説明

電圧生成回路及びそれを備えた電気機器

【課題】多くの基準電圧発生回路に適用することができ、出力電圧のみを容易に変化させることができる電圧発生回路及びその電圧発生回路を備えた電気機器を提供する。
【解決手段】電気機器Eに搭載される電圧生成回路1は、基準電圧発生回路2が接続される電圧可変回路3と、電圧分圧回路4と、レギュレータ回路5と、電圧検出回路6と、バッファ回路7とを備えている。電圧可変回路3は、可変抵抗R及びRを有し、可変抵抗R及びRを制御することによって、基準電圧発生回路2から出力される基準電圧Vbをレギュレータ回路5及び電圧検出回路6に入力される可変電圧Vに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レギュレータ回路を備え、出力電圧を変化させることが可能な電圧生成回路及びその電圧生成回路を備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出力電圧を所定の電圧値に保つためのレギュレータ回路と、レギュレータ回路によって出力される出力電圧等に基づく検出用電圧と、参照用電圧とを比較して所定の条件に合致した場合には、検出信号を出力する電圧検出回路とを備えた電圧生成回路が知られている(例えば、特許文献1)。更に、レギュレータ回路から出力される出力電圧を変化可能な電圧生成回路が知られている。
【0003】
以下、図3を参照して、レギュレータ回路及び電圧検出回路を備えると共に、出力電圧を変化可能な従来の電圧生成回路について説明する。尚、図3は、従来の電圧生成回路の回路図である。
【0004】
図3に示すように、電圧生成回路51は、電圧分圧回路54と、レギュレータ回路55と、電圧検出回路56と、バッファ回路57を備えている。
【0005】
電圧分圧回路54は、3つの可変抵抗R11、R12、R13を備えている。電圧分圧回路54は、レギュレータ回路55から出力される出力電圧Voを分圧して、レギュレータ回路55及び電圧検出回路56に供給するためのものである。具体的には、出力電圧Voを分圧した以下の式(11)に示す帰還電圧Vfをレギュレータ回路55にフィードバックする。
【0006】
Vf=R13・Vo/(R11+R12+R13) ・・・(11)
また、出力電圧Voを分圧した以下の式(12)に示す検出用電圧Vdを電圧検出回路56に入力する。
【0007】
Vd=(R12+R13)Vo/(R11+R12+R13) ・・・(12)
レギュレータ回路55は、ノイズを低減するためのバッファ回路57を介して基準電圧発生回路52に接続される差動増幅回路61と、制御用トランジスタ62とを備えている。この差動増幅回路61には、基準電圧発生回路52から出力された基準電圧Vbと同じ電圧値を有する参照用電圧Vrefと、電圧分圧回路54を介して出力電圧Voがフィードバックされる帰還電圧Vfとが入力される。そして差動増幅回路61は、この両電圧Vf及びVrefを比較して
Vf=Vref ・・・(13)
となるように、ソースに電源電圧Vbatが入力されている制御用トランジスタ62を制御する。これによって、レギュレータ回路55は、出力電圧Voを所望の一定値に制御する。
【0008】
具体的には、この電圧生成回路51では、式(11)及び式(13)より
Vo=(R11+R12+R13)Vref/R13 ・・・(14)
となるようにレギュレータ回路55によって出力電圧Voが制御される。
【0009】
電圧検出回路56は、急激な出力電圧Voの変化を検出して検出信号Sを出力するためのものである。電圧検出回路56は、基準電圧発生回路52からバッファ回路57を介して供給される参照用電圧Vrefと、電圧分圧回路54によって出力電圧Voが分圧された検出用電圧Vdとを比較し、参照用電圧Vrefよりも検出用電圧Vdが低い場合には、検出信号Sを出力する。具体的には、検出信号Sが出力される条件は、式(12)より以下に示す式(15)の関係になる。
【0010】
Vo<(R11+R12+R13)Vref/(R12+R13) ・・・(15)
これを言い換えれば、出力電圧Voが、以下の式(16)に示す所定の低下割合Pだけ低下すると電圧検出回路56が検出信号Sを出力することになる。
【0011】
P=R13/(R12+R13)×100[%] ・・・(16)
そして、この電圧生成回路51において出力電圧Voを変化させる場合には、可変抵抗R11〜R13のいずれかの抵抗値を増減させることによって、帰還電圧Vfを変化させる。これによって、レギュレータ回路55が、変化した帰還電圧Vfと固定の参照用電圧Vrefとを比較し、その結果に基づいて制御用トランジスタ62を制御して出力電圧Voを変化させる。
