説明

電圧均等化制御装置及び電圧均等化制御方法

【課題】アクティブバランス回路のバランス時間を短くする。
【解決手段】電池セル101及び電池セル102の電圧を電圧計106及び電圧計107で測定する。また、アクティブバランス回路の周辺温度を温度センサ108及び温度センサ109で測定する。そして、測定した電圧と周辺温度から、アクティブバランス回路の合成インピーダンスを推定し、その合成インピーダンスに対応した周波数のパルス信号により、スイッチ104及びスイッチ105をオンオフさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池を構成する電池セルの電圧を均等化する電圧均等化制御装置に関し、特には、アクティブ式の電圧均等化制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリット車や電気自動車等に搭載されるリチウムイオン電池等の電池セルは、高電圧を得るために、複数の電池セルを直列に接続した構成(以下、組電池という。)で用いられている。
【0003】
このような組電池を構成する各電池セルの電圧(以下、セル電圧という。)がばらつくと、電池セルの劣化が加速的に進行したり、利用可能なエネルギー量が低下したりする。したがって、各セル電圧は均等であることが望ましい。
【0004】
しかし、各電池セルの容量、内部抵抗及び自己放電率等が不均一であることに起因して、セル電圧にばらつきが発生することがある。そこで、従来から、各電池セルの電圧を均等化するための電圧均等化回路(以下、バランス回路という。)を用いてセル電圧のばらつきを解消する方法が用いられている。そして、バランス回路の使用により、新たに発生した発熱等の問題点を解消するための技術も考案されている(例えば、下記特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1には、組電池の容量調整時の温度上昇を抑制するために、容量調整が必要なセル数を判断し、容量調整が必要なセル数に応じて、バイパス電流の大きさを変更するバッテリの容量制御方法が記載されている(例えば、下記特許文献1)。
【0006】
特許文献2には、組電池の容量調整時の温度上昇を抑制するために、冷却ファンが作動している時に大きなバイパス電流を流す。そして、冷却ファンが作動していない時には、作動しているときと比較して、小さなバイパス電流を流す容量調整装置が記載されている(例えば、下記特許文献2)。
【0007】
これらの文献では、直列に接続された各電池セルの内、過充電になった電池セルを電池セルと並列に接続した抵抗にバイパスして放電させることで、各電池セルの電圧を均等化するパッシブ方式のバランス回路(以下、パッシブバランス回路という。)を用いている。
【0008】
また、回路効率を向上させるために、下記に説明するアクティブ式のバランス回路(以下、アクティブバランス回路という。)を用いる方式がある。
図10は、アクティブバランス回路の構成図である。図10では例として、電池セル1001及び電池セル1002の2つの電池セルに接続された、アクティブバランス回路を示している。
【0009】
アクティブバランス回路1000は、コイル1003、スイッチ1004及びスイッチ1005により構成される。例えば、電池セル1001の電圧が電池セル1002の電圧よりも高い状態で、両者の電圧を均等化することを例として、アクティブバランス回路の動作を説明する。
【0010】
まず、アクティブバランス回路は、図示しない制御部から入力される第1のパルス信号に基づいてスイッチ1004をオンオフさせる。これにより、アクティブバランス回路は、電池セル1001の電荷を断続的にコイル1003に蓄電させる。次に、アクティブバランス回路は、第1のパルス信号よりも1パルスの立ち上がり時間(ハイレベルがオンの場合、スイッチ1004のオン時間)分だけ位相が遅れた第2のパルス信号が制御部から入力されることにより、スイッチ1005をオンオフさせる。これにより、アクティブバランス回路は、コイル1003に蓄電された電荷を電池セル1002に移動させる(以下、バランス動作という。)。制御部により、電池セル1001及び電池セル1002それぞれの電圧を測定しながらこのバランス動作を繰り返すことにより、電池セル1001及び電池セル1002の電圧を均等化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−17630号公報
