説明

電動機の軸受部構造

【課題】一般的な主電動機の大きさと構成部品で構成され、軸受交換を簡単にした車両用主電動機を提供する。
【解決手段】車両用主電動機100では、一端に側板を設けた円筒型の固定子枠101と前述固定子枠101のフランジ面には、ベアリングブラケット104取付けられている。前述固定子枠101の中心に設けられた回転子軸105(1)の両端には、円筒ころ軸受112と玉軸受113が、ベアリングブラケット104に取付けられた円筒ころ軸受箱108と固定子枠101の側板に取付けられた玉軸受箱109の中心に設けられ、機内側から円筒ころ軸受箱のふた110と玉軸受箱のふた111が固定されており、前述回転子軸105(1)が挿入された回転子鉄心105(2)の両端に円筒ころ軸受側の冷却用ファン106と玉軸受側の冷却ファン107が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用主電動機に関し、特に、電動機の軸受部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、一般的に車両用主電動機は、軸受で回転子を支持している。軸受は主電動機を長期間運転させると磨耗するため、交換する必要がある。軸受を交換するためには回転子を固定子枠から引抜いた後、軸受を交換する必要がある。ここで、軸受の交換方法について記載されたものとして、例えば、以下の特許文献1に記載されたものがある。当該特許文献1では、主電動機の内部に回転子の支持装置を設け、その支持装置を移動させることで回転子を固定子枠に固定し、軸受を交換する方法が記載されており、そして、当該特許文献1では、回転子を固定子枠から抜かないで軸受を交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−99491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1の主電動機では、回転子を固定子枠から抜かないで軸受を交換する構造が記載されているが、しかしながら、主電動機の内部に一般的な主電動機の構成部品以外の特殊な回転子の支持装置が必要であり、また、内部に設けた回転子の支持装置と機外側から取付けた軸受箱のため一般的な主電動機と比較して軸方向に大型化する傾向にある。
【0005】
そこで、本発明では、一般的な主電動機の大きさと構成部品で構成され、かつ、軸受交換を簡単にした車両用主電動機を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、その一例を挙げるならば、車両用主電動機100であって、一端に側板を設けた円筒型の固定子枠101と前述固定子枠101のフランジ面にはベアリングブラケット104取付けられている。前述固定子枠101の中心に設けられた回転子軸105(1)の両端には、円筒ころ軸受112と玉軸受113が、ベアリングブラケット104に取付けられた円筒ころ軸受箱108と固定子枠101の側板に取付けられた玉軸受箱109の中心に設けられ、機内側から円筒ころ軸受箱のふた110と玉軸受箱のふた111が固定されており、前述回転子軸105(1)が挿入された回転子鉄心105(2)の両端に冷却用ファン106、107が接続された車両用主電動機が提供される。
【0007】
即ち、本発明によれば、車両用主電動機100であって、円筒型の固定子枠101と固定子枠101のフランジ面に接続されたベアリングブラケット104と円筒ころ軸受側の冷却用ファン106と玉軸受側の冷却用ファン107が接続され、固定子枠101の中心に配置された回転子軸105を有し、かつ、前記回転子105の両端に設けられた回転自在の軸受112、113を有する車両用主電動機が提供される。
【0008】
また、前記に記載の車両用主電動機100において、前記固定子枠101の内部と前記玉軸受側の冷却用ファン107の外周部を同一角度で傾斜させたことが好ましく、更には、前記円筒ころ軸受側の冷却用ファン106に押しボルト119を接触させるフランジを設けたことが好ましい。加えて、本発明によれば、前記に記載の車両用主電動機100であって、前記回転子105を玉軸受方向にずらすことで、前記玉軸受側の冷却用ファン107と前記固定子枠101の傾斜部が接触・保持ことが好ましく、更に、前記ベアリングブラケット104に少なくとも2個以上の加工したネジ穴に、押しボルト119を挿入した後回転させ、前記円筒ころ軸受側の冷却用ファン106に接触させることで、前記回転子105を玉軸受方向に押付け、回転子105を固定子枠101に固定することが好ましく、そして、更には、円筒ころ軸受箱のふた110と玉軸受箱のふた111を機内側に取付けたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明によれば、一般的な主電動機の大きさと構成部品で構成されるにもかかわれず、軸受の交換が簡単な車両用主電動機を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1になる車両用電動機の断面構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1になる車両用電動機の、特に、軸受交換時の断面構造を示す一部展開断面図である。
