説明

電子デバイス用の改良電極のための組成物

ゲッターを含む導電性電極ペーストまたはインク組成物は、電子デバイス中の不要な不純物を除去するまたはその濃度を下げる。これらの低減は、デバイスの製造または密封の間またはその直後に生じてもよいし、それらはいくつかの活性化のときに生じてもよい。水、酸素、二酸化炭素、水素および残留溶媒がゲッタリングされる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明は、電子デバイスの向上した性能のためのゲッタリング種を含む導電性インクおよびペーストの組成物に関する。
【0002】
発明の背景
水、酸素、および不要な有機残留物は半導体デバイスの動作または実用寿命に有害でありうる。これは有機半導体に基づくデバイスたとえば有機発光デバイスまたは光応答デバイスに特に当てはまり、ここでは水または酸素が電極の劣化、またはデバイスの適切な機能にとって必要な能動発光材料、吸収材料、もしくは電荷移動材料の劣化をもたらしうる。一般に、電子デバイスは絶縁材料または半導体材料に加えて導電電極または分離された特徴部の設置を含む。典型的な有機発光デバイスまたは光応答デバイスの場合、活性半導体材料および/または発光材料、吸収材料もしくは電荷移動材料は、デバイス内の活性領域への電荷キャリアの注入またはそこからの電荷キャリアの取り出しを提供する導電電極に挟まれる。電子注入電極はカソードと呼ばれる。いくつかの有機発光デバイス、たとえば米国特許第6605483号で製造されたドープド有機発光デバイス構造体では、水または酸素バリア性を有することがある基板上に配置された下地を成す半透明の正孔注入アノード電極と、次に活性材料の層と、活性材料の表面に設置されこれに直接接触するカソード電極とによって、デバイスのスタックが形成される。いくつかの例では、次に、このデバイスを、カソードの表面上への薄いバリア層の堆積によって、またはこのデバイスを該デバイスのカソード側に固定されたバリア層および/または接着剤の使用によって密封することによってエンキャプシュレーションし、それによりデバイスを保護してアノード側のバリア基板膜および表面側のエンキャプシュレーションフィルムによってO2またはH2Oの侵入を制限する。このプロセスは、出発材料から存在しているまたは製作プロセス中にデバイスの内部に導入され、デバイス内の電極または活性材料と相互作用しうるO2、CO2、H2、H2O、または他の不要な種をトラップすることもできる。
【0003】
典型的な導電性ペースト成分は、金属フレーク、粒子、ナノ粒子、ナノチューブ、有機導電体、または高分子導電体でありうる導電材料自体に加え、残留水または不純物の供給源でありうる。たとえば、導電ペースト組成物は、残留水または他の不純物を含有しうるポリマーもしくは有機バインダ材料、たとえばポリエステル、ポリウレタン、導電ポリマー、ポリチオフェン、ポリアニリン、もしくはエポキシドをさらに含むことがあるし、またはそれはデバイス上に印刷されると残留する不要な不純物を攻撃、吸収もしくは生成することがある。インク中の不要な不純物の供給源でありうる他の材料としては、界面活性剤および添加剤、たとえばイオン性、非イオン性および両親媒性の薬品、ならびに粒子表面上のまたはインクもしくはペーストの非金属成分中に分散した不純物が挙げられる。
【0004】
発明の概要
本発明は、内包されたゲッターを使用して、導電性ペーストまたはインク組成物中に存在する、または堆積プロセス中もしくはデバイスのエンキャプシュレーションの前にペーストもしくは印刷された特徴部に導入される不要な不純物を除去するまたはその濃度を下げる。不要な不純物は、デバイスの動作中にも生じうるし、周囲からの物質の侵入によってデバイスに導入されることもある。本発明の1つの形態では、ゲッタリング種は、堆積時には一時的に不活性である、活性が弱められているまたは作用が発現していない。ゲッタリング材料、たとえばH2O、CO2、H2、O2または他の不要な種を除去、分離、または変換するものを導電性インクまたはペースト組成物に直接含めることができ、それによりこれらの不要な種がこれらのインクまたはペーストによって形成された電極から除去されるか、またはこれらの不要な種がデバイスもしくはエンキャプシュレーションパッケージの隣接部分において除去されるもしくはその濃度が下げられる。これらの低減はデバイスの製作または密封中またはその直後に生じうるし、またはそれらはいくつかの遅延活性化のあとに起こる場合がある。期間に関しては、それらはデバイス中に始めから残留する不要なガスまたは不純物を除去するのに使用することができるし、またはそれらは、たとえばエンキャプシュレーション材料を介したもしくはガス放出による侵入によってまたはデバイスもしくはエンキャプシュレーション材料自体の中で起こる反応によって後段のデバイスの製造サイクル中にデバイス中またはその近くに現れる不要な種を除去するのに使用できる。