【特許文献2】特開2006−115640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アクティブバランス回路のバランス時間を短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、組電池を構成する各電池セルそれぞれに、パルス信号によりオンオフ制御されるスイッチを並列に接続し、さらに、該各電池セルの接続点と各スイッチの接続点との間にコイルを接続して構成されるバランス回路により、隣り合う前記各電池セル相互で電荷を移動させ、前記各電池セルの電圧を均等化する電圧均等化制御装置において、前記各電池セルの開放電圧を測定する電圧測定手段と、前記バランス回路の周辺温度を測定する温度測定手段と、前記バランス回路の周辺温度及び前記各電池セルの開放電圧に対応づけて、隣り合う前記各電池セル相互で一回に移動する電荷量が一定となる前記パルス信号の周波数を記憶した記憶手段と、前記バランス回路の周辺温度及び前記各電池セルの開放電圧を用いて、対応する前記パルス信号の周波数を前記記憶手段から抽出する周波数抽出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アクティブバランス回路のバランス時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の電圧均等化制御装置の構成図である。
【図2】実施形態1のアクティブバランス回路の等価回路である。
【図3】実施形態1の制御部のブロック図である。
【図4】実施形態1のOCV−SOCマップである。
【図5】実施形態1のSOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップである。
【図6】実施形態1の合成インピーダンス−周波数マップである。
【図7】実施形態1のバランス動作時のセル電圧の変化を示す図である。
【図8】実施形態1のバランス動作のフローチャートである。
【図9】実施形態2の電圧均等化制御装置の構成図である。
【図10】従来のアクティブバランス回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態の電圧均等化制御装置について説明する。
[実施形態1]
図1は、実施形態1の電圧均等化制御装置の構成図である。また、図1は、組電池が2つの電池セルで構成されている例である。なお、実際の組電池は、図1に示す構成を一つのブロックとして、相互に接続された構成となる。そして、相互に接続された隣り合う電池の間で下記に説明するバランス動作を行なうことにより、組電池全体の各セル電圧を均等化することができる。
【0017】
電圧均等化制御装置100は、電池セル101、電池セル102、コイル103、スイッチ104、スイッチ105、電圧計106、電圧計107、温度センサ108、温度センサ109及び制御部110が設けられている。
【0018】
電池セル101及び電池セル102は、例えば、リチウムイオン電池等の蓄電池であり、互いに直列に接続されている。
コイル103は、電池セル101と電池セル102との接続点と、スイッチ104とスイッチ105との接続点との間に接続されている。
【0019】
スイッチ104及びスイッチ105は、例えば、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチまたは電磁リレー等で構成され、それぞれ電池セル101及び電池セル102と並列に接続されている。また、スイッチ104とスイッチ105とは、直列に接続されている。そして、制御部110から入力されるパルス信号に基づいてスイッチ104及びスイッチ105をオンオフさせる。なお、以下スイッチ104を制御するパルス信号を第1のパルス信号、スイッチ105を制御するパルス信号を第2のパルス信号という。
【0020】
電圧計106は、電池セル101に並列に接続され、電池セル101の電圧を測定する。また、電圧計107は、電池セル102に並列に接続され、電池セル102の電圧を測定する。そして、電圧計106及び電圧計107は、測定した電圧を制御部110に出力する。なお、電圧計106及び電圧計107は、それぞれ電池セル101及び電池セル102の電圧を測定できるものであれば、適宜選択した電圧検出装置を用いればよい。
【0021】
温度センサ108及び温度センサ109は、例えば、サーミスタ等を用いた温度センサである。そして、温度センサ108は、アクティブバランス回路において、電池セル101とスイッチ104側(以下、上側回路という。)の周辺温度を測定する。また、温度センサ109は、アクティブバランス回路において、電池セル102とスイッチ105側(以下、下側回路という。)の周辺温度を測定する。さらに、温度センサ108及び温度センサ109は、測定した温度を制御部110へ出力する。なお、温度センサ108及び温度センサ109は、サーミスタに特に限定されるものではなく、コイル103の温度を測定できるものであれば、適宜選択した温度センサを用いればよい。また、温度センサ108及び温度センサ109は、それぞれ上側回路及び下側回路近傍の周辺温度を測定するものなので、上側回路及び下側回路の周辺温度がほぼ等しい状態であれば、片方を削除することもできる。
【0022】
