電動機の回転子
【課題】雌型部品に小さな圧入力でシャフトを圧入でき、かつ圧入後の雌型部品の引抜ききに耐える摩擦力を確保することのできる回転子を得ることを目的とする。
【解決手段】シャフト4の外周面の整流子6への圧入方向前段には、軸方向に延びる複数の線状突起41Aが周方向等間隔で配設された第1の領域41が設けられている。第1の領域41の圧入方向後段には、第1の領域41の線状突起41Aより高い密度で線状突起42Aが配設されて雌型部品5、6を係止する第2の領域42が設けられている。
【解決手段】シャフト4の外周面の整流子6への圧入方向前段には、軸方向に延びる複数の線状突起41Aが周方向等間隔で配設された第1の領域41が設けられている。第1の領域41の圧入方向後段には、第1の領域41の線状突起41Aより高い密度で線状突起42Aが配設されて雌型部品5、6を係止する第2の領域42が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セレーション等の線状突起を備えたシャフトに、ロータコア等の雌型部品を圧入して形成する電動機の回転子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の回転子として、例えばロータコアのような雌型部品の中央孔にシャフトが圧入されて固定されたものがある。シャフトと雌型部品は互いに相対的な回転を防止して回転を確実に伝達するためにセレーション結合されている。
従来のセレーション付シャフトは、雌型部品に小さな圧入力で圧入でき、クラック、破損等の発生を未然に防止するために、シャフトの周方向でセレーションの高さが異なる少なくとも2種類のセレーションを構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−20966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のセレーション付シャフトは、雌型部品に対し小さい圧入力で圧入できるが、圧入後の引き抜きに耐える摩擦力を確保することができない。圧入後の摩擦力が小さいと、圧入後の製造工程や回転子の高速回転駆動時に、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれが生じるという問題があった。特にロータコアと整流子のように2つの雌型部品から構成される電動機の回転子の場合、このようなずれが生じると2部品間の位相ずれが起こり、整流が乱れて電動機の性能が低下するという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、雌型部品に小さな圧入力でシャフトを圧入でき、かつ圧入後の雌型部品の引き抜きに耐える摩擦力を確保することのできる回転子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る電動機の回転子は、シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備えている。上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より高い密度で線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えている。
【0006】
また、この発明に係る電動機の回転子は、シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備えている。上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より上記雌型部品の圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より突起高さが高い線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えている。
【0007】
また、この発明に係る電動機の回転子は、シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備えている。上記シャフトの外周面には、上記雌型部品の圧入開始位置から上記雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起が配設されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明の電動機の回転子によれば、シャフトの外周面に、雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、第1の領域より圧入方向後段に位置し、第1の領域の線状突起より高い密度で線状突起が配設されて雌型部品を係止する第2の領域とを備えているため、圧入初期である第1の領域では、小さな圧入力で圧入でき、雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、シャフト周方向の圧入初期の位相ずれを防止することができる。そして、雌型部品が係止される第2の領域では摩擦力が大きくなり、雌型部品の引き抜きに耐える摩擦力が確保できるため、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。
【0009】
また、この発明の電動機の回転子によれば、シャフトの外周面に、雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、第1の領域より圧入方向後段に位置し、第1の領域の線状突起より突起高さが高い線状突起が配設されて雌型部品を係止する第2の領域とを備えているため、圧入初期である第1の領域では、小さな圧入力で圧入でき、雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、シャフト周方向の圧入初期の位相ずれを防止することができる。そして、雌型部品が係止される第2の領域では摩擦力が大きくなり、雌型部品の引き抜きに耐える摩擦力が確保できるため、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。
【0010】
