説明

電動粉挽き機

【課題】下石臼と上石臼との間隔を均一に保つことができ、製粉した粉の粒径が昔ながらの手動式の石臼と同様のものが得られ、装置を軽量小型にすることができる。
【解決手段】下面と上面とが互いに摺接する上石臼31と下石臼32とを同軸上に配置して、上石臼31は回転不能に固定されると共に下石臼32は減速手段43を介して駆動源41により回転自在に支持されてなる挽き臼を備えた電動粉挽き機1において、前記電動粉挽き機1は、上石臼31と下石臼32間の間隔を調整する間隔調製機構33を備え、かつ下石臼32の下面の中心部以外の複数箇所に弾性的に上方向の圧力を掛ける弾性支持手段39を備える。また、上石臼31と下石臼32間の間隔を調整する間隔調製機構33を備えかつ該下石臼の下面の複数の箇所に弾性的に上方向の圧力を掛ける弾性支持手段39を備えた挽き臼を備え、挽き臼3とホッパー2との間に粗挽き用の臼7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に2個の平たい円筒状の石臼を重ねて、間に穀粒を入れ一方の石を回して粉にする挽き臼に関するものであり、所望の粒径の粉が得られる家庭用の電動粉挽き機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、手作り嗜好に基づく趣味やアレルギー対策などのため、家庭でうどんやそばを手打ちして食したり、製パンしたりする場合があり、その粉も手作りのものを求め、自宅で製粉する需要が生じている。そのため、家庭で多くの労力を必要とせず、手軽に使用できる電動粉挽き機の提供が望まれている。ことに小麦粉やそば粉等が身体に適応しないアレルギー対策として、米の粉でパンを製造したい場合があるが、米パン製造に適した米粉を得難いため、その対策として家庭内で製粉したいという需要がある。本発明はこのような需要に対応するために、石臼をモータなどの駆動源により自動的に駆動し、製粉する電動粉挽き機に関するものである。
【0003】
従来、この種の家庭用の電動粉挽き機においては、挽き臼は上臼、下臼共に金属製のものを用いることが多い。これは臼として花崗岩などの天然石を用いると、臼自体の重みを利用して被粉砕物を粉砕、微粉化するため、臼が大型になり、駆動機構が大型かつ複雑になるので、業務用としてはよくても、家庭用には向かないためであった。しかしながら金属製の臼に比べ天然石の臼による方が粉の味が良いため、昔ながらの手動式の臼で挽いた粉と同様のものが得られる家庭用の電動粉挽き機が求められている。
【0004】
ちなみに、石臼で粉を挽くと、美味しい粉が得られる理由は、「三輪茂雄 著、コインブックス3『石臼のすすめ』、クオリ、1978年発行」にはおおよそ次のように述べられている。
【0005】
・ 粉焼けがない。現代の高速製粉機では粉砕エネルギーが石臼の百〜一万倍という値となり、粉砕の際にこのエネルギーは瞬間的に穀粒の局部に集中し、粉砕が行なわれた後はそれが穀粒の局部に広がり瞬間的に著しい高熱を発生する。これが穀物などの組織を破壊する。石臼にはこのような問題がない。
【0006】
・ 閉じ込め粉砕。石臼の目に閉じ込めた状態で粉砕するから、大量の高速気流に触れない。従って、香りが飛ばず粉塵発生も少ない。
【0007】
・ ブレンディング効果。石臼は粉砕と同時に石臼面で練る効果を併せ持っている。大きい粒子の周りに微粒子をまぶした状態がこれであり、自然の味を生かすのに大きな効果を発揮している。
【0008】
・ ベンチレーション効果。臼面の溝、特に上臼の溝は通気性がよく、臼面にこもる熱を防ぐから、臼面は連続粉砕しても体温ぐらいの温度以上には昇温しない。
【0009】
・ 剪断粉砕効果。石臼では叩くのではなく、剪弾力で剥がし取る作用が主体となって粉砕が行なわれる。これは物質固有の層状組織を壊さずに無理なく粉砕する効果を持っている。
【0010】
・ 石の粗面効果。一見石臼の目と同じ粗面を持つ金属や砥石で臼を作っても、同じ粉砕効果は出ない。これは石面の微細表面構造のためで、これが粒子を捉え、すべり摩擦による発熱を防ぐ。
【0011】
・ 粒度分布。石臼で粉砕すると粒度はあまりそろっていない。粗い粒子と、細かい粒子が混在している。機械製粉は粒度がそろっているが味が単調になる。例えば粗粉が風味を、微粉が粘りをというような複合効果がある。
【0012】
このような効果のために、石臼で挽いた粉が尊重され、その風味が愛される次第である。
【0013】
