説明

電動式移動棚

【課題】構成および動作が簡単でありながら所期の均等分散動作を迅速、円滑に行うことができる電動式移動棚を得る。
【解決手段】複数の移動棚がモータ14の駆動力により集合離散可能に並べられた電動式移動棚システムを構成する個々の電動式移動棚が、両側に隣接する移動棚または固定部との距離である通路幅を計測する距離センサ17,18と、操作されることにより均等分散信号を出力する均等分散指令部と、均等分散信号が出力されると、距離センサの出力信号によって一方側に隣接する移動棚または固定部との通路幅と他方側に隣接する移動棚または固定部との通路幅を比較し、比較結果から通路幅の広い方に向かって移動棚が移動するようにモータ14を駆動し、両側の通路幅が等しくなるとモータの駆動を停止する均等分散制御部16と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式移動棚に関するもので、互いに集合離間可能に並べられた複数の移動棚間に均等な幅の通路を形成して停止させることができるいわゆる均等分散動作を、スムーズにかつ迅速に行うことができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
電動式移動棚は、これを複数台、互いに集合離間可能に並べることにより電動式移動棚システムとして使用され、所望の移動棚間に物品の出し入れのための作業通路を形成することができる。また、上記複数台の移動棚は、作業通路に面する移動棚以外の移動棚は互いに集合させることにより、空間を有効に利用することができる。移動棚に物品の出し入れ作業をしないときは、一般的には各移動棚を互いに集合させた状態にする。しかし、収納物品が例えば空気の良好な流通が必要な種類の物品である場合、移動棚相互間に均等な幅の通路を形成した状態で停止させることが求められることがある。そのための動作を、本明細書では均等分散動作という。
【0003】
均等分散動作を可能にした電動式移動棚は既に知られている。特許文献1記載の発明はその一つで、学習モードと再現モードを有し、学習モードでは、各移動棚を主制御棚側に収束させ、収束開始から完了までの各移動棚の所要時間を制御部で記憶し、再現モードでは、すべての移動棚を主制御棚側に収束させた後、学習モードで記憶した各移動棚の所要時間だけ各移動棚を移動させて、各移動棚を均等に分散させるようになっている。
【0004】
均等分散動作を可能にした電動式移動棚の別の従来例として特許文献2記載の発明がある。特許文献2記載の発明は、分散動作指令が入力されると、各移動棚の近接センサの検出信号から作業通路の形成位置を検出し、この作業通路位置を境にして左側の移動棚群と右側の移動棚群に分け、左側の移動棚群に属する移動棚は右方へ、左側の移動棚群に属する移動棚は左方へ、移動棚ごとに予め定められている時間だけ移動させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−177807号公報
【特許文献2】特開2002−46814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明によれば、均等分散動作を行うための再現モードで、一旦、すべての移動棚を収束させ、その後各移動棚を学習モードで記憶した各移動棚の所要時間に基づき所要時間だけ移動させるため、均等分散動作の開始から完了までに多くの時間を要する難点がある。
【0007】
特許文献2記載の発明によれば、作業通路位置を境にして両側の移動棚を互いに逆向きに、移動棚ごとに予め定められている時間だけ移動させるようになっているため、均等分散動作の開始から完了までに要する時間は、特許文献1記載の発明よりも短縮される。
【0008】
しかし、特許文献1記載の発明も、特許文献2記載の発明も、移動棚ごとに予め定められた時間だけ移動して均等分散動作を行うようになっているため、移動棚ごとにかかる負荷の相違すなわち収納物品の重さの相違によって、予め定められた時間における移動速度が変化し、結果的に均等分散にならないという難点がある、
【0009】