特に興味深いのはH2O、O2、CO2、H2、または残留溶媒のゲッター材料であり、これは、インクを使用して導電性特徴部を形成したあとにそれらの機能を主に果たし、それにより不要な種をこれらの種が意図的には存在していないときに除去する。たとえば、ゲッター材料は印刷またはコーティングによる有機発光デバイスまたは光電池もしくは光伝達性デバイス用のカソードの作製中に存在するが、この最初の作製工程のあとにその作用を発揮することができる。本発明において、導電性ペーストを起源とするゲッターは、プロセス環境中の、たとえば空気中での処理中の溶媒−水性溶液からのH2O、O2または溶媒への露出によっては永久に飽和しないまたは消費されない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、標準的な銀カソードデバイスと銀−シランカソードデバイスとの性能比較のための時間の関数としての電圧(V)および輝度(cd/m2)を示しており、これらは窒素グローブボックス内で2mA/cm2の電流密度で試験した。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明では、ゲッタリング種が電子デバイスにおける電極として使用される導電性ペーストまたはインク組成物中に直接含まれる。用語「ペースト」および「インク」は、この説明では、流動性を有する溶液を説明するのに互いに区別せずに使用される。ゲッターは空気またはプロセス環境への露出工程のあとに作用するように活性になる、脱飽和性である、または十分な容量を有する。この概念は、導電性ペーストまたはインクが電極を形成するのに使用される電子デバイスに一般に適用可能であり、有機発光ダイオード(OLED)および光電池デバイスに特に適用可能である。ゲッタリング材料が堆積時に少なくとも一時的に不活性である、活性が弱められているまたは作用が発現していないことを確実にする技術の使用は、電子デバイスをエンキャプシュレーションし活性化させたあとに、向上したゲッタリング機能を提供する。したがって、ペーストを堆積させて電子デバイスをエンキャプシュレーションしたあとに活性化できるゲッタリング材料が特に有用である。ゲッタリング材料の活性化の制御は、たとえば熱的、光学的、電気的な多くの技術を使用することによって、または不要な種のゲッタリング材料への拡散を抑制するマトリックスによる保護によって、または溶媒が後段の処理工程、たとえば加熱または減圧処理(ここで加熱または減圧処理は、不要な種たとえば水、酸素、および水素を含まない環境でのものである)で除去されるまでゲッタリングを保護する溶媒を用いて達成できる。また、一部のゲッター、たとえばシリコンゲルまたは一部のゼオライトを後段の工程で改質させ、ゲッター中の水または他の吸着された種を、熱的にまたは減圧によってまたはゲッターを後段の段階で再活性させる他の手段によって放出することができる。
【0007】
1つの実施形態では、熱的に活性化されて水と反応するシラン系ゲッター添加剤が、デバイス性能を向上させることが分かった。本発明のもう1つの実施形態は、H2、O2、CO2、H2、または他の不純物をデバイスの構成部材と不都合に反応しない良性種に変換する材料の電極ペースト中での包含である。もう1つの実施形態は、作用が発現していない、または活性化により後段の処理工程において作用して、不要な不純物たとえば水を高められた温度でのテトラエチルオルトシリケート添加剤の加水分解反応によってより揮発性が高い種たとえば低級アルコールに変換するゲッタリング材料を含み、この揮発性が高い種は、乾燥工程において元の形態の不要な種よりも容易にまたは迅速に除去される。これは、活性デバイス材料からの効率的な除去のために高い温度、長い滞留時間または低い真空度を必要としうるたとえばH2Oのより急速な除去を可能にする。H2Oおよび関連する不純物は、水溶性、親水性または吸湿性のデバイス材料、たとえば導電性ポリマー(PEDOT:PSSA)、電解質材料(たとえばエチレンオキシド)、絶縁材料(たとえばポリビニルフェノール、ポリメチルメタクリラート、ゾルゲル、SiOx、窒化ケイ素)に基づくプロセスの工程の速度を制限しうる。それゆえに、これら種の除去の容易さを高めることは、処理スループットを向上させ、設備コストを低めおよび/または他のデバイス材料の時間/温度制限のせいで実際に達成できない望ましい低い不純物レベルを達成する。たとえば、ポリエステルプラスチック基板の使用は安全なプロセス温度を200C未満に制限し、より典型的にポリテレフタル酸エステルの場合170C未満に制限する。
【0008】