ところで、従来の製粉機としては下記特許文献1に開示されたものが知られている。この製粉機100は図4に示すように、下面と上面とが互いに摺接する上石臼117と下石臼116とを同軸上に配置して、上石臼117は回転不能に固定されると共に下石臼116は減速手段110、111a〜111c、112a、112bを介して駆動源114により回転自在に支持され、また上石臼117は適宜弾発手段118によってボルト119を介して下石臼116に強制的に圧接されている構成からなるものである。
【0014】
上石臼117は弾発手段118によって下石臼116に強制的に圧接されているが、弾発手段118の接触圧の強弱を調節できるようにすれば、穀物の種類に合った接触圧が設定でき、挽き具合が良好になるはずである。しかしながら、もし強固に固定された上石臼117の圧接力を変えるのみで、回転する下石臼116は中心を軸支する駆動軸のみによって支えた場合には、上下の臼の間に挽かれる穀物が介在すると、中心部の上石臼117と下石臼116の間隔と周辺部の上石臼117と下石臼116との間隔が変化したり、周辺部における上石臼117と下石臼116との間隔が場所によって変化したりするので、製粉した粉の状態が一定とならない。そのため、この製粉器100は、下石臼116を支持する強固な回転部材113が必要となり、内歯車を含む複雑な回転減速機構が必要であり、また、このため下石臼116を薄くすることができず、製粉装置を軽量かつ小型にすることができないため、装置は高価となって家庭用には不適当であるという問題点が存在している。
【0015】
また別の形式の製粉機としては下記特許文献2に開示されたものも知られている。この製粉機120は、図5に示すように、上側が固定擂潰盤126、下側が回転擂潰盤127としていて、機台板125a上に中台板125cを離間軸125dにより配置し、中台板125cに軸受筒部材128を縦設し、軸受筒部材128にスライド筒128aを上下摺動自在に内嵌装し、スライド筒128aに軸受128bにより主軸129を回転自在に縦設し、主軸129に回転擂潰盤127が着脱機構130を介して着脱自在に取付けられ、軸受筒部材128に回転擂潰盤127の上方において固定擂潰盤126を対向面間に擂潰間隙Hを形成して取り付けられているものであるが、機構が複雑であって装置は高価になり家庭用には不適当であるという問題点が存在している。
【特許文献1】特開2002−126546号(図3、段落〔0006〕、〔0011〕) 特許第3326556号(図6、段落〔0010〕、〔0011〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は、上述のような従来例の製粉装置の問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、固定された上石臼に対向して設けた下石臼の中心部以外の複数箇所を弾性支持手段で上方に向かって圧接支持して適度な圧接力を与えることによって上石臼を薄くかつ軽量化することができ、また下石臼の回転速度を遅くすることにより製粉された粉の粒径が在来の石臼同様になり、粉の味が向上することを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0017】
すなわち、本発明は、下石臼と上石臼との間隔が下石臼の周辺部で変化したり、あるいは圧接力が部分的に偏ったりする虞がなく、均一に保つことができ、製粉した粉の粒径が昔ながらの手動式の石臼と同様のものが得られ、装置を軽量小型にすることができる家庭用の粉挽き機を提供しようとするものである。
【0018】
また、本発明においては、下石臼を簡単な構造の弾性支持手段で支えることによって適度な圧接力が得られ、上石臼を軽量化し、全体の機構を簡単にして、家庭用として経済的な電動粉挽き機を提供しようとするものである。
【0019】
また、本発明においては、粗挽きの臼と、上石臼と下石臼からなる挽き臼との二段構造にすることによって、製粉した粉の粒径が昔ながらの手動式の石臼と同様のものが得られる家庭用の電動粉挽き機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明において、請求項1の発明は、下面と上面とが互いに摺接する上石臼と下石臼とを同軸上に配置して、該上石臼は回転不能に固定されると共に該下石臼は減速手段を介して駆動源により回転自在に支持されてなる挽き臼を備えた電動粉挽き機において、前記電動粉挽き機は、該上石臼と該下石臼間の間隔を調整する手段を備え、かつ該下石臼の下面の中心部以外の複数箇所に弾性的に上方向の圧力を掛ける弾性支持手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の電動粉挽き機において、前記電動粉挽き機は、前記上石臼とホッパーとの間に粗挽き用の臼を設け、この粗挽き用の臼を前記下石臼と同軸的に駆動したことを特徴とする。
