説明

電子キーシステムのキー照合不成立通知装置

【課題】無線キー照合機能によるキー照合が不成立のときに、これをユーザに通知することができる電子キーシステムの他照合使用案内装置を提供する。
【解決手段】ワンプッシュエンジンスタートシステムを備える車両には、電源状態切り換えの操作系としてプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ22が備わる。このエンジンスイッチ22のスイッチノブ23は、通常のノーマルポジションから所定量飛び出すポップアップポジションに位置切り換え可能である。そして、車両と電子キーとの間で、車内照合が成立しなかったとき、スイッチノブ23をそれまでのノーマルポジションからポップアップポジションに切り換えて、車内照合不成立をユーザに通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーコードを電波発信する電子キーをキーとして使用し、この電子キーから受け付けたキーコードの正否を認証することによりキー照合を行う電子キーシステムのキー照合不成立通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両には、固有のキーコードを無線通信により車両に発信可能な電子キーを車両キーとして使用する電子キーシステムが搭載されている。この電子キーシステムでは、電子キーから発信されたキーコードを車両が受信すると、車両は電子キーのキーコードと、自身に予め登録されているキーコードとを照らし合わせてキー照合を行い、これらキーコードが一致してキー照合が成立すれば、例えば車両ドアロックの施解錠やエンジン始動が許可又は実行される。なお、この種の電子キーシステムは、例えば特許文献1等に開示されている。
【0003】
この電子キーシステムには、電子キーからキーコードを発信するに際して電子キー上でボタン操作を必要としない、つまりキーコード発信を自動で行うキー操作フリーシステムがある。キー操作フリーシステムでは、電子キーにキーコード発信を要求するリクエストを間欠的に車両から発信させ、電子キーがこのリクエストを受信すると、これに応答する形で電子キーがキーコードとしてIDコードを車両に向けて発信して、このIDコードで以てキー照合を実行させる。このキー操作フリーシステムは、車両と電子キーとの間の無線通信が例えば約数メートル程度の狭域通信をとり、しかも電子キーがキー内蔵の電池を駆動源として動作する形式、つまり電子キーが電池等の電源を必要とするシステムとなっている。
【0004】
また、このキー操作フリーシステムの一機能には、車内に設けられたエンジンスイッチを操作(プッシュ操作)するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムがある。このワンプッシュエンジンスタートシステムは、車内に入り込んだ電子キーと間でキー照合(所謂、車内照合)を行い、この車内照合が成立したことを条件に、ブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチがプッシュ操作されると、エンジンが始動するシステムである。なお、車内照合とは、車内に設置されたアンテナと電子キーとがキー照合を行う一照合機能のことである。
【0005】
ところで、この種のキー操作フリーシステムは、電子キーが電池を電源として動作するシステムである関係上、電子キーが電池切れになってしまうと車内照合を行うことができず、エンジンをかけることができない状況に陥ってしまう。そこで、車両及び電子キーには、電子キーが照合動作で電源を要しない一車内照合機能としてイモビライザーシステムが設けられている。このイモビライザーシステムでは、受信した駆動電波を基に起動してキーコード発信を発信可能なトランスポンダが電子キーに組み込まれている。また、車両には、トランスポンダ起動用の駆動電波を発信するアンテナとしてコイルアンテナが搭載されている。トランスポンダは、コイルアンテナとの間で例えば数十センチの近距離無線通信により無線通信が可能であって、例えば通信形式としてRFID(Radio Frequency IDentification)が使用されている。
【0006】
乗車したユーザがエンジンをかける場合、もし電子キーが電池切れに陥っているならば、ユーザは車内のコイルアンテナに電子キーをかざす状態をとる。このとき、コイルアンテナからはトランスポンダ起動用の駆動電波が微弱電波で発信されているので、トランスポンダがこの駆動電波を受信する状態をとって起動する。起動したトランスポンダは、自身が持つ固有のトランスポンダコードをキーコードとして車両に返信し、車両はアンテナコイルを介してトランスポンダコードを受信すると、このコードを用いたキー照合としてイモビライザー照合を行う。車両は、イモビライザー照合が成立したことを確認するとエンジン始動を許可する。
【特許文献1】特開2008−106548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電子キーが電池切れに陥って車内照合が成立しない場合、ユーザは実際にエンジンスイッチをプッシュ操作したとき、エンジンがかからない状態をとることを以てからでないと、車内照合が成立していないことを確認することができなかった。よって、電子キーが電池切れに陥って車内照合が成立しない場合には、エンジンスイッチの空押し操作という無駄な操作をユーザに科すことになるので、利便性がよくないという問題に繋がっていた。
【0008】
本発明の目的は、無線キー照合機能によるキー照合が不成立のときに、これをユーザに通知することができる電子キーシステムの他照合使用案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、本発明では、無線通信によりキーコードを受け付けて当該キーコードの正否を見る無線キー照合機能により、前記キーコードの発信元である電子キーとの間でキー照合を行い、当該キー照合が成立した際、当該電子キーの照合相手である物品に設けられた操作スイッチによる当該物品の電源状態の切り換え操作を許可する電子キーシステムのキー照合不成立通知装置において、前記操作スイッチのスイッチノブをノブ軸方向において位置切り換え可能で、しかも当該位置切り換え前後で同じ操作方向に当該スイッチノブを操作可能とするノブ軸方向位置切換機構と、前記キー照合が不成立の際、前記ノブ軸方向位置切換機構により前記スイッチノブを、初期ポジションから位置が切り換わった変位ポジションに位置させて、前記キー照合が不成立であることを前記スイッチノブの位置により通知する通知制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、例えば電子キーから発信されたキーコードを物品が受信すると、電子キーのキーコードと物品のキーコードとが照らし合わされてキー照合が行われ、これらキーコードが一致するとキー照合が成立する。そして、このようにキー照合が成立すれば、物品に設けられた操作スイッチを操作して物品の電源状態を切り換え操作することが可能となる。例えば、キー照合成立状況下において物品の電源状態がオフのときに操作スイッチが操作されると、それまで電源オフ状態をとっていた物品が電源オン状態をとるように動作する。
