電動アクチュエータの電子回路装置
【課題】応力緩和構造を具備しない端子31B(端子群102)の折損を防止する。
【解決手段】コントロールユニットは、複数のバスバーを合成樹脂材料で板状に一体化してなるバスバーモジュール20と、これに重ねて配置される制御基板21と、からなり、バスバーモジュール20にはスイッチング素子等の大電流のパワー部品が実装され、制御基板21には小電力の電子部品が実装される。制御基板21は複数の係止爪33によって保持され、X方向に拘束される。バスバー側縁から切り起こしされた複数のピン状の端子31Bが制御基板21のスルーホールを貫通して制御基板21にハンダ付けされる。一部の端子31BはU字形等に湾曲した応力緩和構造を具備する。端子群102の端子31Bは応力緩和構造を具備しないが、Y方向に沿ってバスバー側縁から切り起こしされているので、制御基板21がY方向に振動しても折損しにくい。
【解決手段】コントロールユニットは、複数のバスバーを合成樹脂材料で板状に一体化してなるバスバーモジュール20と、これに重ねて配置される制御基板21と、からなり、バスバーモジュール20にはスイッチング素子等の大電流のパワー部品が実装され、制御基板21には小電力の電子部品が実装される。制御基板21は複数の係止爪33によって保持され、X方向に拘束される。バスバー側縁から切り起こしされた複数のピン状の端子31Bが制御基板21のスルーホールを貫通して制御基板21にハンダ付けされる。一部の端子31BはU字形等に湾曲した応力緩和構造を具備する。端子群102の端子31Bは応力緩和構造を具備しないが、Y方向に沿ってバスバー側縁から切り起こしされているので、制御基板21がY方向に振動しても折損しにくい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の電動ブレーキブースタ装置などに用いられる電動アクチュエータの電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ装置において、内燃機関を負圧源とした負圧式ブレーキブースタ装置に代えて、電動アクチュエータ例えば電動モータを利用してマスタシリンダの油圧を増圧するようにした電動ブレーキブースタ装置が近年提案されている。
【0003】
本出願人が先に提案した特許文献1には、ブレーキペダルに連係して軸方向に移動する入力ロッドを中心として同心状に構成される3相交流ブラシレスモータをアクチュエータとした電動ブレーキブースタ装置が開示されており、この3相交流ブラシレスモータの駆動・制御を行うインバータ回路を含む電子回路装置つまりコントロールユニットが、電動モータのハウジングの上面に一体に搭載された構成となっている。
【0004】
上記コントロールユニットは、パワー部品を実装するとともに複数のバスバーを合成樹脂材料で一体化したバスバーモジュールと、このバスバーモジュールの上に重ねて配置されたプリント配線基板からなる制御基板と、を含んで構成されており、上記バスバーモジュールから上方へ立ち上がった複数のピン状の端子が上記制御基板のスルーホールに挿入され、かつハンダ付けにより上記制御基板に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−132103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の制御基板は、上記バスバーモジュールの上に適宜な間隙を保った状態に保持されるものであり、上記特許文献1ではネジを用いてバスバーモジュールに対し固定されているが、このようにネジ止めする構成では、コントロールユニットの組立が煩雑となる不具合がある。
【0007】
一方、上記の制御基板の固定構造として、合成樹脂材料で成形されるバスバーモジュール自体に複数の係止爪を形成し、これらの係止爪を合成樹脂材料の弾性を利用して制御基板の側縁に係合させることで制御基板をバスバーモジュール上に保持するようにした、いわゆるスナップフィット構造を採用したとすると、複数の係止爪が制御基板を両側から挟持している方向については制御基板が拘束されるものの、これと直交する方向についての拘束力は弱いため、車両の走行振動などによって制御基板がバスバーモジュールに対し微小変位し易い。そのため、バスバーモジュールから上方へ立ち上がって先端が制御基板に固定されているピン状の端子に応力が作用し、端子の付け根となるバスバーとの接続部から折損するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電動アクチュエータの電子回路装置は、
電動アクチュエータのハウジングに取り付けられるケーシングと、
このケーシング内に配置され、上記電動アクチュエータを駆動するパワー部品が実装されるとともに、複数のバスバーを合成樹脂材料で一体化してなるバスバーモジュールと、
このバスバーモジュールに重ねて配置され、上記バスバーモジュールに一体に成形された複数の係止爪によって両側縁から保持されるとともに、上記バスバーモジュールから立ち上がるように上記バスバーから切り起こしされた端子を含む複数の端子がスルーホールを介して接続される制御基板と、
を備えている。
【0009】
そして、上記バスバーから上記制御基板に接続される端子は、上記係止爪による上記制御基板の拘束方向と直交する方向に沿って上記バスバー側縁から切り起こしされている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、バスバーモジュールに重ねて配置される制御基板がスナップフィット構造としてバスバーモジュール上に保持されるので、組付工程が簡単になり、かつスナップフィット構造の場合に問題となる端子の折損を、その切り起こしの方向をスナップフィット構造の拘束方向と直交する方向とすることで、効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】モータユニットのハウジングにコントロールユニットを組み付けた電動ブレーキブースタ装置の斜視図。
【図2】この電動ブレーキブースタ装置のコントロールユニットの分解斜視図。
【図3】バスバーモジュールの上面側を示す斜視図。
【図4】図3のA部の拡大斜視図。
【図5】バスバーモジュールの上面に制御基板を重ねた状態を示す斜視図。
【図6】バスバーモジュールの下面側を示す斜視図。
【図7】ケーシングの上面側を示す斜視図。
【図8】ケーシングの下面側を示す斜視図。
【図9】センサ用コネクタを通る断面に沿った要部の断面図。
【図10】バスバーの配索状態を示す斜視図。
【図11】同じく平面図。
【図12】応力緩和構造の一例を示す端子の正面図。
【図13】応力緩和構造の他の例を示す端子の正面図。
