説明

電動モータ

【課題】大型化を避けつつブラシの摩耗粉がベアリング側に飛散するのを抑制する。
【解決手段】一端部に出力部を有する回転軸30に固定されるコンミュテータ50と、コンミュテータ50の外周面に摺接するブラシ60を保持し、コンミュテータ50が挿通される挿通孔71aを有するブラシホルダ70と、ブラシホルダ70と回転軸30の一端部との間にあって回転軸30を支持するベアリングと、を備え、挿通孔71aの内周面の少なくとも一部に、周方向に延設された段部80が形成されており、段部80の段差面がブラシ60の摩耗粉を受ける受部83を構成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータに関し、例えば、車両用ブレーキ液圧制御装置に用いられて好適な電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動モータとしては、回転軸に固定されるコンミュテータ(整流子)と、このコンミュテータが挿通される挿通孔を有するとともに、コンミュテータに接触する複数のブラシを収容するためのブラシ収容部が設けられたブラシホルダとを備えたものが知られており、各ブラシは、ブラシ収容部に設けられたコイルスプリング等によってコンミュテータ側に付勢されて、コンミュテータにそれぞれ接触するように構成されている。
【0003】
ところで、ブラシは、炭素や金属等の導電性の材料で形成されており、コンミュテータに接触することで摩耗し、導電性の摩耗粉を生じる。このような摩耗粉は、コンミュテータの遠心力や静電気等の要因によって飛散し、ブラシホルダの挿通孔の内周面に付着したり、回転軸の出力側において回転軸を支持するベアリング等に付着する。このため、付着した摩耗粉が増加してくると、ブラシ間の絶縁抵抗の低下を来たす虞があった。
【0004】
そこで、従来では、ブラシホルダのコンミュテータに対向する内周面に、回転軸の軸方向に延びる溝を設けて、この溝内に摩耗粉を付着させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、飛散した摩耗粉が回転軸を支持するベアリング側に付着するのを防止するために、従来では、コンミュテータとベアリングとの間に、遮へい部材を介設し、この遮へい部材によってベアリング側へ飛散する摩耗粉を遮断するように構成した技術が開示されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−196059号公報
【特許文献2】特表2000−516680号公報
【特許文献3】特開2004−350457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載された技術では、ベアリング側へ摩耗粉が飛散することを抑制することができず、ベアリングやモータハウジング等の導体部品と、ブラシやコンミュテータ等とが電気的に接続されて絶縁抵抗が低下する虞があった。
【0008】
この点、前記特許文献2,3に記載された技術を採用することによって、ブラシ側へ摩耗粉が飛散することを抑制することができるが、コンミュテータとベアリングとの間に遮へい部材を介設する必要があるため、遮へい部材の厚さ分、回転軸長を長く設定する必要がある。このため、電動モータ全体が回転軸方向に大型化するという問題があった。
【0009】
このような観点から、本発明は、モータハウジング内において絶縁抵抗が低下するのを好適に防止することができる電動モータであって、大型化を避けつつブラシの摩耗粉がベアリング側に飛散するのを抑制することができる電動モータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決する本発明は、一端部に出力部を有する回転軸と、当該回転軸に固定されるコンミュテータと、前記コンミュテータの外周面に摺接するブラシを保持し、前記コンミュテータが挿通される挿通孔を有するブラシホルダと、前記ブラシホルダと前記回転軸の一端部との間にあって前記回転軸を支持するベアリングと、を備えた電動モータであって、前記挿通孔の内周面の少なくとも一部に、周方向に延設された段部が形成されており、当該段部の段差面が前記ブラシの摩耗粉を受ける受部を構成することを特徴とする。
【0011】
この電動モータによれば、挿通孔の内周面の少なくとも一部が、周方向に段部を延設されてなる段付き形状とされており、当該段部の段差面がブラシの摩耗粉を受ける受部を構成するので、コンミュテータにブラシが当接することによって摩耗粉が生じ、その摩耗粉がベアリング側へ向けて飛散しても、これが段部の受部(段差面)によって好適に受け留められる(捕らえられる)こととなり、ベアリング側へ摩耗粉が飛散することが抑制される。これによって、ベアリングやモータハウジング等の導体部品に摩耗粉が付着してこれが増加するのを好適に防止することができる。
