電動ピンセット
【課題】 電動ピンセットの把持部を閉成状態で回転すると共に把持効率を増加すること。
【解決手段】 電動ピンセット1は、スイッチ33を動作すると、モータ31を第1方向へ回転してカムフォロワ55が並進移動してピンセット20が開放から閉成後、スイッチ33を動作すると、モータ31を第1方向と同一方向へ回転して伝達部70及び回転部80を回転してピンセット20を閉成状態で、ピンセット20を回転させると共に、内側辺と結合部材24とを回動自在にする第1及び第3回動部710,730と、第1及び第2固定側部材26,27を回動自在にする第2及び第4回動部720,740とを備えたものである。
【解決手段】 電動ピンセット1は、スイッチ33を動作すると、モータ31を第1方向へ回転してカムフォロワ55が並進移動してピンセット20が開放から閉成後、スイッチ33を動作すると、モータ31を第1方向と同一方向へ回転して伝達部70及び回転部80を回転してピンセット20を閉成状態で、ピンセット20を回転させると共に、内側辺と結合部材24とを回動自在にする第1及び第3回動部710,730と、第1及び第2固定側部材26,27を回動自在にする第2及び第4回動部720,740とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ピンセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動ピンセットは、発明者が提案した下記特許文献に記載されているように、モータと、該モータを収納するケース部と、該ケース部に縁部が連結固定され、結合部が往復の並進変位量に基づいて先端の開閉量を拡大すると共に、対象物を解放及び把持する把持部材と、前記モータを回転及び停止させるスイッチ手段と、前記ケース部に収納され、前記モータの軸に連結されると共に、前記モータの一方向の回転を、前記把持部材の結合部に対して、所定の往復方向の並進変位量に変換する変換機構と、を備えたものがある (特許文献1)。
【0003】
かかる電動ピンセットによれば、変換機構はモータの一方向の回転を、把持部材の結合部に対して、所定の往復並進変位量に変換し、スイッチ手段がモータを回転・停止する。しかも、把持部材の開閉量が一定になるように把持部材の結合部の並進変位量が所定の値になる。したがって、例えば一定の対象物を把持及び解放する電動ピンセットを容易に得ることができる。
【特許文献1】WO2003/047816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多数の凹部を有するトレーに、小さな表裏のある部品を電動ピンセットで把持してトレーの凹部にセットする場合、上記部品を把持してからピンセットを回転して、上記部品の姿勢を変えてから該トレーの凹部に多数の部品を並べることが行われている。かかる作業、殊に、ピンセットを回転する作業は、健常者は勿論のこと、手に障害を有する障害者にとっても大変煩雑な作業であるということを発明者が見出した。
かかる煩雑な作業を解決するのに、部品を挿入口に入れて排出される間に部品を180°回転させる反転装置を用いる手段もあるが、ピンセットで把持した部品を開放して落下させなければならず、ピンセットの把持から開放という動作が必要であり、部品そのものが反転する時などに傷つく恐れがある。反転装置そのものが設置場所を必要とする問題がある。このため、かかる煩雑な作業を解決するのに、発明者は、ピンセットで部品を把持したまま、部品を回転させれば良いということを見出した。
さらに、上記電動ピンセットの把持部材は、結合部の僅かな並進変位量に基づいて把持部材の先端が開放から閉成するが、結合部を引っ張る力に対する把持力の割合、つまり把持効率が悪いという課題があることを発明者が見出した。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させる電動ピンセットを得ることを課題としている。
加えて、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させると共に、把持効率の良い電動ピンセットを得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ピンセットは、ケースと、略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、第1把持部材と対向すると共に、該第1把持部材の第1内側辺とにより対象物を把持する一端部と他端部とを有する対向部材と、並進移動に基づいて第1把持部材の前記第1内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大して前記対向部材と共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、前記ケースに内蔵され、モータの軸に連結固定されたカムと、該カムと摺動するカムフォロワとを有しており、前記カムを第1方向に回転することにより前記カムフォロワを並進移動し、さらに、前記カムを前記第1方向に回転することにより前記カムフォロワを回転させる変換機構と、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1外側辺の開放側端部に連結固定された回転部と、前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、前記対向部材の一端部が前記伝達部又は前記回転部に連結固定されている、ことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の電動ピンセットによれば、制御手段がモータを第1方向へ回転させると、カムが回転してカムとカムフォロワの全長が短くなり、カムフォロワに連結された伝達部を介してピンセットの第1内側辺の開放側端部が引っ張られて、ピンセットが開放から閉成する。さらに、制御手段がモータを第1方向と同一方向へ回転させると、カムとカムフォロワの上記全長を維持した状態で、カムの回転によりカムフォロワが回転して伝達部及び回転部が回転する。これにより、ピンセットを閉成状態で、ピンセットの把持部が回転する。
したがって、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転できる。このため、ピンセットで部品を把持したまま、ピンセットを回転するので、部品の姿勢を変えることが簡易にできる。このため、例えば、方向性を有する部品、表裏を有する部品をトレーに置くことが容易になる。
また、ピンセットは、第1把持部材と、第1把持部材に対向する対向部材とにより成っているので、対向部材が例えば、第1把持部材と同様な形状に比較して構成が簡易になる。
また、制御手段は、ケースに内蔵されている、ことが好ましい。電動ピンセットの操作が簡易となるからである。
また、スイッチ手段は、ケースの表面に設けられることが好ましい。操作が容易だからである。
【0008】
本発明の電動ピンセットにおける前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、ことが好ましい。
したがって、ピンセットが第1回動部及び第2回動部を備えている場合には、第1把持部材は、第1内側辺の開放端部から第1回動部を介して連結されると共に、第1内側辺の開放端部を連結する第1結合部材と、第1外側辺の開放端部から第2回動部を介して連結された第1固定側部材とを備えている。
【0009】
このような構成の電動ピンセットによれば、モータが回転してピンセットの第1結合部材が引っ張られると、第1回動部,第2回動部を介して第1把持部材の第1内側辺,第1外側辺がそれぞれ引っ張られて、第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットの対向部材に対して第1把持部材が開放から閉成する。
このため、ピンセットは、開放から閉成するのに第1回動部、第2回動部により曲げモーメントの発生を極めて減少することができるので、第1結合部材の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、ピンセットの第1結合部材の引っ張り力に対して第1把持部材により対象物の把持力が、第1及び第2回動部が存在しない従来型ピンセットに比較して増大する。これは、従来型ピンセットでは、第1把持部材の第1内側辺を曲げる第1曲げモーメント、第1外側辺を曲げる第2曲げモーメントが発生するからである。
したがって、電動ピンセットは、ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できる。よって、電動ピンセットの小型化が可能となる。
【0010】
一方、第1把持部材が第1及び第2回動部のうち第1回動部のみを備えている場合には、第1把持部材は、第1内側辺の開放端部から第1回動部を介して第1内側辺の開放端部を連結する第1結合部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第1結合部材が引っ張られると、第1回動部を介して第1把持部材の第1内側辺が引っ張られて、第1把持部材の第1外側辺が第2曲げモーメントを越えた後、内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。
このため、ピンセットは、第1把持部材が開放から閉成するのに第1回動部により曲げモーメントの発生を減少できるので、第1結合部材の引っ張り力が有効に対象物の把持力となる。これにより、従来型ピンセットの把持力が第1及び第2曲げモーメントを発生した後、生じるのに対して本電動ピンセットでは、第2曲げモーメントを発生した後、生じる。
したがって、電動ピンセットは、第1ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できる。よつて、電動ピンセットの小型化が可能となる。
【0011】
また、第1把持部材が第1及び第2回動部のうち第2回動部を備えている場合には、第1把持部材は、第1外側辺の開放端部から第2回動部を介して連結された第1固定側部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、カムフォロワを並進移動して第1把持部材の第1内側辺が引っ張られて、第1内側辺が内側に撓むと共に、第2回動部を介して第1把持部材の第1外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。このように第2回動部のみ備えているピンセットは、上記第1回動部のみを備えている場合とほぼ同じ効果を奏する。
【0012】
また、カムフォロワを圧縮バネでカムに押圧する、ことが好ましい。カムの変位をカムフォロワに伝達しやすくなるからである。ピンセットの把持効率が増大することから、上記圧縮バネの圧縮力を低下できる。これにより、カムとカムフォロワとの押圧力を低下できると共に、回転部がケースを押圧する力を低下できる。したがって、例えば、回転部とケースとの摩擦力を低下できる。
【0013】
本発明における電動ピンセットは、ケースと、略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、略V字形状の第2内側辺と第2外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第2内側辺の端部を有し,前記V字辺の第2外側辺の開放側端部とを有する第2把持部材を備え、並進移動に基づいて第1及び第2把持部材の前記第1及び第2内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1及び第2把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大されると共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2外側辺の開放側端部に連結固定されている回転部と、前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の電動ピンセットによれば、制御手段がモータを第1方向へ回転させると、カムが回転してカムとカムフォロワの全長が短くなり、カムフォロワに連結された伝達部を介してピンセットの第1内側辺の開放側端部が引っ張られて、ピンセットが開放から閉成する。さらに、制御手段がモータを第1方向と同一方向へ回転させると、カムとカムフォロワの上記全長を維持した状態で、カムの回転によりカムフォロワが回転して伝達部及び回転部が回転する。これにより、ピンセットを閉成状態で、ピンセットの把持部が回転する。
したがって、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転できる。このため、ピンセットで部品を把持したまま、ピンセットを回転するので、部品の姿勢を変えることが簡易にできる。このため、例えば、方向性を有する部品、表裏を有する部品をトレーに置くことが容易になる。
さらに、前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている。
このような電動ピンセットによれば、上記構成が同一のピンセットと同様の作用、効果奏する。
【0015】
このような構成の電動ピンセットによれば、モータが回転してピンセットの第1結合部材が引っ張られると、第1回動部,第2回動部を介して第1把持部材の第1内側辺,第1外側辺がそれぞれ引っ張られて、第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットの対向部材に対して第1把持部材が開放から閉成する。
このため、ピンセットは、開放から閉成するのに第1回動部、第2回動部により曲げモーメントの発生を極めて減少することができるので、ピンセットの第1内側辺の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、ピンセットの第1内側辺の引っ張り力に対して第1把持部材により対象物の把持力が、第1及び第2回動部が存在しない従来型ピンセットに比較して増大する。これは、従来型ピンセットでは、第1把持部材の第1内側辺を曲げる第1曲げモーメント、第1外側辺を曲げる第2曲げモーメントが発生するからである。
したがって、電動ピンセットは、ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できる。よつて、電動ピンセットの小型化が可能となる。
【0016】
本発明の電動ピンセットにおける前記ピンセットは、第3回動部又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第3回動部は、第2把持部材の前記第2内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第2結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、
前記第4回動部は、第2把持部材の前記第2外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第2固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、ことが好ましい。
【0017】
したがって、ピンセットが第3回動部及び第4回動部を備えている場合には、第2把持部材は、第2内側辺の開放端部から第3回動部を介して連結されると共に、第2内側辺の開放端部を連結する第2結合部材と、第2外側辺の開放端部から第4回動部を介して連結された第2固定側部材とを備えている。
また、第1結合部材及び第2結合部材は、一体化した一つの結合部材でも良い。
【0018】
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第1及び第2結合部材が引っ張られると、上記のように第1及び第2回動部を介して第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺が内側に撓むと共に、第3及び第4回動部を介して第2把持部材の第2内側辺及び第2外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。
したがって、ピンセットは、第1及び第2回動部により第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺、第3及び第4回動部により第2把持部材の第2内側辺及び第2外側辺を内側に曲げる曲げモーメントが極めて減少する。
このため、ピンセットは、第2結合部材の引っ張り力に対して対象物を把持する把持力が従来型ピンセットよりも増大する。
さらに、本発明の電動ピンセットによれば、第1及び第2把持部材の先端部が内側に曲がるので、ピンセットが開放時の開放量を大きくできる。
【0019】
また、第2把持部材が第3及び第4回動部のうち第3回動部を備えている場合には、
第2把持部材は、第2内側辺の開放端部から第3回動部を介して連結する第2結合部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第2結合部材が引っ張られると、第3回動部を介して第2把持部材の第2内側辺が引っ張られて、第2把持部材の第2外側辺が第4曲げモーメントを越えた後、内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。
このため、ピンセットは、開放から閉成するのに第3回動部により曲げモーメントの発生を減少できるので、第2結合部材の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、従来型ピンセットの把持力が第3及び第4曲げモーメントを発生した後、生じるのに対して本電動ピンセットでは、第4曲げモーメントを発生した後、把持力が生じる。
【0020】
また、第2把持部材が第3及び第4回動部のうち第4回動部を備えている場合には、第2把持部材は、開放外側端部から第4回動部を介して連結された第2固定側部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第2結合部材が引っ張られると、第2把持部材の第2内側辺が引っ張られて、第4回動部を介して第2把持部材の第2外側辺が内側に撓む。このように、ピンセットは、第3曲げモーメントを越えた後、内側に撓む。
このため、ピンセットは、閉成するのに第4回動部により曲げモーメントの発生を減少できるので、第2結合部材の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、従来型ピンセットが第3及び第4曲げモーメントを発生した後、生じるのに対して本電動ピンセットでは、第3曲げモーメントを発生した後、把持力が生じる。
また、ピンセットに回動部を設けることにより、ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できるので、小型化が可能となる。
なお、第1把持部材と第2把持部材の形状、材質が同一であれば、第1曲げモーメントと第3曲げモーメントとが等しくなり、第2曲げモーメントと第4曲げモーメントが等しくなる。