また、この発明の電動機の回転子によれば、シャフトの外周面に、圧入開始位置から雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起が配設されている。このため、軸方向斜めに延びる複数の線状突起に沿ってシャフトを回転させながら雌型部品に圧入することで、軸方向に延びる線状突起を配置した場合よりも小さな圧入力で圧入できる。そして、圧入後は雌型部品を軸方向に引き抜く際の摩擦力が大きくなるため、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1におけるクリーナモータの内部構造を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における回転子の一部を模式的に示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるシャフトの整流子への圧入過程を示す模式図である。
【図4】この発明の実施の形態2におけるシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2における別例のシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態3におけるシャフトの構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】この発明の実施の形態3における他の別例のシャフトの構成を模式的に示す断面図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】この発明の実施の形態4におけるシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態5におけるシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電動機としてのクリーナモータ10の内部構造を示す図である。図1に示すように、クリーナモータ10は、回転子1と、回転子1の外周側に配置される固定子2と、回転子1の軸方向一方側に配置されるファン3を備えている。ファン3により回転子1の回転軸の方向に気流が発生し、その気流の大まかな方向を図中矢印で示している。回転子1は、シャフト4と、シャフト4が圧入され所定位置で係止される雌型部品としてのロータコア5と、ロータコア5の気流方向下流側に配置される同じく雌型部品としての整流子6とを備えている。
【0013】
図2は回転子1の一部を模式的に示す図であり、図3はシャフト4が整流子6に圧入される過程を分かり易く示す模式図であり、図3(a)が圧入初期の様子、図3(b)が圧入後半の様子を示す。
ロータコア5、整流子6はそれぞれシャフト4挿入用の貫通孔を有し、各貫通孔にシャフト4が圧入される。図2に示すように、本実施の形態1ではシャフト4の左側に整流子6が、右側にロータコア5が配置される。矢印6Aはシャフトに対する整流子6の嵌め合いの方向、矢印5Aはシャフトに対するロータコア5の嵌め合いの方向を示し、シャフト4の圧入方向は各矢印6A、5Aと逆向きである。
以下、シャフト4の整流子6への圧入の様子について詳述する。
【0014】
シャフト4の外周面の整流子6への圧入方向前段には、整流子6に圧入される軸方向に延びる複数の線状突起41Aが周方向に略等間隔で配設された第1の領域41が設けられている。第1の領域41と離間して圧入方向後段には、軸方向に延びる複数の線状突起42Aが周方向に略等間隔で配設された第2の領域42が設けられている。第1の領域41の線状突起41Aと第2の領域42の線状突起42Aは同じ形状の線状突起であるが、第1の領域41の線状突起41Aより、第2の領域42の線状突起42Aの方が高い密度で配設されている。例えば本実施の形態1では、第1の領域41には線状突起41Aが16本、第2の領域42には線状突起42Aが線状突起41Aの2倍の本数である32本配設されている。
各線状突起41A、42Aは、溝の付いた丸ダイス又は平ダイスを転造して軸方向に延びる突起を形成するセレーション加工により形成されるセレーションである。一般的なセレーションが安定的に転造できる最小本数が16本程度であるため、第1の領域41に配設される線状突起41Aの本数を16本としている。
【0015】
なお、各線状突起41A、42Aの配設本数はこれに限られるものではない。第1の領域の線状突起41Aより、第2の領域42の線状突起42Aの方が高い密度で配設されていればよく、線状突起41Aより線状突起42Aの方が配設本数が多ければよい。
また本実施の形態1では、第1の領域41と第2の領域42は離間して設けられているが、必ずしも離間する必要はなく、第1の領域41と第2の領域2が連続して設けられていてもよい。
また、第1の領域41と第2の領域42との間隔は、整流子6の軸方向の長さよりも小さく設定する必要があり、シャフト4が整流子6に圧入される際、シャフト4の第1の領域41が整流子6を完全に通過する前に、第2の領域42が整流子6に圧入開始される必要がある。
また、各線状突起41A、42Aの軸方向の長さおよび配設位置は、整流子6の軸方向の長さ、圧入位置、係止位置に応じて適宜決定すればよい。本実施の形態1では、第1の領域41の線状突起41Aは整流子6の軸方向長さより長く、第2の領域42は整流子6の軸方向の長さより短く設定している。
【0016】
図3(a)に示すように、シャフト4の整流子6への圧入は、第1の領域41の線状突起41Aと整流子6の貫通孔を形成する内周面が接触し始める位置から開始される。第1の領域41が整流子6を完全に通過するより前に、第2の領域42が整流子6へ圧入開始され、図3(b)に示すように第2の領域42が整流子6に完全に圧入された状態で整流子6が係止される。
【0017】
シャフト4の圧入初期となる第1の領域41では線状突起41Aの本数が第2の領域42に比べて少なく、小さな圧入力で整流子6に圧入することができる。このため、整流子6の内周面の周方向の伸びが小さく、整流子6のクラック、破損等の発生を未然に防止できる。また、シャフト4周方向の圧入初期における位相ずれを防止することができる。
これに対し、シャフト4の圧入後半であり整流子6が係止される第2の領域42では、線状突起42Aの本数が多いため摩擦力が大きくなり、圧入後の整流子6の引き抜きに耐える摩擦力が確保できる。このため、圧入後のシャフト4の軸方向および周方向に対する整流子6のずれを抑制できる。なお、シャフト4の圧入後半は圧入初期より大きな圧入力が必要であるが、圧入後半ではすでに圧入初期においてシャフト4と整流子6の一部が嵌め合わされているため、圧入後半で圧入力が大きくなってもシャフト4が周方向へ回転しにくく、シャフト4周方向の位相ずれが生じることもない。また、第2の領域42の線状突起42Aの長さを整流子6の引き抜きに耐える摩擦力が確保できる範囲でできるだけ短く設定すれば、圧入力の大きくなる範囲を短くでき、圧入後半における整流子6の周方向の伸びを最小限に抑えることができる。また、第1の領域41の線状突起41Aを長く、第2の領域42の線状突起42Aを短くすれば、圧入力が小さく済む範囲を長く、大きくなる範囲を短くして、組立性を向上することができる。
