説明

電動自動車の熱の全体制御のためのシステム

本発明は、電池を動力とする電気エンジンによって完全にまたは部分的に推進される自動車の客室(33)と電気部品との熱の全体制御のためのシステム(10)に関するものである。このシステム(10)は、システム(10)が車両外部の電力網に接続されるとき、上記流体がカロリーまたはフリゴリーを蓄積することを可能にする加熱手段(27)および/または冷却手段(4)に結合された熱制御流体回路(3)を含んでいる。上記流体回路は、回路と客室の空気との間の熱交換器(11c、11f)を介して、またはヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境回路(4)を使って、交互に、客室(33)の空気にカロリーおよび/またはフリゴリーを放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電気またはハイブリッド型の自動車の客室のための熱調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を備える自動車に関しては、電気自動車またはハイブリッド自動車は、客室内の空気の温度を調整するためのシステムを組み込んでいる必要がある。これらの調整システムは、乗客の快適さを確保し、曇り取りやガラス面の除氷といった追加機能を提供する。また電動車両は温度調節システムも組み込んでいる必要があり、温度調節システムは、充電器、コンピュータ、電子部品といったアクセサリの温度、および電気エンジンの温度(稼働時にはおおよそ20℃を保つ必要があり、50℃を超えてはならない)、ならびに電池の温度(さもなければ急速な再充電サイクルの間に高温まで上昇するおそれがあるはずであるが、その動作範囲は、例えば、−10℃から35℃までである)を調節する。
【0003】
内燃車両の調整システムの動作は、熱として「不可避的に放散される」大量のエネルギーを使用し、このエネルギーは、電気車両では利用できず、ハイブリッド車両でさえも、熱機関が相当な期間にわたって停止される可能性があると仮定すると利用できない。
【0004】
内燃機関を備える車両において実施される現在の解決策は、正の温度係数を有する抵抗素子(すなわち、過熱の危険を回避する自動調節抵抗器であるPTC)の使用、または熱エネルギーを発生させるための燃料バーナの使用と、客室内で冷気を発生させるための従来の空調システムとを必要とするはずである。しかし、燃料バーナには、汚染および騒音を発生し、燃料を充てんする必要があるという欠点があるのに対し、PTC素子または従来の空調システムは電気の消費側である。さらに、加熱/冷却システムは分離されていて1年の一部の間だけしか働かず、すなわち相当なコストと、冬季(加熱燃料を充てんする可能性がある)であれ、夏季(空調システムの電力消費による車両の走行距離低減を伴う)であれ、運転者の行動の変更とが生じることを意味する。
【0005】
現在は、例えば、EP1302731や、場合によってはFR2850060といった文献に記載されているような、加熱機能および空調機能を提供することができる客室温度調節装置がある。しかし、これらのシステムは依然としてエネルギーの消費側であり、したがって車両の走行距離を低減させる。
【0006】
特許出願FR2709097は、比熱としてのエネルギーのアキュムレータを含む調節装置を提案しており、このアキュムレータは、蓄熱器としても、蓄冷器としても動作することができる。このアキュムレータは、電池を充電している間に車両外部の電力網のエネルギーを使って、例えば、予熱のために電池によって放出される熱を使って、予熱または予冷される。しかし、システムの構成はアキュムレータが、客室の空気の温度を調整するためにだけ、アキュムレータの温度が必要な熱交換を確保するのに十分な客室との温度差を示す限りにおいて使用されることしか許容しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自動車の走行距離を維持するために、特にエネルギー消費の点で自動車の客室の熱調節を改善することによってこれらの欠点を軽減することである。本発明の別の目的は、電気部品の温度制御を、その効率および寿命を向上させるように確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主題は、電池を動力とする電気エンジンによって完全にまたは部分的に推進される自動車の客室および電気部品のための熱調節システムであり、このシステムは、システムが車両外部の電力網に接続されているときに熱または冷却を蓄積することを可能にする加熱手段および/または冷却手段に結合された熱調節流体回路を備える。流体回路は、回路と客室の空気との間の熱交換器を介して、またはヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路を介して、交互に、客室の空気に熱および/または冷却を放出することができる。
【0009】
優先的には、システムは、
−第1のポンプを供給元とし、客室に入る空気流の温度を調整するための、または電池の温度を調整するための第1の熱交換器を通る、客室のための第1の独立の熱調節流体回路と、
−第2のポンプを供給元とし、車両外部の空気と熱を交換する熱交換放熱器を通り、エンジンの温度を調整する第2の熱交換器を通る、エンジンのための第2の独立の熱調節流体回路と、
−第1の回路および/またはエンジン温度調整熱交換器に択一的に接続することができ、それ以外のときには、別個の独立の流体循環ループを形成することができる、第3の蓄熱流体回路と、
−第1の凝縮器・蒸発器を介して第3の流体回路から熱または冷却を取り込むことができ、第2の凝縮器・蒸発器を介して第1の流体回路にこの熱/冷却を放出することができる、ヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路と、
−第1の流体回路に、または第3の流体回路に連結され、第3の回路の温度、または相互に接続された2つの回路の温度を摂氏数十度だけ上げるのに使用される少なくとも1つの電気発熱体と
を含む。
【0010】
有利には、システムは、特に第1の回路と第3の回路との間の流体の交換を停止するのに使用される少なくとも3つの三方弁または3つの等価な装置であって、同時に、
−エンジン温度調整熱交換器と、第1の凝縮器・蒸発器と、第3の流体回路との間の流体の循環を確立する構成、
−車両外部の空気と熱を交換する熱交換放熱器と第1の凝縮器・蒸発器との間の流体の循環を確立する構成であり、これら2つの要素の流体の循環が第3の流体回路から隔離される構成、または、
−車両外部の空気と熱を交換する熱交換放熱器と、エンジン温度調整熱交換器と、第1の凝縮器・蒸発器との間の流体の循環を確立する構成であり、これら3つの要素の流体の循環が第3の流体回路から隔離される構成
を択一的に獲得するために使用される少なくとも3つの三方弁または3つの等価な装置を備える。
【0011】
好ましい実施形態によれば、弁は、第2の回路と第3の回路との間の流体の循環を遮断し、または復旧するのにも使用される。
【0012】
第3の回路は、第1の凝縮器・蒸発器をこの回路から除外するのに使用される弁およびバイパス管路を備えていてもよく、1つまたは複数の凝縮器・蒸発器をこの回路から選択的に除外するのに使用される複数の弁および複数のバイパス管路を備えていてもよい。
【0013】
有利には、システムは、外気温度センサ、第1の流体回路上または車両の客室内に配置された熱センサ、第2の流体回路上またはエンジン上に配置された熱センサ、および第3の流体回路上に配置された熱センサを備えていてもよい。
【0014】
優先的には、第3の回路に含まれる流体の体積は第1の回路に含まれる流体の体積および第2の回路に含まれる流体の体積より大きい。
【0015】
第3の流体回路は、相変態蓄熱器といった蓄熱手段との熱交換器を備えていてもよい。
【0016】
別の態様によれば、本発明の主題は、電池を動力とする電気エンジンによって完全にまたは部分的に推進される自動車の客室および電気部品のための熱調節方法である。この方法は、加熱手段および/または冷却手段に結合された、熱調節流体のための管路の回路を備える装置によって実施される。方法は、
−車両が、特に車両の電池を再充電するために車両外部の電力網に接続されているときに、流体回路に熱または冷却を蓄積するステップと、
−次いで、最初に回路と客室の空気との間の熱交換器を介して、次にヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路を介して、流体回路から客室の空気に熱(あるいは冷却)を供給するステップと
を含む。
【0017】
優先的には、方法を実施するために、車両は、
−第1のポンプを供給元とし、客室に入る空気流の温度を調整するための、または電池の温度を調整するための第1の熱交換器を通る、客室のための第1の独立の熱調節流体回路と、
−第2のポンプを供給元とし、車両外部の空気と熱を交換する熱交換放熱器を通り、第2のエンジン温度調整熱交換器を通る、エンジンのための第2の独立の熱調節流体回路と、
−第1の回路および/またはエンジン温度調整熱交換器に択一的に接続することができ、それ以外のときには、別個の独立の流体循環ループを形成することができる、第3の蓄熱流体回路と、
−第1の凝縮器・蒸発器を介して第3の流体回路から熱/冷却を取り込むことができ、第2の凝縮器・蒸発器を介して第1の流体回路にこの熱/冷却を放出することができる、ヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路と
を備えており、方法は、
−車両を発進させる前に、車両外部の電力網のエネルギーを使用して、発熱体または環境制御回路を用いて、車両外部の空気の温度に対して第3の蓄熱流体回路の温度を上げることにより(あるいは下げることにより)、場合によっては第1の回路に連結される、第3の蓄熱流体回路に熱(あるいは冷却)を蓄積するステップと、
−車両を発進させた後で、環境制御回路を停止させ、第3の回路を第1の回路および/またはエンジン温度調整熱交換器に連結し、第3の流体回路に蓄積された熱(あるいは冷却)を、客室の温度と、これに加えて場合によってはエンジンおよび/または電池の温度とを調整するステップと、
−第3の回路の流体の温度が客室の空気の温度との差を表す最小偏差と交差するときに、第1の回路と第3の回路との間の流体循環を切り離し、ヒートポンプまたは空調システムを作動させ、最初に第1の回路または客室と第3の回路との間で、次に第1の回路または客室と第2の回路の少なくとも一部との間で、第3の回路に特有の管路の流体循環を停止させるステップと
を含む。
【0018】