【0022】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の電動粉挽き機において、前記下石臼の回転数を50RPM〜70RPMとしたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の電動粉挽き機において、前記弾性支持手段が、圧縮コイルばねと該圧縮コイルばねに回転可能に支持されたボールとを筒体で包み、該ボールの一部を該筒体から露出させたものであることを特徴とする。
【0024】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の電動粉挽き機において、前記上石臼と下石臼間の間隔を調整する手段は、前記弾性支持手段の上下方向の圧接力を可変するための手段からなることを特徴とする。
【0025】
また、請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の電動粉挽き機において、前記上石臼と下石臼の擂り合せ面が上石臼と下石臼のいずれも水平面であることを特徴とする。
【0026】
また、請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の電動粉挽き機において、前記弾性支持手段が、少なくとも3箇所で下石臼を支持していることを特徴とする。
【0027】
また、請求項8の発明は、請求項2に記載の電動粉挽き機において、前記粗挽き用の臼部分と、前記挽き臼部分がブロック化されて、取り外しでき、それぞれ分解可能にされていることを特徴とする。
【0028】
さらに、請求項9の発明は、請求項2に記載の電動粉挽き機において、前記粗挽き用の臼によって粒径が略750〜180μmの粉に粉砕され、前記挽き臼によって粒径が略180〜60μmの粉が80%以上を占めるように製粉することが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明によれば、下石臼はその下面に上石臼の方向に加勢する複数の弾性支持手段を有するので、下石臼は回転しながら固定された上石臼に適度の圧力で強制的に圧接される。圧接力は分散されていて下石臼の下面に均一かつ緊密な圧接力を与えることができる。また、下石臼が上石臼に強制的に圧接されるので、上石臼の重量を大きくする必要がなく、上石臼の重量以上の加重を掛けることができるから、上下の臼の重量が軽減でき、軽量化を図ることができるので粉挽き機を小型軽量化できる。
【0030】
請求項2の発明によれば、下石臼はその下面に上石臼の方向に加勢する複数の弾性支持手段を有し、下石臼は回転しながら固定された上石臼に適度の圧力で均一かつ緊密に強制的に圧接される。また、下石臼が上石臼に強制的に圧接されるので、上下の臼の重量が軽減でき、軽量化を図ることができ電動粉挽き機を小型軽量化できるとともに、上石臼と下石臼とからなる挽き臼とホッパーとの間に設けた粗挽き用の臼を有するので、この二段構造により、穀粉の粒度が適度に分布し昔ながらの手動式の臼で挽いたのと同様な風味の良い粉を得ることができる。
【0031】
請求項3の発明によれば、電動粉挽き機の挽き臼を石臼とし、下石臼の回転数を50RPM〜70RPMという低速にしたので、粉焼けがなく、閉じ込め粉砕、ブレンディング効果、ベンチレーション効果、剪断粉砕効果、粒度分布など前述した石臼特有の効果によって、風味の良い、昔ながらの手動式の石臼と同様の粉が得られる。
【0032】
また、請求項4の発明によれば、前記弾性支持手段が、圧縮コイルばねと圧縮コイルばねに回転可能に支持された金属ボールとを筒体で包み、金属ボールの一部を筒体から露出させたものであり、下石臼は弾性支持手段の回転する金属ボールを介して圧接力が加えられるように支持されているので、その回転を妨げられることがない。
【0033】
さらに請求項5の発明によれば、前記上石臼と下石臼間の間隔を調整することによって、弾性支持手段の上下方向の圧接力を可変し、弾性支持手段の接触圧を変えることができるので、穀物の種類に合った適度な接触圧を設定して良好な挽き具合を得ることができ、粉の粒度分布を変えることにより好ましい風味を得ることができる。
