説明

電動機

【課題】電動機の固定子に用いる相間絶縁により確実に巻線間を絶縁することができ、巻線端部からの引出し線を作業に支障をきたさず容易に引出す事ができる電動機の提供。
【解決手段】固定子30の巻線間を相間絶縁70、80により絶縁した電動機において、相間絶縁は固定子の軸方向両端面から飛び出している巻線間を絶縁する帯状絶縁部と、帯状絶縁部同士を繋ぐ絶縁脚部で構成され、帯状絶縁部の固定子周方向端部は、帯状絶縁部同士を繋いだ最も周方向外側に位置する絶縁脚部よりも固定子周方向外側に伸びた絶縁端部70aa、70ab、80aa、80abを有し、絶縁端部の周方向の長さは、一方の長さが他方の長さより短くした相間絶縁であり、絶縁端部が複数層の巻線の内の一相を形成する巻線の極間部で重なる様に配置させ、絶縁端部の長さが短い側から、巻線の巻線端部からの引出し線100a、100b、100cを少なくとも1箇所引出した電動機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機の固定子のスロットに異相を形成する複数層の巻線が装着され、各巻線の巻線端部から引出し線を引出し、巻線間を相間絶縁により絶縁した電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の固定子の歯部に装着した複数相の巻線間を絶縁する相間絶縁の構造は、特許文献1(実公平7−42208号)に示されているように、固定子の軸方向両端面から飛び出した複数相の巻線間を其々の帯状絶縁部で絶縁し、固定子のスロット内に挿通させた複数の絶縁脚部によって繋いだ相間絶縁が用いられている。
【0003】
特許文献1では、固定子の軸方向両端面から飛び出した巻線の巻高に合わせて帯状絶縁部の幅を広幅部と狭幅部とにより高低差を付けて配置することにより、極端に突出する帯状絶縁部の切り取り作業が不要となり作業工数を低減することができる。また、切取り作業時の巻線処理により発生する巻線への損傷も少なくなり品質を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−42208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様な電動機の相間絶縁の構造は、固定子に複数層の巻線を装着させ、固定子の軸方向両端から飛び出ている巻高の違う巻線間を絶縁する構造としては最適な構造を有している。しかしながら、固定子の歯部に巻き付けた巻線の巻線端部から引出した引出し線の位置や引出し線の配置を考慮した相間絶縁の形状には成っておらず、固定子の巻線の巻線端部から引出し線を引出す際、引出し線の引出し位置や引出し線の配置によっては、相間絶縁の形状が問題となり、引出し線を引出すのに支障をきたしている。
【0006】
具体的には、巻線端部から引出した引出し線は、固定子の歯部に巻き付けた巻線と交差するように引き廻されることになり、固定子の巻線を圧縮整形して指定した寸法に入れる際、巻線や引出し線の絶縁被覆、もしくは引出し線に被せる絶縁チューブを押し潰し傷付けてしまう。その結果、絶縁不良が発生し品質を低下させている。
【0007】
また、固定子の複数の巻線間に相間絶縁を装着する際、相間絶縁の装着方向を間違え、巻線間を確実に絶縁することができず絶縁不良となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
固定子のスロットに異相を形成する複数層の巻線が装着され、前記巻線の巻線端部からは引出し線が引出され、前記巻線間を相間絶縁により絶縁した電動機において、
前記相間絶縁は、固定子の軸方向両端面から飛び出している巻線間を絶縁する帯状絶縁部と、前記固定子のスロット内を挿通し前記帯状絶縁部同士を複数の絶縁脚により繋いだ絶縁脚部で構成され、
前記帯状絶縁部の固定子周方向端部は、前記帯状絶縁部同士を繋いだ最も周方向外側に位置する絶縁脚部よりも固定子周方向外側に伸びた少なくとも1つの絶縁端部を有し、前記絶縁端部の周方向の長さは、一方の長さが他方の長さより短くした相間絶縁であり、