【0021】
本発明の電動ピンセットにおける前記第1から第4回動部のうち、第2又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記ピンセットは、第1把持部材と第2把持部材との第1内側辺と第2内側辺との開放側端部どうしが結合部を介して結合しており、前記伝達部は、前記結合部に連結されている、ことが好ましい。
これにより、ピンセットが第1把持部材と第2把持部材との第1内側辺と第2内側辺との開放側端部どうしが結合部を介して一体化したので、ピンセット自体の取り扱いが容易となる。
【0022】
本発明の電動ピンセットにおける前記ピンセットは、前記第1回動部と前記第3回動部との代わりに、第5回動部を有しており、
前記第5回動部は、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の前記第1内側辺と第2内側辺との開放側端部どうしを回動自在に形成している、前記伝達部は、前記第5回動部を介して前記第1及び第2把持部材の第1内側辺と第2内側辺との開放側端部に連結されている、ことが好ましい。
このようなピンセットは、第1把持部材及び第2把持部材は、第1内側辺と第2内側辺との開放内側端部から第5回動部を介して連結されている。したがって、第5回動部が結合部材としての機能をも有する。
このような電動ピンセットによれば、把持部材が第1回動部と第3回動部を有する場合と同様な作用効果を奏する。しかも、ピンセットは、第1回動部と第3回動部との代わりに、第5回動部を備えたので、回動部を一つ減少できる。よって、ピンセットの構成が簡易となる。
【0023】
本発明の電動ピンセットは、前記第1又は第2把持部材の少なくともいずれか一方は、前記固定部がL形状に形成されている、ことが好ましい。これにより、ピンセットを平らな台などに置いた際の安定性が増加する。
【0024】
本発明の電動ピンセットの制御手段はさらに、ピンセットが閉成状態で、前記モータを前記第1方向と逆方向の第2方向へ回転する、ことが好ましい。
これにより、モータを第1方向と逆方向の第2方向へ回転するとピンセットが閉成から開放する。したがって、ピンセットにより部品を把持したまま、回転させて部品の姿勢を変えてから、ピンセットを閉成から開放して把持している部品を離すことができる。
【0025】
本発明の電動ピンセットの伝達部は、ピンセットの結合部と連結された第1部材を有しており、該第1部材は、カムとの接触する面の反対側となるカムフォロワの中央上部に固定される、ことが好ましい。これにより伝達部を簡易に構成できる。
第1部材は、第1磁性部材と、第1磁性部材に磁気吸着されると共に、ピンセットの結合部を固定する第1固定部材とから成り、第1磁性部材をカムフォロワの中央上部に固定することが好ましい。これにより、ピンセットの結合部を第1磁性部材から簡易に着脱できる。
【0026】
本発明の電動ピンセットの回転部は、前記カムフォロワの回転を伝達するピン部材と、前記ピン部材の回転に伴い回転すると共に、前記ピンセットの他の端部に連結固定された回転部材と、を備えることが好ましい。これにより回転部を簡易に構成できる。
例えば、カムフォロワが円柱形状に形成されており、回転部材は円筒形で、カムフォロワの上部に遊挿され、カムフォロワには、側面に少なくとも一つの貫通孔が設けられており、回転部材の側面には、カムフォロワの貫通孔と同一直線上に貫通した少なくとも二つの長孔が設けられており、ピン部材が貫通孔に挿入固定されると共に、該長孔に遊挿されることが好ましい。
さらに、回転部材の円周の縁部に固定されると共に、リング形の第2磁性部材と、ピンセットの他の端部を固定すると共に、第2磁性部材に載置された第2固定部材とを備えることが好ましい。これにより、ピンセットの他の端部を第2磁性部材から簡易に着脱できる。
【0027】
本発明の電動ピンセットにおける変換機構は、本発明の電動ピンセットにおける変換機構は、カムには、第1面と該第1面に対して突起した突起部と、該突起部に半球状の第1溝が設けられており、該第1溝に置かれると共に、摺動する球部材と、前記カムフォロワ側面には、前記突起部の側面と当接する側面を有すると共に、前記球部材を摺動させる傾斜面を有する、ことが好ましい。
これにより、簡易に変換機構を構成できると共に、ピン部材を省くことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させる電動ピンセットを得ることができる。
加えて、電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させる共に、把持効率の良い電動ピンセットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態となる電動ピンセットを図1から図9によって説明する。
図1において、電動ピンセット1は、ケース10と、モータ取付け板15と、モータ31と、モータ31の電源を投入・遮断するためのスイッチ手段としてのスイッチ33と、モータ31を駆動制御する制御手段としての制御部100と、を有している。
モータ31はギヤード式で、モータ31の回転角度を検知して回転検出角度を出力するエンコーダ35が設けられている。ケース10は、図2に示すように、非磁性体でアルミニウムから成り、円筒状の蓋5,カムフォルダー7を備えている。
【0030】
制御部100は、スイッチ33を一寸押すと、モータ31を第1角度として120°第1方向に回転すると共に、エンコーダ35の回転検出角度が120°に達するとモータ31を停止し、次に、スイッチ33を一寸押してモータ31を第2角度としての180°第1方向に回転すると共に、エンコーダ35の回転検出角度が180°に達するとモータ31を停止し、次に、スイッチ33を一寸押すと、モータ31を第1角度としての120°第1方向と逆の第2方向に回転すると共に、エンコーダ35の回転検出角度が120°に達するとモータ31を停止するように形成されている。
【0031】
図2において、電動ピンセット1は、第1ピンセット20を有すると共に、第1変換機構50、伝達部70、回転部80を内蔵している。第1ピンセット20は、対象物としての部品2を把持(閉成)したり開放したりする第1V字辺部材21と、第1V字辺部材21と対向する第1V字辺部材21と同形状の第2V字辺部材22とを有している。モータ31は、第1ピンセット20の一端部同士を回動自在にした第1及び第2結合部材としての結合部材24を並進変位させると共に、第1ピンセット20の結合部材24及び第1及び第2固定側部材26,27(以下、両部材24,26,27という。)を、回転する動力源と成っている。
【0032】
第1変換機構50は、モータ31の軸31aに連結固定された第1カム51と、該第1カム51と摺動する第1カムフォロワ55とを有しており、第1カム51を第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を並進移動し、さらに、第1カム51を第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を回転させるように形成されている。すなわち、第1カムの回転により第1カムフォロワ55が並進移動又は回転するように形成されている。
【0033】
第1変換機構50は、第1カム51に係合固定されたカム側の間欠回転ピン57とを備え、モータ31が120°第1方向に回転すると、第1カム51が回転して間欠回転ピン57は、第1カムフォロワ55の溝55uを摺動して第1カムフォロワ55を不回転としながら第1カムフォロワ55が図2に示すB方向に並進移動(押し込まれ)する。さらに、モータ31が180°第1方向に回転すると、間欠回転ピン57は、溝55uの縁に当接して第1カムフォロワ55を回転するように形成されている。
すなわち、第1カム51と第1カムフォロワ55と間欠回転ピン57とは、並進変位を第1ピンセット20の結合部材24に伝達する並進移動源と、該並進移動源と非同期で第1カムフォロワ55の回転を第1ピンセット20の両部材24,26,27を回転する回転源と成っている。
【0034】
そして、第1カムフォロワ55は、第1円柱と第1円柱よりも太い第2円柱とを備え、第1円柱には、コイル状の圧縮バネ59が挿入され、回転台82の底面により第1カムフォロワ55が球53を介して第1カム51に押圧している。
また、第1カムフォロワ55の並進変位量は、往路と復路との並進変位量を同一となるように形成されている。
【0035】
伝達部70は、第1カムフォロワ55の並進移動及び回転をピンセット20の結合部材24に伝達するもので、第1カムフォロワ55の中央凹部55aに固定される円柱状磁石から成る第1磁性部材72を有し、第1磁性部材72の上に円筒状の第1固定部材74が固定されて、第1固定部材74の孔74eにピンセット20の結合部22cがネジ76により固定されている。ここで、第1磁性部材72及び第1固定部材74を第1部材という。
これにより、第1ピンセット20の結合部材24が第1カムフォロワ55に連結固定されているので、第1カムフォロワ55の中央部の変位量が第1ピンセット20の結合部材24を矢印B方向に引っ張ったり、矢印A方向に戻したりすることにより、第1ピンセット20を開放・閉成すると共に、第1カムフォロワ55を回転することにより、第1ピンセット20の結合部材24を回転させるように形成されている。
【0036】
回転部80は、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27に連結固定されており、第1カムフォロワ55が並進移動しても、上記第1及び第2固定側部材26,27が並進移動することなく、第1カムフォロワ55の回転により第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を回転させるもので、第1カムフォロワ55の第1円柱に遊挿される回転台82を有しており、円柱状の回転伝達ピン84が回転台82の案内孔82sに遊挿されると共に、第1カムフォロワ55の孔55eに挿入固定されている。
【0037】
さらに、回転部80は、回転台82の先端部円柱に挿入固定されると共に、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を連結固定する磁石から成るリング状の第2磁性部材86と、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が固定されると共に、リング状の第2固定部材88とを備え、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が回転台82に連結固定されている。第2磁性部材86は、上面両縁が蓋5の内側コーナー部に当接しており、第2磁性部材86、回転台82を介して圧縮バネ59を第1カムフォロワ55の第2円柱のリング状の上面を押圧している。
【0038】
回転部80すなわち回転台82、第2磁性部材86、第2固定部材88がケース10内を摺動回転できるように形成されている。
これにより、第1カムフォロワ55が並進変位すると、回転伝達ピン84が回転台82の案内孔82sを摺動して回転台82が不回転になると共に、第1カムフォロワ55が回転すると、回転伝達ピン84が回転して回転台82も回転し、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が回転するように形成されている。第1カムフォロワ55の並進変位及び回転にかかわらず、常に、回転台82が一定の位置を維持しており、回転台82に連結された第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27も一定の位置を維持している。
【0039】
このような電動ピンセット1は、モータ31を第1方向へ回転させることにより第1ピンセット20が開放から閉成した後、モータ31を第1方向と同一方向へ回転することにより第1ピンセット20を閉成状態で、第1ピンセット20の結合部材24,第1及び第2固定側部材26,27を回転した後、さらにモータ31を第1方向と逆方向の第2方向へ回転すると第1ピンセット20が閉成から開放するように形成されている。
【0040】
次に、電動ピンセット1の主要部品を図3から図10を参照して説明する。ます、第1ピンセットを図3から図5を参照して説明する。これから説明するいずれのピンセットも材質は、変位拡大機能を有するためにバネ性を有することが好ましい。
<第1ピンセットの構成>
図3及び図4において、第1ピンセット20は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状を有し、変位拡大部材としての第1把持部材としての第1V字辺部材21と、第1V字辺部材21と対向する第1V字辺部材21と同形状の第2把持部材及び対向部材としての第2V字辺部材22とを有している。
第1ピンセット20は、第1V字辺部材21と第2V字辺部材22との開放内側端部を第1回動部710,第3回動部730とを介してそれぞれ連結されると共に、第1V字辺部材21と第2V字辺部材22との開放内側端部どうしを連結する結合部材24と、第1V字辺部材21の開放外側端部から第2回動部720を介して連結された第1固定側部材26と、第2V字辺部材22の開放外側端部から第4回動部740を介して連結された第2固定側部材27とを備え、結合部材24を引っ張ったり戻したりすると、第1回動部710及び第2回動部720を介して第1V字辺部材21の先端部が内側に曲がったり、復帰したりすると共に、第3回動部730及び第2回動部740を介して第2V字辺部材22の先端部が内側に曲がったり、復帰したりするように形成されている。
【0041】
図5において、第1ピンセット20は、回転台88の二つの切り欠き88aに第1固定側部材26、第2固定側部材27をそれぞれ係合固定してピンセットユニットを形成している。
【0042】
第1V字辺部材21は、真っ直ぐな第1内側辺21hと、第1内側辺21hと対向すると共に、真っ直ぐな第1外側辺21fとから成っており、該第1内側辺21hと第1外側辺21fが結合された平らな先端部に電子部品2等を把持する第1把持部21xと、を有している。同様に、第2V字辺部材22は、真っ直ぐな第2内側辺22hと、第2内側辺22hと対向すると共に、真っ直ぐな第2外側辺22fとから成っており、該第2内側辺22hと第2外側辺22fが結合された平らな先端部に電子部品2等を把持する第2把持部22xと、を有している。ここで、第1ピンセット20の把持部20xは、第1把持部21xと第2把持部22xとを合わせたものをいう。
また、結合部材24は長方形で、中央に丸形の孔24eが設けられ、両面が平らに形成されており、第1固定側部材26,第2固定側部材27も同様に、長方形で、両面が平らに形成されている。
【0043】
図3及び図4において、第1回動部710は、ヒンジ構造を有しており、円柱状の第1軸ピン712と、第1V字辺部材21の第1内側辺21hの開放内側端部には、第1内側辺21hの幅よりも細い幅で、円柱状の第1軸ピン712を挿入するために設けられた略半円筒形の第1ピン受け部21uと、結合部材24の一端部に設けられ、第1軸ピン712を挿入すると共に、第1ピン受け部22uを挟むように設けられた略円筒状の第1ピン挿入部24cを二つ備え、第1V字辺部材21の第1内側辺21hの開放側端部と結合部材24の一端部とが回動自在に形成されている。
【0044】
第2回動部720は、第1回動部710と同様にヒンジ構造をしており、円柱状の第2軸ピン722と、第1V字辺部材21の第1外側辺21fの開放外側端部には、第1外側辺21fの幅よりも細い幅で、円柱状の第2軸ピン722を挿入するために、外側向きに設けられた略半円筒形の第2ピン受け部21cと、第1固定側部材26の一端部に設けられると共に、第2軸ピン722を挿入し、第2ピン受け部21cを挟むように設けられた略円筒状の二つの第2ピン挿入部26cを二つ備え、第1V字辺部材21の第1外側辺21fの開放外側端部と第1固定側部材26の一端部とが回動自在に形成されている。
【0045】
第3回動部730は、第1回動部710と同様なヒンジ構造をしており、円柱状の第3軸ピン732と、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放外側端部には、第2内側辺22hの幅よりも細い幅で、円柱状の第3軸ピン732を挿入するために設けられた略半円筒形の第3ピン受け部22uと、結合部材24の他端部に設けられ、第3軸ピン732を挿入すると共に、第3ピン受け部22uを挟むように設けられた略円筒状の第3ピン挿入部24dを二つ備え、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放内側端部と結合部材24の他端部とが回動自在に形成されている。
【0046】
第4回動部740は、第2回動部720と同様なヒンジ構造をしており、円柱状の第4軸ピン742と、第2V字辺部材22の第2外側辺22fの開放外側端部には、第2外側辺22fの幅よりも細い幅で、円柱状の第4軸ピン742を挿入するために、外側向きに設けられた略半円筒形の第4ピン受け部22cと、第2固定側部材27の一端部に設けられると共に、第4軸ピン742を挿入し、第4ピン受け部22cを挟むように設けられた略円筒状の二つの第4ピン挿入部27cを二つ備え、第2V字辺部材22の第2外側辺22fの開放外側端部と第2固定側部材27の一端部とが回動自在に形成されている。
このように、第1ピンセット20は、第1及び第3回動部710,730を備え、結合部材24の一端部と他端部とが回動自在に形成されている。
なお、第1から第4ピン受け部21c,21u,22c,22uなどは、第1軸ピン712などを遊挿して回転できれば良いので、筒形状などでも良い。
【0047】
第1ピンセット20は、上記のように第1及び第2固定側部材26,27が第2固定部材88に係合固定され、結合部材24が第1固定部材74に固定され、第1カムフォロワ55の並進変位に基づいて結合部材26が引っ張られたり、戻されたりして把持部22xの先端が内側、別言すれば、上記並進変位の方向に対して略垂直方向、つまり、該並進変位の方向に対して横方向に拡大変位することにより第1ピンセット20の把持部20xが部品2を把持(閉成)したり開放したりするように形成されている。
そして、第1ピンセット20の結合部材24が引っ張られると第1回動部710及び第2回動部720を介して第1V字辺部材21の先端部が内側に撓むと共に、第3回動部730及び第4回動部740を介して第2V字辺部材22の先端部が内側に撓む。したがって、第1ピンセット20の第1回動部710から第4回動部740により曲げモーメントが発生することなく、第1回動部710から第42回動部740とを介して第1及び第2V字辺部材21,22の先端部が内側に撓むので、結合部材24の引っ張り力が有効に第1ピンセット20の把持力となる。これにより、結合部材24の引っ張り力に対して第1ピンセット20により対象物を把持する把持力が増大するように形成されている。
【0048】
<従来型ピンセット(比較例)>