【図14】図5のB−B線に沿った要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を車両の電動ブレーキブースタ装置に適用した一実施例について詳細に説明する。
【0013】
図1は、モータユニット1のハウジング2にコントロールユニット3を組み付けたブレーキブースタ装置全体の構成を示し、図2は、その分解斜視図を示している。
【0014】
上記モータユニット1は、車体のエンジンルームと車室とを仕切る図示せぬバルクヘッドに取り付けられるものであって、ブレーキペダルに連係して軸方向に移動する入力ロッド(図示せず)が図右側の筒状部4内に位置し、これと同心状をなすように構成された3相交流ブラシレスモータからなる電動モータ(図示せず)がハウジング2内に収容されている。従って、ハウジング2は、基本的に、内部の電動モータに対応した略円筒形状をなしている。そして、バルクヘッドに片持ち状に支持されるハウジング2の先端部中央に、ブレーキ系統へ油圧を供給するマスタシリンダ5が装着されており、上述した特許文献1と同様に、上記入力ロッドを介したブレーキペダルの操作量に応じて上記電動モータによってマスタシリンダ5の増圧作用が得られる構成となっている。
【0015】
上記モータユニット1のハウジング2は、例えばアルミニウム合金のダイキャストなどからなり、図2に示すように、その上面(換言すれば周面の一部)に、コントローラ取付部7を備えている。このコントローラ取付部7は、上面が開口した略矩形の箱状をなすように周壁部8によって囲まれた機電接続室9と、その両側にそれぞれ設けられた一対のフランジ部10と、からなり、上記周壁部8の頂部には、機電接続室9の全周に亘って連続したOリング等のシール部材11が配設されている。上記機電接続室9内には、コントロールユニット3側の3つの出力端子15とそれぞれ接続される電動モータの3つの入力端子(図示せず)が配置されている。そして、周壁部8の一部には、これら出力端子15と入力端子との接続作業(ネジ止め)を行うための作業孔16が開口している。この作業孔16は、最終的に、図示せぬプラグの装着によって閉塞される。
【0016】
上記コントロールユニット3は、図2に示すように、上面が開口した箱状をなすアルミニウム合金等のダイキャストからなるケーシング18と、このケーシング18の上面開口に装着される同じくアルミニウム合金等のダイキャストあるいは板金プレス成形品からなるカバー19と、これらのケーシング18とカバー19とからなる空間の内部に収容されるバスバーモジュール20と、このバスバーモジュール20の上面に重ねて配置されるプリント配線基板からなる制御基板21と、から大略構成されている。上記バスバーモジュール20は、複数本のネジ22によって上記ケーシング18の内部に固定され、上記カバー19は、このバスバーモジュール20と上記制御基板21とを覆うように、複数本のネジ23によって上記ケーシング18に取り付けられている。そして、上記ケーシング18は、上記モータユニット1側のフランジ部10に螺合する複数本のネジ24によって上記コントローラ取付部7の上に取り付けられている。
【0017】
図3〜図6は、上記バスバーモジュール20を示している。上記バスバーモジュール20は、3相交流モータを駆動するための相対的に大きな電流が流れる銅板もしくは黄銅板からなる複数のバスバー31(図10,図11参照)を絶縁性合成樹脂材料でもって板状に一体化した構成のものであって、その一側部には、電源用コネクタと制御信号用コネクタとを一体化してなる偏平な筒状をなすメインコネクタ26が一体に成形されている。図3,図5に示すように、メインコネクタ26の制御信号用コネクタに至る複数の制御信号用端子27は、バスバー31と導通することなく個々に上方へ立ち上がっている。また各バスバー31には、バスバーモジュール20に実装されるパワー部品およびノイズ対策部品の各端子と溶接ないしハンダ付けによって接合される多数の略矩形の端子片31Aと、制御基板21との間での信号伝達用の細いピン状の端子31Bと、が設けられており、図3に示すように、バスバーモジュール20の板状をなす合成樹脂部分からそれぞれ上方へ突出している。ここで、略矩形の端子片31Aは、その突出長が短く、ピン状の端子31Bは、その突出長が相対的に長い。なお、複数のバスバー31は、後述するように、バスバーモジュール20の厚さの中で3次元的に配索されている。
【0018】
図6は、上記バスバーモジュール20の下面側の構成を示しており、この図に示すように、バスバーモジュール20の下面には、3相交流モータを駆動するインバータ回路を構成する6個の半導体スイッチング素子(MOS−FET)35、異常時に電流を遮断/通電するための2つのリレー36、複数個の電解コンデンサ37、回路内のノイズを低減するためのノーマルモードチョークコイル38およびコモンモードチョークコイル39、電流検出用のシャント抵抗40、などのパワー部品およびノイズ対策部品が実装されている。
【0019】
そして、上記バスバーモジュール20の下面中央部には、バスバーモジュール20の下面から壁状に立ち上がった出力端子支持部42が一体に成形されており、ここに、U,V,W相の3つの出力端子15が一列に並んで設けられている。これらの出力端子15は、ケーシング18の底壁に設けられた出力端子用開口部69(図7,図8参照)を貫通し、前述したハウジング2の機電接続室9内において図示せぬ電動モータ側の入力端子にそれぞれネジ止めされる。
【0020】
また、上記バスバーモジュール20の下面の一側部には、同様にバスバーモジュール20の下面から壁状に立ち上がったセンサ用コネクタ45が一体に成形されている。このセンサ用コネクタ45は、電動モータ側のレゾルバと接続されるレゾルバ用コネクタ45Aと、同じく電動モータ側の温度センサと接続される温度センサ用コネクタ45Bと、が一体化されたものであり、やはりケーシング18の底壁に設けられたセンサコネクタ用開口部65(図7,図8参照)を貫通して機電接続室9に臨み、該機電接続室9内において図示せぬレゾルバおよび温度センサとの接続がなされる。
【0021】
上記センサ用コネクタ45における複数本の端子つまりセンサ信号用端子46は、各々独立した細いピン状をなしており、図9に示すように、センサ用コネクタ45の基部の合成樹脂部分を貫通してバスバーモジュール20の上面側へと突出している。これらのセンサ用コネクタ45のセンサ信号用端子46は、バスバーモジュール20に支持されているものの該バスバーモジュール20内部のバスバー31とは導通していない。
【0022】
