説明

電子カメラ

【課題】流し撮りに適したシャッター速度および撮像タイミングで光学像を撮像する電子カメラを提供する。
【解決手段】光学系1による光学像を撮像素子8に結像させて、光学像に基づく画像信号を生成する撮像部10と、画像信号に基づき撮像画面内における像の移動量を算出する解析部23と、解析部によって算出された撮像画面内における像の移動量に基づき、撮像画面内を移動する移動被写体を検出し、検出された移動被写体の数あるいは画像領域サイズのうち少なくともいずれか1つを算出する判定部24と、判定部によって算出された算出結果に基づき撮像素子の露光時間を算出し、算出した露光時間で光学像を撮像するよう撮像部を制御させる制御信号を生成する制御信号生成部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
写真の撮影方法の一つとして、流し撮りという方法がある。 この流し撮りの効果を活かした写真を撮像する場合、電子カメラは、被写体にピントを合わせて、通常より長い露光時間を確保した状態で、高速で移動する被写体を撮像する必要がある。これにより、被写体以外がブレて、被写体が鮮明な写真を撮像することができる。
例えば、電子カメラを固定し、流し撮りによる被写体がファインダに現れると、補正光学系を流し撮り方向に駆動して、補正光学系によって撮像素子に結像される光学像の光軸を被写体の動きに追従させることで流し撮りをするカメラがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−39007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シャッターを切ったとき、補正光学系によって制御される光学像の光軸が、被写体の動きに追従できていない場合、被写体および背景が両方ともがブレてしまい、不鮮明な写真が撮像される。つまり、光軸をあわせる被写体が流し撮り対象である被写体でなければ、効果的な流し撮りによる画像を撮像することができない問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮し、上記の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、流し撮り対象である被写体を検出し、検出した被写体に適したシャッター速度および撮像タイミングで被写体を撮像する電子カメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明にかかる電子カメラは、光学系による光学像を撮像素子に結像させて、前記光学像に基づく画像信号を生成する撮像部と、前記画像信号に基づき撮像画面内における前記像の移動量を算出する解析部と、前記解析部によって算出された前記撮像画面内における前記像の移動量に基づき、前記撮像画面内を移動する移動被写体を検出し、検出された前記移動被写体の数あるいは画像領域サイズのうち少なくともいずれか1つを算出する判定部と、前記判定部によって算出された算出結果に基づき前記撮像素子の露光時間を算出し、算出した前記露光時間で前記光学像を撮像するよう前記撮像部を制御させる制御信号を生成する制御信号生成部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流し撮り対象である被写体を検出し、検出した被写体に適したシャッター速度および撮像タイミングで被写体を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による電子カメラの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による電子カメラによって撮像される連続する画像の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による電子カメラによって撮像される連続する画像と当該画像内の被写体との関係の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による電子カメラによって撮像される連続する画像と当該画像内の被写体との関係の他の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による電子カメラによって撮像される連続する画像と当該画像内の被写体との関係の他の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による電子カメラによる自動撮影処理の動作例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による電子カメラによる自動撮影処理の動作例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る電子カメラ100の構成を示すブロック図である。電子カメラ100は、撮像部10、不揮発メモリー11、バッファメモリー12、操作検出回路13、モニター制御回路14、モニター15、メモリー制御回路16、メモリー17、および制御部20を備えている。