制御部110は、ECU(Electronic Control Unit)等のワークスペースとしてメモリを搭載するコンピュータと、電圧計106及び電圧計107で測定された電圧を受信する構成とを備えている。そして、受信した電圧計106及び電圧計107それぞれの電圧及び温度に基づいて、スイッチ104及びスイッチ105をオンオフさせる第1及び第2のパルス信号の周波数を決定する。また、制御部110は、決定した周波数の第1及び第2のパルス信号を生成し、それぞれスイッチ104及びスイッチ105に出力する。
【0023】
なお、図1において、アクティブバランス回路とは、コイル103、スイッチ104及びスイッチ105を組み合わせた回路のことである。
次に、図1において、電池セル101の電圧が電池セル102の電圧よりも高い状態で、両者の電圧を均等化することを例として、電圧均等化制御装置100の動作を説明する。
【0024】
まず、電圧計106及び電圧計107は、それぞれ電池セル101及び電池セル102の開放電圧を測定する。そして、電圧計106及び電圧計107は、測定した開放電圧を制御部110に出力する。また、温度センサ108及び温度センサ109は、それぞれ電池セル101及び電池セル102の温度を測定する。そして、温度センサ108及び温度センサ109は、測定したそれぞれの周辺温度を制御部110に出力する。
【0025】
また、制御部110は、入力された電池セル101の開放電圧と上側回路の周辺温度に基づいて、スイッチ104をオンオフさせる第1のパルス信号の周波数を決定する。さらに、制御部110は、入力された電池セル102の開放電圧と下側回路の周辺温度に基づいて、スイッチ105をオンオフさせる第2のパルス信号の周波数を決定する。
【0026】
次に、アクティブバランス回路は、制御部110から入力される第1のパルス信号に基づいてスイッチ104をオンオフさせる。これにより、アクティブバランス回路は、電池セル101の電荷を断続的にコイル103に蓄電させる。さらに、アクティブバランス回路は、第1のスイッチ制御信号よりも1パルスの立ち上がり時間分だけ位相が遅れた第2のパルス信号が制御部110から入力されることにより、スイッチ105をオンオフさせる。これにより、アクティブバランス回路は、コイル103に蓄電された電荷を電池セル102に移動させる。このようなバランス動作を繰り返すことにより、電池セル101及び電池セル102の電圧を均等化することができる。
【0027】
以上のように、実施形態1の電圧均等化制御装置は、第1のパルス信号及び第2のパルス信号の生成において、各電池セルの開放電圧及び周辺温度に基づいて、第1及び第2のパルス信号の周波数を決定している点で従来技術と異なっている。
【0028】
ここで、実施形態1の制御部110の第1及び第2のパルス信号の周波数の決定を、具体的に説明する。
まず、周辺温度の変化により、アクティブバランス回路の合成インピーダンスの値が変わり、コイルへの電荷の蓄積時間が変化することについて説明する。
【0029】
図2は、アクティブバランス回路の等価回路を示す図である。
図2(a)は、電池セル101及び電池セル102を組電池として備えるアクティブバランス回路の回路図である。また、図2(b)は、図2(a)のスイッチ104がオンであり、かつ、スイッチ105がオフであるときのアクティブバランス回路の等価回路を示す図である。以下の説明では、上側回路について説明するが、下側回路についても同様の制御をすることが可能である。
【0030】
図2(b)に示すインピーダンスZは電池セル101の内部抵抗201であり、インピーダンスZはスイッチ104のオン抵抗202であり、インピーダンスZはコイル103のインダクタンス203である。以下の説明では、この内部抵抗201、オン抵抗202及びインダクタンス203のインピーダンスを合成したものを、合成インピーダンスという。以下、スイッチ104のスイッチ素子をMOSトランジスタとして説明する。よって、インピーダンスZをオン抵抗であるとしている。
【0031】
ここで、温度センサ108で測定される、周辺温度が上昇した場合の、それぞれのインピーダンスの変化について説明する。
周辺温度の上昇に伴い、電池セル101の内部抵抗201の抵抗値は小さくなる。また、スイッチ104のオン抵抗202は大きくなる。そして、コイル103のインダクタンス203の値も大きくなることが知られている。
【0032】
したがって、周辺温度の上昇によりインピーダンスZと、インピーダンスZと、インピーダンスZが変化するので、その合成インピーダンスも変化することがわかる。
また、図2(b)に示すようにアクティブバランス回路の合成インピーダンスは、RL回路で構成されているので、コイル103の電荷の蓄電に要する時間は、下記式(1)の時定数に比例する。
時定数=L/R (1)