【0034】
さらにまた、請求項6の発明によれば、前記上石臼と下石臼の擂り合せ面が上石臼と下石臼のいずれも水平面であるので、石臼の加工が簡単で安価であり、経済的な電動粉挽き機を得ることができる。
【0035】
さらにまた、請求項7の発明によれば、前記弾性支持手段が、少なくとも3箇所で下石臼を支持しているので、下石臼と上石臼との間隔を均一に保つことができる。
【0036】
請求項8の発明によれば、上記請求項2に記載の電動粉挽き機において、粗挽き用の臼部分と、挽き臼部分がブロック化されて、取り外しでき、それぞれ分解可能になされているので、手入れが簡単で整備が容易である。
【0037】
請求項9の発明によれば、請求項2に記載の電動粉挽き機において、被粉砕物が粗挽き用の臼によって粒径が略750〜180μmの粉に粉砕され、挽き臼によって粒径が略180〜60μmの粉が80%以上を占めるように製粉することが可能であり、このような粒径の粉に挽くことによって、風味の良い、昔ながらの手動式の石臼と同様の粉が得られる。
【0038】
上記のように本発明によれば、上下石臼の厚みが薄く、下石臼の機構が簡単になり、家庭用として経済的な価格で、美味しい風味ある粉が得られる電動粉挽き機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電動粉挽き機を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0040】
図1は、第1の実施例にかかる電動粉挽き機の主要部の構成を示す正面断面図である。粉挽き機1は、大別してホッパー部2、挽き臼部3、駆動部4、排出部5及び機台部6からなり、機台部6の詳細は図示しないが、機台61に形成された円筒状の機体62の中に基板に脚枠を取り付けて形成されている。
【0041】
ホッパー部2は、粉挽き機1の上部に漏斗状の導入筒21を形成し、導入筒21の上部開口21aを被粉砕物の投入口としており、投入口には投入量の調節のため開閉可能な蓋部材22を取り付けることもできる。被粉砕物が投入されると中央部の導入口21bから下部にある挽き臼部3に送られる。
【0042】
挽き臼部3は、下面と上面とが互いに摺接する上石臼31と下石臼32とを同軸上に配置して、上石臼31は回転不能に固定され、下石臼32は軸受30内の主軸30aに連結されたジョイント30dに取り付けられ回転可能に支持されている。上石臼31と下石臼32は、例えば花崗岩等の天然石で形成され、円盤状で、その直径は10〜20cm、厚みが20mm程度である。なお、直径を10〜20cm程度としたのは、直径が10cm未満であると、臼内での被粉砕物の滞留時間が短いため十分に挽くことができず、所望の粒径を得られないからである。また、20cmを超えると、下石臼の重量が重くなりすぎて、臼を回転させるための大型の駆動源が必要となるため装置が大型化し、家庭用としては適さなくなるためである。
【0043】
上石臼31の下表面と下石臼32の上表面には穀物を擂り潰して挽くための凹凸の筋が刻まれている。凹凸の筋は、複数個の区画に分けられた盤面の各区画の内側から外側に伸びと、下石臼32では回転方向の後方に傾斜して複数個の凹溝と凸部が形成され、上石臼31は下石臼32は溝の方向が交差するよう対称的に形成されている。下石臼32は駆動部4の減速手段43を介して回転用モータ41により回転自在に軸支されている。挽き臼部3は、この種の粉挽き機においては、通常下臼の上面は上方に突出する円錐面として構成され、上臼の下面はそれに合うように中心部に掛けて窪んだ逆円錐形に形成されるが、この実施例では、上石臼31と下石臼32との擂り合わせ面はいずれも水平面として構成されているので、石臼の加工が容易であり、安価で経済的な電動粉挽き機を得ることができる。
【0044】
上石臼31と下石臼32との擂り合わせ面の間隔Gは、間隔調整機構33によって変更され、被粉砕物の種類に応じて適度に接触圧を調整し、挽き具合を良好にし、あるいは製粉した粉の粒度分布を制御するために調整できるようになっている。固定側の上石臼31は、機体62とホッパー2に固定された上部支持台34に設けた爪35を上面の穴36に差し込んで動かないように固定され、強固に保持されている。回転側の下石臼32は、間隔調整機構33のレバー37によって固定側の上石臼31に対して接近させたり、離反させたりできるようにした上下可動な鍋状の下部支持台38の中に収容され、下部支持台38の底部に取り付けられた弾性支持手段39上に載置されて保持されている。