好ましい実施態様によれば、外気の温度、エンジンの熱交換器上の温度、車両の客室内の温度、および第3の流体回路の温度は、第1、第2、および第3の各流体回路がどのように接続されるべきか決定し、環境制御回路の動作モードまたは動作の欠如を決定するために相互に比較される。
【0019】
本発明の他の目的、利点および特徴は、非限定的な例として提示され、添付の図によって例示されるいくつかの実施形態の詳細な説明を考察すれば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の冬季動作モードにおける本発明による熱調節システムを示す図である。
【図2】第2の冬季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図3】第3の冬季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図4】第4の冬季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図5】第5の冬季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図6】第1の夏季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図7】第2の夏季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図8】第3の夏季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図9】第4の夏季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図10】第5の夏季動作モードにおける図1の熱調節システムを示す図である。
【図11】第1の冬季動作モードにおける本発明による別の熱調節システムを示す図である。
【図12】第2の冬季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図13】第3の冬季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図14】第4の冬季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図15】第5の冬季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図16】第1の夏季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図17】第2の夏季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図18】第3の夏季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図19】第4の夏季動作モードにおける図11の熱調節システムを示す図である。
【図20】その冬季動作モードの1つにおける本発明による第3の熱調節システムを示す図である。
【図21】その夏季動作モードの1つにおける図20の熱調節システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜21において、図番の横の「雪片」(あるいは「太陽」)の絵文字は、表されている動作モードが冬季(あるいは夏季)動作モードであることを想起させるためのものである。
【0022】
図3に示すように、本発明による熱調節システムは、環境制御回路4と、3つの独立の流体回路1、2および3とを備え、3つの回路すべてに同じ伝熱流体、例えばグリコール水溶液などが通される。環境制御回路4は、冷媒、例えば、メタンまたはエタン(フレオン)のフッ素化および/または塩素化誘導体、炭化水素、アンモニア、二酸化炭素などが通された管路の2つの半ループ28および29を備える。
【0023】
慣例により、図1〜21において、白い背景で表された管路の部分は、流体の循環が停止されている管路を概略的に表す。
【0024】
慣例により、図1〜21において、その幅が黒または影付きの背景(影は点線とすることができる)を有する同じ種類の流体(冷媒または伝熱流体)を搬送することのできる管路の部分は、流体が循環している管路を概略的に表す。その場合、黒い背景、または各種の影付けは、それぞれ、異なる流体温度を表すものである。しかし、異なる種類の流体を搬送する、同じ黒い背景で、または同じ種類の影付けで表される2つの管路は、必ずしも、同じ温度であるとは限らない。
【0025】
半ループ28と半ループ29とは、一方の側で温度自動膨張弁9によって、他方の側で圧縮機8によって連結されており、圧縮機8には切換弁14によって接続されている。半ループ28は第1の凝縮器・蒸発器41を通る。半ループ29は第2の凝縮器・蒸発器42を通る。回路4に沿った矢印は冷媒の循環の方向を示す。冷媒は圧縮機を、常に同じ方向で、すなわち図3の説明図の左から右へ通過する。切換弁14の位置に応じて、冷媒は回路4を、時計回りに通過することもあり、反時計回りに通過することもある。
【0026】
従来方式では、冷媒は、温度自動膨張弁9を通過した後で、それが次に通過する凝縮器・蒸発器、ここでは凝縮器・蒸発器41から熱を取り込むことによって気化し、凝縮器・蒸発器41は、冷却されるべき伝熱流体に対して冷却源として働く。圧縮機8は気化された流体を吸い込み、気化された流体がそこで熱を放出することによって凝縮する他方の半ループの凝縮器・蒸発器、ここでは凝縮器・蒸発器42にそれを吐き出し、凝縮器・蒸発器42は、再加熱されるべき伝熱流体に対して熱源として働く。
【0027】
圧縮機8は、車両の電気エンジンによって駆動されてもよく、あるいは独自の電動機を備えていてもよく、あるいはハイブリッド圧縮機とすることもでき、あるいは車両の熱機関によって駆動される圧縮機とすることもできる。
【0028】
第1の独立の流体回路1は、逆止弁26を介して凝縮器・蒸発器42に向けて流体を送るポンプ5を備える。凝縮器・蒸発器42を通過した後で、伝熱流体は、三方弁15を通って加熱枝路1cへ向かい、または冷却枝路1fへ向かう。次いで枝路1cおよび1fは合流して伝熱流体をポンプ5に導く。回路1の管路に沿って配置された矢印は伝熱流体の循環の方向を示す。各枝路1cおよび1fはそれぞれ、熱交換器11eおよび11fを含み、熱交換器11eおよび11fはどちらも、車両の客室33内に位置し、熱、あるいは冷却を、伝熱流体回路1から客室の空気に転移させるのに使用される。回路1と客室の空気との間の熱交換器を改善するために、ファン25を使って、熱交換器11eおよび11fを介して客室から空気が引き込まれる。
【0029】
加熱と冷却のために2つの別々の交換器を使用することにより、前に客室を冷却するために使用されており、その上で水が凝縮している交換器に熱い伝熱流体が送り込まれる場合に特に発生し得る窓の曇りの問題を限定することが可能になる。
【0030】
図3の構成において、環境制御回路4のための熱源として働く凝縮器・蒸発器42は、伝熱流体に熱を転移し、電熱流体は次いで客室の空気を再加熱するために熱交換器11eに熱を転移する。回路1の経路上には、凝縮器・蒸発器42によって提供される熱に加えて、またはこれとは独立に、この回路の伝熱流体を再加熱することができるように、PTC発熱体27が配置されている。このPTC素子は図3においては作動していない。PTC素子は、異なる実施形態によれば、別の加熱装置で、例えばヒートポンプ(不図示)などで置き換えられてもよい。第2の熱調節回路2は、電気エンジン、例えば車両を推進するのに使用され、かつ/または、別の異なる実施形態によれば、他の任意の電気もしくは電子構成部品(充電器、蓄電池、電力電子部品)の温度を調整するのに使用される熱交換器12に三方弁18を介して伝熱流体を送るポンプ7を備える。
【0031】
伝熱流体は次いでこの熱交換器12から放熱器13へと方向付けけられ、放熱器13は、伝熱流体とこの放熱器を通過する空気との間の熱交換器、放熱器に空気を引き込むためのファン24、および放熱器を通過する空気流を制限し、それによって車両の空気力学を改善するためのシャッタシステム30を備える。
【0032】
第3の熱調節回路3は、熱または冷却を環境制御回路4と交換するための凝縮器・蒸発器41を介して伝熱流体を送るポンプ6を備える。
【0033】
凝縮器・蒸発器41を通過した後で、伝熱流体は、三方弁17を、次いで三方弁16を通り、ポンプ6へと再注入される。バイパス管路31は、弁32によって開閉することができ、ポンプ6を通さずに、または凝縮器・蒸発器41を通さずに、伝熱流体をポンプ6の上流から2つの三方弁16と17との間に位置する1点まで直接導くのに使用することができる。
【0034】
調節回路2および3においては、調節回路1の場合と同様に、伝熱流体の循環の方向は管路に沿って配置された矢印によって示されている。回路3の三方弁16と回路1の凝縮器・蒸発器42の上流側との間には管路19が配置されている。
【0035】
よって、三方弁16の構成に応じて、この弁16の上流から到達する伝熱流体は、ポンプ6に直接方向付けられるか、凝縮器・蒸発器42により、三方弁15と、2つの熱交換器11eまたは11fのうちの1つとを経て、最終的にポンプ6に還流する前に、回路1の枝路1cと枝路1fの下流に配置され、ポンプ5の上流側とポンプ6の上流側の間に配置された管路20を通って方向付けられる。
【0036】
三方弁16と管路20との間の回路3上には、異なる伝熱流体回路間の流体流量の平衡化を確保するために、断面絞り部(section restriction)21が配置されていてもよい。
【0037】
回路3の三方弁17と回路2の三方弁18との間には管路22が配置されている。この管路は、凝縮器・蒸発器41からの伝熱流体の全部または一部が、電気エンジンの温度を調整するのに使用される熱交換器12に向かって流れることを可能にする。
【0038】
管路23は、電気エンジンの熱交換器12の下流側を回路3のポンプ6の上流側に連結する。この管路23は、エンジンの熱交換器12から来る伝熱流体の全部または一部がポンプ6を流れることを可能にする。図3に描かれている構成において、三方弁16、17および18は、管路19内にも管路22内にも伝熱流体も循環させないように設定されている。次いで、伝熱流体の独立の循環が、管路20および23内に伝熱流体を通さずに、またはその最小限の通過しか伴わずに、回路1、2および3のそれぞれについて確立される。
【0039】
実際には、管路20および23内の流体は、回路1と回路3との間を、あるいは回路2と回路3との間を流れるため、例えば、回路3内に存在する液体の総量を増大させる傾向が生じるはずであり、これは、この回路の構成によっても、液体の非圧縮性によっても許容されない。