上記バスバーモジュール20の周縁の複数箇所(実施例では6カ所)には、図4に拡大して示すように、制御基板21を乗せるための円柱状の支持部32と、この支持部32上の制御基板21の周縁と係合するように先端部が膨らんだ係止爪33と、が形成されており、係止爪33の弾性変形を利用したいわゆるスナップフィット構造として制御基板21がバスバーモジュール20上に保持されるようになっている。図示例では、制御基板21の一方の側縁に沿った3カ所に係止爪33が支持部32とともに配置され、かつこれと対向するように他方の側縁に沿った3カ所に係止爪33が支持部32とともに配置されており、これらの互いに対向する向きに設けられた係止爪33によって、制御基板21が両側から挟むようにして保持されている。従って、これらの係止爪33が両側から挟み込んでいる方向(以下、これを便宜上、X方向とする)には、制御基板21は相対的に堅固に拘束されている。しかしながら、このX方向と直交するY方向については、相対的に拘束力が弱いものとなり、制御基板21がY方向に沿って微小変位ないし振動し易い。なお、仮にX,Y両方向にスナップフィット構造として拘束しようとすると、位置合わせ作業を含む組立性が悪化し易い。
【0023】
図5は、上記のように制御基板21がバスバーモジュール20上に保持された状態を示しており、この状態では、制御基板21は、バスバーモジュール20上に重ねて配置され、バスバーモジュール20の上面の大部分を覆っているとともに、係止爪33に隣接して設けられた複数の支持部32によって、バスバーモジュール20上面との間に、端子片31Aとの接触を回避し得るだけの間隙が確保されている。
【0024】
そして、上記端子片31Aよりも上方へと長く延びたいくつかの細いピン状の端子31Bと、上述したメインコネクタ26の複数の制御信号用端子27と、上記センサ用コネクタ45の複数のセンサ信号用端子46と、は、それぞれの先端が制御基板21のスルーホールを貫通し、かつハンダ付けにより制御基板21に接続されている。なお、制御基板21上に設けられている比較的小さな電流が流れる印刷回路および種々の電子部品については、図示省略されている。
【0025】
図7および図8は、上記のバスバーモジュール20が組み合わされるケーシング18を単体で示しており、図7は、ケーシング18の上面つまりバスバーモジュール20が収容される内側の構成を示し、図8は、ケーシング18の下面つまりモータユニット1の機電接続室9を覆う側の構成を示している。これらの図に示すように、略矩形をなすケーシング18の四隅に、前述したカバー19を取り付けるためのネジ23(図2参照)が螺合するネジ孔61が設けられているとともに、ケーシング18の外側に耳状に突出した4箇所に、それぞれ前述したモータユニット1側に固定するためのネジ24(図2参照)が貫通する孔62が設けられている。また、周囲を囲む四辺の側壁の一辺には、上記バスバーモジュール20のメインコネクタ26が嵌め込まれる切欠部63が設けられている。そして、このケーシング18の中央部、詳しくは、上記バスバーモジュール20の半導体スイッチング素子35の領域に対応する位置に、肉厚の矩形ブロック状をなすヒートマス部64が形成されている。このヒートマス部64は、周囲の底壁面から一段高くなっており、その上面が、高熱となる半導体スイッチング素子35に近接する。なお、図示せぬ絶縁材料からなる放熱シートをヒートマス部64上面に貼着し、半導体スイッチング素子35に直接に接触させるようにしてもよい。上記ケーシング18の外側面には、上記ヒートマス部64が受けた熱を放散させるために、多数のフィン65が形成されている。また上記ヒートマス部64に隣接した位置の側壁には、図示せぬ呼吸フィルタが装着される呼吸孔66が開口しており、該呼吸孔66を介してコントロールユニット3内部の空間が外部と連通している。さらに、上記ケーシング18の底壁には、前述したように、バスバーモジュール20の出力端子支持部42が貫通する出力端子用開口部69と、バスバーモジュール20のセンサ用コネクタ45が貫通するセンサコネクタ用開口部70と、がそれぞれスリット状に開口形成されている。
【0026】
次に、上記バスバーモジュール20から上記制御基板21に接続される端子31B,27,46について、より詳細に説明する。
【0027】
図10および図11は、上記バスバーモジュール20として一体化されている複数のバスバー31の配索状態を示しており、メインコネクタ26の制御信号用端子27およびセンサ用コネクタ45のセンサ信号用端子46を併せて示している。前述したように、複数のバスバー31がバスバーモジュール20の厚さの中で3次元的に配索されており、これらのバスバー31は、制御基板21に到達しない突出長の短い端子片31Aと、突出長の長いピン状の端子31Bと、を多数備えている。これらの短い端子片31Aおよびピン状の端子31Bは、いずれも、バスバー31の母材の一部を切り起こしすることによって形成される。
【0028】
なお、「切り起こし」とは、板金加工の一種として、金属板の一部に所望形状に沿って切り込み加工をした上で、その部分を曲げ加工により母材に対し折り曲げる加工をいい、切り込み加工と曲げ加工とを同時に行ってもよく、あるいは両者を別工程として順に行ってもよい。
【0029】
バスバー31から細いピン状に切り起こしされた端子31Bは、前述したように上方へ延びて先端部が制御基板21に接続されているが、一般にこのように細くかつ長い端子は、制御基板21が走行振動などで振動すると応力が集中し、端子の付け根となるバスバー31との接続部から折損するおそれがある。特に、大電流用のバスバー31として、無酸素銅から構成されたバスバー31の場合には、その硬度が高いことから、折損が生じやすい。
【0030】
このような応力集中による折損を回避するために、ピン状の端子31Bの中のいくつかは、バスバーモジュール20側の固定端(つまりバスバー31に接続している端子31Bの付け根)と上記制御基板21側の固定端(制御基板21とのハンダ付け部)との間の中間部に、両者間での応力を緩和する公知の応力緩和構造71を具備している。
【0031】
応力緩和構造71としては、例えば、図12に示すように、バスバー31の側縁から側方へ延びる端子31Bを一旦下方へ曲げた後に上方へU字形に反転させてなる略U字形の構造、あるいは、図13に示すように、バスバー31の側縁から上方へ切り起こしされた端子31Bの中間部を局部的にC字形に湾曲させた構造、などがある。これらの2つの例は、バスバー31の側縁に直線状に切り出した端子31Bを曲げ加工することによって、実現される。このほか、図示していないが、ピン状に切り出す端子の形状そのものに、図13と同様のC字形の応力緩和構造を設けることもできる。
【0032】
