電動機
【課題】簡単な構造でコイルを効率よく冷却することができるトロイダル巻の電動機を提供する。
【解決手段】円環状に形成されたステータコア41と、インシュレータ50を介してステータコア41に導線35がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイル20と、を備えたステータ21と、ステータ21の径方向の内側に回転可能に配置されたロータ22と、を有するモータであって、ロータ22からステータ21に向かって径方向の外側に冷却媒体を供給可能とされ、隣接するコイル20,20間におけるステータ21の軸方向端面には、軸方向に立設されるとともにステータ21の周方向に広がり、供給された冷却媒体をコイル20に誘導する誘導板80が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】円環状に形成されたステータコア41と、インシュレータ50を介してステータコア41に導線35がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイル20と、を備えたステータ21と、ステータ21の径方向の内側に回転可能に配置されたロータ22と、を有するモータであって、ロータ22からステータ21に向かって径方向の外側に冷却媒体を供給可能とされ、隣接するコイル20,20間におけるステータ21の軸方向端面には、軸方向に立設されるとともにステータ21の周方向に広がり、供給された冷却媒体をコイル20に誘導する誘導板80が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池自動車やハイブリッド自動車、電気自動車など車両駆動用の電動機(モータ)を搭載した車両が次々と開発されている。電動機としては、軸線周りに回転自在に支持されるとともに、永久磁石が配設されたロータと、ロータの周囲に対向配置されるとともに、コイルが配されたステータとを備えたものが一般的である。ここで、導線の巻き回し方法としては、分布巻や集中巻、トロイダル巻等が知られている。
【0003】
ところで、電動機を駆動すると、ステータに巻き回されたコイルに電流が流れることによりコイルやステータコアが発熱し、電動機の特性の低下等に繋がる虞がある。そこで、コイルの温度上昇を抑制することを目的として、様々な冷却構造を有する電動機の提案がなされている。
例えば特許文献1では、回転子(本願のロータに相当)を包囲する管によって隔壁を設けてハウジング内を二つの空間に分離し、管の外側の空間には、巻線(本願のコイルに相当)を収容する流体漏れのないチャンバーを形成している。そして、チャンバー内を冷却媒体で満たし、冷却媒体を巻線に沿って移動させることにより、巻線を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−514493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のようにハウジング内に隔壁を設け、冷却媒体の漏れがないように封止されたシール構造を有するチャンバーは、その構造が複雑である。また、特許文献1において、チャンバーを形成するための隔壁は、固定子(本願のステータに相当)と回転子との間に設けられている。これにより、固定子と回転子とのエアギャップが隔壁の厚みだけ余計に必要となるので、電動機の効率の悪化や出力およびトルクの低下等の問題がある。
【0006】
そこで本発明は、簡単な構造でコイルを効率よく冷却することができるトロイダル巻の電動機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の電動機(例えば、実施形態におけるモータユニット10)は、円環状に形成されたステータコア(例えば、実施形態におけるステータコア41)と、インシュレータ(例えば、実施形態におけるインシュレータ50)を介して前記ステータコアに導線(例えば、実施形態における導線35)がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイル(例えば、本実施形態におけるコイル20)と、を備えたステータ(例えば、実施形態におけるステータ21)と、前記ステータの径方向(例えば、本実施形態におけるR方向)の内側に回転可能に配置されたロータ(例えば、実施形態におけるロータ22)と、を有する電動機であって、前記ロータから前記ステータに向かって前記径方向の外側に冷却媒体を供給可能とされ、隣接する前記コイル間における前記ステータの軸方向(例えば、本実施形態におけるZ方向)端面には、前記軸方向に立設されるとともに前記ステータの周方向(例えば、本実施形態におけるθ方向)に広がり、供給された前記冷却媒体を前記コイルに誘導する誘導板(例えば、実施形態における誘導板80)が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、コイル間において軸方向に立設されるとともにステータの周方向に広がり、供給された冷却媒体をコイルに誘導する誘導板が設けられている。これにより、ロータからステータに向かって径方向の外側に供給される冷却媒体のうち、コイル間に供給された冷却媒体は、コイル間をすり抜けることなく誘導板に当たってコイルに誘導される。したがって、誘導板により冷却媒体をコイルに誘導することができるので、コイルを効率よく冷却することができる。
【0008】
また、前記ロータは、前記ロータの中心を貫通する出力軸(例えば、実施形態における出力軸24)を備え、前記出力軸は、内部に設けられる冷却媒体流路(例えば、実施形態における冷却媒体流路75)と、外周面に開口し前記冷却媒体流路と連通する吐出孔(例えば、実施形態における吐出孔76)と、を有しており、前記ロータが回転すると、前記吐出孔から前記径方向の外側に前記冷却媒体が吐出されることが望ましい。
本発明によれば、出力軸は冷却媒体流路と連通する吐出孔を有しているので、ロータが回転することにより、遠心力で吐出孔から冷却媒体が吐出される。このように、簡単な構造により、ロータからステータに向かって径方向の外側に冷却媒体を吐出することができる。また、出力軸の内部が冷却媒体流路となっているので、冷却流路を構成するための配管等が必要ない。したがって、電動機の重量やコストの増加を抑制することができる。
【0009】
また、前記誘導板は、前記軸方向から見て、前記径方向の内側を頂点とする略V字形状に形成されていることが望ましい。
コイル間に吐出された冷却媒体は、略V字形状に形成された誘導板の頂点に当たる。その後、径方向に対する垂直面から径方向外側に向かって傾斜している誘導板に沿って、冷却媒体がコイルに誘導される。したがって本発明によれば、確実にコイルに冷却媒体を誘導することができる。
【0010】
また、前記誘導板は、前記径方向に複数設けられていることが望ましい。
本発明によれば、冷却媒体が径方向の内側の誘導板に当たることなくすり抜けても、径方向の外側にさらに設けられた誘導板に当たる。したがって、確実にコイルに冷却媒体を誘導することができる。
【0011】
また、前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅は、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅よりも広いことが望ましい。
また、前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さは、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さよりも高いことが望ましい。
本発明によれば、径方向の内側に配置される誘導板よりも広い面を有する誘導板を径方向の外側に配置しているので、冷却媒体が径方向の内側の誘導板に当たることなくすり抜けても、確実に径方向の外側の誘導板に冷却媒体を当てることができる。したがって、より確実にコイルに冷却媒体を誘導することができる。さらに、径方向の内側および外側に配置されるそれぞれの誘導板の幅および高さを変更することにより、径方向の内側および外側に配置されるそれぞれの誘導板に当てる冷却媒体の量を調整することができる。したがって、コイルの内径側および外径側に供給する冷却媒体の量を、誘導板の面積を変えることで調整することができるので、コイルを効率よく冷却することができる。
【0012】
また、前記誘導板は非磁性体であり、前記ステータコアと別部材で形成されていることが望ましい。
本発明によれば、誘導板を非磁性体で形成することにより、磁束が誘導板を通過するのを抑制することができる。これにより、ステータコアから誘導板に磁束が漏れるのを防止することができる。また、誘導板をステータコアと別部材で形成することにより、所望の形状の誘導板を容易に形成することができる。
【0013】
また、前記ステータは誘導部材を備えており、前記誘導部材は、前記誘導板と、前記コイル間の前記ステータコアの前記軸方向における側面に密着する底面部(例えば、実施形態における底面部82)と、を有しており、前記誘導板は前記底面部から軸方向に立設されていることが望ましい。
本発明によれば、ステータコアとは別部材の誘導部材を備えているので、所望の形状の誘導板を容易に形成することができる。また、底面部はステータコアの軸方向の側面と密着しているので、底面部からステータコアの熱を誘導部材に吸収することができる。これにより、ステータコアの熱を効率よく放熱することができる。
【0014】
また、前記底面部には、前記誘導板の前記径方向の内側に貫通孔(例えば、実施形態における貫通孔84)が形成されていることが望ましい。
本発明によれば、貫通孔からステータコアが露出しているので、貫通孔に冷却媒体を供給することにより、直接ステータコアを冷却することができる。したがって、冷却性能を向上させることができる。
【0015】
また、前記誘導部材は前記インシュレータと一体的に形成されていることが望ましい。
本発明によれば、部品点数を削減できるので、低コストにインシュレータおよび誘導部材を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コイル間において軸方向に立設されるとともにステータの周方向に広がり、供給された冷却媒体をコイルに誘導する誘導板が設けられている。これにより、ロータからステータに向かって径方向の外側に供給される冷却媒体のうち、コイル間に供給された冷却媒体は、コイル間をすり抜けることなく誘導板に当たってコイルに誘導される。したがって、誘導板により冷却媒体をコイルに誘導することができるので、コイルを効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両用電動機の概略構成断面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】第1実施形態のステータの斜視図である。
【図4】ステータの内周側から見たときのインシュレータの斜視図である。
【図5】ステータの外周側から見たときのインシュレータの斜視図である。
【図6】コイルへの給配電構造の説明図である。
【図7】ステータホルダの斜視図である。
【図8】第1実施形態の冷却媒体の供給の説明図であり、図8(a)は誘導板に冷却媒体が吐出されたときの説明図であり、図8(b)は内周側スロットに冷却媒体が吐出されたときの説明図である。