【0018】
シャフト4のロータコア5への圧入については整流子6の場合と同様であり、その効果も同様である。従って、シャフト4とロータコア5の構成については簡略に説明する。
図2に示すように、シャフト4の外周面のロータコア5への圧入方向前段には線状突起41Aが周方向に略等間隔で配設された第1の領域41が設けられている。第1の領域41と離間して圧入方向後段には、第1の領域41の線状突起41Aより高い密度で線状突起42Aが配設されてロータコア5を係止する第2の領域42が設けられている。
なお、各線状突起41A、42Aの配設本数は、整流子6の場合と同様としてもよいが、ロータコア5の重量に合わせて適宜変更してもよい。ロータコア5の重量は整流子6の重量より大きいため、高速回転駆動時におけるロータコア5にかかる遠心力も大きくなる。従って、より大きな引き抜きに耐える摩擦力を確保したい場合は、第2の領域の線状突起42Aの本数を整流子6の場合より多く設定すればよい。
また、上述の通り、各線状突起41A、42Aの軸方向の長さおよび配設位置も、ロータコア5の軸方向の長さ、圧入位置、係止位置に応じて適宜決定すればよい。
【0019】
以上のように、本実施の形態1の回転子1は、シャフト4が整流子6やロータコア5等の雌型部品に小さな圧入力で圧入でき、かつ圧入後の引き抜きに耐える摩擦力を確保することができるため、シャフト4の圧入による雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、圧入後の製造工程や回転子1の高速回転駆動時のシャフト4の軸方向および周方向に対する雌型部品のずれの発生を防止し、整流の乱れのない高性能の電動機を得ることができる。このため、回転子1の耐久性の向上や、電動機の性能向上によるエネルギー消費量の削減等の効果が得られる。そして、生産工程におけるシャフト4の圧入力を小さくできるため圧入が容易に行え、生産工程の環境負荷を低減することができる。
【0020】
実施の形態2.
本実施の形態2では、上記実施の形態1におけるシャフト4の第2の領域42における線状突起をセレーション加工ではなくローレット加工により形成した例について説明する。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
図4は本実施の形態2のシャフト4の構成を模式的に示す斜視図である。ロータコア5および整流子6のそれぞれの第2の領域42に配設される線状突起42Bは、ローレット加工により形成された平目ローレットである。なお線状突起42Bの突起高さは第1の領域41の線状突起41Aと同じである。セレーション加工によるセレーションは、軸方向に延びる線状突起が離間して配設されるが、ローレット加工による平目ローレットは軸方向に延びる線状突起が連続して施される。
【0021】
以上のように、本実施の形態2の回転子は、第2の領域42の線状突起42Bがローレット加工により形成されるローレットであるため、セレーションとする場合よりも第2の領域42の線状突起42Bの配設密度をより高くすることができる。従って、上記実施の形態1の効果に加え、第2の領域42では摩擦力がより大きくなり、圧入後の引き抜きに耐える摩擦力が十分に確保できる。また、配設密度が高いため雌型部品の内周面に加わる圧力が均等に分散され、圧入の影響による雌型部品の軸芯ずれの発生を低減し、振動の要因となる不釣り合い量の増加や電機子の特性の低下を防止する。
また、図5は本実施の形態2の別例のシャフトを示す図である。図に示すように、第2の領域42の線状突起42Cを、線状突起が交差する綾目ローレットとしてもよく、平目ローレットの場合と同様の効果を有する。
【0022】
実施の形態3.
上記実施の形態1では第1と第2の領域41、42の各線状突起の配設密度を変えたが、本実施の形態3では、第1と第2の領域41、42の各線状突起の突起高さを変える場合について説明する。各線状突起の構成以外は上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
図6は本実施の形態3のシャフト4の構成を模式的に示す断面図であり、図7は図6のA部分の拡大図である。図に示すように、第1の領域41の線状突起41Aの突起高さをH1、第2の領域42の線状突起42Dの突起高さをH2とすると、H1<H2の関係となるよう各線状突起42A、42Dが形成されている。
【0023】
以上のように、本実施の形態3の回転子1において、シャフト4の第2の領域42の線状突起42Dは第1の領域41の線状突起41Aより突起高さが高い。このため、雌型部品が係止される第2の領域における摩擦力は大きくなり、上記実施の形態1と同様の効果を有する。
【0024】
なお、本実施の形態3の別例として、第2の領域42の線状突起42Dの突起高さを第1の領域41の線状突起41Aの突起高さより高くするだけでなく、さらに上記実施の形態1の場合のように線状突起42Dの配設密度を線状突起41Aの配線密度より高くする構成としてもよい。
このような構成により、第2の領域42における摩擦力はより大きくなり、シャフト4圧入後において、さらに大きな引き抜きに耐える摩擦力が確保できる。
【0025】
さらに、本実施の形態3の他の別例について説明する。図8は本実施の形態3の他の別例のシャフト4の構成を模式的に示す断面図であり、図9は図8のB部分の拡大図である。上記実施の形態3では第1および第2の領域41、42が離間して設けられていたが、この他の別例では第1および第2の領域41、42が連続して配置され、各領域41、42に配設される複数の線状突起は、軸方向に延びる連続した線状突起43である。線状突起43は雌型部品への圧入開始位置から雌型部品の係止位置まで徐々に突起高さが高くなるように形成されている。
このような構成により、上記実施の形態3の効果と同様の効果を有するとともに、連続した線状突起43により圧入開始から雌型部品の係止まで圧入力が徐々に大きくなるよう変化し、スムーズな圧入が可能となるという効果も有する。これにより、圧入力の変化に伴うシャフト4の周方向に対する位相ずれを確実に防止し、より精度のよい組立ができる。
【0026】
実施の形態4.
