央に突設された円筒状の筒状部32とを備えている。ケーブル接続部34内に収容された複数の接続端子に接続されるAC線11、12及び接地用配線14は、コネクタ本体30の取付部31の表裏を貫通し、筒状部32内を挿通する態様で設けられている。
【0097】
筒状部32を挿通して電気自動車1の内部へ配される二本のAC線11、12は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15aにそれぞれ巻回される。トロイダルコア15aに巻回されたAC線11、12に電流を流すことによって、トロイダルコア15a内には磁束が生じるが、AC線11を流れる電流により生じる磁束の向きと、AC線12を流れる電流により生じる磁束の向きが同じ方向となるように、両AC線11、12はトロイダルコア15aに対して逆向きに巻回されている。
【0098】
また接地用配線14は、トロイダルコア15aに巻回されず、トロイダルコア15a内を挿通して電気自動車1の内部へ配される。またトロイダルコア15aには、ボディECU2の電力線通信部22に接続される信号配線13が巻回して設けられている。
【0099】
カップリングトランス15を構成するためのトロイダルコア15aは、コネクタ本体30の筒状部32の外側に嵌合するようにしてあり、トロイダルコア15aにAC線11、12及び信号配線13を巻回した後、トロイダルコア15aを筒状部32に嵌合させることで、コネクタ装置3の組み立てが行われる。また筒状部32には、トロイダルコア15aを嵌合させた際に、トロイダルコア15aに巻回されたAC線11、12を収容するための2つの切り欠き32aと、信号配線13を収容するための切り欠き32bとが形成されている。切り欠き32a及び32bは、筒状部32の突端に達するように、筒状部32の軸方向へ略矩形に切り欠かれた形状をなしている。
【0100】
また実施の形態5に係るコネクタ装置3は、実施の形態1に係るコネクタ装置3と同様の構成で、フィルタ回路17のコイル17a及びコンデンサ17bが設けられるが、図18〜図23においてコイル17a及びコンデンサ17bの図示は省略する。
【0101】
図24は、実施の形態5に係る電力線通信システムの効果を説明するための模式図である。図24においては、一方のAC線11のみをトロイダルコア15aに巻回した実施の形態1〜4の構成(図中の破線参照)と、両方のAC線11、12をトロイダルコア15aに巻回した実施の形態5の構成(図中の実線参照)とにおける、周波数−S/N比の特性の測定結果をグラフ化して比較してある。
【0102】
図示のように、両方のAC線11、12をトロイダルコア15aに巻回した構成とすることによって、特に低周波数の場合にS/N比が改善されている。また図示の測定結果において、S/N比の平均値を比較すると、一方のAC線11を巻回した構成ではS/N比の平均値が47.0dBであるのに対し、両方のAC線11、12を巻回した構成ではS/N比の平均値が58.9dBであった。
【0103】
以上の構成の実施の形態5に係る電力線通信システムは、コネクタ装置3にて2本のAC線11、12をトロイダルコア15aに巻回させることによってカップリングトランス15の1次コイルとすることによって、一方のAC線11のみをトロイダルコア15aに巻回させる構成と比較して、電力線通信の際のS/N比の向上など、通信特性を向上することができる。
【0104】
なお、実施の形態5に係るコネクタ装置3のその他の構成は、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0105】
(実施の形態6)
図25は、実施の形態6に係るコネクタ装置3の構成を示す外観斜視図であり、電気自動車1に搭載された場合に車輌内側となる部分の外観を図示したものである。また、図26は、実施の形態6に係るコネクタ装置3の構成を示す側面図であり、図25における奥方からコネクタ装置3を見た構成である。実施の形態6に係るコネクタ装置3は、図5及び図6等に示した実施の形態1に係るコネクタ装置3と略同じ構成であるが、トロイダルコア15aに対する信号配線13の巻回位置が実施の形態1に係るコネクタ装置3と異なる。
【0106】
実施の形態6に係るコネクタ装置3は、ボディECU2の電力線通信部22に接続される信号配線13がトロイダルコア15aに巻回され、この巻回部分に重ねて一方のAC線11がトロイダルコア15aに巻回されている。即ち、信号配線13がAC線11と同じ位置に巻回されている。
【0107】
また筒状部32に形成された切り欠き32aは、トロイダルコア15aが筒状部32に外嵌された場合に、トロイダルコア15aに巻回されたAC線11の巻回部分と信号配線13の巻回部分とが収容できる。このため、実施の形態6に係るコネクタ装置3の筒状部32には、信号配線13のみを収容する切り欠き32bは形成されていない。
【0108】
図27は、実施の形態6に係る電力線通信システムの効果を説明するための模式図である。図27においては、AC線11及び信号配線13をトロイダルコア15aの異なる位置に巻回した実施の形態1の構成(図中の破線参照)と、AC線11及び信号配線13をトロイダルコア15aの同じ位置に重ねて巻回した実施の形態6の構成(図中の実線参照)とにおける、伝送路減衰特性の測定結果をグラフ化して比較してある。このグラフは、横軸を周波数とし、縦軸を伝送路減衰率としたものである。なお伝送路減衰率は、送信信号に対する受信信号の信号強度の比率を対数(デシベル)で表したものであり、その値が0に近いほど信号が減衰せずに受信されることを示している。
【0109】