【0011】
ところで、この種の電子キー式の照合機能は、電子キーがキーコードを電波発信する動作をとるので、電子キーが電池等の電源を要して動作するものが多い。このため、もし仮に電子キーが電池切れになってしまうと、電子キーはキーコードの発信動作を行うことができなくなるので、この場合はこれ以外の代替照合でキー照合を成立させる行為をとることになる。しかし、電子キーが電池切れになったこと、即ち電子キーからキーコードが発信されずにキー照合が成立しないことは、目で実際に確認できるものではないので、ユーザにとっては、キー照合不成立を直ぐに判断することが難しい現状がある。
【0012】
しかし、本構成の場合には、例えば電子キーが電池切れになってキーコード発信が実行できずにキー照合が不成立となると、それまで初期ポジションをとっていたスイッチノブの位置が切り換わり、スイッチノブが変位ポジションの位置をとる。このため、ユーザは、変位ポジションをとったスイッチノブを見て、キー照合が不成立であることに直ぐに気付くことになる。よって、このようにキー照合不成立をスイッチノブの位置変位によりユーザに通知するようにすれば、キー照合不成立を簡単に知ることが可能となるので、利便性をよくすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記キー照合とは別系統の通信網でキーコードを受け付けて当該キーコードの正否を見る第2無線キー照合機能でも前記電子キーとキー照合が可能であり、前記第2無線キー照合機能における前記物品側のアンテナが前記操作スイッチに組み付けられた構成であって、前記通知制御手段は、前記キー照合が不成立の際、前記スイッチノブを前記変位ポジションに位置させることで、このときに前記キー照合機能の代替照合として使用する前記第2無線キー照合機能の前記物品側のアンテナ位置を案内することを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、もし電子キーが電池切れになって無線キー照合機能でキー照合を実行できない状況になった場合、この無線キー照合機能の代替照合として、例えば電子キー側で電源を要しない第2無線キー照合機能を、電子キー及び物品の間で実行することになる。また、この第2無線キー照合の物品側のアンテナは操作スイッチに組み付けられているので、第2無線キー照合機能でキー照合を実行する場合には、電子キーを操作スイッチの近傍に近づけて、電子キーから発信されるキーコードをこのアンテナに受け取らせる必要がある。
【0015】
ところで、本構成の場合、第2無線キー照合の物品側アンテナが操作スイッチに組み込まれているので、電子キー側で電源を要する無線キー照合が不成立となったときに操作スイッチのスイッチノブが変位ポジションをとれば、第2無線キー照合でキー照合を行うときの電子キーの近づけ先も、変位ポジションをとったスイッチノブで案内されることになる。このため、電子キーが電池切れのときに第2無線キー照合を代替照合として行う場合であっても、電子キーの近づけ先を直ぐに知ることが可能となり、更なる利便性向上に効果が高い。
【0016】
本発明では、前記変位ポジションは、前記スイッチノブが前記初期ポジションのときよりも飛び出した位置状態をとるポップアップポジションであることを要旨とする。
この構成によれば、キー照合が不成立の際、スイッチノブは初期ポジションに対して所定量だけ外に飛び出したポップアップポジションというユーザの目に留まり易い位置に位置が切り換わるので、キー照合が不成立であることを、より確実にユーザに気付かせることが可能となる。
【0017】
本発明では、前記無線キー照合は、電子キーからのキーコード発信を前記物品としての車両からのリクエストを基に自動で行うキー操作フリーシステムに準じた照合であり、しかも車内に設置されたアンテナを、当該照合の車両側のアンテナとして使用する車内照合であることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、車内照合が成立しない場合、その旨を操作スイッチのスイッチノブの位置によってユーザに通知することが可能となる。
本発明では、前記車両への人の乗り込み有無を検出する乗車検出手段と、車内の座席への人の着座有無を検出する着座検出手段とを備え、前記通知制御手段は、前記キー照合が不成立の際、前記乗車検出手段で前記車内への人の乗車を確認して、その後に前記着座検出手段で前記座席への人の着座を検出するという人の乗車動作を確認することを条件に、前記スイッチノブの前記変位ポジションへの切り換えを実行することを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、車内照合が不成立と判定されても、車内に人が乗車して座席に着座するという人の動き、即ち車両運転前の運転者であれば行うであろう行為が検出できなければ、スイッチノブの位置変位による車内照合不成立の通知は実行されない。よって、例えばただ単に車両ドアを開けて車内を覗き込むなど、運転者が運転意志のない状況下のときに、車内照合が不成立と認識されたとしても、このときは車内照合不成立の通知が実行されない。このため、スイッチノブの位置変位による車内照合不成立の通知を、より的確に実行することが可能となる。
【0020】
本発明では、前記キー照合が不成立の際、このキー照合不成立を前記スイッチノブの位置切り換えと連動して通知する連動通知手段を備えたことを要旨とする。
この構成によれば、キー照合が不成立の際、スイッチノブの位置切り換えのみならず、例えば照明等による連動通知手段によっても、キー照合不成立がユーザに通知される。このため、キー照合が不成立であること、つまりこれ以外の代替照合でキー照合を行う必要のあることを、より確実にユーザに通知することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無線キー照合機能によるキー照合が不成立のときに、これをユーザに通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した電子キーシステムの他照合使用案内装置の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、キーコードを無線通信により車両1に送り渡す電子キー2を車両キーとして使用する電子キーシステム3が搭載されている。この電子キーシステム3には、実際のキー操作を伴わずにドアロック施解錠やエンジン始動停止等の車両操作を行うことが可能なキー操作フリーシステム4が搭載されている。キー操作フリーシステム4は、同システムの電子キーである電子キー2からのIDコード(キーコード)のコード発信をユーザの意志によらず自動で行わせ、車両1と電子キー2との間でIDコードを照らし合わせてID照合を実行し、両IDコードが一致してキー認証が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動が許可又は実行される。なお、車両1が物品に相当し、キー操作フリーシステム4が無線キー照合機能に相当する。
【0023】