【0040】
図3の構成において、熱調節回路2は、電気エンジンであれそれ以外であれ、エンジンのための従来の冷却回路として動作し、ポンプ7は、エンジン調整熱交換器12と、エンジン外部の空気と熱を交換する熱交換放熱器13とにおいて、連続して伝熱流体を循環させる。したがって、エンジンにより交換器12内の伝熱流体に放出される熱は、次いで、伝熱流体によって、放熱器13においてファン24により引き込まれる外気に放出することができる。放熱器のシャッタ30は開いている。
【0041】
回路1は加熱回路として動作し、凝縮器・蒸発器42からの熱、および場合によってはPTC抵抗器27である2つの熱源からの熱を、ファン25によって引き込まれる客室33の空気が通過する熱交換器11eに導く。図3の例示的実施形態においてPTC27は作動していない。回路1の伝熱流体はポンプ5によって推進される。
【0042】
調節回路3は、図3では、凝縮器・蒸発器41を通る冷却源として働き、環境制御回路4により調節回路3から取り込まれる熱は次いで凝縮器・蒸発器42において回路1に放出される。環境制御回路4はしたがってヒートポンプとして動作する。そのようなヒートポンプの効率は、冷却源、すなわち回路3を通る伝熱流体の温度と、熱源、すなわち回路1を通る伝熱流体の温度との温度差が小さいときにはいっそう有利である。
【0043】
次に、図1〜10を参照して、図3の調節システム10の異なる動作モードを説明する。図1〜10は図3と共通の要素を含み、その場合同じ要素には同じ参照符号が付いている。
【0044】
図1に描かれている動作モードにおいて、車両(不図示)は、電池(不図示)に再充電するために、外部電力網(不図示)に接続されている。また電力網のエネルギーは、PTC抵抗器27によって回路1の伝熱流体の温度を上げるのにも使用される。弁16および17は、回路1および回路3を回路2から隔離することにより回路1と回路3とを相互接続するように設定されている。したがって伝熱流体は回路1、3と管路19および20とを循環する。
【0045】
環境制御回路4は作動しておらず、回路2およびそのポンプ7も同様である。弁15は、伝熱流体が熱交換器11eに送り込まれ、伝熱流体の循環が交換器11fにおいて停止されるように設定されている。伝熱流体の循環はポンプ5および/またはポンプ6によって確保される。PTC抵抗器によって発生し、交換器11eを通る伝熱流体によって伝えられる熱は、ファン25を作動させることにより客室の温度を上げるのに使用される。所望の客室温度が得られた後で、ファン25を停止し、かつ/または客室の温度をその設定値に維持するための時間間隔で再始動することができる。この時間の間、回路1および3に含まれる伝熱流体の温度は、例えば、液体の沸点温度によって、かつ/または管路の耐熱性によって決定される温度までPTC素子によって引き続き再加熱される。伝熱流体の高い比熱と、回路1および3、特に回路3に含まれる液体の結果的に生じる体積とのおかげで、ある量のエネルギーがこのように比熱として蓄積され、この比熱は、客室を加熱するために電池から取り込まれなくてもよい。回路3は、伝熱流体のタンク(不図示)、すなわち、所与の長さの直線部分において、回路のいくつかの同等の長さの管路と同等の分を局所的に貯蔵するための貯蔵体積を備えていてもよい。このタンクは断熱されていてもよい。そのようなタンクを加えることにより、回路3の液体の総量を増大させることが可能になる。タンクの外表面の断熱により、少ない断熱表面積で、液体の単位体積当たりの液体の熱損失を十分に制限することが可能になる。また、回路3の、またはその他の伝熱流体回路の管路のある一定の部分も断熱されてもよい。
【0046】
熱調節システム10の温度が、例えば、図1に対応する動作モードに従って、予備調整された後で、車両は、外部電力網から切断することができ、熱調節システム10を図2に対応する構成に配置することにより発車することができる。この構成では、図3の構成の場合と同様に、調節回路2は独立の回路として動作し、ポンプ7は伝熱流体を電気エンジン調整交換器12に通し、次いで、開いたシャッタ30を介してファン24によって引き込まれる外気によって冷却された放熱器13に通す。
【0047】
図2において環境制御回路4は停止されている。三方弁15は、伝熱流体を、回路1の枝路1cに送り込み、客室を加熱するための熱交換器11eに通すように設定されている。PTC抵抗器27は停止されている。三方弁16は、伝熱流体による管路19の通過を可能にし、伝熱流体による絞り部21の循環を停止するように設定されている。よって調節回路1および3は相互接続されており、伝熱流体の循環はポンプ5および6によって確保されている。2つのポンプのうちの1つだけでの流体の循環の確保を想定することも可能なはずである。よって回路1および3に含まれる伝熱流体は、熱交換器11eを介して客室の空気に、蓄積された熱エネルギーを徐々に放出することができる。また絞り部21を通過する回路3の枝路に蓄積される熱を利用するために、調節システムによって決定される時間間隔により、この枝路の液体を循環させるために三方弁16の設定を変化させることも可能である。
【0048】
この構成では、客室33の温度を調整するために消費される電気エネルギーは、1つまたは複数のポンプ5、6を作動させるのに必要なエネルギーと、これに加えて場合によってはファン25を作動させるのに必要な電気エネルギーだけである。
【0049】
客室との熱交換の強度は、例えば、ポンプ5および6によって交換器11eを通る伝熱流体の流量を変更することにより、また、ファン25によってこの同じ交換器を通る空気流を変更することにより調節することができる。この動作モードは、伝熱流体の温度が、客室の空気の所望の温度に、伝熱流体と客室の空気との間の熱交換が十分な速度で行われ、客室の空気の冷却をもたらすその他の熱損失が補償されることを可能にするのに必要とされるある一定の温度差を加えたものより大きいままの状態である限り、維持することができる。
【0050】
伝熱流体の温度が客室の空気の温度に近づきすぎるときに、伝熱流体の温度がこの客室の空気の温度よりわずかに低くなると、熱調節システム10を、図3に対応する動作モードに従って作動させることができる。
【0051】
この図3の構成において、PTC抵抗器27は非作動状態のままであり、調節回路2は、放熱器13によって電気エンジンを冷却するために独立に動作し続ける。冷却回路4は作動しており、切換弁14は、凝縮器・蒸発器41が冷却源として動作し、凝縮器・蒸発器42が熱源として動作するように設定されている。三方弁15は常に、伝熱流体を、回路1の枝路1cおよび客室を加熱するための熱交換器11eに通すように設定されている。三方弁16は、伝熱流体による管路19の通過を妨げるように設定されている。したがって調節回路1および3は、切り離された状態で、すなわち、2つの回路間の伝熱流体の交換を生じずに動作する。回路1内の流体の循環はポンプ5によって確保され、回路3内の液体の循環はポンプ6によって確保される。
【0052】
ファン25は、必要に応じて、回路1の伝熱流体と客室の空気との間の熱交換を増大させるように作動され得る。空調回路4は、ここでは、ヒートポンプとして動作し、回路3の伝熱流体から熱を取り込みその熱を回路1の伝熱流体に転移させる。回路3の液体の温度は、この段階においては外気の温度より高く、回路2の温度より高いままであるため、回路4からなるヒートポンプの効率および性能は、冷却源が外気であり、または電気エンジンの冷却回路2であるはずのヒートポンプの効率および性能より有利な状態にとどまる。よって、客室の空気を十分なレベルに維持し続けるのに必要とされる電力消費は限られた量のものである。さらに、ヒートポンプは、前述の構成においては、非常に低い外部温度の場合でさえも、すなわち、その冷却源が外気であり、または回路2であるはずのヒートポンプがもはや十分ではなくなり、追加のPTC抵抗器が必要になるはずの温度でさえも、客室の加熱を確保することを可能にする。この場合は、PTC抵抗器の効率はヒートポンプの効率と比べて大幅に不利である。回路3上にPTC(PTC抵抗器)を備えるはずの様々な実施形態を想定することができ、このPTCは回路3の伝熱流体の漸進的冷却を減速するのに使用される。そのような回路3上のPTCは、回路1のPTC27と置き換え、図1に描かれている予熱ステップに使用することができる。また、2つのPTC、すなわち、回路1上のPTC27と回路3上の第2のPTCがある異なる実施形態を想定することも可能であり、第2のPTCは、図3の構成における回路3の温度を維持するのに低電力のPTCで済ませることを可能にする。
【0053】
図4に、図3の冬季動作モードと同様の、例えば、図3の冬季動作モードに続いて適用することのできる冬季動作モードを示す。図4において、三方弁17および18は、管路22および23における伝熱流体の循環を可能にし、放熱器13から到達する流体の循環を阻止するように設定されている。ポンプ7は作動されておらず、ファン24も同様である。シャッタ30は、場合によっては、車両の空気力学を向上させるために閉じられていてもよい。調節回路1および3は、伝熱流体を交換しない2つの独立の回路として動作し続ける。電気エンジン温度調整熱交換器12は、調節回路3に接続されている。この構成は、回路3の伝熱流体の温度が、交換器12によって冷却される電気エンジンの十分な冷却を確保するのに十分な低さになったときに推奨される。この構成により、電気エンジンから回復される熱を、環境制御回路4によって活用することができる。よって、環境制御回路の冷却源と熱源との温度差は制限され、上記環境制御回路の効率が改善される。
【0054】
図5に、回路3の伝熱流体の温度がある一定の閾値未満まで低下した後で、例えば、図3または図4の種類の熱調節システム10の構成を経た後に用いることができる、図1〜4の熱調節システム10の別の構成を示す。図5の構成において、調節回路1は、図3および4の構成の場合と同様に独立の回路として動作し続ける。PTC抵抗器27は作動しておらず、伝熱流体は熱交換器11eを通り、ファン25は、伝熱流体と客室33の空気との間の熱交換の所望の度合いに従って速度制御することができる。環境制御回路4は、冷却源として働く凝縮器・蒸発器41と熱源として働く凝縮器・蒸発器42との間でヒートポンプとして動作し続ける。調節回路3は停止されている。すなわち、三方弁16および17は、ポンプ6と凝縮器・蒸発器41とを含む回路3の枝路においてのみ伝熱流体の通過を可能にするように構成されている。三方弁17および18は、この枝路の循環を調節回路2の伝熱流体の循環と結合するように構成されている。その場合調節回路2は、ポンプ7と、電気エンジン調整熱交換器12と、放熱器13と、ポンプ6と、凝縮器・蒸発器41とを備える。
