説明

電動工具

【課題】減速比の切り替えを行うに当たり、可動部材をその噛み合わせる対象のギアに確実に噛み合わせ、減速比の切り替えを確実に行わせることが可能な電動工具を提供する。
【解決手段】本発明に係る電動工具は、減速機構部2を内部に収容する円筒状の減速機ケース4を備える。前記減速機構部2は、遊星ギア列21と、この遊星ギア列21の軸方向にスライド自在とされると共に当該遊星ギア列21に対し係合又は離脱する可動部材32とを有する電動工具である。減速機ケース4の内外を貫通するスライド溝42と、前記軸方向に対し傾斜した方向に沿って貫設された作動溝51を有する回転板5と、可動部材32から突設されると共にスライド溝42及び作動溝51に挿通された支持部材34と、支持部材34に対し、当該支持部材34の移動方向に向いた付勢力を付与する付勢手段6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関し、特に、遊星ギア列を備えて複数段の減速比の切り替えを可能とした電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遊星ギア列と、この遊星ギア列に対し係合又は離脱する可動部材とを備え、この可動部材を移動させることにより、複数段の変速を可能とした電動工具が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種の電動工具として、例えば、図7に示されるような減速機構部を備えたものがある。この電動工具は、周方向に多数の歯部を有するキャリア90と、前記キャリア90の出力側ギアに噛み合うプラネットギア91と、このキャリア90及びプラネットギア91に噛み合う歯部を有するリングギア92とを備えている。このリングギア92は、軸方向にスライド自在となっており、その歯部がキャリア90の歯部に対し係合又は離脱する。このリングギア92は、キャリア90とプラネットギア91に対して歯部同士が噛み合う位置(図7(a))と、キャリア90の歯部から離脱してプラネットギア91及びその他のギア93に対して歯部同士が噛み合う位置(図7(c))との間を移動する。なお、この例におけるその他のギア93は、径内方向に突出した歯部を有すると共に、減速機ケースに固設されたギアであり、その歯部は、リングギア92の外周に突設された歯部に噛み合うよう構成されている。
【0004】
この一例の電動工具は、このリングギア92が可動部材となっており、この可動部材を軸方向に移動させることで、減速比を変え、複数段の変速が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−101545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような構成の電動工具は、可動部材がキャリア90から離脱し、その他のギア93に噛み合うようにスライド移動したとき、可動部材の歯部が前記ギア93の歯部の間に位置している場合は、それぞれの歯部同士が確実に噛み合う。しかし、その可動部材の歯部と前記ギア93の歯部との対向面同士が当接した場合、可動部材はそれ以上移動できず、そのギア93の歯部の対向面に当接した状態でロックされてしまう(図7(b)参照)。この場合、電動工具は減速比の切り替えができないという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、減速比の切り替えを行うに当たり、可動部材をその噛み合わせる対象のギアに確実に噛み合わせ、減速比の切り替えを確実に行わせることが可能な電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電動工具は、ハウジング内に収容されると共に駆動源となるモータと、前記ハウジングの前端に設けられる先端工具に前記モータの回転動力を伝達する減速機構部と、前記ハウジング内に収容されると共に、前記減速機構部を内部に収容する円筒状の減速機ケースとを備え、前記減速機構部は、遊星ギア列と、この遊星ギア列の軸方向にスライド自在とされると共に当該遊星ギア列に対し係合又は離脱する可動部材とを有し、前記可動部材を移動させることにより複数段の変速を可能とした電動工具であって、前記減速機ケースの内外を貫通し且つ前記軸方向に沿って設けられたスライド溝と、前記軸方向に対し傾斜した方向に沿って貫設され且つ前記スライド溝に重合される作動溝を有すると共に、前記減速機ケースの外周を前記軸回りに回転自在とされた回転板と、前記可動部材から径外方向に突設されると共に前記スライド溝及び作動溝に挿通された支持部材と、前記回転板を前記減速機ケースの外周に沿って駆動させる駆動部と、前記駆動部が回転板を所定の位置まで回転駆動させたとき、前記支持部材に対し、当該支持部材の移動方向に向いた付勢力を付与する付勢手段とを備えている。