図示のように、AC線11及び信号配線13を重ねてトロイダルコア15aに巻回した構成とすることによって、特に1MHz〜20MHzの周波数にて、伝送路減衰率が改善されている。これは、AC線11及び信号配線13を重ねて巻回することによって、カップリングトランス15の漏れ磁束が低減されるためであると考えられる。
【0110】
以上の構成の実施の形態6に係る電力線通信システムは、コネクタ装置3にてAC線11及び信号配線13を重ねてトロイダルコア15aに巻回させる構成とすることによって、AC線11及び信号配線13をトロイダルコア15aの異なる位置に巻回させる構成と比較して、電力線通信の際の伝送路減衰特性の向上など、通信特性を向上することができる。
【0111】
なお、実施の形態6においては、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成に対して、AC線11及び信号配線13を重ねてトロイダルコア15aに巻回させた構成のコネクタ装置3について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2〜5に係るコネクタ装置3についても同様に、AC線11(実施の形態5の構成ではAC線11、12)と信号配線13とを重ねてトロイダルコア15aに巻回させる構成としてよく、これにより通信特性を向上することができる。
【0112】
なお、実施の形態6に係るコネクタ装置3のその他の構成は、実施の形態1に係るコネクタ装置3の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0113】
1 電気自動車(車輌)
2 ボディECU(電力線通信装置)
3 コネクタ装置
11 AC線(一方の電力供給用内部配線)
12 AC線(他方の電力供給用内部配線)
13 信号配線
14 接地用配線(内部配線)
15 カップリングトランス(電磁誘導式の信号変換器)
15a トロイダルコア(環状磁性体)
16 コンデンサ(フィルタ回路)
17 フィルタ回路
17a コイル(電子部品)
17b コンデンサ(電子部品)
17c 配線
18 バリスタ(保護素子)
19 ヒューズ
21 制御部
22 電力線通信部
30 コネクタ本体
31 取付部
32 筒状部
32a、32b 切り欠き
33 取付孔
51、52 AC線(電力供給用内部配線)
55 カップリングトランス(電磁誘導式の信号変換器)
55a トロイダルコア
56 コンデンサ(フィルタ回路)
71、72 AC線(電力供給用配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌及び給電装置を充電ケーブルで接続し、該充電ケーブルを介して前記車輌に搭載された電力線通信装置及び前記給電装置の間で電力線通信を行う電力線通信システムにおいて、
前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、
前記電力線通信装置は、前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線間に接続されたフィルタ回路と、一方又は両方の電力供給用内部配線に設けられた一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを有し、
前記給電装置は、前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線間に接続されたフィルタ回路と、一方又は両方の電力供給用内部配線に設けられた一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを有し、
前記電力線通信装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路と、前記充電ケーブルの2本の電力供給用配線と、前記給電装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路とによって、電流ループ回路を構成するようにしてあり、
前記電力線通信装置及び前記給電装置は、各信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてあること
を特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
前記電力線通信装置は、前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を有し、
該コネクタ装置は、
前記充電ケーブルとの接続を行うための複数の接続端子と、
該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、
前記2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線と、
前記コネクタ本体に設けられ、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部と、
該筒状部の外回りに配された環状磁性体と、
該環状磁性体に巻回された信号配線と
を有し、
一方又は両方の電力供給用内部配線は、前記環状磁性体に巻回されており、
前記環状磁性体、前記一方又は両方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により、前記電力線通信装置の電磁誘導式の信号変換器が構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の電力線通信システム。
【請求項3】
