説明

電子カセッテ、および放射線撮影装置

【課題】電子カセッテの小型化を達成し、確実にノイズによる画質劣化を防止する。
【解決手段】電子カセッテ21の筐体27の背面カバー55には、電界結合方式の非接触給電用の受電電極61が取り付けられている。受電電極61は、電子カセッテ21がホルダ30a、30bにセットされたときに給電装置81の給電電極82から電力を受電する。切替スイッチ91は、電子カセッテ21の筐体グランド92とバッテリ41の充電回路93とに接続され、これらと受電電極61との接続を選択的に切り替える。切替スイッチ91は、撮影の間と画像データを撮影制御装置23に送信している間は筐体グランド92側に倒され、受電電極61は電磁シールドとして機能する。切替スイッチ91は、これら以外の場合は充電回路93側に倒される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を受けて放射線画像を検出する電子カセッテ、およびこれを用いた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影システム、例えばX線撮影システムは、X線を発生するX線発生装置と、X線を受けてX線画像を撮影するX線撮影装置とからなる。X線発生装置は、X線を被検体に向けて照射するX線源、X線源の駆動を制御する線源制御装置、およびX線の照射開始指示を入力するための照射スイッチを有している。X線撮影装置は、被検体を透過したX線を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置、およびX線画像検出装置の駆動を制御する撮影制御装置を有している。
【0003】
最近、X線フイルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)を検出器として用いたX線画像検出装置が普及している。FPDには、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリックス状に配列されている。FPDは、画素毎に信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を信号処理回路で電圧信号に変換することで、被検体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力する。
【0004】
FPDを直方体形状の筐体に内蔵した電子カセッテ(可搬型のX線画像検出装置)も実用化されている。電子カセッテは、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台や専用の撮影台に取り付けて使用される他、据え置き型では撮影困難な部位を撮影するためにベッド上に置いたり被検体自身に持たせたりして使用される。また、自宅療養中の高齢者や、事故、災害等による急病人を撮影するため、撮影台の設備がない病院外に持ち出して使用されることもある。
【0005】
電子カセッテには、バッテリを内蔵して各部の駆動電力を賄い、撮影制御装置との間の信号の遣り取りを無線通信により行うタイプがある。こうしたタイプでは、バッテリを電子カセッテから取り出して専用のクレードルにセットして充電したり、電子カセッテ自体をクレードルにセットして、電子カセッテにバッテリを内蔵させたまま充電することが可能である。
【0006】
また、電磁誘導方式や磁気共鳴方式の非接触給電装置を電子カセッテ近傍に設けておき、電子カセッテ内のバッテリを充電するための電力を非接触給電装置から供給するものも提案されている(特許文献1、2参照)。特許文献1では、非接触給電に起因するノイズが画像に重畳して画質が劣化することを防ぐため、撮影中は非接触給電を禁止している。特許文献2では、特許文献1と同様の目的で、外部装置に画像を送信しているときは非接触給電を禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−158513号公報
【特許文献2】特開2010−223863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非接触給電の方式には、上に挙げた電磁誘導方式や磁気共鳴方式の他に、電界結合方式がある。電界結合方式は平板状の二つの電極(交流電力を供給する給電電極と負荷側の受電電極)を近付けて向き合わせ、二電極間の電界結合により電力を伝播させるもので、他の方式と比べて構造が単純で小型化、コスト削減が可能であり制御もしやすい。また、他の方式では給電装置と受電側機器の位置合わせを厳密にしないと電力の伝送効率が著しく低下するが、電界結合方式は比較的位置合わせの自由度が高く、厳密な位置合わせは不要である。
【0009】
このように電界結合方式は様々な利点を有しているが、電子カセッテ内蔵のバッテリの充電に電界結合方式の非接触給電を適用した場合、電子カセッテに受電電極を設ける分、他の方式よりも小型であるとはいえ電子カセッテの大型化は避けられない。また、特許文献1、2に記載されるように、ノイズによる画質劣化の対策が必要であることは他の方式と変わりはない。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電界結合方式の非接触給電を用いながらも電子カセッテの小型化を達成し、確実にノイズによる画質劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電子カセッテは、放射線源から照射された放射線を受けて放射線画像を検出する放射線画像検出器と、前記放射線画像検出器を収容する筐体と、各部に電力を供給するバッテリと、前記バッテリの充電回路と、前記バッテリを充電するための電力を非接触給電装置から受電する受電電極であり、前記放射線画像検出器の撮像面と反対側の前記筐体底面に撮像面と平行に配置され、電界結合により非接触給電装置の給電電極から電力を受電する受電電極と、前記受電電極と前記充電回路、または前記受電電極と筐体グランドの接続を選択的に切り替える切替スイッチと、前記切替スイッチの切り替え動作を制御する制御手段であり、前記放射線画像検出器で放射線画像を検出している間、および/または前記放射線画像検出器から外部装置に放射線画像のデータを送信している間は、前記受電電極と前記筐体グランドを接続させて前記受電電極を電磁シールドとして機能させ、これら以外のときは前記受電電極と前記充電回路を接続させて受電可能な状態とする制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