【0010】
撮像部10は、光学系1、角速度センサー2、光学系制御回路3、撮像素子制御回路7、撮像素子8、および映像回路9を備え、光学系1による光学像を撮像して画像信号を出力する。
光学系1は、撮像素子8への露光を補正する光学素子、例えば、手ブレによる像揺れを補正する機能を有する手ブレ防止レンズ1aを備え、さらに、焦点を調整する機能を有するフォーカスレンズや、シャッターを開閉して露光時間を調整する機能を有するシャッター等を備えている。
角速度センサー2は、電子カメラ100の移動量(移動速度や移動方向を含む)を表す角速度を検出する。
【0011】
光学系制御回路3は、撮像制御回路31と手ブレ補正駆動回路32とを備える。
撮像制御回路31は、フォーカスレンズを制御して自動的に焦点を調整するオートフォーカス(以下、AF)制御機能、シャッターの開閉を制御するシャッター制御機能、絞りを制御して自動的に露出を調整するAE(Automatic Exposure)制御機能等を備え、制御部20からの制御信号に応じて光学系1を駆動させ、撮像素子8への露光を補正する。また、撮像制御回路31は、シャッター制御機能を利用して、例えば、制御部20から出力される制御信号に応じた撮像タイミングでシャッターを開放し、当該制御信号に応じたシャッター速度が経過した後シャッターを閉じる制御を行う。ここで、シャッター速度とは、シャッターが開放され、一枚の画像を撮像するための露光時間の経過後、シャッターが閉じられるまでの時間に対応しており、露光時間が短ければその速度は速く、露光時間が長ければその速度は遅くなる。
【0012】
手ブレ補正駆動回路32は、角速度センサー2が検出した角速度や撮像素子8によって生成される画像信号に基づき制御部20によって算出された手ブレ補正値に従って、手ブレ防止レンズ1aを制御する。手ブレ補正駆動回路32は、例えば、角速度センサー2によって検出される角速度に基づき算出されるカメラの移動量(ブレ量)に応じて手ブレ防止レンズ1aを動かすことで、カメラの移動量を打ち消す方向に光学系1から入射する光学像の光軸を補正し、光学像を撮像素子8の受光面の適切な位置に結像させる。
また、手ブレ補正駆動回路32は、電子カメラ100が一定の位置で固定されており、移動する被写体を撮像する場合、撮像素子8から出力される画像信号に基づいて当該被写体の移動に追従させる手ブレ補正値に基づき、手ブレ防止レンズ1aを動かすことによって、光学系1から入射する光学像の光軸を補正することができる。手ブレ補正駆動回路32は、上述の機能を利用して、流し撮りモードが設定されている場合、流し撮りモードにおいて撮像する被写体の移動方向以外に対して、手ブレ補正値に基づき手ブレ防止レンズ1aを動かすことで、流し撮りをすることができる。
【0013】
撮像素子8は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等であり、光学系1から露光された光学像が結像される受光面を有し、結像された光学像を電気信号に変換してアナログの画像信号を出力する。また、撮像素子8は、撮像制御回路31によってシャッターが切られた際に入射する光学像に基づき撮像画像信号を出力し、シャッターが切られる前に入射する光学像に基づきスルー画信号を出力する。
映像回路9は、撮像素子8から出力される画像信号を増幅し、デジタル信号に変換する。
撮像素子制御回路7は、撮像素子8を駆動させ、撮像素子8において結像された光学像の画像信号への変換や、変換された画像信号の出力などの動作を制御する。例えば、撮像素子制御回路7は、制御部20から入力された制御信号に基づく露光時間で、撮像素子8に光学像を結像させる露光時間制御や、撮像素子8に一定時間tの間隔で複数のスルー画信号を生成させるスルー画生成制御等を行う。なお、一定時間tの間隔とは、例えば1/60秒である。
【0014】
不揮発メモリー11は、制御部20を動作させるプログラムや、ユーザから入力された各種設定や撮像条件などの情報を記憶する。不揮発メモリー11は、例えば、手ブレ補正の設定の有無、通常撮像条件で撮影する通常撮影モード設定の有無、流し撮りモード設定の有無や、流し撮りモード設定の情報として自動レリーズ設定の有効あるいは無効の情報、自動レリーズ設定が有効である場合の条件値等を記憶する。
バッファメモリー12は、制御部20の制御処理に用いられる一時的な情報の記憶領域であって、例えば、撮像素子8から出力されるスルー画信号や、制御部20によって画像処理された撮像画像信号などが制御部20によって一時的に記憶される。