そして、周辺温度の上昇による影響は、オン抵抗202よりも、内部抵抗201及びインダクタンス203の変化に大きく現れる。したがって、オン抵抗202の変化を無視すると、周辺温度の上昇に伴い、内部抵抗201が小さくなり、インダクタンス203が大きくなるので、式(1)で示される時定数は、周辺温度の上昇に伴い大きくなることがわかる。すなわち、アクティブバランス回路のコイル103への電荷の蓄積時間は、周辺温度の上昇に従って長くなる。
【0033】
また、電池セル101に関しては、その電池セル101の電池残量によっても内部抵抗201が変化するという影響がある。その内部抵抗201の値は、電池残量の満充電時に対する割合を示すSOC(State of Charge)が100%に近いほど、小さくなることが知られている。したがって、アクティブバランス回路の時定数=L/Rを鑑みると、電池残量が満充電時に近いほど、電池セル101の内部抵抗が小さくなるので、結果的にコイル103への電荷の蓄積時間は長くなる。
【0034】
以上をまとめると、周辺温度が高く、かつ、電池セル101の電池残量が満充電に近いほど、コイル103への電荷の蓄積時間が長くなることがわかる。したがって、実施形態1の制御部110は、周辺温度及び電池残量に比例させて、第1のパルス信号の周波数を低くするように決定する。すなわち、第1のパルス信号の立ち上がり時間を長くする。そして、その周波数の第1のパルス信号をスイッチ104に出力する。
【0035】
ただし、上記の周辺温度及び電池残量に基づく、第1のパルス信号の最適な周波数は、電池セル101、コイル103及びスイッチ104に使用する素子により値が異なる。また、特に、電池セル101の特性が単純に周辺温度と比例関係を持つものではなく、ある温度範囲ごとに特性の比例定数が異なる。したがって、最適な第1のパルス信号の周波数は、実験によりアクティブバランス回路ごとの特性を示すマップを作成し、そのマップを用いて周辺温度に対応する最適な周波数を抽出することにより決定する。上記のアクティブバランス回路の特性を示すマップとは、例えば、後述するOCV−SOCマップと、SOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップと、合成インピーダンス−周波数マップ等がある。
【0036】
また、下側回路に入力する第2のパルス信号の周波数についても、同様の制御をすることにより決定することができる。また、さらに組電池に電池セルが複数増設され、スイッチの数が増えた場合にも、それぞれのスイッチのオンオフを同様に制御できる。
【0037】
また、上記の最適な第1のパルス信号の周波数とは、1回のバランス動作で電池セル101から電池セル102に移動させる電荷量を周辺温度の変化によらずに均一にする周波数である。また、1回のバランス動作で電池セル101から電池セル102に移動させる電荷量は、アクティブバランス回路の特性により、損失が最も少なく効率の良い電荷量(以下、最適な電荷量という。)に設定する。この最適な電荷量は、コイル103によるところが大きいが、アクティブバランス回路の他の構成の影響も受けることも考えられるので、アクティブバランス回路ごとに実験により求めることが望ましい。また、周波数を変化させることにより、第1及び第2のパルス信号の立ち上がり時間を変更するが、その立ち上がり時間の上限は、第1及び第2のパルス信号の立ち上がり時間を合計(以下、バランス周期という。)して、1回のバランス動作の制御周期以下の時間となるようにすれば良い。例えば、第1のパルスの立ち上がり時間が制御周期の6割の時間を要する場合には、第2のパルスの立ち上がり時間は、制御周期の4割以下の時間にすれば良い。なお、上側回路及び下側回路の周辺温度及び合成インピーダンスが等しい場合には、第1及び第2のパルス信号それぞれの立ち上がり時間を等しくする。したがって、第1及び第2のパルス信号の最大の立ち上がり時間は、それぞれ制御周期の半分の時間である。
【0038】
以上の制御により、1回のバランス動作で電池セル101から電池セル102に移動させる電荷量を周辺温度の変化によらずに均一にすることができるので、バランス動作の回数(以下、バランス回数という。)を周辺温度の変化によらず一定にできる。したがって、下記式(2)で表される、電池セル101と電池セル102の電圧を均等化する時間(以下、バランス時間という。)を、温度によらず一定にすることができる。
バランス時間=制御周期×バランス回数 (2)
すなわち、周辺温度によらず同じ周波数でバランス動作させていたときよりも、周辺温度が高温のときのバランス時間を短くすることが可能である。
【0039】
さらに、周辺温度によらず常に最適な電荷量を1回のバランス動作で電池セル101から電池セル102に移動させることができるので、周辺温度によらず同じ周波数のパルス信号でバランス動作させていたときよりも、バランス動作の効率を高くすることができる。
【0040】
次に、実施形態1の電圧均等化制御装置の制御部110について説明する。