【特許文献1】特開2005−242769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の電圧生成回路51では、参照用電圧Vrefは基準電圧Vbをバッファ 回路57に通しただけなので、参照用電圧Vrefが基準電圧Vbと略同じ電圧値を有する。従って、レギュレータ回路55が対応できる参照用電圧Vrefと略同じ基準電圧Vbを出力することができる基準電圧発生回路52しか対応することができないので、適用できる基準電圧発生回路52が少ないといった問題がある。
【0013】
また、抵抗R12及びR13により帰還電圧Vfを変化させることによって出力電圧Voを制御する場合、式(16)から明らかなように、帰還電圧Vfと共に出力電圧Voから生成される検出用電圧Vdの低下割合Pも変化する。このため、低下割合Pを一定に保ったまま、出力電圧Voを変化させることが困難であるといった問題があった。
【0014】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、多くの基準電圧発生回路に適用することができ、検出用信号の低下割合を変えずに出力電圧のみを容易に変化させることができる電圧発生回路及びその電圧発生回路を備えた電気機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、基準電圧を変化させて可変電圧を生成する電圧可変回路と、前記可変電圧に基づいて出力電圧を生成するレギュレータ回路と、前記可変電圧に基づいて前記出力電圧の変動を検出する電圧検出回路とを備えたことを特徴とする電圧生成回路である。
【0016】
また、請求項2の発明は、前記出力電圧を分圧して、前記レギュレータ回路に入力される帰還電圧及び前記電圧検出回路に入力される検出用電圧とを生成する電圧分圧回路を備え、前記電圧分圧回路は、複数の固定抵抗からなることを特徴とする請求項1に記載の電圧生成回路である。
【0017】
また、請求項3の発明は、前記出力電圧を分圧して、前記レギュレータ回路に入力される帰還電圧及び前記電圧検出回路に入力される検出用電圧とを生成する電圧分圧回路を備え、前記電圧分圧回路は、少なくとも2つの可変抵抗を含むことを特徴とする請求項1に記載の電圧生成回路である。
【0018】
また、請求項4の発明は、請求項1〜請求項3に記載の電圧生成回路を備えた電気機器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電圧可変回路によって基準電圧を変化させることにより、出力電圧を生成するための可変電圧を生成しているので、基準電圧がレギュレータ回路の対応範囲を超えていても、可変電圧回路によって基準電圧を変化させてレギュレータ回路が対応可能な可変電圧に変換することができる。この結果、多くの基準電圧に対応することが可能となる。
【0020】
また、本発明では、帰還電圧ではなく、帰還電圧と比較される可変電圧を電圧可変回路によって変化させることによって、出力電圧を制御することができる。従って、帰還電圧を変化させることなく出力電圧を制御できるので、帰還電圧と共に出力電圧から生成される検出用電圧の低下割合を一定に保ちつつ、出力電圧のみを変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明を携帯電話等の電気機器に搭載される電圧生成回路に適用した第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態による電圧生成回路を備えた電気機器の回路図を示す。
【0022】
図1に示すように、電気機器Eに搭載される電圧生成回路1は、基準電圧発生回路2が接続される電圧可変回路3と、電圧分圧回路4と、レギュレータ回路5と、電圧検出回路6と、バッファ回路7とを備えている。
【0023】
電圧可変回路3は、可変抵抗R及びRを有する。電圧可変回路3は、可変抵抗R及びRを制御することによって、基準電圧発生回路2から出力される基準電圧Vbを変化させて、レギュレータ回路5及び電圧検出回路6に入力される可変電圧Vに変換する。ここで、可変電圧Vは、
=R・Vb/(R+R) ・・・(1)
で表される。尚、基準電圧発生回路2は、特に限定されるものではないが、例えば、出力が約1.2VのBGR(Band Gap Refernce)回路等を適用することができる。
