説明

電圧供給回路

【課題】簡略な回路構成で低消費電流化が可能な電圧供給回路を提供する。
【解決手段】負荷への供給電圧を発生させる電圧供給回路であって、インバータIL1−1、IL1−2、IH1−1及びIH1−2によって構成される論理回路と、充電用PチャンネルMOSトランジスタP1と放電用NチャンネルMOSトランジスタN1とによって構成され、前記論理回路の一方の出力(インバータIL1−2の出力)によって充電動作がオン/オフ制御され、前記論理回路の他方の出力(インバータIH1−2の出力)によって放電動作がオン/オフ制御され、自己の出力電圧V1が前記負荷への供給電圧及び前記論理回路の入力となる充放電回路とを備える電圧供給回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に対して電圧を供給する電圧供給回路に関するものである。本発明に係る電圧供給回路は、例えば液晶表示装置において液晶駆動用バイアス電圧を発生させる液晶駆動用電源回路として利用される。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を駆動する場合、液晶駆動用電源回路にて必要な数の所定のバイアス電圧を発生させ、表示データなどにより液晶画素への信号出力制御スイッチをオン/オフ制御して上記バイアス電圧を選択的に出力させることにより、液晶駆動信号すなわちコモン出力信号とセグメント出力信号を形成する。その信号波形例を図2に示す。V1〜V5は液晶駆動用電源回路にて生成されたバイアス電圧の値であり、各バイアス電圧の値V1〜V5及び接地電圧の値VGNDが液晶駆動信号の各レベルを構成している。
【0003】
複数のバイアス電圧を発生させる電源回路として、最も基本的なものに抵抗分割にて分圧回路を構成するものがある。その構成を図3に示す。図3に示す電源回路では、電源回路の全消費電流の内、負荷(例えば液晶)に供給される成分は非常に少なく、定電圧Vcが印加される端子から可変抵抗VR1及び抵抗R1〜R5を介してGNDに直接流れ込んでしまう無駄な成分が大きくなってしまう。大規模な液晶表示装置を駆動する場合、バイアス電圧の安定度を上げるために、バイアス電圧を発生させる電源回路の出力インピーダンスを低くする必要があり、図3に示す電源回路の構成では可変抵抗VR1及び抵抗R1〜R5の抵抗値を下げなければならず非常に大きな電流を無駄に消費することになってしまう。
【0004】
上記の低出力インピーダンス化と低消費電流化を考慮して考案されたのが、コンパレータとPチャンネルMOSトランジスタとを用いてバイアス電圧を生成する電源回路である。その構成を図4に示す。図4に示す電源回路では、高抵抗値の可変抵抗VR1及び抵抗R1〜R5を用いた抵抗分割にて低消費電流の分圧回路を構成し、この分圧回路の第k出力を第kバイアス電圧の基準電圧としてコンパレータCkの反転入力端子に印加し、コンパレータCkの非反転入力端子には第kバイアス電圧Vkを供給する低インピーダンスなPチャンネルMOSトランジスタTkのドレインを接続し、コンパレータCkの出力をPチャンネルMOSトランジスタTkのゲートに接続する構成となっている(ただし、kは1〜5の整数)。図4に示す電源回路の構成によれば、コンパレータC1〜C5にて、基準電圧とバイアス電圧とを比較し、バイアス電圧が基準電圧に対して低下していれば、コンパレータC1〜C5から「0」が出力され、PチャンネルMOSトランジスタT1〜T5がオンし、負荷を充電してバイアス電圧を引き上げる。また、バイアス電圧が基準電圧に達すると、コンパレータC1〜C5から「1」が出力され、PチャンネルMOSトランジスタT1〜T5がオフし、バイアス電圧がそれ以上上がらなくなる。
【0005】
図4に示す電源回路によると、低出力インピーダンスで所望のバイアス電圧が供給されるとともに、分圧回路での無駄な消費電流がなくなるので大幅な低消費電流化が実現できる。しかしながら、バイアス電圧にて容量性の液晶負荷を駆動することを考えると、液晶駆動信号が低バイアス電圧から高バイアス電圧へ遷移するときは高バイアス電圧から負荷へ充電することになるが、高バイアス電圧から低バイアス電圧へ遷移するときには負荷から低バイアス電圧へ放電されることになる。そのため、バイアス電圧は負荷への充電及び負荷からの放電に従って変動することになり、この変動を基準電圧によって抑制するには、充電のみにしか対応できないPチャンネルMOSトランジスタT1〜T5を、充放電両方に対応可能なCMOSバッファ又はCMOSインバータに置き換える必要がある。このような置き換えを行った電源回路の構成を図5に示す。図5に示す電源回路は、図4に示す電源回路において、PチャンネルMOSトランジスタT1〜T5をCMOSインバータCI1〜CI5に置き換えた構成である。このような構成により、充放電の何れにも対応可能となる。
