説明

電動切換弁

【課題】簡単な構成で3個の出口ポートを選択的に切り換える電動切換弁を提供する。
【解決手段】電動切換弁1は、弁本体10の中心部に1個の入口ポート12と円周上に3個の出口ポート130a〜130cを有し、各出口ポートに対向して回転弁体が配置される。冷媒が流入するキャン20内にはロータ30がシャフト60により回転自在に支持される。キャン20の外側にはステータとして機能するコイルユニット40がとりつけられる。ロータ30と一体に回転する回転弁体100は冷媒の流入通路110と流出通路120を有し、流出通路120が回転して3個の出口ポートに選択的に対向して冷媒の通路を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路の切り換えを行う切換弁に係り、特に、冷蔵庫、空調機等の冷媒循環系に組み込んで使用するのに好適な電動切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、1本の流路Aを流れる流体を2本の流路B及び流路Cのいずれかに任意に切り換えて流すようにする場合、通常、流路Aと流路B、Cとの間に三方切換弁を介装する。
【0003】
具体的には、例えば、冷蔵庫においては、圧縮機からの冷媒が導入される流路Aと、冷媒を冷凍室側の蒸発器に導く流路Bと、冷媒を冷蔵室側の蒸発器に導く流路Cとの間に三方切換弁を介装し、流路Aに導入された冷媒を、三方切換弁により流路Bと流路Cのいずれか一方のみに択一的に流すように構成されている。この場合、前記三方切換弁においては、流路A(流入口)は常時開かれ、流路B(第1の流出口)が開けられているときは、流路C(第2の流出口)が閉じ、逆に、流路Bが閉じられているときは、流路Cが開くように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−357275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えば、冷蔵庫においては、冷凍室、冷蔵室、及び、野菜室にそれぞれ蒸発器を設けてそれぞれの室の冷却を確実に行わせるようにする傾向にあり、このような冷蔵庫では上記のような従来の三方弁では対応できない。そこで、本発明の課題は、上記問題を解消できる切換弁として、冷凍室、冷蔵室、及び、野菜室にそれぞれ蒸発器を設けてそれぞれの室の冷却を確実に行わせる冷蔵庫等に対応可能な四方弁等の電動切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動切換弁は、中心軸上に形成され流体が流入する入口ポート及び該入口ポートから半径方向に形成され流体が流出する複数の出口ポートを有すると共に、該入口ポート及び出口ポートを連通する内径部を有する弁本体と、弁本体に固着される非磁性金属材料製の円筒形状のキャンと、キャンの内側に回転自在に支持されるロータと、キャンの外側に装備されるステータとして機能するコイルユニットを備えて、入口ポートを複数の出口ポートに選択的に連通するように流路を切換える電動切換弁であって、基本的手段として、弁本体の内径部に回転動自在に挿入されるロータと一体の回転弁体を備え、回転弁体は中心軸上に形成されて流体が流入する第1の通路と、第1の通路から半径方向に開口して流体が流出する第2の通路を備える。
また、出口ポートは、互いに90度の間隔で配置されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、1個の入口ポートから流入する流体を3個の出口ポートに選択的に切り換える簡素な構成を有する電動切換弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の電動切換弁の全体構造を示す断面図。
【図2】本発明の電動切換弁の要部の機構を概念的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の電動切換弁の全体構造を示す断面図である。
全体を符号1で示す電動切換弁は弁本体10を有し、弁本体10はその中心軸上に形成され冷媒等が流入する入口側のポート12と、入口ポート12から半径方向に形成され冷媒等が流出する3つの出口ポート130a、130b、130c(図2)とを備えている。入口ポート12には配管14が連結され、3つの出口ポート130a〜130cには、それぞれ配管16が連結される。
【0010】
弁本体10の上部には、非磁性の金属材料でつくられる円筒形状のキャン20がとりつけられる。このキャン20のキャン内部20aは、入口ポート12から流入する冷媒等が充填される。
キャン20内には磁性材料でつくられるロータ30が回転自在に配設される。ロータ30は連結部材32を介して回転部材70に連結され、回転部材70の下部には円柱状の回転弁体100がその上部に角柱状に形成された連結部102を介して回転部材70により回転駆動される状態でとりつけられる。
回転部材70の上部にはシャフト60の下端が差し込まれ、シャフト60の上部は、キャン20の頂部近傍に設けた受け部材62により支持される。シャフト60は、受け部材62及び回転部材70のいずれかに固定することも出来るが、例えば受け部材62及び回転部材70のそれぞれに設けられた孔に対して若干の間隙を有するように差し込み、該受け部材62及び回転部材70のいずれに対しても固定されない状態で設けることも出来る。
上記の構成により、ロータ30、連結部材32、回転部材70及び回転弁体100は、一体となって、回転可能となっている。
【0011】
キャン20の外周部にはステータとして機能するコイルユニット40が着脱自在にとりつけられる。このコイルユニット40は巻線42を巻き付けたボビン44を樹脂46で覆った構造を有する。
