説明

電動送風機

【課題】遠心ファンとファンケースとの相対的な回転運動を利用して遠心ファンの吐出側から遠心ファンとファンカバーとを隔てる隙間を通じて遠心ファンの吸込側へ向かう空気の逆流を抑制し、吸込性能の低下をより抑制可能な電動送風機を提案する。
【解決手段】電動送風機1は、遠心ファン6と、隙間12を隔てて遠心ファン6を覆うとともに遠心ファン6に空気を案内する第二吸込口16を有するファンカバー17と、隙間12に位置して遠心ファン6の回転中心線Cに対して径方向へ延びつつ周方向へ湾曲するシールリブ13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は電動送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動送風機は、遠心ファンと、遠心ファンを覆う有底円筒形状のファンカバーと、遠心ファンを駆動する電動機と、を備える。ファンカバーは、遠心ファンの吸込口に対面する入口を有する一方、遠心ファンが吐出する空気を電動機へ案内する流路の一部でもある。換言すると、ファンカバーは、遠心ファンの吸込側と吐出側との両方を覆うため、遠心ファンとファンカバーとを隔てる隙間には相対的に圧力の高い吐出側から相対的に圧力の低い吸込側へ向かう空気の逆流が生じる虞がある。この空気の逆流は遠心ファンの回りに環流を生じて電動送風機の効率を低下させる。
【0003】
そこで、従来の電動送風機は、遠心ファンの吸込口の開口縁とファンカバーの入口の開口縁との間に環状のシール部材を挟み込んで遠心ファンの吐出側から吸込側へ向かう空気の流れを遮断する。遠心ファンは吸込口の開口縁をシール部材に擦りながら回転する。
【0004】
また、他の電動送風機は、遠心ファンのシュラウドに対面するファンカバーの内面に環状のリブを設けて遠心ファンの吐出側から吸込側へ向かう空気の流れを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−309057号公報
【特許文献2】特開2008−193881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸込口の開口縁とシール部材を擦りながら遠心ファンを回転する従来の電動送風機は、遠心ファンとシール部材との摩擦に起因する機械的損失を生じる。
【0007】
他方、単なる環状のリブによりラビリンスシール様のシール構造を備える従来の電動送風機は、環状リブと遠心ファンとを隔てる微小な隙間を有するため、完全に漏洩を防ぐことは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、遠心ファンとファンケースとの相対的な回転運動を利用して遠心ファンの吐出側から遠心ファンとファンカバーとを隔てる隙間を通じて遠心ファンの吸込側へ向かう空気の逆流を抑制し、吸込性能の低下をより抑制可能な電動送風機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る電動送風機は、羽根車と、隙間を隔てて前記羽根車を覆うとともに前記羽根車に空気を案内する入口を有するファンカバーと、前記隙間に位置して前記羽根車の回転中心線に対して径方向へ延びつつ湾曲するシールリブと、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動送風機を示す縦断面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとを示す正面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る電動送風機のファンカバーを示す斜視図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとの他の例を示す正面図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る電動送風機のファンカバーの他の例を示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電動送風機を示す縦断面図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとを示す正面図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンを示す斜視図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとの他の例を示す正面図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンの他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る電動送風機の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