【図3】上記車両用電動機における軸受を交換する作業の詳細を示す部分断面図である。
【図4】上記車両用電動機におけるベアリングブラケットの一例を示す正面図である。
【図5】従来構造の軸受周りの部分断面の概略図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例について図面を用いて説明する。尚、下記は、本発明の実施の携帯の一例に過ぎず、従って、本発明内容を下記の具体的態様に限定することを意図する主旨ではない。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1について、添付の図1〜図5を用いながら以下に詳細に説明する。
なお、本発明に基づく実施例1の車両用主電動機は、円筒状で一端に側板を有した固定子枠101の内周部に固定子鉄心102と前述固定子鉄心102の内周部に設けられた溝にコイル103が挿入されている。前述固定子枠101にはベアリングブラケット104が取付けられている。
【0013】
固定子枠101の中心には回転子軸105(1)が配置されており、前述回転子軸105(1)の両端に取付けられた円筒ころ軸受112と玉軸受113によって前述回転子軸105(1)が支持されている。
【0014】
前述した円筒ころ軸受112と玉軸受113は、ベアリングブラケット104に取付けられた円筒ころ軸受箱108と固定子枠101の側板に取付けられた玉軸受箱109の中心に設けることで、前述回転子軸105(1)の回転を自在にしている。
【0015】
前述した円筒ころ軸受112は、軸受の構造から内輪と外輪部で、分離された円筒ころ軸受の内輪112(1)と円筒ころ軸受の外輪112(2)で構成され、軸方向にずらすことが可能である。前述円筒ころ軸受の内輪112(1)は前述回転子軸105(1)に取付けられ、前述円筒ころ軸受の外輪112(2)は円筒ころ軸受箱108に収められている。
【0016】
前述した円筒ころ軸受箱108と玉軸受箱109には円筒ころ軸受112と玉軸受113を固定するために円筒ころ軸受箱のふた110と玉軸受箱のふた111が電動機の機内側に取付けられている。
【0017】
前述した回転子軸105(1)は回転子鉄心105(2)に挿入されており(以後、回転子軸と回転子鉄心を合わせたものを回転子105とする)、前述回転子鉄心105(2)の両端には円筒ころ軸受側の冷却用ファン106と玉軸受側の冷却用ファン107を設け、前述玉軸受側の冷却用ファン107の外周部と固定子枠101との間には隙間を形成している。この隙間には同一傾斜が設けられており、前述回転子105を玉軸受方向に移動させた時に接触・保持する構造になっている。
【0018】
前述した円筒ころ軸受側の冷却用ファン106には平面を設けており、ベアリングブラケット104に加工されたネジ穴から挿入された押しボルト119と面接触できる構造になっている。
【0019】
回転子軸105(1)の軸端にはセンサギヤ117が取付けあり、前述センサギヤ117の回転速度を観測するための速度センサ118が玉軸受箱109に固定されている。
【0020】
このように構成された車両用主電動機100において、円筒ころ軸受112及び玉軸受113の交換を行う場合には、まず、油切り114、センサギヤ117と速度センサ118を取外す。その後、回転子105を玉軸受方向に移動させ、ベアリングブラケット104に設けられたネジ穴から押しボルト119を挿入後、円筒ころ軸受箱108と玉軸受箱109を取外し、円筒ころ軸受内輪112(1)を取外して軸受を交換する。
【0021】
回転子支持装置を使用しないで、軸受を交換する作業の詳細を、図3及び図4により詳細に説明する。なお、ここで、図3(a)は、油切り、センサギヤ、センサを取外した部分断面図、図3(b)は、回転子を玉軸受方向にずらした部分断面図、図3(c)は、ベアリングブラケットから押しボルトを挿入した部分断面図、図3(d)は、円筒ころ軸受箱及び玉軸受箱を取外した部分断面図、そして、図3(e)は、円筒ころ軸受の内輪を取外した部分断面図である。
【0022】
まず、図3(a)は、油切り114、センサギヤ117、速度センサ118を取外した状態を示している。この状態では、玉軸受側の冷却用ファン107の外周部と固定子枠101の間には隙間がある。
【0023】
図3(b)は、回転子105を玉軸受方向に移動させた状態を示している。前述の油切り114とセンサギヤ117を取外すことで軸方向の固定がなくなり、軸受箱109のフランジ面の取付け向きと円筒ころ軸受112の軸方向にずらすことができる構造のため、玉軸受方向のみ移動させることが可能になる。
【0024】