【図9】第1実施形態の変形例の説明図である。
【図10】第2実施形態の説明図であり、図10(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図10(b)は図10(a)のB−B線における断面図である。
【図11】第3実施形態の説明図であり、図11(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図11(b)は図11(a)のC−C線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態の電動機(以下「モータ」という。)につき図面を参照して説明する。本実施形態では車両に搭載される車両用電動機(以下「モータユニット」という。)を用いて説明する。また、以下の説明では、モータの径方向をR方向、モータの軸方向をZ方向、モータの周方向をθ方向と定義し、必要に応じて、これらR、Zおよびθの円筒座標系を使用して説明する。なお、Z方向の一方側を+Z側とし、他方側を−Z側とする。また、R方向の外周側を+R側とし、内周側を−R側とする。
【0019】
図1はモータユニット10の概略構成断面図である。
図1に示すように本実施形態のモータユニット10は、ステータ21およびロータ22を備えたモータ23がモータハウジング11内に収容されている。モータハウジング11の+Z側には、モータ23の出力軸24の回転数を検出する回転センサ(不図示)を収容するセンサハウジング13が締結されている。また、モータハウジング11の−Z側には、モータ23の出力軸24からの動力を伝達するギヤなどの動力伝達部(不図示)を収容するミッションハウジング12が締結されている。なお、モータ23の出力軸24は、モータユニット10の動力伝達部を介して車両の駆動軸に連結されている。この駆動軸が回転することにより、駆動軸に連結された車輪が回転して、車両を移動させることができるように構成されている。
【0020】
(モータハウジング)
モータハウジング11は、アルミ等からなる部材であり、ダイキャスト等により成型される。モータハウジング11は、モータ23を収容可能な略有底筒状に形成されている。モータハウジング11におけるセンサハウジング13が締結される+Z側は、出力軸24が挿通される貫通孔16を除いて壁部17で閉塞されている。一方、モータハウジング11におけるミッションハウジング12が締結される−Z側には、モータ23を挿入するための略円形の開口15が形成されている。また、モータハウジング11の内周面18には、−Z側から+Z側に向けて縮径する段差部19が形成されている。この段差部19には、ステータ21を支持固定するためのステータホルダ30が締結されるように構成されている。
【0021】
また、モータハウジング11とミッションハウジング12との境界部における−Z側には、モータ23の出力軸24の一端を回転自在に支持するベアリング26が設けられ、モータハウジング11とセンサハウジング13との境界部におけるモータハウジング11の貫通孔16には、モータ23の出力軸24の+Z側を回転自在に支持するベアリング27が設けられている。
【0022】
(出力軸)
図2は図1のA−A線における断面図である。
図2に示すように、出力軸24がモータハウジング11の略中央に配されている。
出力軸24は、ステンレスや鉄等からなる中空の略円筒状の部材であり、鍛造や鋳造、機械加工等により形成される。出力軸24の内部は空洞となっており、冷却媒体流路75となっている。これにより、モータ内部には冷却流路を構成するための配管等が必要ないので、モータの重量やコストの増加を抑制することができる。また、出力軸24の+Z側には、外周面に開口し、出力軸24の内部の冷却媒体流路75と連通する吐出孔76が複数(本実施形態では対称に2箇所)形成されている。冷却媒体は不図示の供給源から供給される。供給源から供給された冷却媒体は冷却媒体流路75を通り、ロータが回転することにより発生する遠心力によって、吐出孔76から+R側に吐出される。なお、冷却媒体は例えば潤滑油が使用される。
なお、本実施形態では出力軸24の+Z側にのみ吐出孔76を形成しているが、出力軸24の−Z側に形成してもよい。
【0023】
(ロータ)
出力軸24の外周面にはロータ22が取り付けられている。
ロータ22は、略円盤状の電磁鋼板等の磁性板からなる部材であり、プレスにより成型された磁性板を複数積層することにより形成される。このとき、各磁性板を重ねてカシメることにより、各磁性板には凸部(ダボ)が形成される。このダボにより各磁性板を連結して積層固定することができる。なお、各磁性板を接着することにより積層してもよい。
ロータ22には、出力軸24を挿通させるための貫通孔31が形成されている。ロータ22は圧入により出力軸24に固定される。したがって、貫通孔31は、出力軸24の外径よりも若干小さくなるように形成される。ロータ22が軸中心に回転することにより、前述の出力軸24も同時に軸中心に回転する。
ロータ22の外周縁近傍には、ステータ21と対向するように永久磁石29がθ方向に沿って複数(本実施形態では、8個)設けられている。なお、ロータ22の外周側にN極が着磁された永久磁石29Nと、ロータ22の外周側にS極が着磁された永久磁石29Sとが、ロータ22のθ方向に交互に配されている。
【0024】
(端面板)
さらに、出力軸24の外周面には端面板25が取り付けられ、ロータ22のZ方向における両端面に配置されている。端面板25はステンレス等の非磁性体からなり、プレスや機械加工等によって形成される。端面板25は、ロータ22と略同一形状の略円盤状の部材であり、出力軸24を挿通させるための貫通孔が形成されている。端面板25はロータ22とともに圧入により出力軸24に固定される。端面板25の外径は、ロータ22と略同一か若干小さく形成されており、なおかつZ方向からみて永久磁石29を覆うように形成されている。これにより、ステータ21とロータ22とのエアギャップを確保しつつ、永久磁石29がロータ22から脱落するのを防止している。さらに、端面板25は非磁性体からなるので、永久磁石29を覆っても、磁束漏れを増加させることはない。
本実施形態では、+Z側の端面板25におけるロータ22との合わせ面に、溝部25aが形成されている。溝部25aは、R方向から見て略矩形状をしており、溝部25aの深さおよび幅は吐出孔76の直径と略同一に形成される。また、溝部25aは、出力軸24の吐出孔76に対応した位置からR方向に沿って端面板の外周まで延設されている。そして、後述するように、吐出孔76から吐出された冷却媒体は、溝部25aを通り、ステータ21に向かって+R側に吐出される。
なお、本実施形態では、出力軸24の+Z側に形成された吐出孔76に対応して、+Z側の端面板25にのみ溝部25aを形成しているが、出力軸24の−Z側にも吐出孔が形成された場合には、−Z側の端面板にも溝部を形成する。
【0025】
(ステータ)
図2に示すように、本実施形態のステータ21は、円環状に形成されたステータコア41と、インシュレータ50を介してステータコア41に導線35がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイル20と、を備えている。
【0026】
(ステータコア)
本実施形態のステータコア41は、分割コア45を円環状に複数個(本実施形態では24個)連結することにより形成されている。各分割コアには、ティース32およびヨーク33がZ方向から見て略L字状になるように直交して配置されている。
図3は、本実施形態の分割コア45の斜視図である。
図3に示すように、分割コア45は、電磁鋼板等の磁性板により形成された分割コア片43からなる部材であり、前述のロータと同様に、各分割コア片43をカシメて積層固定することにより形成される。本実施形態では、ダボ44は、ティース32とヨーク33との境界部における外周縁近傍と、ヨーク33における隣接する分割コア45との境界部の外周縁近傍と、の2箇所に形成されている。2箇所のダボ44でカシメることにより、分割コア片43が位置ずれするのを防止している。
また、ステータコア41を分割コア45により構成することで、後述するインシュレータを分割コア45に装着して導線を巻き回す際に、分割コアごとに導線を巻き回すことができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0027】
さらに、ステータコア41は突起部36を備えている。
図2に示すように本実施形態の突起部36は、コイル20,20間において、ステータコア41のZ方向から見て略矩形状に、ステータコア41の+R側に突出して形成されている。突起部36には、Z方向に貫通する肉抜き部37が形成されている。本実施形態の肉抜き部37は、Z方向から見て、ステータコア41のθ方向を長軸方向としR方向を短軸方向とした略長円形状に形成されている。この肉抜き部37によってフラックスバリアが形成される。
【0028】
(インシュレータ)
図4はステータの内周側から見たときのインシュレータ50の斜視図である。
インシュレータ50は、ステータコアに装着され、ヨークおよびティースの周面を覆う部材である。インシュレータ50は、例えば樹脂などの絶縁部材からなる部材であり、インジェクション成型により形成される。
図4に示すように、インシュレータ50は、分割コアのヨークの周面を覆う貫通孔51が形成された導線巻付部52と、導線巻付部52のθ方向における両端の開口縁部からフランジ状に立設され、インシュレータ50の内周側、外周側および−Z側に形成された一対の壁部53,54とを備えている。
導線巻付部52の内周壁57および外周壁58にはガイド溝59が形成されており、導線が案内されて巻き回される。−Z側の壁部53,54には、導線の端部を係止するための係止溝63,64がそれぞれ形成されている。例えば巻き始めに導線の一端を係止溝63に引っ掛けるように係止した後、導線巻付部52に導線を所定の巻数になるように巻付け、巻き終わった導線の他端を係止溝64に係止することで、インシュレータ50にコイルを容易に形成することができる。このように、インシュレータ50を介して分割コアのヨークに導線を巻き回すことにより、コイルとステータコアとの短絡を防止しつつ、トロイダル状にコイルを形成することができる。
【0029】
図4に示すように、インシュレータ50の−Z側における内周側には、中性点バスリング68(図9参照)を挿入するための挿入溝69が形成されている。挿入溝69の幅は、中性点バスリング68の導線の直径と略同一かそれよりも若干広く形成されている。挿入溝69の深さは、中性点バスリング68の導線の直径よりも深く形成されている。挿入溝69は、Z方向から見て略円弧状に形成されており、インシュレータ50を分割コアに装着して分割コアを連結した際に、ステータコア41のティースの内周面に沿った略円環形状となる。この複数の挿入溝69で形成された略円環形状の直径は、中性点バスリング68の直径と略同一である。中性点バスリング68を挿入溝69に挿入することにより、中性点バスリング68をステータコア41のティースの内周面に沿ってインシュレータ50の−Z側に配置することができる。
【0030】
図5はステータの外周側から見たときのインシュレータ50の斜視図である。