キー操作フリーシステム4には、ドアロック施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムがある。このようなスマートエントリーシステムでは、車両1に、電子キー2との間で狭域無線通信によりID照合を行うコントローラとして照合ECU(Electronic Control Unit)5が設けられている。また、車両1には、車外にLF(Low frequency)帯の信号を発信可能な車外LF発信機6と、車内に同じLF帯の信号を発信可能な車内LF発信機7と、電子キー2が発信するRF(Radio Frequency)帯の信号を受信可能なRF受信機8とが設けられている。また、照合ECU5には、ドアロック施解錠を制御するドアECU9が車内LAN(Local Area Network)10を介して接続されている。このドアECU9には、ドアロック施解錠時の駆動源としてドアロックモータ11が接続されている。なお、車内LF発信機7が車両側のアンテナに相当する。
【0024】
また、電子キー2には、電子キー2の各種動作を統括制御する通信制御部12が設けられている。この通信制御部12は、CPU13やメモリ14等の各種デバイスを持ち、電子キー2が持つ固有のキーコードとしてIDコードがメモリ14に登録されている。通信制御部12には、LF帯の無線信号を受信可能なLF受信機15と、RF帯の無線信号を発信可能なRF発信機16とが接続されている。通信制御部12は、LF受信機15でどの種の無線信号を受け付けたか否かを逐次監視するとともに、RF発信機16からの信号発信の動作を管理する。
【0025】
車両1が駐車状態(エンジン停止及びドアロック施錠状態)の際、照合ECU5は、車外LF発信機6からLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させ、車両周辺にリクエスト信号Srqの車外通信エリアを形成して、無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立を試みる。電子キー2がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ14に登録されたIDコードを乗せたID信号SidをRF帯の信号で返信する。照合ECU5は、RF受信機8でID信号Sidを受信してスマート通信が確立すると、自身のメモリ17に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車外照合)を行う。照合ECU5は、この車外照合が成立したことを認識すると、メモリ17に車外照合フラグを一定時間の間において立てて、車外ドアハンドルノブ18に埋設されたタッチセンサ19をその期間の間において起動させる。照合ECU5は、ドアロック施錠時に車外ドアハンドルノブ18がタッチ操作されたことを起動中のタッチセンサ19で検出すると、ドアロック解錠要求をドアECU9に出力する。ドアECU9は、ドアロック施錠時にこのドアロック解錠要求を受け付けると、ドアロックモータ11を駆動して施錠状態のドアロックを解錠する。
【0026】
一方、車両1が停止状態(エンジン停止及びドアロック解錠状態)の際、照合ECU5は、車外ドアハンドルノブ18に設けられたロックボタン20が押し操作されたことを検出すると、車外LF発信機6からリクエスト信号Srqを発信させる。照合ECU5は、このリクエスト信号Srqを受けて電子キー2が返信してきたID信号Sidにおいて車外照合が成立したことを認識すると、ドアECU10にドアロック施錠要求を出力する。ドアECU9は、ドアロック解錠時にこのドアロック施錠要求を受け付けると、ドアロックモータ11を駆動して解錠状態のドアロックを施錠する。
【0027】
また、キー操作フリーシステム4には、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン21の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。このようなワンプッシュエンジンスタートシステムでは、車両1の運転席に、車両1の電源状態(電源ポジション)を切り換えるスイッチ機能が割り当てられたエンジンスイッチ22が設けられている。このエンジンスイッチ22には、同スイッチ22の操作ノブとしてスイッチノブ23が設けられ、このスイッチノブ23がプッシュモーメンタリ式をとっている。なお、エンジンスイッチ22が操作スイッチに相当する。
【0028】
また、車両1には、エンジン21の点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU24と、シフトレバーのレンジ位置を監視するシフトECU25と、車載電装品の電源管理を行う電源ECU26とが設けられている。これらECU24〜26は、車内LAN11を通じて照合ECU5等の各種ECUに接続されている。電源ECU26には、各種車載アクセサリに繋がるACC(Accessory)リレー27と、車両ボディ系や走行系の各種電装品に繋がる第1IG(Ignition)リレー28と、エンジンECU24やスタータモータに繋がる第2IGリレー29とが接続されている。なお、電源ECU26が通知制御手段に相当する。
【0029】
照合ECU5は、車外照合が成立してドアロックが解錠された後、例えばカーテシスイッチ30でドアが開けられて運転者が乗車したことを認識すると、車内LF発信機7からリクエスト信号Sr qを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU5は、電子キー2がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号SidをRF受信機8で受信すると、自身に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。照合ECU5は、この車内照合が成立すると、メモリ17に車内照合成立フラグを立てて車内照合成立を認識する。なお、カーテシスイッチ30が乗車検出手段を構成する。
【0030】
電源ECU26は、エンジン21が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ22が操作(プッシュ操作)されたことを検出すると、車内照合成立を条件として、3つのリレー27〜29を全てオンして車両1の電源状態をエンジンスタート状態に切り換える。なお、電源ECU26は、車内照合成立確認の際にこれが成立していなければ、照合ECU5に車内照合を再実行させ、車内照合成立の有無を今一度確認する。第2IGリレー29がオンして起動状態をとったエンジンECU24は、車内照合結果の確認と、照合ECU5が自身とペアを成すものかを確認するペアリングとを暗号化通信により行う。これら両条件の確認を済ませたエンジンECU24は、点火制御及び燃料噴射制御を開始してエンジン21を始動する。一方、電源ECU26は、エンジン21が稼働中の際にエンジンスイッチ22が押圧操作されたことを検出すると、シフトレバーのレンジ位置が駐車レンジ(Pレンジ)にあること(即ち、車両1が停止(車速「0」)していること)を条件に3つのリレー27〜29を全てオフ状態にして、エンジン21を停止状態にする。
【0031】