図10は本実施の形態4のシャフト4の構成を模式的に示す斜視図である。シャフト4の第1の領域41に配設される線状突起は軸方向に延び周方向に等間隔で配設された線状突起41Eであり、第2の領域42に配設される線状突起は線状突起41Eから枝分かれして延びる線状突起42Eである。上記実施の形態1では第1の領域41と第2の領域42は軸方向に離間して設けられていたが、本実施の形態4では第1の領域41と第2の領域42が連続して設けられる構成となる。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
以上のように、本実施の形態4の回転子1において、シャフト4の第1の領域41と第2の領域42が連続して設けられ、線状突起42Eが線状突起41Eから枝分かれして配設されるため、枝分かれする線状突起42Eの部分で圧入力が徐々に大きくなるように変化し、スムーズな圧入が可能となる。これにより、上記実施の形態1と同様の効果に加え、圧入力の変化に伴うシャフト4の周方向に対する位相ずれを確実に防止し、より精度のよい組立ができる。
【0028】
実施の形態5.
図11は本実施の形態5のシャフト4の構成を模式的に示す斜視図である。本実施の形態5では、上記実施の形態1におけるシャフト4の各線状突起41A、42Aの代わりに、雌型部品への圧入開始の位置から雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起44が配設されている。
【0029】
以上のように、本実施の形態5の回転子1において、シャフト4に軸方向斜めに延びる線状突起44が配設されているため、線状突起44に沿ってシャフト4を回転させながら雌型部品に圧入し、シャフト4に軸方向に延びる線状突起を配置した場合よりも小さな圧入力で圧入することができる。そして、圧入後は雌型部品を軸方向に引き抜く際の摩擦が大きくなるため、シャフト4の軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。このため、上記実施の形態1と同様に、シャフト4の圧入による雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、圧入後の製造工程や回転子1の高速回転駆動時のシャフト4の軸方向および周方向に対する雌型部品のずれの発生を防止し、整流の乱れのない高性能の電動機を得ることができる。そして、回転子1の耐久性の向上や、電動機の性能向上によるエネルギー消費量の削減等の効果が得られる。また、生産工程における全体の圧入力を小さくできるため圧入が容易に行え、生産工程の環境負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 回転子、4 シャフト、5 ロータコア、6 整流子、41 第1の領域、
41A,41E 線状突起、42 第2の領域、42A〜42E 線状突起、
43 線状突起、44 線状突起。
【技術分野】
【0001】
この発明は、セレーション等の線状突起を備えたシャフトに、ロータコア等の雌型部品を圧入して形成する電動機の回転子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の回転子として、例えばロータコアのような雌型部品の中央孔にシャフトが圧入されて固定されたものがある。シャフトと雌型部品は互いに相対的な回転を防止して回転を確実に伝達するためにセレーション結合されている。
従来のセレーション付シャフトは、雌型部品に小さな圧入力で圧入でき、クラック、破損等の発生を未然に防止するために、シャフトの周方向でセレーションの高さが異なる少なくとも2種類のセレーションを構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−20966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のセレーション付シャフトは、雌型部品に対し小さい圧入力で圧入できるが、圧入後の引き抜きに耐える摩擦力を確保することができない。圧入後の摩擦力が小さいと、圧入後の製造工程や回転子の高速回転駆動時に、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれが生じるという問題があった。特にロータコアと整流子のように2つの雌型部品から構成される電動機の回転子の場合、このようなずれが生じると2部品間の位相ずれが起こり、整流が乱れて電動機の性能が低下するという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、雌型部品に小さな圧入力でシャフトを圧入でき、かつ圧入後の雌型部品の引き抜きに耐える摩擦力を確保することのできる回転子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る電動機の回転子は、シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備えている。上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より高い密度で線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えている。
【0006】
また、この発明に係る電動機の回転子は、シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備えている。上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より上記雌型部品の圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より突起高さが高い線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えている。
