説明

電圧モニタ回路

【課題】簡易な構成でありながら断線を容易に検出できる電圧モニタ回路を提供することを目的とする。
【解決手段】直列に接続された複数の電池の電圧をモニタする電圧モニタ回路1であって、検出線10と、各電池E1〜E4に対して設けられ、一対の検出線A1〜A4により各電池E1〜E4と並列に接続された第一抵抗Ra1〜Ra4と、各電池E1〜E4に対して設けられ、一対の検出線A1〜A4により各電池E1〜E4と並列に接続された第二抵抗Rb1〜Rb4と、を備える。各一対の検出線A1〜A4における第二抵抗Rb1〜Rb4が接続される位置は、第一抵抗Ra1〜Ra4よりも電池E1〜E4に近い位置で接続された第二抵抗Rbと、電池E1〜E4よりも第一抵抗Ra1〜Ra4に近い位置で接続された第二抵抗Rbとが、電池E1〜E4が並ぶ順に交互に存在するようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に接続された複数の電池の電圧をモニタする電圧モニタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直列に接続された複数の電池が電源として用いられており、これらの電源における各電池の電圧をモニタする電圧モニタ回路が知られている。特に、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、充電上限電圧や、放電下限電圧を超えると、発火などを起こしたり特性が著しく劣化したりするため、個々の電圧を常時モニタする必要性が高い。
【0003】
このような電圧モニタ回路においては、図3に示すように、電池E1,E2,E3,E4の両端にそれぞれ検出線10を接続し、各一対の検出線A1,A2,A3,A4に対して第一抵抗Ra1〜Ra4を有する電圧測定器V1〜V4をそれぞれ接続し、各電池の電圧をモニタする。例えば、電池E2の電圧が4.2V、電池E3の電圧が3.0Vであれば、電圧測定器V2が検出する電圧は4.2V、電圧測定器V3が検出する電圧は3.0Vである。例えばリチウムイオン二次電池では、放電下限電圧は2.5V程度であり、上限充電電圧は4.3V程度であり、電圧測定器が検出する電圧がこの範囲を超えれば、警報を発したり充電や放電を止めさせる。
【0004】
ところで、このような電圧モニタ回路において、検出線が断線することがある。そして、従来の電圧モニタ回路では、電圧をモニタしても断線を効率よく検出することは困難であった。例えば、図3において、検出線10が断線しても、電圧測定器V2が検出する電圧は3.6Vであり、電圧測定器V3が検出する電圧も3.6Vである。したがって、このような電圧モニタ回路が検出した電圧で断線を検知することは困難である。そこで、このような電圧モニタ回路において、例えば、以下の特許文献に示すように、断線検知機能を付加する方法が知られている。
【特許文献1】特開2001−116776号公報
【特許文献2】特開2002−204537号公報
【特許文献3】特開2002−343445号公報
【特許文献4】特開2004−104989号公報
【特許文献5】特開2004−335002号公報
【特許文献6】特開2006−275928号公報
【特許文献7】特開2007−139664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電圧モニタ回路で断線を検知しようとすると、複雑な構成が必要となりコスト高となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら断線を容易に検出できる電圧モニタ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモニタ回路は、直列に接続された複数の電池の電圧をモニタする電圧モニタ回路であって、複数の電池の両端及び電池間にそれぞれ接続された検出線と、各電池に対して設けられ、各電池の両端に接続された一対の検出線により各電池と並列に接続された第一抵抗と、各電池に対して設けられ、前記各電池の両端に接続された一対の検出線により各電池と並列に接続された第二抵抗と、を備える。各一対の検出線における第二抵抗が接続される位置は、第一抵抗よりも電池に近い位置で接続された第二抵抗と、電池よりも第一抵抗に近い位置で接続された第二抵抗とが、電池が並ぶ順に交互に存在するようにされている。
【0008】