【0015】
操作検出回路13は、電源スイッチ13a、レリーズスイッチ13b、・・・13n等の入力部を備え、その入力部にユーザによって入力される操作情報を、制御信号として制御部20に出力する。また、操作検出回路13は、自動レリーズ設定(例えば、ユーザによってレリーズスイッチ13bが押下された後、制御部20によって決定された撮像タイミングでシャッターを切るよう撮像制御回路13を制御して撮像する設定)の入力を受け付け、入力された自動レリーズ設定は、制御部20によって不揮発メモリー11に記憶される。
モニター制御回路14は、例えば、モニター15の点灯、消灯や明るさ調整などの表示制御や、制御部20によって画像処理された画像信号をモニター15に表示させる処理を行う。モニター15は、画像信号に応じた画像を表示するディスプレイであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの液晶ディスプレイである。
【0016】
メモリー制御回路16は、制御部20とメモリー17との情報の入出力を制御し、例えば、制御部20によって画像処理された画像信号をメモリー17に記憶させる処理や、メモリー17に記憶されている画像信号等の情報を読み出して制御部20に出力する処理などを行う。
メモリー17は、例えば、メモリーカードなど電子カメラ100に対して抜き差し可能な記憶媒体であり、制御部20によって画像処理された画像信号などが記憶される。
【0017】
制御部20は、不揮発メモリー11に記憶されたプログラムに基づいて電子カメラ100の各部の動作を制御するマイコンやCPU(Central Processing Unit)等である。例えば、制御部20は、操作検出回路13に入力されるユーザからの操作情報に応じて、電子カメラ100への電源の投入、光学系制御回路3を介した光学系1の駆動制御、撮像素子制御回路7を介した撮像素子8の駆動制御、モニター制御回路14を介したモニター15の表示制御等を行う。また、制御部20は、画像処理部21と、ライブビュー出力部22と、解析部23と、判定部24と、制御信号生成部25とを備えている。
【0018】
画像処理部21は、撮像素子8から映像回路9に出力された画像信号(撮像画像信号およびスルー画信号)に対して画像処理を行う。画像処理部21は、例えば、スルー画信号に対して、動画的にモニター15に表示されるように画像処理を行い、バッファメモリー12に記憶させる。
ライブビュー出力部22は、バッファメモリー12に記憶されている、画像処理部21によって画像処理されたスルー画信号を読み出し、リアルタイムにモニター15に出力する。
【0019】
解析部23は、角速度センサー2によって検出された電子カメラ100の移動量に基づき、制御部20に入力される複数のスルー画信号を解析して、各スルー画信号の撮像画面内における像の移動量を検出する。例えば、解析部23は、制御部20に入力される複数のスルー画信号のうち、撮像タイミングが連続している2つのスルー画信号の差分に基づき、撮像画面内における像の移動方向や移動速度に応じた動きベクトルを算出する。
【0020】
判定部24は、解析部23によって算出された撮像画面内における像の移動量(動きベクトル)に基づき、撮像画面内を移動する移動被写体を検出し、検出された移動被写体の数あるいは画像領域サイズのうち少なくともいずれか1つを算出する。
ここで、図2、3を用いて、判定部24が自動車Aを移動被写体として検出する一例について説明する。図2は、電子カメラ100を一定の位置に固定した状態で、電子カメラ100の前の横切る自動車Aが撮像された際の複数のスルー画信号に基づく複数のスルー画D1、D2と、制御部20の自動レリーズ設定によって撮像された撮像信号に基づく撮像画像D3等を示す概略図である。なお、差分イメージDD12は、解析部23によって算出されるスルー画D1、D2のスルー画信号の差分を説明するための概略図である。また、これらスルー画D1、D2、撮像画像D3、差分イメージDD12は、モニター15に表示されるライブビュー画像であって、画面L側が自動車Aの後端方向を、画面R側が自動車Aの先端方向を表している。ここで撮像画面とは、撮像素子8によって生成された画像信号に基づく像面を意味し、ライブビュー画像と対応している。また、図3は、図2に示すスルー画D1、D2を含む複数のスルー画における自動車Aの像面内の位置変化を示す図である。図3の横軸は時間、縦軸はスルー画の画面位置(L−R)を表し、フレームごとの黒線は、像面内の自動車Aを表している。
【0021】
図2に示す通り、複数のスルー画D1、D2は、連続して撮像されたスルー画であって、これらスルー画D1、D2を比較すると、自動車Aの先端は、撮像画面内においてL側からR側に向かって移動し、撮像画面内における自動車Aの座標位置はN1〜N2と変化している。
