説明

電子カメラ

【課題】外界の視野像を視認し易くする。
【解決手段】電子カメラ10は、変倍光学系15、シースルー表示部11、画像表示制御部47を備え、変倍光学系15により結像される外界の像を撮像する。変倍操作部22は、変倍光学系15の焦点距離を変更する。シースルー表示部11は、カメラボディの背面から覗いた時に外界の視野像が透けて見える画面を備える。画像表示制御部47は、変倍操作部22の変倍操作に応答して撮像素子30で撮像したスルー画像を画面に外界の視野像に重ねて表示し、また、変倍操作を停止してから所定時間経過後にスルー画像の表示を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シースルー表示部を備える電子カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子ビューファインダ(EVF)を採用する電子カメラの多くは、ファインダ内の観察視野が狭いため、例えば高速で移動している被写体をファインダ内から見失うことがよくある。また、カメラボディの背面に設けた大型の液晶表示部にスルー画像を表示させてフレーミングを行う電子カメラも多い。しかし、大型の背面表示部に表示されるスルー画像でもズーム操作をするとさらに観察視野が狭くなるため、背面表示部の画面から被写体を見失うおそれがある。このようになると、その被写体をファインダの視野内に再び捕えることは困難になる。そこで、撮影者は、いったんファインダから視線を外して肉眼でその被写体の位置を確認する等の手間がかかる。
【0003】
また、EVFや液晶表示部に表示される画像は、デジタル変換や画像処理等を経てから表示部に表示するため、実際の被写体の動きと画面表示との間で若干のズレ(タイムラグ)が生じる。このため、スポーツ等で動く被写体を撮る時は、ベストのタイミングでシャッタレリーズを行ったつもりでもほんの少し遅れて写ってしまうおそれがある。
【0004】
このような問題を解決するために、ホログラムの技術をスポーツファインダに応用したビデオカメラのファインダ装置が知られている(特許文献1)。このファインダ装置は、被写体像を透過させるスクリーンにホログラムにより撮影画像を投影することによって、外界の視野像と撮像素子で撮像している撮影画像とを重畳表示させている。
【0005】
また、タブレット型のボディの中央に透光性を有する表示部を設けたカメラが知られている(特許文献2)。表示部には、ボディ背面から透過して見られる被写体像(外界の視野像)に、撮像部で撮像した画像、又は再生画像を重畳して表示する。
【0006】
さらに、スティック型の携帯電話に透過型液晶表示デバイスをファインダとして利用する画像撮像装置が知られている(特許文献3)。この画像撮像装置は、撮影者が持つ手の伸縮に応じて(撮影者と透過型液晶表示デバイスとの間の距離に応じて)変化する視野角に撮像画角が一致するようにカメラ部の変倍を自動的に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−65183号公報
【特許文献2】特開2005−110162号公報
【特許文献3】特開2010−183378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の装置は、外界の視野像に重ねて撮像画像を重畳表示するため、外界の視野像が認識し難い欠点がある。特許文献3に記載の画像撮像装置では、撮影者と透過型液晶表示デバイスとが垂直方向でずれている場合、視野範囲に対して撮像範囲がずれてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、視野範囲に対して撮像範囲がずれることなく、外界の視野像を容易に視認することができる電子カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を例示する電子カメラの一態様は、変倍光学系により結像される外界の像を撮像する撮像手段と、変倍光学系の焦点距離を変更するための変倍操作部と、カメラボディの背面から覗いた時に外界の視野像が透けて見える画面を有するシースルー表示部と、変倍操作部の変倍操作に応答して撮像手段で撮像したスルー画像を所定時間だけ画面に表示するする画像表示制御手段と、を備えたものである。