前記制御手段は、放射線の照射が開始されたときに前記受電電極と前記筐体グランドを接続させる。この場合、前記制御手段は、放射線の非照射時に前記切替スイッチを切り替えるとともに前記放射線画像検出器で放射線画像を検出させ、これにより得られた、前記切替スイッチのスイッチングノイズが現れた補正データを放射線画像のデータから減算することが好ましい。補正データは一定期間毎に取得するのがよい。
【0013】
前記制御手段は、外部装置に撮影条件が入力されてから放射線の照射が開始されるまでの間、例えば外部装置から撮影条件を受信したときに前記受電電極と前記筐体グランドを接続させる。被検体が撮影台にセットされたときでもよい。
【0014】
前記制御手段は、前記バッテリが満充電となったとき、または撮影台のホルダから電子カセッテが取り外されたときに前記受電電極と前記筐体グランドを接続させる。
【0015】
前記バッテリの充電/非充電を指示するための操作部材の操作に応じて、前記切替スイッチを切り替えてもよい。
【0016】
前記筐体が前記放射線画像検出器の撮像面側を覆う前カバーと反対側を覆う背面カバーとからなる場合、前記背面カバーが前記受電電極となっていてもよい。前記背面カバーと他の部品との接続部分に断面U字状の絶縁部材を嵌めることが好ましい。
【0017】
本発明の放射線撮影装置は、放射線源から照射された放射線を受けて放射線画像を検出する放射線画像検出器と、前記放射線画像検出器を収容する筐体と、各部に電力を供給するバッテリと、前記バッテリの充電回路と、前記バッテリを充電するための電力を非接触給電装置から受電する受電電極であり、前記放射線画像検出器の撮像面と反対側の前記筐体底面に撮像面と平行に配置され、電界結合により非接触給電装置の給電電極から電力を受電する受電電極と、前記受電電極と前記充電回路、または前記受電電極と筐体グランドの接続を選択的に切り替える切替スイッチと、前記切替スイッチの切り替え動作を制御する制御手段であり、前記放射線画像検出器で放射線画像を検出している間、および/または前記放射線画像検出器から外部装置に放射線画像のデータを送信している間は、前記受電電極と前記筐体グランドを接続させて前記受電電極を電磁シールドとして機能させ、これら以外のときは前記受電電極と前記充電回路を接続させて受電可能な状態とする制御手段とを有する電子カセッテと、前記電子カセッテが着脱自在に収容されるホルダを有する撮影台と、前記電子カセッテの動作を統括的に制御する撮影制御装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
非接触給電装置は前記撮影台のホルダに内蔵されている。また、前記撮影台のホルダは電磁シールド化されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電界結合方式の受電電極を電磁シールドとして兼用し、撮影の間と画像データを送信している間は受電電極を電磁シールドとして機能させるので、電子カセッテの小型化が達成され、確実にノイズによる画質劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図3】電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図4】電子カセッテおよびFPDの電気的な構成を示す図である。
【図5】給電装置および電子カセッテの受電機能の構成を示す図である。
【図6】電子カセッテの動作手順を示すフローチャートである。
【図7】電子カセッテの動作手順を示すフローチャートである。
【図8】受電電極を背面カバーとした電子カセッテの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、X線撮影システム10は、X線発生装置11と、X線撮影装置12とからなる。X線発生装置11は、X線源13と、X線源13の駆動を制御する線源制御装置14と、照射スイッチ15とで構成される。X線源13は、X線を放射するX線管13aと、X線管13aが放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)13bとを有する。
【0022】
X線管13aは、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とからなる。ターゲットは円板形状をしており、回転により円周軌道上で焦点が移動して、熱電子が衝突する焦点の発熱が分散する回転陽極である。照射野限定器13bは、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置し、X線を透過させる照射開口が中央に形成されたものであり、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0023】
線源制御装置14は、X線源13に対して高電圧を供給する高電圧発生器と、X線源13が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、単位時間当たりの照射量を決める管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部とからなる。高電圧発生器は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブル16を通じてX線源13に駆動電力を供給する。本例のX線発生装置11は、X線撮影装置12との通信機能を持たないものであり、管電圧、管電流、照射時間といった撮影条件は、線源制御装置14の操作パネルを通じて放射線技師により手動で設定される。
【0024】
照射スイッチ15は、放射線技師によって操作され、線源制御装置14に信号ケーブル17で接続されている。照射スイッチ15は二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源13のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源13に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブル17を通じて線源制御装置14に入力される。
【0025】
線源制御装置14は、照射スイッチ15からの制御信号に基づいて、X線源13の動作を制御する。ウォームアップ開始信号を受けた場合、線源制御装置14は、ヒータを作動させてフィラメントの予熱を行わせる他、ターゲットの回転を開始させて目標の回転速度に到達させる。ウォームアップに必要な時間は、約200msec〜1500msec程度である。放射線技師は、照射スイッチ15の一段階押しでウォームアップの開始指示を入力した後、ウォームアップに必要な間をおいて二段階押しして照射開始指示を入力する。