前記信号配線と、前記一方又は両方の電力供給用内部配線とは、前記環状磁性体に重ねて巻回されていること
を特徴とする請求項2に記載の電力線通信システム。
【請求項4】
車輌に接続された充電ケーブルを介して外部装置との間で電力線通信を行う電力線通信装置において、
前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、
前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、
該2本の電力供給用内部配線間に接続されたフィルタ回路と、
一方又は両方の電力供給用内部配線に設けられた一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器と
を備え、
該信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてあること
を特徴とする電力線通信装置。
【請求項5】
前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を備え、
該コネクタ装置は、
前記充電ケーブルとの接続を行うための複数の接続端子と、
該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、
前記2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線と、
前記コネクタ本体に設けられ、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部と、
該筒状部の外回りに配された環状磁性体と、
該環状磁性体に巻回された信号配線と
を有し、
一方又は両方の電力供給用内部配線は、前記環状磁性体に巻回されており、
前記環状磁性体、前記一方又は両方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により前記信号変換器が構成されていること
を特徴とする請求項4に記載の電力線通信装置。
【請求項6】
前記信号配線と、前記一方又は両方の電力供給用内部配線とは、前記環状磁性体に重ねて巻回されていること
を特徴とする請求項5に記載の電力線通信装置。
【請求項7】
複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線とを備えるコネクタ装置において、
前記コネクタ本体に設けられ、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部と、
該筒状部の外回りに配された環状磁性体と、
該環状磁性体に巻回された信号配線と
を備え、
一方又は両方の電力供給用内部配線は、前記環状磁性体に巻回されており、
前記環状磁性体、前記一方又は両方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により電力線通信のための電磁誘導式の信号変換器が構成されていること
を特徴とするコネクタ装置。
【請求項8】
前記信号配線と、前記一方又は両方の電力供給用内部配線とは、前記環状磁性体に重ねて巻回されていること
を特徴とする請求項7に記載のコネクタ装置。
【請求項9】
前記環状磁性体は、前記筒状部に外嵌するようにしてあり、
前記筒状部には、前記環状磁性体に巻回された前記一方又は両方の電力供給用内部配線の巻回部分を収める切り欠きが形成してあること
を特徴とする請求項7又は請求項8に記載のコネクタ装置。
【請求項10】
前記切り欠きは、前記環状磁性体に巻回された前記一方又は両方の電力供給用内部配線の巻回部分と共に、前記環状磁性体に巻回された前記信号配線を収めるよう形成してあること
を特徴とする請求項9に記載のコネクタ装置。
【請求項11】
複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、2本の電力供給用内部配線を含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線とを備えるコネクタ装置において、
一方の電力供給用内部配線が挿通し、且つ、他方の電力供給用内部配線が挿通しないように配された環状磁性体と、
該環状磁性体に巻回された信号配線と
を備え、
前記環状磁性体、前記一方の電力供給用内部配線及び前記信号配線により電力線通信のための電磁誘導式の信号変換器が構成されていること
を特徴とするコネクタ装置。
【請求項12】
前記2本の電力供給用内部配線の間に接続されたフィルタ回路を更に備えること
を特徴とする請求項7乃至請求項11のいずれか1つに記載のコネクタ装置。
【請求項13】
前記フィルタ回路は、複数の電子部品で構成され、
該複数の電子部品は、前記電力供給用内部配線に沿って設けられる配線で接続してあること
を特徴とする請求項12に記載のコネクタ装置。
【請求項14】
前記2本の電力供給用内部配線の間に接続されたサージ保護用の保護素子を更に備えること
を特徴とする請求項7乃至請求項13のいずれか1つに記載のコネクタ装置。
【請求項15】
前記電力供給用内部配線中に設けられたヒューズを更に備えること
を特徴とする請求項7乃至請求項14のいずれか1つに記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−151824(P2012−151824A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147599(P2011−147599)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】