【0011】
具体的には、画像表示制御手段は、タイマ回路で計時した時間を経過した後にスルー画像の表示を停止するように構成してもよい。また、カメラボディに設けた表示停止操作部の操作に応答してスルー画像の表示を停止するように構成してもよい。表示停止操作部の操作としては、レリーズボタンの半押し操作であってもよい。なお、画像表示制御手段は、スルー画像の表示を停止する時に、スルー画像を徐々に消していくフェードアウト処理を行うようにしてもよい。
【0012】
また、画像表示制御手段としては、変倍操作に応答して変化する撮像範囲に対応するサイズでスルー画像を表示するのが望ましい。
【0013】
さらに、画像表示制御手段は、テレ端とワイド端との間の変倍域のうちのテレ端を含む所定の変倍域に変倍光学系が変倍することに応じてスルー画像を画面に拡大して表示するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子カメラによれば、スルー画像表示制御手段が変倍操作部の変倍操作に応答して撮像手段で撮像したスルー画像を画面に外界の視野像に重ねて所定時間だけ表示するため、外界の視野像に対してスルー画像の像倍率が略一致するよう画面と撮影者の目との相対的な位置関係を調節することで、撮像範囲と視野範囲とを常に一致させることができる。また、変倍操作を止めてから所定時間経過後にスルー画像の表示を停止するので、外界の視野像が視認し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の電子カメラを示す正面側斜視図であり、シースルー表示部を起立位置に回転した状態を示している。
【図2】図1で説明した電子カメラを示す背面側斜視図であり、シースルー表示部を起立位置に回転した状態を示している。
【図3】図1で説明した電子カメラを示す背面側斜視図であり、シースルー表示部を収納位置に回転した状態を示している。
【図4】図1で説明した電子カメラの電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図5】変倍操作に応じてシースルー表示部の画面に表示されるスルー画像のサイズを示す説明図である。
【図6】図1で説明した電子カメラの動作手順を示すフローチャートである。
【図7】タッチパネル付きシースルー表示部を収納位置にした時に、画面のうちの凹部に設けた操作部が視認される範囲以外にスルー画像を表示するようにした別の実施形態を示す電子カメラの背面図である。
【図8】タッチパネル付きシースルー表示部を収納位置にした時に、スルー画像とともに操作部の絵柄を表示するようにした他の実施形態を示す電子カメラの背面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一態様を例示する電子カメラ10は、図1ないし図3に示すように、シースルー表示部11を起立位置(図1、図2参照)と収納位置(図3参照)との間で回転自在に設け、起立位置の時にシースルー表示部11の画面12を透して外界の視野像を覗いてフレーミングを行うとともに、変倍操作をすることで外界の視野像に重ねてスルー画像13を所定時間だけ表示する。
【0017】
電子カメラ10には、カメラボディ14の前面に撮影レンズ15を保持するレンズ鏡胴16が組み込まれている。上面には、レリーズボタン17、電源スイッチ18が設けられ、またシースルー表示部11が起立して設けられている。カメラボディ14の右側面には、メモリカードが着脱自在に装填されるメモリカードスロットを覆う蓋19が設けられている。
【0018】
シースルー表示部11は、厚みの薄い透光性を有する自己発光型の有機EL(ElectroLuminescence)パネルで構成されている。なお、シースルー表示部11としては、透光性を有する透明液晶等でもよく、その種類は適宜変更可能である。このシースルー表示部11は、ヒンジ20に内蔵したフレキシブル基板(図示なし)を通じて、カメラボディ14に内蔵する電気基板との間で電気的な接続が行われている。
【0019】
ヒンジ20は、シースルー表示部11を、カメラボディ14の上面に起立して撮影者がフレーミングを行う起立位置(図2に示す位置)と、カメラボディ14の背面に設けた凹部21に収納される収納位置(図3に示す位置)との間で回転自在に支持している。
【0020】