前述した回転子105を玉軸受方向へ移動させることで、玉軸受側の冷却用ファン107の外周部と固定子枠101との隙間が傾斜しているため、接触・保持することが可能になる。
【0025】
図3(c)と図4は、ベアリングブラケット104に設けられたネジ穴から少なくとも2本以上の押しボルト119を挿入した状態を示す。前述の押しボルト119を回して、円筒ころ軸受側の冷却用ファン106に矢印方向の力を加えることで、図3(c)の丸で示す玉軸受側の冷却用ファン107と固定子枠101の接触面の面圧を高められ、回転子105を固定子枠101に固定・支持することが可能になる。
【0026】
図3(d)は、円筒ころ軸受箱108と玉軸受箱109を取外した図を示す。回転子105を固定子枠101に固定・支持することで、円筒ころ軸受の外輪112(2)を設けた軸受箱108と玉軸受113を設けた軸受箱109を取外すことが可能になる。
【0027】
最後に図3(e)に示すように、円筒ころ軸受の内輪112(1)を取外し、軸受の取外しを完了する。
【0028】
軸受の再組立は、軸受の取外し作業の逆作業を実施することで組立てることができ、軸受の取外し、再組立を実施することで軸受の交換を完了する。
【0029】
次に、比較例として、添付の図5により、一般的な(即ち、従来技術になる)主電動機の大きさにする軸受箱と軸受箱のふたの構成を説明する。尚、この構成は、円筒ころ軸受側も玉軸受側も同じため、玉軸受側を例にとって説明する。
【0030】
図5(b)は、従来構造の玉軸受周りの概略図を示している。従来構造は、図5(a)に示す一般的な構造と比較して玉軸受箱109を固定子枠101より機外に取付けるため、軸方向に大型化する。
【0031】
図5(c)は、本構造の玉軸受周りの概略図を示している。本構造は、玉軸受箱109の取付け方法は、従来構造と同一としたが、玉軸受箱のふた111の取付け位置を機外側から機内側に変更することで、軸方向の大きさを一般的な主電動機と同等の大きさにすることを可能にした。
【0032】
以上の詳細な説明からも明らかなように、本発明になる電動機によれば、一般的な主電動機の大きさと構成部品で、軸受交換を簡単にした車両用主電動機を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
100…車両用主電動機、101…固定子枠部、102…固定子鉄心、103…固定子コイル、104…ベアリングブラケット部、105…回転子、105(1)…回転子軸、105(2)…回転子鉄心、106…円筒ころ軸受側の冷却用ファン部、107…玉軸受側の冷却用ファン部、108…円筒ころ軸受箱部、109…玉軸受箱部、110…円筒ころ軸受箱のふた部、111…玉軸受箱のふた部、112…円筒ころ軸受部、112(1)…円筒ころ軸受の内輪部、112(2)…円筒ころ軸受の外輪部、113…玉軸受部、114、115、116…油切り部、117…センサギヤ、118…速度センサ部、119…押しボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用主電動機であって、円筒型の固定子枠と固定子枠のフランジ面に接続されたベアリングブラケットと円筒ころ軸受側の冷却用ファンと玉軸受側の冷却用ファンが接続され、固定子枠の中心に配置された回転子軸を有し、かつ、前記回転子の両端に設けられた回転自在の軸受を有することを特徴とする車両用主電動機。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両用主電動機において、前記固定子枠の内部と前記玉軸受側の冷却用ファンの外周部を同一角度で傾斜させたことを特徴とする車両用主電動機。
【請求項3】
前記請求項2に記載の車両用主電動機において、更に、前記円筒ころ軸受側の冷却用ファンに押しボルトを接触させるフランジを設けたことを特徴とする車両用主電動機。
【請求項4】
前記請求項3に記載の車両用主電動機において、前記回転子を玉軸受方向にずらすことで、前記玉軸受側の冷却用ファンと前記固定子枠の傾斜部が接触かる保持されることを特徴とする車両用主電動機。
【請求項5】
前記請求項4に記載の車両用主電動機において、前記ベアリングブラケットに少なくとも2個以上の加工したネジ穴に、押しボルトを挿入した後回転させ、前記円筒ころ軸受側の冷却用ファンに接触させることで、前記回転子を玉軸受方向に押付け、回転子を固定子枠に固定することを特徴とする車両用主電動機。
【請求項6】
前記請求項5に記載の車両用主電動機において、円筒ころ軸受箱のふたと玉軸受箱のふたを機内側に取付けたことを特徴とする車両用主電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210088(P2012−210088A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74342(P2011−74342)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】