次に、従来のピンセットを図6によって説明する。図6中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。図6において、従来型ピンセット520は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状のV字辺を有する第5把持部材522を有しており、第5把持部材522は、先端部を共有する二つの把持部21x,22xを有し、第1内側辺21hと第2内側辺22hとの端を結合して結合部22cが形成されており、第1外側辺21f,第2外側辺22fの開放側端部には、結合部22cと略平行に延設された平坦面を有する直線状の第1固定部21a,第2固定部22aとをそれぞれ有している。
【0049】
従来型ピンセット520の結合部22cが引っ張られると、第1及び第2外側辺21f,22fが内側に撓むと共に、第1及び第2内側辺21h,22hも内側に撓むので、第5把持部材522の先端部が内側に撓む。したがって、従来型ピンセット520は、第1内側辺21h、第2内側辺22hを内側に曲げる第1曲げモーメントM1,第3曲げモーメントM3と、第1固定部21a,第2固定部22aにそれぞれ連結された第1外側辺21f,第2外側辺22fの先端部が曲がるのに、第2曲げモーメントM2,第4曲げモーメントM4とが生じるので、結合部22cの引っ張り力がこれら第1から第4曲げモーメントの総和に達した後に、第5把持部材520の先端部に把持力が生じる。
【0050】
図7において、第1カム51は、円柱で、両端面が平面に形成されており、中央にはモータ31の軸31aを挿入して固定する貫通孔51eを有している。第1カム51は、第1カムフォロワ55と対向する一端面には、中心から外れて設けられた半球状の溝51bと、該溝51bと円柱の中心軸を中心として点対称に円柱状の係止穴51pとが設けられており、溝51bには、第1揚程部としての球53が載せられ、係止穴51pには、間欠回転ピン57を挿入して固定される。
【0051】
図8において、第1カムフォロワ55は、二段の円柱状で、第1円柱55bと第1円柱55bよりも太い第2円柱55cとから成り、第2円柱55cの端面側には、球53と接触すると共に、斜めに形成された輪郭としての接触面55sと、間欠回転ピン57を遊挿する円弧状の溝55uと、を有している。この溝55uは、第1カム51の120°回転した際に間欠回転ピン57を摺動させるためである。
第1円柱55bの端面側には、第1磁性部材72を挿入して固定するための円柱状の凹部55aが設けられ、該凹部55aの近傍に、回転伝達ピン84を挿入固定する孔55eが設けられている。
【0052】
図9において、回転台82は、二段の円筒状で、リング状の第2磁性部材86の孔を挿入固定する第1円筒82bと第1円筒82bよりも太い第2円筒82cとから成り、回転台82の中心部には、第1カムフォロワ55の第1円柱55bを並進移動を案内するために、円形の孔82eが設けられており、第2円筒82cの両側面には、回転伝達ピン84の両端部が並進移動するのを案内する長孔形状の案内孔82sが設けられている。
【0053】
図10において、第2固定部材88は、平板状の平面視略ドーナツ形で、孔88eの周囲には、二つの略T形状の切欠き88aが形成されている。外側がケース10のホルダー部材5の内面に摺動自在に遊挿入されるように形成しており、ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を切欠き88aに係合固定される。
ここで、ピンセット20と第2固定部材88とが組み立てられたものをピンセットユニットという。
【0054】
次に、第1ピンセット20と従来型ピンセット520の引っ張り力に対する把持力を図11により示す試験装置により測定した。
<試験装置>
図11において、試験装置500は、上向きにされた第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を固定する台502と、第1ピンセット20の把持力を測定するロードセル504と、ロードセル504を第1ピンセット20の開放部に挿入する位置にする桁506と、第1ピンセット20の結合部材24に金属線508を介して固定されると共に、結合部材24に引張力を作用させる分銅510とを備え、分銅510の上記引張り力により第1ピンセット20の先端を閉じるようにしている。
【0055】
ここで、第1ピンセット20及び従来型ピンセット520は、ばね用りん青銅(C5210)製で、厚さ0.2mm,幅8mm,結合部材12mm,外側辺60mm,内側辺60mm、
内側辺の開放側端部と内側辺の開放側端部との間隔4mm、
また、ロードセル504:ひずみゲージ((株)共和電業,KFG-1N-120-C1-16)、
第1ピンセット20及び従来型ピンセット520の先端とロードセル504の間の距離は4mmである。
そして、第1ピンセット20の先端がロードセル504を押したときに生じるひずみゲージの出力電圧を動ひずみ計((株)共和電業,DPM-712B)を通してマルチ入力データ収集システム((株)キーエンス,NR-600)により測定した。
このような試験装置500により、第1ピンセット20及び従来型ピンセット520の引っ張り力に対する把持力のデータを測定する。
【0056】
<実験データ>
第1ピンセット20、従来型ピンセット520毎に、引っ張り力と把持力をプロットすると図12が得られた。この図12によれば、第1ピンセット20は、結合部材24を引っ張ると、引っ張り力に対して第1ピンセット20の把持部20xに直ぐに把持力が作用する。これは、上記結合部材24が引っ張られると、第1から第4回動部710,720,730,740を介して第1及び第2V字辺部材21,22の先端部が内側に撓む。これは、第1ピンセット20の第1から第4回動部710,720,730,740により曲げモーメントを生じることなく、第1及び第2V字辺部材21,22の先端部が内側に撓むので、結合部材24の引っ張り力が有効に第1ピンセット20の把持部20xの把持力となる。これにより、結合部材24の引っ張り力に対して第1ピンセット20により対象物を把持する把持力が増大する。
【0057】
一方、従来型ピンセット520は、結合部22cを引っ張ると、引っ張り力に対して所定の引っ張り力に達した後、把持部20xに把持力が作用して第5把持部材522の先端部が内側に撓む。これは、従来型ピンセット520は、把持部材522の把持部20xが内側に曲がるのに、以下の曲げモーメントが生じるからである。
第1内側辺21h,第1外側辺21fを内側に曲げるのに、それぞれ第1曲げモーメントM1,第2曲げモーメントM2を生じ、第2内側辺22h,第2外側辺22fを内側に曲げるのに、それぞれ第3曲げモーメントM3,第4曲げモーメントM4を生じるので、従来型ピンセット520は、これら各曲げモーメントの総和に達してから、把持部が曲がって把持力が生じる。
【0058】
上記のように構成された電動ピンセットの動作を図2、図13〜図18を参照して説明する。まず、第1ピンセット20が開放した状態で、モータ31の回転角度が0°の時を初期状態とする。この初期状態からモータ31の回転は、間欠回転ピン57が第1カムフォロワ55の溝55uを摺動できる方向に回るときを正回転とする。
第1ピンセット20が開放した状態では、図13に示すように、球53は第1カムフォロワ55底面の下部で接しているため、第1カム51の上端面から第1カムフォロワ55との上端面までの距離が(以下、並進距離という。)最も長くなる。この時、第1ピンセット20の結合部材24は全く引っ張られていないため、第1ピンセット20が開放した状態になっている。
【0059】
次に、作業者は電動ピンセット1を持ったまま、スイッチ33を一寸押して制御部100を介してモータ31を120°正回転させると、第1カムフォロワ55は、圧縮バネ59のバネ力により下向きに押さえられているので、球53は第1カムフォロワ55底面の下部から上部へと接する。このため、図14に示すように、上記並進距離が短くなる。この時、間欠回転ピン57は、第1カムフォロワ55の溝55uを摺動しているので、第1カムフォロワ55は、並進移動するのみで回転しない。これにより回転部80は回転せず、しかも同一位置に保持されている。このため、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が同一位置で静止している。一方、第1カムフォロワ55の並進変位を、伝達部70を介して第1ピンセット20の結合部材24がΔL引っ張られているため、第1及び第2回動部710,720と第3及び第4回動部730,740を介して第1ピンセット20が開放から閉成して部品2を把持した状態となる。
【0060】
次に、作業者は電動ピンセット1を持ったまま、スイッチ33を一寸押して制御部100を介してモータ31をさらに180°正回転させると、間欠回転ピン57が第1カムフォロワ55の溝55uの縁に接しているため、第1カムフォロワ55がモータ31と同期して回転するので、伝達部70及び回転部80も回転する。図16に示すように、ピンセット20は、結合部材24が伝達部70により、第1及び第2固定側部材26,27が回転部80により、全体として180°回転する。この回転の際に、第1カムフォロワ55と球53との位置関係は変化しないため上記並進距離も変化しないので、第1ピンセット20は閉成状態を維持しながら部品2を把持して回転する。第1ピンセット20が閉成状態を維持するのにも、結合部材24の引っ張り力は、従来型ピンセット520よりも低くできる(図12参照)。
なお、図15は、上記180°回転時における90°回転した状態を示している。
【0061】
次に、作業者は電動ピンセット1を持ったまま、スイッチ33を一寸押して制御部100を介してモータ31を120°逆回転させると、間欠回転ピン57は、第1カムフォロワ55の溝55uを回転摺動する。このため、第1カムフォロワ55が回転しないので、回転部80も回転せず、ピンセット20が回転しない。一方、球53と第1カムフォロワ55の接点は底面の上部から下部に移動する。このため、図17に示すように、上記並進距離が長くなる。そして、第1ピンセット20の結合部材24は全く引っ張られていないため、第1ピンセット20が開放する。
このように、第1ピンセット20の開放状態、把持(閉成)状態、把持しながら回転する把持回転状態、把持回転状態から開放する第1変換機構50の変位曲線を図18に示す。
【0062】
上記実施形態の電動ピンセット1は、ケースと、略V字形状の第1内側辺21hと第1外側辺21fとから成るV字辺を有し、該V字辺の開放側における第1内側辺21hの端部を有し,前記V字辺の第1外側辺21fの開放側端部とを有する第1V字辺部材21と、第1V字辺部材21と対向すると共に、略V字形状の第2内側辺22hと第2外側辺22fとから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第2内側辺22hの端部を有し,前記V字辺の第2外側辺22fの開放側端部とを有する第2V字辺部材22と、並進移動に基づいて第1及び第2V字辺部材21,22の第1,第2内側辺21h,22hの開放側端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも第1及び第2V字辺部材21,22のV字辺の先端の変位量が内側に拡大されると共に、対象物を解放及び把持する把持部20xを有する第1ピンセット20と、ケース10に内蔵され、モータ31の軸に連結固定された第1カム51と、該第1カム51と摺動する第1カムフォロワ55とを有しており、第1カム51を第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を並進移動し、さらに、第1カムを第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を回転させる変換機構50と、ケース10に内蔵され、第1カムフォロワ55に連結固定されると共に、第1及び第2V字辺部材21,22の第1,第2内側辺21h,22hの開放側端部に連結された伝達部70と、ケース10に内蔵され、第1カムフォロワ55に連結固定されると共に、第1及び第2V字辺部材21,22の第1,第2外側辺21f,22fの開放側端部に連結固定された回転部80と、モータ31を運転及び停止するスイッチ33と、スイッチ33を動作すると、モータ31を第1方向へ回転した後、さらに、スイッチ33を動作すると、モータ31を前記第1方向と同一方向へ回転する制御部100を備えたものである。
【0063】
上記電動ピンセット1によれば、制御部100がモータ31を第1方向へ回転させると、第1カム51と第1カムフォロワ55の全長が短くなり、ピンセット20が開放から閉成すると共に、モータ31を第1方向と同一方向へ回転させると、全長を維持した状態で、第1カム51の回転により第1カムフォロワ55が回転して伝達部70及び回転部80が回転する。これにより、ピンセット20を閉成状態で、ピンセット20の両部材24,26,27を回転できる。
したがって、作業者が電動ピンセット1を持ったまま、電動によりピンセット20の把持部を閉成状態で回転させることができる。このため、ピンセット20で部品2を把持したまま、ピンセット20を回転させるので、部品2の姿勢を変えることが簡易にできる。このため、本電動ピンセット1により方向性、例えば表裏を有する部品2をトレーに置くことが容易になる。
【0064】
第1ピンセット20は、第1V字辺部材21の第1内側辺21hの開放側端部と結合部材24の一端部とを回動自在にする第1回動部710と、第1V字辺部材21の第1外側辺21fの開放側端部と第1固定側部材26の一端部を回動自在にする第2回動部720と、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放側端部と結合部材24の他端部を回動自在にする第3回動部730と、備えたので、第1カムフォロワ55を並進移動して第1ピンセット20の結合部材24が引っ張られると、第1及び第2回動部710,720を介して第1V字辺部材21の第1内側辺,外側辺21h,21fが内側に曲がると共に、第3及び第4回動部730,740を介して第2V字辺部材22の第2内側辺,第2外側辺22h,22fが内側に曲がる。これにより、第1ピンセット20が開放から閉成する。
このため、第1ピンセット20は、開放から閉成するのに第1回動部720から第4回動部740により曲げモーメントが極めて減少できるので、結合部材24の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、第1ピンセット20の把持力が従来型ピンセット520よりも極めて増大する。したがって、第1ピンセット20を閉成する駆動源となるモータ31の出力を低下できると共に、第1変換機構50の小型化を図ることができるので、電動ピンセット1自体も小型化できる。
【0065】
電動ピンセット1の結合部材24の引っ張り力が小さくなることから、圧縮バネ59の圧縮力を小さくできる。これにより、第1カム51を第1カムフォロワ55に押圧する押圧力を小さくできるので、球53の摩擦を減少できると共に、蓋5の内面と第2磁性部材86の上面の摩擦を減少できる。したがって、球53の寿命の増加などが図れる。
【0066】
第1ピンセット20が閉成状態で、制御部100がモータ31を第1方向と逆方向の第2方向へ回転すると、第1ピンセット20が閉成から開放する、ことが好ましい。
これにより、第1ピンセット20により部品2を把持したまま、回転させて部品2の姿勢を変えてから、ピンセット20を開放して部品2を離すことができる。
また、制御部100はケース10に内蔵されている、ことが好ましい。電動ピンセット1の操作が簡易となるからである。
【0067】
また、第1ピンセット20は、第1回動部710から第4回動部740をすべて備えたが、第1回動部710から第4回動部740のうち少なくも一つの回動部又は任意の複数の回動部を備えても良い。ピンセットが回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
また、結合部材24は、一つにしたが第1V字辺部材21と第2V字辺部材22の第1内側辺21h,22hの開放側端部に対応して二つに分割しても良い。
【0068】
実施形態2.
本発明の他の実施形態を図19によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図19に示すように第2ピンセット220を用いるものである。図19中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第2ピンセットの構成>
図19において、第2ピンセット220は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1把持部材としての第3V字辺部材223と、第3V字辺部材223と同形状の第2把持部材としての第4V字辺部材224と、第3V字辺部材223,第4V字辺部材224のそれぞれの開放外側端部から略直角に曲げられた第1固定部21a,第2固定部22aと、第3,第4V字辺部材223,224の開放側端部から二つの第1及び第3回動部710,730を介して第3,第4V字辺部材223,224の第1内側辺21hと第2内側辺22hの開放側端部どうしを連結する結合部材24とを備えている。
第2ピンセット220は、第3,第4V字辺部材223,224の第1,第2固定部21a,22aが回転部80に連結固定されており、結合部材24を引っ張ったり戻したりすると、第1及び第3回動部710,730を介して先端部が内側に曲がるように形成されている。
すなわち、第2ピンセット220は、第1ピンセット20に比較して第2及び第4回動部720,740,第1及び第2固定側部材26,27が省略されており、第1固定側部材26,第2固定部材27の代わりに第1及び第2固定部21a,22aがそれぞれ設けられており、第1及び第2固定部21a,22aが回転部80に連結固定されている。
【0069】
このような電動ピンセットによれば、第2ピンセット220の結合部材24が引っ張られると第1回動部710,第3回動部730を介して第3V字辺部材223,224の把持部20xが内側に撓む。したがって、第2ピンセット220は、第1回動部710により第1内側辺21hを内側に曲げるのに第1曲げモーメントが極めて減少すると共に、第3回動部730により第2内側辺22hを内側に曲げるのに、第3曲げモーメントが極めて減少する。したがって、第2ピンセット220は、結合部材24の引っ張り力が上記第2及び第4曲げモーメント力を超えた後に、先端部に把持力が生じるので、従来型ピンセット520に比較して把持力が増大する。
【0070】
なお、第2ピンセット220は、第1回動部710及び第3回動部730を備えたが、第1回動部710又は第3回動部730のうち少なくも一つの回動部を備えても良い。ピンセットが回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
また、結合部材24は、一つにしたが第1V字辺部材21と第2V字辺部材22の第1内側辺21h,22hの開放側端部に対応して二つに分割しても良い。
【0071】
実施形態3.