前記帯状絶縁部の前記絶縁端部が、複数層の巻線の内の一相を形成する巻線の極間部で重なる様に配置させ、
前記絶縁端部の長さが短い側から、前記巻線の巻線端部からの引出し線を少なくとも1箇所引出している電動機とする。
【0009】
また、前記相間絶縁の前記絶縁脚部が、複数層の巻線の内の一相を形成する巻線の極間部の両側に位置する固定子のスロットに挿通させ、前記帯状絶縁部の絶縁端部が前記極間部で重なる様に配置させ、
前記絶縁端部の長さが短い側から、前記巻線の巻線端部からの引出し線を少なくとも1箇所引出している電動機とする。
【0010】
また、前記絶縁端部の固定子周方向端部には、前記帯状絶縁部の絶縁端部が前記極間部で重ねて配置する際の重なりの順序を決めるための目印を設けた電動機とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動機に用いる相間絶縁は、固定子のスロットに異相を形成する複数層の巻線を装着し、巻線端部から引出した引出し線が引出される電動機の巻線間である相間を確実に絶縁することができる。
【0012】
また、本発明の電動機に用いられる相間絶縁は、固定子のスロットに装着した巻線間を帯状絶縁部により絶縁するに当たり、相間絶縁の形状が、固定子の軸方向両端面から飛び出している巻線間を絶縁する帯状絶縁部と、帯状絶縁部同士を固定子のスロット内を挿通した複数の絶縁脚により繋いだ絶縁脚部で構成されている。
【0013】
前記帯状絶縁部の固定子周方向端部は、帯状絶縁部同士を繋いだ最も周方向外側に位置する絶縁脚部よりも固定子周方向外側に伸びた少なくとも1つの絶縁端部を有し、絶縁端部の周方向の長さは、一方の長さが他方の長さより短くした相間絶縁を用いて、帯状絶縁部の絶縁端部が、複数層の巻線の内の一相を形成する巻線の極間部で重なる様に配置させている。
【0014】
これにより、固定子のスロットに装着した巻線端部から引出し線を少なくとも1箇所引出す際、相間絶縁の絶縁端部が邪魔になり引出し線の引き廻しや配置ができなくなることもない。また、引出し線を絶縁端部の長さが短い側から引出しているので、径方向の巻線間に配置した相間絶縁を乗り越えて引出し線を引出すことがなくなる。また、固定子の歯部に巻き付けた巻線と直交して引出し線が交差することも少なくなるので、固定子巻線を圧縮整形して指定した寸法に入れる際、巻線や引出し線等の絶縁被覆、もしくは引出し線に被せた絶縁チューブを押し潰し絶縁不良となることのない品質的に優れた電動機とすることができる。
【0015】
尚、少なくとも1つの絶縁端部は、相間絶縁の固定子軸方向の両端部から飛び出している巻線間を絶縁する帯状絶縁部の固定子軸方向両側の帯状絶縁に設けても良く、また、どちらか一方に設けても良い。また、帯状絶縁部の固定子周方向の両側に設けても良く、また、どちらか一方に設けても良い。尚、巻線の巻線端部から引出される引出し線の引出し位置により帯状絶縁部の絶縁端部の固定子周方向の長さが決定されている。
【0016】
また、絶縁端部は一方の長さが他方の長さより短くした相間絶縁は、絶縁端部の長さが一方の長さより他方の長さが長ければよく、また、絶縁端部の他方が絶縁端部を有し、一方は絶縁端部が全く無い場合も含む。あるいは、絶縁端部は他方の長さが一方の長さより短くした相間絶縁は、絶縁端部の長さが他方の長さより一方の長さが長ければよく、また、絶縁端部の一方が絶縁端部を有し、他方は絶縁端部が全く無い場合も含む。
【0017】
また、相間絶縁の絶縁脚部を複数層の巻線の内の一相を形成する巻線の極間部の両側に位置する固定子のスロットに挿通させ、帯状絶縁部の絶縁端部が極間部で重なる様に配置し、相間絶縁の絶縁端部の長さが短い側から巻線端部の引出し線を少なくとも1箇所引出している。
【0018】