凹部21には、変倍操作部22、画面12にメニュー画面、設定画面、撮影モード選択画面等を表示させるためのボタン群23、及びメニュー画面内でカーソルなどを移動させる十字キー24等からなる操作部が設けられている。なお、十字キー24には、選択内容を決定する際に操作する決定キーが中央に配されている。
【0021】
シースルー表示部11には、画面のうちの収納位置での撮影者側(起立位置での外界側)の面に、例えば静電容量方式のタッチパネル25が設けられている。タッチパネル25は、透明になっており、収納位置の時に凹部21に設けた操作部の絵柄を外部に視認させる。シースルー表示部11が収納位置の時には、タッチパネル25でのタッチ操作によっても操作部を操作したのと同じ操作を行うことができる。
【0022】
ヒンジ20の内部には、シースルー表示部11の回転位置を検出する位置検出部26が設けられている。位置検出部26は、シースルー表示部11の回転位置を監視し、起立位置に回転した時に起立信号を送出する。なお、位置検出部26としては、起立位置の他に、収納位置を検出するものでもよいし、両方の位置を検出するものでもよい。
【0023】
電子カメラ10は、図4に示すように、CPU27を備えている。CPU27には、不揮発性メモリ28、及びバッファメモリ29が接続されており、不揮発性メモリ28には、CPU27が種々の制御を行う際に参照される制御プログラムなどが格納されている。CPU27は、不揮発性メモリ28に格納されている制御プログラムに従い、バッファメモリ29を一時記憶作業領域として利用して各部(回路)の制御を行い、電子カメラ10の各部(回路)の機能を作動させる。
【0024】
撮影レンズ15から入射する被写体光は、CCDやCMOS等の撮像素子30の撮像面に結像する。撮像素子駆動回路31は、CPU27からの制御信号に基づいて撮像素子30を駆動させる。これにより、撮像素子30の撮像面に結像した被写体像は、アナログの撮像信号に変換されて、AFE(Analog FrontEnd)回路を構成するCDS32、及びAMP33に順に出力される。変換された撮像信号は、AFE回路で所定のアナログ処理が施され、A/D(Analog/Digital変換器)34においてデジタル信号に変換される。
【0025】
ASIC(Application Specific Integrated Circuit)35は、画像処理回路を構成しており、A/D34でデジタル信号に変換された撮像信号を入力し、この撮像信号に対して、ホワイトバランス処理やガンマ補正等の画像処理を施す。画像処理を施した画像データは、SDRAM36にいったん記憶される。
【0026】
SDRAM36に記憶した画像データは、CPU27の制御により読み出されてYC変換処理回路37で輝度信号Yと色差信号Cr,Cbとに変換され、その後、圧縮伸長処理回路38で圧縮処理を施してからメディアコントローラ39を介してメモリカード40に記録される。なお、符号41は、CPU27と各部(回路)とを繋ぐバスである。
【0027】
バス41には、表示制御部42が接続されている。表示制御部42は、VRAMを有する。スルー画像をシースルー表示部11の画面12に表示する場合、CPU17は、CPU27の制御により読み出されてYC変換処理回路37で輝度信号Yと色差信号Cr,Cbとに変換した画像データを表示制御部42のVRAMに送り、ここで展開する。表示制御部42は、展開された画像データを表示用の所定方式の信号(例えば、NTSC方式のカラー複合映像信号)に変換してシースルー表示部11に出力する。
【0028】
AE・AF検出回路43は、SDRAM36に取り込んだ画像データに基づいて明暗差(コントラスト)を検出し、検出結果をCPU27に送る。CPU27は、AE・AF検出回路43から得られる明暗差(コントラスト)を確認しながら合焦駆動部44を、明暗差が大きくなる合焦位置に撮影レンズ15が移動するよう制御する。
【0029】
また、CPU26は、AE・AF検出回路43で検出した被写体輝度に基づいてその時点で設定されているISO感度に対する絞り値とシャッタスピードを算出し、算出した値に基づいて、電子シャッタや電子アイリスを制御する。なお、絞り兼用のレンズシャッタを設けて機械的にシャッタ及び絞りを制御してもよい。
【0030】