したがって、ベアリングやモータハウジング等の導体部品と、ブラシやコンミュテータ等とが電気的に接続されて絶縁抵抗が低下するという不具合を防止することができる。
【0012】
また、受部は、ブラシホルダの挿通孔の内周面に位置することとなるので、従来のように、コンミュテータとベアリングとの間に遮へい部材等を介設するときのように、介設のためのスペースをブラシホルダとベアリングとの間に確保する必要がなくなり、回転軸の軸長を長く設定する必要がない。したがって、電動モータ全体が回転軸の軸方向に大型化するのを防止することができる。
【0013】
また、本発明は、前記段部が、前記内周面における前記ベアリング側で前記コンミュテータに近接される小径部と、この小径部の前記ブラシ側に隣接され、前記小径部よりも大径とされて前記コンミュテータから離間される大径部とから構成されており、前記小径部と前記大径部との径寸法の差から前記受部が形成されてなる構成とするのがよい。この電動モータによれば、ブラシホルダの内周面に、小径部と、この小径部に隣接する大径部とを設けることで、その小径部と大径部との径寸法の差から受部(段差面)が形成されてなるので、簡単な構成で摩耗粉を好適に捕らえることができる電動モータが得られる。
【0014】
また、本発明は、前記段部の前記受部が、前記コンミュテータと前記ブラシとの摺接部位よりも前記ベアリング側に位置する構成とするのがよい。この電動モータによれば、前記コンミュテータと前記ブラシとの摺接部位よりも前記ベアリング側に受部が位置するので、ベアリング側へ飛散する摩耗粉を効果的に受け留める(捕らえる)ことができ、ベアリング側へ摩耗粉が飛散するのを好適に抑制することができる。
【0015】
また、本発明は、前記大径部の一部に、当該大径部から前記ブラシ側に延びる内壁部が設けられている構成とするのがよい。この電動モータによれば、ブラシホルダの内面側へ向けて飛散してくる摩耗粉を内壁部によって受け留める(捕らえる)ことができ、ブラシホルダの内面に摩耗粉が付着するのを好適に防止することができる。
また、内壁部は大径部の一部に設けられており、コンミュテータの周り全てを囲うものではないので、内壁部に摩耗粉が付着してこれが増加しても、コンミュテータの周り全てを囲うように摩耗粉が付着する状況とはならず、ブラシ間の絶縁抵抗を好適に維持することができる。したがって、長期的に安定した回転を維持することができる電動モータが得られる。
【0016】
また、本発明は、前記段部が、前記回転軸を中心として同心円状に設けられている構成とするのがよい。この電動モータによれば、コンミュテータと段部とのクリアランスが一定に保持され、飛散した摩耗粉を効果的に受け止める(捕らえる)ことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、絶縁抵抗が低下するのを好適に防止することができる電動モータであって、大型化を避けつつブラシの摩耗粉がベアリング側に飛散するのを抑制することができる電動モータが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態においては、車両用ブレーキ液圧制御装置に使用される電動モータを例示するが、本発明に係る電動モータの用途を限定する趣旨ではない。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る電動モータMは、車両用ブレーキ液圧制御装置Uに適用されて、基体100に装着される往復動ポンプPの動力源となるものであり、基体100の一面に一体的に固着される。
【0020】
なお、基体100には、電動モータMのほか、往復動ポンプP、常開型の電磁弁101、常閉型の電磁弁102、圧力センサ103、リザーバ104、コントロールハウジング105などが取り付けられる。コントロールハウジング105には、図2に示すように、電動モータMや電磁弁101,102を制御する制御基板106のほか、電動モータMに電力を供給するための接続端子107や電磁弁101,102を駆動させるための電磁コイル108などが収容されている。
【0021】
電動モータMは、モータハウジング10、固定子20、回転軸30、回転子40、コンミュテータ(整流子)50、ブラシ60、ブラシホルダ70、ブラシ収容部73、コイルばね73b、ストッパ74、ピッグテール90(図3(a)参照)などを備えている。