【0026】
照射開始信号を受けた場合、線源制御装置14は、X線源13への電力供給を開始するとともに、タイマを作動させてX線の照射時間の計測を開始する。そして、撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線の照射を停止させる。X線の照射時間は、撮影条件に応じて変化するが、静止画撮影の場合には、X線の最大照射時間が約500msec〜約2s程度の範囲に定められている場合が多く、照射時間はこの最大照射時間を上限として設定される。
【0027】
X線撮影装置12は、電子カセッテ21、立位撮影台22a、臥位撮影台22b、撮影制御装置23、およびコンソール24から構成される。電子カセッテ21は、照射検出センサ25と、FPD26(図2ないし図4も参照)と、FPD26を収容する可搬型の筐体27(図2および図3参照)とからなり、X線源13から照射されて被検体Hを透過したX線を受けてX線画像を出力する。電子カセッテ21は、略矩形状で偏平な形状を有し、平面サイズはフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさ(国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさ)である。
【0028】
照射検出センサ25は、FPD26の撮像面28(図3および図4参照)の近傍に配置される。照射検出センサ25は、X線の照射を受けてX線の入射量に応じた照射検出信号を出力する。照射検出信号は、複合ケーブル29または無線で撮影制御装置23に入力される。撮影制御装置23は、照射検出信号の信号レベルを監視して、X線源13によるX線の照射が開始されたことを検出する。
【0029】
立位撮影台22aおよび臥位撮影台22bは、電子カセッテ21が着脱自在に取り付け可能なホルダ30a、30bをそれぞれ有し、X線が入射する撮像面28がX線源13と対向する姿勢で電子カセッテ21を保持する。図では立位撮影台22aで撮影を行っている様子を示している。X線源13は、撮影室の天井に敷設されたレール等からなる移動機構(図示せず)により撮影室内の所定範囲を移動可能であり、立位撮影台22aおよび臥位撮影台22bで共用される。
【0030】
電子カセッテ21は、筐体27のサイズがフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさであるため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台にも取り付け可能である。電子カセッテ21は撮影室一部屋に複数台、例えば各撮影台22a、22b用に二台配備される。電子カセッテ21は、立位撮影台22aや臥位撮影台22bにセットするのではなく、被検体Hが仰臥するベッド上に置いたり被検体自身に持たせたりして単体で使用することも可能である。
【0031】
撮影制御装置23は、複合ケーブル29による有線方式、あるいはアンテナ31(図2等参照)による無線方式により電子カセッテ21と通信可能に接続されており、電子カセッテ21を制御する。具体的には、電子カセッテ21に対して撮影条件を送信して、FPD26の信号処理の条件(増幅器74のゲイン等)を設定させるとともに、FPD26の動作を間接的に制御し、また、電子カセッテ21からの画像データをコンソール24に送信する。
【0032】
撮影制御装置23は、装置を統括的に制御するCPU23aと、電子カセッテ21と有線方式または無線方式により通信するとともに、コンソール24と通信ケーブル32を介して通信する通信部23bと、メモリ23cとを有する。通信部23b、メモリ23cはCPU23aに接続されている。メモリ23cには、CPU23aが実行する制御プログラムが格納される。
【0033】
コンソール24は、撮影制御装置23に対して撮影条件を送信するとともに、撮影制御装置23から送信されるX線画像のデータに対してオフセット補正やゲイン補正等の各種画像処理を施す。画像処理済みのX線画像はコンソール24のディスプレイに表示される他、そのデータがコンソール24内のハードディスクやメモリ、あるいはコンソール24とネットワーク接続された画像蓄積サーバといったデータストレージデバイスに格納される。
【0034】
コンソール24は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイに表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、放射線技師により手動入力される。放射線技師は、検査オーダの内容をディスプレイで確認し、その内容に応じた撮影条件をコンソール24の操作画面を通じて入力する。
【0035】
図2ないし図4において、電子カセッテ21にはアンテナ31、およびバッテリ41が内蔵されており、撮影制御装置23との無線通信が可能である。バッテリ41は、電子カセッテ21の各部を動作させるための電力を供給する。バッテリ41は、薄型の電子カセッテ21内に収まるよう比較的小型のものが使用される。バッテリ41は、各撮影台22a、22bのホルダ30a、30bに内蔵された給電装置81(図5参照)からの電力で充電することが可能である。また、バッテリ41は、電子カセッテ21の一側面に設けられた蓋42を開けて外部に取り出すことができ、電子カセッテ21から外部に取り出して専用のクレードルにセットして充電することも可能である。アンテナ31は、無線通信のための電波を撮影制御装置23との間で送受信する。
【0036】
電子カセッテ21には、アンテナ31に加えてソケット43が設けられている。ソケット43は、蓋42と反対側の電子カセッテ21の一側面に配置されている。ソケット43は撮影制御装置23と有線接続するために設けられており、ソケット43には撮影制御装置23に繋がれた複合ケーブル29のコネクタ44が差し込まれる。複合ケーブル29は、バッテリ41の残量不足等で電子カセッテ21と撮影制御装置23との無線通信が不可能になった場合に使用される。ソケット43にコネクタ44を挿して複合ケーブル29を使用した場合、撮影制御装置23との有線通信が可能になるとともに撮影制御装置23から電子カセッテ21に給電することが可能となる。
【0037】
アンテナ31およびソケット43は、通信部45に接続されている。通信部45は、アンテナ31またはソケット43と制御回路46、メモリ47間の画像データを含む各種情報、信号の送受信を媒介する。