これにより、固定子の軸方向両端面から飛び出した巻線間を絶縁する帯状絶縁部の周方向端部は、帯状絶縁部の周方向の絶縁端部で重なり、固定子のスロット内を挿通する絶縁脚で繋がれていることにより、固定子巻線を外部の巻線機で巻いた後、固定子のスロットに巻線を挿入する際の挿入圧力や、固定子の軸方向両端面から飛び出した巻線を圧縮整形して指定寸法に入れる際、相間絶縁の絶縁端部の巻き込みや、飛び出しが無くなり、巻線端部からの引出し線の引出位置による引出し線と巻線の接触を防ぎ、絶縁不良を低減することができる。
【0019】
更に、引出し線の引き廻しや配置の邪魔にならない様に帯状絶縁部の周方向の絶縁端部の重なりを変えることにより、引出し線の引き廻しが容易と成り引出し線と巻線が直交し交差するような状況を極力低減し、固定子軸方向両端部から飛び出している巻線を圧縮整形しても、巻線や引出し線の絶縁被覆、もしくは引出し線に被せた絶縁チューブを押し潰し絶縁不良となることのない品質に優れた電動機とすることができる。
【0020】
また、本発明では帯状絶縁部の固定子周方向の絶縁端部には、帯状絶縁部の固定子周方向の長さが、長い側と短い側との重なりの順序を決めるための目印を設けている。例えば、帯状絶縁部の固定子周方向端部の絶縁端部の一部を切欠いた凹部を設けることにより帯状絶縁部の重なりの順序を明確に判断することができる。目印は、前記した方法に限定するものではなく、一部を飛び出した凸部としても良く、また、目印を設ける場所は絶縁脚部に設けても良い。尚、目印はこれに限定するものではない。
【0021】
これにより、固定子のスロットに巻線を装着し、相間絶縁を装着する際の帯状絶縁部の固定子周方向に伸びた絶縁端部の重なりの順序を明確に判断することができる。
【0022】
本実施形態で用いている相間絶縁は、異相を形成する複数層の巻線間に各1枚の相間絶縁により構成されているが、各巻線間に複数枚の相間絶縁を装着しても同様に重なりの順序を判断することができる。
【0023】
また、前記電動機を冷蔵庫やエアコン等の駆動源として圧縮機内に搭載した圧縮機に用いることにより固定子のスロットに複数相に挿入された巻線間を確実に絶縁した電動機を用いることができ、絶縁不良を低減した圧縮機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の電動機。
【図2】図1に示した電動機の巻線間に相間絶縁を配置した模式的な配置図。
【図3】図2に示した固定子のスロットに配置させた巻線の模式図。
【図4】本実施形態に用いた相間絶縁70の図。
【図5】本実施形態に用いた相間絶縁80の図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の電動機を示している。図1には、固定子30のスロット31に巻線32が装着されている。固定子30のスロット31に巻線32を装着する方法は、外部の巻線機により巻線輪を形成し、巻線挿入機により固定子30のスロット31に挿入し装着している。固定子30のスロット31に挿入した巻線端部の一方の端部は、引出し線U、V、W、及びX、Y、Zが引出されている。
【0026】
本実施形態では、固定子30の巻線32の巻線端部から引出された引出し線U、V、Wは、電源側に接続する引出し線であり、引出し線U、V、Wは直接リード線として引出されている。引出し線U、V、Wは巻線端部に絶縁チューブを被せ巻線端部に直接端子をかしめる周知の直出し方式を採用している。そして、各引出し線U、V、Wに端子をかしめた後、クラスタ100が装着されている。また、巻線端部の他方の端部から引出された引出し線X、Y、Zは、各引出し線に絶縁チューブを被せ、各巻線端部をまとめて1つに接続し中性点90を形成している。
【0027】
図1及び図2に示している様に、本実施形態の固定子30のスロット31に挿入している巻線32は、三相を構成し、各相が異相となる様に複数層に分布巻きされた巻線32が挿入された三相誘導電動機である。各巻線間には其々の層が接触し絶縁不良とならない様に、相間絶縁70、80が装着されている。尚、本実施形態における電動機は三相1Y結線とし4極(対極では2極)を形成している。
【0028】