【0009】
また、本発明に係る電動工具は、前記付勢手段が、前記可動部材が切替位置に達する直前で移動不能となった場合に、前記付勢力を発生させるものであるであるのが好ましい。
【0010】
また本発明に係る電動工具は、前記付勢手段が、前記作動溝の長手方向の両端を除く部分に設けられた弾性体であるのが好ましい。
【0011】
また本発明に係る電動工具は、前記作動溝に沿うように形成され、且つ当該作動溝との間に弾性変形可能な薄肉部を生成する弾性力付与溝が設けられ、前記付勢手段が前記薄肉部であるのが好ましい。
【0012】
また本発明に係る電動工具は、前記付勢手段が、前記回転板の周方向端部と、減速機ケースとのそれぞれに互いに対向するようにして設けられた一対の永久磁石であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動工具によれば、減速比の切り替えを行うに当たり、可動部材をその噛み合わせる対象のギアに確実に噛み合わせ、減速比の切り替えを確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)(b)(c)は、本発明の第1の実施形態の減速機構部の要部断面図である。
【図2】(a)(b)(c)は、同上のハウジングを省略した回転板周辺の要部側面図である。
【図3】本実施形態の全体側断面図である。
【図4】(a)(b)(c)は、同上の要部拡大図である。
【図5】(a)(b)(c)は、第2の実施形態の要部拡大図である。
【図6】(a)(b)(c)は、第3の実施形態の要部拡大図である。
【図7】(a)(b)(c)は、従来技術を説明するため参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、減速機構部2のギアの軸に沿った方向を軸方向と定義する。
【0016】
第1の実施形態の電動工具は、図3に示されるように、筒状のハウジング10と、このハウジング10から側方に延出するハンドル11とで外郭が形成されている。このハウジング10は、その内部に、動力源であるモータ13と、このモータ13の回転動力を減速すると共に、減速したその動力をドライバビット等の先端工具に伝達する減速機構部2とを収容している。なお、図3中の符号12は、モータ13に電力を供給する電池パックを示し、符号14は、モータ13への電力供給を制御するスイッチを示す。
【0017】
減速機構部2は、減速機ケース4に収容されており、この減速機ケース4と共にハウジング10内に収容されている。この減速機構部2は、図1に示されるように、複数列の遊星ギア列21により構成されている。一段目の遊星ギア列21は、入力側に位置しモータ13により駆動するサンギア22と、このサンギア22の周囲に配置される複数のプラネットギア23と、このプラネットギア23を回転自在に支持するキャリア24と、プラネットギア23の外周に位置するリングギア25とを備えている。このキャリア24は、外周に径外方向に突出する歯部を有しており、その回転中央に二段目の遊星ギア列21の入力となる中央ギア部26を有している。この一段目のキャリア24の中央ギア部26の周囲には、二段目の遊星ギア列21のプラネットギア27が配置される。
【0018】
この二段目のプラネットギア27は、二段目のキャリア28に回転自在に軸支されている。二段目のキャリア28は、出力側の中央に、中央ギア部29を有しており、この中央ギア部29の周囲に、プラネットギア30(三段目のプラネットギア30)が配置されている。このプラネットギア30は、三段目のキャリア38に回転自在に軸支されており、その外側に配設された三段目のリングギア33との間で噛み合いを生じるようになっている。三段目のキャリアは、この三段目のプラネットギア30の公転により回転するようになっており、その中心から出力軸(図示せず)が突設され、当該出力軸へと回転動力を伝達する。
【0019】
一段目の遊星ギア列21は、一段目のプラネットギア23の周囲に設けられたリングギア25を有する。この一段目のリングギア25は、減速機ケース4に固設されており、回転しないようになっている。二段目の遊星ギア列21は、二段目のプラネットギア27の周囲に、軸方向に沿ってスライド移動自在なリングギア31を有している。この二段目のリングギア31は、その内周に径内方向に突出する歯部320を有すると共に、出力側の端部の外周面に径内方向に凹没する歯部321を有している。この二段目のリングギア31は、一段目のキャリア24の歯部及び二段目のプラネットギア27の歯部に対して噛み合う位置から、二段目のプラネットギア27の歯部及び減速機ケース4に径内方向へ突設された固定歯部41に対して噛み合う位置の範囲で移動する。本実施形態の電動工具は、二段目のリングギア31が、一段目のキャリア24及び二段目のプラネットギア27に対して噛合する位置にあるときが非減速モードとされている(図1(a)参照)。また、二段目のプラネットギア27及び固定歯部41に対して噛合する位置が減速モードとされている(図1(c)参照)。本実施形態の電動工具は、この二段目のリングギア31が可動部材32を構成している。また、三段目の遊星ギア列21における三段目のプラネットギア30の外周に配設された三段目のリングギア33は、減速機ケース4に固設されている。