一方、電源ECU26は、エンジン21が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作されずにエンジンスイッチ22のみが操作(プッシュ操作)されたことを検出すると、車内照合成立を条件としつつ、しかもシフトレバーのレンジが駐車レンジ(Pレンジ)にあれば、エンジンスイッチ22がプッシュ操作される度に、操作一回りの間において電源状態をオフ状態(3リレー27〜29が全てオフ状態)→ACCオン状態(ACCリレー27がオン状態)→IGオン状態(第1IGリレー28がオン状態)の間で順に切り換える。
【0032】
また、車両1には、電子キーシステム3の一種として、スマート通信とは別系統の通信網で電子キー2とキー照合を行うイモビライザーシステム31が搭載されている。イモビライザーシステムは、近距離無線通信(以降、イモビライザー通信と記す)が用いられ、本例は例えばRFID(Radio Frequency IDentification)が使用されている。このイモビライザーシステム31では、車両1に、同イモビライザーシステム31を統括制御するイモビライザーECU32が設けられている。このイモビライザーECU32は、車内LAN11を介して照合ECU5に接続されている。イモビライザーECU32には、イモビライザーシステム31の車両側におけるアンテナとしてコイル式のイモビアンテナ33が接続されている。このイモビアンテナ33は、例えばエンジンスイッチ22の周辺に巻回された取り付け状態をとり、本例はLF帯の信号を送受信可能となっている。なお、イモビライザーシステム31が第2無線キー照合機能に相当し、イモビアンテナ33が物品側のアンテナに相当する。
【0033】
一方、電子キー2には、イモビライザーシステム31における電子キー2側のID登録先としてトランスポンダ34が内蔵されている。トランスポンダ34は、イモビアンテナ33から発信された駆動電波Skdを受信すると、この駆動電波Skdによって駆動を開始し、自身の固有コードであるトランスポンダコード(キーコード)を乗せたイモビ信号Strを車両1に向けて発信する。イモビライザーECU32は、このイモビ信号Strをイモビアンテナ33で受信すると、このイモビ信号Strによりイモビライザー照合を行い、この照合が成立すればエンジン始動を許可する。なお、近距離無線通信とは、スマート通信よりも通信エリアが狭い無線通信のことを言い、実際にはイモビアンテナ33にトランスポンダ34をかざす程度に近づける必要のある無線通信である。
【0034】
電源ECU26は、運転者によりエンジンスイッチ22がプッシュ操作されてエンジン21が始動操作された際、車内照合及びイモビライザー照合のうち少なくとも一方が成立していることを以て、エンジン始動動作、即ち電源状態のエンジンスタート状態への切り換え動作に入る。これは、電子キー2が電池駆動式であることから、電池切れになると電子キー2はスマート通信を実行することができなくなるので、もし仮に電子キー2が電池切れとなっても、無線通信によるID照合成立条件下でエンジン21を始動できるようにするためである。
【0035】
図2〜図4に示すように、本例のワンプッシュエンジンスタートシステムには、車内照合(スマート照合)が不成立のときにエンジンスイッチ22のスイッチノブ23がノブ周囲に対して所定量だけポップアップして、スマート照合以外の他の代替照合の実行をユーザに要求する代替照合実行要求機能が設けられている。これは、例えば電子キー2が電池切れになって車内照合(スマート照合)が成立しない場合には、このスマート通信に準じた車内照合に代えてイモビライザー照合でキー照合を実行する必要があり、しかもイモビライザー照合の車両側アンテナであるイモビアンテナ33がエンジンスイッチ22に組み込まれていることから、イモビライザー照合での照合が必要なときにスイッチノブ23をポップアップさせれば、ユーザに電子キー2のかざし行為を誘発させつつ、しかも電子キー2をそのかざし位置に案内できるためである。
【0036】
この場合、エンジンスイッチ22には、スイッチノブ23のポップアップ動作を許容するノブ位置切換機構35が設けられている。ノブ位置切換機構35は、車内照合が成立する状態をとるとき、車内照合成立を通知すべくスイッチノブ23をノーマルポジション、即ち図2及び図5に示すようにノブ表面がノブ周囲面と面一状態をとった状態に位置させる。一方、ノブ位置切換機構35は、車内照合が不成立の状態をとるとき、車内照合不成立を通知すべく、スイッチノブ23をポップアップポジション、即ち図3及び図6に示すようにスイッチノブ23がノブ周囲面から所定量だけ押し上がった状態に位置させる。なお、ノブ位置切換機構35がノブ軸方向位置切換機構に相当し、ノーマルポジションが初期ポジションに相当し、変位ポジションがポップアップポジションに相当する。
【0037】
エンジンスイッチ22には、同スイッチ22のケースとしてスイッチケース36が設けられている。このスイッチケース36の背面には、例えば複数の接続ピン37,37…を持つコネクタ38が設けられている。また、スイッチケース36には、スイッチノブ23のノブ軸方向(図2の矢印A方向)に沿って深さを有するノブ収納部39が貫設されている。スイッチノブ23は、このノブ収納部39内においてプッシュ操作方向に沿って往復動可能な状態、つまりプッシュ操作可能な状態で収納されている。スイッチノブ23には、ノブ本体部分を形成するホルダ部40と、ホルダ部40の先端に取り付けられるとともに裏面無底筒形状をなしたノブ部41とが設けられている。
【0038】
また、スイッチケース36とホルダ部40との間には、プッシュ操作したスイッチノブ23から手を離すと、スイッチノブ23を元の操作開始位置に自動復帰させるプッシュ側モーメンタリ機構42が設けられている。このプッシュ側モーメンタリ機構42では、スイッチケース36とホルダ部40との間に、スイッチノブ23を押し出し方向に常時付勢するノブ付勢部材43が介装されている。また、スイッチケース36の内部において開口寄りの位置には、スイッチノブ23をポップアップポジションで位置決めするノブガイド44が立設されている。なお、このノブガイド44は、スイッチノブ23がノブ付勢部材43の付勢力によりノブ収納部39から抜け出てしまうことを防ぐ抜け止めとしても働く。
【0039】
スイッチケース36の内部においてスイッチノブ23の径方向(図2の矢印B方向)外側寄りの位置には、エンジンスイッチ22の各種電装部品の実装先として基板45が設けられている。基板45には、スイッチノブ23をポップアップさせるときの駆動源としてソレノイド46が設けられている。このソレノイド46は、スイッチケース36のコネクタ38を介して電源ECU26に接続され、動作が電源ECU26によって管理されている。また、本例のソレノイド46は、プッシュプルソレノイドからなり、可動レバー47がプッシュ状態又はプル状態の2状態をとる。ソレノイド46は、可動レバー47がプッシュ状態又はプル状態をとるときに各々の状態で位置を保持可能であって、可動レバー47を動かすときにのみ電力を必要とする。
【0040】