CPU27は、変倍操作部22から得られる信号に基づいて変倍駆動部45を制御して撮影レンズ15の焦点距離を変更する。変倍位置検出部46は、撮影レンズ15のレンズ位置を検出して変倍位置の情報をCPU27にフィードバックする。
【0031】
CPU27は、画像表示制御部47と、タイマ回路48とを有する。画像表示制御部47は、変倍操作部22での変倍操作に応答して撮像素子30で撮像したスルー画像を画面12に外界の視野像に重ねて表示し、また、変倍操作部22での変倍操作を止めてからタイマ回路48で予め決めた一定時間を計時して、計時した一定時間を経過した後に画面12へのスルー画像の表示を停止する。なお、カメラボディ14に別に表示停止操作部を設け、表示停止操作部の操作に応答して画面12へのスルー画像の表示を停止するようにしてもよい。
【0032】
画像表示制御部47のスルー画像の表示は、変倍操作に応答して変化する撮像範囲に対応するサイズで表示する。なお、有機ELの場合、印加する電圧を制御することにより半透明の発光の状態でスルー画像を表示するのが、外界の視野像と重ねた時に見やすいため好適である。
【0033】
画像表示制御部47は、画面12を透して視認される外界の視野像の中での撮像範囲、すなわちスルー画像を表示する範囲以外にマスク画像を表示して不透明状態にする。
【0034】
ここで、スルー画像を表示する場合には、画面12上での撮像範囲のサイズ、及び位置を特定するために、撮像範囲に対応する撮像画角、撮像素子30の有効画面サイズ、及び画面12に対する撮影者の目の位置(画面12と目との間の距離、及び高さ方向での位置)の情報を把握する必要がある。ここで、画面12に対する撮影者の目の位置は、予め決めた位置に定めている。撮像素子30の有効画面サイズは、予め決められている。撮像画角は、その時点の撮影レンズ15の焦点距離から求まる。マスク画像は、スルー画像を表示する範囲に対応する対角画角が撮像画角(対角画角)に一致するように作成される。
【0035】
これにより、図5に示すように、撮影レンズ15がワイド端の時には、スルー画像50が画面12に対して大きな範囲で表示され、これからテレ端に向けて変倍をしてゆくにつれてスルー画像の表示サイズが小さくなっていく。これにより、画面12を所定の位置から視認すれば、画面12を透して視認される外界の視野像とスルー画像50とを略同じ倍率で視認することができる。なお、符号51は、マスク画像を示している。
【0036】
スルー画像50の表示を停止した後には、マスク画像51のみが表示されることになる。このマスク画像51の中のマスクされていない一画面12aを透して外界の視野像を覗く。しかし、一画面12aのサイズがあまりにも小さいと、外界の視野像を視認し難い。そこで、テレ端とワイド端との間の変倍域のうちテレ端を含む所定の変倍域に撮影レンズ15が変倍することに応じて、スルー画像50を画面12に拡大して表示する。なお、画面12いっぱいに拡大して表示してもよい。
【0037】
次に上記構成の作用を、図6を参照しながら説明する。電子カメラ10の不使用状態では、シースルー表示部11が収納位置の状態になっている。この状態で、シースルー表示部11がカメラボディ14の外形輪郭内に完全に収納されるため、携帯し易い。
【0038】
撮影する場合には、電源スイッチ18をオンするし(S−1)、シースルー表示部11を起立位置に回転させる(S−2)。撮影レンズ15は、電源スイッチ18のオンに応答してレンズ鏡筒16の内部に収納される沈胴位置から繰り出されてワイド端の変倍位置になる。位置検出部26は、シースルー表示部11の起立位置への移動を検知し、その旨の信号をCPU27に送る。これにより、CPU27は、変倍時にシースルー表示部11にスルー画像を出力することを許容する。
【0039】
CPU27は、電源スイッチ18のオンに応答して、撮影レンズ15、及び撮像素子30を通じて画像信号を連続的に取り込み、取り込んだ画像信号をデジタルの画像データに変換し、変換した画像データをASIC34で各種画像処理を施してからSDRAM36に格納している。
【0040】
この間、CPU26は、AE・AF検出回路43で検出したコントラストに応じて撮影レンズ15を大まかなピッチで移動させて撮像画像の中央の被写体にピントが合うように各部を制御し、また、AE・AF検出回路43で検出した被写体輝度に応じた露出値になるように電子シャッタ及び電子アイリスを制御している