上記のような負荷の相違によって均等分散にならないという問題を解消するには、物品の出し入れ作業を行うたびに、移動棚ごとに均等分散動作に必要な時間を計測して記憶データを更新する必要があり、ソフトウェアの構成および動作が複雑になる難点がある。
【0010】
均等分散動作が可能な電動式移動棚によれば、電動式移動棚システムごとに移動棚の台数やレールの全長などの仕様が異なると、均等分散時の棚相互間の通路幅が異なる。従来の均等分散動作が可能な電動式移動棚によれば、電動式移動棚システムの仕様ごとに、予め均等分散時の棚相互間の通路幅を求め、求めた通路幅で均等分散するように設定する必要があり、ハード構成あるいはソフトウェアによる信号処理が面倒である。しかも、移動棚数を増やすというような仕様変更のたびに均等分散時の通路幅などの設定変更、ソフトウェアの変更などを行う必要があり、仕様変更は容易ではない。
【0011】
従来の均等分散動作が可能な電動式移動棚によれば、各電動式移動棚の連数を変更して間口寸法を変更した場合にも問題が生じる。すなわち、従来の均等分散動作が可能な電動式移動棚は、均等分散時に、例えば一旦全ての移動棚を収束させた後、個々の移動棚の移動時間を設定することによって均等分散させるようになっているため、連数を変更した結果各移動棚にかかる荷重が変わると、所定の均等分散時間での移動棚の移動距離が変わるからである。したがって、各移動棚の連数を変更した場合も、均等分散時の通路幅などの設定変更、ソフトウェアの変更などを行う必要がある。
【0012】
本発明は、均等分散動作が可能な従来の電動式移動棚に見られる問題点を解消すること、すなわち、均等分散動作が迅速に行われ、また、構成および動作が簡単でありながら所期の均等分散動作を円滑にかつ精度よく行うことができる電動式移動棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電動式移動棚は、
複数の移動棚がモータの駆動力により集合離散可能に並べられてなる電動式移動棚システムを構成する個々の電動式移動棚が、
両側に隣接する移動棚または固定部との距離である通路幅を計測する距離センサと、
均等分散信号を出力する均等分散指令部と、
上記均等分散信号が出力されると、上記距離センサの出力信号によって一方側に隣接する移動棚または固定部との通路幅と他方側に隣接する移動棚または固定部との通路幅を比較し、比較結果から通路幅の広い方に向かって移動棚が移動するように上記モータを駆動し、両側の通路幅が等しくなると上記モータの駆動を停止する均等分散制御部と、
を備えていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
均等分散信号が出力されると、個々の電動式移動棚において距離センサが両側の移動棚または固定部との距離である通路幅を計測し、通路幅の長い方に向かって移動するようにモータを駆動し、両側の通路幅が等しくなるとモータの駆動を停止する。したがって、個々の移動棚をどちらに移動させるかは移動棚の両側における移動棚または固定部との通路幅に依存し、個々の移動棚の移動時間は無関係であり、各移動棚の負荷にばらつきがあっても、各移動棚相互間に通路幅のばらつきが生じることはない。
【0015】
本発明に係る電動式移動棚の均等分散制御は、個々の移動棚において両側の移動棚または固定部との距離である通路幅を計測し、両側の通路幅が等しくなるように、個々の移動棚を制御することで完結するため、構成および動作が簡単でありながら均等分散動作を円滑に行うことができる。移動棚の仕様変更によって均等分散時の棚相互間の通路幅が変わり、あるいは各棚にかかる荷重が変動しても、均等分散のための事前の設定やソフトウェアなどを変更する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電動式移動棚の実施例の動作を示す側面図である。
【図2】本発明に係る電動式移動棚の実施例の制御系統を示す機能ブロック図である。
【図3】上記電動式移動棚の実施例全体の動作を概略的に示すフローチャートである。
【図4】上記実施例による均等分散動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下、本発明に係る電動式移動棚の実施例を、図を用いて説明する。