図5に示すように、インシュレータ50の+Z側には、ティースを覆うように形成された底面部82と、底面部82から+Z側に立設された誘導板80とが設けられている。
底面部82は、導線巻付部52の+Z側面と同一平面で形成されており、インシュレータ50をステータコアに装着すると、底面部82の−Z側面はステータコアの+Z側面と密着する。したがって、底面部82からステータコアの熱を吸収することができる。
【0031】
誘導板80は、インシュレータ50における底面部80のR方向およびθ方向の略中央において、底面部82から+Z側に立設されるとともにθ方向に広がるように形成されている。誘導板80は、R方向から見て略矩形状をしており、平板状に形成されている。図1に示すように、誘導板80のZ方向における高さは、インシュレータ50表面からのコイル20のZ方向における高さと略同一である。また、誘導板80のθ方向における幅は、図2に示すように、誘導板80のθ方向における両側のコイル20,20と若干の隙間が開くように、コイル20,20の間隔よりも若干狭い幅で形成される。なお、コイル20のターン数や導線35の線径等により決定されるコイル20のZ方向の高さおよびθ方向の幅に応じて、誘導板80の高さおよび幅が適宜決定される。前述の端面板25の溝部25aからステータ21に向かって+R側に吐出された冷却媒体は、誘導板80に誘導されてコイル20に供給される。なお、冷却媒体の供給の詳細については後述する。
【0032】
(コイルへの給配電構造)
図6はコイルへの給配電構造の説明図である。
上述のインシュレータにコイル20を巻き回した後、分割コア45を所定数(本実施形態では、24個)円環状に連結し、後述するステータホルダ30に固定することにより、円環状のステータ21が形成される。そして、図6に示すように、U相、V相およびW相を構成するコイル20がθ方向に順に配され、各コイル20を構成する導線35の両端部が3相配電バスリング67または中性点バスリング68にそれぞれ接続されている。
【0033】
具体的には、U相のコイルU1の一端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、U相のコイルU1の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルU2の他端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、コイルU2の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルU3の一端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、コイルU3の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。以降、同様の順序で接続され、コイルU8の他端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、コイルU2の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。
【0034】
V相のコイルV1の他端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、V相のコイルV1の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルV2の一端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、コイルV2の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルV3の他端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、コイルV3の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。以降、同様の順序で接続され、コイルV8の一端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、コイルV8の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。
【0035】
W相のコイルW1の一端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、W相のコイルW1の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルW2の他端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、コイルW2の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルW3の一端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、コイルW3の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。以降、同様の順序で接続され、コイルW8の他端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、コイルW8の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。
【0036】
ここで、コイル20の導線35の巻回方向は全て同じ方向になるように構成されている。そして、コイルU1の電流の流れる方向と、コイルU2の電流の流れる方向とは逆向きになるように、コイル20に各バスリング67,68が接続されている。このように本実施形態では、U相、V相およびW相の各コイル20が並列接続されている。このように構成することにより、各相を流れる電流は並列接続された各コイルに分配されるため、コイル20の巻数は多く要るが細い導線35を用いることができる。つまり、占積率の高いコイル20を形成することができる。
このようにθ方向に順に配されたU相、V相およびW相のコイルの励磁を順次切り替えて回転磁界を発生させ、ステータ21とロータとの間に磁気的な吸引力および反発力を発生させることによりロータを回転させることができる。
【0037】
(ステータホルダ)
図7はステータホルダの斜視図である。
ステータホルダ30は、鉄等からなる円筒状の部材であり、例えばプレスにより成型される。また、ステータホルダ30の−Z側には、+R側へ突出したフランジ部34が形成されている。また、フランジ部34にはボルト孔47が複数(本実施形態では、4個)形成されている。これにより、ボルトを用いてモータハウジングにステータホルダ30を締結固定することができる。
【0038】
以下に、ステータホルダ30およびステータの固定について詳述する。
図2に戻り、まず分割コア45を所定個数(本実施形態では、24個)円環状に連結することにより、円環状のステータ21を形成する。その後、前述のステータホルダ30の円筒部30aに、ステータコア41の突起部36を圧入してステータ21を固定する。ステータホルダ30およびステータコア41は同じ鉄系の材料で形成されるので、略同一の線膨張係数を有している。したがって、高温および低温環境下でもステータホルダ30およびステータコア41の固定状態が緩むことはない。なお、ステータホルダ30とステータ21との固定方法は圧入に限らず、例えば焼き嵌めでもよい。
【0039】
上述のように、ステータホルダ30にステータ21を圧入等により固定した状態で、ステータホルダのフランジ部34のボルト孔47にボルトを挿通して、ステータホルダ30をモータハウジング11に締結固定する。ステータホルダ30を介してステータ21をモータハウジング11に固定しているので、ステータ21の振動がモータハウジング11に伝達するのを抑制することができ、振動や騒音等を低減することができる。
【0040】
ここで、本実施形態におけるステータコア41の突起部36には、前述のとおり、Z方向に貫通する肉抜き部37が形成されており、これにより、ステータコア41とステータホルダ30との間の磁気抵抗が増加する。すなわち、肉抜き部37はフラックスバリアとして機能するので、ステータコア41からステータホルダ30への磁束漏れを抑制することができる。さらに、圧入や焼き嵌め等の手法によりステータコア41の突起部36の外周面36aをステータホルダ30の内周面30bに接触させて固定すると、肉抜き部37によって突起部36は−R側に弾性変形する。これにより、ステータコア41およびステータホルダ30の寸法誤差を吸収しつつ、圧入や焼き嵌めにより固定することができる。
【0041】
(冷却媒体の供給)
図8は本実施形態の冷却媒体の供給作用の説明図であり、図8(a)は誘導板80に冷却媒体が吐出されたときの説明図であり、図8(b)は内周側スロット38に冷却媒体が吐出されたときの説明図である。
図8に示すように、ロータ22が回転すると、不図示の供給源から供給された冷却媒体は、出力軸24の内部の冷却媒体流路75に流入し、ロータ22の回転による遠心力により出力軸24の吐出孔76から+R側に向かって吐出される。その後、冷却媒体は、吐出孔76と連通する端面板25の溝部25aを通って、ロータ22からステータ21に向かって+R側に吐出される。
図8(a)に示すように、コイル20,20間に吐出された冷却媒体は、インシュレータ50に形成された誘導板80に当たる。ここで、誘導板80は、前述のとおりコイル20,20間において、θ方向に広がり形成されている。このため、誘導板80と当たった冷却媒体は、誘導板80の表面に沿って流れ、誘導板80のθ方向における両側方に配置されたコイル20に向けて誘導される。このように誘導板80が設けられているので、コイル20,20間に冷却媒体が吐出されても、冷却媒体はコイル20,20間をすり抜けることなくコイル20に誘導される。ここで、前述のとおりインシュレータ50の内周側、外周側および−Z側には一対の壁部53,54(図5参照)が形成されているが、インシュレータ50の+Z側には壁部53,54は形成されていない。これにより、誘導板80とコイル20との間には障壁がないので、誘導板80により冷却媒体をコイル20に誘導することができる。
なお、ティース32,32間に吐出された冷却媒体は、図8(b)に示すように、ティース32,32間における内周側スロット38のコイル20に直接供給される。
そして、冷却媒体は、コイル20に浸透してコイル20を冷却した後、モータハウジングの底部に落下する。その後、モータハウジングの底部から回収され、再度コイル20に供給される。
【0042】
本実施形態によれば、コイル20,20間において+Z側に立設されるとともにステータ21のθ方向に広がり、供給された冷却媒体をコイル20に誘導する誘導板80が設けられている。これにより、ロータ22からステータ21に向かって+R側に供給される冷却媒体のうち、コイル20,20間に供給された冷却媒体は、コイル20,20間をすり抜けることなく誘導板80に当たってコイル20に誘導される。したがって、誘導板80により冷却媒体をコイル20に誘導することができるので、コイル20を効率よく冷却することができる。