本発明の他の実施形態を図20によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図20に示すように第3ピンセット320を用いても良い。図20中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第3ピンセットの構成>
図20において、第3ピンセット320は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1及び第2把持部材としてのM字辺部材325を有している。M字辺部材325は、第1内側辺21hと第2内側辺22hとの開放側端部どうしを結合した結合部22dとを有しており、結合部22dには、孔22eが設けられている。
第3ピンセット320は、M字辺部材325の第1外側辺21fの開放外側端部から第2回動部720を介して連結された第1固定側部材26と、M字辺部材325の第2外側辺22fの開放外側端部から第4回動部740を介して連結された第2固定側部材27とを備え、M字辺部材325の結合部22dを引っ張ったり戻したりすると、第2及び第4回動部720,740を介しM字辺部材325の先端部が内側に曲がるように形成されている。
すなわち、第3ピンセット320は、第1ピンセット20に比較して第1回動部710,第3回動部730及び結合部材24が省略され、結合部材24の代わりに結合部22dが設けられており、結合部22dが伝達部70に連結固定されている。
【0072】
第3ピンセット320の結合部22dが引っ張られると、M字辺部材325が第2及び第4回動部720,740を介して把持部20xも内側に撓む。したがって、第3ピンセット320の第2回動部720により第1外側辺21fを内側に曲げる第2曲げモーメントと、第4回動部740により第2外側辺22fを内側に曲げる第4曲げモーメントとが極めて減少する。
一方、第3ピンセット320は、M字辺部材325の第1内側辺21h,第2内側辺22hの先端部が曲がるのに、第1曲げモーメント,第3曲げモーメントが生じるので、結合部22dの引っ張り力がこれらの曲げモーメントの和に達した後に、把持部20xに把持力が生じる。これにより、第3ピンセット320の把持力が従来型ピンセットに比較して増大する。
【0073】
次に、第2,第3ピンセット220,320の引っ張り力に対する把持力を図11により示す試験装置500により測定した。第2,第3ピンセット220,320毎に、引っ張り力と把持力をプロットすると図12が得られる。
第2ピンセット220は、結合部材24を引っ張ると、引っ張りが第2及び第4曲げモーメント力を越えると、把持部20xに把持力が作用する。
第3ピンセット320は、結合部22dを引っ張ると、引っ張りが第1及び第3曲げモーメント力を越えると、把持部20xに把持力が作用する。
一方、従来型ピンセット520は、結合部材24を引っ張ると、引っ張りが第1曲げモーメント力から第4曲げモーメント力の総和を越えると、把持部20xに把持力が作用する。
【0074】
また、第3ピンセット320は、第2回動部720及び第4回動部740を備えたが、第2回動部720又は第4回動部740のうち少なくも一つの回動部を備えても良い。ピンセットが回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
また、M字辺部材325は、第1V字辺部材21の第1内側辺21hと、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放端部どうしを結合した構成であるが、第1V字辺部材21の第1内側辺21hと、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放端部を分離して形成しても良い。
【0075】
実施形態4.
本発明の他の実施形態を図21によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図21に示すように第4ピンセット420を用いても良い。図21中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第4ピンセットの構成>
図21において、第4ピンセット420は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1把持部材としての第5V字辺部材421と、第2把持部材としての第6V字辺部材422と、第5V字辺部材421の第1内側辺21hの開放端部と第6V字辺部材422の第2内側辺22hの開放端部とを回動自在にする第1回動部720及び第3回動部730と、第1内側辺21hの開放端部と第2内側辺22hの開放端部とを連結する結合部材24と、を備えている。
第5V字辺部材421、第6V字辺部材422は、それぞれの第1外側辺421f、第2外側辺422fとが第1内側辺21h、第2内側辺22hよりも短く形成されている。
【0076】
そして、第4ピンセット420は、第5V字辺部材421の第1外側辺421fの開放側端部から第2回動部720を介して連結された第1固定側部材としての第1L形状部材326と、第6V字辺部材422の第2外側辺422fの開放側端部から第4回動部740を介して連結された第2固定側部材としての第2L形状部材327とを備え、結合部材24を引っ張ったり戻したりすると、第1回動部710から第4回動部740を介して第先端部が内側に曲がるように形成されている。
また、第2回動部720及び第4回動部740は、第1,第2L形状部材326,327の一端部には、第2ピン受け部21c,22cを挟むように設けられた略円筒状の二つの第2ピン挿入部326c,第4ピン挿入部327cを備えている。
すなわち、第4ピンセット420は、第1ピンセット20に比較して第2回動部720及び第4回動部740が結合部材24よりも上方に設けられている。このため、第4ピンセット420を平らな台などに置いた際の安定性が増加する。
【0077】
また、第4ピンセット320は、第2回動部720及び第4回動部740を備えたが、第2回動部720又は第4回動部740のうち少なくも一つの回動部を備えても良い。さらに、第4ピンセット320は、第1回動部710及び第3回動部730を備えたが、第1回動部710又は第2回動部720のうち少なくも一つの回動部を備えても良いし、備えなくても良い。
【0078】
実施形態5.
本発明の他の実施形態を図22及び図23によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図22及び図23に示すように第5ピンセット520を用いても良い。図22中,図23中、図3,図4と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第5ピンセットの構成>
図22及び図23において、第5ピンセット520は、第1V字辺部材21と第2V字辺部材22との開放内側端部を第5回動部750を介して連結されている。
すなわち、第1ピンセット20では、第1回動部710及び第3回動部730を介して第1V字辺部材21の第1内側辺21hと第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放端部とを連結していたものが、第5ピンセット520では、第5回動部750のみで連結できる。
そして、第1V字辺部材21には、開放内側端部の中央部に第1V字辺部材21の幅よりも狭い円筒部21cを設け、該円筒部21cの中央から板状の共通結合部21zが設けられている。なお、共通結合部21zには、孔が設けられている。
第2V字辺部材22には、円筒部21cを挟むように設けられた略円筒状の二つのピン挿入部22yを有している。
このような第5ピンセット520を用いた電動ピンセットによれば、第1ピンセット20を用いた電動ピンセットと同様の作用効果を奏する。第5ピンセット520は、第1ピンセット20に比較して第1V字辺部材21と第2V字辺部材22の連結部の回動部を一つにできると共に、結合部材24を省略できるので、構成が簡易となる。
【0079】
また、第5ピンセット520は、第2回動部720及び第4回動部740を備えたが、第2回動部720又は第4回動部740のうち少なくも一つの回動部を備えても、備えなくとも良い。ピンセットは回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
【0080】
実施形態6.
本発明の他の実施形態を図24及び図25によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図25に示すように第6ピンセット620を用いても良い。図25中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第6ピンセットの構成>
図24において、第6ピンセット620は、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1把持部材としての第3V字辺部材223と、第3V字辺部材223と対向すると共に、略L形状の対向部材630とを備えている。対向部材630には、真直ぐな他端部としての先端部を有する辺部632fと、辺部632fから延設された一端部としての固定部632aとを有しており、辺部632fの対向側の先端部が把持部632xと成っている。対向部材630の把持部632xと第3V字辺部材223の把持部21xとで、第6ピンセット620の把持部20xを成している。
そして、第6ピンセット620は、結合部材124の一端部に第1回動部710を介して第3V字辺部材223の第1内側辺21hの開放端部と回動自在に形成されている。
【0081】
図25に示すように、第6ピンセット620は、回転台88の切り欠き88aに第3V字辺部材223の固定部21aを係合固定し、同様に、回転台88の切り欠き88aに対向部材630の固定部632aも係合固定してピンセットユニットを形成している。このような第6ピンセット620を用いた電動ピンセットによれば、第2ピンセット220の第1V字辺部材21のみを用いた電動ピンセットと同様の作用効果を奏する。
したがって、第6ピンセット620は、第2V字辺部材22の代わりに対向部材630を用いることができるので、ピンセットの構成が簡易となる。
なお、上記では、対向部材630の固定部632aを回転部80に固定したが、伝達部70の例えば第1固定部材74に固定しても良い。
【0082】
実施の形態7.
本発明の他の実施形態の変換機構を図26によって説明する。図26は他の実施の形態を示すピンセットのカム組み立ての左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)である。
本第3変換機構250は、第3カム251と、第3カムフォロワ255と、を備えている。第3カム251は、第1面を有する円柱部と、円柱部の第1面に対して突設すると共に、平面視で扇形状の突起部としての柱部251tとを有している。第3カムフォロワ255は、二段の円柱状で、第1円柱255bと第1円柱255bよりも太い第2半円柱255cを有しており、第2半円柱255cには、側面255fを有している。第3カム251の柱部には、半球状の溝251uが設けられており、該溝251uに球53が置かれ、第3カムフォロワ255は、ピンセット側回転ピン84を挿入固定する孔255eと、第1磁性部材72を固定する円柱状の凹部255aとが設けられおり、第2半円柱255cには、第3カム251の柱部の側面と当接する側面を有すると共に、球53を摺動させる傾斜面255sを有している。
【0083】
上記のように構成された変換機構を有する電動ピンセットの把持状態で回転させる動作を図2及び図26を参照して説明する。
ピンセット20の閉成状態において、モータ31をさらに180°正回転させると、第3カム251の柱部251tは、第3カムフォロワ255の半柱の側面255fに接しているため、第3カムフォロワ255はモータ31と同期して回転する。上記実施形態2と同様にしてピンセット20は閉成状態を維持しながら、ピンセットも180°回転する。
このような変換機構250によれば、間欠回転ピン57が不要になるため簡易である。
【0084】
本発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、電動ピンセットに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施の形態を示す電動ピンセットの全体図である。
【図2】図1に示す電動ピンセットの断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図3】図1に示す第1ピンセットの斜視図である。
【図4】図3に示す第1ピンセットの分解斜視図である。
【図5】第1ピンセットを回転台に組み込んだピンセットユニットの斜視図である。
【図6】従来技術による従来型ピンセットの斜視図である。
【図7】図1に示すカムの正面図(a)、底面図(b)である。
【図8】図1に示すカムフォロワの正面図(a)、側面図(b)、底面図(c)である。
【図9】図1に示す回転台の平面図(a)、正面図(b)である。
【図10】図1に示す第2固定部材の平面図(a)、正面図(b)である。
【図11】ピンセットの引っ張り力と把持力の関係を得る実験装置の正面図である。
【図12】図13に示す実験装置により得られたピンセットの引っ張り力と把持力の関係図である。
【図13】図1によるピンセットの開放状態における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図14】図1によるピンセットの閉成状態における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図15】図1によるピンセットの把持状態で90°回転動作における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図16】図1によるピンセットの把持状態で180°回転動作における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図17】図15の回転動作後からピンセットの開放状態における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図18】図1に示すピンセットに用いるカムの変位線図である。
【図19】本発明の他の実施形態による第2ピンセットの斜視図である。
【図20】本発明の他の実施形態による第3ピンセットの斜視図である。
【図21】本発明の他の実施形態による第4ピンセットの斜視図である。
【図22】本発明の他の実施形態による第5ピンセットの斜視図である。
【図23】図22に示す第5ピンセットの分解斜視図である。
【図24】本発明の他の実施形態による第6ピンセットの斜視図である。
【図25】第6ピンセットを回転台に組み込んだピンセットユニットの分解斜視図である。
【図26】本発明の他の実施の形態を示すカム組み立ての左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)である。
【符号の説明】
【0087】
1 電動ピンセット、20,220,320,420,520,620 ピンセット、22a 固定部、22c 結合部、24 結合部材、26 第1固定側部材、27 第2固定側部材、31 モータ、33 スイッチ、50,250 変換機構、51,251 カム、55,255 カムフォロワ、70 伝達部、80 回転部、82 回転台(回転部材)、84 回転伝達ピン(ピン部材)、100 制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ピンセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動ピンセットは、発明者が提案した下記特許文献に記載されているように、モータと、該モータを収納するケース部と、該ケース部に縁部が連結固定され、結合部が往復の並進変位量に基づいて先端の開閉量を拡大すると共に、対象物を解放及び把持する把持部材と、前記モータを回転及び停止させるスイッチ手段と、前記ケース部に収納され、前記モータの軸に連結されると共に、前記モータの一方向の回転を、前記把持部材の結合部に対して、所定の往復方向の並進変位量に変換する変換機構と、を備えたものがある (特許文献1)。
【0003】
かかる電動ピンセットによれば、変換機構はモータの一方向の回転を、把持部材の結合部に対して、所定の往復並進変位量に変換し、スイッチ手段がモータを回転・停止する。しかも、把持部材の開閉量が一定になるように把持部材の結合部の並進変位量が所定の値になる。したがって、例えば一定の対象物を把持及び解放する電動ピンセットを容易に得ることができる。
【特許文献1】WO2003/047816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多数の凹部を有するトレーに、小さな表裏のある部品を電動ピンセットで把持してトレーの凹部にセットする場合、上記部品を把持してからピンセットを回転して、上記部品の姿勢を変えてから該トレーの凹部に多数の部品を並べることが行われている。かかる作業、殊に、ピンセットを回転する作業は、健常者は勿論のこと、手に障害を有する障害者にとっても大変煩雑な作業であるということを発明者が見出した。
かかる煩雑な作業を解決するのに、部品を挿入口に入れて排出される間に部品を180°回転させる反転装置を用いる手段もあるが、ピンセットで把持した部品を開放して落下させなければならず、ピンセットの把持から開放という動作が必要であり、部品そのものが反転する時などに傷つく恐れがある。反転装置そのものが設置場所を必要とする問題がある。このため、かかる煩雑な作業を解決するのに、発明者は、ピンセットで部品を把持したまま、部品を回転させれば良いということを見出した。
さらに、上記電動ピンセットの把持部材は、結合部の僅かな並進変位量に基づいて把持部材の先端が開放から閉成するが、結合部を引っ張る力に対する把持力の割合、つまり把持効率が悪いという課題があることを発明者が見出した。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させる電動ピンセットを得ることを課題としている。
加えて、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させると共に、把持効率の良い電動ピンセットを得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ピンセットは、ケースと、略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、第1把持部材と対向すると共に、該第1把持部材の第1内側辺とにより対象物を把持する一端部と他端部とを有する対向部材と、並進移動に基づいて第1把持部材の前記第1内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大して前記対向部材と共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、前記ケースに内蔵され、モータの軸に連結固定されたカムと、該カムと摺動するカムフォロワとを有しており、前記カムを第1方向に回転することにより前記カムフォロワを並進移動し、さらに、前記カムを前記第1方向に回転することにより前記カムフォロワを回転させる変換機構と、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1外側辺の開放側端部に連結固定された回転部と、前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、前記対向部材の一端部が前記伝達部又は前記回転部に連結固定されている、ことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の電動ピンセットによれば、制御手段がモータを第1方向へ回転させると、カムが回転してカムとカムフォロワの全長が短くなり、カムフォロワに連結された伝達部を介してピンセットの第1内側辺の開放側端部が引っ張られて、ピンセットが開放から閉成する。さらに、制御手段がモータを第1方向と同一方向へ回転させると、カムとカムフォロワの上記全長を維持した状態で、カムの回転によりカムフォロワが回転して伝達部及び回転部が回転する。これにより、ピンセットを閉成状態で、ピンセットの把持部が回転する。