一方、自動車Aの背景にある家Bは、スルー画D1、D2を比較すると、撮像画面内の一定の座標位置M1に位置しており、撮像画面内において移動していない。解析部23は、差分イメージDD12に示す通り、スルー画D1、D2に基づく自動車Aの移動量α(座標位置M2−M1で示す)を検出し、判定部24に出力する。解析部23は、例えば、撮像画面に対応する画像領域が複数に分割された区分領域ごとに動きベクトルを算出する。
判定部24は、解析部23から出力された移動量αに基づき、自動車Aの移動方向と、自動車Aの画像領域のサイズを検出する。例えば、判定部24が、解析部23から出力される区分領域ごとの動きベクトルに基づき、動きベクトルが同じ移動方向を示す区分領域の集合を、1つの移動被写体として検出する。よって、判定部24は、図2に示すスルー画D1、2Dを用いて、自動車Aに対応する画像領域の動きベクトルの移動方向が同一であるため、1つの移動被写体として、自動車Aを検出する。
一方、判定部24は、後述する図5に示す通り、解析部23から出力される区分領域ごとの動きベクトルに基づき、異なる移動方向を示す画像領域があることを検出した場合、移動被写体が複数あることを検出する。なお、判定部24は、スルー画D1、D2に示すように、移動していない家Bは、移動被写体として検出しない。
【0022】
図3は、図2に示すスルー画D1、D2を含む複数のスルー画における自動車Aの撮像画面内の位置変化を示す図である。図3の横軸は時間、縦軸はスルー画の画面位置(L−R)を表し、フレームごとの黒線a1、a2・・・は、撮像画面内の自動車Aを表している。
上述の通り、図3に示す自動車Aは、撮像画面の一方(L側)から出現し、他方(R側)に向かって進んでいる。
判定部24は、解析部23によって算出されるスルー画D1、D2に基づく動きベクトルから、フレームn+3の時点で移動被写体として自動車Aを検出する。判定部24は、例えば、図3に示す通り、撮像画面の長手方向(L−R)における長さを、移動被写体の画像領域サイズとして検出する。ここで、判定部24は、フレームn+2の地点で自動車Aの画像領域サイズa1を検出し、フレームn+3の地点で自動車Aの画像領域サイズa2を検出する。
【0023】
判定部24は、移動被写体の画像領域サイズが一定値以上であるか否かを判断し、移動被写体の画像領域サイズが一定値未満である場合、通常撮像モードにおいて設定されている第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する流し撮りモードであることを判断する。例えば、判定部24は、移動被写体を検出した時点(フレームn+3)での移動被写体の画像領域サイズa2を一定値(例えば、撮像画面の長手方向の長さの3分の1の長さ)と比較して、一定値未満である場合、図3に示す通り、流し撮りモードであると判断し、一定値以上である場合、図4に示す通り、通常撮像モードであると判断する。判定部24は、撮像モードを判断した場合、当該撮像モードを不揮発メモリー11に記憶する。
【0024】
制御信号生成部25は、判定部24によって流し撮りモードと判断された場合、撮像画面内における移動被写体の移動速度を算出し、移動被写体が撮像画面の中央に到達する時間(以下、センタリング時間という)を算出する。制御信号生成部25は、このセンタリング時間t2から、撮像制御回路31に対して制御部20によるレリーズ指示がなされてから、シャッターが切られて(開閉されて)撮像素子8に被写体光が露光される時点までのレリーズタイムラグ時間T1を減算した自動リレーズ時間t1(以下、予想時間という)を算出する。なお、レリーズタイムラグ時間T1は、電子カメラ100の情報処理能力等に応じて予め決定している時間であって、例えば、不揮発メモリー11に記憶されている。
また、制御信号生成部25は、撮像画面内における移動被写体の移動速度に基づき、流し撮りモードに適したシャッター速度(第2の露光時間)を算出する。なお、流し撮りモードに適したシャッター速度とは、移動被写体の移動速度に応じた流し撮り量を確保できる露光時間であって、図3に露光時間T2で示す。
【0025】
一方、制御信号生成部25は、判定部24によって通常撮像モードと判断された場合、図4に示す通り、移動被写体が撮像画面の端部からとび出す時間(以下、フレームアウト時間という)を算出し、このフレームアウト時間t3から、露光時間T3とレリーズタイムラグ時間T1を減算した自動リレーズ時間t1(予想時間)を算出する。例えば、図4に示す通り、制御信号生成部25は、フレームアウト時間t3(フレームn+11時点)を算出し、露光時間T3で撮像された際に移動被写体が撮像画面からとび出さない露光開始時間t4を算出する。なお、露光時間T3は、通常モードに適したシャッター速度(第1の露光時間)であって、例えば、高速シャッター速度として、予め不揮発メモリー11に記憶されている。