【0006】
しかしながら、図5に示す電源回路では、CMOSインバータCI1〜CI5にてバイアス電圧の制御をしているために、CMOSインバータを構成しているPチャンネルMOSトランジスタ及びNチャンネルMOSトランジスタのうちいずれか一方が必ずオンしてしまうので、バイアス電圧が基準電圧に制御されてもそこで制御を止めることができず、さらに充放電が継続されてしまい、無駄な電流を消費することになってしまう。
【0007】
この無駄な充放電を防ぐ技術として、特許文献1に開示されている電源回路がある。その構成を図6に示す。図6に示す電源回路では、充電用のPチャンネルMOSトランジスタPk及び放電用のNチャンネルMOSトランジスタNkをCMOSで構成し、PチャンネルMOSトランジスタPkをコンパレータCLkで制御し、NチャンネルMOSトランジスタNkをコンパレータCHkで制御し、両コンパレータCLk及びCHkの非反転入力端子に、PチャンネルMOSトランジスタPk及びNチャンネルMOSトランジスタNkの接続点電圧である第kバイアス電圧Vkが供給され、コンパレータCHkの反転入力端子には、抵抗分圧回路中の許容電圧範囲を設定している抵抗rkの上端電圧である上限基準電圧VkHが印加され、コンパレータCLkの反転入力端子には、抵抗分圧回路中の許容電圧範囲を設定している抵抗rkの下端電圧である下限基準電圧VkLが印加される(ただし、kは1〜5の整数)。このような構成であれば、バイアス電圧V1〜V5が変動して許容電圧範囲を超えたときにのみ充電用のPチャンネルMOSトランジスタP1〜P5又は放電用のNチャンネルMOSトランジスタN1〜N5がオンしてバイアス電圧V1〜V5の制御を行い、バイアス電圧V1〜V5が許容電圧範囲内であれば充電用及び放電用の両MOSトランジスタP1〜P5及びN1〜N5がオフになって負荷に対してハイインピーダンス状態となりバイアス電圧V1〜V5の制御を停止するので、不要な継続制御を行わないようにすることができる。
【0008】
【特許文献1】特開昭55−146487号公報
【特許文献2】特開平9−43568号公報
【特許文献3】特開平9−105905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに図6に示す電源回路は、充電用のPチャンネルMOSトランジスタ及び放電用のNチャンネルMOSトランジスタを構成するCMOSでの無駄な消費電流を抑えることはできるが、1つのバイアス電圧を発生させるために2つのコンパレータが必要であるため、図4や図5に示した電源回路と比較して回路規模が増大し、電源回路のコストアップに繋がるという問題を有している。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、簡略な回路構成で低消費電流化が可能な電圧供給回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係る電圧供給回路は、負荷への供給電圧を発生させる電圧供給回路であって、論理回路と、前記論理回路の一方の出力によって充電動作がオン/オフ制御され、前記論理回路の他方の出力によって放電動作がオン/オフ制御され、自己の出力電圧が前記負荷への供給電圧及び前記論理回路の入力となる充放電回路とを備える構成である。
【0012】
このような構成によると、コンパレータや抵抗分圧回路が不要となるので、上述した図6に示す従来の電源回路と比較すると、非常に簡略な回路構成となる。また、このような構成によると、充電動作のオン/オフ制御と放電動作のオン/オフ制御が互いに独立しているので、充電動作と放電動作の両方を停止させることができる。これにより、無駄な電流の消費を防止することができる。
【0013】
また、前記充放電回路が、充電用PチャンネルMOSトランジスタと放電用NチャンネルMOSトランジスタを備えるようにしてもよい。この場合、前記論理回路が、前記負荷への供給電圧の下限許容値を論理閾値とする第1インバータと、前記第1インバータの出力を反転させる第2インバータと、前記負荷への供給電圧の上限許容値を論理閾値とする第3インバータと、前記第3インバータの出力を反転させる第4インバータとを備え、前記論理回路の一方の出力が前記第2インバータの出力であり、前記論理回路の他方の出力が前記第4インバータの出力であって、前記第2インバータの出力が前記充電用PチャンネルMOSトランジスタのゲートに供給され、前記第4インバータの出力が前記放電用NチャンネルMOSトランジスタのゲートに供給されるようにしてもよい。