【0007】
また、この発明に係る電動機の回転子は、シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備えている。上記シャフトの外周面には、上記雌型部品の圧入開始位置から上記雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起が配設されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明の電動機の回転子によれば、シャフトの外周面に、雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、第1の領域より圧入方向後段に位置し、第1の領域の線状突起より高い密度で線状突起が配設されて雌型部品を係止する第2の領域とを備えているため、圧入初期である第1の領域では、小さな圧入力で圧入でき、雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、シャフト周方向の圧入初期の位相ずれを防止することができる。そして、雌型部品が係止される第2の領域では摩擦力が大きくなり、雌型部品の引き抜きに耐える摩擦力が確保できるため、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。
【0009】
また、この発明の電動機の回転子によれば、シャフトの外周面に、雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、第1の領域より圧入方向後段に位置し、第1の領域の線状突起より突起高さが高い線状突起が配設されて雌型部品を係止する第2の領域とを備えているため、圧入初期である第1の領域では、小さな圧入力で圧入でき、雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、シャフト周方向の圧入初期の位相ずれを防止することができる。そして、雌型部品が係止される第2の領域では摩擦力が大きくなり、雌型部品の引き抜きに耐える摩擦力が確保できるため、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。
【0010】
また、この発明の電動機の回転子によれば、シャフトの外周面に、圧入開始位置から雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起が配設されている。このため、軸方向斜めに延びる複数の線状突起に沿ってシャフトを回転させながら雌型部品に圧入することで、軸方向に延びる線状突起を配置した場合よりも小さな圧入力で圧入できる。そして、圧入後は雌型部品を軸方向に引き抜く際の摩擦力が大きくなるため、シャフトの軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1におけるクリーナモータの内部構造を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における回転子の一部を模式的に示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるシャフトの整流子への圧入過程を示す模式図である。
【図4】この発明の実施の形態2におけるシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2における別例のシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態3におけるシャフトの構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】この発明の実施の形態3における他の別例のシャフトの構成を模式的に示す断面図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】この発明の実施の形態4におけるシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態5におけるシャフトの構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電動機としてのクリーナモータ10の内部構造を示す図である。図1に示すように、クリーナモータ10は、回転子1と、回転子1の外周側に配置される固定子2と、回転子1の軸方向一方側に配置されるファン3を備えている。ファン3により回転子1の回転軸の方向に気流が発生し、その気流の大まかな方向を図中矢印で示している。回転子1は、シャフト4と、シャフト4が圧入され所定位置で係止される雌型部品としてのロータコア5と、ロータコア5の気流方向下流側に配置される同じく雌型部品としての整流子6とを備えている。
【0013】
図2は回転子1の一部を模式的に示す図であり、図3はシャフト4が整流子6に圧入される過程を分かり易く示す模式図であり、図3(a)が圧入初期の様子、図3(b)が圧入後半の様子を示す。
ロータコア5、整流子6はそれぞれシャフト4挿入用の貫通孔を有し、各貫通孔にシャフト4が圧入される。図2に示すように、本実施の形態1ではシャフト4の左側に整流子6が、右側にロータコア5が配置される。矢印6Aはシャフトに対する整流子6の嵌め合いの方向、矢印5Aはシャフトに対するロータコア5の嵌め合いの方向を示し、シャフト4の圧入方向は各矢印6A、5Aと逆向きである。
以下、シャフト4の整流子6への圧入の様子について詳述する。
【0014】