このように応力緩和構造71を具備した端子31Bは、例えば図11において符号101でもって示す計4本の端子31Bのように、前述した係止爪33による拘束方向Xに沿ってバスバー31側縁から切り起こしするようにしてもよく、任意の方向に沿って端子31Bの切り起こしが可能である。符号101で示す4本の端子31Bは、制御基板21が拘束力の弱いY方向に沿って振動すると、端子31Bの付け根部分が捩り応力を受けることとなるが、これらの端子31Bはいずれも図12に示したU字形の応力緩和構造71を具備しており、従って、付け根部分に生じる応力が抑制される。なお、図11に符号103でもって示す計12本の端子31Bは、図13に示したC字形の応力緩和構造71を具備しているが、これらは、Y方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしされている。さらに、符号104でもって示す計2本の端子31Bは、図12に示したU字形の応力緩和構造71を具備し、かつY方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしされている。これらの応力緩和構造71を具備した端子31Bについては、制御基板21の微振動による折損の虞は少なく、従って、任意の方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしすることが可能である。
【0033】
これに対し、バスバー31から切り起こしされたピン状の端子31Bのいくつかは、バスバー31の形状ないしレイアウトから生じる加工上の制限などから、応力緩和構造71を具備していない。しかしながら、これらの応力緩和構造71を具備しない端子31Bは、いずれも、前述した係止爪33による拘束方向Xと直交するY方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしされている。図示例では、図11に符号102でもって示す計8本の端子31Bが、このような応力緩和構造71を具備しない端子31Bに該当し、これらの端子31Bは、図14の断面図に示すように、帯状をなすバスバー31の両側縁からY方向に沿って切り起こしされている。つまり、Y方向に沿って母材を曲げ加工したものであり、本質的にY方向に沿った若干の可撓性を有し、Y方向に沿って弾性変形し易い。従って、車両の走行振動などに起因して制御基板21がY方向に振動しても、端子31Bの付け根部分は、切り起こし時の曲げ加工に沿った曲げ応力として応力を受けることとなり、応力緩和構造71がなくても折損が生じにくい。
【0034】
またセンサ用コネクタ45から上方へ延びた複数(例えば8本)のセンサ信号用端子46は、個々にピン状に独立し、かつY方向に沿って90°ずつ2回折れ曲がってクランク状に延びているので、この部分が実質的な応力緩和構造となり、制御基板21がY方向に振動しても、折損は生じにくい。そして、この実施例では、複数のセンサ信号用端子46が上述した応力緩和構造71を具備した端子群103とX方向に沿って一列に並べられている。従って、制御基板21がY方向に振動したときに、各端子31B,46に作用する応力が分散され、端子31B,46の折損がさらに抑制される。
【0035】
またメインコネクタ26から上方へ延びた複数(例えば23本)の制御信号用端子27は、個々にピン状に独立し、かつメインコネクタ26側の固定端から制御基板21側の固定端までの距離が十分に長く確保されていることから、この距離が実質的な応力緩和構造となり、制御基板21がY方向に振動しても、やはり折損は生じにくい。
【0036】
なお、センサ信号用端子46および制御信号用端子27は、小電流の信号ラインとして黄銅製のものとすることができ、無酸素銅を用いたバスバー31の端子31Bに比べて、その材質の点からも折損が生じにくいものとなる。
【0037】
さらに、図示例では、制御基板21の一辺に沿って上記センサ信号用端子46が端子群103とともにX方向に一列に配列されており、これと反対側の一辺に沿って端子群101,103の計4個の端子31Bが同じくX方向に一列に配列されており、さらに、制御基板21の他の一辺に沿って多数の制御信号用端子27がY方向に2本の列として配列されている。つまり、制御基板21の3つの辺に沿って該制御基板21の外周縁に端子31B,46,27が並んでいる。従って、複数の係止爪33によって保持されている制御基板21の回転モーメントがより効果的に抑制される。特に、多数の制御信号用端子27がY方向に並んで配置されているので、制御基板21がY方向に拘束され、係止爪33による拘束力が弱いY方向への振動が抑制される。そして、図示例では、応力緩和構造71を具備しない端子群102の端子31Bがいずれも制御基板21の中央付近に位置しているので、制御基板21の回転モーメントによる変位に対しては、応力緩和構造71を具備しない端子群102の各端子31Bが受ける変位は非常に小さくなり、その折損防止の上で一層有利である。
【0038】
このように、上記実施例のコントロールユニット3においては、バスバーモジュール20に重ねて配置される制御基板21がスナップフィット構造としてバスバーモジュール20上に保持されるので、組付工程が簡単になる。そして、スナップフィット構造の場合に問題となる端子31Bの折損を、その切り起こしの方向をスナップフィット構造の拘束方向と直交する方向とすることで、効果的に抑制することができる。つまり、細いピン状の端子31Bの折損を回避しつつ組付が容易なスナップフィット構造を採用することが可能となる。また、バスバー31の形状ないしレイアウトによってバスバー31から切り起こしされる端子31Bに応力緩和構造を設けることが困難な場合に、その省略が可能となる。
【0039】
以上、本発明を車両の電動ブレーキブースタ装置に適用した一実施例を説明したが、本発明は、これに限られることなく、3相交流電動モータ以外の電動モータ、あるいはモータ以外の電動アクチュエータについても同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…モータユニット
2…ハウジング
3…コントロールユニット
18…ケーシング
19…カバー
20…バスバーモジュール
21…制御基板
27…端子
31…バスバー
31A…端子片
31B…端子
46…端子
71…応力緩和構造
102…応力緩和構造を具備しない端子群
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の電動ブレーキブースタ装置などに用いられる電動アクチュエータの電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ装置において、内燃機関を負圧源とした負圧式ブレーキブースタ装置に代えて、電動アクチュエータ例えば電動モータを利用してマスタシリンダの油圧を増圧するようにした電動ブレーキブースタ装置が近年提案されている。
【0003】
本出願人が先に提案した特許文献1には、ブレーキペダルに連係して軸方向に移動する入力ロッドを中心として同心状に構成される3相交流ブラシレスモータをアクチュエータとした電動ブレーキブースタ装置が開示されており、この3相交流ブラシレスモータの駆動・制御を行うインバータ回路を含む電子回路装置つまりコントロールユニットが、電動モータのハウジングの上面に一体に搭載された構成となっている。