【0055】
2つのポンプ6および7のうちの一方だけを使用してこの回路内の伝熱流体を推進することを想定することも可能である。
【0056】
図5の構成では、図4の構成の場合と同様に、電気エンジンによって放出される熱は、環境制御回路4を構成するヒートポンプの効率を改善するのに使用される。図4の構成と比べて、電気エンジンからの熱によって再加熱される伝熱流体の体積はより小さく、そのため、エンジンからの熱を、例えば、回路3の体積に対応する伝熱流体の体積に対して分配することにより得られるはずの温度より高い温度まで回路2の伝熱流体を再加熱することが可能になる。しかし、回路2の温度は、電気エンジンの最大動作温度によって決定される最大レベルより下に維持されなければならない。回路のこの温度が高くなりすぎるときには、ファン24を作動させ、シャッタ30を開くことができる。しかし、この温度が十分に低い場合には、シャッタ30を閉じ、ファン24を停止することが可能であり、それによって、環境制御回路4の動作に好都合な電気エンジンによって放出される最大量の熱を回復することが可能になる。また、後者の場合には、三方弁18を作動させて放熱器13およびポンプ7における伝熱流体の循環を妨げることも可能である。その場合回路2の伝熱流体は、ポンプ6によって推進される交換器12および41においてのみ循環する。
【0057】
図6に、車両が停止され、その電池に再充電するために外部電力網に接続されるとき、および(例えば夏季における)外部温度が、乗客が客室において求める温度より高いときの熱調節システム10の可能な動作モードを示す。三方弁15は、今度は、回路1の伝熱流体を枝路1fと、客室33を冷却するための熱交換器11fに通すように設定されている。三方弁16は、図1の構成と同じ構成にあり、よって、管路19および20を通る調節回路1と調節回路3の間の結合を実現する。バイパス回路31の弁32は、図1〜5では閉じられていたが、ここでは開いており、回路1から三方弁16を通ってバイパス回路31に至る伝熱流体の到来を可能にする。三方弁17は図5の場合と同じ構成にあり、それによって、回路3のポンプ6および凝縮器・蒸発器41を含む枝路が除外され、他方、この枝路が調節回路2に結合される。三方弁18は、凝縮器・蒸発器41から放熱器13への循環を可能にするが、電気エンジン調整熱交換器12への伝熱流体の循環を妨げるように設定されている。
【0058】
回路2における伝熱流体の循環は、例えば、ポンプ6によって確保することができ、ポンプ7は停止されている。放熱器のシャッタ30は開いており、ファン24は、放熱器13を通過する外気の流れによる回路1の伝熱流体の冷却を可能にするように作動される。環境制御回路4は空調モードで動作する。すなわち、切換弁14は、凝縮器・蒸発器42を冷却源として、凝縮器・蒸発器41を熱源として使用するように設定されている。したがって環境制御回路4は、結合された回路1および3から熱を取り込み、この熱を回路2に放出し、この熱が回路2の温度を上げる。ファン25は、最初は客室の空気が乗客によって求められる温度に下がるまで作動させ、次いで、少なくともある時間間隔にわたって切断することができ、一方環境制御回路4は、2つの結合された回路1および3の温度が、伝熱流体の濃縮および/または管路の耐冷性の危険が許容する最小温度まで降下するまで作動され続ける。よって、回路3を循環し、場合によっては回路3の貯蔵タンク(不図示)においても循環する伝熱流体には最大限の冷却が蓄積される。
【0059】
この最小温度に到達した後で、ファン24およびポンプ6は、回路2の温度を周囲空気の温度に近い値に戻すために、少しの間作動させ続けることができる。これらの動作の後には、2つのループ1および3上に冷却が蓄積されており、この冷却は、車両が走行しているときに、車両の電池からエネルギーを取り込まずに、客室を冷却し、また場合によっては電気部品を冷却するために使用することができる。
【0060】
図7に、図2の動作モードと比較的類似した動作モード、すなわち、調節回路2が交換器12によって電気エンジンを冷却するように独立に動作し、伝熱流体が連続してポンプ7、熱交換器12および放熱器13を通り、シャッタ30が開いており、ファン24がエンジンの冷却の必要に従って作動され得る動作モードが描かれている。三方弁16は、この場合もやはり、管路19および20を介して回路1および3の伝熱流体の循環を結合するように構成されている。三方弁15は、伝熱流体を、回路1の枝路1fおよび客室の空気を冷却するための熱交換器11fに通すように構成されている。ファン25は、客室の空気の冷却の必要に応じて、作動させることも停止することもできる。弁32ならびに三方弁17および18は、回路3のポンプ6および凝縮器・蒸発器41を備える枝路を除外し、他方、バイパス回路31を通る伝熱流体の循環を可能にするように設定されている。図7に従った動作の変形を想定することも可能であり、それらの変形は、バイパス回路31を通るのではなく、ポンプ7および凝縮器・蒸発器41を備えるこの枝路における伝熱流体の通過を可能にするはずであることに留意すべきである。同様に、図2に従った変形動作モードを想定することも可能であり、この動作モードでは、回路3の伝熱流体は、ポンプ6および凝縮器・蒸発器41を通るのではなく、バイパス回路31を通るはずである。環境制御回路4は停止されている。客室の空気の冷却は、熱交換器11fを介して回路1および3の伝熱流体によって放出される冷却によって確保され、これらの熱交換の強度は、一方ではポンプ5によって強いられる伝熱流体の流量を変更することによって、他方ではファン25によって交換器11fを通る空気の流量を変更することによって調節することができる。
【0061】
したがって、この動作モードでは、客室の空気の適切な温度を保つのに、ポンプ5およびファン25を作動させるために必要とされる電気エネルギーさえあればよい。
【0062】
図8に、夏季に、回路1および3の伝熱流体の温度がまだ客室の空気の冷却を確保するのに十分なほど低く、外気が、調節回路2によって、電気エンジンの(および/または、変形形態によれば、エンジンのアクセサリ(充電器、電子部品)および/または電池の)十分な冷却を確保するには高すぎる温度であるときに使用することができる熱調節システム10の動作モードを示す。
【0063】
図8の構成は、バイパス回路31の弁32が閉じられており、三方弁17および18が、電気エンジン温度調整熱交換器12内の回路3の流体の通過を可能にするように設定されているという点で、図7の構成と異なる。したがって、回路1および3の伝熱流体に蓄積された冷却は、一部は交換器11fにおいて客室の空気に、一部は交換器12において電気エンジンに放出される。
【0064】
図9に熱調節システム10の夏季動作モードを示す。この夏季動作モードは大体において図3に描かれている冬季動作モードと同様である。調節回路2は独立の回路として動作し、ポンプ7は、伝熱流体を推進して内燃機関調整交換器12に通し、次いでファン24によって引き込まれる外気が通過する放熱器13に通す。三方弁16および17は、回路1と回路3とに別々の伝熱流体の循環を強いるように設定されている。回路3において弁32は閉じられている。図3の場合と異なり、三方弁15は、伝熱流体に、回路1の枝路1fと、客室の空気を冷却するための交換器11fとを通過させる設定にある。
【0065】
ポンプ5、6、および7はそれぞれ、調節回路1、3および2のうちの1つにおける伝熱流体の循環を確保する。切換弁14は図3の設定とは逆の設定にあり、そのため、凝縮器・蒸発器41を環境制御回路4のための熱源として動作させ、凝縮器・蒸発器42をこの環境制御回路4のための冷却源として動作させる。したがって環境制御回路4は、客室の空気を冷却するための従来の空調システムとして動作するが、この空調回路は、外気の温度よりは高くない温度の熱源を有し、そのため、回路の効率を改善し、電力消費を低減することが可能になる。
【0066】
この動作モードは、図6の動作モードに従って回路1および3に冷却を蓄積した後で、回路1および3の伝熱流体が徐々に、客室の空気の温度に近すぎる温度まで、または客室の空気の温度より高い温度にまでさえ再加熱されており、同時に依然として車両外部の空気の温度より低温のままであるときに有益である。その場合図9に描かれている動作モードは、環境制御回路4を空調システムとして使用することを可能にし、この空調システムが熱源として外気を使用する場合よりも有利な効率を伴う。
【0067】
図10に、車両が暑い夏の日に走行しており、図6〜9の動作モードを使用した後で、回路3の伝熱流体の温度が回路2の伝熱流体の温度と同程度になっている、すなわち、回路3の伝熱流体の温度は依然として回路2の伝熱流体の温度より下であるが、これら2つの温度の差は偏差閾値を下回るときに実施することができる熱調節システム10の別の動作モードを示す。図10の動作モードは、切換弁14が、回路4の冷媒を、凝縮器・蒸発器41を熱源として使用し、凝縮器・蒸発器42を冷却源として使用するように循環させる設定にあること、および三方弁15が、伝熱流体を枝路1cに送り込むのではなく、回路1の伝熱流体を枝路1fと熱交換器11fとに送り込むように設定されていることを除いては、図5に描かれている冬季動作モードとほとんど同一である。
【0068】
他方、回路2の伝熱流体に対して課せられるべき温度が電気エンジンの冷却要件と冷却回路4の効率とのトレードオフの結果であった図5の動作モードとは対照的に、図10の動作モードの場合には、回路2の伝熱流体の温度を可能な限り低い温度レベルに維持することに利益が生じる。したがって放熱器13のシャッタ30は常に開いたままである。ファン24を動作させるか否かの選択を、このファンによって発生する電力消費が環境制御回路4上で得られる効率の利得によって補償されるか否かに応じて、また電気エンジンの冷却要件に応じて行うことができる。
【0069】
調節回路3は停止されており、そのため、この回路内で伝熱流体を循環させるのに必要なポンプ6のエネルギーの節約が生じる。
【0070】
図11〜20に、環境制御回路4が切換弁を備えない本発明の別の実施形態を示す。したがって冷媒は、この環境制御回路の管路においては常に同じ方向に循環する。他方、この環境制御回路4は、2つではなく、4つの熱交換器40、42b、43および41を備え、2つの膨張弁9a、9bと、2つのバイパス管路56および59とを備える。これらのバイパス管路56および59は、それぞれ、三方弁45および54によって開閉させることができ、冷媒を2つの膨張弁9b、9aの一方または他方に迂回させて、少なくとも2つの熱交換器、この場合には熱交換器41、43を冷却源と熱源として択一的に動作させることができる。
【0071】