相間絶縁70、80は、固定子30の軸方向両端面から飛び出した巻線間を絶縁する帯状絶縁部70a、70b(図4参照)および80a、80b(図5参照)と、前記帯状絶縁部同士を固定子30のスロット31内を挿通した複数の絶縁脚部70dおよび80dにより繋がれて構成されている。本実施形態の相間絶縁70、80は、固定子30のスロット31に装着した巻線間の異相間を1枚の相間絶縁フィルムで絶縁している。相間絶縁を1枚の絶縁フィルムとすることにより固定子30のスロット31に複数枚の相間絶縁を装着する際の多くの絶縁脚部をスロット31に挿入する作業を緩和することができる。尚、相間絶縁フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンサルファイド(PPS)、アラミドおよびこれらを貼り合わせ絶縁フィルム等が用いられている。
【0029】
図1に示した電動機は、固定子30のスロット31の径方向、最外周側には外層巻線40としてU相巻線を配置し、次に中層巻線50としてW相巻線を配置し、最も内周側には内層巻線60としてV相巻線を配置している。図1に示した本実施形態の固定子30は、スロット数が24スロットを有しており、図中の固定子内径側に示した番号はスロット番号を示している。固定子30のスロット31に装着された巻線32は各層に装着された巻線32を結線し3相4極1Yを形成している。
【0030】
図3には、図1及び図2に示した固定子30のスロット31に巻き付けた巻線32の結線を模式的に表した展開図を示している。図3に示した固定子30のスロット番号は、図1及び図2に示したスロット番号と同じである。
【0031】
本実施形態の固定子30のスロット31に装着された巻線32の配置と相間絶縁70、80の配置を図1及び図2を用いて説明する。
まず、始めに固定子30のスロット31の最外周側に、外部で巻かれた巻線輪を固定子30のスロット31に外層巻線40として巻線挿入機により挿入している。固定子30の外層に挿入した外層巻線40はU相巻線を構成している。U相巻線は固定子30のスロット番号NO.1〜6、NO.7〜12、NO.13〜18、NO.19〜24に跨り配置している。尚、NO.6とNO.7、NO.12とNO.13、NO.18とNO.19、NO.24とNO.1の間はU相における極間部と成っている。
【0032】
次に、相間絶縁70を固定子30のスロット31に外層巻線40を装着した上から装着している。相間絶縁70の絶縁脚部70dは、固定子30の各スロット31の固定子内径側の開口部から挿入している。絶縁脚部70dの固定子30のスロット内配置位置は、相間絶縁70(図4参照)の帯状絶縁部70a、70bの固定子30の周方向に伸びる絶縁端部の一方に設けた目印70c(図2の図中では▲部)のある絶縁端部70ab側の絶縁脚部70dの8a、9aから固定子30のスロット31に挿入させている。固定子30のスロット番号NO.8、9、14,15、20、21、2、3の順にスロット31に絶縁脚部8a、9a、14a、15a、20a、21a、2a、3aの順に挿入し、最後にスロット31のNO.8、9に絶縁脚部70dの8b、9bが重なる様に配置させている。
【0033】
尚、外層巻線40と中層巻線50の間に装着された相間絶縁70は、中層巻線50であるW相巻線の極間部で、相間絶縁70の帯状絶縁部70a、70bの固定子周方向に伸びた絶縁端部70aa、70abおよび70ba、70bbが重なる様に配置している。
【0034】
本実施形態の帯状絶縁部70aの絶縁端部70aa、70abの重なり方は、絶縁端部70abの一方に設けた目印70cのある絶縁端部70ab側を絶縁端部70aa側より長さが短い側、もしくは絶縁端部70abが全くない側の絶縁脚部8a、9aから順に固定子30のスロット31に挿入していき、最後の絶縁脚8b、9bが、最初に挿入した絶縁脚部8a、9aと重なる様に挿入し、絶縁端部の他方に設けた絶縁端部の長さが長い側が重なる様に装着している。尚、帯状絶縁70bの絶縁端部70ba、70bbの重なり方は、帯状絶縁部70aの絶縁端部70abの一方に設けた目印70cが無いだけで、重なり方は同じで有るため説明を省略する。
【0035】