【0004】
上記コントロールユニットは、パワー部品を実装するとともに複数のバスバーを合成樹脂材料で一体化したバスバーモジュールと、このバスバーモジュールの上に重ねて配置されたプリント配線基板からなる制御基板と、を含んで構成されており、上記バスバーモジュールから上方へ立ち上がった複数のピン状の端子が上記制御基板のスルーホールに挿入され、かつハンダ付けにより上記制御基板に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−132103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の制御基板は、上記バスバーモジュールの上に適宜な間隙を保った状態に保持されるものであり、上記特許文献1ではネジを用いてバスバーモジュールに対し固定されているが、このようにネジ止めする構成では、コントロールユニットの組立が煩雑となる不具合がある。
【0007】
一方、上記の制御基板の固定構造として、合成樹脂材料で成形されるバスバーモジュール自体に複数の係止爪を形成し、これらの係止爪を合成樹脂材料の弾性を利用して制御基板の側縁に係合させることで制御基板をバスバーモジュール上に保持するようにした、いわゆるスナップフィット構造を採用したとすると、複数の係止爪が制御基板を両側から挟持している方向については制御基板が拘束されるものの、これと直交する方向についての拘束力は弱いため、車両の走行振動などによって制御基板がバスバーモジュールに対し微小変位し易い。そのため、バスバーモジュールから上方へ立ち上がって先端が制御基板に固定されているピン状の端子に応力が作用し、端子の付け根となるバスバーとの接続部から折損するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電動アクチュエータの電子回路装置は、
電動アクチュエータのハウジングに取り付けられるケーシングと、
このケーシング内に配置され、上記電動アクチュエータを駆動するパワー部品が実装されるとともに、複数のバスバーを合成樹脂材料で一体化してなるバスバーモジュールと、
このバスバーモジュールに重ねて配置され、上記バスバーモジュールに一体に成形された複数の係止爪によって両側縁から保持されるとともに、上記バスバーモジュールから立ち上がるように上記バスバーから切り起こしされた端子を含む複数の端子がスルーホールを介して接続される制御基板と、
を備えている。
【0009】
そして、上記バスバーから上記制御基板に接続される端子は、上記係止爪による上記制御基板の拘束方向と直交する方向に沿って上記バスバー側縁から切り起こしされている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、バスバーモジュールに重ねて配置される制御基板がスナップフィット構造としてバスバーモジュール上に保持されるので、組付工程が簡単になり、かつスナップフィット構造の場合に問題となる端子の折損を、その切り起こしの方向をスナップフィット構造の拘束方向と直交する方向とすることで、効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】モータユニットのハウジングにコントロールユニットを組み付けた電動ブレーキブースタ装置の斜視図。
【図2】この電動ブレーキブースタ装置のコントロールユニットの分解斜視図。
【図3】バスバーモジュールの上面側を示す斜視図。
【図4】図3のA部の拡大斜視図。
【図5】バスバーモジュールの上面に制御基板を重ねた状態を示す斜視図。
【図6】バスバーモジュールの下面側を示す斜視図。
【図7】ケーシングの上面側を示す斜視図。
【図8】ケーシングの下面側を示す斜視図。
【図9】センサ用コネクタを通る断面に沿った要部の断面図。
【図10】バスバーの配索状態を示す斜視図。
【図11】同じく平面図。
【図12】応力緩和構造の一例を示す端子の正面図。
【図13】応力緩和構造の他の例を示す端子の正面図。
【図14】図5のB−B線に沿った要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を車両の電動ブレーキブースタ装置に適用した一実施例について詳細に説明する。
【0013】
図1は、モータユニット1のハウジング2にコントロールユニット3を組み付けたブレーキブースタ装置全体の構成を示し、図2は、その分解斜視図を示している。
【0014】
上記モータユニット1は、車体のエンジンルームと車室とを仕切る図示せぬバルクヘッドに取り付けられるものであって、ブレーキペダルに連係して軸方向に移動する入力ロッド(図示せず)が図右側の筒状部4内に位置し、これと同心状をなすように構成された3相交流ブラシレスモータからなる電動モータ(図示せず)がハウジング2内に収容されている。従って、ハウジング2は、基本的に、内部の電動モータに対応した略円筒形状をなしている。そして、バルクヘッドに片持ち状に支持されるハウジング2の先端部中央に、ブレーキ系統へ油圧を供給するマスタシリンダ5が装着されており、上述した特許文献1と同様に、上記入力ロッドを介したブレーキペダルの操作量に応じて上記電動モータによってマスタシリンダ5の増圧作用が得られる構成となっている。
【0015】
上記モータユニット1のハウジング2は、例えばアルミニウム合金のダイキャストなどからなり、図2に示すように、その上面(換言すれば周面の一部)に、コントローラ取付部7を備えている。このコントローラ取付部7は、上面が開口した略矩形の箱状をなすように周壁部8によって囲まれた機電接続室9と、その両側にそれぞれ設けられた一対のフランジ部10と、からなり、上記周壁部8の頂部には、機電接続室9の全周に亘って連続したOリング等のシール部材11が配設されている。上記機電接続室9内には、コントロールユニット3側の3つの出力端子15とそれぞれ接続される電動モータの3つの入力端子(図示せず)が配置されている。そして、周壁部8の一部には、これら出力端子15と入力端子との接続作業(ネジ止め)を行うための作業孔16が開口している。この作業孔16は、最終的に、図示せぬプラグの装着によって閉塞される。
【0016】