図3は、実施形態1の制御部のブロック図である。
入出力部301は、電圧計106、電圧計107、温度センサ108及び温度センサ109で測定した値の入力を受け付ける。具体的には、電圧計106から電池セル101の電圧、電圧計107から電池セル102の電圧、温度センサ108から上側回路の周辺温度及び温度センサ109から下側回路の周辺温度が入力される(以下、これらを合わせて測定結果という。)。そして、入力された測定結果を電池制御ECU303に出力する。また、電池制御ECU203から第1及び第2のパルス信号の周波数が入力されると、その周波数で第1及び第2のパルス信号を生成し、スイッチ104及びスイッチ105に出力する。
【0041】
記憶部302は、少なくとも、規定値と、電池セルの開放電圧であるOCV(Open circuit voltage)と電池残量の割合を示すSOC(State of Charge)との相関を表すOCV−SOCマップと、SOC及び周辺温度と、アクティブバランス回路の合成インピーダンスの関係を表すSOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップと、合成インピーダンスと、スイッチをオンオフさせる周波数の関係を示す合成インピーダンス−周波数マップとを記憶している。
【0042】
電池制御ECU303は、入出力部301から入力される測定結果に基づいて、記憶部103に記憶されているマップを用いて第1及び第2のパルス信号の周波数を決定する。そして、決定した第1及び第2のパルス信号の周波数を入出力部301に出力する。また、電池制御ECU303は、入出力部301から入力される電池セル101及び電池セル102の開放電圧を算出部204に出力する。そして、算出部304で算出された、電池セル101と電池セル102の開放電圧の電位差を受信する。さらに、開放電圧の電圧差をあらかじめ定めた規定値と比較して、アクティブバランス回路のバランス動作を行なうか否かを判断する。その判断結果を入出力部301に出力する。なお、規定値とは、実験により定められる、組電池の動作に影響がでない電圧差である。
【0043】
算出部304は、電池制御ECU303から入力される電池セル101及び電池セル102の開放電圧を下記式(3)に代入し、その算出結果を電池制御ECU303に出力する。
電圧差=上側回路開放電圧−下側回路開放電圧 (3)
ここで、実施形態1では、上側回路開放電圧とは電池セル101の開放電圧である。また、下側回路開放電圧とは電池セル102の開放電圧である。
【0044】
そして、算出部304は、算出した電圧差を電池制御ECU303に出力する。
次に、実施形態1の記憶部103に記憶されているOCV−SOCマップと、SOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップと、合成インピーダンス−周波数マップとを説明する。
【0045】
以下の例では、図2の破線部分の上側回路を例として説明するが、下側回路でも、同じマップを使用することができる。ただし、上側回路と下側回路の素子それぞれの製造誤差などにより、違いが無視できない場合には、回路ごとに別々の実験データからマップを作成しても良い。
【0046】
図4は、実施形態1のOCV−SOCマップである。
OCV−SOCマップ400は、電池セル101の開放電圧であるOCVと、SOCの対応関係を示すマップである。OCV−SOCマップ400は、実験により使用するアクティブバランス回路ごとに取得されているものである。そして、電圧計106で測定した電池セル101の開放電圧が電池制御ECU303に入力されたときに、電池制御ECU303が電池セル101のSOCをその開放電圧に基づいて抽出するために用いられる。
【0047】
図5は、実施形態1のSOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップである。
SOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップ500は、電池セル101のSOCと、上側回路の周辺温度の対応関係を示すマップである。SOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップ500マップは、実験により使用するアクティブバランス回路ごとに取得されているものである。そして、OCV−SOCマップ400から抽出されたSOCと、温度センサ108から入力された周辺温度に基づいて、電池制御ECU303が上側回路の合成インピーダンスを抽出するために用いられる。
【0048】
図6は、実施形態1の合成インピーダンス−周波数マップである。