この時点では、撮影レンズの変倍位置がワイド端となっているので、図5で説明したように、画面12の中のマスク画像により画定される一画面12aが大きなサイズになっている。撮影者は、一画面12aを透して外界の視野像を視認しながらフレーミングを行う。これにより、実際の視野像を見ながらフレーミングを行うことができるので、例えばリアルタイムで撮影を行うことができる。
【0041】
変倍操作をする場合には(S−3)、画像表示制御部47が変倍操作部22での操作に応答してスルー画像を一定時間だけ画面12に表示する。ここで、画像表示制御部47は、図5に示すように、変倍中、又は変倍後の撮影レンズ15の変倍位置が、ワイド端と第1変倍位置(ワイド端とテレ端との間の変倍位置)との間の通常変倍域に含まれる変倍位置であるか、あるいは第1変倍位置から1ステップテレ側に寄った第2変倍位置とテレ端との間の所定の変倍域に含まれる変倍位置であるかを判定する(S−4)。
【0042】
画像表示制御部47は、通常変倍域に含まれる変倍位置の場合、画面12の上での撮像範囲に対応する範囲以外にマスク画像51を表示して不透明状態にし、マスク画像51で画定される一画面12aのサイズでスルー画像50を表示する(S−6)。このスルー画像の表示は、変倍操作が終了してから所定時間経過後に停止される(S−7,S−8)。
【0043】
この間、外界の視野像がスルー画像50と略同じ像倍率になるように、画面12に対しる顔の位置や腕の伸ばし量等を変えて画面12の位置を調節する。つまり、スルー画像50の表示は、撮影者の目の位置に対して、外界の視野像に重なる最適な位置に画面12を合わせるための一時的な案内の作用をなす。これにより、スルー画像50の表示が停止した後もその姿勢を維持することで、一画面12aを撮像範囲に一致した状態でフレーミングを行うことができる。
【0044】
画像表示制御部47は、所定の変倍域に含まれる変倍位置の場合、変倍操作に応答して変化する撮像範囲に対応するサイズ(一画面12aのサイズ)よりも拡大してスルー画像50を画面12に表示する(S−5)。そして、画像表示制御部47は、変倍操作を止めてから所定時間経過後にそのスルー画像50の表示を停止する(S−7,S−8)。
【0045】
所定の変倍域に含まれる変倍位置の場合も、所定時間経過後にスルー画像50の拡大表示が停止される。その後、マスク画像51が表示され、テレ側の変倍位置の撮像範囲に対応する一画面12aが画定される。この一画面12aは、変倍位置がテレ側であるので、小さい範囲となっている。この小さな一画面12aを透して外界の視野像が見え難い時には、再び変倍操作を行ってスルー画像50を画面12に拡大して表示させればよい。
【0046】
なお、所定の変倍域に含まれる変倍位置の場合、主要被写体が一画面12a(撮像範囲)から外れることが多い。そこで、スルー画像50の表示を止めた後に、マスク画像に代えて撮像範囲を示す枠画像を表示して、主要被写体が一画面12aから外れてもその外の画面を透して視認することができるように構成してもよい。また、所定の変倍域に含まれる変倍位置の場合、画像表示制御部47は、スルー画像50の表示を停止しないように構成してもよい。
【0047】
撮影を行う場合には、レリーズボタン17を半押し操作する(S−9)。これに応答してCPU26は、AE・AF検出回路43を制御して細かいピント調節を行う等の撮影準備動作を行う(S−10)。そして、レリーズボタン17の全押し操作に応答して(S−11)、CPU26は、その時点にSDRAM36に記憶されている画像データを読み出してYC変換処理回路37で輝度信号Yと色差信号Cr,Cbとに変換し、その後、圧縮伸長処理回路38で圧縮処理を施してからメディアコントローラ39を介してメモリカード40に記録する撮影動作を行う(S−12)。
【0048】