【0043】
(第1実施形態の変形例、V字形状の誘導板)
図9は第1実施形態の変形例の説明図である。
第1実施形態の誘導板はZ方向から見て直線上に形成されていたが、第1実施形態の変形例の誘導板80は、図9に示すように、Z方向から見て−R側を頂点とする略V字形状に形成されている点で異なっている。
本実施形態では、誘導板80の壁は、R方向に対する垂直面から+R側に向かって傾斜しており、誘導板80のθ方向における両側のコイル20,20と若干の隙間が開くように、コイル20,20の間隔よりも若干狭い幅で形成される。また、誘導板80の頂点81は、底面部82のR方向における略中央に形成される。
コイル20,20間に吐出された冷却媒体は、略V字形状に形成された誘導板80の頂点81に当たる。誘導板80は、R方向に対する垂直面から+R側に向かって傾斜しているので、頂点81に当たった冷却媒体は、冷却媒体の吐出方向に反射することなく、誘導板80に沿ってコイル20に誘導される。したがって本実施形態の変形例によれば、確実にコイル20に冷却媒体を誘導することができる。
なお、誘導板80のR方向における位置および誘導板80の傾斜度合いを変更することにより、コイル20に対する冷却媒体の供給位置を変更することができる。例えば、R方向に対する垂直面から+R側に向かって誘導板80の傾斜を大きくすることにより、コイル20の外周側により多く冷却媒体を供給することができる。
【0044】
(第2実施形態、複数設けられた誘導板)
図10は第2実施形態の説明図であり、図10(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図10(b)は図10(a)のB−B線における断面図である。
第1実施形態および第1実施形態の変形例の誘導板は、1個のインシュレータにつきR方向の1箇所に設けられていたが、本実施形態の誘導板80は、図10に示すように、1個のインシュレータにつきR方向の複数箇所に設けられている点で、第1実施形態および第1実施形態の変形例と異なっている。
図10に示すように本実施形態の誘導板80は、1個のインシュレータ50につきR方向に例えば2箇所設けられている。具体的には、インシュレータ50の底面部82における−R側には第1誘導板80aが設けられており、インシュレータ50の底面部82における+R側には第2誘導板80bが設けられている。第1誘導板80aおよび第2誘導板80bは、ともに第1実施形態の変形例と同様に、Z方向から見て−R側を頂点とする略V字形状に形成されている。
さらに本実施形態では、図10(a)に示すように、第2誘導板80bのθ方向の幅は、第1誘導板80aのθ方向の幅よりも広く形成されている。また、図10(b)に示すように、第2誘導板80bのZ方向の高さは、−R側に配置される第1誘導板80aのZ方向の高さよりも高く形成されている。
【0045】
図10(b)に示すように、ロータ22からステータ21に向かって+R側に吐出された冷却媒体が、−R側の第1誘導板80aに当たることなくすり抜けても、+R側にさらに設けられた第2誘導板に当たる。したがって、コイル20,20間に供給された冷却媒体は、コイル20,20間をすり抜けることなく、第1誘導板80aまたは第2誘導板80bのいずれか一方に当たってコイル20に誘導される。これにより、確実にコイル20に冷却媒体を誘導することができる。また、本実施形態のように、第1誘導板80aよりも広い面を有する第2誘導板80bを+R側に配置することにより、確実にコイル20に冷却媒体を誘導することができる。
なお、前述と同様に、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bのR方向における位置および傾斜度合いを変更することにより、コイル20に対する冷却媒体の供給位置を変更することができる。また、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bの幅および高さを変更することにより、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bに当てる冷却媒体の量を調整することができる。例えば、第1誘導板80aの面積を小さくすることにより、冷却媒体は第1誘導板80aをすり抜けやすくなり、多くの冷却媒体が第2誘導板80bに当たる。したがって、コイル20の−R側よりもコイル20の+R側に多くの冷却媒体が供給される。このように、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bの面積を変えることにより、コイル20の+R側および−R側に供給する冷却媒体の量を調整することができるので、コイル20を効率よく冷却することができる。
【0046】
(第3実施形態、貫通孔を形成)
図11は第3実施形態の説明図であり、図11(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図11(b)は図11(a)のC−C線における断面図である。
本実施形態では、図11に示すように、底面部82に貫通孔84a,84bが形成されている点で第1実施形態および第2実施形態と異なっている。
図11(a)に示すように、本実施形態では、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bの−R側に、それぞれ第1貫通孔84aおよび第2貫通孔84bが形成されている。各貫通孔84a,84bは底面部82を貫通しており、各貫通孔84a,84bからはステータコア41が露出している。本実施形態の各貫通孔84a,84bのθ方向における幅は、各誘導板80a,80bのθ方向における幅と略同一に形成されている。また、各貫通孔84a,84bのR方向における長さは、底面部82のR方向における長さの約1/4程度に形成されている。なお、各貫通孔84a,84bのR方向における長さは、各誘導板80a,80bのZ方向における高さに比例して変化させてもよい。各貫通孔80a,80bのθ方向における幅およびR方向における長さによりステータコア41の露出面積が決定され、この露出面積は、ステータコア41の発熱量や要求される冷却能力等により適宜決定される。
図11(b)に示すように、+R側に吐出された冷却媒体は各誘導板80a,80bに当たる。このとき、冷却媒体は各誘導板80a,80bに沿ってコイル20に誘導されるが、一部の冷却媒体は各貫通孔84a,84bに供給された後、コイル20に誘導される。貫通孔84a,84bからはステータコア41が露出しているので、貫通孔84a,84bに供給された冷却媒体は、直接ステータコア41の表面を冷却することができる。したがって、冷却性能を向上させることができる。
【0047】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
第1実施形態から第3実施形態のモータでは、冷却媒体として潤滑油を用いている。しかし、冷却媒体は潤滑油に限定されることはなく、例えばロータにフィンを形成して空気を送風することにより、空気を冷却媒体としてもよい。ロータが回転することにより、ロータからステータに向かって径方向の外側に冷却風を送風することができ、誘導板により冷却風をコイルに誘導することができる。
【0048】
第1実施形態から第3実施形態の電動機では、ミッションケース側に3相配電バスリングおよび中性点バスリングを設け、センサハウジング側にのみ誘導板を設けているが、ミッションケース側にも誘導板を設けてもよい。ただし、ミッションケース側に誘導板を設ける場合には、3相配電バスリングおよび中性点バスリングの位置を考慮して設計する必要がある。
【0049】
第1実施形態から第3実施形態の電動機では、インシュレータと誘導板とが一体成型されているが、インシュレータとは別部品として誘導板を形成してもよい。具体的には、例えば樹脂等の非磁性体を用いて、誘導板および底部を備えた誘導部材を形成してもよい。ただし、誘導板とインシュレータとを一体成型することにより、金型や部品点数の削減が可能となり低コストとなる点で本実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0050】
10・・・モータユニット(電動機) 20・・・コイル 21・・・ステータ 22・・・ロータ 24・・・出力軸 30・・・ステータホルダ 32・・・ティース 33・・・ヨーク 35・・・導線 41・・・ステータコア 50・・・インシュレータ 75・・・冷却媒体流路 76・・・吐出孔 80,80a,80b・・・誘導板 82・・・底面部 84a,84b・・・貫通孔
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池自動車やハイブリッド自動車、電気自動車など車両駆動用の電動機(モータ)を搭載した車両が次々と開発されている。電動機としては、軸線周りに回転自在に支持されるとともに、永久磁石が配設されたロータと、ロータの周囲に対向配置されるとともに、コイルが配されたステータとを備えたものが一般的である。ここで、導線の巻き回し方法としては、分布巻や集中巻、トロイダル巻等が知られている。
【0003】
ところで、電動機を駆動すると、ステータに巻き回されたコイルに電流が流れることによりコイルやステータコアが発熱し、電動機の特性の低下等に繋がる虞がある。そこで、コイルの温度上昇を抑制することを目的として、様々な冷却構造を有する電動機の提案がなされている。
例えば特許文献1では、回転子(本願のロータに相当)を包囲する管によって隔壁を設けてハウジング内を二つの空間に分離し、管の外側の空間には、巻線(本願のコイルに相当)を収容する流体漏れのないチャンバーを形成している。そして、チャンバー内を冷却媒体で満たし、冷却媒体を巻線に沿って移動させることにより、巻線を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−514493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のようにハウジング内に隔壁を設け、冷却媒体の漏れがないように封止されたシール構造を有するチャンバーは、その構造が複雑である。また、特許文献1において、チャンバーを形成するための隔壁は、固定子(本願のステータに相当)と回転子との間に設けられている。これにより、固定子と回転子とのエアギャップが隔壁の厚みだけ余計に必要となるので、電動機の効率の悪化や出力およびトルクの低下等の問題がある。
【0006】