まず、図1を参照しながら、本発明に係る電動式移動棚の実施例における均等分散動作について概要を説明する。図1(a)は4台の電動式移動棚A,B,C,Dが互いに集合しまた離散することができるように配置されてなる電動式移動棚システムの例を示している。図1(a)に示す例では、電動式移動棚CとDとの間隔が大きく開き、電動式移動棚CとDとの間に収納物品の出し入れのための作業通路が形成されている。上記各電動式移動棚は図示されない駆動モータを備えていて、駆動モータが駆動されることにより、各移動棚はその間口面すなわち図1の紙面に直交する方向に広がっている収納物品の出し入れ面に直交する方向(図1の紙面に平行な方向)に移動可能となっている。
【0018】
図1に示す例では、各移動棚の底部に走行車輪が設けられていて、走行車輪が案内レール上で回転することにより、各移動棚が案内レールに沿って移動可能となっている。各電動式移動棚A,B,C,Dは、左側に隣接する移動棚または固定棚との距離を計測し、また、右側に隣接する移動棚または固定棚との距離を計測する距離センサを備えている。電動式移動棚A,B,C,Dを挟んで両側には固定棚1,2が設置されている。上記「距離」とは、棚と棚との間の通路幅のことであるから、以下、「通路幅」という。
【0019】
図1(a)に示す各移動棚の移動位置において、均等分散動作を行わせるための操作部材、例えば均等分散スイッチなどを有してなる均等分散指令部から均等分散指令信号が出力されたとする。各電動式移動棚A,B,C,Dは、これら個々の電動式移動棚A,B,C,Dの判断によって、図1において左側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅と右側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅とを比較し、通路幅の広い方に向かって移動棚が移動するように駆動モータを制御する。図1(b)はこの動作の開始当初の様子を示しており、移動棚Cが右に向かって、移動棚Dが左に向かって移動を開始する。
【0020】
移動棚Cが右に向かって移動を開始すると、移動棚Bの右側にスペースが生じるため、移動棚Bが右に向かって移動を開始する。これによって移動棚Aの右側にスペースが生じるため、移動棚Aが右に向かって移動を開始する。図1(c)はこの様子を示している。
【0021】
移動棚Cが右に、移動棚Dが左に向かい移動して両者が近づいていき、移動棚Dの右側の固定棚2との間の通路幅が左側の移動棚Cとの間の通路幅よりも広くなると、移動棚Dは右に向かって移動して、左側の移動棚Cとの間の通路幅と等しくなるように調整する。このような調整動作は移動棚A,B,Cにおいても行われる。図1(d)はこの調整動作の様子を示している。図1(e)は上記調整が終わった状態を示しており、固定棚1、移動棚A,B,C,D、固定棚2相互間に均等な広さの通路幅が保たれ、各棚が均等に分散している。
【0022】
次に、上記のような均等分散動作を実現する電動式移動棚の制御系統の例について説明する。図2において、符号10は各移動棚が備えているメイン制御回路部を示している。メイン制御回路部10はマイクロコンピュータなどからなる。各移動棚は、メイン制御回路部10のほか、モータ駆動回路部13と個々の移動棚を駆動するモータ14と、均等分散指令部20を有している。モータ駆動回路13はモータ14を駆動するもので、メイン制御回路部10からの指令によりモータ14を正回転または逆回転させ、また、モータ14の駆動を停止する。
【0023】
均等分散指令部20は、この均等分散指令部20が属する移動棚の均等分散スイッチが操作されることにより均等分散指令信号を出力する。メイン制御回路部10内の均等分散制御部16は、上記均等分散信号が出力されることによって、各移動棚相互間および移動棚と固定棚との間に空間を均等に形成するようにモータ駆動回路部13を介してモータ14を制御する。
【0024】