図13に示すように、熱調節システム10は、圧縮機8が設けられた環境制御回路4を備える。圧縮機8は冷媒を、まず、熱交換器42b、膨張弁9bおよび三方弁45を通る回路55の第1の部分に送り込む。三方弁45の位置に応じて、冷媒は、まず交換器42bを、次いで膨張弁9bを通るか、またはまず交換器42bを通り、次いで膨張弁9bを迂回して三方弁45に達するバイパス管路56を通る。次いで冷媒は回路の第2の部分57を通り、熱交換器43および熱交換器41、次いで三方弁54を連続して通る。三方弁54の位置に応じて、その場合冷媒は、バイパス部分59を通って圧縮機8に直接戻ることもでき、回路の第3の部分58を通り、膨張弁9a、次いで熱交換器40を連続して通った後で圧縮機8に戻ることもできる。熱交換器40は、回路4の冷媒とファン25によって交換器40を介して引き込まれる客室の空気との間の熱交換を可能にするために車両の客室33内に配置されている。熱交換器43は、車両の客室33の外部に配置されており、車両の前進運動によりこの交換器を介して引き込まれ、かつ/またはファン24によって引き込まれる車両外部の空気と接している。交換器41および42bは、環境制御回路4の冷媒と熱調節システム10の他の管路内を循環する伝熱流体との間の熱交換を可能にするように、客室33の外部に配置されている。熱調節システム10は、その中を同じ伝熱流体が循環することのできる相互に接続された管路1a、1b、1c;3a、3b、3c;2a、2b;51a、51b、51c;52a、52b、53a、53b、523からなる組部品を備える。管路1aは客室33を通り、客室33において管路1aは熱交換器11eを通り、管路内を循環する伝熱流体とファン25によって交換器11eを介して引き込まれる客室の空気との間で熱が交換されることを可能にする。
【0072】
またこの管路1a上には、伝熱流体を再加熱するのに使用されるPTC抵抗器27も配置されている。PTC抵抗器27は客室33の外部に位置していても内部に位置していてもよい。また管路1aは熱交換器42bも通り、管路1aを通る伝熱流体と環境制御回路4の冷媒との間で熱が交換されることを可能にする。熱交換器42bは客室33の外部に位置する。管路1bはポンプ5を備え、ポンプ5は熱交換器42aを通して伝熱流体を送り、この管路を通る伝熱流体と環境制御回路4の冷媒との間で熱が交換されることを可能にする。管路1bは、交換器42aと42bとの間に位置する三方弁44において管路1aと再合流する。管路1aおよび1bは、三方弁44とは反対側のそれらの端部において相互に接続されており、他の3つの管路51a、52a、および53aに接続されている。三方弁44は、管路1a、1bおよび51bのうちの2つまたは3つの端部を接続するのに使用することができる。管路3aは、弁32aによって開閉することができ、管路51bをその入口のところで三方弁44と、ポンプ5の上流側とに連結する。管路51bは三方弁44と三方弁49とを連結し、三方弁49は管路51b、2bおよび3cの端部を接続する。管路2bは、伝熱流体を推進して、三方弁49から、やはり管路2bに沿って位置する熱交換放熱器13まで送ることができるポンプ7を含む。放熱器13は、管路2bの伝熱流体とファン24によって放熱器13を介して引き込まれる車両外部の空気との間の熱交換を可能にする。放熱器13は、車両の空気力学を改善するために、放熱器を通る空気流を防ぐことを可能にする向き付け可能なシャッタ30を備えることができる。管路3cは三方弁49に向けて伝熱流体を推進することができるポンプ6を備える。この管路3c上には、この管路を通る伝熱流体を再加熱するのに使用されるPTC抵抗器27aが配置されている。
【0073】
PTC抵抗器27aの下流では、管路3cが熱交換器41を通り、この管路を通る伝熱流体と環境制御回路4の冷媒との間で熱が交換されることを可能にする。管路3cは、ポンプ6に対してその上流側端部において、管路53aによって、ポンプ5の上流の管路1bに連結されている。管路2bは、ポンプ7に対してその上流側端部において、管路52aによって、ポンプ5の上流の管路1bの端部に連結されている。管路3bは、管路2bのポンプ7に対する上流側端部と管路51bとを連結する。管路3b内の伝熱流体の循環は、弁32bによって停止し、または使用可能にすることができる。管路52aおよび53aは、中継管路60によって、大体その中間において連結されている。管路51aは、順に、(ポンプ7と放熱器13とに対する)管路2bの下流側端部、三方弁49と反対側の管路3bの端部、三方弁44と反対側の管路3aの端部、および管路1bのポンプ5に対する上流側端部を連結する。この管路51a上には、数リットルの量の伝熱流体を含むことができるタンク50が配置されていてもよく、それによって伝熱流体は、管路51aを循環するときにタンク50を通る。有利には、このタンクは、タンクに含まれる伝熱流体とタンクの外部の伝熱流体との間の熱交換を回避するようにその外表面が断熱され、また反対に、タンクを出入りする伝熱流体とタンク内に存在する伝熱流体との間の熱交換を促進するように配置される。
【0074】
管路2aは、バイパス部分60とポンプ5の上流側との間で管路52aに接続されている。この管路2aは、電気エンジンの温度を調整することを可能にする熱交換器12を通り、管路52aと反対側のその端部において三方弁47と再結合する。管路1cはバイパス区間60とポンプ5の上流側との間で管路53aに接続されている。その他方の端部において管路1cは三方弁46に再結合する。管路1cは、車両の電源電池の温度を調整することを可能にする熱交換器11fを通る。管路51cは三方弁44と三方弁46とを連結する。管路53bは三方弁44と三方弁47とを連結する。熱交換器41と三方弁49との間には、三方弁48が第1の経路によって管路3cに連結されている。この三方弁48は、第2の経路において、管路52bを通って、ポンプ7と三方弁49との間で管路2bに連結されている。またこの三方弁48は、その第3の経路において、同時に三方弁46の入口と三方弁47の入口にも接続されている。
【0075】
図11に、車両がその電池を再充電するために外部電力網に接続されおり、例えば冬季などに、外部温度が客室内で求められる温度より低いときに実施可能な、図13の熱調節システムの動作モードを示す。この構成において、環境制御回路4は作動されており、三方弁45および54は冷媒を、熱交換器40にも、凝縮器・蒸発器42aを通しても、膨張弁9aを通しても送らず、他方、冷媒が膨張弁9bを通るように設定されている。この構成において、熱交換器43は環境制御回路4のための冷却源として動作し、交換器42bはこの同じ環境制御回路のための熱源として動作する。回路4の冷媒は圧縮機8を通り、次いで液化されることにより凝縮器・蒸発器42bに熱を放出し、冷媒を蒸発させることによりその圧力を低減する膨張弁9bを通り、次いで凝縮器・蒸発器43を通り、そこで、ファン24によって引き込まれる外気から熱を取り込むことによって気化され、次いで凝縮器・蒸発器41を通り、管路3cを通る伝熱流体からさらに多くの熱を取り込み、三方弁54を通って圧縮機8に戻る。ポンプ7は作動していない。弁32aおよび32bは閉じられている。三方弁44、46、47、48、49は、伝熱流体が管路51b、1b、51a、3cおよび1aのみを通るように設定されている。これらの管路からなる回路は2つのループ、すなわち、枝路1aと枝路1bとによって形成され、ループ内の流体の循環が基本的にポンプ5によって確保される第1のループと、枝路1a、51a、3cおよび51bからなり、ループ内の伝熱流体の循環が基本的にポンプ6によって確保される第2のループとを備える。この二重ループ内の液体を推進するのに2つのポンプ5および6のうちの一方だけを使用することを想定することも可能である。この二重ループを通る伝熱流体は、車両外部の空気から環境制御回路4によって取り込まれる熱によって凝縮器・蒸発器42bにおいて再加熱される。またこの伝熱流体は、ヒートポンプ回路4と並列にPTC抵抗器27を動作させることによって再加熱することもできる。ファン25が客室33の空気を引き込むための熱交換器11eを通ることにより、伝熱流体は、客室の空気の温度を、車両の発車のために求められるレベルまで上げるのに使用され得る。ヒートポンプとして動作する環境制御回路4によってこのように取り込まれる熱は、二重ループを通る伝熱流体に蓄積され、これは特にタンク50に含まれる伝熱流体の体積を構成する。ファン25を停止した後で、伝熱流体の温度を、例えば、伝熱流体の沸点温度によって、あるいは抵抗器および管路によって決定される望ましい最大値まで上げることができる。例えば、環境制御回路4を停止し、伝熱流体を図11の場合と同じ管路において循環させ、PTC抵抗器27だけを作動させることによる、冬季に電池を再充電するときの熱調節システム10のための別の予備調整モードを想定することもできる。
【0076】
図12に、車両を発進させた後で、図11に描かれているような予備調整ステップに続いて使用することができる、図13の調節システム10の別の動作モードを示す。図12において、環境制御回路4は停止されている。管路1a、51a、3b、51bおよび1bからなる、伝熱流体が中を循環する二重ループは、ポンプ5および6によって図11の場合と同様に引き続き作動され、ファン25は客室33の空気を再加熱する必要に従って作動される。この二重ループに、特にタンク50に蓄積される熱は、客室33の空気を再加熱するために熱交換器11eによって徐々に放出される。二重ループ内の循環とは独立の伝熱流体の第2の循環がポンプ7によって確保され、ポンプ7は伝熱流体を、ファン24によって引き込まれる車両外部の空気が通過する放熱器13を通して送り、次いで管路1cおよび2aを通し、それによって、熱交換器11fおよび熱交換器12を通って電池と車両の電気エンジンとを同時に冷却するようにする。三方弁46、47、48および49は、交換器11fおよび12を通過した伝熱流体を、次いでポンプ7の方へ再度方向付けるように設定されている。例えば、管路52aおよび管路53a上の、これらの管路が管路1bに再合流する箇所に、断面絞り部を配置し、それによって、枝路1a、1bおよび3cによって範囲が定められる蓄積二重ループにおいて、枝路1c、2aおよび2bによって範囲が定められる冷却回路からの伝熱流体の漏れの危険が制限されるようにすることもできる。これらの絞り部が正しく較正されており、三方弁46、47、48および49が適切な設定にある場合、2つの独立の循環が、図12に示すように、一方では蓄熱二重ループとして、他方では冷却回路として確立される。
【0077】