【0038】
FPD26は、TFTアクティブマトリクス基板51を有し、この基板51上にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素52を配列してなる撮像面28を備えている。複数の画素52は、所定のピッチで二次元にn行(x方向)×m列(y方向)のマトリクス状に配列されている。
【0039】
FPD26はさらに、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体)53を有し、シンチレータ53によって変換された可視光を画素52で光電変換する間接変換型である。シンチレータ53は、CsI(ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリウムオキシサルファイド)等からなり、画素52が配列された撮像面28の全面と対向するように配置されている。なお、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0040】
筐体27は、TFTアクティブマトリクス基板51とシンチレータ53からなるFPD26を、X線を照射する前側から覆う前カバー54と、反対側の背面から覆う背面カバー55とからなる。前カバー54は導電性樹脂からなり、背面カバー55は絶縁性樹脂製である。前カバー54には矩形状の開口が形成されており、開口には透過板56が取り付けられている。透過板56は、軽量で剛性が高く、かつX線透過性が高いカーボン材料で形成されている。
【0041】
FPD26の背面側には、ベース板57、複数の回路基板58、および受電電極61が順に配置される。ベース板57は例えばステンレス製であり、前側にTFTアクティブマトリクス基板51が、背面側に回路基板58がそれぞれ取り付けられる。回路基板58には、画素52を駆動して信号電荷の読み出しを制御するゲートドライバ62や画素52から読み出された信号電荷をデジタルデータに変換して出力する信号処理回路63、これらの動作を制御する制御回路46等を構成する回路素子が形成されている。回路基板58は、図示しないフレキシブルケーブル等でTFTアクティブマトリクス基板51および受電電極61と接続される。
【0042】
受電電極61は銅やアルミニウム等の金属製である。受電電極61は背面カバー55と略同じ形状、大きさの略平板状の電極であり、背面カバー55の底板に取り付けられている。この受電電極61と給電装置81の給電電極82は、電子カセッテ21がホルダ30a、30bにセットされたときに給電電極82から受電電極61に給電する、電界結合(容量結合ともいう)方式の非接触給電を行う。
【0043】
画素52は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード64、フォトダイオード64が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)65を備える。
【0044】
フォトダイオード64は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード64は、下部電極にTFT65が接続され、上部電極にはバイアス線66が接続されており、バイアス線66は撮像面28内の画素52の行数分(n行分)設けられて結線67に結束されている。結線67はバイアス電源68に繋がれている。結線67、バイアス線66を通じて、バイアス電源68からフォトダイオード64の上部電極にバイアス電圧Vbが印加される。バイアス電圧Vbの印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0045】
TFT65は、ゲート電極が走査線69に、ソース電極が信号線70に、ドレイン電極がフォトダイオード64にそれぞれ接続される。走査線69と信号線70は格子状に配線されており、走査線69は撮像面28内の画素52の行数分(n行分)、信号線70は画素52の列数分(m列分)それぞれ設けられている。走査線69はゲートドライバ62に接続され、信号線70は信号処理回路63に接続される。
【0046】
ゲートドライバ62は、TFT65を駆動することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素52に蓄積する蓄積動作と、画素52から信号電荷を読み出す読み出し(本読み)動作と、リセット(空読み)動作とを行わせる。制御回路46は、ゲートドライバ62によって実行される上記各動作の開始タイミングを制御する。
【0047】
蓄積動作ではTFT65がオフ状態にされ、その間に画素52に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ62から同じ行のTFT65を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、走査線69を一行ずつ順に活性化し、走査線69に接続されたTFT65を一行分ずつオン状態とする。画素52のキャパシタに蓄積された電荷は、TFT65がオン状態になると信号線70に読み出されて、信号処理回路63に入力される。
【0048】
フォトダイオード64の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電荷が発生する。この暗電荷はバイアス電圧Vbが印加されているためにキャパシタに蓄積される。画素52において発生する暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにリセット動作が行われる。リセット動作は、画素52において発生する暗電荷を、信号線70を通じて掃き出す動作である。
【0049】
リセット動作は、例えば、一行ずつ画素52をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、ゲートドライバ62から走査線69に対してゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、画素52のTFT65を一行ずつオン状態にする。TFT65がオン状態になっている間、画素52から暗電荷が信号線70を通じて積分アンプ71に流れる。リセット動作では、読み出し動作と異なり、マルチプレクサ(MUX)72による積分アンプ71に蓄積された電荷の読み出しは行われず、各ゲートパルスG1〜Gnの発生と同期して、制御回路46からリセットパルスRSTが出力され、積分アンプ71がリセットされる。
【0050】
順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0051】