より具体的には、均等分散指令信号が出力されると、距離センサの出力信号によって一方側に隣接する移動棚または固定部との通路幅と、他方側に隣接する移動棚または固定部との通路幅を比較し、比較結果から通路幅の広い方に向かって移動棚が移動するようにモータ14を駆動し、両側の通路幅が等しくなるとモータ14の駆動を停止させる。モータ14として、起動時のトルクが最大となる直流モータを用いるとよい。
【0025】
各移動棚は左右の入出力回路部11,12を有している。右側の入出力回路部11は、左行き駆動スイッチ4L、進入センサ、安全バー、超音波センサ、通路幅制限スイッチ、照明リレー出力、その他からの信号を中継してメイン制御回路部10に入出力する。同様に、左側の入出力回路部12は、右行き駆動スイッチ4R、進入センサ、安全バー、超音波センサ、通路幅制限スイッチ、照明リレー出力、その他からの信号を中継してメイン制御回路部10に入出力する。
【0026】
上記進入センサとは、移動棚間に形成されている空間に作業者その他が進入していることを検出するセンサである。上記安全バーとは、各移動棚の間口面に、棚板などの前面に沿って設置されていて、作業者などが接触することによって作動するセンサである。上記超音波センサとは、隣の移動棚との離間距離すなわち通路幅を常時計測する距離センサである。上記通路幅制限装置とは、隣の移動棚との間に形成される通路幅が一定の幅以上にならないように制限する装置である。上記照明リレー出力とは、隣の移動棚との間に所定の幅以上の作業通路が形成されることによって上記作業通路の照明ランプを点灯するためのリレーである。
【0027】
各移動棚は、右隣の移動棚と通信制御部27を通して信号をやり取りする右側通信線21と、左隣の移動棚と通信制御部28を通して信号をやり取りする左側通信線22を有している。右側の通信制御部27は、メイン制御回路部10からの指令信号によりメモリ回路部25を経て制御される。左側の通信制御部28は、メイン制御回路部10からの指令信号によりメモリ回路部26を経て制御される。メモリ回路部25、26は、各種設定値、時間の経過とともに変化する各種データなどを記憶する。
【0028】
各移動棚に設けられている前記右行き駆動スイッチ4R、左行き駆動スイッチ4Lのオン/オフ信号は、入出力回路部11,12を介してメイン制御回路部10に入力される。メイン制御回路部10は、右行き駆動スイッチ4Rのオンによって右行き信号を生成し、この右行き信号を、その移動棚の右側への移動制御に供するとともに、右側信号線21を経て右隣の移動棚に向けて出力する。また、左行き駆動スイッチ4Lのオンによって左行き信号を生成し、この左行き信号を、その移動棚の左側への移動制御に供するとともに、左側信号線22を経て左隣の移動棚に向けて出力する。メイン制御回路部10にはまた、左側信号線22を経て左隣の移動棚から出力される右行き信号が入力され、右側信号線21を経て右隣の移動棚から出力される左行き信号が入力されるように構成されている。
【0029】
各移動棚において、上記右行き駆動スイッチ4Rが押圧操作されている間は右行き信号が生成され、モータ14が駆動されてその移動棚が右向きに移動する。また、上記左行き駆動スイッチ4Lが押圧操作されている間は左行き信号が生成され、モータ14が駆動されてその移動棚が左向きに移動する。駆動スイッチ4Rまたは左行き駆動スイッチ4Lの押圧操作が解除されると移動棚は停止する。各移動棚の右向きまたは左向きの移動は、左隣の移動棚から右行き信号が入力され、あるいは右隣の移動棚から左行き信号が入力されることによっても行われる。このような各移動棚の右または左への移動動作は、右または左への移行余裕がなくなること、すなわち作業通路がなくなることによって停止する。
【0030】
各移動棚は、左隣の移動棚または固定棚などの固定部との距離を常時検出する左側の超音波センサ17と、右隣の移動棚または固定棚などの固定部との距離を常時検出する右側の超音波センサ18を備えている。各超音波センサ17、18は前述のように距離センサとしての機能を有している。距離センサとしての超音波センサ17、18は、例えば、一定の時間間隔で隣の移動棚に向けて超音波を発射し、隣の移動棚で反射されて返ってくる時間を計測するようにした超音波距離計、レーダー式距離計などを用いることができる。上記超音波センサの検出信号は、後で詳細に説明する均等分散制御に供される。