【0045】
弾性支持手段39は、下石臼32の下面を支えるように下部支持台38の複数の箇所に備えられていて、弾性的に上方向の圧力を掛けるものである。本実施例において、弾性支持手段39は、圧縮コイルばね39aと圧縮コイルばね39aに載置した金属板39eに回転可能に支持された金属やセラミックなどのボール39bとを筒体39cで包み、ボール39bの一部を筒体39cから露出させたものである。弾性支持手段39は、下石臼32を歪なく支持できるには3点以上で支持することが必要であり、少なくとも3箇所で下石臼32を支持している。下石臼32は、弾性支持手段39の回転するボール39bを介して圧縮コイルばね39aの圧接力が加えられるようにして支持されているので、その回転を妨げられることはない。
【0046】
さらに弾性支持手段39は、上下方向の圧力を可変するために上下方向の可動手段39dを有してもよい。可動手段39dは、例えば筒体39cの外面に設けた螺子山に螺合する螺子溝を備えた固定子であってもよいし、複数の弾性支持手段39を支持する上下動可能なリング状の一枚の板であってもよい。弾性支持手段39が、上下方向の圧力を可変するための可動手段39dを有し、弾性支持手段39の接触圧を変えることができると、穀物の種類に適合した、より適度な接触圧を設定して、良好な挽き具合を得ることができる。
【0047】
上記のように、下石臼32はその下面に上石臼31の方向に加勢する複数の弾性支持手段39を有するので、回転しながら上石臼31に適度の圧力で強制的に圧接される。圧接力は複数の弾性支持手段39で分散されていて、下石臼32の下面に均一かつ緊密な圧接力を与えることができる。また、上石臼31はこれらの弾性支持手段39により均一な圧接力が加えられた下石臼32と擂り合わせるように支持されているので、所望の粒径に製粉された粉が得られる。また、下石臼32が上石臼31に強制的に圧接されるので、上石臼31の重量以上の加重を掛けることができるから、上下の臼の重量が軽減でき、軽量化を図ることができるので粉挽き機1を小型軽量化することができる。
【0048】
機台部6は、粉挽き機1の基礎部分をなし電源スイッチや制御部分を内蔵(図示せず)するが、その一部分で駆動部4の回転用モータ41を支持する。回転用モータ41は回転軸42が上方に向けて取り付けられ、上方に突出し減速手段43に連接係合する。また機台部6にはタイマーなどが設けられる。
【0049】
駆動部4の回転用モータ41は、減速手段43を介して下石臼32を回転させる。減速手段43は、実施例では図2に示すように、3段の歯車43a〜43cからなる減速機構を備えており、減速機構は支柱44で支えられたシャーシ45a、45bの間に装着されている。シャーシ45aの下面に取付けた回転用モータ41の回転軸42には駆動歯車46を取付けている。シャーシ45a、45bの間において中間軸47により中間歯車43bを取り付け主軸30aの下端部には従動歯車43aを取り付け、回転用モータ41の駆動歯車46により初動歯車43cを駆動し、中間歯車43b、従動歯車43aの各歯車を介して減速された速度で主軸30aを回転させ、下石臼32を回転させる。
【0050】
排出部5は、挽き臼部3によって粉砕された穀物粉などの被粉砕物が排出される。挽き臼部3の間隙Gに臨ませて粉排出口を形成してあり、鍋状の下部支持台38にはその排出口の近くに取り出し口51を設け、取り出し口51に粉バスケット52を脱着自在に配置している。
【0051】
以上の各部分は、機台部6の駆動部4の上に減速機構が、減速機構の上に挽き臼部3が、挽き臼部3の上にホッパー部2がそれぞれ組み立てられ粉挽き機1となる。そして、粉砕したい米などの穀物がホッパー部に投入されると、穀物はホッパーの導入筒21の下部の中央部にある導入口21bから挽き臼部3に落下し、挽き臼部3によって粉砕されて挽かれ、粉になって、下石臼32に取り付けられたブラシ(図示せず)で集められ、排出口から排出される。穀物粉などの被粉砕物がその排出口の近くに設けた取り出し口51から、脱着自在に配置した粉バスケット52に溜められる。
【実施例2】
【0052】
図3は、第2の実施例にかかる電動粉挽き機の構成を示す正面断面図である。
この実施例の粉挽き機の基本構造は図1の粉挽き機と共通しているので、同じ部分は同じ記号を付して説明を省略する。