信号処理回路63は、積分アンプ71、MUX72、およびA/D変換器73等を備える。積分アンプ71は、各信号線70に対して個別に接続される。積分アンプ71は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなり、信号線70はオペアンプの一方の入力端子に接続される。積分アンプ71のもう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。積分アンプ71は、信号線70から入力される電荷を積算し、電圧信号D1〜Dmに変換して出力する。各列の積分アンプ71の出力端子には、増幅器74、サンプルホールド(S/H)部75を介してMUX72が接続される。MUX72の出力側には、A/D変換器73が接続される。
【0052】
MUX72は、パラレルに接続される複数の積分アンプ71から順に一つの積分アンプ71を選択し、選択した積分アンプ71から出力される電圧信号D1〜DmをシリアルにA/D変換器73に入力する。A/D変換器73は、入力された電圧信号D1〜Dmをデジタルデータに変換して、電子カセッテ21の筐体27に内蔵されるメモリ47に出力する。なお、MUX72とA/D変換器73の間に増幅器を接続してもよい。
【0053】
MUX72によって積分アンプ71から一行分の電圧信号D1〜Dmが読み出されると、制御回路46は、積分アンプ71に対してリセットパルスRSTを出力し、積分アンプ71のリセットスイッチ71aをオンする。これにより、積分アンプ71に蓄積された一行分の信号電荷がリセットされる。積分アンプ71がリセットされると、ゲートドライバ62から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素52の信号電荷の読み出しを開始させる。これらの動作を順次繰り返して全行の画素52の信号電荷を読み出す。
【0054】
全行の読み出しが完了すると、一画面分のX線画像を表す画像データがメモリ47に記録される。この画像データは、メモリ47から読み出され、通信部45を通じて撮影制御装置23に出力される。こうして被検体HのX線画像が検出される。
【0055】
FPD26ではリセット動作を繰り返し行いつつ、照射検出センサ25でX線の照射開始を検出している。照射検出センサ25によりX線の照射開始が検出されると、制御回路46は、FPD26の動作をリセット動作から蓄積動作へ移行させる。制御回路46は、蓄積動作を開始してからの経過時間をタイマにより計時する。そして、経過時間が撮影条件で設定された時間に達したら、FPD26を蓄積動作から読み出し動作に移行させる。あるいはタイマを用いずに照射検出センサ25でX線の照射終了を検出してFPD26を蓄積動作から読み出し動作に移行させてもよい。
【0056】
電子カセッテ21は、ある患者の撮影が終了して画像データを撮影制御装置23に送信した後から次の撮影開始まで(撮影の合間)は通信部45や充電回路93(図5参照)といった最低限必要な箇所のみに給電し、他の各部への給電を停止して電力消費量を抑えるスリープモードで動作している。電子カセッテ21は、撮影制御装置12からの撮影条件の受信を契機に、通信部45や充電回路93以外の各部にも給電を行ってFPD26を動作させ、直ちにX線画像の出力が可能な撮影準備モードにスリープモードから移行する。撮影準備モードに移行すると、FPD26はリセット動作を繰り返してX線の照射開始の検出を待つ。
【0057】
図5において、各撮影台22a、22bのホルダ30a、30bには、給電装置81が内蔵されている。給電装置81は給電電極82を有し、給電電極82には交流電源83が接続されている。給電電極82は電子カセッテ21の受電電極61と同様の材料からなり、受電電極61と同じ大きさの平板電極である。給電電極82は、ホルダ30a、30bに電子カセッテ21をセットした際に受電電極61と平行に向き合い、且つ受電電極61との距離が数mm程度となる位置に設けられている。前述のように、給電電極82は、受電電極61に電界結合方式の非接触給電を行う。
【0058】
ホルダ30a、30bには満充電検知部84と取り外し検知部85とが設けられている。満充電検知部84はバッテリ41が満充電か否かを検知し、取り外し検知部85は電子カセッテ21がホルダ30a、30bから取り外されたことを検知する。満充電検知部84でバッテリ41が満充電であることが検知されたときと、単体での使用のため電子カセッテ21がホルダ30a、30bから取り外されたと取り外し検知部85で検知されたときは、給電電極82と交流電源83の接続が切断、あるいは交流電源83の駆動が停止されて給電が中断される。給電装置81は、これら以外のときは稼働している。
【0059】
バッテリ41が満充電か否かを給電装置81で検知する方法としては、電子カセッテ21側にバッテリ41の放電電圧等を監視してその充電量を測定する手段を設け、その測定結果を電子カセッテ21から給電装置81に有線または無線送信する、あるいは、給電装置81側で給電電極82と交流電源83を流れる電流を測定し、その測定結果に応じてバッテリ41が満充電となったか否かを判断する方法があり、いずれを採用してもよい。
【0060】
また、電子カセッテ21が単体で使用されていることを検知する方法としては、例えばホルダ30a、30bに電子カセッテ21が取り外されたことを光学的、機械的、または電気的に検知するセンサ(反射型光センサ、超音波センサ、リミットスイッチ、電磁波センサ等)を設けておき、該センサの出力を撮影制御装置23またはコンソール24経由で給電装置81に送信する、あるいは取り外し検知部85としてディスクリート(単機能)半導体で構成される専用の回路を設けて、該回路から直接給電装置81に送信する方法を採用することができる。
【0061】
受電電極61には、切替スイッチ(リレー)91が接続されている。切替スイッチ91は、電子カセッテ21の筐体グランド92と充電回路93とに接続され、これらと受電電極61との接続を選択的に切り替える。充電回路93はAC/DCコンバータ(整流器)とDCレギュレータとからなり、受電電極61で受電した給電電極82からの交流電力を直流電力に変換して、バッテリ41の充電に適した電圧を出力する。
【0062】
切替スイッチ91は、制御回路46によりその切り替え動作を制御される。切替スイッチ91は、撮影も画像送信も行っていない上述の撮影の合間のスリープモード、および撮影準備モードに移行して照射検出センサ25でX線の照射開始を検出するまでは、図示のように制御回路46により充電回路93側に倒される。受電電極61は、文字通り非接触給電用の電極として機能する。