合成インピーダンス−周波数マップ600は、上側回路の合成インピーダンスと、第1のパルス信号の周波数の対応関係を示すマップである。合成インピーダンス−周波数マップ600は、実験により使用するアクティブバランス回路ごとに取得されているものである。そして、SOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップ500から抽出された上側回路の合成インピーダンスを用いて、電池制御ECU303が第1のパルス信号の周波数を抽出するために用いられる。
【0049】
次に、周辺温度の変化に基づいて、第1の周波数及び第2の周波数を変更した場合のバランス動作について説明する。
図7は、実施形態1のバランス動作時のセル電圧の変化を示す図である。なお、以下の説明においては、上側回路と下側回路の特性と周辺温度が同じであり、かつ、バランス動作前の電池セル101及び電池セル102の電圧は、バランス動作制御波形701〜703でそれぞれ同じであると仮定して動作説明をする。
【0050】
バランス動作制御波形(低温)701は、周辺温度10℃(以下、低温という。)のときのバランス動作の制御波形を表している。縦軸が電圧であり、横軸がバランス時間である。また、波形は上から順に、電池セル101の開放電圧、電池セル102の開放電圧、第1のパルス信号及び第2のパルス信号を示している。また、左右矢印の期間で表されるt[s]は、バランス周期[s]を示している。さらに、左右矢印の期間で表されるT[s]は、制御周期T[s]を示している。
【0051】
制御周期T[s]は、バランス動作を1回行なう周期である。また、制御部110は、制御周期T[s]において、スイッチ104及びスイッチ105をそれぞれ1回ずつオンオフさせる制御をしているので、制御周期T[s]の間に第1及び第2のパルス信号が1回ずつ立ち上がることになる。
【0052】
バランス動作制御波形(低温)701を参照すると、上側回路と下側回路の特性が同じなので、電池セル101が最適な電荷量をコイル103に蓄電する時間と、電池セル102がコイル103から最適な電荷量を充電する時間が同じになっている。そして、低温なので、制御部110は、バランス周期t[s]を制御周期T[s]に対して余裕がある時間で制御している。このときの、第1及び第2のパルス信号の周波数を第1の周波数という。
【0053】
バランス動作制御波形(高温)702は、周辺温度50℃のときのバランス動作の制御波形を表している。縦軸が電圧であり、横軸がバランス時間である。また、波形は上から順に、電池セル101の開放電圧、電池セル102の開放電圧、第1のパルス信号及び第2のパルス信号を示している。また、左右矢印の期間で表されるt[s]は、バランス周期[s]を示している。さらに、左右矢印の期間で表されるT[s]は、制御周期T[s]を示している。
【0054】
バランス動作制御波形(高温)702を参照すると、制御部110は、低温時と同じバランス周期[s]の第1及び第2のパルス信号を出力している。ただし、周辺温度の上昇に伴い、アクティブバランス回路の上側回路及び下側回路の時定数が大きくなっているため、電池セル101が電荷をコイル103に蓄電する時間と、電池セル102がコイル103から電荷を充電する時間が長くなっている。したがって、低温時と同じ第1の周波数の第1及び第2のパルス信号では、一度のバランス動作で電池セル101から電池セル102へ移動できる電荷量が減少する。よって、制御部110は、バランス回数を増やすことで、電池セル101及び電池セル102の均等化を図っている。
【0055】
この制御では、スイッチ104及びスイッチ105のオンオフ回数が増え、スイッチング損失が増えることによる効率の低下、コイル103の充放電の効率の低下、バランス時間が長くなることによる効率の低下等があり、回路効率が低下する。
【0056】
バランス動作制御波形(周波数変更)703は、周辺温度50℃のときに、第1のパルス信号と第2のパルス信号の周波数を変更したときの、バランス動作の制御波形を表している。縦軸が電圧であり、横軸がバランス時間である。また、波形は上から順に、電池セル101の開放電圧、電池セル102の開放電圧、第1のパルス信号及び第2のパルス信号を示している。また、左右矢印の期間で表されるt[s]は、バランス周期[s]を示している。さらに、左右矢印の期間で表されるT[s]は、制御周期T[s]を示している。
【0057】
バランス動作制御波形(周波数変更)703を参照すると、制御部110は、周辺温度の上昇により、アクティブバランス回路の時定数が大きくなったことに合わせて、バランス周期t[s]を長くしている。すなわち、第1及び第2のパルス信号の周波数を低くして、第1及び第2のパルス信号の制御周期T[s]に対するデューティー比を大きくしている。これにより、1回のバランス動作で電池セル101から電池セル102へ移動する電荷量が、バランス動作制御波形(低温)701に示す低温時と同じになっている。したがって、周辺温度が高温になっているにもかかわらず、低温時と同じバランス回数で、電池セル101及び電池セル102の電圧を均等化している。なお、第1及び第2のパルス信号の周波数とデューティー比の関係は、周波数が高くなるほど、デューティー比が小さくなるようになっている。