したがって、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転できる。このため、ピンセットで部品を把持したまま、ピンセットを回転するので、部品の姿勢を変えることが簡易にできる。このため、例えば、方向性を有する部品、表裏を有する部品をトレーに置くことが容易になる。
また、ピンセットは、第1把持部材と、第1把持部材に対向する対向部材とにより成っているので、対向部材が例えば、第1把持部材と同様な形状に比較して構成が簡易になる。
また、制御手段は、ケースに内蔵されている、ことが好ましい。電動ピンセットの操作が簡易となるからである。
また、スイッチ手段は、ケースの表面に設けられることが好ましい。操作が容易だからである。
【0008】
本発明の電動ピンセットにおける前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、ことが好ましい。
したがって、ピンセットが第1回動部及び第2回動部を備えている場合には、第1把持部材は、第1内側辺の開放端部から第1回動部を介して連結されると共に、第1内側辺の開放端部を連結する第1結合部材と、第1外側辺の開放端部から第2回動部を介して連結された第1固定側部材とを備えている。
【0009】
このような構成の電動ピンセットによれば、モータが回転してピンセットの第1結合部材が引っ張られると、第1回動部,第2回動部を介して第1把持部材の第1内側辺,第1外側辺がそれぞれ引っ張られて、第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットの対向部材に対して第1把持部材が開放から閉成する。
このため、ピンセットは、開放から閉成するのに第1回動部、第2回動部により曲げモーメントの発生を極めて減少することができるので、第1結合部材の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、ピンセットの第1結合部材の引っ張り力に対して第1把持部材により対象物の把持力が、第1及び第2回動部が存在しない従来型ピンセットに比較して増大する。これは、従来型ピンセットでは、第1把持部材の第1内側辺を曲げる第1曲げモーメント、第1外側辺を曲げる第2曲げモーメントが発生するからである。
したがって、電動ピンセットは、ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できる。よって、電動ピンセットの小型化が可能となる。
【0010】
一方、第1把持部材が第1及び第2回動部のうち第1回動部のみを備えている場合には、第1把持部材は、第1内側辺の開放端部から第1回動部を介して第1内側辺の開放端部を連結する第1結合部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第1結合部材が引っ張られると、第1回動部を介して第1把持部材の第1内側辺が引っ張られて、第1把持部材の第1外側辺が第2曲げモーメントを越えた後、内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。
このため、ピンセットは、第1把持部材が開放から閉成するのに第1回動部により曲げモーメントの発生を減少できるので、第1結合部材の引っ張り力が有効に対象物の把持力となる。これにより、従来型ピンセットの把持力が第1及び第2曲げモーメントを発生した後、生じるのに対して本電動ピンセットでは、第2曲げモーメントを発生した後、生じる。
したがって、電動ピンセットは、第1ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できる。よつて、電動ピンセットの小型化が可能となる。
【0011】
また、第1把持部材が第1及び第2回動部のうち第2回動部を備えている場合には、第1把持部材は、第1外側辺の開放端部から第2回動部を介して連結された第1固定側部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、カムフォロワを並進移動して第1把持部材の第1内側辺が引っ張られて、第1内側辺が内側に撓むと共に、第2回動部を介して第1把持部材の第1外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。このように第2回動部のみ備えているピンセットは、上記第1回動部のみを備えている場合とほぼ同じ効果を奏する。
【0012】
また、カムフォロワを圧縮バネでカムに押圧する、ことが好ましい。カムの変位をカムフォロワに伝達しやすくなるからである。ピンセットの把持効率が増大することから、上記圧縮バネの圧縮力を低下できる。これにより、カムとカムフォロワとの押圧力を低下できると共に、回転部がケースを押圧する力を低下できる。したがって、例えば、回転部とケースとの摩擦力を低下できる。
【0013】
本発明における電動ピンセットは、ケースと、略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、略V字形状の第2内側辺と第2外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第2内側辺の端部を有し,前記V字辺の第2外側辺の開放側端部とを有する第2把持部材を備え、並進移動に基づいて第1及び第2把持部材の前記第1及び第2内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1及び第2把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大されると共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2外側辺の開放側端部に連結固定されている回転部と、前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の電動ピンセットによれば、制御手段がモータを第1方向へ回転させると、カムが回転してカムとカムフォロワの全長が短くなり、カムフォロワに連結された伝達部を介してピンセットの第1内側辺の開放側端部が引っ張られて、ピンセットが開放から閉成する。さらに、制御手段がモータを第1方向と同一方向へ回転させると、カムとカムフォロワの上記全長を維持した状態で、カムの回転によりカムフォロワが回転して伝達部及び回転部が回転する。これにより、ピンセットを閉成状態で、ピンセットの把持部が回転する。
したがって、作業者が電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転できる。このため、ピンセットで部品を把持したまま、ピンセットを回転するので、部品の姿勢を変えることが簡易にできる。このため、例えば、方向性を有する部品、表裏を有する部品をトレーに置くことが容易になる。
さらに、前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている。
このような電動ピンセットによれば、上記構成が同一のピンセットと同様の作用、効果奏する。
【0015】
このような構成の電動ピンセットによれば、モータが回転してピンセットの第1結合部材が引っ張られると、第1回動部,第2回動部を介して第1把持部材の第1内側辺,第1外側辺がそれぞれ引っ張られて、第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットの対向部材に対して第1把持部材が開放から閉成する。
このため、ピンセットは、開放から閉成するのに第1回動部、第2回動部により曲げモーメントの発生を極めて減少することができるので、ピンセットの第1内側辺の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、ピンセットの第1内側辺の引っ張り力に対して第1把持部材により対象物の把持力が、第1及び第2回動部が存在しない従来型ピンセットに比較して増大する。これは、従来型ピンセットでは、第1把持部材の第1内側辺を曲げる第1曲げモーメント、第1外側辺を曲げる第2曲げモーメントが発生するからである。
したがって、電動ピンセットは、ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できる。よつて、電動ピンセットの小型化が可能となる。
【0016】
本発明の電動ピンセットにおける前記ピンセットは、第3回動部又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第3回動部は、第2把持部材の前記第2内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第2結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、
前記第4回動部は、第2把持部材の前記第2外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第2固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、ことが好ましい。
【0017】
したがって、ピンセットが第3回動部及び第4回動部を備えている場合には、第2把持部材は、第2内側辺の開放端部から第3回動部を介して連結されると共に、第2内側辺の開放端部を連結する第2結合部材と、第2外側辺の開放端部から第4回動部を介して連結された第2固定側部材とを備えている。
また、第1結合部材及び第2結合部材は、一体化した一つの結合部材でも良い。
【0018】
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第1及び第2結合部材が引っ張られると、上記のように第1及び第2回動部を介して第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺が内側に撓むと共に、第3及び第4回動部を介して第2把持部材の第2内側辺及び第2外側辺が内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。
したがって、ピンセットは、第1及び第2回動部により第1把持部材の第1内側辺及び第1外側辺、第3及び第4回動部により第2把持部材の第2内側辺及び第2外側辺を内側に曲げる曲げモーメントが極めて減少する。
このため、ピンセットは、第2結合部材の引っ張り力に対して対象物を把持する把持力が従来型ピンセットよりも増大する。
さらに、本発明の電動ピンセットによれば、第1及び第2把持部材の先端部が内側に曲がるので、ピンセットが開放時の開放量を大きくできる。
【0019】
また、第2把持部材が第3及び第4回動部のうち第3回動部を備えている場合には、
第2把持部材は、第2内側辺の開放端部から第3回動部を介して連結する第2結合部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第2結合部材が引っ張られると、第3回動部を介して第2把持部材の第2内側辺が引っ張られて、第2把持部材の第2外側辺が第4曲げモーメントを越えた後、内側に撓む。これにより、ピンセットが開放から閉成する。
このため、ピンセットは、開放から閉成するのに第3回動部により曲げモーメントの発生を減少できるので、第2結合部材の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、従来型ピンセットの把持力が第3及び第4曲げモーメントを発生した後、生じるのに対して本電動ピンセットでは、第4曲げモーメントを発生した後、把持力が生じる。
【0020】
また、第2把持部材が第3及び第4回動部のうち第4回動部を備えている場合には、第2把持部材は、開放外側端部から第4回動部を介して連結された第2固定側部材を備えている。
このような電動ピンセットによれば、ピンセットの第2結合部材が引っ張られると、第2把持部材の第2内側辺が引っ張られて、第4回動部を介して第2把持部材の第2外側辺が内側に撓む。このように、ピンセットは、第3曲げモーメントを越えた後、内側に撓む。
このため、ピンセットは、閉成するのに第4回動部により曲げモーメントの発生を減少できるので、第2結合部材の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、従来型ピンセットが第3及び第4曲げモーメントを発生した後、生じるのに対して本電動ピンセットでは、第3曲げモーメントを発生した後、把持力が生じる。
また、ピンセットに回動部を設けることにより、ピンセットの駆動源となるモータの出力を低下でき、変換機構等も小型化できるので、小型化が可能となる。
なお、第1把持部材と第2把持部材の形状、材質が同一であれば、第1曲げモーメントと第3曲げモーメントとが等しくなり、第2曲げモーメントと第4曲げモーメントが等しくなる。
【0021】
本発明の電動ピンセットにおける前記第1から第4回動部のうち、第2又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、前記ピンセットは、第1把持部材と第2把持部材との第1内側辺と第2内側辺との開放側端部どうしが結合部を介して結合しており、前記伝達部は、前記結合部に連結されている、ことが好ましい。
これにより、ピンセットが第1把持部材と第2把持部材との第1内側辺と第2内側辺との開放側端部どうしが結合部を介して一体化したので、ピンセット自体の取り扱いが容易となる。
【0022】
本発明の電動ピンセットにおける前記ピンセットは、前記第1回動部と前記第3回動部との代わりに、第5回動部を有しており、
前記第5回動部は、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の前記第1内側辺と第2内側辺との開放側端部どうしを回動自在に形成している、前記伝達部は、前記第5回動部を介して前記第1及び第2把持部材の第1内側辺と第2内側辺との開放側端部に連結されている、ことが好ましい。
このようなピンセットは、第1把持部材及び第2把持部材は、第1内側辺と第2内側辺との開放内側端部から第5回動部を介して連結されている。したがって、第5回動部が結合部材としての機能をも有する。
このような電動ピンセットによれば、把持部材が第1回動部と第3回動部を有する場合と同様な作用効果を奏する。しかも、ピンセットは、第1回動部と第3回動部との代わりに、第5回動部を備えたので、回動部を一つ減少できる。よって、ピンセットの構成が簡易となる。
【0023】
本発明の電動ピンセットは、前記第1又は第2把持部材の少なくともいずれか一方は、前記固定部がL形状に形成されている、ことが好ましい。これにより、ピンセットを平らな台などに置いた際の安定性が増加する。
【0024】
本発明の電動ピンセットの制御手段はさらに、ピンセットが閉成状態で、前記モータを前記第1方向と逆方向の第2方向へ回転する、ことが好ましい。
これにより、モータを第1方向と逆方向の第2方向へ回転するとピンセットが閉成から開放する。したがって、ピンセットにより部品を把持したまま、回転させて部品の姿勢を変えてから、ピンセットを閉成から開放して把持している部品を離すことができる。
【0025】
本発明の電動ピンセットの伝達部は、ピンセットの結合部と連結された第1部材を有しており、該第1部材は、カムとの接触する面の反対側となるカムフォロワの中央上部に固定される、ことが好ましい。これにより伝達部を簡易に構成できる。
第1部材は、第1磁性部材と、第1磁性部材に磁気吸着されると共に、ピンセットの結合部を固定する第1固定部材とから成り、第1磁性部材をカムフォロワの中央上部に固定することが好ましい。これにより、ピンセットの結合部を第1磁性部材から簡易に着脱できる。
【0026】
本発明の電動ピンセットの回転部は、前記カムフォロワの回転を伝達するピン部材と、前記ピン部材の回転に伴い回転すると共に、前記ピンセットの他の端部に連結固定された回転部材と、を備えることが好ましい。これにより回転部を簡易に構成できる。
例えば、カムフォロワが円柱形状に形成されており、回転部材は円筒形で、カムフォロワの上部に遊挿され、カムフォロワには、側面に少なくとも一つの貫通孔が設けられており、回転部材の側面には、カムフォロワの貫通孔と同一直線上に貫通した少なくとも二つの長孔が設けられており、ピン部材が貫通孔に挿入固定されると共に、該長孔に遊挿されることが好ましい。
さらに、回転部材の円周の縁部に固定されると共に、リング形の第2磁性部材と、ピンセットの他の端部を固定すると共に、第2磁性部材に載置された第2固定部材とを備えることが好ましい。これにより、ピンセットの他の端部を第2磁性部材から簡易に着脱できる。
【0027】
本発明の電動ピンセットにおける変換機構は、本発明の電動ピンセットにおける変換機構は、カムには、第1面と該第1面に対して突起した突起部と、該突起部に半球状の第1溝が設けられており、該第1溝に置かれると共に、摺動する球部材と、前記カムフォロワ側面には、前記突起部の側面と当接する側面を有すると共に、前記球部材を摺動させる傾斜面を有する、ことが好ましい。
これにより、簡易に変換機構を構成できると共に、ピン部材を省くことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させる電動ピンセットを得ることができる。
加えて、電動ピンセットを持ったまま、電動によりピンセットの把持部を閉成状態で回転させる共に、把持効率の良い電動ピンセットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態となる電動ピンセットを図1から図9によって説明する。
図1において、電動ピンセット1は、ケース10と、モータ取付け板15と、モータ31と、モータ31の電源を投入・遮断するためのスイッチ手段としてのスイッチ33と、モータ31を駆動制御する制御手段としての制御部100と、を有している。
モータ31はギヤード式で、モータ31の回転角度を検知して回転検出角度を出力するエンコーダ35が設けられている。ケース10は、図2に示すように、非磁性体でアルミニウムから成り、円筒状の蓋5,カムフォルダー7を備えている。
【0030】