【0063】
一方、照射検出センサ25でX線の照射開始を検出して撮影が行われ、画像送信が終了してスリープモードに移行するまでは、切替スイッチ91は筐体グランド92側に倒される。この場合、受電電極61は、導電性樹脂からなる前カバー54、カーボン材料からなる透過板56とともに、電子カセッテ21の内部から外部へのノイズの漏出、および電子カセッテ21の外部から内部へのノイズ(主に給電装置81からの電磁ノイズ)の侵入を防ぐ電磁シールドとして機能する。つまり受電電極61は、非接触給電用の電極と電磁シールドの役割を兼ねる。満充電検知部84でバッテリ41が満充電であることが検知されたときと、電子カセッテ21がホルダ30a、30bから取り外されたと取り外し検知部85で検知されたときも切替スイッチ91が筐体グランド92側に倒される。
【0064】
以下、上記構成による作用について、図6および図7のフローチャートを参照して説明する。X線撮影システム10で撮影を行う場合には、まず、立位または臥位のいずれかの撮影台22にセットされた電子カセッテ21の高さを調節して、被検体Hの撮影部位と位置を合わせる。また、電子カセッテ21の高さおよび撮影部位の大きさに応じて、X線源13の高さや照射野の大きさを調整する。次いで図6のステップ10(S10)に示すように、電子カセッテ21の電源を投入する。電子カセッテ21はスリープモードで立ち上がる(S11)。続いてコンソール24から撮影条件を入力し、撮影制御装置23を介して電子カセッテ21に撮影条件を設定する(S12でYES)。電子カセッテ21はスリープモードから撮影準備モードに移行する(S13)。また、線源制御装置14にも撮影条件を設定する。
【0065】
電子カセッテ21の電源投入時から切替スイッチ91は充電回路93側に倒され、給電装置81により各電極61、82を介した非接触給電が行われて、充電回路93によりバッテリ41が充電される(S11〜S13)。
【0066】
撮影準備が完了すると、放射線技師によって照射スイッチ15が一段階押しされる。これにより線源制御装置14にウォームアップ開始信号が送信されて、X線源13のウォームアップが開始される。所定時間経過後に照射スイッチ15が二段階押しされて線源制御装置14に照射開始信号が送信され、X線の照射が開始される。
【0067】
FPD26ではリセット動作が行われつつ照射検出センサ25でX線の照射が開始されたか否かが検出される。X線の照射開始が検出されると(S14でYES)、制御回路46は、切替スイッチ91を充電回路93側から筐体グランド92側に倒し、受電電極61を電磁シールドとして機能させる(S15)。
【0068】
また、X線の照射開始が検出されると、制御回路46は、全てのTFT65をオフ状態にして蓄積動作に移行させる。線源制御装置14は、撮影条件で設定された照射時間が経過するとX線の照射を停止する。また、FPD26も撮影条件で設定された照射時間に相当する所定時間経過後、蓄積動作を終了して、読み出し動作へ移行する。読み出し動作では、先頭行から順に一行ずつ画素52に蓄積された信号電荷が読み出され、これが一画面分のX線画像データとしてメモリ47に記録される。この画像データは撮影制御装置23を介してコンソール24に送信される(S16)。読み出し動作後、FPD26はリセット動作を再開する。
【0069】
画像データはコンソール24でオフセット補正、ゲイン補正等の各種画像処理を施された後、コンソール24のディスプレイに表示されたりデータストレージデバイスに格納される。上記一連の動作は、予定されている全ての撮影が終了するまで(S17でYES)繰り返し実行される。
【0070】
図7において、切替スイッチ91が充電回路93側に倒されてバッテリ41が充電されているときに、満充電検知部84でバッテリ41の満充電、または取り外し検知部85で電子カセッテ21の取り外し(単体での使用)が検知された場合(S20でYES)は、X線の照射有無、画像データの送信如何に関わらず、切替スイッチ91を充電回路93側から筐体グランド92側に倒して充電を中断する(S21)。受電電極61は電磁シールドとして機能する。一方、バッテリ41の満充電、または電子カセッテ21の単体での使用が検知されない場合(S20でNO)は、切替スイッチ91を充電回路93側に倒した状態を保持し、バッテリ41の充電を継続する(S22)。
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、電子カセッテ21の受電電極61が非接触給電用の電極と電磁シールドを兼ねるので、非接触給電用の電極と電磁シールドを別々に設ける場合と比べて、電子カセッテ21の小型化(薄型化)、部品コスト削減を促進することができる。特に電界結合方式は、電磁誘導方式や磁気共鳴方式といった他の非接触給電の方式よりも構造が簡単で小型化に有利であるため、本発明との組み合わせによるさらなる小型化によって電界結合方式の優位性を高めることができる。
【0072】
照射検出センサ25でX線の照射開始を検出して撮影が行われ、画像送信が終了してスリープモードに移行するまでは受電電極61を電磁シールドとして機能させるので、画像データへのノイズの重畳が懸念される撮影時や画像送信時の電磁両立性(EMC;Electromagnetic Compatibility)を確保することができる。
【0073】
被検体の被爆量を低減するため、FPD26には微弱な電磁波でも検出可能なように高感度なものが使用されている。このため、撮影時の電磁両立性を確保して電磁ノイズによる画質劣化を防止する必要性は高く、従って本発明の有用性も極めて高い。
【0074】
上記実施形態では、照射検出センサ25でX線の照射開始を検出したことを契機に切替スイッチ91を充電回路93側から筐体グランド92側に切り替え、技師に意識させることなくバッテリ41の充電/非充電の切替を自動的に行っているが、各撮影台22a、22b、給電装置81、撮影制御装置23、コンソール24のいずれかに充電/非充電を指示するための操作スイッチを設け、この操作スイッチの操作に同期して切替スイッチ91を切り替えてもよい。
【0075】
上記実施形態のように切替スイッチ91としてリレーを用い、照射検出センサ25でX線の照射開始を検出したことを契機に切替スイッチ91を充電回路93側から筐体グランド92側に切り替える場合、切替スイッチ91のスイッチングノイズが画像データに乗って画像にスジムラ等が発生するおそれがある。
【0076】