【0022】
モータハウジング10は、略有底円筒状に形成されたヨーク11と、このヨーク11の開口部に覆設されるカバー12とからなる。ヨーク11の底部には、ボールベアリング11bが固定されている。また、カバー12の内側には、凹部12aが形成されており、この凹部12aにボールベアリング12bが固定されている。本実施形態では、ボールベアリング12bが、「特許請求の範囲」における「ベアリング」に相当する。
【0023】
回転軸30は、ボールベアリング11b,12bに回転自在に支持され、一端部側(ボールベアリング12bに支持される側)に出力部を有する。回転軸30は、主軸部31と、この主軸部31の端面に突設された偏心軸部32と、この偏心軸部32の端面に突設された先端軸部33とを備えている。偏心軸部32には、図1に示す往復動ポンプPのプランジャ(図示略)に当接するボールベアリング32aが嵌め込まれていて、偏心軸部32とボールベアリング32aとでプランジャに往復運動をさせるための偏心カムが構成されている。なお、先端軸部33は、主軸部31と同軸で、基体100の装着穴110に固定されたボールベアリング33aに回転自在に支持される。なお、基体100と電動モータMとの間にはシール部材111が介設される。
【0024】
回転子40は、回転軸30の主軸部31に嵌め込まれたコア41と、このコア41を覆うインシュレータ42と、コア41に形成されたスロットに巻き付けられたマグネットワイヤ(電機子巻線)43とを備えている。なお、回転子40は、固定子20の内周側に位置している。
【0025】
コンミュテータ50は、回転子40とボールベアリング12bとの間において主軸部31に嵌め込まれていて、主軸部31とともに回転する。コンミュテータ50は、ブラシホルダ70に形成された後記する挿通孔71aに挿通され、その外周面には、ブラシホルダ70に保持されたブラシ60が摺接する。
【0026】
ブラシ60は、ブラシスプリングとしてのコイルばね73bによりコンミュテータ50側に付勢された状態でブラシ収容部73に移動可能に収容されていて、コイルばね73bの付勢力によって、その先端面がコンミュテータ50の外周面に接触するようになっている。
図4に示すように、ブラシ60には、その一面(ヨーク11の周方向に向く面)の後端部に、給電用のピッグテール90が接続されている。ブラシ60はこのピッグテール90をブラシ収容部73の案内溝73dに挿通してブラシ収容部73に挿入される。
このようなブラシ60は、炭素や金属等の導電性の材料から形成されており、コンミュテータ50に接触することで摩耗粉を生じる。
【0027】
図2に示すように、ブラシホルダ70は、コンミュテータ50を取り囲むように配置されたホルダ本体70Aと、このホルダ本体70Aから突出する棒状部70Bとからなり、ホルダ本体70Aをカバー12と回転子40との間においてヨーク11に嵌め込むことで固定される。
【0028】
棒状部70Bは、電動モータMを基体100に組み付けたときに、基体100に形成された挿通孔109に挿通され、その先端部がコントロールハウジング105側に突出する。棒状部70Bには、導電体からなる給電路78が二つ内包されている(図2においては一つだけを図示している)。給電路78は、棒状部70Bの全長に亘って配置されており、その基端部はホルダ本体70Aから棒状部70B内へと突設された接続端子70cに接続されている。給電路78の先端部は、電動モータMを基体100に組み付けたときに、コントロールハウジング105の接続端子107に接続される。
【0029】
ホルダ本体70Aは、図3(a)に示すように、コンミュテータ50(図2参照)が挿通される挿通孔71aを備えた環状部71と、この環状部71の外周縁に所定間隔を置いて立設された周壁部72と、環状部71の挿通孔71aを取り囲んで放射状に配置された複数(本実施形態では四つ)のブラシ収容部73,73,…と、ブラシ収容部73と同数のターミナル75,75,…とを備えている。
【0030】
環状部71は、ブラシ収容部73が配置される部分の周縁部(周壁部72が立設されていない部分)が、それぞれ凹状に切り欠かれており、この切り欠かれた各切欠部71bの空間に、ブラシ収容部73の後端面の挿入口73gが露出するようになっている。
【0031】
周壁部72は、環状部71の内面(図2に示す回転子40と対向する面)に形成されていて、ヨーク11の周壁部11aに固着されるようになっている(図2参照)。
【0032】