本発明に係る電動送風機の第1実施形態について図1から図5を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動送風機を示す縦断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る電動送風機1は、電動送風機ケース3と、複数の羽根5を有する遠心ファン6と、遠心ファン6の周囲を囲んで羽根5を臨む複数の上流整流板8を有する整流板9と、遠心ファン6を回転駆動するモータ部11と、を備える。
【0015】
また、電動送風機1は、電動送風機ケース3と遠心ファン6との隙間12に位置するシールリブ13を備える。
【0016】
電動送風機ケース3は電動送風機1の外殻である。電動送風機ケース3は、隙間12を隔てて遠心ファン6および整流板9を覆うとともに遠心ファン6の回転中心線Cと略同心に位置して遠心ファン6へ空気を案内する第二吸込口16(入口)を有するファンカバー17と、モータ部11を覆うとともに吐出口18を有する電動機ケース19と、電動送風機ケース3内に遠心ファン6、整流板9およびモータ部11の回転子21を支える整流板支持体22と、を備える。
【0017】
なお、説明を容易にするために以下、遠心ファン6の回転中心線Cの第二吸込口16側を前方として電動送風機1の前後の方向説明を行う。図1中、実線矢Xは、電動送風機1の後方から前方に向かう。
【0018】
ファンカバー17は、後側の底部を開放する開口23を有する有底円筒形状の外殻である。ファンカバー17は、前側にある底壁25の略中央に第二吸込口16を有する。第二吸込口16は、電動送風機1の外部から遠心ファン6へ空気を案内する開口であり、遠心ファン6の回転中心線Cと略同心の円形状の開口である。
【0019】
電動機ケース19は、前方側の底部を開放する開口26を有する有底円筒形状の外殻である。電動機ケース19は、開口26の縁部に連接して径方向外側に延びるフランジ部31を備える。また、電動機ケース19は、後側にある底壁27の略中央から後方へ向かって突出する円筒形状のモータヘッド部28を備える。モータヘッド部28は、内周面にベアリング29を保持する。さらに、電動機ケース19は、円筒形状の側壁32の後半部に複数の吐出口18を有する。
【0020】
電動送風機ケース3は、ファンカバー17の開口23に電動機ケース19のフランジ部31を嵌め込んで内外の空間を仕切る。
【0021】
整流板支持体22は、電動機ケース19の開口26に架かる板材である。整流板支持体22は開口26の一部を塞ぐものであり、開口26のうち整流板支持体22が塞いでいない非閉塞部分によってファンカバー17内側の空間と電動機ケース19内側の空間とを流体的に接続する。
【0022】
また、整流板支持体22は、ファンカバー17内に整流板9を直接的に保持し、ベアリング33を介してロータ軸35、ひいては遠心ファン6およびモータ部11の回転子21を電動機ケース19内に支える。整流板支持体22は、遠心ファン6の回転中心線Cを中心にして前方へ向かって突出する円筒形状の軸受保持部36を備える。軸受保持部36は、内周面にベアリング33を保持する。軸受保持部36は、ロータ軸35が貫き通る貫通口37を有する。
【0023】
遠心ファン6は羽根車である。遠心ファン6は、円板状の第一板39と、略中央に第一吸込口41を有して第一板39から離間する環状の第二板42と、第一板39と第二板42との間に延びる複数の羽根5と、を備える。遠心ファン6は、羽根5の出口角度が後ろ向きのターボファンである。
【0024】
第一板39は、所謂後シュラウドであり、略中央にモータ部11から延びるロータ軸35に遠心ファン6全体を固定する嵌挿孔43を有する。
【0025】
第二板42は、所謂前シュラウドであり、第一吸込口41を内周とし、第一板39と略同等の外径を有する円環形状の板である。第二板42は、第一吸込口41の開口縁である内周縁42aをファンカバー17の第二吸込口16の近くに位置し、外周かつ後方へ向かって緩やかに拡開するラッパ形状の湾曲板である。第一吸込口41は、ファンカバー17の第二吸込口16に相対し、遠心ファン6の回転中心線Cと略同心の円形状の開口であり、第二吸込口16よりも若干大きい。
【0026】
羽根5は動翼である。羽根5は、第一吸込口41の開口縁(すなわち第二板42の内周縁42a)から第一板39および第二板42の外周に至る環状の領域に位置し、第一板39および第二板42の略中心を通る回転中心線Cの径方向(直交方向)へ放射状に延びる。羽根5は、回転中心線C方向から見ると渦巻状に湾曲し、互いに略等間隔に離間する。なお、第一板39、第二板42および羽根5が囲んで仕切る流路を翼間流路45と呼び、第一吸込口41から翼間流路45に至る流路を入口流路46と呼ぶ。
【0027】
なお、遠心ファン6は、羽根5が巻く渦の反対方向に回転する。
【0028】
モータ部11は、電動機ケース19内にあり前後方向に延びるロータ軸35と、ロータ軸35に回転一体の回転子21と、電動機ケース19に固定されて回転子21の周囲を囲む固定子48と、電動機ケース19の側部を貫いてロータ軸35を挟み込む一対のブラシ機構49と、を備える。