次に、固定子30のスロット31に外層巻線40のU相巻線の上に相間絶縁70を装着した後、固定子30のスロット31に中層巻線50を巻線挿入機により挿入している。固定子30の中層に挿入した中層巻線50はW相巻線を構成している。W相巻線は固定子30のスロット番号NO.3〜8、NO.9〜14、NO.15〜20、NO.21〜2に跨り配置している。尚、NO.8とNO.9、NO.14とNO.15、NO.20とNO.21、NO.2とNO.3の間はW相における極間部と成っている。
【0036】
次に、相間絶縁80を固定子30のスロット31に中層巻線50を装着した上から装着している。相間絶縁80の絶縁脚部80dは、固定子30の各スロット31の固定子内径側の開口部から挿入している。絶縁脚部80dの固定子30のスロット内配置位置は、相間絶縁80(図5参照)の帯状絶縁部80a、80bの固定子30の周方向に伸びる絶縁端部の一方に設けた目印80c(図2の図中では▲部)のある絶縁端部80aa側の絶縁脚部80dの10a、11aから固定子30のスロット31に挿入させている。固定子30のスロット番号NO.10、11、16、17、22、23、4、5の順にスロット31に絶縁脚部10a、11a、16a、17a、22a、23a、4a、5aの順に挿入し、最後にスロット31のNO.10、11に絶縁脚部80dの10b、11bが重なる様に配置させている。
【0037】
尚、中層巻線50と内層巻線60の間に装着された相間絶縁80は、内層巻線60であるV相巻線の極間部で、相間絶縁80の帯状絶縁部80a、80bの固定子周方向に伸びた絶縁端部80aa、80abおよび80ba、80bbが重なる様に配置されている。
【0038】
本実施形態の帯状絶縁80aの絶縁端部80aa、80abの重なり方は、絶縁端部80aaの他方に設けた目印80cのある絶縁端部80aa側を絶縁端部80abより長さが長い側の絶縁脚部10a、11aから順に固定子30のスロット31に挿入していき、最後の絶縁脚10b、11bが、最初に挿入した絶縁脚部10a、11aと重なる様に挿入し、絶縁端部の一方に設けた絶縁端部の長さが短い側もしくは、絶縁端部が全くない側が重なる様に装着している。尚、帯状絶縁80bの絶縁端部80ba、80bbの重なり方は、帯状絶縁部80aの絶縁端部80aaの一方に設けた目印80cが無いだけで、重なり方は同じで有るため説明を省略する。
【0039】
次に、固定子30のスロット31に中層巻線50のW相巻線の上に相間絶縁80を装着した後、固定子30のスロット31に内層巻線60を巻線挿入機により挿入している。固定子30の内層に挿入した内層巻線60はV相巻線を構成している。V相巻線は固定子30のスロット番号NO.5〜10、NO.11〜16、NO.17〜22、NO.23〜4に跨り配置している。尚、NO.10とNO.11、NO.16とNO.17、NO.22とNO.23、NO.4とNO.5の間はV相における極間部と成っている。
【0040】
固定子30のスロット31に装着した巻線32の巻線端部は、一方の巻線端部から直接引出された引出し線U、V、Wは絶縁チューブを被せ、電源側と接続する端子を直接かしめた周知の直出し方式を採用している。そして、引出し線U、V、Wに直接端子をかしめた後、クラスタ100を装着し一体化している。他方の巻線32の巻線端部からは、引出し線X、Y、Zが引出され、前記引出し線U、V、Wと同様に絶縁チューブを被せ、各巻線端部を1つにまとめて中性点90を形成し、3相4極1Y結線としている。
【0041】
本実施形態の固定子では、スロット番号NO.1の外層からU相の一方の巻線端部から引出された引出し線Uに絶縁チューブを被せ直接リード線として端子をかしめている。また、スロット番号NO.7の外層からU相の他方の巻線端部から引出された引出し線Xに絶縁チューブを被せ、他方の巻線端部の引出し線Y、Zと結線し中性点としている。
【0042】
同様に、スロット番号NO.9の中層からW相の一方の巻線端部から引出された引出し線Wに絶縁チューブを被せ直接リード線として端子をかしめている。また、スロット番号NO.15の中層からW相の他方の巻線端部から引出された引出し線Zに絶縁チューブを被せ、他方の巻線端部の引出し線X、Yと結線し中性点としている。