【0053】
図3の実施例において、図1の実施例と異なる部分は、挽き臼部3の上部に粗挽き用の臼7を設けたことである。この粗挽き用の臼7の粉砕部の機構は、コーヒー豆を挽くものと類似の構造を備えている。ホッパーの導入筒21の下部にホッパー受け筒72を設け、ホッパー受け筒72は、導入筒21に接続されて導入路73を形成し、その内周面に固定粗挽き刃74を設けている。ホッパー受け筒72の中央には、回転用モータ41の回転軸42に減速機構を介して連結した挽き臼部3の主軸30aと、第二のシャフト30bを介して連結した第三のシャフト30cに主軸30aの回転に連動する回転粗挽き刃75を設ける。なお、30は主軸30aの軸受である。
【0054】
シャーシ45aの下面に取付けた回転用モータ41の回転軸42に駆動歯車46を取付け、これに初動歯車43cを連動させる。シャーシ45aとシャーシ45bとの間に設けた中間軸47に中間歯車43bを取り付け、主軸30aの下端部には従動歯車43aを取り付け、回転用モータ41により各歯車43a〜43cを介して必要な減速を得て、主軸30aを回転させる。
【0055】
回転粗挽き刃75のシャフトである第三のシャフト30cは、挽き臼部3の上石臼31の凹部に突出した第二のシャフト30bと連結されて回転するようになされている。回転粗挽き刃75は、第三のシャフト30cにナット締めで固定されており、ナットを外すことによって粗挽き用の臼7が分解され、取り外しできるようになっている。さらに、挽き臼部3も主軸30aと、第二のシャフト30bが分離できるようにしてあるため、粗挽き用の臼7を取り外した後、上石臼部の固定を解き、上石臼31と下石臼32を分解して取り外すことができる。このように粗挽き用の臼部分7と、挽き臼部分3がブロック化されているので、容易に取り外しでき、それぞれ分解して清掃や整備などの手入れを容易に行なうことができる。
【0056】
この実施例の粉挽き機においては、粗挽き刃74、75によって粗挽きされた被粉砕物は、導入筒76によって挽き臼部3に導かれて、上石臼31の中央部の穴に落とされ、上石臼31と下石臼32によって挽かれ、所定の粒径の粉に製粉される。この二段階の粉砕を米の粉の作成に適用した場合、粗挽き用の臼7によって粒径が略750〜180μmの粉に粉砕され、挽き臼3によって粒径が略180〜60μmの粉が80%以上を占めるように製粉することができた。このような粒径の粉に挽くことによって、風味の良い、昔ながらの手動式の石臼で挽いた場合と同様の粉が得られた。ちなみに250グラムの米の粉を作るための時間は約30分であった。
【0057】
本実施例においても、弾性支持手段39は、下石臼32の下面を支えるように下部支持台38の複数の箇所に備えられていて、弾性的に上方向の圧力を掛けるものである。本実施例の弾性支持手段39は、圧縮コイルばね39aと圧縮コイルばね39aに載置した金属板39eに回転可能に支持されたボール39bとを筒体39cで包み、ボール39bの一部を筒体39cから露出させたものである。弾性支持手段39は、下石臼32を歪なく支持できるには3点以上で支持することが必要であり、少なくとも3箇所で下石臼32を支持している。下石臼32は、弾性支持手段39の回転するボール39bを介して圧縮コイルばね39aの圧接力が加えられるようにして支持されているので、その回転を妨げられることはない。
【0058】
さらに弾性支持手段39は、上下方向の圧力を可変するために上下方向の可動手段39dを有してもよい。可動手段39dは、例えば筒体39cの外面に設けた螺子山に螺合する螺子溝を備えた固定子であってもよいし、複数の弾性支持手段39を支持する上下動可能なリング状の一枚の板であってもよい。弾性支持手段39が、上下方向の圧力を可変するための可動手段39dを有し、弾性支持手段39の接触圧を変えることができると、穀物の種類に適合した、より適度な接触圧を設定して、良好な挽き具合を得ることができる。
【0059】
上記のように、下石臼32はその下面に上石臼31の方向に加勢する複数の弾性支持手段39を有するので、回転しながら上石臼31に適度の圧力で強制的に圧接される。圧接力は複数の弾性支持手段39で分散されていて、下石臼32の下面に均一かつ緊密な圧接力を与えることができる。また、上石臼31はこれらの弾性支持手段39により均一な圧接力が加えられた下石臼32と擂り合わせるように支持されているので、所望の粒径に製粉された粉が得られる。また、下石臼32が上石臼31に強制的に圧接されるので、上石臼31の重量以上の加重を掛けることができるから、上下の臼の重量が軽減でき、軽量化を図ることができるので粉挽き機1を小型軽量化することができる。