この懸念を払拭するため、電子カセッテ21の電源投入時等のX線の非照射時に切替スイッチ91を意図的に切り替えてスイッチングノイズを発生させるとともにFPD26に蓄積動作と読み出し動作を行わせて、そのとき出力された画像データを補正データとしてコンソール24のメモリに記憶させておき、X線撮影で得られた画像データから補正データを減算するノイズ除去処理をコンソール24に行わせることが好ましい。
【0077】
補正データはX線の非照射時に得たものであるため、補正データには切替スイッチ91のスイッチングノイズが現れる。これをX線撮影で得られた画像データから減算すれば、画像データからスイッチングノイズを取り除くことができる。また、電子カセッテ21の電源投入時といった一定期間毎に補正データを取得すれば、切替スイッチ91の経年劣化でスイッチングノイズが変化した場合も対応することができる。
【0078】
X線の照射開始を検出したことを契機に切替スイッチ91を切り替えるのではなく、その前のコンソール24を通じて撮影条件が入力されてからX線の照射を開始するまでの間、例えば撮影制御装置23を介して電子カセッテ21に撮影条件を設定したときに切り替えてもよい。もしくは、撮影台に患者がセットされたこと(立位撮影台22aの場合は撮影台22aの前に患者が立ったとき、臥位撮影台22bの場合は撮影台22bに患者が仰臥したとき)を光学的、機械的、または電気的に検知し、これを契機に切替スイッチ91を切り替えてもよい。これらの場合はX線の照射開始前に切替スイッチ91の切り替えが行われるので、スイッチングノイズが画像データに乗るおそれはなくなる。また、照射検出センサ25がないタイプにも対応することができる。
【0079】
上記実施形態では、X線撮影直後に画像データの送信を行っているが、X線撮影後に間をおいて画像データの送信を行ったり、何回か撮影を行った後まとめて画像データを送信する場合もある。この場合はX線撮影が終了したら切替スイッチ91を筐体グランド92側から充電回路93側に倒してバッテリ41の充電を行い、画像データの送信時には切替スイッチ91を筐体グランド92側に再び切り替えて受電電極61を電磁シールドとして機能させる。
【0080】
なお、電磁ノイズに比較的強い通信方式で画像データを送信する場合は、必ずしも画像データの送信時に切替スイッチ91を筐体グランド92側に切り替えて受電電極61を電磁シールドとして機能させなくてもよい。
【0081】
上記実施形態ではホルダ30a、30bの材質については特に言及していないが、あらゆる状況下においても電磁両立性を確保するために、ホルダ30a、30bは電磁シールドとして機能する金属材料で形成されていることが好ましい。
【0082】
ホルダ30a、30bを電磁シールドとすると、電子カセッテ21をホルダ30a、30bにセットした際には電子カセッテ21と給電装置81を合わせた系から外部への電磁妨害、および外部から電子カセッテ21と給電装置81を合わせた系への電磁妨害の影響をホルダ30a、30bで防ぐことができる。電子カセッテ21がホルダ30a、30bから取り外されて単体で使用された場合は、上述のように切替スイッチ91が筐体グランド92側に倒されて受電電極61が電磁シールドとして機能するので、ホルダ30a、30bにセットして使用された場合と単体で使用された場合の両方の状況下で電磁両立性を確保することが可能となる。
【0083】
上記実施形態では受電電極61と背面カバー55を別々にしているが、図8に示す電子カセッテ101のように受電電極102を背面カバーとしてもよい。さらなる小型化(薄型化)、部品コスト削減が可能となる。また、受電電極61の表面積を最大限のサイズにすることができるので、給電効率を向上させることができる。但しこの場合は背面カバーが金属となるので、例えば前カバー103との接続部分やベース板104との接続部分に断面U字状のゴム製絶縁部材105を嵌める等して他の部品との絶縁性を確実なものとする。絶縁部材105を断面U字状とすることで、受電電極102を電磁シールドとして機能させた場合の絶縁部材105付近の電磁遮蔽能力をより高めることができる。
【0084】
なお、画像データにどの程度ノイズが乗っているかを画像解析により求め、また、給電装置81による積算給電電力とバッテリ41の残量との関係をモニタリングし、ノイズが設定値よりも大きい場合、または積算給電電力に比べてバッテリ41の残量の増分が少ない場合、切替スイッチ91が故障したと判定してもよい。故障と判定した場合は、その旨をコンソール24のディスプレイに表示する。
【0085】
切替スイッチ91が故障して充電回路93側に倒されたままであった場合は画像データに給電装置81からのノイズが乗り、筐体グランド92側に倒されたままであった場合は非接触給電が行われなくなるので、ノイズの乗り方とバッテリ41の残量を監視していれば、切替スイッチ91の故障判定をすることができる。
【0086】
また、X線の照射開始検出や画像送信の時刻と関連付けて切替スイッチ91の動作履歴を記憶しておいてもよい。X線撮影、画像送信時に切替スイッチ91が筐体グランド92側に確実に倒されていたことを動作履歴により確認することができる。切替スイッチ91が筐体グランド92側に倒されていたにも関わらず、画像データにノイズが乗っていた場合は、給電装置81以外からのノイズの影響が考えられ、画質劣化の原因究明にも役立てることができる。
【0087】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0088】
X線撮影システム10は病院の撮影室に据え置かれるタイプに限らず、回診車に搭載されるタイプや、X線源13、線源制御装置14、電子カセッテ21、撮影制御装置23等を事故、災害等の緊急医療対応が必要な現場や在宅診療を受ける患者の自宅に持ち運んでX線撮影を行うことが可能な可搬型のシステムに適用してもよい。
【0089】
上記実施形態では、X線発生装置とX線撮影装置との間で通信する機能を持たないシステムを例示したが、各装置間での通信機能を持つものにも本発明は適用可能である。この場合は照射開始を検出するセンサは不要で、線源制御装置と撮影制御装置間でX線の照射開始を告げる同期信号を遣り取りし、これを契機に切替スイッチを筐体グランド側に切り替えて受電電極を電磁シールド化すればよい。
【0090】
電子カセッテ自体がセットされて内蔵バッテリを充電する専用のクレードルを用意し、クレードルに給電装置を設けてもよい。この場合はクレードルへの電子カセッテのセットとクレードルからの電子カセッテの取り外しをセンサ等で検知し、クレードルへのセットが検知されたら切替スイッチを充電回路側に倒し、クレードルからの取り外しが検知されたら切替スイッチを筐体グランド側に倒す制御をする。