【0043】
また、スロット番号NO.5の内層からV相の一方の巻線端部から引出された引出し線Vに絶縁チューブを被せ直接リード線として端子をかしめている。また、スロット番号NO.11の内層からV相の他方の巻線端部から引出された引出し線Yに絶縁チューブを被せ、他方の巻線端部の引出し線X、Zと結線し中性点としている。
【0044】
中性点の接続点90の埋め込み位置は図2に示すように、中層巻線と内層巻線との間で、内層巻線の略極間部に埋め込んでいる。図2では固定子スロットNO.5とNO.4を跨ぎ接続点90を埋め込んでいる。
【0045】
ここで、図2に示しているように、固定子のスロット番号NO.7の外層から引出した引出し線Xは、外層と内層の間に装着した相間絶縁70の帯状絶縁部70aの固定子周方向に伸びた絶縁端部70abが無いことにより、絶縁端部70abに引出し線Xの引出しが邪魔されることなく容易に巻線端部から引出し線Xを引出す事ができる。また、引出し線Xを巻線上端部で引き廻す際スロットNO.7から引出した引出し線Xは、外層と中層の巻線間において固定子30の周方向に相間絶縁70を縫うように引き廻すことができるので巻線と引出し線が交差し、固定子軸方向両端部から飛び出している巻線を圧縮整形する際、巻線や引出し線の絶縁被覆、もしくは引出し線に被せた絶縁チューブを押し潰し絶縁不良となることのない品質に優れた電動機とすることができる。
【0046】
また、最初に、固定子のスロットに装着した相間絶縁70は絶縁端部70abの一方に設けた目印70cのある絶縁端部70ab側で長さが短い側もしくは、絶縁端部70abが全くない側の絶縁脚部70dの8a、9aから順に中層のW相を形成する巻線32の極間部の両側に位置するスロット31のスロット番号NO.8、9に挿入し、最後に、絶縁脚部8b、9bは極間部の両側に位置するスロット31に挿入した最初の絶縁脚部8a、9aと重なる様に挿入している。これにより、確実に外層巻線40と中層巻線50を絶縁することができ、尚且つ、固定子30のスロット31に巻線32を装着する際の巻線挿入機の挿入圧力や、固定子30の軸方向両端部から飛び出た巻線32を圧縮整形する際の拡張、縮小による相間絶縁70のずれや破損により接触することを防いでいる。
【0047】
また、図1に示しているように、固定子のスロット番号NO.11の内層から引出した引出し線Yは、中層と内層の間に装着した相間絶縁80の帯状絶縁部80aの固定子周方向に伸びた絶縁端部80abが無いことにより、絶縁端部80abに引出し線Yの引出しが邪魔されることなく容易に巻線端部から引出し線Yを引出す事ができる。また、引出し線Yを巻線上端部で引き廻す際スロットNO.11から引出した引出し線Yは、中層と内層の巻線間において固定子30の周方向に相間絶縁80を縫うように引き廻すことができるので巻線と引出し線が交差し、固定子軸方向両端部から飛び出している巻線を圧縮整形する際、巻線や引出し線の絶縁被覆、もしくは引出し線に被せた絶縁チューブを押し潰し絶縁不良となることのない品質に優れた電動機とすることができる。
【0048】
また、最初に、固定子のスロットに装着した相間絶縁80は絶縁端部80aaの他方に設けた目印80cのある絶縁端部80aa側で長さが長い側の絶縁脚部80dの10a、11aから順に内層のV相を形成する巻線32の極間部の両側に位置するスロット31のスロット番号NO.10、11に挿入し、最後に、絶縁脚10b、11bは極間部の両側に位置するスロット31に挿入した最初の絶縁脚部10a、11aと重なる様に挿入している。これにより、確実に中層巻線50と内層巻線60を絶縁することができ、尚且つ、固定子30のスロット31に巻線32を装着する際の巻線挿入機の挿入圧力や、固定子30の軸方向両端部から飛び出た巻線32を圧縮整形する際の拡張、縮小による相間絶縁80のずれや破損により接触することを防いでいる。
【0049】