図13に、調節システム10が図11および12の動作モードを経た後で、蓄熱二重ループの伝熱流体の温度が閾値温度を下回り、この温度ではもはや熱交換器11eを介して客室33の空気を十分に再加熱することができなくなったときの、図11および12のシステムの動作モードを示す。図13の動作モードは、原則として、図3に描かれている動作モードに類似したものである。環境制御回路4は作動されており、図11の場合と同じ構成にある。すなわち、凝縮器・蒸発器42bは熱源として動作し、凝縮器・蒸発器43および41は冷却源として動作している。枝路1c、2aおよび2bには引き続き、ポンプ7により放熱器13を介して伝熱流体が独立に供給される。弁32aは開いており、三方弁44および49は、管路3c、31b、3aおよび51aを通って独立の伝熱流体循環ループが確立されるように設定されている。
【0078】
このループは、タンク50を含み、外部温度より高い温度であるがあまり高くはなく、客室の空気の温度よりもわずかに高いだけの伝熱流体を含む蓄熱ループを形成する。この蓄熱ループは、ヒートポンプとして動作する環境制御回路4のための冷却源としての熱の蓄積として働く。よってシステムの効率は、冷却源として外気を直接使用するはずのヒートポンプと比べて改善される。三方弁44は、管路1bおよび1aにおいて伝熱流体の独立の循環を確立させるように設定されており、この循環はポンプ5によって確保される。ポンプ5によって作動されるこの伝熱流体の循環ループは、凝縮器・蒸発器42bにおいて伝熱流体によって受け取られる熱を、熱交換器11eを介して客室の空気に転移するのに使用される。この循環ループの温度は客室の空気の温度より高いままにとどまる。この実施形態では、環境制御回路4は2つの「多段の」冷却源を含む、言い換えると、冷媒はまず外気が通過する凝縮器・蒸発器43を通り、そこで外気から熱を取り込むことによって一部が気化され、次いで凝縮器・蒸発器41を通り、そこで、その循環がポンプ6によって確保される蓄熱回路の伝熱流体から熱を取り込むことにより引き続き気化されることがわかるであろう。この蓄熱回路の冷却をPTC抵抗器27aを作動させることにより遅らせることも可能である。
【0079】
図14に、例えば、ポンプ6によって作動される蓄熱回路を通る伝熱流体の温度が、熱交換器12による電気エンジンの十分な冷却を確保するのに十分なほど低くなるときに図13の動作モードの代わりに適用することができる、図11〜13の熱調節システムの別の動作モードを示す。この動作モードは、本発明の第1の実施形態の図4に描かれている動作モードに類似したものである。図14では、図13とは異なり、ポンプ7は作動していない。環境制御回路4は図13と同じ構成にある。三方弁44は、管路1aおよび1bによって範囲が定められる客室の空気を再加熱するためのループの、ポンプ5によって確保される独立の循環を可能にするように設定されている。三方弁47および48は、電気エンジン温度調整熱交換器12を通る枝路2aにおいて、管路3aおよび3cを含む蓄熱回路においてポンプ6まで循環する伝熱流体の一部の通過を可能にするように設定されている。また、三方弁46を、この蓄熱回路から枝路1cと、電池温度調整交換器11fとに伝熱流体の一部を転送するようにも設定することを想定することも可能なはずである。交換器11fおよび/または12によってこのようにして回復される熱のおかげで、蓄熱回路の冷却が遅延され、ヒートポンプとして動作する環境制御回路4の効率が改善される。
【0080】
図15に、冬季に、図11〜14の動作モードのうちの1つまたは複数を使用した後で、タンク50内に存在する伝熱流体の温度がある閾値よりも低くなったときに使用することができる図11〜14の調節システム10の動作モードを示す。
【0081】
この動作モードは、原則として、図5に描かれている動作モードと同様である。すなわち、環境制御回路4は、例えば図14に描かれている構成ではヒートポンプとして動作し、ポンプ5は管路1aおよび1bに制限される客室の空気を再加熱するための回路(またはループ)に供給する。伝熱流体の循環は、三方弁44の設定により、局所的にこの回路だけに制限される。三方弁46、47、48および49は、タンク50を伝熱流体の循環から除外するように設定されている。弁32aおよび32bは閉じられている。三方弁46、47、48および49の設定は、放熱器13を通る管路2b、凝縮器・蒸発器41を通る管路3c、エンジン温度調整熱交換器12を通る管路2a、および電池温度調整熱交換器11fを通る管路1cを含む冷却回路において伝熱流体の独立の循環を確立するのに使用される。伝熱流体の循環はポンプ6および7によって確保することも、これら2つのポンプの一方だけによって確保することもできる。
【0082】
環境制御回路4は、一方では、車両外部の空気により凝縮器・蒸発器43において、他方では管路3cを通る伝熱流体により凝縮器・蒸発器41においてそのための冷却源が供給されるヒートポンプとして動作する。図14の構成と比べた図15の構成の利点は、凝縮器・蒸発器41を含む回路の伝熱流体の総体積がより小さく、それによって電気エンジンと電池とで回復される熱の「希釈」がより小さくなることである。外気の温度に応じて、外部温度がさらに多くの熱の回復を可能にするのに十分な高さである場合には、放熱器13のシャッタ30が開け放され、ファン24が始動されてもよく、他方、シャッタ30は放熱器13における熱交換を防ぐために閉じられていてもよい。
【0083】
図16に、今度は、夏季に、外部温度が客室内で求められる温度より高いときの、図11〜15の熱調節システムの動作モードを示す。この動作モードは、車両が停止され、その電池を再充電するために外部電力網に接続されているときに実施することができる。環境制御回路4は、今度は、客室33に対して空気調整モードで動作するように構成されている。環境制御回路4は、凝縮器・蒸発器43を熱源として使用し、凝縮器・蒸発器40および42aを冷却源として使用する。このために、三方弁54は、膨張弁9aおよび凝縮器・蒸発器40を備える回路の部分58への冷媒の通過を可能にし、他方、バイパス部分59への冷媒の通過を妨げるように設定されている。三方弁45は、冷媒がバイパス部分56を経由して膨張弁9bを迂回するように設定されている。
【0084】
環境制御回路4は、ファン24によって凝縮器・蒸発器43を介して引き込まれる車両外部の空気に向かう熱を拒絶する。他方では、環境制御回路4は、一方では、ファン25により凝縮器・蒸発器40を介して引き込まれる客室33の空気から、他方では、蓄熱回路、すなわち、ポンプ5により確保されているこの蓄熱回路内の伝熱流体の循環から熱を取り込む。蓄熱回路は特にポンプ5とタンク50とを備える。弁32bは開いており、弁32aは閉じられており、三方弁46、47、48、49は、一方では、管路1b、51b、3b、51aからなり、他方では管路1b、51c、1cおよび53aからなる二重ループにおける伝熱流体の循環を可能にするように設定されている。
【0085】
管路1eは電池温度調整熱交換器11fを通る。蓄熱回路から取り込まれる熱(言い換えると、蓄熱回路に放出される冷却)は、一方では、車両を発進させた後で、特に車両が発車した後の客室の空気に復元することのできる「比冷却(specific cold)」の蓄えを有するように伝熱流体を冷却するのに使用され、他方では、電池の再充電の間に電池を再冷却するのに使用される。またこの熱は、客室の温度を、熱交換器40を介して、車両の発車のために求められるレベルまで下げるのにも使用される。外部温度が過度に高くない場合には、電池の再充電の間に、図16に描かれているのと同様の動作モードを想定することも可能であるが、その場合、伝熱流体は、枝路51b、3b、51a内、およびタンク50内には循環させないはずであり、ファン25は作動されないはずである。環境制御回路4によって取り込まれる熱は、その場合基本的には、凝縮器・蒸発器42aから取り込まれるはずであり、交換器11fによって電池を冷却するのに使用されるはずである。
【0086】
図17に、図16に描かれている動作モードに従って予備調整ステップを実行した後で車両が発車したばかりであるときに使用することができる、図11〜16の熱調節システム10の動作モードを示す。図17において、環境制御回路4は停止されており、伝熱流体管路の弁およびポンプはすべて、図12に描かれている動作モードの場合と全く同じ構成にある。しかし、図17の動作モードにおいては、伝熱流体が交換器11eを通るときに図12の動作モードで放出される熱の代わりに客室33の空気に放出されるのは冷却である。したがって、伝熱流体に蓄積された冷却は、ポンプ5およびファン25を作動させるのに必要とされる以外のどんな電気エネルギーも使用せずに、客室の空気を再冷却することを可能にする。
【0087】
図18には、車両が夏季に走行しているときに、図16および図17に描かれている動作モードを使用した後で、タンク50内に存在する伝熱流体の温度が、熱交換器11e内での伝熱流体の通過だけによって客室33の空気の冷却を確保するにはもはや不十分になったときに使用することができる、図11〜17の熱調節システム10の動作モードが描写されている。環境制御回路4は空調モードで作動されており、これは環境制御回路4が図16と同じ構成にあり、凝縮器・蒸発器40が冷却源として動作し、客室33の空気を冷却することを意味する。弁32aは開いており、弁32bは閉じられている。三方弁46、47、48および49は、3つの独立の流体循環ループを確立するように設定されている。第1のループは管路1b、51c、1c、53aを含み、このループ内の伝熱流体の循環はポンプ5によって確保される。熱はこのループから凝縮器・蒸発器42aを介して環境制御回路4によって取り込まれ、熱交換器11fを介して電池を冷却するのに使用される。
【0088】
第2のループは管路2b、52a、2a、52b、および三方弁47と48との間の管路を含む。このループ内の伝熱流体の循環はポンプ7によって確保される。伝熱流体は、放熱器13を通り、そこでファン24によって引き込まれる外気によって冷却され、次いで、電気エンジン温度調整交換器12を通ってからポンプ7に戻る。
【0089】
第3のループは管路51b、3a、51aおよび3cを含む。このループ内の伝熱流体の循環はポンプ6によって確保され、このループと環境制御回路4との間の熱交換は凝縮器・蒸発器41を介して行われる。図18の構成は、タンク50内に存在する伝熱流体の温度が放熱器13を通る伝熱流体の温度よりも、または車両外部の空気の温度よりも低いままである限り有益となり得る。この構成において、冷媒は、凝縮器・蒸発器42aから熱を取り込むことによって気化し、圧縮機8を通り、伝熱流体が管路1a内を循環しないためにあまり熱交換を伴わずに凝縮器・蒸発器42bを通り、次いで冷媒は、凝縮器・蒸発器43において、ファン24により引き込まれる外気に熱を放出することによって液化し、凝縮器・蒸発器41においてさらに熱を放出することができる。したがって、タンク50の伝熱流体の温度が車両外部の空気の温度より低いままにとどまる限り、熱源が、例えば、放熱器13とエンジン冷却ループからなる、あるいは車両外部の空気からなるはずの環境制御回路と比べて、環境制御回路4の効率を最適化することを可能にする「低温の」熱源が生じる。