【0091】
上記実施形態では、電子カセッテと撮影制御装置を別体で構成した例で説明したが、撮影制御装置の機能を電子カセッテの制御回路に内蔵する等、電子カセッテと撮影制御装置を一体化してもよい。また、コンソールで画像処理を行うとしているが、撮影制御装置で行ってもよい。さらに、コンソールに撮影制御装置の機能をもたせて一体化してもよい。
【0092】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 X線撮影システム
11 X線発生装置
12 X線撮影装置
21、101 電子カセッテ
22a、22b 立位、臥位撮影台
23 撮影制御装置
24 コンソール
26 FPD
27 筐体
30a、30b ホルダ
31 アンテナ
41 バッテリ
45 通信部
46 制御回路
52 画素
61、102 受電電極
63 信号処理回路
81 給電装置
82 給電電極
84 満充電検知部
85 取り外し検知部
91 切替スイッチ
92 筐体グランド
93 充電回路
105 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射された放射線を受けて放射線画像を検出する放射線画像検出器と、
前記放射線画像検出器を収容する筐体と、
各部に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの充電回路と、
前記バッテリを充電するための電力を非接触給電装置から受電する受電電極であり、前記放射線画像検出器の撮像面と反対側の前記筐体底面に撮像面と平行に配置され、電界結合により非接触給電装置の給電電極から電力を受電する受電電極と、
前記受電電極と前記充電回路、または前記受電電極と筐体グランドの接続を選択的に切り替える切替スイッチと、
前記切替スイッチの切り替え動作を制御する制御手段であり、前記放射線画像検出器で放射線画像を検出している間、および/または前記放射線画像検出器から外部装置に放射線画像のデータを送信している間は、前記受電電極と前記筐体グランドを接続させて前記受電電極を電磁シールドとして機能させ、これら以外のときは前記受電電極と前記充電回路を接続させて受電可能な状態とする制御手段とを備えることを特徴とする電子カセッテ。
【請求項2】
前記制御手段は、放射線の照射が開始されたときに前記受電電極と前記筐体グランドを接続させることを特徴とする請求項1に記載の電子カセッテ。
【請求項3】
前記制御手段は、放射線の非照射時に前記切替スイッチを切り替えるとともに前記放射線画像検出器で放射線画像を検出させ、
これにより得られた、前記切替スイッチのスイッチングノイズが現れた補正データを放射線画像のデータから減算することを特徴とする請求項2に記載の電子カセッテ。
【請求項4】
補正データは一定期間毎に取得されることを特徴とする請求項3に記載の電子カセッテ。
【請求項5】
前記制御手段は、外部装置に撮影条件が入力されてから放射線の照射が開始されるまでの間に前記受電電極と前記筐体グランドを接続させることを特徴とする請求項1に記載の電子カセッテ。
【請求項6】
前記制御手段は、外部装置から撮影条件を受信したときに前記受電電極と前記筐体グランドを接続させることを特徴とする請求項5に記載の電子カセッテ。
【請求項7】
前記制御手段は、被検体が撮影台にセットされたときに前記受電電極と前記筐体グランドを接続させることを特徴とする請求項5に記載の電子カセッテ。
【請求項8】
前記制御手段は、前記バッテリが満充電となったとき、または撮影台のホルダから電子カセッテが取り外されたときに前記受電電極と前記筐体グランドを接続させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の電子カセッテ。
【請求項9】
前記制御手段は、前記バッテリの充電/非充電を指示するための操作部材の操作に応じて、前記切替スイッチを切り替えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の電子カセッテ。
【請求項10】
前記筐体は、前記放射線画像検出器の撮像面側を覆う前カバーと反対側を覆う背面カバーとからなり、前記背面カバーが前記受電電極となっていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の電子カセッテ。
【請求項11】
前記背面カバーと他の部品との接続部分に断面U字状の絶縁部材が嵌められていることを特徴とする請求項10に記載の電子カセッテ。
【請求項12】
放射線源から照射された放射線を受けて放射線画像を検出する放射線画像検出器と、
前記放射線画像検出器を収容する筐体と、
各部に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの充電回路と、
前記バッテリを充電するための電力を非接触給電装置から受電する受電電極であり、前記放射線画像検出器の撮像面と反対側の前記筐体底面に撮像面と平行に配置され、電界結合により非接触給電装置の給電電極から電力を受電する受電電極と、
前記受電電極と前記充電回路、または前記受電電極と筐体グランドの接続を選択的に切り替える切替スイッチと、
前記切替スイッチの切り替え動作を制御する制御手段であり、前記放射線画像検出器で放射線画像を検出している間、および/または前記放射線画像検出器から外部装置に放射線画像のデータを送信している間は、前記受電電極と前記筐体グランドを接続させて前記受電電極を電磁シールドとして機能させ、これら以外のときは前記受電電極と前記充電回路を接続させて受電可能な状態とする制御手段とを有する電子カセッテと、
前記電子カセッテが着脱自在に収容されるホルダを有する撮影台と、
前記電子カセッテの動作を統括的に制御する撮影制御装置とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項13】
非接触給電装置は前記撮影台のホルダに内蔵されていることを特徴とする請求項12に記載の放射線撮影装置。
【請求項14】
前記撮影台のホルダは電磁シールド化されていることを特徴とする請求項12または13に記載の放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239657(P2012−239657A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112973(P2011−112973)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】