上記コントロールユニット3は、図2に示すように、上面が開口した箱状をなすアルミニウム合金等のダイキャストからなるケーシング18と、このケーシング18の上面開口に装着される同じくアルミニウム合金等のダイキャストあるいは板金プレス成形品からなるカバー19と、これらのケーシング18とカバー19とからなる空間の内部に収容されるバスバーモジュール20と、このバスバーモジュール20の上面に重ねて配置されるプリント配線基板からなる制御基板21と、から大略構成されている。上記バスバーモジュール20は、複数本のネジ22によって上記ケーシング18の内部に固定され、上記カバー19は、このバスバーモジュール20と上記制御基板21とを覆うように、複数本のネジ23によって上記ケーシング18に取り付けられている。そして、上記ケーシング18は、上記モータユニット1側のフランジ部10に螺合する複数本のネジ24によって上記コントローラ取付部7の上に取り付けられている。
【0017】
図3〜図6は、上記バスバーモジュール20を示している。上記バスバーモジュール20は、3相交流モータを駆動するための相対的に大きな電流が流れる銅板もしくは黄銅板からなる複数のバスバー31(図10,図11参照)を絶縁性合成樹脂材料でもって板状に一体化した構成のものであって、その一側部には、電源用コネクタと制御信号用コネクタとを一体化してなる偏平な筒状をなすメインコネクタ26が一体に成形されている。図3,図5に示すように、メインコネクタ26の制御信号用コネクタに至る複数の制御信号用端子27は、バスバー31と導通することなく個々に上方へ立ち上がっている。また各バスバー31には、バスバーモジュール20に実装されるパワー部品およびノイズ対策部品の各端子と溶接ないしハンダ付けによって接合される多数の略矩形の端子片31Aと、制御基板21との間での信号伝達用の細いピン状の端子31Bと、が設けられており、図3に示すように、バスバーモジュール20の板状をなす合成樹脂部分からそれぞれ上方へ突出している。ここで、略矩形の端子片31Aは、その突出長が短く、ピン状の端子31Bは、その突出長が相対的に長い。なお、複数のバスバー31は、後述するように、バスバーモジュール20の厚さの中で3次元的に配索されている。
【0018】
図6は、上記バスバーモジュール20の下面側の構成を示しており、この図に示すように、バスバーモジュール20の下面には、3相交流モータを駆動するインバータ回路を構成する6個の半導体スイッチング素子(MOS−FET)35、異常時に電流を遮断/通電するための2つのリレー36、複数個の電解コンデンサ37、回路内のノイズを低減するためのノーマルモードチョークコイル38およびコモンモードチョークコイル39、電流検出用のシャント抵抗40、などのパワー部品およびノイズ対策部品が実装されている。
【0019】
そして、上記バスバーモジュール20の下面中央部には、バスバーモジュール20の下面から壁状に立ち上がった出力端子支持部42が一体に成形されており、ここに、U,V,W相の3つの出力端子15が一列に並んで設けられている。これらの出力端子15は、ケーシング18の底壁に設けられた出力端子用開口部69(図7,図8参照)を貫通し、前述したハウジング2の機電接続室9内において図示せぬ電動モータ側の入力端子にそれぞれネジ止めされる。
【0020】
また、上記バスバーモジュール20の下面の一側部には、同様にバスバーモジュール20の下面から壁状に立ち上がったセンサ用コネクタ45が一体に成形されている。このセンサ用コネクタ45は、電動モータ側のレゾルバと接続されるレゾルバ用コネクタ45Aと、同じく電動モータ側の温度センサと接続される温度センサ用コネクタ45Bと、が一体化されたものであり、やはりケーシング18の底壁に設けられたセンサコネクタ用開口部65(図7,図8参照)を貫通して機電接続室9に臨み、該機電接続室9内において図示せぬレゾルバおよび温度センサとの接続がなされる。
【0021】
上記センサ用コネクタ45における複数本の端子つまりセンサ信号用端子46は、各々独立した細いピン状をなしており、図9に示すように、センサ用コネクタ45の基部の合成樹脂部分を貫通してバスバーモジュール20の上面側へと突出している。これらのセンサ用コネクタ45のセンサ信号用端子46は、バスバーモジュール20に支持されているものの該バスバーモジュール20内部のバスバー31とは導通していない。
【0022】
上記バスバーモジュール20の周縁の複数箇所(実施例では6カ所)には、図4に拡大して示すように、制御基板21を乗せるための円柱状の支持部32と、この支持部32上の制御基板21の周縁と係合するように先端部が膨らんだ係止爪33と、が形成されており、係止爪33の弾性変形を利用したいわゆるスナップフィット構造として制御基板21がバスバーモジュール20上に保持されるようになっている。図示例では、制御基板21の一方の側縁に沿った3カ所に係止爪33が支持部32とともに配置され、かつこれと対向するように他方の側縁に沿った3カ所に係止爪33が支持部32とともに配置されており、これらの互いに対向する向きに設けられた係止爪33によって、制御基板21が両側から挟むようにして保持されている。従って、これらの係止爪33が両側から挟み込んでいる方向(以下、これを便宜上、X方向とする)には、制御基板21は相対的に堅固に拘束されている。しかしながら、このX方向と直交するY方向については、相対的に拘束力が弱いものとなり、制御基板21がY方向に沿って微小変位ないし振動し易い。なお、仮にX,Y両方向にスナップフィット構造として拘束しようとすると、位置合わせ作業を含む組立性が悪化し易い。
【0023】
図5は、上記のように制御基板21がバスバーモジュール20上に保持された状態を示しており、この状態では、制御基板21は、バスバーモジュール20上に重ねて配置され、バスバーモジュール20の上面の大部分を覆っているとともに、係止爪33に隣接して設けられた複数の支持部32によって、バスバーモジュール20上面との間に、端子片31Aとの接触を回避し得るだけの間隙が確保されている。
【0024】
そして、上記端子片31Aよりも上方へと長く延びたいくつかの細いピン状の端子31Bと、上述したメインコネクタ26の複数の制御信号用端子27と、上記センサ用コネクタ45の複数のセンサ信号用端子46と、は、それぞれの先端が制御基板21のスルーホールを貫通し、かつハンダ付けにより制御基板21に接続されている。なお、制御基板21上に設けられている比較的小さな電流が流れる印刷回路および種々の電子部品については、図示省略されている。
【0025】