制御部100は、スイッチ33を一寸押すと、モータ31を第1角度として120°第1方向に回転すると共に、エンコーダ35の回転検出角度が120°に達するとモータ31を停止し、次に、スイッチ33を一寸押してモータ31を第2角度としての180°第1方向に回転すると共に、エンコーダ35の回転検出角度が180°に達するとモータ31を停止し、次に、スイッチ33を一寸押すと、モータ31を第1角度としての120°第1方向と逆の第2方向に回転すると共に、エンコーダ35の回転検出角度が120°に達するとモータ31を停止するように形成されている。
【0031】
図2において、電動ピンセット1は、第1ピンセット20を有すると共に、第1変換機構50、伝達部70、回転部80を内蔵している。第1ピンセット20は、対象物としての部品2を把持(閉成)したり開放したりする第1V字辺部材21と、第1V字辺部材21と対向する第1V字辺部材21と同形状の第2V字辺部材22とを有している。モータ31は、第1ピンセット20の一端部同士を回動自在にした第1及び第2結合部材としての結合部材24を並進変位させると共に、第1ピンセット20の結合部材24及び第1及び第2固定側部材26,27(以下、両部材24,26,27という。)を、回転する動力源と成っている。
【0032】
第1変換機構50は、モータ31の軸31aに連結固定された第1カム51と、該第1カム51と摺動する第1カムフォロワ55とを有しており、第1カム51を第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を並進移動し、さらに、第1カム51を第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を回転させるように形成されている。すなわち、第1カムの回転により第1カムフォロワ55が並進移動又は回転するように形成されている。
【0033】
第1変換機構50は、第1カム51に係合固定されたカム側の間欠回転ピン57とを備え、モータ31が120°第1方向に回転すると、第1カム51が回転して間欠回転ピン57は、第1カムフォロワ55の溝55uを摺動して第1カムフォロワ55を不回転としながら第1カムフォロワ55が図2に示すB方向に並進移動(押し込まれ)する。さらに、モータ31が180°第1方向に回転すると、間欠回転ピン57は、溝55uの縁に当接して第1カムフォロワ55を回転するように形成されている。
すなわち、第1カム51と第1カムフォロワ55と間欠回転ピン57とは、並進変位を第1ピンセット20の結合部材24に伝達する並進移動源と、該並進移動源と非同期で第1カムフォロワ55の回転を第1ピンセット20の両部材24,26,27を回転する回転源と成っている。
【0034】
そして、第1カムフォロワ55は、第1円柱と第1円柱よりも太い第2円柱とを備え、第1円柱には、コイル状の圧縮バネ59が挿入され、回転台82の底面により第1カムフォロワ55が球53を介して第1カム51に押圧している。
また、第1カムフォロワ55の並進変位量は、往路と復路との並進変位量を同一となるように形成されている。
【0035】
伝達部70は、第1カムフォロワ55の並進移動及び回転をピンセット20の結合部材24に伝達するもので、第1カムフォロワ55の中央凹部55aに固定される円柱状磁石から成る第1磁性部材72を有し、第1磁性部材72の上に円筒状の第1固定部材74が固定されて、第1固定部材74の孔74eにピンセット20の結合部22cがネジ76により固定されている。ここで、第1磁性部材72及び第1固定部材74を第1部材という。
これにより、第1ピンセット20の結合部材24が第1カムフォロワ55に連結固定されているので、第1カムフォロワ55の中央部の変位量が第1ピンセット20の結合部材24を矢印B方向に引っ張ったり、矢印A方向に戻したりすることにより、第1ピンセット20を開放・閉成すると共に、第1カムフォロワ55を回転することにより、第1ピンセット20の結合部材24を回転させるように形成されている。
【0036】
回転部80は、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27に連結固定されており、第1カムフォロワ55が並進移動しても、上記第1及び第2固定側部材26,27が並進移動することなく、第1カムフォロワ55の回転により第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を回転させるもので、第1カムフォロワ55の第1円柱に遊挿される回転台82を有しており、円柱状の回転伝達ピン84が回転台82の案内孔82sに遊挿されると共に、第1カムフォロワ55の孔55eに挿入固定されている。
【0037】
さらに、回転部80は、回転台82の先端部円柱に挿入固定されると共に、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を連結固定する磁石から成るリング状の第2磁性部材86と、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が固定されると共に、リング状の第2固定部材88とを備え、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が回転台82に連結固定されている。第2磁性部材86は、上面両縁が蓋5の内側コーナー部に当接しており、第2磁性部材86、回転台82を介して圧縮バネ59を第1カムフォロワ55の第2円柱のリング状の上面を押圧している。
【0038】
回転部80すなわち回転台82、第2磁性部材86、第2固定部材88がケース10内を摺動回転できるように形成されている。
これにより、第1カムフォロワ55が並進変位すると、回転伝達ピン84が回転台82の案内孔82sを摺動して回転台82が不回転になると共に、第1カムフォロワ55が回転すると、回転伝達ピン84が回転して回転台82も回転し、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が回転するように形成されている。第1カムフォロワ55の並進変位及び回転にかかわらず、常に、回転台82が一定の位置を維持しており、回転台82に連結された第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27も一定の位置を維持している。
【0039】
このような電動ピンセット1は、モータ31を第1方向へ回転させることにより第1ピンセット20が開放から閉成した後、モータ31を第1方向と同一方向へ回転することにより第1ピンセット20を閉成状態で、第1ピンセット20の結合部材24,第1及び第2固定側部材26,27を回転した後、さらにモータ31を第1方向と逆方向の第2方向へ回転すると第1ピンセット20が閉成から開放するように形成されている。
【0040】
次に、電動ピンセット1の主要部品を図3から図10を参照して説明する。ます、第1ピンセットを図3から図5を参照して説明する。これから説明するいずれのピンセットも材質は、変位拡大機能を有するためにバネ性を有することが好ましい。
<第1ピンセットの構成>
図3及び図4において、第1ピンセット20は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状を有し、変位拡大部材としての第1把持部材としての第1V字辺部材21と、第1V字辺部材21と対向する第1V字辺部材21と同形状の第2把持部材及び対向部材としての第2V字辺部材22とを有している。
第1ピンセット20は、第1V字辺部材21と第2V字辺部材22との開放内側端部を第1回動部710,第3回動部730とを介してそれぞれ連結されると共に、第1V字辺部材21と第2V字辺部材22との開放内側端部どうしを連結する結合部材24と、第1V字辺部材21の開放外側端部から第2回動部720を介して連結された第1固定側部材26と、第2V字辺部材22の開放外側端部から第4回動部740を介して連結された第2固定側部材27とを備え、結合部材24を引っ張ったり戻したりすると、第1回動部710及び第2回動部720を介して第1V字辺部材21の先端部が内側に曲がったり、復帰したりすると共に、第3回動部730及び第2回動部740を介して第2V字辺部材22の先端部が内側に曲がったり、復帰したりするように形成されている。
【0041】
図5において、第1ピンセット20は、回転台88の二つの切り欠き88aに第1固定側部材26、第2固定側部材27をそれぞれ係合固定してピンセットユニットを形成している。
【0042】
第1V字辺部材21は、真っ直ぐな第1内側辺21hと、第1内側辺21hと対向すると共に、真っ直ぐな第1外側辺21fとから成っており、該第1内側辺21hと第1外側辺21fが結合された平らな先端部に電子部品2等を把持する第1把持部21xと、を有している。同様に、第2V字辺部材22は、真っ直ぐな第2内側辺22hと、第2内側辺22hと対向すると共に、真っ直ぐな第2外側辺22fとから成っており、該第2内側辺22hと第2外側辺22fが結合された平らな先端部に電子部品2等を把持する第2把持部22xと、を有している。ここで、第1ピンセット20の把持部20xは、第1把持部21xと第2把持部22xとを合わせたものをいう。
また、結合部材24は長方形で、中央に丸形の孔24eが設けられ、両面が平らに形成されており、第1固定側部材26,第2固定側部材27も同様に、長方形で、両面が平らに形成されている。
【0043】
図3及び図4において、第1回動部710は、ヒンジ構造を有しており、円柱状の第1軸ピン712と、第1V字辺部材21の第1内側辺21hの開放内側端部には、第1内側辺21hの幅よりも細い幅で、円柱状の第1軸ピン712を挿入するために設けられた略半円筒形の第1ピン受け部21uと、結合部材24の一端部に設けられ、第1軸ピン712を挿入すると共に、第1ピン受け部22uを挟むように設けられた略円筒状の第1ピン挿入部24cを二つ備え、第1V字辺部材21の第1内側辺21hの開放側端部と結合部材24の一端部とが回動自在に形成されている。
【0044】
第2回動部720は、第1回動部710と同様にヒンジ構造をしており、円柱状の第2軸ピン722と、第1V字辺部材21の第1外側辺21fの開放外側端部には、第1外側辺21fの幅よりも細い幅で、円柱状の第2軸ピン722を挿入するために、外側向きに設けられた略半円筒形の第2ピン受け部21cと、第1固定側部材26の一端部に設けられると共に、第2軸ピン722を挿入し、第2ピン受け部21cを挟むように設けられた略円筒状の二つの第2ピン挿入部26cを二つ備え、第1V字辺部材21の第1外側辺21fの開放外側端部と第1固定側部材26の一端部とが回動自在に形成されている。
【0045】
第3回動部730は、第1回動部710と同様なヒンジ構造をしており、円柱状の第3軸ピン732と、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放外側端部には、第2内側辺22hの幅よりも細い幅で、円柱状の第3軸ピン732を挿入するために設けられた略半円筒形の第3ピン受け部22uと、結合部材24の他端部に設けられ、第3軸ピン732を挿入すると共に、第3ピン受け部22uを挟むように設けられた略円筒状の第3ピン挿入部24dを二つ備え、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放内側端部と結合部材24の他端部とが回動自在に形成されている。
【0046】
第4回動部740は、第2回動部720と同様なヒンジ構造をしており、円柱状の第4軸ピン742と、第2V字辺部材22の第2外側辺22fの開放外側端部には、第2外側辺22fの幅よりも細い幅で、円柱状の第4軸ピン742を挿入するために、外側向きに設けられた略半円筒形の第4ピン受け部22cと、第2固定側部材27の一端部に設けられると共に、第4軸ピン742を挿入し、第4ピン受け部22cを挟むように設けられた略円筒状の二つの第4ピン挿入部27cを二つ備え、第2V字辺部材22の第2外側辺22fの開放外側端部と第2固定側部材27の一端部とが回動自在に形成されている。
このように、第1ピンセット20は、第1及び第3回動部710,730を備え、結合部材24の一端部と他端部とが回動自在に形成されている。
なお、第1から第4ピン受け部21c,21u,22c,22uなどは、第1軸ピン712などを遊挿して回転できれば良いので、筒形状などでも良い。
【0047】
第1ピンセット20は、上記のように第1及び第2固定側部材26,27が第2固定部材88に係合固定され、結合部材24が第1固定部材74に固定され、第1カムフォロワ55の並進変位に基づいて結合部材26が引っ張られたり、戻されたりして把持部22xの先端が内側、別言すれば、上記並進変位の方向に対して略垂直方向、つまり、該並進変位の方向に対して横方向に拡大変位することにより第1ピンセット20の把持部20xが部品2を把持(閉成)したり開放したりするように形成されている。
そして、第1ピンセット20の結合部材24が引っ張られると第1回動部710及び第2回動部720を介して第1V字辺部材21の先端部が内側に撓むと共に、第3回動部730及び第4回動部740を介して第2V字辺部材22の先端部が内側に撓む。したがって、第1ピンセット20の第1回動部710から第4回動部740により曲げモーメントが発生することなく、第1回動部710から第42回動部740とを介して第1及び第2V字辺部材21,22の先端部が内側に撓むので、結合部材24の引っ張り力が有効に第1ピンセット20の把持力となる。これにより、結合部材24の引っ張り力に対して第1ピンセット20により対象物を把持する把持力が増大するように形成されている。
【0048】
<従来型ピンセット(比較例)>
次に、従来のピンセットを図6によって説明する。図6中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。図6において、従来型ピンセット520は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状のV字辺を有する第5把持部材522を有しており、第5把持部材522は、先端部を共有する二つの把持部21x,22xを有し、第1内側辺21hと第2内側辺22hとの端を結合して結合部22cが形成されており、第1外側辺21f,第2外側辺22fの開放側端部には、結合部22cと略平行に延設された平坦面を有する直線状の第1固定部21a,第2固定部22aとをそれぞれ有している。
【0049】
従来型ピンセット520の結合部22cが引っ張られると、第1及び第2外側辺21f,22fが内側に撓むと共に、第1及び第2内側辺21h,22hも内側に撓むので、第5把持部材522の先端部が内側に撓む。したがって、従来型ピンセット520は、第1内側辺21h、第2内側辺22hを内側に曲げる第1曲げモーメントM1,第3曲げモーメントM3と、第1固定部21a,第2固定部22aにそれぞれ連結された第1外側辺21f,第2外側辺22fの先端部が曲がるのに、第2曲げモーメントM2,第4曲げモーメントM4とが生じるので、結合部22cの引っ張り力がこれら第1から第4曲げモーメントの総和に達した後に、第5把持部材520の先端部に把持力が生じる。
【0050】
図7において、第1カム51は、円柱で、両端面が平面に形成されており、中央にはモータ31の軸31aを挿入して固定する貫通孔51eを有している。第1カム51は、第1カムフォロワ55と対向する一端面には、中心から外れて設けられた半球状の溝51bと、該溝51bと円柱の中心軸を中心として点対称に円柱状の係止穴51pとが設けられており、溝51bには、第1揚程部としての球53が載せられ、係止穴51pには、間欠回転ピン57を挿入して固定される。
【0051】
図8において、第1カムフォロワ55は、二段の円柱状で、第1円柱55bと第1円柱55bよりも太い第2円柱55cとから成り、第2円柱55cの端面側には、球53と接触すると共に、斜めに形成された輪郭としての接触面55sと、間欠回転ピン57を遊挿する円弧状の溝55uと、を有している。この溝55uは、第1カム51の120°回転した際に間欠回転ピン57を摺動させるためである。
第1円柱55bの端面側には、第1磁性部材72を挿入して固定するための円柱状の凹部55aが設けられ、該凹部55aの近傍に、回転伝達ピン84を挿入固定する孔55eが設けられている。
【0052】
図9において、回転台82は、二段の円筒状で、リング状の第2磁性部材86の孔を挿入固定する第1円筒82bと第1円筒82bよりも太い第2円筒82cとから成り、回転台82の中心部には、第1カムフォロワ55の第1円柱55bを並進移動を案内するために、円形の孔82eが設けられており、第2円筒82cの両側面には、回転伝達ピン84の両端部が並進移動するのを案内する長孔形状の案内孔82sが設けられている。
【0053】
図10において、第2固定部材88は、平板状の平面視略ドーナツ形で、孔88eの周囲には、二つの略T形状の切欠き88aが形成されている。外側がケース10のホルダー部材5の内面に摺動自在に遊挿入されるように形成しており、ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を切欠き88aに係合固定される。
ここで、ピンセット20と第2固定部材88とが組み立てられたものをピンセットユニットという。
【0054】
次に、第1ピンセット20と従来型ピンセット520の引っ張り力に対する把持力を図11により示す試験装置により測定した。
<試験装置>
図11において、試験装置500は、上向きにされた第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27を固定する台502と、第1ピンセット20の把持力を測定するロードセル504と、ロードセル504を第1ピンセット20の開放部に挿入する位置にする桁506と、第1ピンセット20の結合部材24に金属線508を介して固定されると共に、結合部材24に引張力を作用させる分銅510とを備え、分銅510の上記引張り力により第1ピンセット20の先端を閉じるようにしている。
【0055】
ここで、第1ピンセット20及び従来型ピンセット520は、ばね用りん青銅(C5210)製で、厚さ0.2mm,幅8mm,結合部材12mm,外側辺60mm,内側辺60mm、
内側辺の開放側端部と内側辺の開放側端部との間隔4mm、
また、ロードセル504:ひずみゲージ((株)共和電業,KFG-1N-120-C1-16)、
第1ピンセット20及び従来型ピンセット520の先端とロードセル504の間の距離は4mmである。
そして、第1ピンセット20の先端がロードセル504を押したときに生じるひずみゲージの出力電圧を動ひずみ計((株)共和電業,DPM-712B)を通してマルチ入力データ収集システム((株)キーエンス,NR-600)により測定した。
このような試験装置500により、第1ピンセット20及び従来型ピンセット520の引っ張り力に対する把持力のデータを測定する。
【0056】
<実験データ>
第1ピンセット20、従来型ピンセット520毎に、引っ張り力と把持力をプロットすると図12が得られた。この図12によれば、第1ピンセット20は、結合部材24を引っ張ると、引っ張り力に対して第1ピンセット20の把持部20xに直ぐに把持力が作用する。これは、上記結合部材24が引っ張られると、第1から第4回動部710,720,730,740を介して第1及び第2V字辺部材21,22の先端部が内側に撓む。これは、第1ピンセット20の第1から第4回動部710,720,730,740により曲げモーメントを生じることなく、第1及び第2V字辺部材21,22の先端部が内側に撓むので、結合部材24の引っ張り力が有効に第1ピンセット20の把持部20xの把持力となる。これにより、結合部材24の引っ張り力に対して第1ピンセット20により対象物を把持する把持力が増大する。