【0090】
図19に、夏季に、例えば、図16〜18の動作モードを経た後で、タンク50内に存在する伝熱流体の温度が車両外部の空気より高くなったときに使用され得る図1〜18の熱調節システム10の動作モードを示す。環境制御回路4は空調モード、すなわち、図18の場合と同じ構成にあり、弁32aおよび32bは閉じられており、三方弁46、47、48、49は、タンク50を除外し、管路1c、2a、3c、2bを含む単一の共通伝熱流体循環網を確立するように設定されている。
【0091】
伝熱流体の循環は、ポンプ6および7によって、または2つのポンプのうちの一方によって確保され得る。伝熱流体は、エンジン温度調整熱交換器12、電池熱調整熱交換器11fを通り、電気エンジンと、電池とによって放出される熱を取り込み、また、凝縮器・蒸発器41においても熱を取り込む。次いで伝熱流体は、ファン24によって引き込まれる空気が通過する放熱器13を通過することにより冷却される。環境制御回路4は2つの熱源、すなわち、ファン24によって引き込まれる車両外部の空気が通過する凝縮器・蒸発器43と、外気の温度より先験的にわずかに高い温度の伝熱流体が通過する凝縮器・蒸発器41とを有する。伝熱流体の比熱が空気に対してより高いために、凝縮器・蒸発器41からなる第2の熱源は、凝縮器・蒸発器43を通る空気より高い温度ではあるが、環境制御回路4からさらに熱を取り込むのに有利な状態のままにとどまる。次いで冷媒は、膨張弁9aおよび凝縮器・蒸発器40を通ることにより気化されて、この凝縮器・蒸発器を通る客室33の空気を冷却する。図18の場合と同様に、次いで冷媒は、伝熱流体が管路1a内を循環しないために、あまり熱交換を伴わずに凝縮器・蒸発器42bを通過する。
【0092】
図20〜21は、図1〜19に共通の要素を含み、その場合、同じ要素は同じ参照符号を有する。図20および21には、環境制御回路4が今度は圧縮機8と単一膨張弁9とを備え、凝縮器42bが熱源として動作し、3つの蒸発器40、42aおよび43が常に環境制御回路4に対して冷却源として動作する本発明の一実施形態が描かれている。環境制御回路4は圧縮機8と膨張弁9とを連結し、凝縮器42bを通る高温の半ループ61を含む。圧縮機8の入口の上流には、2つの低温の半ループ62および63によって膨張弁9に連結された三方弁66がある。膨張弁9から来る流体はまず蒸発器42aを通り、次いで、弁66の設定に応じて、半ループ62を通って蒸発器40を通過し、または半ループ63を通って蒸発器43を通過する。半ループ62または半ループ63から到達し次第、次いで冷媒は三方弁66を通り、圧縮機8に到達する。蒸発器43はファン24によって蒸発器43を介して引き込まれる車両外部の空気によって再加熱される。蒸発器40は、車両の客室33内部に配置されており、ファン25によって引き込まれる客室の空気を通過させる。蒸発器42aおよび凝縮器42bには、同じ伝熱流体を搬送することのできる管路70の回路網の管路71および72が通されており、管路70の回路網における伝熱流体の循環は、3つのポンプ5、6および7のうちの1つまたは複数によって確保される。
【0093】
管路の回路網においては、3つの異なる管路上に、電気エンジンの温度を調整するのに使用される熱交換器12、電気蓄電池の温度を調整するのに使用される熱交換器11f、および伝熱流体と車両外部の空気との間で熱を交換する熱交換放熱器13とが挿入されている。放熱器13は、ファン24によって引き込まれる外気を通過させ、可動シャッタ30が備わっている。管路のうちの2つには、管路内の伝熱流体の循環を停止し、または復旧するのに使用することができる弁32aおよび32bがある。管路の回路網の5つの節には、伝熱流体循環ループを確立するのに使用することができる三方弁64、65、67、68、69があり、循環ループは結合したり、切り離したりすることができる。
【0094】
ポンプ5は蒸発器42aの上流の管路71上に位置し、ポンプ6は凝縮器42bの上流の管路72上に位置し、ポンプ7は放熱器13の上流の別の管路上に位置する。図20の構成において、環境制御回路4の三方弁66は、冷媒を半ループ63に送り込むように設定されている。したがって冷媒は、客室33を通る半ループ62内は循環しない。ポンプ6と凝縮器42bと客室33内部に配置された熱交換器11eとの間には伝熱流体循環ループが確立されている。またこの循環ループ上には、ここでは作動されていないPTC抵抗器27bも配置されている。凝縮器42bにより冷却回路4から取り込まれる熱は、ファン25により交換器11eを介して引き込まれる客室の空気に放出される。熱は、環境制御回路4により、一方では車両外部の空気と接する蒸発器43において、他方では3つの結合された循環ループから到達する伝熱流体が通る蒸発器42aから取り込まれる。これらのループのうちの1つはエンジン温度調整熱交換器12を通り、別のループは電池温度調整熱交換器11fを通り、第3のループは伝熱流体貯蔵タンク50を通る。図20に描かれている動作モードは、電気エンジンと電池とによって放出される熱を回復することにより、また、特にタンク50内に存在する伝熱流体に以前に蓄積された熱を活用することにより、客室の温度を加熱することを可能にする冬季動作モードである。外気の温度に応じて、放熱器13のシャッタ30は開いていても閉じられていてもよく、ファン24は、蒸発器42aだけを冷却源として使用するために、または蒸発器42aと43の両方を同時に冷却源として使用するために、作動させることも停止することもできるはずである。
【0095】
図21には、夏季に、客室において求められる温度が車両外部の温度より低いときに使用することができる図20の熱調節システム10の動作モードが描かれている。この動作モードは、例えば、車両がその電池を再充電するために外部電力網に接続されている間に、システム予備調整ステップを実行し、タンク50内に存在する伝熱流体の温度を車両外部の温度より低い温度まで下げた後で使用することができる。図21の構成において、ポンプ7は活動状態にあり、弁32bは閉じられており、弁32aは開いており、三方弁64、65、67、68、69は、ポンプ7からエンジン温度調整熱交換器12に至り、次いで車両外部の空気と熱を交換する熱交換放熱器13に至る独立の伝熱流体循環ループを確立するように構成されている。放熱器のシャッタ30は開いており、ファン24は放熱器13を介して外気を引き込む。また三方弁も、ポンプ6から凝縮器42bに至り、次いで蓄熱タンク50に到達した後で再度ポンプ6に戻る別の独立の伝熱流体循環ループの確立を可能にするように設定されている。
【0096】
ポンプ5からPTC抵抗器27を通り、次いで蒸発器42aを通り、次いで電池温度調整熱交換器11fを通った後でポンプ5に戻る別の独立の伝熱流体循環ループが確立されている。環境制御回路4の弁66は、冷媒を、最初に蒸発器42aに通した後で、半ループ62を通し、冷媒が蒸発器40を通過するための客室33を通して送るように設定されている。したがって冷媒は、半ループ63内も蒸発器43内も循環しない。冷媒は、膨張弁9を通過した後で、電池温度調整熱交換器11fを通る循環ループの伝熱流体の温度を下げることにより、蒸発器42aにおいて一部気化される。次いで冷媒は、蒸発器40を介してファン25によって引き込まれる客室33の空気の温度を下げることにより引き続き気化し、よって客室の空気の温度を下げ、圧縮機8に戻る。圧縮機8は冷媒をより高い圧力で凝縮器42bに戻し、そこで冷媒は、貯蔵タンク50を通る「予冷」伝熱流体に蓄積している熱を放出することによって液化する。したがって電気エンジンは、環境制御回路4の動作とは独立に冷却され、客室の空気および電池は、タンク50および凝縮器42bを通る伝熱流体に蓄積された冷却によってその効率が改善される環境制御回路4によって冷却される。
【0097】
この構成は、特に、タンク50内に存在する伝熱流体の温度が客室内の空気の望ましい温度より高いが、それでもなお、放熱器13を通る伝熱流体の温度よりは低いときに有益となり得る。
【0098】
本発明は説明される例示的実施形態だけに限定されるものではなく、多数の変形形態の対象とすることができる。車両の他の要素、特に他の電気部品が、熱交換器または温度調整凝縮器・蒸発器を備えていてもよい。本発明は、総エネルギー消費を、したがって、車両の燃料消費を低減するために、電気推進だけによる車両にも、ハイブリッド車両にも、内燃機関を備える車両にさえも適用することができる。図1〜21に描かれているシステムについてのものも含めて、他の多数の動作モードを適用することができる。例えば、暖かい日に車両を発車させる前に、電池再充電ステップは、電池温度調整熱交換器を通って循環する伝熱流体を冷却するために、空調モードでの環境制御回路の始動を伴っていてもよい。再充電段階における電池の過熱が、熱および冷却をより大量の伝熱流体に蓄積するためであれ、客室の空気の温度を調整するためであれ、追加エネルギーの消費と同様に回避される。
【0099】
伝熱流体回路の別の点における別の相補型PTCの追加を想定することも可能であり、また、客室の空気を直接加熱するためのPTCの追加を想定することも可能である。また、客室の空気の温度調整は、伝熱流体回路を客室に通さずに、環境制御回路の蒸発器および凝縮器だけによって得ることもできる。「低温の」(すなわち車両外部の空気より低温の)伝熱流体ループは、その場合、もっぱら電気部品と車両の電池とにだけ使用されてもよい。
【0100】
客室の空気の加熱を、客室の空気と接するPTC抵抗器と関連付けられた環境制御回路の凝縮器によって調節すること、および伝熱流体回路の交換器を介して客室の空気の冷却を調節することを想定することも可能である。
【0101】
客室の空気の冷却を環境制御回路の蒸発器によって調節すること、および、場合によってはPTC抵抗器に結合され、伝熱回路上に配置された、または客室の空気を直接再加熱する、伝熱流体回路の交換器を介して客室の空気の加熱を調節することを想定することも可能である。
【0102】
熱交換器を車両のエンジンと直接連結し、客室の空気と熱交換器を連結する伝熱流体の循環を設けることも可能である。
【0103】
単純な、不可逆的冷却ループであるが、伝熱流体の循環を変更することのできる可能性を有し、冷却ループの冷却源と熱源とを、一方は客室を通る伝熱流体ループと、他方は蓄熱ループとして使用される伝熱流体ループと択一的に接続することを可能にする冷却ループを備える本発明の変形形態を想定することも可能である。