【0020】
一段目の複数のプラネットギア23は、図1に示されるように、サンギア22と、一段目のリングギア25との間で噛み合いを生じる。二段目の複数のプラネットギア27は、一段目のキャリア24の中央ギア部26と、二段目のリングギア31との間で噛み合いを生じる。三段目の複数のプラネットギア30は、二段目のキャリア28の中央ギア部26と、三段目のリングギア33との間で噛合いを生じる。
【0021】
二段目のリングギア31は、径外方向に突出する支持部材34を有しており、この支持部材34を軸方向に沿って移動させることで、スライド移動するようになっている。本実施形態の二段目のリングギア31は、その外周面に環状に形成された凹溝35が設けられており、支持部材34をこの凹溝35内に嵌入している。これによりリングギア31は、回転しながら、支持部材34の軸方向の移動に追従できる。この支持部材34は、減速機ケース4を内外に貫通するようにして設置される。
【0022】
減速機ケース4は、円筒形状をしており、その内部に上記構成の減速機構部2を収容する。減速機ケース4は、支持部材34に対応する部分にスライド溝42が内外を貫通するようにして穿設されており、このスライド溝42は軸方向に沿った長孔状となっている。支持部材34は、スライド溝42を挿通して減速機ケース4の外方に突出している。
【0023】
本実施形態の電動工具は、図2に示されるように、減速機ケース4の外周を軸回り方向に回動自在な回転板5を備えている。この回転板5は、軸方向に対して傾斜した方向(側面視において軸方向に対して約45°傾斜した方向)に沿って作動溝51が穿設されている。回転板5は、この作動溝51が、減速機ケース4のスライド溝42と重なるようにして取り付けられる。すなわち支持部材34は、スライド溝42及び作動溝51の両者を貫通している。
【0024】
この回転板5を減速機ケース4に沿って軸回り方向に回転させると、作動溝51の縁部は、支持部材34を軸方向に押圧し、当該支持部材34をスライド溝42に沿って移動させる。支持部材34が作動溝51における長手方向の一方の端部に位置しているとき(図1(a)参照)には、二段目のリングギア31は、一段目のキャリア24及び二段目のプラネットギア27と噛合する(図1(a)参照)。また、支持部材34が作動溝51における長手方向の他方の端部に位置しているとき(図2(c)参照)には、二段目のリングギア31は、二段目のプラネットギア27及び減速機ケース4の固定歯部41と噛合する(図1(c)参照)。
【0025】
回転板5は付勢手段6を備えている。この付勢手段6は、回転板5を所定の位置まで回転駆動させたときに、支持部材34に対して当該支持部材34の移動方向に向いた付勢力を付与する。具体的には、回転板5を所定の位置まで回転駆動させた場合において、二段目のリングギア31が、その歯部と固定歯部41との対向面同士が当接してしまって、それ以上移動不能となったときに、支持部材34に対し付勢力を付与し続ける。また、回転板5を上記とは逆に回転駆動させた場合において、二段目のリングギア31が、その歯部と一段目のキャリア24の歯部との対向面同士が当接してしまって、それ以上移動不能となったときに、支持部材34に対し付勢力を付与し続ける。
【0026】
本実施形態の付勢手段6は、図4に示されるように、作動溝51の対向する長辺に沿って設けられた一対の弾性体61で構成されている。この弾性体61は、当該作動溝51の長手方向の両端を除く部分に設けられている。一対の弾性体61は、対向する面によって作動溝51の各長辺を形成している。弾性体61は、ある程度の硬度を有しており、可動部材32が移動可能な状態では、支持部材34を押圧しても大きく弾性変形しない。一方、可動部材32が移動不能となった状態で弾性体61に支持部材34を押圧させると、支持部材34が弾性体61を押し返し、弾性体61は弾性変形する。このとき弾性体61は、支持部材34の移動方向(切替位置に向かう方向)に付勢力を与え続けることになる。
【0027】
本実施形態の電動工具は、この回転板5を軸回りに駆動させる駆動部7を備えている。この駆動部7は、回転板5を減速機ケース4の外周に沿って一定の範囲で往復するように揺動させる。本実施形態の駆動部7は、正逆回転可能な小型モータによって構成されている。