シャフト4の外周面の整流子6への圧入方向前段には、整流子6に圧入される軸方向に延びる複数の線状突起41Aが周方向に略等間隔で配設された第1の領域41が設けられている。第1の領域41と離間して圧入方向後段には、軸方向に延びる複数の線状突起42Aが周方向に略等間隔で配設された第2の領域42が設けられている。第1の領域41の線状突起41Aと第2の領域42の線状突起42Aは同じ形状の線状突起であるが、第1の領域41の線状突起41Aより、第2の領域42の線状突起42Aの方が高い密度で配設されている。例えば本実施の形態1では、第1の領域41には線状突起41Aが16本、第2の領域42には線状突起42Aが線状突起41Aの2倍の本数である32本配設されている。
各線状突起41A、42Aは、溝の付いた丸ダイス又は平ダイスを転造して軸方向に延びる突起を形成するセレーション加工により形成されるセレーションである。一般的なセレーションが安定的に転造できる最小本数が16本程度であるため、第1の領域41に配設される線状突起41Aの本数を16本としている。
【0015】
なお、各線状突起41A、42Aの配設本数はこれに限られるものではない。第1の領域の線状突起41Aより、第2の領域42の線状突起42Aの方が高い密度で配設されていればよく、線状突起41Aより線状突起42Aの方が配設本数が多ければよい。
また本実施の形態1では、第1の領域41と第2の領域42は離間して設けられているが、必ずしも離間する必要はなく、第1の領域41と第2の領域2が連続して設けられていてもよい。
また、第1の領域41と第2の領域42との間隔は、整流子6の軸方向の長さよりも小さく設定する必要があり、シャフト4が整流子6に圧入される際、シャフト4の第1の領域41が整流子6を完全に通過する前に、第2の領域42が整流子6に圧入開始される必要がある。
また、各線状突起41A、42Aの軸方向の長さおよび配設位置は、整流子6の軸方向の長さ、圧入位置、係止位置に応じて適宜決定すればよい。本実施の形態1では、第1の領域41の線状突起41Aは整流子6の軸方向長さより長く、第2の領域42は整流子6の軸方向の長さより短く設定している。
【0016】
図3(a)に示すように、シャフト4の整流子6への圧入は、第1の領域41の線状突起41Aと整流子6の貫通孔を形成する内周面が接触し始める位置から開始される。第1の領域41が整流子6を完全に通過するより前に、第2の領域42が整流子6へ圧入開始され、図3(b)に示すように第2の領域42が整流子6に完全に圧入された状態で整流子6が係止される。
【0017】
シャフト4の圧入初期となる第1の領域41では線状突起41Aの本数が第2の領域42に比べて少なく、小さな圧入力で整流子6に圧入することができる。このため、整流子6の内周面の周方向の伸びが小さく、整流子6のクラック、破損等の発生を未然に防止できる。また、シャフト4周方向の圧入初期における位相ずれを防止することができる。
これに対し、シャフト4の圧入後半であり整流子6が係止される第2の領域42では、線状突起42Aの本数が多いため摩擦力が大きくなり、圧入後の整流子6の引き抜きに耐える摩擦力が確保できる。このため、圧入後のシャフト4の軸方向および周方向に対する整流子6のずれを抑制できる。なお、シャフト4の圧入後半は圧入初期より大きな圧入力が必要であるが、圧入後半ではすでに圧入初期においてシャフト4と整流子6の一部が嵌め合わされているため、圧入後半で圧入力が大きくなってもシャフト4が周方向へ回転しにくく、シャフト4周方向の位相ずれが生じることもない。また、第2の領域42の線状突起42Aの長さを整流子6の引き抜きに耐える摩擦力が確保できる範囲でできるだけ短く設定すれば、圧入力の大きくなる範囲を短くでき、圧入後半における整流子6の周方向の伸びを最小限に抑えることができる。また、第1の領域41の線状突起41Aを長く、第2の領域42の線状突起42Aを短くすれば、圧入力が小さく済む範囲を長く、大きくなる範囲を短くして、組立性を向上することができる。
【0018】
シャフト4のロータコア5への圧入については整流子6の場合と同様であり、その効果も同様である。従って、シャフト4とロータコア5の構成については簡略に説明する。
図2に示すように、シャフト4の外周面のロータコア5への圧入方向前段には線状突起41Aが周方向に略等間隔で配設された第1の領域41が設けられている。第1の領域41と離間して圧入方向後段には、第1の領域41の線状突起41Aより高い密度で線状突起42Aが配設されてロータコア5を係止する第2の領域42が設けられている。
なお、各線状突起41A、42Aの配設本数は、整流子6の場合と同様としてもよいが、ロータコア5の重量に合わせて適宜変更してもよい。ロータコア5の重量は整流子6の重量より大きいため、高速回転駆動時におけるロータコア5にかかる遠心力も大きくなる。従って、より大きな引き抜きに耐える摩擦力を確保したい場合は、第2の領域の線状突起42Aの本数を整流子6の場合より多く設定すればよい。
また、上述の通り、各線状突起41A、42Aの軸方向の長さおよび配設位置も、ロータコア5の軸方向の長さ、圧入位置、係止位置に応じて適宜決定すればよい。
【0019】
以上のように、本実施の形態1の回転子1は、シャフト4が整流子6やロータコア5等の雌型部品に小さな圧入力で圧入でき、かつ圧入後の引き抜きに耐える摩擦力を確保することができるため、シャフト4の圧入による雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、圧入後の製造工程や回転子1の高速回転駆動時のシャフト4の軸方向および周方向に対する雌型部品のずれの発生を防止し、整流の乱れのない高性能の電動機を得ることができる。このため、回転子1の耐久性の向上や、電動機の性能向上によるエネルギー消費量の削減等の効果が得られる。そして、生産工程におけるシャフト4の圧入力を小さくできるため圧入が容易に行え、生産工程の環境負荷を低減することができる。
【0020】
実施の形態2.