【0058】
以上のように、制御部110は、第1及び第2の周波数を変化させることにより第1及び第2のパルス信号の制御周期T[s]に対するデューティー比を変化させる。そして、電池セル101から電池セル102に1回のバランス動作で移動させる電荷量を、周辺温度の変化によらずに一定にする制御している。したがって、周辺温度が低温のときと高温のときでバランス回数が同じになり、高温時のバランス時間を短くすることができる。
【0059】
次に、実施形態1のバランス動作の制御を説明する。
図8は、実施形態1のバランス動作のフローチャートである。
まず、電池制御ECU303は、図示しない入力部からのユーザの入力、または、タイマーによる一定時間ごとの入力等、バランス動作開始のトリガ信号が入力されると、電圧計106及び電圧計107に電圧測定の制御信号を出力する。
【0060】
電圧計106及び電圧計107は、電池セル101及び電池セル102の開放電圧を測定し、入出力部301を介して電池制御ECU303に測定した開放電圧の電圧値を出力する(S801)。
【0061】
電池制御ECU303は、電池セル101及び電池セル102の開放電圧が入力されると、記憶部302に記憶されているOCV−SOCマップを参照して、入力された開放電圧に対応した電池セル101及び電池セル102それぞれのSOCを抽出する(S802)。これにより、電池制御ECU303は、電池セル101及び電池セル102それぞれのSOCを推定している。
【0062】
さらに、電池制御ECU303は、電池セル101及び電池セル102それぞれの開放電圧を算出部304に出力する。そして、算出部304は、それぞれの開放電圧の電圧差を式(1)により算出し、算出した電圧差を電池制御ECU303に出力する。そして、電池制御ECU303は、電圧差が入力されると、記憶部302から規定値を取得し、入力された電圧差が規定値以上であるか否かを判定する。判定の結果、電圧差が規定値未満の場合には、バランス動作を終了する。
【0063】
一方、S803において、電圧差が規定値以上であった場合、電池制御ECU303は、回路の周辺温度を測定するように、温度センサ108及び温度センサ109に制御信号を出力する。その制御信号が入力されると、温度センサ108及び温度センサ109は、上側回路及び下側回路それぞれの周辺温度を測定する。そして、温度センサ108及び温度センサ109は、電池制御ECU303に測定した周辺温度を出力する(S804)。
【0064】
次に、電池制御ECU303は、温度センサ108及び温度センサ109から周辺温度が入力されると、記憶部302に記憶されているSOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップを参照する。そして、S302で推定したSOCと、上側回路及び下側回路の周辺温度それぞれに対応する合成インピーダンスを抽出する(S805)。
【0065】
さらに、電池制御ECU303は、S805で合成インピーダンスを抽出すると、記憶部302に記憶されている合成インピーダンス−周波数マップを参照する。そして、抽出した上側回路及び下側回路の合成インピーダンスそれぞれに対応する周波数を抽出する(S806)。そして、電池制御ECU303は、抽出した周波数を入出力部301に出力する。
【0066】
入出力部301は、S806で抽出された上側回路及の周波数の第1のパルス信号、及び下側回路の周波数の第2のパルス信号を生成し、スイッチ104及びスイッチ105に出力する(S807)。
【0067】
第1及び第2のパルス信号が入力されるとスイッチ104及びスイッチ105は、第1及び第2のパルス信号に従ってオンオフする(S808)。そして、S801に戻りバランス動作を繰り返す。
【0068】
上述した実施の形態によれば、各電池セルの開放電圧及び周辺温度に従って、第1及び第2のパルス信号の周波数を変化させる。これにより、周辺温度が変化してもバランス動作ごとに最適な電荷量を電池セル101から電池セル102へ移動できるようにしている。したがって、周辺温度が高温においても、周辺温度が低温のときのバランス回数と同じ回数で電池セル101及び電池セル102を均等化できるので、結果的にバランス時間を短くすることができる。また、高温時にバランス回数を増やす制御と比較して、スイッチング損失等の損失を減らすことができるので、回路効率が上がるという効果を得られる。
[実施形態2]
次に、電池セルが複数になった組電池の電圧均等化制御装置について説明する。
【0069】
図9は、実施形態2の電圧均等化制御装置の構成図である。
図9の例では、実施形態1のアクティブバランス回路を3つ相互に接続することにより、4つの電池セルの電圧の均等化をしている。その他の構成は、実施形態1と同じである。したがって、図示しないが、電圧計と温度センサをそれぞれのアクティブバランス回路に備えている。