そこで本発明は、簡単な構造でコイルを効率よく冷却することができるトロイダル巻の電動機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の電動機(例えば、実施形態におけるモータユニット10)は、円環状に形成されたステータコア(例えば、実施形態におけるステータコア41)と、インシュレータ(例えば、実施形態におけるインシュレータ50)を介して前記ステータコアに導線(例えば、実施形態における導線35)がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイル(例えば、本実施形態におけるコイル20)と、を備えたステータ(例えば、実施形態におけるステータ21)と、前記ステータの径方向(例えば、本実施形態におけるR方向)の内側に回転可能に配置されたロータ(例えば、実施形態におけるロータ22)と、を有する電動機であって、前記ロータから前記ステータに向かって前記径方向の外側に冷却媒体を供給可能とされ、隣接する前記コイル間における前記ステータの軸方向(例えば、本実施形態におけるZ方向)端面には、前記軸方向に立設されるとともに前記ステータの周方向(例えば、本実施形態におけるθ方向)に広がり、供給された前記冷却媒体を前記コイルに誘導する誘導板(例えば、実施形態における誘導板80)が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、コイル間において軸方向に立設されるとともにステータの周方向に広がり、供給された冷却媒体をコイルに誘導する誘導板が設けられている。これにより、ロータからステータに向かって径方向の外側に供給される冷却媒体のうち、コイル間に供給された冷却媒体は、コイル間をすり抜けることなく誘導板に当たってコイルに誘導される。したがって、誘導板により冷却媒体をコイルに誘導することができるので、コイルを効率よく冷却することができる。
【0008】
また、前記ロータは、前記ロータの中心を貫通する出力軸(例えば、実施形態における出力軸24)を備え、前記出力軸は、内部に設けられる冷却媒体流路(例えば、実施形態における冷却媒体流路75)と、外周面に開口し前記冷却媒体流路と連通する吐出孔(例えば、実施形態における吐出孔76)と、を有しており、前記ロータが回転すると、前記吐出孔から前記径方向の外側に前記冷却媒体が吐出されることが望ましい。
本発明によれば、出力軸は冷却媒体流路と連通する吐出孔を有しているので、ロータが回転することにより、遠心力で吐出孔から冷却媒体が吐出される。このように、簡単な構造により、ロータからステータに向かって径方向の外側に冷却媒体を吐出することができる。また、出力軸の内部が冷却媒体流路となっているので、冷却流路を構成するための配管等が必要ない。したがって、電動機の重量やコストの増加を抑制することができる。
【0009】
また、前記誘導板は、前記軸方向から見て、前記径方向の内側を頂点とする略V字形状に形成されていることが望ましい。
コイル間に吐出された冷却媒体は、略V字形状に形成された誘導板の頂点に当たる。その後、径方向に対する垂直面から径方向外側に向かって傾斜している誘導板に沿って、冷却媒体がコイルに誘導される。したがって本発明によれば、確実にコイルに冷却媒体を誘導することができる。
【0010】
また、前記誘導板は、前記径方向に複数設けられていることが望ましい。
本発明によれば、冷却媒体が径方向の内側の誘導板に当たることなくすり抜けても、径方向の外側にさらに設けられた誘導板に当たる。したがって、確実にコイルに冷却媒体を誘導することができる。
【0011】
また、前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅は、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅よりも広いことが望ましい。
また、前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さは、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さよりも高いことが望ましい。
本発明によれば、径方向の内側に配置される誘導板よりも広い面を有する誘導板を径方向の外側に配置しているので、冷却媒体が径方向の内側の誘導板に当たることなくすり抜けても、確実に径方向の外側の誘導板に冷却媒体を当てることができる。したがって、より確実にコイルに冷却媒体を誘導することができる。さらに、径方向の内側および外側に配置されるそれぞれの誘導板の幅および高さを変更することにより、径方向の内側および外側に配置されるそれぞれの誘導板に当てる冷却媒体の量を調整することができる。したがって、コイルの内径側および外径側に供給する冷却媒体の量を、誘導板の面積を変えることで調整することができるので、コイルを効率よく冷却することができる。
【0012】
また、前記誘導板は非磁性体であり、前記ステータコアと別部材で形成されていることが望ましい。
本発明によれば、誘導板を非磁性体で形成することにより、磁束が誘導板を通過するのを抑制することができる。これにより、ステータコアから誘導板に磁束が漏れるのを防止することができる。また、誘導板をステータコアと別部材で形成することにより、所望の形状の誘導板を容易に形成することができる。
【0013】
また、前記ステータは誘導部材を備えており、前記誘導部材は、前記誘導板と、前記コイル間の前記ステータコアの前記軸方向における側面に密着する底面部(例えば、実施形態における底面部82)と、を有しており、前記誘導板は前記底面部から軸方向に立設されていることが望ましい。
本発明によれば、ステータコアとは別部材の誘導部材を備えているので、所望の形状の誘導板を容易に形成することができる。また、底面部はステータコアの軸方向の側面と密着しているので、底面部からステータコアの熱を誘導部材に吸収することができる。これにより、ステータコアの熱を効率よく放熱することができる。
【0014】
また、前記底面部には、前記誘導板の前記径方向の内側に貫通孔(例えば、実施形態における貫通孔84)が形成されていることが望ましい。
本発明によれば、貫通孔からステータコアが露出しているので、貫通孔に冷却媒体を供給することにより、直接ステータコアを冷却することができる。したがって、冷却性能を向上させることができる。
【0015】
また、前記誘導部材は前記インシュレータと一体的に形成されていることが望ましい。
本発明によれば、部品点数を削減できるので、低コストにインシュレータおよび誘導部材を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コイル間において軸方向に立設されるとともにステータの周方向に広がり、供給された冷却媒体をコイルに誘導する誘導板が設けられている。これにより、ロータからステータに向かって径方向の外側に供給される冷却媒体のうち、コイル間に供給された冷却媒体は、コイル間をすり抜けることなく誘導板に当たってコイルに誘導される。したがって、誘導板により冷却媒体をコイルに誘導することができるので、コイルを効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両用電動機の概略構成断面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】第1実施形態のステータの斜視図である。
【図4】ステータの内周側から見たときのインシュレータの斜視図である。
【図5】ステータの外周側から見たときのインシュレータの斜視図である。
【図6】コイルへの給配電構造の説明図である。
【図7】ステータホルダの斜視図である。
【図8】第1実施形態の冷却媒体の供給の説明図であり、図8(a)は誘導板に冷却媒体が吐出されたときの説明図であり、図8(b)は内周側スロットに冷却媒体が吐出されたときの説明図である。
【図9】第1実施形態の変形例の説明図である。
【図10】第2実施形態の説明図であり、図10(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図10(b)は図10(a)のB−B線における断面図である。
【図11】第3実施形態の説明図であり、図11(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図11(b)は図11(a)のC−C線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態の電動機(以下「モータ」という。)につき図面を参照して説明する。本実施形態では車両に搭載される車両用電動機(以下「モータユニット」という。)を用いて説明する。また、以下の説明では、モータの径方向をR方向、モータの軸方向をZ方向、モータの周方向をθ方向と定義し、必要に応じて、これらR、Zおよびθの円筒座標系を使用して説明する。なお、Z方向の一方側を+Z側とし、他方側を−Z側とする。また、R方向の外周側を+R側とし、内周側を−R側とする。
【0019】
図1はモータユニット10の概略構成断面図である。
図1に示すように本実施形態のモータユニット10は、ステータ21およびロータ22を備えたモータ23がモータハウジング11内に収容されている。モータハウジング11の+Z側には、モータ23の出力軸24の回転数を検出する回転センサ(不図示)を収容するセンサハウジング13が締結されている。また、モータハウジング11の−Z側には、モータ23の出力軸24からの動力を伝達するギヤなどの動力伝達部(不図示)を収容するミッションハウジング12が締結されている。なお、モータ23の出力軸24は、モータユニット10の動力伝達部を介して車両の駆動軸に連結されている。この駆動軸が回転することにより、駆動軸に連結された車輪が回転して、車両を移動させることができるように構成されている。
【0020】
(モータハウジング)
モータハウジング11は、アルミ等からなる部材であり、ダイキャスト等により成型される。モータハウジング11は、モータ23を収容可能な略有底筒状に形成されている。モータハウジング11におけるセンサハウジング13が締結される+Z側は、出力軸24が挿通される貫通孔16を除いて壁部17で閉塞されている。一方、モータハウジング11におけるミッションハウジング12が締結される−Z側には、モータ23を挿入するための略円形の開口15が形成されている。また、モータハウジング11の内周面18には、−Z側から+Z側に向けて縮径する段差部19が形成されている。この段差部19には、ステータ21を支持固定するためのステータホルダ30が締結されるように構成されている。
【0021】
また、モータハウジング11とミッションハウジング12との境界部における−Z側には、モータ23の出力軸24の一端を回転自在に支持するベアリング26が設けられ、モータハウジング11とセンサハウジング13との境界部におけるモータハウジング11の貫通孔16には、モータ23の出力軸24の+Z側を回転自在に支持するベアリング27が設けられている。
【0022】
(出力軸)
図2は図1のA−A線における断面図である。
図2に示すように、出力軸24がモータハウジング11の略中央に配されている。
出力軸24は、ステンレスや鉄等からなる中空の略円筒状の部材であり、鍛造や鋳造、機械加工等により形成される。出力軸24の内部は空洞となっており、冷却媒体流路75となっている。これにより、モータ内部には冷却流路を構成するための配管等が必要ないので、モータの重量やコストの増加を抑制することができる。また、出力軸24の+Z側には、外周面に開口し、出力軸24の内部の冷却媒体流路75と連通する吐出孔76が複数(本実施形態では対称に2箇所)形成されている。冷却媒体は不図示の供給源から供給される。供給源から供給された冷却媒体は冷却媒体流路75を通り、ロータが回転することにより発生する遠心力によって、吐出孔76から+R側に吐出される。なお、冷却媒体は例えば潤滑油が使用される。
なお、本実施形態では出力軸24の+Z側にのみ吐出孔76を形成しているが、出力軸24の−Z側に形成してもよい。