【0031】
図2に示す例では、各移動棚の左右それぞれに距離センサ17、18を備えているが、互いに隣り合う二つの棚間の通路幅を測定する一つの距離センサの検出信号を上記二つの棚で共有するようにすれば、一つの移動棚に一つの距離センサを配置することで足りる。その場合、隣り合う二つの移動棚間を結ぶケーブルを付加する必要がある。各移動棚には、モータ駆動用の電源と制御回路を動作させるための電源が供給される。
【0032】
各移動棚は、均等分散動作を行わせるための押しボタンスイッチなどからなる均等分散操作部材を有してなる均等分散指令部20を備えている。各移動棚のメイン制御回路部10には均等分散指令部20が接続されている。また、メイン制御回路部10は、均等分散動作を実現するための均等分散制御部16を備えている。上記均等分散操作部材が操作されると、均等分散指令部20から均等分散信号が出力され、この均等分散信号がその移動棚の上記均等分散制御部16に入力される。均等分散信号はまた、隣り合う左右の移動棚に向けて出力される。他の移動棚から均等分散信号が出力された場合、この均等分散信号は、隣り合う左右の移動棚を順に伝送されてその移動棚のメイン制御回路部10に入力されるようになっている。したがって、均等分散動作を行わせるためには、一つの移動棚の均等分散操作部材を操作してオンさせればよい。
【0033】
また、各移動棚に均等分散操作部材を設けることなく、例えば移動棚とは別に設けた主制御盤または一つの移動棚または固定棚に設けた主制御盤に均等分散スイッチなどの均等分散操作部材を設け、この均等分散操作部材が操作されることによって出力される均等分散信号を全ての移動棚に伝達するようにしてもよい。あるいは、後で説明するように、ある条件が満たされた場合に均等分散指令を出力するように構成してもよい。
【0034】
上記均等分散制御部16は、均等分散指令信号が入力されると、左右の超音波センサ17,18の検出信号に基づき、左右に隣り合う移動棚または固定部との距離信号を求める。上記均等分散制御部16はさらに、左右の距離信号から、左右何れの通路幅が広いか、あるいは等しいかを判断し、その移動棚を左右何れの向きに移動させるべきかまたは停止させるべきかを判断する。この判断結果に基づいてモータ駆動回路13に動作指令信号を送り、モータ駆動回路13は上記指令信号に基づきモータ14を正逆回転させ、またはモータ14の駆動を停止させるようになっている。
【0035】
次に、上記実施例の動作について説明する。以下に説明する動作は、一つ一つの移動棚において同様に行われる。それぞれのフローチャートにおいて、各動作ステップを、S1、S2、S3・・・のように表す。
【0036】
図3は本実施例に係る電動式移動棚全体の動作の概略を示す。図3(a)はメインルーチンを示す。図3(a)に示すように、メインルーチンにおいては先ずイニシャル設定が行われる(S1)。イニシャル設定とは、各種係数、停止距離、均等分散時の最大通路幅、その他所定のデータを、動作開始に先駆けて設定することである。次に、設定ボリウム読み込み(S2)、駆動スイッチ、センサ読み込み(S3)、割り込み設定(S4)、通路幅測定(S5)、動作モード演算(S6)の順に進む。上記割り込み設定(S4)には、タイマー割り込みと通信割り込みがある。タイマー割り込みでは、図3(b)に示すようにデータ送信ルーチン(S19)が実行され、通信割り込みでは、図3(c)に示すようにデータ受信ルーチンが実行される。上記通路幅測定(S5)では、前記超音波センサにより隣の移動棚との離間距離が測定される。上記動作モード演算(S6)では、加速モードか、一定速度モードか、減速モードか等々を判別する演算が行われる。
【0037】
次に、非常駆動かどうかの判断が行われ(S7)、非常駆動であれば非常駆動ルーチン(S8)が実行される。非常駆動とは、次に説明する非常停止などによって移動棚が停止してしまった場合に、通常の動作を行わせる場合とは異なった操作によって強制的に移動棚を駆動することをいう。非常駆動でなければ非常停止かどうかを判断し(S9)、非常停止であれば非常停止ルーチン(S10)を実行する。非常停止とは、例えば、前記安全バーが動作した場合に移動棚の移動を緊急停止させることをいう。