また、可動レバー47の先端には、例えば板形状をなすストッパ48が固着されている。一方、スイッチノブ23のホルダ部40には、ストッパ48の押し付け先として例えば片形状をなした規制部49が設けられている。本例の場合、ソレノイド46がプッシュ状態をとると、ストッパ48が規制部49をノブ付勢部材43の付勢力に抗して奥に押し込むことにより、スイッチノブ23がノーマルポジション(図2及び図5参照)をとる。一方、ソレノイド46がプル状態をとると、ストッパ48による規制部49の押し付けが外れてスイッチノブ23がノブ付勢部材43付勢力で手前に飛び出すことが許容されて、スイッチノブ23がポップアップポジション(図3及び図6参照)をとる。
【0041】
図2〜図4、図6に示すように、エンジンスイッチ22のノブ周りには、車内照合が不成立のときにその旨を通知するノブ照明部50が設けられている。基板45には、このノブ照明部50の光源としてノブ光源51が実装されている。ノブ光源51は、例えばLEDからなるとともに、コネクタ38を介して電源ECU26に接続されている。また、ノブ部41の裏面には、ノブ光源51の照射光をノブ部41側に送るライトガイド52が設けられている。このライトガイド52は、ノブ部41の裏面収納部41aに嵌め込まれた取り付け状態をとる円板形状のガイド本体53と、このガイド本体53からスイッチノブ23のノブ軸方向に沿って延びるガイド片54とからなる。ガイド片54は、例えば細長い板形状をなすとともに、ガイド本体53(ノブ部41)の中心に対して偏心する位置に取り付けられている。なお、ノブ照明部50が連動通知手段に相当する。
【0042】
また、ノブ部41は、基材が透明樹脂からなるとともに、外表面(前面)に塗装が施されることにより、ノブ表面が色付きの意匠面55となり、ノブ周囲が光透過可能な光照射部56となっている。ノブ光源51は、スイッチノブ23がポップアップポジションにあるときに点滅(点灯も可)し、その照射光がライトガイド52を伝ってノブ周囲の光照射部56から外部に露光することで、スイッチノブ23がポップアップポジションに位置することをユーザ(運転者)に通知する。
【0043】
基板45には、スイッチノブ23のプッシュ操作有無を検出する磁気センサ57が実装されている。一方、ライトガイド52には、磁気センサ57に対してノブ軸方向にオフセットする位置(ずれた位置)に例えば永久磁石からなるマグネット58が取り付けられている。磁気センサ57は、マグネット58が発生する磁界を検出することにより、スイッチノブ23のプッシュ操作有無を検出するものであって、検出磁界に応じたセンサ信号を、コネクタ38を介して電源ECU26に出力する。磁気センサ57は、スイッチノブ23がプッシュ操作された状態(図4の状態)とき、マグネット58の磁界を検出してHレベルの信号を出力し、スイッチノブ23がプッシュ操作されていないとき、マグネット58の磁界を検出せずにLレベルの信号を出力する。
【0044】
また、図1に示すように、車両1には、座席(運転席)に対する人の着座有無を検出する着座センサ59が設けられている。この着座センサ59は、例えば荷重センサからなり、着座の検出有無に応じた検出信号を電源ECU26に出力する。例えば、着座センサ59は、荷重が閾値を超えて座席に人が着座したことを検出すると、それまでのLレベル信号に代えてHレベル信号を電源ECU26に出力し、座席に人が着座したことを電源ECU26に通知する。なお、着座センサ59が着座検出手段に相当する。
【0045】
さらに、ドアECU9には、車両ドアロックの施解錠を検出するドアロック施解錠検出部60が接続されている。このドアロック施解錠検出部60は、車両ドアロックが施錠状態及び解錠状態のどちらにあるのかをドアECU9に通知するもので、例えば磁気センサとマグネットとを使用した磁気式をとっている。ドアECU9は、この車両ドアロックが施錠又は解錠のどちらにあるのかの通知を、これを必要とする他のECUに車内LAN10を介して出力可能となっている。なお、ドアロック施解錠検出部60が乗車検出手段を構成する。
【0046】
電源ECU26は、車内照合が不成立を認識した際、車内に人が乗車して着座するという人の動きを確認したとき、つまり車両ドアロックが解錠されて車両ドアが開けられ、その後、運転者が運手席に着座したことを確認したときに、スイッチノブ23をポップアップポジションに切り換えることによる車内照合不成立通知を実行する。なお、車両ドアロック解錠は、車外照合成立状況下でタッチセンサ19を操作して行う電気操作式と、車両ドアに設置されたドアロック用キーシリンダ(図示略)にメカニカルキーを挿し込んでこれを回すことで行う機械操作式とがある。また、車両ドアロックの施錠はドアロック施解錠検出部60で確認し、車両ドアの開操作はカーテシスイッチ30で確認し、運転席への運転者の着座は着座センサ59で確認する。
【0047】
次に、本例のワンプッシュエンジンスタートシステムの動作について図7の動作表を基に説明する。
まずは、電子キー2が電池切れになっていない状態を想定する。照合ECU5は、カーテシスイッチ30でドア開を検出すると、ユーザ(運転者)が車内への乗車を試みようとしていると認識し、車内LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信して車内照合(スマート照合)を実行する。そして、照合ECU5は、車内照合が成立したことを確認すると、例えば自身のメモリ17に車内照合成立フラグを立てるなどして、車内照合が成立したことを認識する。照合ECU5は、車内照合が成立したことを確認すると、例えば車内LAN10を介して電源ECU26に起動開始要求を送って、それまで待機状態をとっていた電源ECU26を起動させる。
【0048】
なお、電源ECU26は、例えば車載バッテリが切れて電気が全く供給されていない停止状態と、車載バッテリと電気的に接続された状態をとって少なくとも車内照合の成立のみは確認可能な待機状態と、各リレー27〜29やソレノイド46やノブ光源51を駆動可動な起動状態との3状態をとる。電源ECU26は、待機状態をとるときに電源ECU26から起動開始要求を受け付けて起動状態を新たにとると、まずは車両1の電源状態を電源オフ状態に設定する。即ち、電源ECU26は、自身が起動状態をとるものの、3つのリレー27〜29については全てオフのままで維持する。
【0049】
また、電源ECU26は、車内照合が成立したことをスイッチノブ23のポジションでユーザに通知すべく、ノブポジションをノーマルポジションに設定する。なお、電源ECU26は、自身が待機状態をとっているとき、スイッチノブ23をノーマルポジションに位置させているので、車内照合が成立することを確認したとき、スイッチノブ23をこれまでの位置状態、つまりノーマルポジションの位置で保持する。このとき、電源ECU26は、ソレノイド46をプッシュ状態にして可動レバー47のストッパ48を奥に押し出し、ノブ収納部39の奥に入り込んだホルダ部40がノブ付勢部材43の付勢力で手前側に飛び出すことをこのストッパ48で規制する。これにより、スイッチノブ23がノーマルポジションに位置し、車内照合が成立したことがスイッチノブ23の位置によりユーザに通知される。
【0050】
また、電源ECU26は、車内照合の成立結果を、スイッチノブ23のノブポジションだけでなく、ノブ照明部50の照明によってもユーザに通知する。電源ECU26は、車内照合が成立することを確認した際、その旨をノブ照明部50でもユーザに通知すべく、ノブ照明部50を消灯させる。なお、電源ECU26は、自身が待機状態をとっているとき、ノブ照明部50を消灯させているので、車内照合の成立を確認した際、ノブ照明部50をそのままの消灯状態で維持する。