【0029】
ロータ軸35は、ベアリング29、33によって回転中心線C上に回転可能に支持される。
【0030】
一対のブラシ機構49は、回転子21の整流子51を挟み込んで対向する。それぞれのブラシ機構49は、整流子51に接するカーボンブラシ52と、カーボンブラシ52を出没可能に保持するブラシ保持器53と、を備える。ブラシ保持器53は、整流子51にカーボンブラシ52を押し付けて互いの導通を得る。
【0031】
整流板9は、遠心ファン6と整流板支持体22との間に位置して遠心ファン6が吐出する空気を電動機ケース19内へ円滑に導く。整流板9は、略円板形状の整流板本体56と、整流板本体56の遠心ファン6側の面(前面)に延びる複数の上流整流板8と、整流板本体56のモータ部11側の面(後面)に延びる複数の下流整流板57と、を備える。整流板9は、ファンカバー17の内径よりも若干小さい径寸法を有し、整流板9とファンカバー17との間に隙間を隔てる。この隙間は、上流整流板8の外周から吐出する空気を下流整流板57へ案内する。
【0032】
整流板本体56は、遠心ファン6の直径よりも大きい直径を有する。整流板本体56は、整流板支持体22の軸受保持部36を嵌め込む略円形状の貫通孔68を有する。
【0033】
上流整流板8は静翼である。上流整流板8は、遠心ファン6の外周から若干離間して遠心ファン6の周囲を囲み、羽根5あるいは翼間流路45を臨む。それぞれの上流整流板8は、整流板本体56から電動送風機1の前方に向かって略垂直に突出する。上流整流板8は、回転中心線C方向から見ると渦巻状に湾曲し、互いに略等間隔に並んで延びる。
【0034】
それぞれの上流整流板8が挟む空間は、遠心ファン6が吐出する空気を整流板9の外周側へ導き、次第に幅広となる案内風路69である。上流整流板8が巻く渦の方向は、羽根5が巻く渦の反対方向を向く。
【0035】
下流整流板57は、整流板本体56の外周側に位置する。それぞれの下流整流板57は、整流板本体56から電動送風機1の後方に向かって略垂直に突出する。それぞれの下流整流板57は、回転中心線C方向から見ると渦巻状に湾曲し、互いに略等間隔に離間して延びる。
【0036】
それぞれの下流整流板57が挟む空間は、整流板9とファンカバー17との隙間から電動機ケース19へと空気を導く流過風路61である。下流整流板57が巻く渦の方向は、上流整流板8が巻く渦の逆方向を向く。
【0037】
シールリブ13は、ファンカバー17の底壁25から突出して遠心ファン6に向かって延びる。シールリブ13およびファンカバー17は一体成形品である。シールリブ13は隙間12の気密性を高めるラビリンスシール様のシール構造を兼ねる。
【0038】
さらに、電動送風機1は、遠心ファン6の第一吸込口41の開口縁とファンカバー17の第二吸込口16の開口縁との間に位置する環状部材62を備える。環状部材62は、遠心ファン6の第一吸込口41の開口縁とファンカバー17の第二吸込口16の開口縁との隙間を狭くして隙間12から遠心ファン6の吸気側へ空気が流れ込むことを阻害する。環状部材62は、ファンカバー17に固定される。なお、環状部材62と遠心ファン6とは、従来の電動送風機のシール部材のように強く押し当たる必要は無く、軽く触れているか僅かに隙間が空いていても良い。
【0039】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとを示す正面図である。
【0040】
図3は、本発明の第1実施形態に係る電動送風機のファンカバーを示す斜視図である。
【0041】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る遠心ファン6は、羽根5の出口角度が後ろ向きのターボファンであり、羽根5が巻く渦の反対方向(図2中の実線矢rの方向)に回転する。上流整流板8が巻く渦の方向は、羽根5が巻く渦の反対方向を向く。
【0042】
そして、シールリブ13は遠心ファン6の回転中心線Cに対して径方向へ延びつつ周方向へ湾曲する。シールリブ13は、遠心ファン6の回転にともない第二吸込口16側から遠心ファン6の吐出側(すなわち外周側)へ向かう空気流を生じる方向へ湾曲する。具体的には、シールリブ13は、遠心ファン6の回転中心線C側から離れるにしたがい遠心ファン6の回転する方向へ延びる。さらに具体的には、シールリブ13は、螺旋形状に延びる。
【0043】
次に、実施形態に係る電動送風機1の他の例を説明する。
【0044】
図4は、本発明の第1実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとの他の例を示す正面図である。
【0045】
図5は、本発明の第1実施形態に係る電動送風機のファンカバーの他の例を示す斜視図である。
【0046】
図4および図5に示すように、本実施形態に係るシールリブ63は、シールリブ13と同様にファンカバー17の底壁25から遠心ファン6に向かって延びる。シールリブ63およびファンカバー17は一体成形品である。シールリブ63は隙間12の気密性を高めるラビリンスシール様のシール構造を兼ねる。