【0060】
以上説明した実施例にかかわらず、本発明は米のみならず麦、大豆、とうもろこし等の穀類や干しきのこ、煮干、卵殻、干しえび、茶葉、漢方薬の原料等の製粉加工に用いることができる。
【0061】
なおまた、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、ホッパー部、挽き臼部、駆動部、排出部及び機台部の構造や形態は適宜変更して、採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、第1の実施例にかかる粉挽き機の構成を示す正面断面図である。
【図2】図2は、第1の実施例における減速手段の説明図である。
【図3】図3は、第2の実施例にかかる粉挽き機の構成を示す正面断面図である。
【図4】図4は、従来の粉挽き機の一例の要部を示す縦断面図である。
【図5】図5は、従来の粉挽き機の他の例の要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 粉挽き機
2 ホッパー部
3 挽き臼部
4 駆動部
5 排出部
6 機台部
7 粗挽き用の臼
21 導入筒
21a 上部開口
21b 蓋部材
21c 導入口
30 軸受
30a 主軸
30b 第二のシャフト
30c 第三のシャフト
31 上石臼
32 下石臼
33 間隔調整機構
34 上部支持台
38 下部支持台
39 弾性支持手段
39a 圧縮コイルばね
39b 金属ボール
39c 筒体
39d 可動手段
41 回転用モータ
42 回転軸
43 減速手段
74 固定粗挽き刃
75 回転粗挽き刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面と上面とが互いに摺接する上石臼と下石臼とを同軸上に配置して、該上石臼は回転不能に固定されると共に該下石臼は減速手段を介して駆動源により回転自在に支持されてなる挽き臼を備えた電動粉挽き機において、
前記電動粉挽き機は、該上石臼と該下石臼間の間隔を調整する手段を備え、かつ該下石臼の下面の中心部以外の複数箇所に弾性的に上方向の圧力を掛ける弾性支持手段を備えたことを特徴とする電動粉挽き機。
【請求項2】
前記上石臼とホッパーとの間に粗挽き用の臼を設けこの粗挽き用の臼を前記下石臼と同軸的に駆動したことを特徴とする請求項1に記載の電動粉挽き機。
【請求項3】
前記下石臼の回転数を50RPM〜70RPMとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動粉挽き機。
【請求項4】
前記弾性支持手段が、圧縮コイルばねと該圧縮コイルばねに回転可能に支持されたボールとを筒体で包み、該ボールの一部を該筒体から露出させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動粉挽き機。
【請求項5】
前記上石臼と下石臼間の間隔を調整する手段は、前記弾性支持手段の上下方向の圧接力を可変するための手段からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動粉挽き機。
【請求項6】
前記上石臼と下石臼の擂り合せ面が、いずれも水平面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動粉挽き機。
【請求項7】
前記弾性支持手段が、少なくとも3箇所で前記下石臼を支持していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電動粉挽き機。
【請求項8】
前記粗挽き用の臼部分と前記挽き臼部分は、ブロック化されて、取り外しでき、それぞれ分解可能にされていることを特徴とする請求項2に記載の電動粉挽き機。
【請求項9】
前記粗挽き用の臼によって粒径が略750〜180μmの粉に粉砕され、前記挽き臼によって粒径が略180〜60μmの粉が80%以上を占めるように製粉することが可能であることを特徴とする請求項2に記載の電動粉挽き機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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