【0057】
一方、従来型ピンセット520は、結合部22cを引っ張ると、引っ張り力に対して所定の引っ張り力に達した後、把持部20xに把持力が作用して第5把持部材522の先端部が内側に撓む。これは、従来型ピンセット520は、把持部材522の把持部20xが内側に曲がるのに、以下の曲げモーメントが生じるからである。
第1内側辺21h,第1外側辺21fを内側に曲げるのに、それぞれ第1曲げモーメントM1,第2曲げモーメントM2を生じ、第2内側辺22h,第2外側辺22fを内側に曲げるのに、それぞれ第3曲げモーメントM3,第4曲げモーメントM4を生じるので、従来型ピンセット520は、これら各曲げモーメントの総和に達してから、把持部が曲がって把持力が生じる。
【0058】
上記のように構成された電動ピンセットの動作を図2、図13〜図18を参照して説明する。まず、第1ピンセット20が開放した状態で、モータ31の回転角度が0°の時を初期状態とする。この初期状態からモータ31の回転は、間欠回転ピン57が第1カムフォロワ55の溝55uを摺動できる方向に回るときを正回転とする。
第1ピンセット20が開放した状態では、図13に示すように、球53は第1カムフォロワ55底面の下部で接しているため、第1カム51の上端面から第1カムフォロワ55との上端面までの距離が(以下、並進距離という。)最も長くなる。この時、第1ピンセット20の結合部材24は全く引っ張られていないため、第1ピンセット20が開放した状態になっている。
【0059】
次に、作業者は電動ピンセット1を持ったまま、スイッチ33を一寸押して制御部100を介してモータ31を120°正回転させると、第1カムフォロワ55は、圧縮バネ59のバネ力により下向きに押さえられているので、球53は第1カムフォロワ55底面の下部から上部へと接する。このため、図14に示すように、上記並進距離が短くなる。この時、間欠回転ピン57は、第1カムフォロワ55の溝55uを摺動しているので、第1カムフォロワ55は、並進移動するのみで回転しない。これにより回転部80は回転せず、しかも同一位置に保持されている。このため、第1ピンセット20の第1及び第2固定側部材26,27が同一位置で静止している。一方、第1カムフォロワ55の並進変位を、伝達部70を介して第1ピンセット20の結合部材24がΔL引っ張られているため、第1及び第2回動部710,720と第3及び第4回動部730,740を介して第1ピンセット20が開放から閉成して部品2を把持した状態となる。
【0060】
次に、作業者は電動ピンセット1を持ったまま、スイッチ33を一寸押して制御部100を介してモータ31をさらに180°正回転させると、間欠回転ピン57が第1カムフォロワ55の溝55uの縁に接しているため、第1カムフォロワ55がモータ31と同期して回転するので、伝達部70及び回転部80も回転する。図16に示すように、ピンセット20は、結合部材24が伝達部70により、第1及び第2固定側部材26,27が回転部80により、全体として180°回転する。この回転の際に、第1カムフォロワ55と球53との位置関係は変化しないため上記並進距離も変化しないので、第1ピンセット20は閉成状態を維持しながら部品2を把持して回転する。第1ピンセット20が閉成状態を維持するのにも、結合部材24の引っ張り力は、従来型ピンセット520よりも低くできる(図12参照)。
なお、図15は、上記180°回転時における90°回転した状態を示している。
【0061】
次に、作業者は電動ピンセット1を持ったまま、スイッチ33を一寸押して制御部100を介してモータ31を120°逆回転させると、間欠回転ピン57は、第1カムフォロワ55の溝55uを回転摺動する。このため、第1カムフォロワ55が回転しないので、回転部80も回転せず、ピンセット20が回転しない。一方、球53と第1カムフォロワ55の接点は底面の上部から下部に移動する。このため、図17に示すように、上記並進距離が長くなる。そして、第1ピンセット20の結合部材24は全く引っ張られていないため、第1ピンセット20が開放する。
このように、第1ピンセット20の開放状態、把持(閉成)状態、把持しながら回転する把持回転状態、把持回転状態から開放する第1変換機構50の変位曲線を図18に示す。
【0062】
上記実施形態の電動ピンセット1は、ケースと、略V字形状の第1内側辺21hと第1外側辺21fとから成るV字辺を有し、該V字辺の開放側における第1内側辺21hの端部を有し,前記V字辺の第1外側辺21fの開放側端部とを有する第1V字辺部材21と、第1V字辺部材21と対向すると共に、略V字形状の第2内側辺22hと第2外側辺22fとから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第2内側辺22hの端部を有し,前記V字辺の第2外側辺22fの開放側端部とを有する第2V字辺部材22と、並進移動に基づいて第1及び第2V字辺部材21,22の第1,第2内側辺21h,22hの開放側端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも第1及び第2V字辺部材21,22のV字辺の先端の変位量が内側に拡大されると共に、対象物を解放及び把持する把持部20xを有する第1ピンセット20と、ケース10に内蔵され、モータ31の軸に連結固定された第1カム51と、該第1カム51と摺動する第1カムフォロワ55とを有しており、第1カム51を第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を並進移動し、さらに、第1カムを第1方向に回転することにより第1カムフォロワ55を回転させる変換機構50と、ケース10に内蔵され、第1カムフォロワ55に連結固定されると共に、第1及び第2V字辺部材21,22の第1,第2内側辺21h,22hの開放側端部に連結された伝達部70と、ケース10に内蔵され、第1カムフォロワ55に連結固定されると共に、第1及び第2V字辺部材21,22の第1,第2外側辺21f,22fの開放側端部に連結固定された回転部80と、モータ31を運転及び停止するスイッチ33と、スイッチ33を動作すると、モータ31を第1方向へ回転した後、さらに、スイッチ33を動作すると、モータ31を前記第1方向と同一方向へ回転する制御部100を備えたものである。
【0063】
上記電動ピンセット1によれば、制御部100がモータ31を第1方向へ回転させると、第1カム51と第1カムフォロワ55の全長が短くなり、ピンセット20が開放から閉成すると共に、モータ31を第1方向と同一方向へ回転させると、全長を維持した状態で、第1カム51の回転により第1カムフォロワ55が回転して伝達部70及び回転部80が回転する。これにより、ピンセット20を閉成状態で、ピンセット20の両部材24,26,27を回転できる。
したがって、作業者が電動ピンセット1を持ったまま、電動によりピンセット20の把持部を閉成状態で回転させることができる。このため、ピンセット20で部品2を把持したまま、ピンセット20を回転させるので、部品2の姿勢を変えることが簡易にできる。このため、本電動ピンセット1により方向性、例えば表裏を有する部品2をトレーに置くことが容易になる。
【0064】
第1ピンセット20は、第1V字辺部材21の第1内側辺21hの開放側端部と結合部材24の一端部とを回動自在にする第1回動部710と、第1V字辺部材21の第1外側辺21fの開放側端部と第1固定側部材26の一端部を回動自在にする第2回動部720と、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放側端部と結合部材24の他端部を回動自在にする第3回動部730と、備えたので、第1カムフォロワ55を並進移動して第1ピンセット20の結合部材24が引っ張られると、第1及び第2回動部710,720を介して第1V字辺部材21の第1内側辺,外側辺21h,21fが内側に曲がると共に、第3及び第4回動部730,740を介して第2V字辺部材22の第2内側辺,第2外側辺22h,22fが内側に曲がる。これにより、第1ピンセット20が開放から閉成する。
このため、第1ピンセット20は、開放から閉成するのに第1回動部720から第4回動部740により曲げモーメントが極めて減少できるので、結合部材24の引っ張り力が有効に対象物を把持する力となる。これにより、第1ピンセット20の把持力が従来型ピンセット520よりも極めて増大する。したがって、第1ピンセット20を閉成する駆動源となるモータ31の出力を低下できると共に、第1変換機構50の小型化を図ることができるので、電動ピンセット1自体も小型化できる。
【0065】
電動ピンセット1の結合部材24の引っ張り力が小さくなることから、圧縮バネ59の圧縮力を小さくできる。これにより、第1カム51を第1カムフォロワ55に押圧する押圧力を小さくできるので、球53の摩擦を減少できると共に、蓋5の内面と第2磁性部材86の上面の摩擦を減少できる。したがって、球53の寿命の増加などが図れる。
【0066】
第1ピンセット20が閉成状態で、制御部100がモータ31を第1方向と逆方向の第2方向へ回転すると、第1ピンセット20が閉成から開放する、ことが好ましい。
これにより、第1ピンセット20により部品2を把持したまま、回転させて部品2の姿勢を変えてから、ピンセット20を開放して部品2を離すことができる。
また、制御部100はケース10に内蔵されている、ことが好ましい。電動ピンセット1の操作が簡易となるからである。
【0067】
また、第1ピンセット20は、第1回動部710から第4回動部740をすべて備えたが、第1回動部710から第4回動部740のうち少なくも一つの回動部又は任意の複数の回動部を備えても良い。ピンセットが回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
また、結合部材24は、一つにしたが第1V字辺部材21と第2V字辺部材22の第1内側辺21h,22hの開放側端部に対応して二つに分割しても良い。
【0068】
実施形態2.
本発明の他の実施形態を図19によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図19に示すように第2ピンセット220を用いるものである。図19中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第2ピンセットの構成>
図19において、第2ピンセット220は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1把持部材としての第3V字辺部材223と、第3V字辺部材223と同形状の第2把持部材としての第4V字辺部材224と、第3V字辺部材223,第4V字辺部材224のそれぞれの開放外側端部から略直角に曲げられた第1固定部21a,第2固定部22aと、第3,第4V字辺部材223,224の開放側端部から二つの第1及び第3回動部710,730を介して第3,第4V字辺部材223,224の第1内側辺21hと第2内側辺22hの開放側端部どうしを連結する結合部材24とを備えている。
第2ピンセット220は、第3,第4V字辺部材223,224の第1,第2固定部21a,22aが回転部80に連結固定されており、結合部材24を引っ張ったり戻したりすると、第1及び第3回動部710,730を介して先端部が内側に曲がるように形成されている。
すなわち、第2ピンセット220は、第1ピンセット20に比較して第2及び第4回動部720,740,第1及び第2固定側部材26,27が省略されており、第1固定側部材26,第2固定部材27の代わりに第1及び第2固定部21a,22aがそれぞれ設けられており、第1及び第2固定部21a,22aが回転部80に連結固定されている。
【0069】
このような電動ピンセットによれば、第2ピンセット220の結合部材24が引っ張られると第1回動部710,第3回動部730を介して第3V字辺部材223,224の把持部20xが内側に撓む。したがって、第2ピンセット220は、第1回動部710により第1内側辺21hを内側に曲げるのに第1曲げモーメントが極めて減少すると共に、第3回動部730により第2内側辺22hを内側に曲げるのに、第3曲げモーメントが極めて減少する。したがって、第2ピンセット220は、結合部材24の引っ張り力が上記第2及び第4曲げモーメント力を超えた後に、先端部に把持力が生じるので、従来型ピンセット520に比較して把持力が増大する。
【0070】
なお、第2ピンセット220は、第1回動部710及び第3回動部730を備えたが、第1回動部710又は第3回動部730のうち少なくも一つの回動部を備えても良い。ピンセットが回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
また、結合部材24は、一つにしたが第1V字辺部材21と第2V字辺部材22の第1内側辺21h,22hの開放側端部に対応して二つに分割しても良い。
【0071】
実施形態3.
本発明の他の実施形態を図20によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図20に示すように第3ピンセット320を用いても良い。図20中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第3ピンセットの構成>
図20において、第3ピンセット320は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1及び第2把持部材としてのM字辺部材325を有している。M字辺部材325は、第1内側辺21hと第2内側辺22hとの開放側端部どうしを結合した結合部22dとを有しており、結合部22dには、孔22eが設けられている。
第3ピンセット320は、M字辺部材325の第1外側辺21fの開放外側端部から第2回動部720を介して連結された第1固定側部材26と、M字辺部材325の第2外側辺22fの開放外側端部から第4回動部740を介して連結された第2固定側部材27とを備え、M字辺部材325の結合部22dを引っ張ったり戻したりすると、第2及び第4回動部720,740を介しM字辺部材325の先端部が内側に曲がるように形成されている。
すなわち、第3ピンセット320は、第1ピンセット20に比較して第1回動部710,第3回動部730及び結合部材24が省略され、結合部材24の代わりに結合部22dが設けられており、結合部22dが伝達部70に連結固定されている。
【0072】
第3ピンセット320の結合部22dが引っ張られると、M字辺部材325が第2及び第4回動部720,740を介して把持部20xも内側に撓む。したがって、第3ピンセット320の第2回動部720により第1外側辺21fを内側に曲げる第2曲げモーメントと、第4回動部740により第2外側辺22fを内側に曲げる第4曲げモーメントとが極めて減少する。
一方、第3ピンセット320は、M字辺部材325の第1内側辺21h,第2内側辺22hの先端部が曲がるのに、第1曲げモーメント,第3曲げモーメントが生じるので、結合部22dの引っ張り力がこれらの曲げモーメントの和に達した後に、把持部20xに把持力が生じる。これにより、第3ピンセット320の把持力が従来型ピンセットに比較して増大する。
【0073】
次に、第2,第3ピンセット220,320の引っ張り力に対する把持力を図11により示す試験装置500により測定した。第2,第3ピンセット220,320毎に、引っ張り力と把持力をプロットすると図12が得られる。
第2ピンセット220は、結合部材24を引っ張ると、引っ張りが第2及び第4曲げモーメント力を越えると、把持部20xに把持力が作用する。
第3ピンセット320は、結合部22dを引っ張ると、引っ張りが第1及び第3曲げモーメント力を越えると、把持部20xに把持力が作用する。
一方、従来型ピンセット520は、結合部材24を引っ張ると、引っ張りが第1曲げモーメント力から第4曲げモーメント力の総和を越えると、把持部20xに把持力が作用する。
【0074】
また、第3ピンセット320は、第2回動部720及び第4回動部740を備えたが、第2回動部720又は第4回動部740のうち少なくも一つの回動部を備えても良い。ピンセットが回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
また、M字辺部材325は、第1V字辺部材21の第1内側辺21hと、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放端部どうしを結合した構成であるが、第1V字辺部材21の第1内側辺21hと、第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放端部を分離して形成しても良い。
【0075】
実施形態4.
本発明の他の実施形態を図21によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図21に示すように第4ピンセット420を用いても良い。図21中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第4ピンセットの構成>
図21において、第4ピンセット420は、全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1把持部材としての第5V字辺部材421と、第2把持部材としての第6V字辺部材422と、第5V字辺部材421の第1内側辺21hの開放端部と第6V字辺部材422の第2内側辺22hの開放端部とを回動自在にする第1回動部720及び第3回動部730と、第1内側辺21hの開放端部と第2内側辺22hの開放端部とを連結する結合部材24と、を備えている。
第5V字辺部材421、第6V字辺部材422は、それぞれの第1外側辺421f、第2外側辺422fとが第1内側辺21h、第2内側辺22hよりも短く形成されている。
【0076】
そして、第4ピンセット420は、第5V字辺部材421の第1外側辺421fの開放側端部から第2回動部720を介して連結された第1固定側部材としての第1L形状部材326と、第6V字辺部材422の第2外側辺422fの開放側端部から第4回動部740を介して連結された第2固定側部材としての第2L形状部材327とを備え、結合部材24を引っ張ったり戻したりすると、第1回動部710から第4回動部740を介して第先端部が内側に曲がるように形成されている。
また、第2回動部720及び第4回動部740は、第1,第2L形状部材326,327の一端部には、第2ピン受け部21c,22cを挟むように設けられた略円筒状の二つの第2ピン挿入部326c,第4ピン挿入部327cを備えている。
すなわち、第4ピンセット420は、第1ピンセット20に比較して第2回動部720及び第4回動部740が結合部材24よりも上方に設けられている。このため、第4ピンセット420を平らな台などに置いた際の安定性が増加する。
【0077】
また、第4ピンセット320は、第2回動部720及び第4回動部740を備えたが、第2回動部720又は第4回動部740のうち少なくも一つの回動部を備えても良い。さらに、第4ピンセット320は、第1回動部710及び第3回動部730を備えたが、第1回動部710又は第2回動部720のうち少なくも一つの回動部を備えても良いし、備えなくても良い。
【0078】
実施形態5.