【0024】
電圧分圧回路4は、固定抵抗R、R及びRを備えている。電圧分圧回路4は、レギュレータ回路5によって出力される出力電圧Voを分圧して、レギュレータ回路5に帰還電圧Vfとしてフィードバックすると共に、電圧検出回路6に検出用電圧Vdとして入力するものである。具体的には、出力電圧Voを抵抗(R+R)と抵抗Rによって分圧して、以下に示す帰還電圧Vfをフィードバックする。
【0025】
Vf=R・Vo/(R+R+R) ・・・(2)
また、出力電圧Voを抵抗Rと抵抗(R+R)によって分圧して、以下に示す検出用電圧Vdを電圧検出回路6に入力する。
【0026】
Vd=(R+R)Vo/(R+R+R) ・・・(3)
レギュレータ回路5は、LDO(Low Drop−out)型のシリーズレギュレータ回路であって、差動増幅回路11と、p−MOS型の制御用トランジスタ12とを備えている。レギュレータ回路5は、バッファ回路7によってノイズが除去されて差動増幅回路11に入力される可変電圧Vと帰還電圧Vfとを比較して、V=Vfとなるように制御用トランジスタ12を制御する。即ち、レギュレータ回路5は、式(2)より出力電圧Voが、
Vo=(R+R+R)V/R ・・・(4)
となるように制御用トランジスタ12を制御する。これによって、電源電圧Vbatがソースに入力される制御用トランジスタ12のドレインから出力される出力電圧Voが、可変電圧Vに対して一定の割合となるように制御される。また、上述したように電圧可変回路3によって可変電圧Vを変化させることによって、式(4)に示す出力電圧Voを変化させることができる。
【0027】
電圧検出回路6は、急激な出力電圧Voの変動を検出して検出信号Sを出力するためのものである。具体的には、可変電圧Vと検出用電圧Vdとを比較して、V>Vdとなった場合に検出信号Sを出力する。即ち、電圧検出回路6は、式(3)より出力電圧Voが、
Vo<(R+R+R)V/(R+R) ・・・(5)
となった場合に検出信号Sを出力する。従って、言い換えれば、式(4)及び式(5)から明らかなように、検出用電圧Vdが、以下の式(6)に示す低下割合Pだけ出力電圧Voに対して低下したら検出信号Sが出力される。
【0028】
P=R/(R+R)×100[%] ・・・(6)
尚、この検出信号Sは、電圧生成回路1の内部へマスク信号としてフィードバックしてもよく、電圧生成回路1の外部の他の制御回路に出力してもよい。
【0029】
上述したように、第1実施形態による電圧生成回路1は、レギュレータ回路5によって可変電圧Vと帰還電圧Vfとを比較して出力電圧Voを制御している。ここで、電圧生成回路1は、電圧可変回路3により基準電圧Vbを変化させた可変電圧Vによって出力電圧Voを制御している。
【0030】
従って、レギュレータ回路5が対応できない基準電圧Vbを出力する基準電圧発生回路2を接続した場合でも、電圧可変回路3により基準電圧Vbを対応可能な可変電圧Vに変換することによって、従来では対応できなかった基準電圧発生回路2にも対応することができる。この結果、多くの基準電圧発生回路2に対して対応することができる。
【0031】
また、電圧生成回路1は、レギュレータ回路5にフィードバックされる帰還電圧Vfではなく、電圧可変回路3の可変抵抗R及びRの抵抗値を変化させることによって基準電圧Vbから生成される可変電圧Vを変化させて、レギュレータ回路5から出力される出力電圧Voを制御している。ここで、電圧可変回路3の両抵抗値R及びRを変化させても、式(6)に示す検出するための検出用電圧Vdの低下割合Pは一定値を維持することができる。この結果、低下割合Pを変化させることなく、電圧可変回路3によって出力電圧Voのみを容易に制御することができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態と異なり、電圧検出用回路で検出するための低下割合Pを変化させることが可能な第2実施形態による電圧生成回路について図面を参照して説明する。
【0033】
図2は、第2実施形態による電圧生成回路の回路図である。尚、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0034】
図2に示すように、電圧生成回路1Aは、可変抵抗R’及びR’と固定抵抗Rとを有する電圧分圧回路4Aを備えている。
【0035】
電圧分圧回路4Aは、可変抵抗R’を変化させることによって、以下の式(7)に示す低下割合Pを制御可能に構成されている。