本発明によれば、検出線に異常がない場合には、各一対の検出線間には、対応する電池の電圧が印加される。一方、検出線において断線が起こり、この断線箇所が、第二抵抗が接続される2つの位置である、電池に近い位置と、第一抵抗に近い位置との間である場合、一方の一対の検出線間には第一抵抗と第二抵抗とが並列に接続され、他方の一対の検出線間には第一抵抗が接続された状態となるので、一方の検出線間にかかる電圧と、他方の検出線間にかかる電圧とが大きく異なることとなる。
【0009】
ここで、各一対の前記検出線において、前記第二抵抗の抵抗値は前記第一抵抗の抵抗値よりも小さいことが好ましい。
【0010】
これにより、断線時に、一方の検出線間にかかる電圧と、他方の検出線間にかかる電圧とがより大きく異なることとなる。
【0011】
また、第二抵抗の抵抗値が互いに同一であることが好ましい。
【0012】
これにより、検出線が断線していない状態において、各電池の消費電力がそれぞれ同一となり、電池の容量バランスが崩れ難い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成でありながら断線を容易に検出できる電圧モニタ回路が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
本実施形態に係る電圧モニタ回路1は、直列に接続された電池E1,E2,E3,E4の電圧をモニタする回路である。電圧モニタ回路1は、主として、検出線10、第一抵抗Ra1〜Ra4、第二抵抗Rb1〜Rb4を主として備えている。
【0016】
検出線10は、直列に接続された複数の電池E1〜E4の組電池の両端と、各電池間とにそれぞれ接続されている。電池E1、E2,E3,E4の両端に対して、それぞれ、2本の検出線10により構成される一対の検出線A1,A2,A3,A4が接続されることとなる。
【0017】
第一抵抗Ra1〜Ra4は、それぞれ、各一対の検出線A1,A2,A3,A4によって、各電池E1、E2,E3,E4に対して並列に接続されている。
【0018】
ここで、第一抵抗Ra1〜Ra4は、過充電・過放電検出IC40において各一対の検出線A1,A2,A3,A4のそれぞれの間の電圧を測定する電圧測定器V1〜V4の内部抵抗のことである。なお、過充電・過放電検出IC40は、図示は省略するが、電圧測定器V1〜V4の電圧が所定の閾値を超えた場合に、対応する電池への充電を停止させたり、所定の閾値を下回った場合に、対応する電池の放電を停止させたりする機能を有することができる。
【0019】
第二抵抗Rb1〜Rb4も、それぞれ、各一対の検出線A1,A2,A3,A4によって、各電池E1、E2,E3,E4に対して並列に接続されている。そして、第二抵抗Rb1〜Rb4が各一対の検出線に接続される位置は、電池に近い第二抵抗と、第一抵抗Raに近い第二抵抗とが交互に存在するように設定されている。すなわち、第一の抵抗Rb1、Rb3が、一対の検出線A1,A3における第一抵抗Raから遠く電池Eに近い位置に接続され、第一の抵抗Rb2、Rb4が、一対の検出線A2,A4における第一抵抗Raに近く電池Eから遠い位置に接続されている。
【0020】
ここで、第一抵抗Ra1〜Ra4の抵抗値、第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値について特に制限はないが、第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値のそれぞれが、対応する第一抵抗Ra1〜Ra4の抵抗値よりも小さいことが好ましい。
【0021】
具体的には、例えば、第一抵抗Ra1〜Ra4の抵抗値は例えば、10〜100MΩ、第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値は例えば、0.1〜10MΩとすることが好ましい。また、第一抵抗Ra1〜Ra4の抵抗値は互いに同じであることが好ましい。また、第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値の値も互いに同であることが好ましい。
【0022】
特に第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値は第一抵抗Ra1〜Ra4の抵抗値よりも小さくすることが好ましく、これにより、正常時には、主として、第二抵抗により電池の消費電流が定まる。そして、第二抵抗の抵抗値を互いに同一とすることにより、各電池から消費される電流が互いに同程度となる。したがって、正常動作を続けてかなりの時間が経過した場合等においても、各電池の容量のバランスが崩れにくくなり好ましい。
【0023】