【0023】
(ロータ)
出力軸24の外周面にはロータ22が取り付けられている。
ロータ22は、略円盤状の電磁鋼板等の磁性板からなる部材であり、プレスにより成型された磁性板を複数積層することにより形成される。このとき、各磁性板を重ねてカシメることにより、各磁性板には凸部(ダボ)が形成される。このダボにより各磁性板を連結して積層固定することができる。なお、各磁性板を接着することにより積層してもよい。
ロータ22には、出力軸24を挿通させるための貫通孔31が形成されている。ロータ22は圧入により出力軸24に固定される。したがって、貫通孔31は、出力軸24の外径よりも若干小さくなるように形成される。ロータ22が軸中心に回転することにより、前述の出力軸24も同時に軸中心に回転する。
ロータ22の外周縁近傍には、ステータ21と対向するように永久磁石29がθ方向に沿って複数(本実施形態では、8個)設けられている。なお、ロータ22の外周側にN極が着磁された永久磁石29Nと、ロータ22の外周側にS極が着磁された永久磁石29Sとが、ロータ22のθ方向に交互に配されている。
【0024】
(端面板)
さらに、出力軸24の外周面には端面板25が取り付けられ、ロータ22のZ方向における両端面に配置されている。端面板25はステンレス等の非磁性体からなり、プレスや機械加工等によって形成される。端面板25は、ロータ22と略同一形状の略円盤状の部材であり、出力軸24を挿通させるための貫通孔が形成されている。端面板25はロータ22とともに圧入により出力軸24に固定される。端面板25の外径は、ロータ22と略同一か若干小さく形成されており、なおかつZ方向からみて永久磁石29を覆うように形成されている。これにより、ステータ21とロータ22とのエアギャップを確保しつつ、永久磁石29がロータ22から脱落するのを防止している。さらに、端面板25は非磁性体からなるので、永久磁石29を覆っても、磁束漏れを増加させることはない。
本実施形態では、+Z側の端面板25におけるロータ22との合わせ面に、溝部25aが形成されている。溝部25aは、R方向から見て略矩形状をしており、溝部25aの深さおよび幅は吐出孔76の直径と略同一に形成される。また、溝部25aは、出力軸24の吐出孔76に対応した位置からR方向に沿って端面板の外周まで延設されている。そして、後述するように、吐出孔76から吐出された冷却媒体は、溝部25aを通り、ステータ21に向かって+R側に吐出される。
なお、本実施形態では、出力軸24の+Z側に形成された吐出孔76に対応して、+Z側の端面板25にのみ溝部25aを形成しているが、出力軸24の−Z側にも吐出孔が形成された場合には、−Z側の端面板にも溝部を形成する。
【0025】
(ステータ)
図2に示すように、本実施形態のステータ21は、円環状に形成されたステータコア41と、インシュレータ50を介してステータコア41に導線35がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイル20と、を備えている。
【0026】
(ステータコア)
本実施形態のステータコア41は、分割コア45を円環状に複数個(本実施形態では24個)連結することにより形成されている。各分割コアには、ティース32およびヨーク33がZ方向から見て略L字状になるように直交して配置されている。
図3は、本実施形態の分割コア45の斜視図である。
図3に示すように、分割コア45は、電磁鋼板等の磁性板により形成された分割コア片43からなる部材であり、前述のロータと同様に、各分割コア片43をカシメて積層固定することにより形成される。本実施形態では、ダボ44は、ティース32とヨーク33との境界部における外周縁近傍と、ヨーク33における隣接する分割コア45との境界部の外周縁近傍と、の2箇所に形成されている。2箇所のダボ44でカシメることにより、分割コア片43が位置ずれするのを防止している。
また、ステータコア41を分割コア45により構成することで、後述するインシュレータを分割コア45に装着して導線を巻き回す際に、分割コアごとに導線を巻き回すことができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0027】
さらに、ステータコア41は突起部36を備えている。
図2に示すように本実施形態の突起部36は、コイル20,20間において、ステータコア41のZ方向から見て略矩形状に、ステータコア41の+R側に突出して形成されている。突起部36には、Z方向に貫通する肉抜き部37が形成されている。本実施形態の肉抜き部37は、Z方向から見て、ステータコア41のθ方向を長軸方向としR方向を短軸方向とした略長円形状に形成されている。この肉抜き部37によってフラックスバリアが形成される。
【0028】
(インシュレータ)
図4はステータの内周側から見たときのインシュレータ50の斜視図である。
インシュレータ50は、ステータコアに装着され、ヨークおよびティースの周面を覆う部材である。インシュレータ50は、例えば樹脂などの絶縁部材からなる部材であり、インジェクション成型により形成される。
図4に示すように、インシュレータ50は、分割コアのヨークの周面を覆う貫通孔51が形成された導線巻付部52と、導線巻付部52のθ方向における両端の開口縁部からフランジ状に立設され、インシュレータ50の内周側、外周側および−Z側に形成された一対の壁部53,54とを備えている。
導線巻付部52の内周壁57および外周壁58にはガイド溝59が形成されており、導線が案内されて巻き回される。−Z側の壁部53,54には、導線の端部を係止するための係止溝63,64がそれぞれ形成されている。例えば巻き始めに導線の一端を係止溝63に引っ掛けるように係止した後、導線巻付部52に導線を所定の巻数になるように巻付け、巻き終わった導線の他端を係止溝64に係止することで、インシュレータ50にコイルを容易に形成することができる。このように、インシュレータ50を介して分割コアのヨークに導線を巻き回すことにより、コイルとステータコアとの短絡を防止しつつ、トロイダル状にコイルを形成することができる。
【0029】
図4に示すように、インシュレータ50の−Z側における内周側には、中性点バスリング68(図9参照)を挿入するための挿入溝69が形成されている。挿入溝69の幅は、中性点バスリング68の導線の直径と略同一かそれよりも若干広く形成されている。挿入溝69の深さは、中性点バスリング68の導線の直径よりも深く形成されている。挿入溝69は、Z方向から見て略円弧状に形成されており、インシュレータ50を分割コアに装着して分割コアを連結した際に、ステータコア41のティースの内周面に沿った略円環形状となる。この複数の挿入溝69で形成された略円環形状の直径は、中性点バスリング68の直径と略同一である。中性点バスリング68を挿入溝69に挿入することにより、中性点バスリング68をステータコア41のティースの内周面に沿ってインシュレータ50の−Z側に配置することができる。
【0030】
図5はステータの外周側から見たときのインシュレータ50の斜視図である。
図5に示すように、インシュレータ50の+Z側には、ティースを覆うように形成された底面部82と、底面部82から+Z側に立設された誘導板80とが設けられている。
底面部82は、導線巻付部52の+Z側面と同一平面で形成されており、インシュレータ50をステータコアに装着すると、底面部82の−Z側面はステータコアの+Z側面と密着する。したがって、底面部82からステータコアの熱を吸収することができる。
【0031】
誘導板80は、インシュレータ50における底面部80のR方向およびθ方向の略中央において、底面部82から+Z側に立設されるとともにθ方向に広がるように形成されている。誘導板80は、R方向から見て略矩形状をしており、平板状に形成されている。図1に示すように、誘導板80のZ方向における高さは、インシュレータ50表面からのコイル20のZ方向における高さと略同一である。また、誘導板80のθ方向における幅は、図2に示すように、誘導板80のθ方向における両側のコイル20,20と若干の隙間が開くように、コイル20,20の間隔よりも若干狭い幅で形成される。なお、コイル20のターン数や導線35の線径等により決定されるコイル20のZ方向の高さおよびθ方向の幅に応じて、誘導板80の高さおよび幅が適宜決定される。前述の端面板25の溝部25aからステータ21に向かって+R側に吐出された冷却媒体は、誘導板80に誘導されてコイル20に供給される。なお、冷却媒体の供給の詳細については後述する。
【0032】
(コイルへの給配電構造)
図6はコイルへの給配電構造の説明図である。
上述のインシュレータにコイル20を巻き回した後、分割コア45を所定数(本実施形態では、24個)円環状に連結し、後述するステータホルダ30に固定することにより、円環状のステータ21が形成される。そして、図6に示すように、U相、V相およびW相を構成するコイル20がθ方向に順に配され、各コイル20を構成する導線35の両端部が3相配電バスリング67または中性点バスリング68にそれぞれ接続されている。
【0033】
具体的には、U相のコイルU1の一端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、U相のコイルU1の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルU2の他端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、コイルU2の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルU3の一端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、コイルU3の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。以降、同様の順序で接続され、コイルU8の他端側は3相配電バスリング67のU相の接続端子に接続され、コイルU2の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。
【0034】
V相のコイルV1の他端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、V相のコイルV1の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルV2の一端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、コイルV2の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルV3の他端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、コイルV3の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。以降、同様の順序で接続され、コイルV8の一端側は3相配電バスリング67のV相の接続端子に接続され、コイルV8の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。