【0038】
非常停止かどうかの判断ステップ(S9)で、非常停止でなければ、次にインターロックか否かの判断ステップ(S11)に行く。インターロックとは、通常の作業通路形成動作による通路形成動作が完了したときなどに、別の場所に通路を形成する操作が行われても、移動棚が移動することができないように回路的にロックすることである。インターロックがかかると、これを解除する操作が行われるまでインターロックが維持される。インターロックがかけられていれば、インターロックルーチン(S12)が実行される。
【0039】
インターロックがかけられていないときは、停止か否かの判断ステップ(S13)に行く。停止か否かとは、移動棚が停止すべき位置まで走行したか否かということであって、停止と判断された場合は停止ルーチン(S14)が実行される。上記ステップS13で停止でないと判断された場合は、右駆動モードか否か(S15)を判断し、右駆動モードでなければ左駆動モードか否か(S17)を判断する。ステップS15で右駆動モードと判断されると右方向駆動ルーチン(S16)が実行され、ステップS17で左駆動モードと判断されると左方向駆動ルーチン(S18)が実行される。
【0040】
ステップS17で左駆動モードではないと判断され、あるいは左駆動モードであるとの判断によって左駆動ルーチンが実行されると、次に均等分散モードか否かを判断する(S19)。均等分散モードでなければ前記ステップS2に戻り、均等分散モードであれば、本発明の特徴である均等分散ルーチン(S20)を実行してステップS2に戻る。
【0041】
次に、上記均等分散動作の詳細を、図4を参照しながら説明する。図4に示すフローは、それぞれの移動棚において行われる動作を示している。以下、一つの特定の移動棚を「本移動棚」と称することとして、本移動棚の動作を説明する。図4に示すステップS41において、前記均等分散指令部20から均等分散信号が出力されるのを待ち、均等分散信号が出力されるとステップS42に進む。均等分散信号が出力されなければ、本移動棚は停止したままである(S47)。ステップS42では、移動棚システムが待機状態である否かを判断する。待機状態とは、どの移動棚も停止していて、新たな駆動信号を受け入れることができるように待機している状態、したがって、システムに異常や故障がなく、インターロックもかかっていない状態をいう。待機状態でなければ、本移動棚は停止したままである(S47)。
【0042】
ステップS42でシステムが待機状態であると判断された場合は、ステップS43に進み、左右の通路幅が同じであるか否かを判断する。本移動棚の左右の通路幅は、前述のとおり、左右の超音波センサ17,18の検出出力から求めることができる。ステップS43で左右の通路幅が同じであると判断されると、本移動棚は移動することなくその場で待機し(S46)、ステップS41に戻る。ステップS43で左右の通路幅が同じではないと判断された場合は、ステップS44に進み、左右の通路幅は左右共に最大通路幅かどうかを判断する。ここでいう「最大通路幅」とは、均等分散動作完了時に各棚間に均等に形成されている通路幅よりも広く設定されている通路幅である。例えば、上記のように均等に形成されている通路幅を300mmとすると、上記「最大通路幅」は400mmというように、適宜の値に設定することができる。
【0043】
ステップS44で両側の通路幅が共に最大通路幅以上であると判断されると、本移動棚は移動することなくその場で待機し(S46)、ステップS41に戻り、ここまで説明してきた動作を繰り返す。この間、他の移動棚においても同様に均等分散動作を行うため、本移動棚がステップS41〜S44の動作を繰り返すうちに、本移動棚の左右の通路幅の少なくとも片方が上記最大通路幅よりも狭くなる。よって、ステップS44では「No」と判断し、ステップS45に進んで本移動棚は通路幅が広い方に移動する。このステップS45における移動動作に続いてステップS41に戻り、ステップS41〜S45が繰り返される。やがて、本移動棚の左右の通路幅が共に最大通路幅以下になり(S44でNo)、かつ、左右の通路幅が共に同じ幅になる(S43でYes)と、本移動棚はその場で待機する(S46)。こうして均等分散動作が行われる。均等分散動作後は、均等分散指令信号はオンのままでもよいが、オフにしてもよい。均等分散指令信号をオフにすると移動棚の駆動が停止され(S45)、各移動棚が均等に分散されている態様が維持される。