【0014】
また、負荷への供給電圧の適切な制御を行う観点から、本発明に係る電圧供給回路では、前記負荷への供給電圧が許容範囲外であることを前記論理回路の出力が示しているときは、前記充放電回路が充放電動作を行うようにすることが望ましい。
【0015】
また、低消費電流化の観点から、本発明に係る電圧供給回路では、前記負荷への供給電圧が許容範囲内であることを前記論理回路の出力が示しているときは、前記充放電回路が充放電動作を行わないようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電圧供給回路によると、コンパレータや抵抗分圧回路が不要となるので、上述した図6に示す従来の電源回路と比較すると、非常に簡略な回路構成となる。また、本発明に係る電圧供給回路によると、充電動作のオン/オフ制御と放電動作のオン/オフ制御が互いに独立しているので、充電動作と放電動作の両方を停止させることができる。これにより、無駄な電流の消費を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明に係る電圧供給回路の一構成例を図1に示す。図1に示す本発明に係る電圧供給回路は、図6に示す従来の電源回路と比較すると、コンパレータCLkの代わりにインバータILk−1及びILk−2を配置し、コンパレータCHkの代わりにインバータIHk−1及びIHk−2を配置し、上限基準電圧VkH及び下限基準電圧VkLを生成していた抵抗分圧回路を廃止している構成である(ただし、kは1〜5の整数)。このように、図1に示す本発明に係る電圧供給回路は、図6に示す従来の電源回路と比較すると、全体として非常に簡略化された構成となっていることが特徴である。
【0018】
ここで、第1バイアス電圧V1を発生させる回路部について説明する。第1バイアス電圧V1を発生させる回路部は、第1バイアス電圧V1を入力するインバータIL1−1と、インバータIL1−1の出力を反転させるインバータIL1−2と、第1バイアス電圧V1を入力するインバータIH1−1と、インバータIH1−1の出力を反転させるインバータIH1−2とによって構成される論理回路を備えている。また、第1バイアス電圧V1を発生させる回路部は、インバータIL1−2の出力によってオン/オフ制御される充電用のPチャンネルMOSトランジスタP1とインバータIH1−2の出力によってオン/オフ制御される放電用のNチャンネルMOSトランジスタN1とによって構成され、充電用のPチャンネルMOSトランジスタP1及び放電用のNチャンネルMOSトランジスタN1の接続点電圧を第1バイアス電圧V1として上記論理回路と負荷(不図示)に供給する充放電回路を備えている。
【0019】
負荷(不図示)に供給する第1バイアス電圧V1の目標値をV1Mとし、第1バイアス電圧V1の許容範囲を目標値±αとし、インバータIL1−1の論理閾値がV1M−αになるように、インバータIL1−1を構成するPチャンネルMOSトランジスタ(不図示)及びNチャンネルMOSトランジスタ(不図示)のサイズを調整設計し、インバータIH1−1の論理閾値がV1M+αになるように、インバータIH1−1を構成するPチャンネルMOSトランジスタ(不図示)及びNチャンネルMOSトランジスタ(不図示)のサイズを調整設計する。
【0020】
上記の調整設計により、第1バイアス電圧V1の値が下限許容値V1M−αより低くなると、インバータIL1−1の出力が「1」となり、インバータIL1−1の出力を反転させるインバータIL1−2の出力が「0」となり、結果として充電用のPチャンネルMOSトランジスタP1がオンになり、第1バイアス電圧V1が引き上げられ、逆に、第1バイアス電圧V1の値が上限許容値V1M+αより高くなると、インバータIH1−1の出力が「0」となり、インバータIH1−1の出力を反転させるインバータIH1−2の出力が「1」となり、結果として放電用のNチャンネルMOSトランジスタN1がオンになり、第1バイアス電圧V1が引き下げられる。
【0021】
以上の動作によって、第1バイアス電圧V1の値が許容範囲(下限許容値V1M−α以上上限許容値V1M+α以下)外になっているときは、充電用のPチャンネルMOSトランジスタP1及び放電用のNチャンネルMOSトランジスタN1のうちいずれか一方がオンになり、充電動作及び放電動作のうちいずれか一方が行われる。
【0022】