【0026】
ここで、判定部24は、図5に示す通り、解析部23から出力される区分領域ごとの動きベクトルに基づき、異なる移動方向の動きベクトルを有する画像領域d1、e1、f1があることを検出した場合、移動被写体が複数あることを検出する。判定部24は、移動被写体が複数あることを検出した場合、自動レリーズによる撮像を行わないと判断する。
【0027】
また、制御信号生成部25は、不揮発メモリー11に記憶されている撮影モードに応じて手ブレ補正駆動回路32に出力する手ブレ補正値を生成する。例えば、不揮発メモリー11に通常撮影モード設定が選択(有効であると)されていることを示す情報が記憶されている場合、制御信号生成部25は、電子カメラ100の全ての移動方向に対して手ブレ補正を行うための手ブレ補正値を生成する。
また、制御信号生成部25は、不揮発メモリー11において流し撮りモードが設定されている場合、水平方向や電子カメラ100のパン方向に対しては手ブレ補正値を生成せず、水平方向やパン方向以外に対しての手ブレ補正値を生成する。なお、制御信号生成部25は、手ブレ補正が設定されていない場合、手ブレ補正値を生成しない。
【0028】
次に、図6、7のフローチャートを参照して、電子カメラ100による自動撮影(自動レリーズ撮像)が行われる動作例を説明する。
図6に示す通り、ステップST100において、ユーザによって電源スイッチ13aが押下されると、電子カメラ100に電源が投入される。さらに、レリーズスイッチ13bが半押しされると、ステップST200において、制御部20が、AF制御を行う。次いで、ステップST300において、制御部20がオートホワイトバランスの調整(AWB制御)を行い、ステップST400において、制御部20がAF制御を行う。ここで、AWBとは、被写体色を測定し、モニター15に出力される画像が最適な色になるように色毎の増幅率を調整するとともに、撮影時の色毎の増幅率を設定する処理である。
【0029】
ステップST500において、半押しされている状態のレリーズスイッチ13bがさらに押下されると、ステップST600において、制御部20は、不揮発メモリー11に記憶された自動レリーズ設定に関する情報を読み出す。ステップST600において、制御部20は、読み出した自動レリーズ設定の情報が、自動撮影を行わないことを示す場合、ステップST800において、撮影処理部26が、直ちに撮影処理を開始して撮影を行う。次いで、ステップST900において、画像処理部21によって処理された画像信号がメモリー17に記憶され、処理が終了する。
一方、ステップST600において制御部20が読み出した自動レリーズ設定情報が、自動撮影を行うことを示す場合、ステップST700において、制御部20が、自動レリーズモードによる撮影を行った後、処理を終了する。
【0030】
図7は、自動レリーズモードによる撮影動作を示す図である。
図7に示す通り、ステップST701において、自動レリーズモードの待機中に、撮像素子8によって複数のスルー画信号が出力されると、解析部23が、撮像回路9から出力された複数のスルー画信号を解析して、スルー画信号の撮像画面における像の動きベクトルを算出する。
ステップST702において、判定部24が、解析部23によって算出された動きベクトルに基づき、撮像画面における移動被写体を検出する。ステップST702において、移動被写体が検出された場合、ステップST702においてYESと判断され、ステップST703において、判定部24が、検出された移動被写体の数あるいは画像領域サイズのうち少なくとも1つを算出する。
【0031】
ステップST704において、判定部24は、検出された移動被写体が複数か否かを判断する。ステップST704において、検出された移動被写体が複数であった場合、ステップST705において、判定部24は、検出された移動被写体の画像領域サイズが一定値以上であるか否かを判断する。ステップST705において、検出された移動被写体の画像領域サイズが一定値以上であった場合、判定部24は、通常撮像モードであると判断する。
判定部24によって通常撮像モードと判断されると、ステップST706において、制御信号生成部25は、撮像画面内における移動被写体の移動速度を算出し、移動被写体が撮像画面の端部からとび出すフレームアウト時間を算出する。次いで、制御信号生成部25は、算出されたフレームアウト時間から、通常撮像モードとして設定されている第1の露光時間とレリーズタイムラグ時間を減算し、予想時間を算出する。
またステップST707において、制御信号生成部25は、通常の手ブレ補正モードにおける手ブレ補正値を算出し、手ブレ補正駆動回路32に出力する。