【0044】
以上の動作は均等分散制御部16によって行われる。この均等分散制御部16による均等分散制御は、基本的には、各移動棚において、前記距離センサの出力信号によって一方側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅と他方側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅を比較し、比較結果から通路幅の広い方に向かって移動棚が移動するように、前記モータ駆動回路13によってモータ14を駆動し、両側の通路幅が等しくなるとモータ14の駆動を停止する、という制御を行うことで本発明の目的を達成することができる。
【0045】
しかし、図4に示す均等分散制御の例では、均等分散動作後に各棚間に均等に形成される通路幅が予め分かっていることに着目し、上記均等な通路幅よりも広い通路幅を分散時の「最大通路幅」として設定し、左右の通路幅が共に上記「最大通路幅」以上か否かの判断ステップをおいている(S44)。そして、左右の通路幅が共に「最大通路幅」以上であれば本移動棚の駆動を留保し(S46)、少なくとも片方の通路幅が「最大通路幅」よりも狭くなった場合に、本移動棚を通路幅が広い方に移動させるようにして、無駄な移動をしないようにしている。こうすることにより、より迅速な均等分散動作が可能になる。
【0046】
以上説明した動作は各移動棚において個別に行われ、その結果、図1(e)に示すように、複数の移動棚及び固定棚相互間にほぼ一定幅の通路が形成されて、均等に分散した態様をとることができる。この均等分散動作は、各移動棚において左右両側の通路の大小を検出しながら、大きな通路の方に向かって移動するように制御されるため、個々の移動棚に負荷のばらつきがあっても、複数の移動棚及び固定棚相互間に形成される通路の幅にばらつきがなく、精度のよい均等分散を実現することができる。このような均等分散動作は、移動棚数の増減、移動棚の連数の増減などの仕様変更があっても、事前の設定変更や制御プログラムの変更などを行うことなく実現することができため、仕様変更が容易である。
【0047】
上記実施例において、左右の通路幅の差が一定の許容範囲内にあるか否かの判断ステップをおき、許容範囲内にある場合はモータの駆動を停止するようにしてもよい。こうすれば、均等分散動作の終了段階で、各移動棚が小刻みに左右に駆動されて落ち着かない、といった不具合を解消することができる。
【0048】
以上説明した実施例では、均等分散操作部材が操作されることによって均等分散指令部20から均等分散信号が出力され、均等分散動作が行われるようになっているが、均等分散させるのに適した条件が満たされると自動的に均等分散信号が出力されるようにしてもよい。例えば、電動式移動棚システムの電源スイッチがオフされることにより均等分散指令信号が出力され、前述のように均等分散動作が行われるようにするとよい。こうすることにより、特別な均等分散操作を行わなくても自動的に、全ての棚相互間に均一な幅で通路が形成される。均等分散動作が完了した後、電動式移動棚システムの電源が落ちるように電源回路を構成する。
【0049】
図示の実施例では、通常の電動式移動棚として使用する場合、各移動棚に設けられている右行き駆動スイッチ4Rを右方に向かって押圧操作し、または左行き駆動スイッチ4Lを左方に向かって押圧操作する。右行き駆動スイッチ4Rを押圧操作している間は、この右行き駆動スイッチ4Rを備えた移動棚及び右側に位置する移動棚が右方に移動する。左行き駆動スイッチ4Lを押圧操作している間は、この左行き駆動スイッチ4Lを備えた移動棚及び左側に位置する移動棚が左方に移動する。したがって、特定の移動棚の左側に作業通路を形成する場合は、その棚の右行き駆動スイッチ4Rを押圧操作すればよく、特定の移動棚の右側に作業通路を形成する場合は、その棚の左行き駆動スイッチ4Lを押圧操作すればよい。形成される作業通路の幅は、右行き駆動スイッチ4Rまたは左行き駆動スイッチ4Lを押圧操作している時間によって任意に決めることができる。