ブラシ収容部73は、ブラシ60を摺動自在に保持するものであり、本実施形態では、環状部71の内面側に形成されている。ブラシ収容部73は、四角筒状を呈しており(図3(a),図4参照)、挿通孔71aに臨む先端面(コンミュテータ50側の面、図2参照)が開口して、ブラシ60が突出可能であり、また、切欠部71bの空間に臨む後端面(ヨーク11の周壁部11a側の面、図2参照)に挿入口73gが開口して、ブラシ60をコンミュテータ50側に付勢するコイルばね73bが挿入可能である。ブラシ収容部73の一方の側面(ヨーク11の周方向に向く面)には、ブラシ60の後端部に接続されたピッグテール90を挿通するための案内溝73d(図4参照)がブラシ60の摺動方向に沿って形成されている。なお、案内溝73dは全てのブラシ収容部73で同一の側面に設けられている。
【0033】
図3(a)、図4に示すように、ストッパ74は、ブラシ収容部73の後端面(ヨーク11の周壁部11a側の面、図2参照)側に係止され、後端面に形成された挿入口73g(図3(a)参照)を塞いで、ブラシ収容部73に挿入されたブラシ60およびコイルばね73bを抜け止め保持するようになっている。
【0034】
挿通孔71aは、図3(b),図4に示すように、内周面の一部に周方向に延設された段部80が形成されており、段部80により形成される段差面81aとこれに隣接する内周面82aとによって、ブラシ60の摩耗粉を受ける受部83を構成している。本実施形態では、段部80が、小径部81と、この小径部81よりも大径とされた大径部82とから構成されている。
小径部81は、図5に示すように、挿通孔71aの内周面のボールベアリング12b側に設けられており、コンミュテータ50の一端側の外周面に近接するように形成されている。小径部81のブラシ60側に向く面は、回転軸30の軸線対して直交する面とされており、隣接する大径部82との間で段差面81aを構成している。
【0035】
大径部82は、小径部81のブラシ60側に隣接して設けられており、小径部81よりも大径とされてコンミュテータ50の外周面から離間するように形成されている。大径部82の内周面82aは、回転軸30の軸線に平行な面とされており、隣接する内周面82aに直交する面とされている。
つまり、受部83は、回転軸30の軸線に直交する段差面81a(小径部81)と、この段差面81aに連続して、回転軸30の軸線に平行な内周面82a(大径部82)とからなり、図5に示すように、断面形状が略L字形状を呈するように形成されている。これによって、コンミュテータ50の周りには、受部83による凹状の空間が形成されるようになっている。本実施形態では、図3(a)に示すように、挿通孔71a内においてブラシ収容部73間の3箇所に受部83が形成されており、各受部83同士が挿通孔71aの周方向に連続することのない構成とされている。
【0036】
また、受部83は、図5に示すように、コンミュテータ50とブラシ60との摺接部位よりもボールベアリング12b側に位置するように設けられている。つまり、受部83は、前記摺接部位と、ボールベアリング12bとの間に位置して、後記するようにブラシ60の摩耗粉を受け留める(捕らえる)ようになっている。
【0037】
大径部82の一部には、図3(b),図4に示すように、大径部82からブラシ60側に延びる内壁部84が設けられている。内壁部84は、図5に示すように、その内面が段部80の受部83を構成している内周面82aに連続しており、図3(b)に示すように、一端部84a側がこれに隣接するブラシ収容部73の側面に接続されて閉じられているとともに、他端部84b側が、これに隣接するブラシ収容部73との間に間隙を有するように設けられている。したがって、内壁部84は、大径部82の周方向に連続することがなく、他端部84bの側方に設けられた間隙Sを通じて挿通孔71aの空間と環状部71の内面側の空間とが連通するようになっている。
【0038】
また、ホルダ本体70Aの環状部71には、図5に示すように、ボールベアリング12bに対向する側に凹部76が形成されている。この凹部76は、ホルダ本体70Aとカバー12との間の容積を拡げる役割をなし、カバー12側へ向けて摩耗粉が仮に飛散した場合であっても、飛散した摩耗粉はホルダ本体70A側へ巻き込まれやすくなり、ボールベアリング12b側へ付着することが抑制される。
【0039】
次に、ターミナル75は、図3(a)、図4に示すように、環状部71の内面側に露出し、ブラシ収容部73に近接した部位に配置されている。各ターミナル75には、ピッグテール90の端部が接続端子91を介して接続されている。