図7および図8は、上記のバスバーモジュール20が組み合わされるケーシング18を単体で示しており、図7は、ケーシング18の上面つまりバスバーモジュール20が収容される内側の構成を示し、図8は、ケーシング18の下面つまりモータユニット1の機電接続室9を覆う側の構成を示している。これらの図に示すように、略矩形をなすケーシング18の四隅に、前述したカバー19を取り付けるためのネジ23(図2参照)が螺合するネジ孔61が設けられているとともに、ケーシング18の外側に耳状に突出した4箇所に、それぞれ前述したモータユニット1側に固定するためのネジ24(図2参照)が貫通する孔62が設けられている。また、周囲を囲む四辺の側壁の一辺には、上記バスバーモジュール20のメインコネクタ26が嵌め込まれる切欠部63が設けられている。そして、このケーシング18の中央部、詳しくは、上記バスバーモジュール20の半導体スイッチング素子35の領域に対応する位置に、肉厚の矩形ブロック状をなすヒートマス部64が形成されている。このヒートマス部64は、周囲の底壁面から一段高くなっており、その上面が、高熱となる半導体スイッチング素子35に近接する。なお、図示せぬ絶縁材料からなる放熱シートをヒートマス部64上面に貼着し、半導体スイッチング素子35に直接に接触させるようにしてもよい。上記ケーシング18の外側面には、上記ヒートマス部64が受けた熱を放散させるために、多数のフィン65が形成されている。また上記ヒートマス部64に隣接した位置の側壁には、図示せぬ呼吸フィルタが装着される呼吸孔66が開口しており、該呼吸孔66を介してコントロールユニット3内部の空間が外部と連通している。さらに、上記ケーシング18の底壁には、前述したように、バスバーモジュール20の出力端子支持部42が貫通する出力端子用開口部69と、バスバーモジュール20のセンサ用コネクタ45が貫通するセンサコネクタ用開口部70と、がそれぞれスリット状に開口形成されている。
【0026】
次に、上記バスバーモジュール20から上記制御基板21に接続される端子31B,27,46について、より詳細に説明する。
【0027】
図10および図11は、上記バスバーモジュール20として一体化されている複数のバスバー31の配索状態を示しており、メインコネクタ26の制御信号用端子27およびセンサ用コネクタ45のセンサ信号用端子46を併せて示している。前述したように、複数のバスバー31がバスバーモジュール20の厚さの中で3次元的に配索されており、これらのバスバー31は、制御基板21に到達しない突出長の短い端子片31Aと、突出長の長いピン状の端子31Bと、を多数備えている。これらの短い端子片31Aおよびピン状の端子31Bは、いずれも、バスバー31の母材の一部を切り起こしすることによって形成される。
【0028】
なお、「切り起こし」とは、板金加工の一種として、金属板の一部に所望形状に沿って切り込み加工をした上で、その部分を曲げ加工により母材に対し折り曲げる加工をいい、切り込み加工と曲げ加工とを同時に行ってもよく、あるいは両者を別工程として順に行ってもよい。
【0029】
バスバー31から細いピン状に切り起こしされた端子31Bは、前述したように上方へ延びて先端部が制御基板21に接続されているが、一般にこのように細くかつ長い端子は、制御基板21が走行振動などで振動すると応力が集中し、端子の付け根となるバスバー31との接続部から折損するおそれがある。特に、大電流用のバスバー31として、無酸素銅から構成されたバスバー31の場合には、その硬度が高いことから、折損が生じやすい。
【0030】
このような応力集中による折損を回避するために、ピン状の端子31Bの中のいくつかは、バスバーモジュール20側の固定端(つまりバスバー31に接続している端子31Bの付け根)と上記制御基板21側の固定端(制御基板21とのハンダ付け部)との間の中間部に、両者間での応力を緩和する公知の応力緩和構造71を具備している。
【0031】
応力緩和構造71としては、例えば、図12に示すように、バスバー31の側縁から側方へ延びる端子31Bを一旦下方へ曲げた後に上方へU字形に反転させてなる略U字形の構造、あるいは、図13に示すように、バスバー31の側縁から上方へ切り起こしされた端子31Bの中間部を局部的にC字形に湾曲させた構造、などがある。これらの2つの例は、バスバー31の側縁に直線状に切り出した端子31Bを曲げ加工することによって、実現される。このほか、図示していないが、ピン状に切り出す端子の形状そのものに、図13と同様のC字形の応力緩和構造を設けることもできる。
【0032】
このように応力緩和構造71を具備した端子31Bは、例えば図11において符号101でもって示す計4本の端子31Bのように、前述した係止爪33による拘束方向Xに沿ってバスバー31側縁から切り起こしするようにしてもよく、任意の方向に沿って端子31Bの切り起こしが可能である。符号101で示す4本の端子31Bは、制御基板21が拘束力の弱いY方向に沿って振動すると、端子31Bの付け根部分が捩り応力を受けることとなるが、これらの端子31Bはいずれも図12に示したU字形の応力緩和構造71を具備しており、従って、付け根部分に生じる応力が抑制される。なお、図11に符号103でもって示す計12本の端子31Bは、図13に示したC字形の応力緩和構造71を具備しているが、これらは、Y方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしされている。さらに、符号104でもって示す計2本の端子31Bは、図12に示したU字形の応力緩和構造71を具備し、かつY方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしされている。これらの応力緩和構造71を具備した端子31Bについては、制御基板21の微振動による折損の虞は少なく、従って、任意の方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしすることが可能である。
【0033】
これに対し、バスバー31から切り起こしされたピン状の端子31Bのいくつかは、バスバー31の形状ないしレイアウトから生じる加工上の制限などから、応力緩和構造71を具備していない。しかしながら、これらの応力緩和構造71を具備しない端子31Bは、いずれも、前述した係止爪33による拘束方向Xと直交するY方向に沿ってバスバー31側縁から切り起こしされている。図示例では、図11に符号102でもって示す計8本の端子31Bが、このような応力緩和構造71を具備しない端子31Bに該当し、これらの端子31Bは、図14の断面図に示すように、帯状をなすバスバー31の両側縁からY方向に沿って切り起こしされている。つまり、Y方向に沿って母材を曲げ加工したものであり、本質的にY方向に沿った若干の可撓性を有し、Y方向に沿って弾性変形し易い。従って、車両の走行振動などに起因して制御基板21がY方向に振動しても、端子31Bの付け根部分は、切り起こし時の曲げ加工に沿った曲げ応力として応力を受けることとなり、応力緩和構造71がなくても折損が生じにくい。
【0034】
またセンサ用コネクタ45から上方へ延びた複数(例えば8本)のセンサ信号用端子46は、個々にピン状に独立し、かつY方向に沿って90°ずつ2回折れ曲がってクランク状に延びているので、この部分が実質的な応力緩和構造となり、制御基板21がY方向に振動しても、折損は生じにくい。そして、この実施例では、複数のセンサ信号用端子46が上述した応力緩和構造71を具備した端子群103とX方向に沿って一列に並べられている。従って、制御基板21がY方向に振動したときに、各端子31B,46に作用する応力が分散され、端子31B,46の折損がさらに抑制される。