【0028】
このような構成の電動工具は、減速比の異なる複数段の変速が可能となっており、その減速比の変更は、以下のようにして行なう。
【0029】
非減速モードから減速モード切り替えるには、図2(a)の位置にある回転板5を、図2(c)の位置に向けて、駆動部7により回転移動させる。すると、回転板5の作動溝51に押圧された支持部材34がスライド溝42に沿って移動する。このときこの支持部材34の移動に追従して二段目のリングギア31が移動する。二段目のリングギア31が固定歯部41に当接した場合(ロックされた場合)、当該リングギアが固定歯部41側に移動不能となるが、回転板5はそのまま回転駆動が継続される。それにより作動溝51の縁部の弾性体61が弾性変形する。すると、当該弾性体61は、その復元力により支持部材34を固定歯部41側に押圧し続ける。
【0030】
このとき駆動源のモータ13が駆動すると、二段目のリングギア31は、弾性体61からの付勢力を受けながら回転する。すると二段目のリングギア31と固定歯部41との対向面同士が当接した状態からこれらが相互にずれて、噛み合う位置までリングギア31が回転し、弾性体61の付勢力により、リングギア31が切替位置にまで押し込まれる。これにより、二段目のリングギア31と固定歯部41とが噛合し、当該リングギア31の回転が規制されるため、出力軸の回転が減速され、電動工具は非減速モードから減速モードに切り替えられる。
【0031】
なお、減速モードから非減速モードへの切り替えは、上記と逆の操作を行なうだけであるので、その説明を省略する。なおこの場合、二段目のリングギア31のかみ合い対象の部材は一段目のキャリア24の歯部であり、上記説明とは可動部材32の押圧方向が反転したような状態となる。
【0032】
上記構成の電動工具は、減速比の切り替え時に、可動部材32が噛み合い対象の部材(固定歯部41又は一段目のキャリア24の歯部)の対向面と当接し一時的に移動不能となったとしても、支持部材34に対しその移動方向へ付勢力を付与し続けることができる。これにより、可動部材32と噛み合い対象の部材との対向面同士がずれたときにこれらを噛み合せることができ、この結果、これらを確実に噛み合わせることができる。
【0033】
また本実施形態の付勢手段6は、可動部材32が切替位置に達する直前で移動不能となった場合に付勢力を発生させるものであるから、不要な力を発生させないで確実に減速比の切り替えを行なうことができる。さらにこの付勢手段6は、弾性体61により構成されたものであるから、シンプルな構造となっており、電動工具の大型化を防ぐことができる。
【0034】
次に、第2の実施形態について図5に基づいて説明する。なお本実施形態は、第1の実施形態と付勢手段6の構成のみが異なり、それ以外は同じ構成であるため、同じ部分の説明は省略し、主に異なる部分について説明する。
【0035】
本実施形態の電動工具は、回転板5に設けられた作動溝51に沿って、弾性力付与溝63が穿設されている。この弾性力付与溝63は、作動溝51をその中間に挟むように一対設けられており、当該作動溝51の一端から他端に対応する部位に設けられている。弾性力付与溝63は、作動溝51に対して略平行となっており、作動溝51との間に薄肉部62を形成する。
【0036】
この薄肉部62は、それぞれの弾性力付与溝63側に弾性変形可能となっており、弾性変形すると復元力を発生させる。
【0037】
これにより、可動部材32がその噛み合い対象の部材(固定歯部41又は一段目のキャリア24の歯部)の対向面と当接し一時的に移動不能となったとしても、支持部材34に対しその移動方向へ付勢力を付与し続けることができる。この結果、可動部材32とその噛み合い対象の部材とを確実に噛み合わせることができる。
【0038】
さらに本実施形態の電動工具は、付勢手段6が、弾性力付与溝63によって形成された薄肉部62によって構成されているから、弾性体61等の別部材の材料を必要としない。これにより、部品点数の削減を図ることができる。
【0039】
次に、第3の実施形態について図6に基づいて説明する。なお本実施形態は、第1の実施形態と付勢手段6の構成のみが異なり、それ以外は同じ構成であるため、同じ部分の説明は省略し、主に異なる部分について説明する。
【0040】
本実施形態の電動工具は、回転板5の一端に磁石80が設けられており、減速機ケース4における回転板5の一端に対向する部分にも磁石81が設けられている。この一対の磁石80,81は、互いに磁着するよう相互に異なる磁極を有している。本実施形態の電動工具は、この磁石80,81が永久磁石で構成されている。
【0041】