なお、ターミナル75の一部は図示しない端子を介してホルダ本体70Aの内面側から外面側へ貫通し、外面側に設けられた接続端子70cに接続されて、棒状部70Bの給電路78に接続されている。
【0040】
ピッグテール90は、その一端部が前記のようにブラシ60の後端部の側方に接続されており、他端部が接続端子91を介してターミナル75に接続されている。ピッグテール90は、複数の導線を編み込んで形成したものであり、ブラシ60の動きに追従し得る程度の可撓性を有している。なお、前記した大径部82の内壁部84は、ブラシ60の摩耗に伴ってブラシ60の先端側へ移動したピッグテール90が挿通孔71a内へ露出するのを防ぐ役割もなす。
【0041】
次に、図6に示すように、ヨーク11にホルダ本体70A(70)を装着する際の手順について説明する。
(1)ホルダ本体70Aの装着に先立って、まず、回転子40およびコンミュテータ50を、回転軸30に圧入して組み付ける。
(2)ブラシ60、コイルばね73bおよびストッパ74をブラシホルダ70に組み付け、このブラシホルダ70を、回転軸30に挿入する。
(3)その上から、ボールベアリング12bを圧入したカバー12を、回転軸30に圧入して組み付ける。
(4)偏心軸部32にベアリング32aを圧入する。
(5)最後に、ボールベアリング11bおよび固定子20が予め固定されたヨーク11に、前記(1)〜(4)で組み立てた部品を圧入して組み付ける。
この圧入により、ヨーク11の周壁部11aに、ホルダ本体70Aの周壁部72が当接して固着される。なお、周壁部72は、ヨーク11の周壁部11aに突設された突部13(図5参照)により所定の位置に固着される。
【0042】
このように、ホルダ本体70Aがヨーク11の開口に装着されると、図5に示すように、ホルダ本体70Aの挿通孔71aに、コンミュテータ50が部分的に収容された状態となり、コンミュテータ50とブラシ60との摺接部位と、ボールベアリング12bとの間に、段部80の受部83が位置する状態にされる。
【0043】
したがって、電動モータMの使用により、コンミュテータ50にブラシ60が当接することによって摩耗粉が生じ、その摩耗粉がボールベアリング12b側へ向けて飛散しても、これが段部80の受部83(段差面81a,内周面82a)によって好適に受け留められる(捕らえられる)こととなり、ボールベアリング12b側へ摩耗粉が飛散することが抑制される。
なお、使用によって、ブラシ60が摩耗してくると、ピッグテール90の接続部分は、コイルばね73bの付勢力により案内溝73dに沿ってコンミュテータ50側へ移動し、コンミュテータ50に対するブラシ60の良好な接触が維持される。
【0044】
以上のように構成された本実施形態に係る電動モータMによると、挿通孔71aの内周面の少なくとも一部に、周方向に延設された段部80が形成されており、段部80の段差面81a,内周面82aがブラシ60の摩耗粉を受ける受部83を構成するので、コンミュテータ50にブラシ60が当接することによって摩耗粉が生じ、その摩耗粉がボールベアリング12b側へ向けて飛散しても、これが段部80の受部83によって好適に受け留められる(捕らえられる)こととなり、ボールベアリング12b側へ摩耗粉が飛散することが抑制される。これによって、ボールベアリング12bやカバー12等の導体部品に摩耗粉が付着してこれが増加するのを好適に防止することができる。
したがって、ボールベアリング12bやカバー12等の導体部品と、ブラシ60やコンミュテータ50等とが電気的に接続されて絶縁抵抗が低下するという不具合を防止することができる。
【0045】
また、段部80は、ホルダ本体70Aの挿通孔71aの内周面に設けられるので、従来のように、コンミュテータとベアリングとの間に遮へい部材等を介設するときのように、介設のためのスペースを確保する必要がなくなり、回転軸30の軸長を長く設定する必要がない。したがって、電動モータMの全体が回転軸30の軸方向に大型化するのを防止することができる。
【0046】
また、段部80が、小径部81と大径部82とから構成され、小径部81と大径部82との径寸法の差から受部83が形成されるので、小径部81と大径部82とを形成するという簡単な構成で摩耗粉を好適に受け留める(捕らえる)ことができる電動モータMが得られる。
【0047】
また、コンミュテータ50とブラシ60との摺接部位よりもボールベアリング12b側に受部83が位置するようになっているので、ボールベアリング12b側へ飛散する摩耗粉を効果的に受け留める(捕らえる)ことができ、ボールベアリング12b側へ摩耗粉が飛散するのを好適に抑制することができる。
【0048】