【0035】
W相のコイルW1の一端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、W相のコイルW1の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルW2の他端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、コイルW2の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。また、コイルW3の一端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、コイルW3の他端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。以降、同様の順序で接続され、コイルW8の他端側は3相配電バスリング67のW相の接続端子に接続され、コイルW8の一端側は中性点バスリング68の接続端子に接続されている。
【0036】
ここで、コイル20の導線35の巻回方向は全て同じ方向になるように構成されている。そして、コイルU1の電流の流れる方向と、コイルU2の電流の流れる方向とは逆向きになるように、コイル20に各バスリング67,68が接続されている。このように本実施形態では、U相、V相およびW相の各コイル20が並列接続されている。このように構成することにより、各相を流れる電流は並列接続された各コイルに分配されるため、コイル20の巻数は多く要るが細い導線35を用いることができる。つまり、占積率の高いコイル20を形成することができる。
このようにθ方向に順に配されたU相、V相およびW相のコイルの励磁を順次切り替えて回転磁界を発生させ、ステータ21とロータとの間に磁気的な吸引力および反発力を発生させることによりロータを回転させることができる。
【0037】
(ステータホルダ)
図7はステータホルダの斜視図である。
ステータホルダ30は、鉄等からなる円筒状の部材であり、例えばプレスにより成型される。また、ステータホルダ30の−Z側には、+R側へ突出したフランジ部34が形成されている。また、フランジ部34にはボルト孔47が複数(本実施形態では、4個)形成されている。これにより、ボルトを用いてモータハウジングにステータホルダ30を締結固定することができる。
【0038】
以下に、ステータホルダ30およびステータの固定について詳述する。
図2に戻り、まず分割コア45を所定個数(本実施形態では、24個)円環状に連結することにより、円環状のステータ21を形成する。その後、前述のステータホルダ30の円筒部30aに、ステータコア41の突起部36を圧入してステータ21を固定する。ステータホルダ30およびステータコア41は同じ鉄系の材料で形成されるので、略同一の線膨張係数を有している。したがって、高温および低温環境下でもステータホルダ30およびステータコア41の固定状態が緩むことはない。なお、ステータホルダ30とステータ21との固定方法は圧入に限らず、例えば焼き嵌めでもよい。
【0039】
上述のように、ステータホルダ30にステータ21を圧入等により固定した状態で、ステータホルダのフランジ部34のボルト孔47にボルトを挿通して、ステータホルダ30をモータハウジング11に締結固定する。ステータホルダ30を介してステータ21をモータハウジング11に固定しているので、ステータ21の振動がモータハウジング11に伝達するのを抑制することができ、振動や騒音等を低減することができる。
【0040】
ここで、本実施形態におけるステータコア41の突起部36には、前述のとおり、Z方向に貫通する肉抜き部37が形成されており、これにより、ステータコア41とステータホルダ30との間の磁気抵抗が増加する。すなわち、肉抜き部37はフラックスバリアとして機能するので、ステータコア41からステータホルダ30への磁束漏れを抑制することができる。さらに、圧入や焼き嵌め等の手法によりステータコア41の突起部36の外周面36aをステータホルダ30の内周面30bに接触させて固定すると、肉抜き部37によって突起部36は−R側に弾性変形する。これにより、ステータコア41およびステータホルダ30の寸法誤差を吸収しつつ、圧入や焼き嵌めにより固定することができる。
【0041】
(冷却媒体の供給)
図8は本実施形態の冷却媒体の供給作用の説明図であり、図8(a)は誘導板80に冷却媒体が吐出されたときの説明図であり、図8(b)は内周側スロット38に冷却媒体が吐出されたときの説明図である。
図8に示すように、ロータ22が回転すると、不図示の供給源から供給された冷却媒体は、出力軸24の内部の冷却媒体流路75に流入し、ロータ22の回転による遠心力により出力軸24の吐出孔76から+R側に向かって吐出される。その後、冷却媒体は、吐出孔76と連通する端面板25の溝部25aを通って、ロータ22からステータ21に向かって+R側に吐出される。
図8(a)に示すように、コイル20,20間に吐出された冷却媒体は、インシュレータ50に形成された誘導板80に当たる。ここで、誘導板80は、前述のとおりコイル20,20間において、θ方向に広がり形成されている。このため、誘導板80と当たった冷却媒体は、誘導板80の表面に沿って流れ、誘導板80のθ方向における両側方に配置されたコイル20に向けて誘導される。このように誘導板80が設けられているので、コイル20,20間に冷却媒体が吐出されても、冷却媒体はコイル20,20間をすり抜けることなくコイル20に誘導される。ここで、前述のとおりインシュレータ50の内周側、外周側および−Z側には一対の壁部53,54(図5参照)が形成されているが、インシュレータ50の+Z側には壁部53,54は形成されていない。これにより、誘導板80とコイル20との間には障壁がないので、誘導板80により冷却媒体をコイル20に誘導することができる。
なお、ティース32,32間に吐出された冷却媒体は、図8(b)に示すように、ティース32,32間における内周側スロット38のコイル20に直接供給される。
そして、冷却媒体は、コイル20に浸透してコイル20を冷却した後、モータハウジングの底部に落下する。その後、モータハウジングの底部から回収され、再度コイル20に供給される。
【0042】
本実施形態によれば、コイル20,20間において+Z側に立設されるとともにステータ21のθ方向に広がり、供給された冷却媒体をコイル20に誘導する誘導板80が設けられている。これにより、ロータ22からステータ21に向かって+R側に供給される冷却媒体のうち、コイル20,20間に供給された冷却媒体は、コイル20,20間をすり抜けることなく誘導板80に当たってコイル20に誘導される。したがって、誘導板80により冷却媒体をコイル20に誘導することができるので、コイル20を効率よく冷却することができる。
【0043】
(第1実施形態の変形例、V字形状の誘導板)
図9は第1実施形態の変形例の説明図である。
第1実施形態の誘導板はZ方向から見て直線上に形成されていたが、第1実施形態の変形例の誘導板80は、図9に示すように、Z方向から見て−R側を頂点とする略V字形状に形成されている点で異なっている。
本実施形態では、誘導板80の壁は、R方向に対する垂直面から+R側に向かって傾斜しており、誘導板80のθ方向における両側のコイル20,20と若干の隙間が開くように、コイル20,20の間隔よりも若干狭い幅で形成される。また、誘導板80の頂点81は、底面部82のR方向における略中央に形成される。
コイル20,20間に吐出された冷却媒体は、略V字形状に形成された誘導板80の頂点81に当たる。誘導板80は、R方向に対する垂直面から+R側に向かって傾斜しているので、頂点81に当たった冷却媒体は、冷却媒体の吐出方向に反射することなく、誘導板80に沿ってコイル20に誘導される。したがって本実施形態の変形例によれば、確実にコイル20に冷却媒体を誘導することができる。
なお、誘導板80のR方向における位置および誘導板80の傾斜度合いを変更することにより、コイル20に対する冷却媒体の供給位置を変更することができる。例えば、R方向に対する垂直面から+R側に向かって誘導板80の傾斜を大きくすることにより、コイル20の外周側により多く冷却媒体を供給することができる。
【0044】
(第2実施形態、複数設けられた誘導板)
図10は第2実施形態の説明図であり、図10(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図10(b)は図10(a)のB−B線における断面図である。
第1実施形態および第1実施形態の変形例の誘導板は、1個のインシュレータにつきR方向の1箇所に設けられていたが、本実施形態の誘導板80は、図10に示すように、1個のインシュレータにつきR方向の複数箇所に設けられている点で、第1実施形態および第1実施形態の変形例と異なっている。
図10に示すように本実施形態の誘導板80は、1個のインシュレータ50につきR方向に例えば2箇所設けられている。具体的には、インシュレータ50の底面部82における−R側には第1誘導板80aが設けられており、インシュレータ50の底面部82における+R側には第2誘導板80bが設けられている。第1誘導板80aおよび第2誘導板80bは、ともに第1実施形態の変形例と同様に、Z方向から見て−R側を頂点とする略V字形状に形成されている。
さらに本実施形態では、図10(a)に示すように、第2誘導板80bのθ方向の幅は、第1誘導板80aのθ方向の幅よりも広く形成されている。また、図10(b)に示すように、第2誘導板80bのZ方向の高さは、−R側に配置される第1誘導板80aのZ方向の高さよりも高く形成されている。
【0045】
図10(b)に示すように、ロータ22からステータ21に向かって+R側に吐出された冷却媒体が、−R側の第1誘導板80aに当たることなくすり抜けても、+R側にさらに設けられた第2誘導板に当たる。したがって、コイル20,20間に供給された冷却媒体は、コイル20,20間をすり抜けることなく、第1誘導板80aまたは第2誘導板80bのいずれか一方に当たってコイル20に誘導される。これにより、確実にコイル20に冷却媒体を誘導することができる。また、本実施形態のように、第1誘導板80aよりも広い面を有する第2誘導板80bを+R側に配置することにより、確実にコイル20に冷却媒体を誘導することができる。
なお、前述と同様に、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bのR方向における位置および傾斜度合いを変更することにより、コイル20に対する冷却媒体の供給位置を変更することができる。また、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bの幅および高さを変更することにより、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bに当てる冷却媒体の量を調整することができる。例えば、第1誘導板80aの面積を小さくすることにより、冷却媒体は第1誘導板80aをすり抜けやすくなり、多くの冷却媒体が第2誘導板80bに当たる。したがって、コイル20の−R側よりもコイル20の+R側に多くの冷却媒体が供給される。このように、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bの面積を変えることにより、コイル20の+R側および−R側に供給する冷却媒体の量を調整することができるので、コイル20を効率よく冷却することができる。