【0051】
続いて、例えば電子キー2による車外照合で車両ドアの解錠は実行できたものの、車両ドアを開けて乗車する過程で電子キー2が電池切れになって車内照合が成立しない場合を想定する。照合ECU5は、カーテシスイッチ30でドア開を検出すると、車内LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信する動作を開始して、車内照合が成立するか否かを確認する。ここで、この場合は電子キー2が電池切れになっている状況を想定しているので、照合ECU5は車内LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信しても、本来ならばこのリクエスト信号Srqに応答して返してくるはずのID信号Sidが電子キー2から発信されず、ID信号SidをRF受信機8で受信することができない。
【0052】
照合ECU5は、車内LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信する動作を開始してから一定時間の間に、ID信号SidをRF受信機8で受信することができなければ、車内照合が不成立であると認識する。照合ECU5は、車内照合が不成立であることを確認すると、車内LAN10を介して車内照合不成立通知を電源ECU26に出力する。電源ECU26は、この車内照合不成立通知を受け付けると、待機状態から起動状態に切り換わり、電子キー2のかざし位置をユーザに通知する動作を実行する。
【0053】
電源ECU26は、照合ECU5から車内照合不成立通知を受け付けると、この乗車過程の際に車両ドアを解錠して同ドアを開け、その後、車内に人が乗車して座席に着座するという一連の乗車行為が運転者によりとられたか否かを確認する。なお、ここでは、運転者が座席に着座した後に、車内照合が完了する場合を想定している。電源ECU26は、車両ドアロック解除と車両ドア開操作と運転席への着差とを、車両ドアロック解除検出→車両ドア開操作検出→着座検出という検出順序で検出できたことを確認すると、一連の乗車行為が運転者によってとられたと認識し、スイッチノブ23のポップアップポジションによる車内照合不成立通知の動作を実行する。
【0054】
一方、電源ECU26は、車内照合不成立を認識した際、正規順序での乗車行為を確認できていないと、スイッチノブ23のポップアップポジションによる車内照合不成立通知の動作は実行しない。これは、例えばただ単に車内を覗き込むときなどを想定しており、このときはユーザに対して車内照合不成立の通知を行っても意味がないからである。また、例えば車内照合不成立が確認できた後に運転者が座席に着座する場合も想定されるので、このときは車内照合不成立の確認が得られてからの一定時間の間に、正規順序での検出結果が得られるか否かを見ることによって対応する。
【0055】
電源ECU26は、車内照合不成立通知を実行する場合、ソレノイド46をそれまでのプッシュ状態からプル状態に切り換えて、スイッチノブ23をそれまでのノーマルポジションからポップアップポジションに切り換える。このとき、電源ECU26は、車内照合不成立の確認タイミング(車内照合不成立通知の受け付けタイミング)でソレノイド46をプル状態にして可動レバー47のストッパ48を手前に引き込み、このストッパ48によるホルダ部40の位置規制を解除する。これにより、スイッチノブ23がノブ付勢部材43の付勢力によって手前側に飛び出し、スイッチノブ23のノブ軸方向中間位置に形成された段部40aがノブガイド44に当接してそれ以上の飛び出しが規制されて、スイッチノブ23がポップアップポジションに位置する。よって、車内照合が不成立であることがスイッチノブ23のノブポジションにより通知される。
【0056】
また、電源ECU26は、車内照合の不成立を確認した際、その旨をノブ照明部50でもユーザに通知すべく、車内照合不成立の確認タイミング(車内照合不成立通知の受け付けタイミング)でノブ光源51をそれまでの消灯状態から点灯状態に切り換える。このとき、スイッチノブ23はポップアップポジションをとるので、ノブ照明部50がノブ収納部39から飛び出して露出する状態をとる。よって、ノブ光源51からライトガイド52を伝ってノブ照明部50まで至った光は、ノブ周囲から一段高く持ち上がったスイッチノブ23のノブ全周からノブ外部に露光する状態をとる。これにより、車内照合が不成立であることがノブ照明部50の照明によってもユーザに通知される。
【0057】
よって、スイッチノブ23がポップアップポジションをとることと、ノブ照明部50が点滅状態をとることとを以て、車内照合の代替照合をイモビライザー照合で行わなくてはいけないことと、このときの電子キー2のかざし位置とがユーザに通知される。よって、ユーザは電子キー2が電池切れになって車内照合が成立せずイモビライザー照合でキー照合を実行しなければいけないことを直ぐに気付き、しかも電子キー2のかざす位置が直ぐに分かることになる。なお、このときの車両1の電源状態は、3つのリレー27〜29が全てオフをとる電源オフ状態のままで維持される。
【0058】
そして、このスイッチノブ23のノブ位置とノブ照明部50の点滅とに従って、電子キー2がエンジンスイッチ22にかざされると、電子キー2とイモビアンテナ33との間でイモビライザー照合が実行される。電源ECU26は、このイモビライザー照合が成立することを確認すると、ソレノイド46をプル状態からプッシュ状態に切り換えて、スイッチノブ23を元のノーマルポジションに戻すとともに、それまで点滅状態をとっていたノブ照明部50を消灯させる。
【0059】
電源ECU26は、この電子キーかざし位置通知(スイッチノブポップアップ及び照明点滅)に制限時間を持ち、この通知を開始してからの経過時間を自身のタイマ61により計時する。そして、電源ECU26は、タイマ61の経過時間が一定時間を超えてタイムアップするとこの通知動作を終了する。このとき、電源ECU26は、ソレノイド46をこれまでのプル状態から元のプッシュ状態に切り換えて、可動レバー47のストッパ48でホルダ部40の規制部49をノブ付勢部材43の付勢力に抗して奥に押し込んで、スイッチノブ23を元のノーマルポジションに復帰させる。また、電源ECU26は、スイッチノブ23のノーマルポジションへの復帰とともに、ノブ照明部50をそれまでの点滅状態から消灯状態に切り換える。
【0060】
また、この点滅時間の管理は、このようなタイマ式に限定されず、車両ドアの開閉をトリガとするものでもよい。この場合、電源ECU26は、ノブ照明部50を点滅状態としているとき、例えば運転者が電子キー2を電池交換しに行くために降車すべく車両ドアが開閉されたことを検出すると、その時点でノブ照明部50を消灯させる。このとき、スイッチノブ23はポップアップポジションを維持してもよいし、或いは元のノーマルポジションに戻してもどちらでもよい。
【0061】