巻線42は電線50を介してターミナル54に接続され、リード線52を介して外部の給電装置に接続される。ステータとして機能するコイルユニット40とキャン20の内部のロータ30は、ステッピングモータを構成する。このステッピングモータは例えば96パルスでロータが360度回転する仕様を備える。
【0012】
回転弁体100は、弁本体10の内径部10aに回転動自在に挿入される。回転弁体100の中心部にはその中心軸線に沿う第1の通路110がその上下端を貫通するように設けられ、第1の通路110に直交して半径方向に開口する第2の通路120を有する。内径部10aは、回転弁体100が挿入されていない状態においては、入口ポート12と3つの出口ポート130a〜130cとを連通する。
また、回転弁体100には、第1の通路110とキャン20の内部20aとを連通する均圧孔112が設けられる。入口ポート12から弁本体10内に送り込まれる冷媒は、均圧孔112を介してキャン20の内部20a内に充填される。
【0013】
図2は、本発明の電動切換弁の要部の機構を概念的に示す平面図であり、図1を3つの配管16の中心軸で切断した横断面図である。
弁本体は、内径部10aに開口する3個の出口ポート130a,130b,130cを有する。3個の出口ポート130a,130b,130cは互に90度の間隔で配設される。
【0014】
図2の(a)は、回転弁体100の流出口となる第2の通路120が第1の出口ポート130aに対向した状態を示す。第2の通路120の出口部には出口ポートとの連結を確実にするための広口部122が形成される。
この状態にあっては、弁体100の入口ポート12から第1の通路110へ流入する冷媒は、第2の通路120から第1の出口ポート130aを通って配管16へ送られ、電動切換弁1の外部へ送り出される。
第2の出口ポート130bと第3の出口ポート130cは、冷媒の入口側の通路と連結されず、閉弁状態を保つ。
【0015】
図2の(a)の状態から回転弁体100が矢印R方向に90度回転して停止すると(図2(b))、流出口である第2の通路120は、第2の出口ポート130bに対向し、第2の弁を開く。この状態では、第1の出口ポート130aは閉じられ、第3の出口ポート130cも閉じた状態を保つ。
すなわち、第2の弁に連通する回路のみに冷媒は送り出され、第1の弁と第3の弁に連通する回路には冷媒は送り出されない。
【0016】
図2の(b)の状態から回転弁体100が矢印R方向に更に90度回転すると(図2(c))、第2の通路120は、第3の出口ポート130cと対向して第3の弁を開く。
この状態にあっては、第1の出口ポート130aは閉じた状態を保ち、第2の出口ポート130bは閉じられる。
なお、回転弁体100を第2の通路120がいずれの出口ポートにも対向しない位置に回転停止させることで、3つの弁ともに閉弁させることが可能である。
【0017】
本発明の電動切換弁1は以上のようにパルスモータでロータを180度回動する間に3個の弁うちの1個を選択的に開閉することができる。
例えば、96パルスでロータが1回転するパルスモータを使用するものであっては、0パルスで第1の弁を開弁させ、24パルスで第2の弁を開弁させ、48パルスで第3の弁を開弁させることができる。
【0018】
図1に示すように、固定側である弁本体10の上部にフランジ部材150をとりつけ、ストッパとなるピン152を植設する。回転部材70の下方に突出する1対の脚部72を設け、その一方をピン152に突き当てた状態をパルスモータの原点位置とすることで、正確なパルス制御を達成することができる。また1対の脚部72は、ロータが0度及び180度の位置で停止するのに利用される。
【0019】
本発明は、以上のように少ない部品点数で3本の流出流路に通ずる3個の弁を選択的に開閉して流路を切り換える電動切換弁を得ることができる。
なお、上述した実施例にあっては3個の弁を90度の間隔で配置した例を示したが、間隔は自由に設定することは当然可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 弁本体
12 入口ポート
14,16 配管
20 キャン
20a キャン内部
30 ロータ
32 連結部材
40 コイルユニット
42 巻線
44 ボビン
46 樹脂
50 電線
52 リード線
54 ターミナル
60 シャフト
62 受け部材
100 回転弁体
110 第1の通路
120 第2の通路
130a,130b,130c 出口ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸上に形成され流体が流入する入口ポート及び該入口ポートから半径方向に形成され流体が流出する複数の出口ポートを有すると共に、該入口ポート及び出口ポートを連通する内径部を有する弁本体と、弁本体に固着される非磁性金属材料製の円筒形状のキャンと、キャンの内側に回転自在に支持されるロータと、キャンの外側に装備されるステータとして機能するコイルユニットを備えて、入口ポートを複数の出口ポートに選択的に連通するように流路を切換える電動切換弁であって、
弁本体の内径部に回転動自在に挿入されるロータと一体の回転弁体を備え、回転弁体は中心軸上に形成されて流体が流入する第1の通路と、第1の通路から半径方向に開口して流体が流出する第2の通路を備える電動切換弁。
【請求項2】
出口ポートは、互いに90度の間隔で配置される請求項1記載の電動切換弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−163409(P2011−163409A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25316(P2010−25316)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】