【0036】
P=R/(R’+R)×100[%] ・・・(7)
ここで、可変抵抗R’を変化させた場合、式(8)に示すレギュレータ回路5にフィードバックされる帰還電圧Vfも変化する。
【0037】
Vf=R・Vo/(R’+R’+R) ・・・(8)
従って、出力電圧Voを一定に保つために帰還電圧Vfを変化させることなく、低下割合Pのみを変化させる場合には、電圧分圧回路4Aの「R’+R’」が一定の値になるように制御する。
【0038】
上述したように、第2実施形態による電圧生成回路1Aは、可変抵抗R’及びR’を有する電圧分圧回路4Aを備えているので、低下割合Pを変化させることができる。これによって、出力電圧Voの低下割合Pを所望の値に容易に設定することができる。
【0039】
また、このように低下割合Pを変更可能に構成した場合にも、低下割合Pを変化させることなく、電圧可変回路3により可変電圧Vのみを変化させることによって出力電圧Voを変化させることができるので、出力電圧Voの制御を簡単化することができる。
【0040】
以上、上記実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲内で変更して実施することができる。即ち、本明細書の記載は、一例であり、本発明を何ら限定的な意味に解釈させるものではない。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0041】
例えば、上述の実施形態では、基準電圧発生回路2には、1つの電圧生成回路1、1Aを接続する構成を示したが、上述した電圧生成回路1、1Aと同様の構成または異なる構成の複数の電圧生成回路を接続してもよい。
【0042】
上述の電圧可変回路3は、2つの可変抵抗R及びRによって構成したが、一方の抵抗を固定抵抗で構成してもよい。また、電圧可変回路をダイオード等によって構成することや、昇圧回路等の電圧を制御可能な他の回路を適用してもよい。
【0043】
上述の第2実施形態において、電気部品によって当該電圧生成回路1Aを構成する場合には、抵抗R’及びR’を一本の抵抗で構成し、その接点を移動可能なスライド抵抗を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1実施形態による電圧生成回路を備えた電気機器の回路図を示す。
【図2】第2実施形態による電圧生成回路の回路図である。
【図3】従来の電圧生成回路の回路図である。
【符号の説明】
【0045】
1、1A 電圧生成回路
2 基準電圧発生回路
3 電圧可変回路
4、4A 電圧分圧回路
5 レギュレータ回路
6 電圧検出回路
7 バッファ回路
11 差動増幅回路
12 制御用トランジスタ
P 低下割合
、R 可変抵抗
〜R 固定抵抗
’、R’ 可変抵抗
11〜R13 可変抵抗
S 検出信号
Vb 基準電圧
Vbat 電源電圧
Vd 検出用電圧
Vf 帰還電圧
Vo 出力電圧
可変電圧



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧を変化させて可変電圧を生成する電圧可変回路と、
前記可変電圧に基づいて出力電圧を生成するレギュレータ回路と、
前記可変電圧に基づいて前記出力電圧の変動を検出する電圧検出回路とを備えたことを特徴とする電圧生成回路。
【請求項2】
前記出力電圧を分圧して、前記レギュレータ回路に入力される帰還電圧及び前記電圧検出回路に入力される検出用電圧とを生成する電圧分圧回路を備え、
前記電圧分圧回路は、複数の固定抵抗からなることを特徴とする請求項1に記載の電圧生成回路。
【請求項3】
前記出力電圧を分圧して、前記レギュレータ回路に入力される帰還電圧及び前記電圧検出回路に入力される検出用電圧とを生成する電圧分圧回路を備え、
前記電圧分圧回路は、少なくとも2つの可変抵抗を含むことを特徴とする請求項1に記載の電圧生成回路。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載の電圧生成回路を備えた電気機器。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−304850(P2007−304850A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132518(P2006−132518)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】