ステップST708において、制御信号生成部25は、予想時間に到達したか否かを判断し、予想時間に到達した場合、第1の露光時間で撮像するよう撮像制御部31および撮像素子制御回路10を制御する制御信号を生成し、撮像制御回路31および撮像素子制御回路10のそれぞれに出力する。
【0032】
ステップST709において、制御信号が入力された撮像制御回路31が、第1の露光時間に対応するシャッター速度でシャッターを開放し、撮像素子制御回路7が、第1の露光時間で撮像素子8を制御することで、光学系1から入射した光学像が撮像される。これにより、撮像素子8によって画像信号が生成され、制御部20に出力される。そして、ステップST710において、メモリー制御回路16によって、制御部20から入力された画像信号がメモリー17に記憶される。
なお、ステップST708において予想時間に到達しない場合、ステップST11において、制御信号生成部25は、撮像素子8によって次のスルー画信号が生成されたか否かを判断し、次のスルー画信号が入力された場合、ステップST701に戻る。
【0033】
一方、ステップST704において、検出された移動被写体が複数でなく、ステップST705において、検出された移動被写体の画像領域サイズが一定値未満であった場合、判定部24は、流し撮りモードであると判断する。
判定部24によって流し撮りモードと判断されると、ステップST712において、制御信号生成部25が、撮像画面内における移動被写体の移動速度を算出し、移動被写体が撮像画面の中央に到達するセンタリング時間を算出する。次いで、制御信号生成部25は、算出されたセンタリングからレリーズタイムラグ時間を減算した予想時間を算出する。さらに、制御信号生成部25は、撮像画面内における移動被写体の移動速度に基づき、流し撮りモードに適した第2の露光時間を算出する。
【0034】
またステップST713において、制御信号生成部25は、流し撮り手ブレ補正モードにおける手ブレ補正値を算出し、手ブレ補正駆動回路32に出力する。そして、ステップST708において、予想時間に到達した場合、制御信号生成部25は、第2の露光時間で撮像するよう撮像制御部31および撮像素子制御回路10を制御する制御信号を生成し、撮像制御回路31および撮像素子制御回路10のそれぞれに出力する。
【0035】
なお、ステップST702で判定部24が移動被写体を検出しなかった場合、ステップST714において、操作検出回路13は、レリーズスイッチ13bが再度押下かされたか否かを検出する。ステップST714においてレリーズスイッチ13bが再度押下された場合、ステップST709に移行して、レリーズスイッチ13bが押下された撮像タイミングで撮像が実行される。例えば、制御信号生成部25は、予め設定されている露光時間に応じた制御信号を撮像制御回路31および撮像素子制御回路7に出力し、予め設定されている補正値を手ブレ補正駆動回路32に出力する。
一方、ステップST714において、操作検出回路13が、レリーズスイッチ13bが再度押下されたことを検出しなかった場合、ステップST715において、制御部20は、自動レリーズモードの設定がキャンセルされたか否かを判断する。制御部20は、例えば、一定時間以上レリーズスイッチ13bが再度押下されなかった場合、自動レリーズモードの設定がキャンセルされたと判断し、終了する。一方、例えば、一定時間以内に、解析部23が撮像画面における像の移動量を検出した場合、ステップST701に戻る。
【0036】
なお、本実施の形態において、制御信号生成部25は、判定部24によって通常撮像モードと判断された場合、撮像画面の端部に到達するフレームアウト時間を算出し、判定部24によって流し撮りモードと判断された場合、撮像画面の中央に到達するセンタリング時間を算出すると説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、判定部24によって判断された撮像モードに応じて、それぞれフレームアウト時間およびセンタリング時間に対応する時間を、撮像画面に任意の位置に到達する時間として算出する設定であってもよい。
また、本実施の形態において、判定部24によって検出される移動被写体の画像領域サイズが、撮像画面の長手方向の長さを用いる例を説明したが、本発明はこれに限られず、一定の面積や撮像画面内における移動被写体の移動方向に対応する長さ等に応じた画像領域を検出する構成であってもよい。
【0037】
この構成により、本実施の形態に係る電子カメラ100は、電子カメラ100が一定の位置に固定され、移動物体の動きに追従してパンされていない場合であっても、流し撮りモードを用いて撮像したい移動被写体を検出し、検出された移動被写体の数あるいは大きさに応じて流し撮りモードに適した被写体であるか否かを判断することができる。これにより、流し撮りモードに適する被写体を容易に検出することができる。