【0046】
(第3実施形態、貫通孔を形成)
図11は第3実施形態の説明図であり、図11(a)は軸方向から見たときの説明図であり、図11(b)は図11(a)のC−C線における断面図である。
本実施形態では、図11に示すように、底面部82に貫通孔84a,84bが形成されている点で第1実施形態および第2実施形態と異なっている。
図11(a)に示すように、本実施形態では、第1誘導板80aおよび第2誘導板80bの−R側に、それぞれ第1貫通孔84aおよび第2貫通孔84bが形成されている。各貫通孔84a,84bは底面部82を貫通しており、各貫通孔84a,84bからはステータコア41が露出している。本実施形態の各貫通孔84a,84bのθ方向における幅は、各誘導板80a,80bのθ方向における幅と略同一に形成されている。また、各貫通孔84a,84bのR方向における長さは、底面部82のR方向における長さの約1/4程度に形成されている。なお、各貫通孔84a,84bのR方向における長さは、各誘導板80a,80bのZ方向における高さに比例して変化させてもよい。各貫通孔80a,80bのθ方向における幅およびR方向における長さによりステータコア41の露出面積が決定され、この露出面積は、ステータコア41の発熱量や要求される冷却能力等により適宜決定される。
図11(b)に示すように、+R側に吐出された冷却媒体は各誘導板80a,80bに当たる。このとき、冷却媒体は各誘導板80a,80bに沿ってコイル20に誘導されるが、一部の冷却媒体は各貫通孔84a,84bに供給された後、コイル20に誘導される。貫通孔84a,84bからはステータコア41が露出しているので、貫通孔84a,84bに供給された冷却媒体は、直接ステータコア41の表面を冷却することができる。したがって、冷却性能を向上させることができる。
【0047】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
第1実施形態から第3実施形態のモータでは、冷却媒体として潤滑油を用いている。しかし、冷却媒体は潤滑油に限定されることはなく、例えばロータにフィンを形成して空気を送風することにより、空気を冷却媒体としてもよい。ロータが回転することにより、ロータからステータに向かって径方向の外側に冷却風を送風することができ、誘導板により冷却風をコイルに誘導することができる。
【0048】
第1実施形態から第3実施形態の電動機では、ミッションケース側に3相配電バスリングおよび中性点バスリングを設け、センサハウジング側にのみ誘導板を設けているが、ミッションケース側にも誘導板を設けてもよい。ただし、ミッションケース側に誘導板を設ける場合には、3相配電バスリングおよび中性点バスリングの位置を考慮して設計する必要がある。
【0049】
第1実施形態から第3実施形態の電動機では、インシュレータと誘導板とが一体成型されているが、インシュレータとは別部品として誘導板を形成してもよい。具体的には、例えば樹脂等の非磁性体を用いて、誘導板および底部を備えた誘導部材を形成してもよい。ただし、誘導板とインシュレータとを一体成型することにより、金型や部品点数の削減が可能となり低コストとなる点で本実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0050】
10・・・モータユニット(電動機) 20・・・コイル 21・・・ステータ 22・・・ロータ 24・・・出力軸 30・・・ステータホルダ 32・・・ティース 33・・・ヨーク 35・・・導線 41・・・ステータコア 50・・・インシュレータ 75・・・冷却媒体流路 76・・・吐出孔 80,80a,80b・・・誘導板 82・・・底面部 84a,84b・・・貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状に形成されたステータコアと、インシュレータを介して前記ステータコアに導線がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイルと、を備えたステータと、
前記ステータの径方向の内側に回転可能に配置されたロータと、
を有する電動機であって、
前記ロータから前記ステータに向かって前記径方向の外側に冷却媒体を供給可能とされ、
隣接する前記コイル間における前記ステータの軸方向端面には、前記軸方向に立設されるとともに前記ステータの周方向に広がり、供給された前記冷却媒体を前記コイルに誘導する誘導板が設けられていることを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記ロータは、前記ロータの中心を貫通する出力軸を備え、
前記出力軸は、内部に設けられる冷却媒体流路と、外周面に開口し前記冷却媒体流路と連通する吐出孔と、を有しており、
前記ロータが回転すると、前記吐出孔から前記径方向の外側に前記冷却媒体が吐出されることを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記誘導板は、前記軸方向から見て、前記径方向の内側を頂点とする略V字形状に形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機であって、
前記誘導板は、前記径方向に複数設けられていることを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動機であって、
前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅は、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅よりも広いことを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電動機であって、
前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さは、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さよりも高いことを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動機であって、
前記誘導板は、非磁性体であり、前記ステータコアと別部材で形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項8】
請求項7に記載の電動機であって、
前記ステータは、誘導部材を備えており、
前記誘導部材は、前記誘導板と、前記コイル間の前記ステータコアの前記軸方向における側面に接する底面部と、を有しており、
前記誘導板は前記底面部から前記軸方向に立設されていることを特徴とする電動機。
【請求項9】
請求項8に記載の電動機であって、
前記底面部には、前記誘導板の前記径方向の内側に貫通孔が形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項10】
請求項8または9に記載の電動機であって、
前記誘導部材は、前記インシュレータと一体的に形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項1】
円環状に形成されたステータコアと、インシュレータを介して前記ステータコアに導線がトロイダル状に巻き回されて構成されるコイルと、を備えたステータと、
前記ステータの径方向の内側に回転可能に配置されたロータと、
を有する電動機であって、
前記ロータから前記ステータに向かって前記径方向の外側に冷却媒体を供給可能とされ、
隣接する前記コイル間における前記ステータの軸方向端面には、前記軸方向に立設されるとともに前記ステータの周方向に広がり、供給された前記冷却媒体を前記コイルに誘導する誘導板が設けられていることを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記ロータは、前記ロータの中心を貫通する出力軸を備え、
前記出力軸は、内部に設けられる冷却媒体流路と、外周面に開口し前記冷却媒体流路と連通する吐出孔と、を有しており、
前記ロータが回転すると、前記吐出孔から前記径方向の外側に前記冷却媒体が吐出されることを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記誘導板は、前記軸方向から見て、前記径方向の内側を頂点とする略V字形状に形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機であって、
前記誘導板は、前記径方向に複数設けられていることを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動機であって、
前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅は、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記周方向の幅よりも広いことを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電動機であって、
前記複数の誘導板のうち、前記径方向の外側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さは、前記径方向の内側に配置される前記誘導板の前記軸方向の高さよりも高いことを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動機であって、
前記誘導板は、非磁性体であり、前記ステータコアと別部材で形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項8】
請求項7に記載の電動機であって、
前記ステータは、誘導部材を備えており、
前記誘導部材は、前記誘導板と、前記コイル間の前記ステータコアの前記軸方向における側面に接する底面部と、を有しており、
前記誘導板は前記底面部から前記軸方向に立設されていることを特徴とする電動機。
【請求項9】
請求項8に記載の電動機であって、
前記底面部には、前記誘導板の前記径方向の内側に貫通孔が形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項10】
請求項8または9に記載の電動機であって、
前記誘導部材は、前記インシュレータと一体的に形成されていることを特徴とする電動機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−223661(P2011−223661A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87273(P2010−87273)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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