これにより、可動部材32がその噛み合い対象の部材(固定歯部41又は一段目のキャリア24の歯部)の対向面と当接し一時的に移動不能となったとしても、磁力による付勢力により、回転板5の回転力を付与し続けることができる。回転板5が図6における下方に向けて力を受けると、作動溝51は、支持部材34に対してその移動方向に付勢力を付与し続けることができるから、可動部材32とその噛み合い対象の部材とを確実に噛み合わせることができる。
【0042】
しかも本実施形態の電動工具は、第1及び第2の実施形態のように、弾性体61や薄肉部62といった部材を変形させるほどの力は不要である。つまり、本実施形態の電動工具は、駆動部7による強い力でなく、磁力で回転板5を回転させるだけなので、支持部材34と作動溝51との間に過剰な摩擦力を発生させない。これにより過剰な摩擦が生じる部分を低減させることができ、部品の劣化を防ぐことができる。
【0043】
以上、本発明の電動工具を説明したが、本発明の電動工具は上記実施形態の構成に限定されるものではない。また上記実施形態の電動工具は、可動部材32としてリングギア31が用いられていたが、本発明の電動工具は、可動部材としてリングギアにのみ限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
2 減速機構部
21 遊星ギア列
22 サンギア
23 一段目のプラネットギア
24 一段目のキャリア
25 一段目のリングギア
26 中央ギア部
27 二段目のプラネットギア
28 二段目キャリア
29 二段目キャリアの中央ギア部
30 三段目のプラネットギア
31 二段目のリングギア
32 可動部材
33 三段目リングギア
34 支持部材
36 三段目キャリア
4 減速機ケース
41 固定歯部
42 スライド溝
5 回転板
51 作動溝
6 付勢手段
61 弾性体
7 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に収容されると共に駆動源となるモータと、
前記ハウジングの前端に設けられる先端工具に前記モータの回転動力を伝達する減速機構部と、
前記ハウジング内に収容されると共に、前記減速機構部を内部に収容する円筒状の減速機ケースとを備え、
前記減速機構部は、
遊星ギア列と、
この遊星ギア列の軸方向にスライド自在とされると共に当該遊星ギア列に対し係合又は離脱する可動部材とを有し、
前記可動部材を移動させることにより複数段の変速を可能とした電動工具であって、
前記減速機ケースの内外を貫通し且つ前記軸方向に沿って設けられたスライド溝と、
前記軸方向に対し傾斜した方向に沿って貫設され且つ前記スライド溝に重合される作動溝を有すると共に、前記減速機ケースの外周を前記軸回りに回転自在とされた回転板と、
前記可動部材から径外方向に突設されると共に前記スライド溝及び作動溝に挿通された支持部材と、
前記回転板を前記減速機ケースの外周に沿って駆動させる駆動部と、
前記駆動部が回転板を所定の位置まで回転駆動させたとき、前記支持部材に対し、当該支持部材の移動方向に向いた付勢力を付与する付勢手段と
を備えていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記可動部材が切替位置に達する直前で移動不能となった場合に、前記付勢力を発生させるものである、請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記作動溝の長手方向の両端を除く部分に設けられた弾性体である、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電動工具。
【請求項4】
前記作動溝に沿うように形成され、且つ当該作動溝との間に弾性変形可能な薄肉部を生成する弾性力付与溝が設けられ、
前記付勢手段が前記薄肉部である、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電動工具。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記回転板の周方向端部と、減速機ケースとのそれぞれに互いに対向するようにして設けられた一対の永久磁石である、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30312(P2012−30312A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170893(P2010−170893)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(509119153)パナソニック電工パワーツール株式会社 (107)
【Fターム(参考)】