さて、本例においては、例えば電子キー2が電池切れとなって車内照合が成立しない状況下に陥った際、スイッチノブ23がそれまでのノーマルポジションからポップアップポジションをとって、車内照合が不成立であることがスイッチノブ23の位置によってユーザに通知される。スイッチノブ23をポップアップポジションにするというユーザが気付き易い形式で、車内照合が不成立の旨をユーザに通知することができる。また、このときの車内照合不成立時の代替照合として使用されるイモビライザー照合の車両側アンテナ(イモビアンテナ33)はエンジンスイッチ22に組み込まれているので、スイッチノブ23がポップアップポジションをとれば、電子キー2のかざし場所をユーザに案内できることにもなる。
【0062】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)例えば電子キー2が電池切れとなるなどして車内照合が成立しない場合、それまでノーマルポジションをとっていたスイッチノブ23をポップアップポジションに切り換えて、車内照合が不成立であることをスイッチノブ23の位置によりユーザに通知する。このため、ユーザはポップアップポジションをとったスイッチノブ23を見て、車内照合が成立しないことを直ぐに気付くことになる。よって、本例のように車内照合が不成立のときにスイッチノブ23をポップアップポジションに位置させるようにすれば、車内照合を簡単に知ることができ、これに伴って利便性の向上も図ることができる。また、このスイッチノブ23には、イモビライザー照合のイモビアンテナ33が組み込まれているので、このときの車内照合の代替照合にイモビライザー照合を行うに際して、電子キー2のかざし位置も案内できる。
【0063】
(2)車内照合が不成立の際、スイッチノブ23はノーマルポジションに対してノブ収納部39から所定量だけ外に飛び出したポップアップポジションというユーザの目に留まり易い位置に位置が切り換わる。このため、車内照合が不成立であることを、より確実にユーザに気付かせることができる。
【0064】
(3)スイッチノブ23のポップアップポジションによる車内照合不成立の通知は、正しく人が乗車して座席に着座するという人の動き、即ち車両ドアロックを開場してドアを開け、その後、運転席に着座するという乗車行為が検出されることを条件としている。このため、例えばただ単に車両ドアを開けて車内を覗き込むなど、運転者が運転意志のない状況下のときに車内照合が不成立となっても、このときはスイッチノブ23による車内照合不成立は通知されない。よって、スイッチノブ23のポジション切り換えによる車内照合不成立の通知を、より的確に実行することができる。
【0065】
(4)車内照合が不成立の際、この旨はスイッチノブ23のノブポジションのみならず、ノブ照明部50の照明(点滅)によっても通知される。このため、車内照合が不成立であることを、より確実にユーザに通知することができる。
【0066】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ 車内照合不成立時におけるスイッチノブ23のポップアップポジションへの切り換えは、必ずしも正規の乗車行為(車両ドアロック解除検出→車両ドア開操作検出→着座検出)があったことを条件とすることに限定されない。即ち、この正規乗車行為を実行条件とせずに、車内照合が成立しないことを確認できたタイミングで、スイッチノブ23をポップアップポジションに切り換えてもよい。
【0067】
・ 代替照合実行要求機能は、スイッチノブ23がそれまでのノーマルポジションから所定量だけ飛び出したポップアップポジションをとることにより、電源オン状態を通知する形式に限定されず、例えばスイッチノブ23がノーマルポジションから所定量だけ引き込む形式のものでもよい。
【0068】
・ 代替照合実行要求機能は、ノブ周囲と面一となったノーマルポジションを基準に、スイッチノブ23がポップアップする形式に限定されない。例えば、スイッチノブ23はノーマルポジションとしてノブ収納部39の奥に入り込んだ位置状態をとり、ポップアップポジションとしてノブ周囲と面一の状態をとるものでもよい。
【0069】
・ ノブ照明部50は、ノブ光源が必ずしもLEDであることに限らず、例えばランプを使用してもよい。また、ノブ光源51の光がノブ外部に直接放射可能であれば、ライトガイド52は省略してもよい。
【0070】
・ ノブ照明部50の照明状態は、必ずしも点滅状態に限らず、例えばノブ光源51がずっと光る点灯状態をとってもよい。
・ ノブ照明部50の形状は、必ずしもノブ周囲前面が光る形状に限らず、少なくともノブ周囲の一部から光が出るものであればよい。また、ノブ照明部50は、必ずしもノブ周囲が光るものに限らず、ノブ表面(前面)の全体又は一部が光るものでもよい。
【0071】
・ ノブ位置切換機構35の駆動源(アクチュエータ)は、必ずしもソレノイドに限定されず、例えばモータを使用してもよい。即ち、ノブ位置切換機構35は、実施形態に記載の構造のものに限定されず、プッシュ操作後のスイッチノブ23を元の操作開始位置に戻すことができるものであれば、機構種類は特に限定されない。
【0072】
・ ソレノイド46は、必ずしもノブ付勢部材43の付勢力に抗してスイッチノブ23を奥に押し込める、つまりスイッチノブ23をノーマルポジションに復帰させ得る駆動力を持つものでなくてもよい。この場合、車内照合不成立をポップアップポジションのスイッチノブ23で通知した際、この通知完了後、ノブポジションを元のノーマルポジションに戻すことができないが、スイッチノブ23がポップアップポジションのままの状態をとっていれば、この位置状態により、車内照合が前回成立しなかったことを通知することができる。
【0073】
・ スイッチノブ23のプッシュ操作有無を見る検出系は、必ずしも磁気センサに限定されず、例えば光センサを使用してもよい。また、この種の検出系は、磁気センサや光センサ等の無接点式に限らず、マイクロスイッチ等の有接点式を採用してもよい。
【0074】
・ 電源遷移機能で電源オフ状態の次段以降の電源状態は、必ずしもACCオン状態及びIGオン状態の2状態を持つことに限らず、これらを1状態に集約してもよい。
・ スイッチノブ23の電源状態切り換え操作の実行条件は、電子キーシステム3のキー照合成立を条件としているが、このキー照合は必ずしも車内照合に限らず、例えば車外照合を適用してもよい。また、スイッチノブ23の電源状態切り換え操作の実行条件は、必ずしもこの種の電子キーシステム3のキー照合成立を条件とすることに限らず、例えば生体認証等の他の照合(認証)を採用してもよい。
【0075】
・ 代替照合実行要求機能で通知する対象は、必ずしも車内照合であることに限らず、車外照合を適用してもよい。
・ 車両1の電源状態が電源オン状態であることをスイッチノブ23のノブポジション以外で視覚的に報知する場合、これは必ずしもスイッチノブ23に設けたノブ照明部50で実行することに限定されない。例えば、この種の視覚的報知を運転席のインストルメントパネルで表示してもよい。
【0076】
・ 車両1の電源状態が電源オン状態であることをスイッチノブ23のポジション以外で通知する場合、こればノブ照明部50による視覚的報知に限定されない。この報知は、例えば音声などの聴覚的報知を採用してもよい。
【0077】