本実施の形態2では、上記実施の形態1におけるシャフト4の第2の領域42における線状突起をセレーション加工ではなくローレット加工により形成した例について説明する。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
図4は本実施の形態2のシャフト4の構成を模式的に示す斜視図である。ロータコア5および整流子6のそれぞれの第2の領域42に配設される線状突起42Bは、ローレット加工により形成された平目ローレットである。なお線状突起42Bの突起高さは第1の領域41の線状突起41Aと同じである。セレーション加工によるセレーションは、軸方向に延びる線状突起が離間して配設されるが、ローレット加工による平目ローレットは軸方向に延びる線状突起が連続して施される。
【0021】
以上のように、本実施の形態2の回転子は、第2の領域42の線状突起42Bがローレット加工により形成されるローレットであるため、セレーションとする場合よりも第2の領域42の線状突起42Bの配設密度をより高くすることができる。従って、上記実施の形態1の効果に加え、第2の領域42では摩擦力がより大きくなり、圧入後の引き抜きに耐える摩擦力が十分に確保できる。また、配設密度が高いため雌型部品の内周面に加わる圧力が均等に分散され、圧入の影響による雌型部品の軸芯ずれの発生を低減し、振動の要因となる不釣り合い量の増加や電機子の特性の低下を防止する。
また、図5は本実施の形態2の別例のシャフトを示す図である。図に示すように、第2の領域42の線状突起42Cを、線状突起が交差する綾目ローレットとしてもよく、平目ローレットの場合と同様の効果を有する。
【0022】
実施の形態3.
上記実施の形態1では第1と第2の領域41、42の各線状突起の配設密度を変えたが、本実施の形態3では、第1と第2の領域41、42の各線状突起の突起高さを変える場合について説明する。各線状突起の構成以外は上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
図6は本実施の形態3のシャフト4の構成を模式的に示す断面図であり、図7は図6のA部分の拡大図である。図に示すように、第1の領域41の線状突起41Aの突起高さをH1、第2の領域42の線状突起42Dの突起高さをH2とすると、H1<H2の関係となるよう各線状突起42A、42Dが形成されている。
【0023】
以上のように、本実施の形態3の回転子1において、シャフト4の第2の領域42の線状突起42Dは第1の領域41の線状突起41Aより突起高さが高い。このため、雌型部品が係止される第2の領域における摩擦力は大きくなり、上記実施の形態1と同様の効果を有する。
【0024】
なお、本実施の形態3の別例として、第2の領域42の線状突起42Dの突起高さを第1の領域41の線状突起41Aの突起高さより高くするだけでなく、さらに上記実施の形態1の場合のように線状突起42Dの配設密度を線状突起41Aの配線密度より高くする構成としてもよい。
このような構成により、第2の領域42における摩擦力はより大きくなり、シャフト4圧入後において、さらに大きな引き抜きに耐える摩擦力が確保できる。
【0025】
さらに、本実施の形態3の他の別例について説明する。図8は本実施の形態3の他の別例のシャフト4の構成を模式的に示す断面図であり、図9は図8のB部分の拡大図である。上記実施の形態3では第1および第2の領域41、42が離間して設けられていたが、この他の別例では第1および第2の領域41、42が連続して配置され、各領域41、42に配設される複数の線状突起は、軸方向に延びる連続した線状突起43である。線状突起43は雌型部品への圧入開始位置から雌型部品の係止位置まで徐々に突起高さが高くなるように形成されている。
このような構成により、上記実施の形態3の効果と同様の効果を有するとともに、連続した線状突起43により圧入開始から雌型部品の係止まで圧入力が徐々に大きくなるよう変化し、スムーズな圧入が可能となるという効果も有する。これにより、圧入力の変化に伴うシャフト4の周方向に対する位相ずれを確実に防止し、より精度のよい組立ができる。
【0026】
実施の形態4.
図10は本実施の形態4のシャフト4の構成を模式的に示す斜視図である。シャフト4の第1の領域41に配設される線状突起は軸方向に延び周方向に等間隔で配設された線状突起41Eであり、第2の領域42に配設される線状突起は線状突起41Eから枝分かれして延びる線状突起42Eである。上記実施の形態1では第1の領域41と第2の領域42は軸方向に離間して設けられていたが、本実施の形態4では第1の領域41と第2の領域42が連続して設けられる構成となる。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
以上のように、本実施の形態4の回転子1において、シャフト4の第1の領域41と第2の領域42が連続して設けられ、線状突起42Eが線状突起41Eから枝分かれして配設されるため、枝分かれする線状突起42Eの部分で圧入力が徐々に大きくなるように変化し、スムーズな圧入が可能となる。これにより、上記実施の形態1と同様の効果に加え、圧入力の変化に伴うシャフト4の周方向に対する位相ずれを確実に防止し、より精度のよい組立ができる。
【0028】
実施の形態5.