【0050】
通常の電動式移動棚として使用する場合の制御は、上に述べたような制御に限定されものではなく、従来一般の電動式移動棚に見られるような制御方式であってもよい。すなわち、特定の移動棚の開指令スイッチが操作されると、そのときに形成されている作業通路の位置との関係から、制御回路が移動すべき棚およびその移動の向きを判断して個々の移動棚のモータを制御するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
4R 駆動スイッチ
4L 駆動スイッチ
10 メイン制御回路部
13 モータ駆動回路
14 モータ
16 均等分散制御部
17 (超音波)距離センサ
18 (超音波)距離センサ
20 均等分散指令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動棚がモータの駆動力により集合離散可能に並べられてなる電動式移動棚システムを構成する個々の電動式移動棚が、
両側に隣接する移動棚または固定部との距離である通路幅を計測する距離センサと、
均等分散信号を出力する均等分散指令部と、
上記均等分散信号が出力されると、上記距離センサの出力信号によって一方側に隣接する移動棚または固定部との距離と他方側に隣接する移動棚または固定部との通路幅を比較し、比較結果から通路幅の広い方に向かって移動棚が移動するように上記モータを駆動し、両側の通路幅が等しくなると上記モータの駆動を停止する均等分散制御部と、
を備えている電動式移動棚。
【請求項2】
均等分散制御部は、モータ駆動回路を介しモータの正逆回転及び停止を制御して複数の電動式移動棚を均等に分散させる請求項1記載の電動式移動棚。
【請求項3】
均等分散指令部は、各電動式移動棚に設けられている均等分散操作部材または複数の移動棚を代表して設けられている均等分散操作部材が操作されることによって均等分散信号を出力する請求項1または2記載の電動式移動棚。
【請求項4】
均等分散指令部は、電動式移動棚システムの電源スイッチがオフされることによって均等分散信号を出力する請求項1または2記載の電動式移動棚。
【請求項5】
一方側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅と他方側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅の比較結果には許容値が設定されていて、一方側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅と他方側に隣接する移動棚または固定部との間の通路幅の差が上記許容値内にあれば、均等分散制御部は両側の通路幅が等しいものと判断する請求項1乃至4のいずれかに記載の電動式移動棚。
【請求項6】
均等分散動作により棚相互間に均等に形成される通路幅よりも大きい通路幅を均等分散時の最大通路幅として設定し、左右の通路幅が共に上記最大通路幅よりも大きい場合は、その移動棚の移動を留保させる請求項1乃至5のいずれかに記載の電動式移動棚。
【請求項7】
左右の通路幅の少なくとも片方が均等分散時の最大通路幅よりも狭くなった場合に、その移動棚を通路幅が広い方に移動させる請求項6記載の電動式移動棚。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103826(P2013−103826A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250328(P2011−250328)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000163833)金剛株式会社 (31)
【Fターム(参考)】