また、本実施の形態に係る電子カメラ100は、検出された移動被写体が複数ある場合は流し撮りモードにおける自動リレーズを行わない。これにより、1つの移動被写体に対して光軸を追従させて流し撮りをする流し撮り手ブレモードの設定を利用して、流し撮りモードに適する被写体を容易に検出することができる。
さらに、本実施の形態に係る電子カメラ100は、撮像画面内を移動する移動被写体のうち、流し撮りモードに適する移動被写体を検出すると、移動被写体の移動速度に応じた露光時間と、撮像画面内における任意の位置で移動被写体が撮像される撮像タイミングを算出し、算出された露光時間と撮像タイミングに応じて撮像部を制御することができる。また、電子カメラ100は、流し撮りモードに適する移動被写体が検出された場合、撮像素子8の受光面の光軸を、検出された移動被写体に追従させるよう手ブレ補正駆動回路32を制御する。これにより、手ブレ補正駆動回路32によって手ブレ防止レンズ1aが制御され、撮像素子8の光軸が、流し撮りモードに適する移動被写体として検出された移動被写体にあわせられ、不鮮明な画像が撮像されてしまう問題を解決することができる。
また、本実施の形態に係る電子カメラ100は、移動被写体が1つであった場合でも、画像領域サイズが一定値以上であれば流し撮りモードとせず、高速シャッターである露光時間の短い通常の撮像モードで撮像する。これにより、撮像画面内にある移動被写体を撮像することができる。
【符号の説明】
【0038】
8…撮像素子、10…撮像部、20…制御部、23…解析部、24…判定部、25…制御信号生成部、100…電子カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による光学像を撮像素子に結像させて、前記光学像に基づく画像信号を生成する撮像部と、
前記画像信号に基づき撮像画面内における前記像の移動量を算出する解析部と、
前記解析部によって算出された前記撮像画面内における前記像の移動量に基づき、前記撮像画面内を移動する移動被写体を検出し、検出された前記移動被写体の数あるいは画像領域サイズのうち少なくともいずれか1つを算出する判定部と、
前記判定部によって算出された算出結果に基づき前記撮像素子の露光時間を算出し、算出した前記露光時間で前記光学像を撮像するよう前記撮像部を制御させる制御信号を生成する制御信号生成部とを備えることを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
前記判定部は、
前記移動被写体を少なくとも1つ検出した場合、当該移動被写体の画像領域サイズが所定値以上であるか否かを判断し、当該移動被写体の画像領域サイズが所定値未満である場合、通常撮像モードにおいて設定されている第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する流し撮りモードであることを判断し、
前記制御信号生成部は、
前記判定部によって前記流し撮りモードであると判断された場合、前記第2の露光時間で前記光学像を撮像するよう前記撮像部を制御させる制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項3】
前記制御信号生成部は、
前記判定部によって前記流し撮りモードであると判断された場合、前記解析部によって算出された前記撮像画面内における前記移動被写体の移動量に基づき、前記移動被写体が前記撮像画面内の任意の設定位置に到達する予想時間および前記第2の露光時間を算出し、前記予想時間に到達した場合、前記撮像部によって前記光学像を撮像するタイミングであることを判断し、前記制御信号を前記撮像部に出力することを特徴とする請求項2に記載の電子カメラ。
【請求項4】
前記判定部は、
前記移動被写体の画像領域サイズが所定値以上である場合、前記通常撮像モードであると判断し、
前記制御信号生成部は、
前記判定部によって前記通常撮像モードであると判断された場合、前記解析部によって算出された前記撮像画面内における前記移動被写体の移動量に基づき、前記移動被写体が前記撮像画面から外れる予想時間および前記第1の露光時間を算出し、前記予想時間に到達した場合、前記撮像部によって前記光学像を撮像するタイミングであることを判断し、前記判定部によって算出された前記第1の露光時間で前記光学像を撮像するよう前記撮像部を制御させる制御信号を前記撮像部に出力することを特徴とする請求項2に記載の電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−245774(P2010−245774A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91344(P2009−91344)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】