図11は本実施の形態5のシャフト4の構成を模式的に示す斜視図である。本実施の形態5では、上記実施の形態1におけるシャフト4の各線状突起41A、42Aの代わりに、雌型部品への圧入開始の位置から雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起44が配設されている。
【0029】
以上のように、本実施の形態5の回転子1において、シャフト4に軸方向斜めに延びる線状突起44が配設されているため、線状突起44に沿ってシャフト4を回転させながら雌型部品に圧入し、シャフト4に軸方向に延びる線状突起を配置した場合よりも小さな圧入力で圧入することができる。そして、圧入後は雌型部品を軸方向に引き抜く際の摩擦が大きくなるため、シャフト4の軸方向および周方向に対する雌型部品のずれを抑制できる。このため、上記実施の形態1と同様に、シャフト4の圧入による雌型部品のクラック、破損等の発生を未然に防止できるとともに、圧入後の製造工程や回転子1の高速回転駆動時のシャフト4の軸方向および周方向に対する雌型部品のずれの発生を防止し、整流の乱れのない高性能の電動機を得ることができる。そして、回転子1の耐久性の向上や、電動機の性能向上によるエネルギー消費量の削減等の効果が得られる。また、生産工程における全体の圧入力を小さくできるため圧入が容易に行え、生産工程の環境負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 回転子、4 シャフト、5 ロータコア、6 整流子、41 第1の領域、
41A,41E 線状突起、42 第2の領域、42A〜42E 線状突起、
43 線状突起、44 線状突起。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備え、上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より高い密度で線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えたことを特徴とする電動機の回転子。
【請求項2】
上記第1および第2の領域に配設される複数の線状突起は軸方向に延びる線状突起であることを特徴とする請求項1に記載の電動機の回転子。
【請求項3】
上記第2の領域に配設される複数の線状突起の突起高さは、上記第1の領域に配設される複数の線状突起の突起高さより高いことを特徴とする請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項4】
上記第1の領域に配設される複数の線状突起は軸方向に延びる線状突起であり、上記第2の領域に配設される複数の線状突起は上記第1の領域に配設される線状突起から枝分かれして延びる線状突起であることを特徴とする請求項1に記載の電動機の回転子。
【請求項5】
上記第1および第2の領域に配設される複数の線状突起はセレーション加工により形成されるセレーションであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機の回転子。
【請求項6】
上記第1の領域に配設される複数の線状突起はセレーション加工により形成されるセレーションであり、上記第2の領域に配設される複数の線状突起はローレット加工により形成されるローレットであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機の回転子。
【請求項7】
シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備え、上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より突起高さが高い線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えたことを特徴とする電動機の回転子。
【請求項8】
上記第1および第2の領域に配設される複数の線状突起は、軸方向に延びる連続した線状突起であり、上記雌型部品への圧入開始位置から上記雌型部品の係止位置まで徐々に突起高さが高くなることを特徴とする請求項7に記載の電動機の回転子。
【請求項9】
シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備え、上記シャフトの外周面には、上記雌型部品への圧入開始位置から上記雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起が配設されていることを特徴とする電動機の回転子。
【請求項1】
シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備え、上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より高い密度で線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えたことを特徴とする電動機の回転子。
【請求項2】
上記第1および第2の領域に配設される複数の線状突起は軸方向に延びる線状突起であることを特徴とする請求項1に記載の電動機の回転子。
【請求項3】
上記第2の領域に配設される複数の線状突起の突起高さは、上記第1の領域に配設される複数の線状突起の突起高さより高いことを特徴とする請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項4】
上記第1の領域に配設される複数の線状突起は軸方向に延びる線状突起であり、上記第2の領域に配設される複数の線状突起は上記第1の領域に配設される線状突起から枝分かれして延びる線状突起であることを特徴とする請求項1に記載の電動機の回転子。
【請求項5】
上記第1および第2の領域に配設される複数の線状突起はセレーション加工により形成されるセレーションであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機の回転子。
【請求項6】
上記第1の領域に配設される複数の線状突起はセレーション加工により形成されるセレーションであり、上記第2の領域に配設される複数の線状突起はローレット加工により形成されるローレットであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機の回転子。
【請求項7】
シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備え、上記シャフトの外周面には、上記雌型部品に圧入される複数の線状突起が配設される第1の領域と、上記第1の領域より圧入方向後段に位置し、上記第1の領域の線状突起より突起高さが高い線状突起が配設されて上記雌型部品を係止する第2の領域とを備えたことを特徴とする電動機の回転子。
【請求項8】
上記第1および第2の領域に配設される複数の線状突起は、軸方向に延びる連続した線状突起であり、上記雌型部品への圧入開始位置から上記雌型部品の係止位置まで徐々に突起高さが高くなることを特徴とする請求項7に記載の電動機の回転子。
【請求項9】
シャフトと、上記シャフトが圧入され所定位置で係止される雌型部品とを備え、上記シャフトの外周面には、上記雌型部品への圧入開始位置から上記雌型部品の係止位置まで軸方向斜めに延びる複数の線状突起が配設されていることを特徴とする電動機の回転子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−257389(P2012−257389A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128898(P2011−128898)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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