【0104】
伝熱流体は、より一般的には、相を変化させることができる熱調節流体で置き換えることもできる。
【0105】
本発明による熱調節システムは、客室とエンジン室両方の温度を、客室とエンジンとの間で、ヒートポンプによる熱または冷却の回復のための潜在能力を最適化し、ヒートポンプの効率を最大化することによって管理することを可能にする。またこのシステムは、車両を発進させる前に、発車前であるために電池のエネルギーから取り込まれないある量の熱または冷却を、比熱として蓄積することも可能にする。よって総エネルギー消費および車両の走行距離がどちらも向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を動力とする電気エンジンによって完全にまたは部分的に推進される自動車の客室および電気部品のための熱調節システム(10)であって、前記車両外部の電力網に接続されているときに熱または冷却の蓄積を可能にする加熱手段(27)および/または冷却手段(4)に結合された熱調節流体回路(3)を備えており、この流体回路が、前記回路と前記客室の空気との間の熱交換器(11e、11f)を介して、またはヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路(4)を介して、交互に、前記客室(33)の空気中に熱および/または冷却を放出することができる、システム。
【請求項2】
−第1のポンプ(5)を供給元とし、前記客室(33)に入る空気流の温度を調整するための、または前記電池の温度を調整するための第1の熱交換器(11e、11f)を通る、前記客室(33)のための第1の独立の熱調節流体回路(1)と、
−第2のポンプ(7)を供給元とし、前記車両外部の空気と熱を交換する放熱器(13)を通り、前記エンジンの温度を調整する第2の熱交換器(12)を通る、前記エンジンのための第2の独立の熱調節流体回路(2)と、
−前記第1の回路(1)および/または前記エンジン温度調整熱交換器(12)に択一的に接続することができ、それ以外のときには、別個の独立の流体循環ループを形成することができる第3の蓄熱流体回路(3)と、
−第1の凝縮器・蒸発器(41)を介して前記第3の流体回路(3)から熱または冷却を取り込むことができ、第2の凝縮器・蒸発器(42、42a、42b)を介して前記第1の流体回路(1)にこの熱/冷却を放出することができる、ヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路(4)と、
−前記第1の流体回路(1)または前記第3の流体回路(3)に連結されて、前記第3の回路(3)の温度、または相互に接続された前記2つの回路の温度を摂氏数十度だけ上げるのに使用される少なくとも1つの電気発熱体(27、27a、27b)と
を備える請求項1に記載の熱調節システム(10)。
【請求項3】
特に前記第1の回路(1)と前記第3の回路(3)との間の流体の交換を停止するために使用される少なくとも3つの三方弁(15、16、17、18、44、46、47、48、49、64、65、67、68、69)または3つの等価な装置であって、同時に、
−前記エンジン温度調整熱交換器(12)と、前記第1の凝縮器・蒸発器(41)と、前記第3の流体回路(3)との間の流体の循環を確立する構成、
−前記車両外部の空気と熱を交換する前記熱交換放熱器(13)と、前記第1の凝縮器・蒸発器(41)との間の流体の循環を確立する構成であり、これら2つの要素間の流体の前記循環が前記第3の流体回路(3)から隔離されている構成、または
−前記車両外部の空気と熱を交換する前記熱交換放熱器(13)と、前記エンジン温度調整熱交換器(12)と、前記第1の凝縮器・蒸発器(41)との間の流体の循環を確立する構成であり、これら3つの要素の流体の前記循環が前記第3の流体回路(3)から隔離されている構成
を択一的に獲得するために使用される、少なくとも3つの三方弁または3つの等価な装置を備える、請求項2に記載の熱調節システム(10)。
【請求項4】
前記三方弁(17、18、47、48、49、65、67、69)が、前記第2の回路(2)と前記第3の回路(3)との間の流体の循環を遮断または復旧するためにも使用される、請求項3に記載の熱調節システム(10)。
【請求項5】
前記第3の回路(3)が、この回路(3)から前記第1の凝縮器・蒸発器(41)を除外するのに使用される弁(32)およびバイパス管路(31)も備えている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の熱調節システム(10)。
【請求項6】
前記第3の回路(3)が、この回路(3)から1つまたは複数の凝縮器・蒸発器(42a、42b)を選択的に除外するために使用される複数の弁(32a、32b)および複数のバイパス管路(3a、3b)を備えている、請求項5に記載の熱調節システム(10)。
【請求項7】
外気温度センサを備えており、前記第1の流体回路(1)上または前記車両の前記客室(33)内に配置された熱センサを備えており、前記第2の流体回路(2)上または前記エンジン温度調整熱交換器(12)上に配置された熱センサを備えており、かつ前記第3の流体回路(3)上に配置された熱センサを備えている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の熱調節システム(10)。
【請求項8】
前記第3の回路(3)に含まれる流体の体積が前記第1の回路(1)に含まれる流体の体積および前記第2の回路(2)に含まれる流体の体積より大きい、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の熱調節システム(10)。
【請求項9】
前記第3の流体回路(3)が相変態蓄熱器といった蓄熱手段を有する熱交換器を備えている、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の熱調節システム(10)。
【請求項10】
加熱手段(27、27a、27b)および/または冷却手段(4)に結合された熱調節流体のための管路(1a、1b、1c、3a、3b、3c、2a、2b、51a、51b、51c、52a、52b、53a、53b、523、70)からなる回路を備える装置を用いた、電池を動力とする電気エンジンによって完全にまたは部分的に推進される自動車の客室(33)および電気部品のための熱調節方法であって、
−前記車両が、特に前記車両の電池を再充電するために前記車両外部の電力網に接続されるときに、前記流体回路に熱または冷却を蓄積するステップと、
−次いで、
−最初に、前記回路と前記客室(33)の空気との間の熱交換器(11e、11f)を介して、
−次に、ヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路(4)を介して、
前記流体回路から前記客室(33)の空気に熱(あるいは冷却)を供給するステップと
を含む方法。
【請求項11】
電池を動力とする電気エンジンによって完全にまたは部分的に推進される自動車の客室(33)および電気部品のための熱調節方法であって、前記車両が、
−第1のポンプ(5)を供給元とし、前記客室(33)に入る空気流の温度を調整するための、または前記電池の温度を調整するための第1の熱交換器(11e、11f)を通る、前記客室(33)のための第1の独立の熱調節流体回路(1)と、
−第2のポンプ(7)を供給元とし、前記車両外部の空気と熱を交換する熱交換放熱器(13)を通り、第2のエンジン温度調整熱交換器(12)を通る、前記エンジンのための第2の独立の熱調節流体回路(2)と、
−前記第1の回路(1)および/または前記エンジン温度調整熱交換器(12)に択一的に接続することができ、それ以外のときには別個の独立の流体循環ループを形成することができる第3の蓄熱流体回路(3)と、
−第1の凝縮器・蒸発器(41)を介して前記第3の流体回路(3)から熱/冷却を取り込むことができ、かつ第2の凝縮器・蒸発器(42、42a、42b)を介して前記第1の流体回路(1)にこの熱/冷却を放出することができる、ヒートポンプおよび/または空調システムを形成する環境制御回路(4)と
を備えており、
−前記車両を発進させる前に、前記車両外部の電力網のエネルギーを使用して、発熱体(27、27a、27b)または前記環境制御回路(4)を用いて、前記車両外部の空気の温度に対して前記第3の蓄熱流体回路の温度を上げることにより(あるいは下げることにより)、前記第1の回路(1)に連結可能な前記第3の蓄熱流体回路に熱(あるいは冷却)を蓄積するステップと、
−前記車両を発進させた後で、前記環境制御回路(4)を停止させ、前記第3の回路(3)を前記第1の回路(1)および/または前記エンジン温度調整熱交換器(12)に連結し、前記第3の流体回路(3)に蓄積された前記熱(あるいは前記冷却)を使用して、前記客室(33)の温度と、それに加えて場合によっては前記エンジンおよび/または前記電池の温度とを調整するステップと、
−前記第3の回路(3)の前記流体の温度が前記客室(33)の空気の温度との差を表す最小偏差と交差するときに、前記第1の回路(1)と前記第3の回路(3)との間の流体循環を切り離し、前記ヒートポンプ(4)または前記空調システム(4)を作動させ、最初に前記第1の回路(1)または前記客室(33)と前記第3の回路(3)との間で、次に前記第1の回路(1)または前記客室(33)と前記第2の回路(2)の少なくとも一部との間で、前記第3の回路(3)に特有の管路の流体循環を停止させるステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記外気の温度、前記エンジンの前記熱交換器(12)上の温度、前記車両の前記客室(33)内の温度、および前記第3の流体回路(3)の温度を相互に比較することにより、前記第1の流体回路(1)、前記第2の流体回路(2)、および前記第3の流体回路(3)をどのように接続するべきか決定し、前記環境制御回路(4)の動作モードまたは動作の欠如を決定する、請求項11に記載の熱調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2013−500903(P2013−500903A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523361(P2012−523361)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051184
【国際公開番号】WO2011/015734
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】