【0047】
また、シールリブ63は遠心ファン6の回転中心線Cに対して径方向へ延びつつ周方向へ湾曲する。シールリブ63は、遠心ファン6の回転にともない遠心ファン6の吸込側から遠心ファン6の吐出側(すなわち外周側)へ向かう空気流を生じる方向へ湾曲する。具体的には、シールリブ63は、遠心ファン6の回転中心線C側から離れるにしたがい遠心ファン6の回転する方向へ延びる。さらに具体的には、シールリブ63は、円弧形状に延びる。
【0048】
本実施形態に係る電動送風機1は、電源の供給を得てモータ部11を駆動しロータ軸35を介して遠心ファン6を回転する。そうすると、遠心ファン6は回転中心線C上にある第一吸込口41から入口流路46へ空気を吸い込み翼間流路45から上流整流板8へ向かって空気を吐出する。このとき、遠心ファン6の吸込側の圧力は遠心ファン6の吐出側の圧力よりも低いため、遠心ファン6の吐出側から電動送風機ケース3と遠心ファン6との隙間12を通じて遠心ファン6の吸込側へ空気が逆流しようとする。
【0049】
そこで、本実施形態に係る電動送風機1は、隙間12に遠心ファン6の吸込側から遠心ファン6の吐出側へ向かう空気流を生じる方向へ湾曲するシールリブ13、63を備える。シールリブ13、63は、隙間12内の空気を遠心ファン6の吸込側から吐出側へ流動させることで、遠心ファン6の吸込側圧力と吐出側圧力との差圧による空気の逆流、ひいては遠心ファン6における環流を防ぐ。このことから、本実施形態に係る電動送風機1は、従来の電動送風機のように遠心ファン6とファンカバー17との間に挟まるシール部材を必要としない。すなわち、本実施形態に係る電動送風機1は、従来の電動送風機のような遠心ファン6とシール部材との摩擦に起因する機械的損失を生じない。
【0050】
なお、シールリブ13、63による逆流防止の効果は、この逆流を阻害可能であれば良く、逆流を完全に阻止する程度の空気流を生じるものに限らない。
【0051】
[第2の実施形態]
本発明に係る電動送風機の第2実施形態について図6から図10を参照して説明する。
【0052】
本実施形態に係る電動送風機1Aにおいて第1実施形態の電動送風機1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
図6は、本発明の第2実施形態に係る電動送風機を示す縦断面図である。
【0054】
図6に示すように、本実施形態に係る電動送風機1Aは、電動送風機ケース3と遠心ファン6との隙間12に位置するシールリブ65を備える。
【0055】
シールリブ65は、遠心ファン6の第二板42から突出してファンカバー17に向かって延びる。シールリブ65および第二板42は一体成形品である。シールリブ65は隙間12の気密性を高めるラビリンスシール様のシール構造を兼ねる。
【0056】
図7は、本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとを示す正面図である。
【0057】
図8は、本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンを示す斜視図である。
【0058】
図7および図8に示すように、本実施形態に係る遠心ファン6は、羽根5の出口角度が後ろ向きのターボファンであり、羽根5が巻く渦の反対方向(図7中の実線矢rの方向)に回転する。上流整流板8が巻く渦の方向は、羽根5が巻く渦の反対方向を向く。
【0059】
そして、シールリブ65は遠心ファン6の回転中心線Cに対して径方向へ延びつつ周方向へ湾曲する。シールリブ65は、遠心ファン6の回転にともない第二吸込口16側から遠心ファン6の吐出側(すなわち外周側)へ向かう空気流を生じる方向へ湾曲する。具体的には、シールリブ65は、遠心ファン6の回転中心線C側から離れるにしたがい遠心ファン6の回転方向に対する逆方向へ延びる。さらに具体的には、シールリブ65は、螺旋形状に延びる。
【0060】
次に、実施形態に係る電動送風機1Aの他の例を説明する。
【0061】
図9は、本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンとシールリブとの他の例を示す正面図である。
【0062】
図10は、本発明の第2実施形態に係る電動送風機の遠心ファンの他の例を示す斜視図である。
【0063】
図9および図10に示すように、本実施形態に係るシールリブ66は、シールリブ65と同様に遠心ファン6の第二板42から突出してファンカバー17に向かって延びる。シールリブ66および第二板42は一体成形品である。シールリブ66は隙間12の気密性を高めるラビリンスシール様のシール構造を兼ねる。
【0064】
また、シールリブ66は遠心ファン6の回転中心線Cに対して径方向へ延びつつ周方向へ湾曲する。シールリブ66は、遠心ファン6の回転にともない第二吸込口16側から遠心ファン6の吐出側(すなわち外周側)へ向かう空気流を生じる方向へ湾曲する。具体的には、シールリブ66は、遠心ファン6の回転中心線C側から離れるにしたがい遠心ファン6の回転する方向へ延びる。さらに具体的には、シールリブ66は、円弧形状に延びる。