これに対して、第1バイアス電圧V1の値が許容範囲(下限許容値V1M−α以上上限許容値V1M+α以下)内になっているときは、インバータIL1−1の出力が「0」となり、インバータIL1−1の出力を反転させるインバータIL1−2の出力が「1」となり、結果として充電用のPチャンネルMOSトランジスタP1がオフになり、インバータIH1−1の出力が「1」となり、インバータIH1−1の出力を反転させるインバータIH1−2の出力が「0」となり、結果として放電用のNチャンネルMOSトランジスタN1がオフになる。充電用及び放電用の両MOSトランジスタP1及びN1がオフになって負荷(不図示)に対してハイインピーダンス状態となり第1バイアス電圧V1の制御を停止するので、第1バイアス電圧V1の値が許容範囲外から許容範囲内になった場合に不要な継続制御を行わないようにすることができる。
【0023】
なお、第2バイアス電圧V2を発生させる回路部、第3バイアス電圧V3を発生させる回路部、第4バイアス電圧V4を発生させる回路部、及び第5バイアス電圧V5を発生させる回路部は、バイアス電圧の目標値が異なる点を除き、上述した第1バイアス電圧V1を発生させる回路部と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0024】
また、図1に示す本発明に係る電圧供給回路は、第1〜5バイアス電圧V1〜V5、すなわち5種類のバイアス電圧を発生させる回路であるが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、負荷への供給電圧が一種類しかなくても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】は、本発明に係る電圧供給回路の一構成例を示す図である。
【図2】は、液晶駆動信号の波形例を示す図である。
【図3】は、従来の電源回路の一構成例を示す図である。
【図4】は、従来の電源回路の他の構成例を示す図である。
【図5】は、従来の電源回路の更に他の構成例を示す図である。
【図6】は、従来の電源回路の更に他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
IH1−1〜IH5−1 インバータ
IH1−2〜IH5−2 インバータ
IL1−1〜IH5−1 インバータ
IL1−2〜IL5−2 インバータ
N1〜N5 NチャンネルMOSトランジスタ
P1〜P5 PチャンネルMOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷への供給電圧を発生させる電圧供給回路であって、
論理回路と、
前記論理回路の一方の出力によって充電動作がオン/オフ制御され、前記論理回路の他方の出力によって放電動作がオン/オフ制御され、自己の出力電圧が前記負荷への供給電圧及び前記論理回路の入力となる充放電回路とを備えることを特徴とする電圧供給回路。
【請求項2】
前記充放電回路が、充電用PチャンネルMOSトランジスタと放電用NチャンネルMOSトランジスタを備える請求項1に記載の電圧供給回路。
【請求項3】
前記論理回路が、前記負荷への供給電圧の下限許容値を論理閾値とする第1インバータと、前記第1インバータの出力を反転させる第2インバータと、前記負荷への供給電圧の上限許容値を論理閾値とする第3インバータと、前記第3インバータの出力を反転させる第4インバータとを備え、
前記論理回路の一方の出力が前記第2インバータの出力であり、前記論理回路の他方の出力が前記第4インバータの出力であって、前記第2インバータの出力が前記充電用PチャンネルMOSトランジスタのゲートに供給され、前記第4インバータの出力が前記放電用NチャンネルMOSトランジスタのゲートに供給される請求項2に記載の電圧供給回路。
【請求項4】
前記負荷への供給電圧が許容範囲外であることを前記論理回路の出力が示しているときは、前記充放電回路が充放電動作を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧供給回路。
【請求項5】
前記負荷への供給電圧が許容範囲内であることを前記論理回路の出力が示しているときは、前記充放電回路が充放電動作を行わない請求項1〜4のいずれか1項に記載の電圧供給回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−199429(P2009−199429A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41496(P2008−41496)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】