シースルー表示部11を収納位置に回転すると、画面12を透して凹部21に設けた操作部の絵柄が視認される。シースルー表示部11は、起立位置の時に外界の視野像を見ていた面とは逆の面、すなわちタッチパネル25を設けた面が撮影者側に向いている。撮影者は、操作部の絵柄を見ながら操作対象の操作部の領域をタッチ操作することで、シースルー表示部11が収納位置でも起立位置の時と同じように操作を行うことができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、シースルー表示部11を収納位置に回転した状態では、スルー画像が表示されないが、図7に示すように、収納位置にあるシースルー表示部11にスルー画像50を表示するようにしてもよい。この場合、シースルー表示部11としては、凹部21側(奥側)に設けた画面(起立位置の時にスルー画像を表示する画面)12と、撮影者側(手前側)に設けた別の画面53とを有する両面発光有機ELパネルを用いる。収納位置の時には、スルー画像を画面53に表示する。スルー画像50を表示する範囲は、凹部21に設けた操作部22,24が視認される範囲外に表示すればよい。図7において、画面53の前面には、タッチパネル25が設けられている。CPU27は、タッチ操作が行われた領域を認識してその領域に対応する操作部と同じの操作が行えるように各部を制御する。また、図8に示すように、凹部21に設ける操作部と同じ絵柄の画像54を画面53に表示してもよい。
【0050】
上記各実施形態では、画面12に対する撮影者の目の位置は、予め決めた位置としているが、投光器及び受光器からなる撮影者距離検出手段をカメラボディ14の背面に設け、この手段で撮影者の目(顔)までの距離を検出して撮像範囲を決めてもよい。この場合、画面12に対する撮影者の目の位置については予め決めた位置とする。また、撮影者位置検出手段としてサブカメラをカメラボディ14の背面に設け、画面12の中央に対して撮影者の目(顔)の座標位置(上下左右の位置)をサブカメラから取得した画像に基づいて検出し、検出した座標位置に基づいて画面12上での撮像範囲を決めるようにしてもよい。勿論、撮影者距離検出手段と撮影者位置検出手段とを併用して撮像範囲を決めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 電子カメラ
11 シースルー表示部
12,52 画面
19 ヒンジ
21 凹部
22 変倍操作部
47 画像表示制御部
48 タイマ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変倍光学系により結像される外界の像を撮像する撮像手段と、
前記変倍光学系の焦点距離を変更するための変倍操作部と、
カメラボディの背面から覗いた時に前記外界の視野像が透けて見える画面を有するシースルー表示部と、
前記変倍操作部の変倍操作に応答して前記撮像手段で撮像したスルー画像を所定時間だけ前記画面に表示する画像表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、
前記変倍操作を止めてから予め決められた時間を計時するタイマ回路を備え、
前記画像表示制御手段は、前記タイマ回路で計時する時間を経過した後に前記画面へのスルー画像の表示を停止することを特徴とする電子カメラ。
【請求項3】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、
前記カメラボディに設けた表示停止操作部を備え、
前記画像表示制御手段は、前記表示停止操作部の操作に応答して前記画面へのスルー画像の表示を停止することを特徴とする電子カメラ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子カメラにおいて、
前記画像表示制御手段は、前記変倍操作部の操作に応答して変化する撮像範囲に対応するサイズで前記スルー画像を表示することを特徴とする電子カメラ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子カメラにおいて、
前記画像表示制御手段は、テレ端とワイド端との間の変倍域のうちの前記テレ端を含む所定の変倍域に前記変倍光学系が変倍することに応じて、前記スルー画像を拡大して前記画面に表示することを特徴とする電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102342(P2013−102342A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244588(P2011−244588)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】