また、大径部82の一部に、大径部82からブラシ60側に延びる内壁部84が設けられているので、ブラシホルダ70の径方向に向けて飛散してくる摩耗粉を内壁部84によって受け留める(捕らえる)ことができ、ホルダ本体70Aの内面側に摩耗粉が付着するのを好適に防止することができる。
また、内壁部84は大径部82の一部に設けられており、コンミュテータ50の周り全てを囲うものではないので、内壁部84に摩耗粉が付着してこれが増加しても、コンミュテータ50の周り全てを囲うように摩耗粉が付着する状況とはならず、ブラシ60間の絶縁抵抗を好適に維持することができる。したがって、長期的に安定した回転を維持することができる電動モータMが得られる。
【0049】
また、段部80が、回転軸30を中心として同心円状に設けられているので、コンミュテータ50と段部80とのクリアランスが一定に保持され、飛散した摩耗粉を効果的に受け留める(捕らえる)ことができる。
【0050】
また、前記実施形態では、段部80の段差面81aを、回転軸30の軸線に直交する面として構成し、さらに、段部80の内周面82aを、回転軸30の軸線に平行な面として構成したが、これらに限られることはなく、各面を所望の角度傾斜させて設けてもよいし、各面を平らな面ではなく湾曲した面で構成してもよい。
また、段部80は、小径部81と大径部82とにより構成したが、小径部81よりも大径で大径部82よりも小径とされた中径部を、小径部81と大径部82との間にさらに形成して多段状としてもよい。
さらに、段部80を挿通孔71aの周方向の3箇所に設けた構成としたが、段部80を挿通孔71aの全周状に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る電動モータが使用された車両用ブレーキ液圧制御装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電動モータが使用された車両用ブレーキ液圧制御装置を示す分解側断面図である。
【図3】(a)はブラシホルダの内面を示す図、(b)は段部の拡大説明図である。
【図4】ブラシホルダを内面側から見た一部省略斜視図である。
【図5】段部を示した模式断面図である。
【図6】組み付け時の説明図である。
【符号の説明】
【0052】
M 電動モータ
10 モータハウジング
12b ボールベアリング(ベアリング)
30 回転軸
31 主軸部
41 積層コア
42 インシュレータ
43 マグネットワイヤ
50 コンミュテータ
60 ブラシ
70 ブラシホルダ
70A ホルダ本体
73 ブラシ収容部
80 段部
81 小径部
81a 段差面
82 大径部
82a 内周面
83 受部
84 内壁部
U 車両用ブレーキ液圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に出力部を有する回転軸と、
当該回転軸に固定されるコンミュテータと、
前記コンミュテータの外周面に摺接するブラシを保持し、前記コンミュテータが挿通される挿通孔を有するブラシホルダと、
前記ブラシホルダと前記回転軸の一端部との間にあって前記回転軸を支持するベアリングと、を備えた電動モータであって、
前記挿通孔の内周面の少なくとも一部に、周方向に延設された段部が形成されており、当該段部の段差面が前記ブラシの摩耗粉を受ける受部を構成することを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
前記段部は、前記内周面における前記ベアリング側で前記コンミュテータに近接する小径部と、この小径部の前記ブラシ側に隣接され、前記小径部よりも大径とされて前記コンミュテータから離間する大径部とから構成されており、
前記小径部と前記大径部との径寸法の差から前記受部が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記受部は、前記コンミュテータと前記ブラシとの摺接部位よりも前記ベアリング側に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記大径部の一部には、当該大径部から前記ブラシ側に延びる内壁部が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記段部は、前記回転軸を中心として同心円状に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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