【0070】
制御部901は、実施形態1の制御部110と同じ制御を、同時に複数のアクティブバランス回路のスイッチに行なう構成となっている。
アクティブバランス回路902及び903は、実施形態1のアクティブバランス回路を相互に接続することにより、4つの電池セルの電圧均等化を行なっている。ここのアクティブバランス回路それぞれの動作は、実施形態1と同じである。
【0071】
以上の構成により、4つの電池セルで構成される組電池においても、周辺温度の変化によらず、バランス回数を一定にすることができる。
また、アクティブバランス回路の接続数を適宜変更することにより、2つ以上の電池セルで構成される組電池の電圧均等化をすることができる。
【符号の説明】
【0072】
100 電圧均等化装置
101、102 電池セル
103 コイル
104、105 スイッチ
106、107 電圧計
108、109 温度センサ
201 内部抵抗
202 オン抵抗
203 インダクタンス
301 入出力部
302 記憶部
303 電池制御ECU
304 算出部
400 OCV−SOCマップ
500 SOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップ
600 合成インピーダンス−周波数マップ
901 制御部
902、903 アクティブバランス回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池を構成する各電池セルそれぞれに、パルス信号によりオンオフ制御されるスイッチを並列に接続し、さらに、該各電池セルの接続点と各スイッチの接続点との間にコイルを接続して構成されるバランス回路により、隣り合う前記各電池セル相互で電荷を移動させ、前記各電池セルの電圧を均等化する電圧均等化制御装置において、
前記各電池セルの開放電圧を測定する電圧測定手段と、
前記バランス回路の周辺温度を測定する温度測定手段と、
前記バランス回路の周辺温度及び前記各電池セルの開放電圧に対応づけて、隣り合う前記各電池セル相互で一回に移動する電荷量が一定となる前記パルス信号の周波数を記憶した記憶手段と、
前記バランス回路の周辺温度及び前記各電池セルの開放電圧を用いて、対応する前記パルス信号の周波数を前記記憶手段から抽出する周波数抽出手段と、
を備えることを特徴とする電圧均等化制御装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記各電池セルの開放電圧と前記各電池セルの電池残量を対応づけて記憶したOCV−SOCマップと、
前記バランス回路の周辺温度及び前記各電池セルのSOCと、前記各電池セルと各スイッチとコイルそれぞれ一つずつのインピーダンスを合成した合成インピーダンスと、を対応づけて記憶したSOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップと、
前記合成インピーダンスと前記パルス信号の周波数を対応づけて記憶した合成インピーダンス−周波数マップと、を記憶し、
前記周波数抽出手段は、前記電圧測定手段で測定した前記各電池セルの開放電圧と、前記OCV−SOCマップとを用いて、前記各電池セルのSOCを抽出し、
前記各電池セルのSOCと、前記SOC及び周辺温度−合成インピーダンスマップとを用いて前記合成インピーダンスを抽出し、
前記各電池セルの前記合成インピーダンスと、前記合成インピーダンス−周波数マップとを用いて前記パルス信号の周波数を抽出することを特徴とする請求項1に記載の電圧均等化制御装置。
【請求項3】
組電池を構成する各電池セルそれぞれに、パルス信号によりオンオフ制御されるスイッチを並列に接続し、さらに、該各電池セルの接続点と各スイッチの接続点との間にコイルを接続して構成されるバランス回路により、隣り合う前記各電池セル相互で電荷を移動させ、前記各電池セルの電圧を均等化する電圧均等化制御装置の電圧均等化制御方法において、
前記電圧均等化制御装置は、
前記各電池セルの開放電圧を測定し、
前記バランス回路の周辺温度を測定し、
前記バランス回路の周辺温度及び前記各電池セルの開放電圧を用いて、
前記バランス回路の周辺温度及び前記各電池セルの開放電圧に対応づけて、隣り合う前記各電池セル相互で一回に移動する電荷量が一定となる前記パルス信号の周波数を記憶した記憶手段から、
対応する周波数を抽出することを特徴とする電圧均等化制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−116007(P2013−116007A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262730(P2011−262730)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】