以下、本実施形態にかかる電圧モニタ回路1について説明する。ここでは、一例として、第一抵抗Ra1〜Ra4の抵抗値がいずれも10MΩ、第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値がいずれも10MΩ、E1=E2=4.2V、E3=E4=3.0Vとした場合を考える。
【0024】
検出線10にいずれも異常がない状態では、電圧測定器V1,V2はE1,E2の電圧である4.2Vを検出し、電圧測定器V3,V4はE3,E4の電圧である3.0Vを検出する。
【0025】
一方、図2に示すように、電池E3と電池E4との間に接続された検出線10が切断した場合、電池E2及び電池E3の直列電圧が、第二抵抗Rb2、第一抵抗Ra2、Ra3を含む回路に流れることとなる。したがって、電圧測定器V3,V4の電圧は、
V3=(E2+E3)(Ra3/(Ra3+(Ra2×Rb2)/(Ra2+Rb2)))
V2=E2+E3−V2
となる。そして、上述の例では、V3=6.6V、V4=0.6Vとなり、V3とV4とに極めて大きな差が生ずる。したがって、この差に基づいて、過充電・過放電検出IC40では検出線の断線の有無や位置を判断することができる。
【0026】
例えば、リチウムイオン二次電池の場合には、過充電電電圧を4.3V、過放電電圧を2.5V程度とすることが多く、この場合、断線時の電圧V3が過充電電圧を超え、及び/又は、断線時の電圧V2が過放電電圧を下回るように、第一抵抗Ra1〜Ra4の抵抗値に対して、第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値を定めることが好ましく、この場合、断線が起こった場合でも、特に過充電・過放電検出IC40を改造とすることなく、過充電・過放電検出IC40が過充電又は過放電が発生したものとして、電池の充電や放電をとめることができて好ましい。
【0027】
このようにするためには、具体的には、各第一抵抗Ra1〜Ra4に対して、各第二抵抗Rb1〜Rb4の抵抗値の値を同等以下の範囲に設定することが好ましい。
【0028】
以上説明した電圧モニタ装置によれば、組み立て時の接触等による検知線の断線や、組み立て後の経年変化による検知線の断線が起きた場合にこれを容易に検知することができ、電圧モニタができなくなることによる過充電や過放電の可能性を低減できる。また、構成が非常に簡単であり、低コスト化に資する。
【0029】
なお、使用される電池E1〜E4は特に限定されないが、2次電池が好ましく、特に、
電圧の管理が重要なリチウムイオン二次電池が好ましい。
【0030】
本発明は上記実施形態に限られずさまざまな変形態様が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る電圧モニタ回路の回路図である。
【図2】図2は、図1の電圧モニタ回路の断線時の状態を示す回路図である。
【図3】図3は、従来の電圧モニタ回路の回路図である。
【符号の説明】
【0032】
1…電圧モニタ回路、E1〜E4…電池、10…検出線、A1〜A4…一対の検出線、Ra1〜Ra4…第一抵抗、Rb1〜Rb4…第二抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の電池の電圧をモニタする電圧モニタ回路であって、
前記複数の電池の両端及び前記電池間にそれぞれ接続された検出線と、
前記各電池に対して設けられ、前記各電池の両端に接続された一対の前記検出線により前記各電池と並列に接続された第一抵抗と、
前記各電池に対して設けられ、前記各電池の両端に接続された一対の前記検出線により前記各電池と並列に接続された第二抵抗と、を備え、
前記各一対の前記検出線における前記第二抵抗が接続される位置は、前記第一抵抗よりも前記電池に近い位置で接続された前記第二抵抗と、前記電池よりも前記第一抵抗に近い位置で接続された前記第二抵抗とが、前記電池が並ぶ順に交互に存在するようにされている電圧モニタ回路。
【請求項2】
前記各一対の前記検出線において、前記第二抵抗の抵抗値は前記第一抵抗の抵抗値よりも小さい請求項1記載の電圧モニタ回路。
【請求項3】
前記第二抵抗の抵抗値が互いに同一である請求項1又は2の電圧モニタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−19809(P2010−19809A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183111(P2008−183111)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】