本発明の他の実施形態を図22及び図23によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図22及び図23に示すように第5ピンセット520を用いても良い。図22中,図23中、図3,図4と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第5ピンセットの構成>
図22及び図23において、第5ピンセット520は、第1V字辺部材21と第2V字辺部材22との開放内側端部を第5回動部750を介して連結されている。
すなわち、第1ピンセット20では、第1回動部710及び第3回動部730を介して第1V字辺部材21の第1内側辺21hと第2V字辺部材22の第2内側辺22hの開放端部とを連結していたものが、第5ピンセット520では、第5回動部750のみで連結できる。
そして、第1V字辺部材21には、開放内側端部の中央部に第1V字辺部材21の幅よりも狭い円筒部21cを設け、該円筒部21cの中央から板状の共通結合部21zが設けられている。なお、共通結合部21zには、孔が設けられている。
第2V字辺部材22には、円筒部21cを挟むように設けられた略円筒状の二つのピン挿入部22yを有している。
このような第5ピンセット520を用いた電動ピンセットによれば、第1ピンセット20を用いた電動ピンセットと同様の作用効果を奏する。第5ピンセット520は、第1ピンセット20に比較して第1V字辺部材21と第2V字辺部材22の連結部の回動部を一つにできると共に、結合部材24を省略できるので、構成が簡易となる。
【0079】
また、第5ピンセット520は、第2回動部720及び第4回動部740を備えたが、第2回動部720又は第4回動部740のうち少なくも一つの回動部を備えても、備えなくとも良い。ピンセットは回動部を備えた部分の曲げモーメントを減少できるからである。
【0080】
実施形態6.
本発明の他の実施形態を図24及び図25によって説明する。本実施形態は第1ピンセットの代わりに、図25に示すように第6ピンセット620を用いても良い。図25中、図3と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
<第6ピンセットの構成>
図24において、第6ピンセット620は、はり状で略逆V形状に形成されると共に、先端部を共有する第1把持部材としての第3V字辺部材223と、第3V字辺部材223と対向すると共に、略L形状の対向部材630とを備えている。対向部材630には、真直ぐな他端部としての先端部を有する辺部632fと、辺部632fから延設された一端部としての固定部632aとを有しており、辺部632fの対向側の先端部が把持部632xと成っている。対向部材630の把持部632xと第3V字辺部材223の把持部21xとで、第6ピンセット620の把持部20xを成している。
そして、第6ピンセット620は、結合部材124の一端部に第1回動部710を介して第3V字辺部材223の第1内側辺21hの開放端部と回動自在に形成されている。
【0081】
図25に示すように、第6ピンセット620は、回転台88の切り欠き88aに第3V字辺部材223の固定部21aを係合固定し、同様に、回転台88の切り欠き88aに対向部材630の固定部632aも係合固定してピンセットユニットを形成している。このような第6ピンセット620を用いた電動ピンセットによれば、第2ピンセット220の第1V字辺部材21のみを用いた電動ピンセットと同様の作用効果を奏する。
したがって、第6ピンセット620は、第2V字辺部材22の代わりに対向部材630を用いることができるので、ピンセットの構成が簡易となる。
なお、上記では、対向部材630の固定部632aを回転部80に固定したが、伝達部70の例えば第1固定部材74に固定しても良い。
【0082】
実施の形態7.
本発明の他の実施形態の変換機構を図26によって説明する。図26は他の実施の形態を示すピンセットのカム組み立ての左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)である。
本第3変換機構250は、第3カム251と、第3カムフォロワ255と、を備えている。第3カム251は、第1面を有する円柱部と、円柱部の第1面に対して突設すると共に、平面視で扇形状の突起部としての柱部251tとを有している。第3カムフォロワ255は、二段の円柱状で、第1円柱255bと第1円柱255bよりも太い第2半円柱255cを有しており、第2半円柱255cには、側面255fを有している。第3カム251の柱部には、半球状の溝251uが設けられており、該溝251uに球53が置かれ、第3カムフォロワ255は、ピンセット側回転ピン84を挿入固定する孔255eと、第1磁性部材72を固定する円柱状の凹部255aとが設けられおり、第2半円柱255cには、第3カム251の柱部の側面と当接する側面を有すると共に、球53を摺動させる傾斜面255sを有している。
【0083】
上記のように構成された変換機構を有する電動ピンセットの把持状態で回転させる動作を図2及び図26を参照して説明する。
ピンセット20の閉成状態において、モータ31をさらに180°正回転させると、第3カム251の柱部251tは、第3カムフォロワ255の半柱の側面255fに接しているため、第3カムフォロワ255はモータ31と同期して回転する。上記実施形態2と同様にしてピンセット20は閉成状態を維持しながら、ピンセットも180°回転する。
このような変換機構250によれば、間欠回転ピン57が不要になるため簡易である。
【0084】
本発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、電動ピンセットに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施の形態を示す電動ピンセットの全体図である。
【図2】図1に示す電動ピンセットの断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図3】図1に示す第1ピンセットの斜視図である。
【図4】図3に示す第1ピンセットの分解斜視図である。
【図5】第1ピンセットを回転台に組み込んだピンセットユニットの斜視図である。
【図6】従来技術による従来型ピンセットの斜視図である。
【図7】図1に示すカムの正面図(a)、底面図(b)である。
【図8】図1に示すカムフォロワの正面図(a)、側面図(b)、底面図(c)である。
【図9】図1に示す回転台の平面図(a)、正面図(b)である。
【図10】図1に示す第2固定部材の平面図(a)、正面図(b)である。
【図11】ピンセットの引っ張り力と把持力の関係を得る実験装置の正面図である。
【図12】図13に示す実験装置により得られたピンセットの引っ張り力と把持力の関係図である。
【図13】図1によるピンセットの開放状態における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図14】図1によるピンセットの閉成状態における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図15】図1によるピンセットの把持状態で90°回転動作における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図16】図1によるピンセットの把持状態で180°回転動作における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図17】図15の回転動作後からピンセットの開放状態における各部の動作を示す部分断面図(a)、カム側の平面図(b)である。
【図18】図1に示すピンセットに用いるカムの変位線図である。
【図19】本発明の他の実施形態による第2ピンセットの斜視図である。
【図20】本発明の他の実施形態による第3ピンセットの斜視図である。
【図21】本発明の他の実施形態による第4ピンセットの斜視図である。
【図22】本発明の他の実施形態による第5ピンセットの斜視図である。
【図23】図22に示す第5ピンセットの分解斜視図である。
【図24】本発明の他の実施形態による第6ピンセットの斜視図である。
【図25】第6ピンセットを回転台に組み込んだピンセットユニットの分解斜視図である。
【図26】本発明の他の実施の形態を示すカム組み立ての左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)である。
【符号の説明】
【0087】
1 電動ピンセット、20,220,320,420,520,620 ピンセット、22a 固定部、22c 結合部、24 結合部材、26 第1固定側部材、27 第2固定側部材、31 モータ、33 スイッチ、50,250 変換機構、51,251 カム、55,255 カムフォロワ、70 伝達部、80 回転部、82 回転台(回転部材)、84 回転伝達ピン(ピン部材)、100 制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、
第1把持部材と対向すると共に、該第1把持部材の第1内側辺とにより対象物を把持する一端部と他端部とを有する対向部材と、
並進移動に基づいて第1把持部材の前記第1内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大して前記対向部材と共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、
前記ケースに内蔵され、モータの軸に連結固定されたカムと、該カムと摺動するカムフォロワとを有しており、前記カムを第1方向に回転することにより前記カムフォロワを並進移動し、さらに、前記カムを前記第1方向に回転することにより前記カムフォロワを回転させる変換機構と、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1外側辺の開放側端部に連結固定された回転部と、
前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、
前記対向部材の一端部が前記伝達部又は前記回転部に連結固定されている、
ことを特徴とする電動ピンセット。
【請求項2】
前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、
前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、
前記対向部材の一端部が前記伝達部又は前記回転部に連結固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動ピンセット。
【請求項3】
ケースと、
略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、
略V字形状の第2内側辺と第2外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第2内側辺の端部を有し,前記V字辺の第2外側辺の開放側端部とを有する第2把持部材を備え、
並進移動に基づいて第1及び第2把持部材の前記第1及び第2内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1及び第2把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大されると共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2外側辺の開放側端部に連結固定されている回転部と、
前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、
前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、
前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、
ことを特徴とする電動ピンセット。
【請求項4】
前記ピンセットは、第3回動部又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第3回動部は、第2把持部材の前記第2内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第2結合部材の端部とを回動自在に形成されており、
前記第4回動部は、第2把持部材の前記第2外側辺の開放側端部と前記回転部部に連結固定された第2固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電動ピンセット。
【請求項5】
前記第1から第4回動部のうち、第2又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記ピンセットは、第1把持部材の第1内側辺と第2把持部材の第2内側辺との開放側端部どうしが結合部を介して結合しており、
前記伝達部は、前記結合部に連結されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動ピンセット。
【請求項6】
前記ピンセットは、前記第1回動部と前記第3回動部との代わりに、第5回動部を有しており、
前記第5回動部は、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の前記第1及び第2内側辺の開放側端部どうしを回動自在に形成しており、
前記伝達部は、前記第5回動部を介して前記第1及び第2把持部材の第1及び第2内側辺の開放側端部に連結されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動ピンセット。
【請求項7】
前記第1又は第2把持部材の少なくともいずれか一方は、前記固定部がL形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項8】
前記制御手段はさらに、前記ピンセットが閉成状態で、前記モータを前記第1方向と逆方向の第2方向へ回転する、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項9】
前記伝達部は、前記ピンセットの結合部と連結された第1部材を有しており、
該第1部材は、前記カムとの接触する面の反対側となる前記カムフォロワの中央上部に固定された、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項10】
前記回転部は、前記カムフォロワの回転を伝達するピン部材と、
前記カムフォロワに遊挿され、前記ピン部材の回転に伴い回転すると共に、前記ピンセットの他の端部に連結固定された回転部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項11】
前記変換機構は、前記カムには、第1面と該第1面に対して突起を有する突起部と、該突起部に半球状の第1溝が設けられており、
該第1溝に置かれると共に、摺動する球部材と、
前記カムフォロワには、前記突起部の側面と当接する側面を有すると共に、前記球部材を摺動させる傾斜面を有する、
ことを特徴とする1から10のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項1】
ケースと、
略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、
第1把持部材と対向すると共に、該第1把持部材の第1内側辺とにより対象物を把持する一端部と他端部とを有する対向部材と、
並進移動に基づいて第1把持部材の前記第1内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大して前記対向部材と共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、
前記ケースに内蔵され、モータの軸に連結固定されたカムと、該カムと摺動するカムフォロワとを有しており、前記カムを第1方向に回転することにより前記カムフォロワを並進移動し、さらに、前記カムを前記第1方向に回転することにより前記カムフォロワを回転させる変換機構と、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1把持部材の第1外側辺の開放側端部に連結固定された回転部と、
前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、
前記対向部材の一端部が前記伝達部又は前記回転部に連結固定されている、
ことを特徴とする電動ピンセット。
【請求項2】
前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、
前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、
前記対向部材の一端部が前記伝達部又は前記回転部に連結固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動ピンセット。
【請求項3】
ケースと、
略V字形状の第1内側辺と第1外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第1内側辺の端部を有し,前記V字辺の第1外側辺の開放側端部とを有する第1把持部材と、
略V字形状の第2内側辺と第2外側辺とから成るV字辺を有し、前記V字辺の開放側における第2内側辺の端部を有し,前記V字辺の第2外側辺の開放側端部とを有する第2把持部材を備え、
並進移動に基づいて第1及び第2把持部材の前記第1及び第2内側辺の端部が引っ張られることにより、前記並進移動の量よりも前記第1及び第2把持部材のV字辺の先端の変位量が内側に拡大されると共に、対象物を解放及び把持する把持部を有するピンセットと、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2内側辺の開放側端部に連結された伝達部と、
前記ケースに内蔵され、前記カムフォロワに連結固定されると共に、前記第1及び第2外側辺の開放側端部に連結固定されている回転部と、
前記モータを運転及び停止するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを第1方向へ回転した後、さらに、前記スイッチ手段を動作すると、前記モータを前記第1方向と同一方向へ回転する制御手段とを備え、
前記ピンセットは、第1回動部又は第2回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第1回動部は、第1把持部材の前記第1内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第1結合部材の一端部とを回動自在に形成されており、
前記第2回動部は、第1把持部材の前記第1外側辺の開放側端部と前記回転部に連結固定された第1固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、
ことを特徴とする電動ピンセット。
【請求項4】
前記ピンセットは、第3回動部又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記第3回動部は、第2把持部材の前記第2内側辺の開放側端部と前記伝達部に連結固定された第2結合部材の端部とを回動自在に形成されており、
前記第4回動部は、第2把持部材の前記第2外側辺の開放側端部と前記回転部部に連結固定された第2固定側部材の一端部を回動自在に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電動ピンセット。
【請求項5】
前記第1から第4回動部のうち、第2又は第4回動部の少なくともいずれか一方を備え、
前記ピンセットは、第1把持部材の第1内側辺と第2把持部材の第2内側辺との開放側端部どうしが結合部を介して結合しており、
前記伝達部は、前記結合部に連結されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動ピンセット。
【請求項6】
前記ピンセットは、前記第1回動部と前記第3回動部との代わりに、第5回動部を有しており、
前記第5回動部は、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の前記第1及び第2内側辺の開放側端部どうしを回動自在に形成しており、
前記伝達部は、前記第5回動部を介して前記第1及び第2把持部材の第1及び第2内側辺の開放側端部に連結されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動ピンセット。
【請求項7】
前記第1又は第2把持部材の少なくともいずれか一方は、前記固定部がL形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項8】
前記制御手段はさらに、前記ピンセットが閉成状態で、前記モータを前記第1方向と逆方向の第2方向へ回転する、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項9】
前記伝達部は、前記ピンセットの結合部と連結された第1部材を有しており、
該第1部材は、前記カムとの接触する面の反対側となる前記カムフォロワの中央上部に固定された、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項10】
前記回転部は、前記カムフォロワの回転を伝達するピン部材と、
前記カムフォロワに遊挿され、前記ピン部材の回転に伴い回転すると共に、前記ピンセットの他の端部に連結固定された回転部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電動ピンセット。
【請求項11】
前記変換機構は、前記カムには、第1面と該第1面に対して突起を有する突起部と、該突起部に半球状の第1溝が設けられており、
該第1溝に置かれると共に、摺動する球部材と、
前記カムフォロワには、前記突起部の側面と当接する側面を有すると共に、前記球部材を摺動させる傾斜面を有する、
ことを特徴とする1から10のいずれかに記載の電動ピンセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−131735(P2010−131735A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312364(P2008−312364)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:社団法人 日本機械学会 刊行物名:福祉工学シンポジウム2008講演論文集 掲載日:平成20年9月17日
【出願人】(000154680)シチズン平和時計株式会社 (24)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:社団法人 日本機械学会 刊行物名:福祉工学シンポジウム2008講演論文集 掲載日:平成20年9月17日
【出願人】(000154680)シチズン平和時計株式会社 (24)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
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