尚、先に述べた様に図4の相間絶縁70、図5の相間絶縁80の帯状絶縁部70a、80aの固定子周方向の絶縁端部70ab、80aaに、固定子周方向の長さが長い側と短い側との重なりの順序を決めるための凹部の目印70c、80cを設けることにより、固定子30のスロット31に巻線32を装着し、相間絶縁70、80を装着する際の帯状絶縁部70a、80aの固定子周方向に伸びた絶縁端部70aa、70abおよび80aa、80abの重なりの順序を明確に判断することができ、固定子30の複数の巻線間に相間絶縁70、80を装着する際、相間絶縁70、80の装着方向の間違えがなくなり、巻線間を確実に絶縁することができる。
【0050】
また、これらの相間絶縁構造70、80を用いることにより固定子30のスロット31に複数相に挿入した巻線間を確実に絶縁することができ、固定子30のスロット31に装着した巻線端部から引出だされた引出し線を容易に引出す事ができ、作業に支障をきたす事もなく、巻線32と引出し線が交差することを極力低減することができ絶縁不良も低減することができる。これにより、冷蔵庫やエアコン等の駆動源として圧縮機に搭載する電動機の固定子30として用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1〜24・・・・スロット番号
1a〜24a、8b、9b、10b、11b・・・絶縁脚部
30・・・固定子
40・・・外層巻線(U相巻線)
50・・・中層巻線(W相巻線)
60・・・内層巻線(V相巻線)
70、80・・・相間絶縁
70a、70b、80a、80b・・・帯状絶縁部
70aa、70ab、70ba、70bb、80aa、80ab、80ba、80bb・・・・絶縁端部
70c、80c・・・目印(凹部)
70d、80d・・・絶縁脚部
90・・・・接続点
100a、100b、100c・・・絶縁チューブを被せた引出し線
100・・・クラスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子のスロットに異相を形成する複数層の巻線が装着され、前記巻線の巻線端部からは引出し線が引出され、前記巻線間を相間絶縁により絶縁した電動機において、
前記相間絶縁は、固定子の軸方向両端面から飛び出している巻線間を絶縁する帯状絶縁部と、前記固定子のスロット内を挿通し前記帯状絶縁部同士を複数の絶縁脚により繋いだ絶縁脚部で構成され、
前記帯状絶縁部の固定子周方向端部は、前記帯状絶縁部同士を繋いだ最も周方向外側に位置する絶縁脚部よりも固定子周方向外側に伸びた少なくとも1つの絶縁端部を有し、前記絶縁端部の周方向の長さは、一方の長さが他方の長さより短くした相間絶縁であり、
前記帯状絶縁部の前記絶縁端部が、複数層の巻線の内の一相を形成する巻線の極間部で重なる様に配置させ、
前記絶縁端部の長さが短い側から、前記巻線の巻線端部からの引出し線を少なくとも1箇所引出していることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記相間絶縁の前記絶縁脚部が、複数層の巻線の内の一相を形成する巻線の極間部の両側に位置する固定子のスロットに挿通させ、前記帯状絶縁部の絶縁端部が前記極間部で重なる様に配置させ、
前記絶縁端部の長さが短い側から、前記巻線の巻線端部からの引出し線を少なくとも1箇所引出していることを特徴とする請求項1項記載の電動機。
【請求項3】
前記絶縁端部の固定子周方向端部には、前記帯状絶縁部の絶縁端部が前記極間部で重ねて配置する際の重なりの順序を決めるための目印を設けたことを特徴とする請求項1項または請求項2項記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196000(P2012−196000A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56312(P2011−56312)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】