【0035】
またメインコネクタ26から上方へ延びた複数(例えば23本)の制御信号用端子27は、個々にピン状に独立し、かつメインコネクタ26側の固定端から制御基板21側の固定端までの距離が十分に長く確保されていることから、この距離が実質的な応力緩和構造となり、制御基板21がY方向に振動しても、やはり折損は生じにくい。
【0036】
なお、センサ信号用端子46および制御信号用端子27は、小電流の信号ラインとして黄銅製のものとすることができ、無酸素銅を用いたバスバー31の端子31Bに比べて、その材質の点からも折損が生じにくいものとなる。
【0037】
さらに、図示例では、制御基板21の一辺に沿って上記センサ信号用端子46が端子群103とともにX方向に一列に配列されており、これと反対側の一辺に沿って端子群101,103の計4個の端子31Bが同じくX方向に一列に配列されており、さらに、制御基板21の他の一辺に沿って多数の制御信号用端子27がY方向に2本の列として配列されている。つまり、制御基板21の3つの辺に沿って該制御基板21の外周縁に端子31B,46,27が並んでいる。従って、複数の係止爪33によって保持されている制御基板21の回転モーメントがより効果的に抑制される。特に、多数の制御信号用端子27がY方向に並んで配置されているので、制御基板21がY方向に拘束され、係止爪33による拘束力が弱いY方向への振動が抑制される。そして、図示例では、応力緩和構造71を具備しない端子群102の端子31Bがいずれも制御基板21の中央付近に位置しているので、制御基板21の回転モーメントによる変位に対しては、応力緩和構造71を具備しない端子群102の各端子31Bが受ける変位は非常に小さくなり、その折損防止の上で一層有利である。
【0038】
このように、上記実施例のコントロールユニット3においては、バスバーモジュール20に重ねて配置される制御基板21がスナップフィット構造としてバスバーモジュール20上に保持されるので、組付工程が簡単になる。そして、スナップフィット構造の場合に問題となる端子31Bの折損を、その切り起こしの方向をスナップフィット構造の拘束方向と直交する方向とすることで、効果的に抑制することができる。つまり、細いピン状の端子31Bの折損を回避しつつ組付が容易なスナップフィット構造を採用することが可能となる。また、バスバー31の形状ないしレイアウトによってバスバー31から切り起こしされる端子31Bに応力緩和構造を設けることが困難な場合に、その省略が可能となる。
【0039】
以上、本発明を車両の電動ブレーキブースタ装置に適用した一実施例を説明したが、本発明は、これに限られることなく、3相交流電動モータ以外の電動モータ、あるいはモータ以外の電動アクチュエータについても同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…モータユニット
2…ハウジング
3…コントロールユニット
18…ケーシング
19…カバー
20…バスバーモジュール
21…制御基板
27…端子
31…バスバー
31A…端子片
31B…端子
46…端子
71…応力緩和構造
102…応力緩和構造を具備しない端子群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アクチュエータのハウジングに取り付けられるケーシングと、
このケーシング内に配置され、上記電動アクチュエータを駆動するパワー部品が実装されるとともに、複数のバスバーを合成樹脂材料で一体化してなるバスバーモジュールと、
このバスバーモジュールに重ねて配置され、上記バスバーモジュールに一体に成形された複数の係止爪によって両側縁から保持されるとともに、上記バスバーモジュールから立ち上がるように上記バスバーから切り起こしされた端子を含む複数の端子がスルーホールを介して接続される制御基板と、
を備え、
上記バスバーから上記制御基板に接続される端子は、上記係止爪による上記制御基板の拘束方向と直交する方向に沿って上記バスバー側縁から切り起こしされていることを特徴とする電動アクチュエータの電子回路装置。
【請求項2】
上記バスバーモジュールから上記制御基板に至る複数の端子の中に、バスバーモジュール側の固定端から制御基板側の固定端との間に応力緩和構造を具備している複数の端子を含み、これらの応力緩和構造を具備している端子以外の上記バスバーから上記制御基板に接続される全ての端子が、上記拘束方向と直交する方向に沿って上記バスバー側縁から切り起こしされていることを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータの電子回路装置。
【請求項1】
電動アクチュエータのハウジングに取り付けられるケーシングと、
このケーシング内に配置され、上記電動アクチュエータを駆動するパワー部品が実装されるとともに、複数のバスバーを合成樹脂材料で一体化してなるバスバーモジュールと、
このバスバーモジュールに重ねて配置され、上記バスバーモジュールに一体に成形された複数の係止爪によって両側縁から保持されるとともに、上記バスバーモジュールから立ち上がるように上記バスバーから切り起こしされた端子を含む複数の端子がスルーホールを介して接続される制御基板と、
を備え、
上記バスバーから上記制御基板に接続される端子は、上記係止爪による上記制御基板の拘束方向と直交する方向に沿って上記バスバー側縁から切り起こしされていることを特徴とする電動アクチュエータの電子回路装置。
【請求項2】
上記バスバーモジュールから上記制御基板に至る複数の端子の中に、バスバーモジュール側の固定端から制御基板側の固定端との間に応力緩和構造を具備している複数の端子を含み、これらの応力緩和構造を具備している端子以外の上記バスバーから上記制御基板に接続される全ての端子が、上記拘束方向と直交する方向に沿って上記バスバー側縁から切り起こしされていることを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータの電子回路装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−69737(P2013−69737A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205477(P2011−205477)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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