・ スイッチノブ23による電源状態の切り換え操作は、必ずしもプッシュ操作に限定されず、例えばロータリ操作としてもよい。この場合、スイッチノブ23をロータリ操作して電源状態が電源オン状態をとったとき、スイッチノブ23がポップアップポジションに切り換わる動きをとる。
【0078】
・ エンジンスイッチ22の操作形式は、必ずしもプッシュ操作式やロータリ操作式に限定されず、例えばスイッチノブ23を横方向に操作するスライド式でもよい。即ち、スイッチノブ23の操作形式は、プッシュ操作式やロータリ操作式以外の他の形式を採用可能である。
【0079】
・ 電源オン状態通知機能は、必ずしもエンジン始動操作系のスイッチに設けることに限らず、車内の各種スイッチに適用可能である。また、電源オン状態通知機能の搭載先は、必ずしも車両に限定されず、操作スイッチを持つ各種機器や装置としてもよいことは言うまでもない。
【0080】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記操作スイッチは、前記物品としての車両のエンジンを始動又は停止するときに操作するエンジン始動停止用スイッチである。この構成によれば、操作スイッチを車両用のエンジン始動停止用スイッチとしたので、このスイッチの使用可否を、同スイッチのスイッチノブの位置によって通知することが可能となる。
【0081】
(2)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記操作スイッチは、前記物品としての車両に設置された車載電気部品の電源状態を切り換えるときに操作する車両電源状態切り換え用スイッチである。この構成によれば、操作スイッチを車両電源状態切り換え用スイッチとしたので、車両に搭載された各種操作スイッチに本例の技術を適用することが可能となる。
【0082】
(3)請求項1〜6,前記技術的思想(1),(2)のいずれかにおいて、前記ノブ軸方向位置切換機構は、前記スイッチノブのモーメンタリ機能を満たす付勢部材の付勢力によって元の操作開始のポジションに戻ろうとする当該スイッチノブの位置規制の場所を切り換えることにより、前記スイッチノブのノブ軸方向位置を切り換える。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】一実施形態における電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】ノブがノーマルポジションをとるときのエンジンスイッチの断面図。
【図3】ノブがポップアップポジションをとるときのエンジンスイッチの断面図。
【図4】ノブがプッシュ操作されたときのエンジンスイッチの断面図。
【図5】ノブがノーマルポジションをとるときのエンジンスイッチ周辺の斜視図。
【図6】ノブがポップアップポジションをとるときのエンジンスイッチ周辺の斜視図。
【図7】車内照合結果とスイッチノブポジションとの関係を示す表。
【符号の説明】
【0084】
1…物品としての車両、2…電子キー、3…電子キーシステム、4…無線キー照合機能としてのキー操作フリーシステム、7…車両側のアンテナとしての車内LF発信機、22…操作スイッチとしてのエンジンスイッチ、23…スイッチノブ、26…通知制御手段としての電源ECU、30…乗車検出手段を構成するカーテシスイッチ、31…第2無線キー照合機能としてのイモビライザーシステム、33…物品側のアンテナとしてのイモビアンテナ、35…ノブ軸方向位置切換機構としての位置切換機構、50…連動通知手段としてのノブ照明部、59…着座検出手段としての着座センサ、60…乗車検出手段を構成するドアロック施解錠検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信によりキーコードを受け付けて当該キーコードの正否を見る無線キー照合機能により、前記キーコードの発信元である電子キーとの間でキー照合を行い、当該キー照合が成立した際、当該電子キーの照合相手である物品に設けられた操作スイッチによる当該物品の電源状態の切り換え操作を許可する電子キーシステムのキー照合不成立通知装置において、
前記操作スイッチのスイッチノブをノブ軸方向において位置切り換え可能で、しかも当該位置切り換え前後で同じ操作方向に当該スイッチノブを操作可能とするノブ軸方向位置切換機構と、
前記キー照合が不成立の際、前記ノブ軸方向位置切換機構により前記スイッチノブを、初期ポジションから位置が切り換わった変位ポジションに位置させて、前記キー照合が不成立であることを前記スイッチノブの位置により通知する通知制御手段と
を備えたことを特徴とする電子キーシステムのキー照合不成立通知装置。
【請求項2】
前記キー照合とは別系統の通信網でキーコードを受け付けて当該キーコードの正否を見る第2無線キー照合機能でも前記電子キーとキー照合が可能であり、前記第2無線キー照合機能における前記物品側のアンテナが前記操作スイッチに組み付けられた構成であって、
前記通知制御手段は、前記キー照合が不成立の際、前記スイッチノブを前記変位ポジションに位置させることで、このときに前記キー照合機能の代替照合として使用する前記第2無線キー照合機能の前記物品側のアンテナ位置を案内することを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステムのキー照合不成立通知装置。
【請求項3】
前記変位ポジションは、前記スイッチノブが前記初期ポジションのときよりも飛び出した位置状態をとるポップアップポジションであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キーシステムのキー照合不成立通知装置。
【請求項4】
前記無線キー照合は、電子キーからのキーコード発信を前記物品としての車両からのリクエストを基に自動で行うキー操作フリーシステムに準じた照合であり、しかも車内に設置されたアンテナを、当該照合の車両側のアンテナとして使用する車内照合であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムのキー照合不成立通知装置。
【請求項5】
前記車両への人の乗り込み有無を検出する乗車検出手段と、
車内の座席への人の着座有無を検出する着座検出手段とを備え、
前記通知制御手段は、前記キー照合が不成立の際、前記乗車検出手段で前記車内への人の乗車を確認して、その後に前記着座検出手段で前記座席への人の着座を検出するという人の乗車動作を確認することを条件に、前記スイッチノブの前記変位ポジションへの切り換えを実行することを特徴とする請求項4に記載の電子キーシステムのキー照合不成立通知装置。
【請求項6】
前記キー照合が不成立の際、このキー照合不成立を前記スイッチノブの位置切り換えと連動して通知する連動通知手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キーシステムのキー照合不成立通知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−47052(P2010−47052A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210952(P2008−210952)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】