【0065】
本実施形態に係る電動送風機1Aは、電源の供給を得てモータ部11を駆動しロータ軸35を介して遠心ファン6を回転する。そうすると、遠心ファン6は回転中心線C上にある第一吸込口41から入口流路46へ空気を吸い込み翼間流路45から上流整流板8へ向かって空気を吐出する。このとき、遠心ファン6の吸込側の圧力は遠心ファン6の吐出側の圧力よりも低いため、遠心ファン6の吐出側から電動送風機ケース3と遠心ファン6との隙間12を通じて遠心ファン6の吸込側へ空気が逆流しようとする。
【0066】
そこで、本実施形態に係る電動送風機1Aは、隙間12に遠心ファン6の吸込側から遠心ファン6の吐出側へ向かう空気流を生じる方向へ湾曲するシールリブ65、66を備える。シールリブ65、66は、隙間12内の空気を遠心ファン6の吸込側から吐出側へ流動させることで、遠心ファン6の吸込側圧力と吐出側圧力との差圧による空気の逆流、ひいては遠心ファン6における環流を防ぐ。このことから、本実施形態に係る電動送風機1Aは、従来の電動送風機のように遠心ファン6とファンカバー17との間に挟まるシール部材を必要としない。すなわち、本実施形態に係る電動送風機1Aは、従来の電動送風機のような遠心ファン6とシール部材との摩擦に起因する機械的損失を生じない。
【0067】
なお、シールリブ65、66による逆流防止の効果は、この逆流を阻害可能であれば良く、逆流を完全に阻止する程度の空気流を生じるものに限らない。
【0068】
したがって、本実施形態に係る電動送風機1、1Aによれば、遠心ファン6とファンカバー17との相対的な回転運動を利用して遠心ファン6の吐出側から遠心ファン6とファンカバー17とを隔てる隙間12を通じて遠心ファン6の吸込側へ向かう空気の逆流を抑制し、吸込性能の低下をより抑制できる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1、1A 電動送風機
3 電動送風機ケース
5 羽根
6 遠心ファン
8 上流整流板
9 整流板
11 モータ部
12 隙間
13 シールリブ
16 第二吸込口
17 ファンカバー
18 吐出口
19 電動機ケース
21 回転子
22 整流板支持体
23 開口
25 底壁
26 開口
27 底壁
28 モータヘッド部
29 ベアリング
31 フランジ部
32 側壁
33 ベアリング
35 ロータ軸
36 軸受保持部
37 貫通口
39 第一板
41 第一吸込口
42 第二板
42a 内周縁
43 嵌挿孔
45 翼間流路
46 入口流路
48 固定子
49 ブラシ機構
51 整流子
52 カーボンブラシ
53 ブラシ保持器
56 整流板本体
57 下流整流板
68 貫通孔
69 案内風路
61 流過風路
62 環状部材
63、65、66 シールリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
隙間を隔てて前記羽根車を覆うとともに前記羽根車に空気を案内する入口を有するファンカバーと、
前記隙間に位置して前記羽根車の回転中心線に対して径方向へ延びつつ湾曲するシールリブと、を備えることを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
前記シールリブは、前記羽根車の回転にともない前記入口側から前記羽根車の吐出側へ向かう空気流を生じる方向へ湾曲することを特徴とする請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
前記シールリブは、前記ファンカバーから突出して前記羽根車の回転中心側から離れるにしたがい前記羽根車の回転する方向へ延びることを特徴とする請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
前記シールリブは、螺旋形状に延びることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項5】
前記シールリブは、円弧形状に延びることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項6】
前記シールリブおよび前記ファンカバーは一体成形品であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項7】
前記シールリブは、前記羽根車から突出して前記羽根車の回転中心側から離れるにしたがい前記羽根車の回転方向に対する逆方向へ延びることを特徴とする請求項1または2に記載の電動送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113206(P2013−113206A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259820(P2011−259820)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】