本発明によるカソードペーストは、好ましくは、空気中で安定な少なくとも1種の高仕事関数金属と、少なくとも1種のポリマーバインダと、少なくとも1種のアルコキシシラン有機/無機水分ゲッターと、少なくとも1種の有機溶媒と、少なくとも1種の界面活性剤とを含むであろう。カソード用の好適な高仕事関数材料の例としては銀、金、アルミニウム、炭素(カーボンブラック、炭素粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、グラフェン)、タングステン、銅、クロム、ニッケル、およびモリブデンが挙げられる。ポリマーバインダ材料の例としては、前に説明したものに加え、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂、セルロース誘導体ポリマー、ポリエステルコポリマー、ビニル、メタクリラート、シリコーン、ならびにシロキサンが挙げられる。場合によっては、フッ素化されたおよび部分的にフッ素化されたポリマーが、水に対する低減された親和性および透過性ならびに低い反応性のおかげで望ましいことがある。好適な有機溶媒はプロセス要求に合わせることができるものであって、多種多様な溶媒から選択できる。このような溶媒の例はカルビトールアセタート、酢酸エチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセタート、テルペン、高級アルコール、二塩基性エステル、およびラクトンである。また、イオン性および非イオン性界面活性剤、両親媒性材料、脂肪酸、オレイン酸、アルキル化カルボン酸、エトキシプロピルオキシコポリマー、シリコーンならびにシロキサンコポリマーなどの多くの界面活性剤が好適である。望ましいのであれば、マトリックス材料を上で説明した目的のために使用することができる。好適なマトリックス材料の例はバインダ材料として使用されるものである。
【0009】
本発明の例は、カソードペースト全体におけるアルコキシシランの割合が、必要とされる効果を提供するがカソードの機能の障害を避けるために、0.01重量%ないし10重量%でありうるインクである。一般に、プラスチック基板をベースにしたデバイスにとって、室温ないし200Cまでの温度範囲で加水分解しうるゲッター材料を使用することも有用である。この概念は他の化合物たとえばアルコキシル置換されたアルミニウム(III)、アンチモン(III)、バリウム(II)、チタン(IV)、またはジルコニウム(IV)に基づいたものの使用を含む。熱的に、光によってまたは時間によって活性化される有機金属化合物も電極ゲッター添加剤として有用である。
【0010】
他の実施形態は、溶媒、またはそうでなければ安定化された金属酸化物粒子(たとえばCa、Ba、Sr、MgまたはSiの酸化物または類似物)、非常に多孔質な酸化物、ナノサイズ粒子吸着剤、もしくはゼオライト粒子たとえばアルミニウムシリケートおよびその誘導体を含む。H2ゲッタリングのためには、金属酸化物たとえばPdOまたはPtOが有用である。デバイスの動作を妨害することも、またはデバイス動作の不均一性をもたらしうるより大きなカソード不均一性をもたらすことも、またはデバイスの電気的短絡をもたらすこともないように、これらの粒子が比較的小さなサイズ(x、y、zの次元で<100ミクロン、より好ましくは<10ミクロン)であることが有利である。粒子は好ましくはカソードペースト全体の0.1重量%ないし25重量%である。高すぎる濃度では、ゲッタリング材料が電極の電気的性質を妨害しうる。
【0011】
強乾燥ペーストは、マトリックスおよび溶媒の効果を使用して処理中の水分とのそれらの相互作用をまず制限する上述の材料のうちの一部を用いて形成できる。マトリックス効果の例としては、不純物の侵入を制限するための低い溶解性または透過性のマトリックスの使用が挙げられる。溶媒効果としては、不純物の侵入を阻止するための液体特徴部の近傍での溶媒蒸気圧の使用を挙げることができる。これは、印刷可能または分配可能なペーストおよびそれらから形成される湿式または準湿式印刷フィルムにとって妥当な空気プロセスウィンドウを可能にすることができる。
【0012】
さらに、デバイスをエンキャプシュレーションする魅力的な形態は、出発材料からまたは製作中にデバイスにトラップされ、その最初の製造中にデバイスエンキャプシュレーションパッケージの中に密封されたH2O、CO2、H2、O2または他の不要な種を除去するためのゲッタリング材料の使用を含む。これらの機能を果たすゲッター材料はカソードまたは電極特徴部内にあってもよい。
【0013】
また、電極は、ゲッターの組成が電極内で多様となるように、垂直的に(印刷表面または電極界面の法線に平行な方向に)不均一なまたは多層の構造体で構成することもできる。これは、直接接触すると電極界面領域にダメージを与えうるが、これらの界面に非常に近接して位置しているとそのゲッタリング機能を果たすのに有益でありうるゲッター材料を分離することに役立ちうる。また、ゲッターがカソードまたは電極の所定の層における界面注入または電荷移動を妨害する場合もあるかもしれない。その場合、電極の界面または重要な電荷移動領域におけるゲッター濃度が低い多層カソードが電気的機能を最適にすし、一方でゲッターがより重い層は有益なゲッタリング作用を提供する。また、ゲッターはインクまたはペーストによって得られる相互接続ラインに含まれてもよく、このラインは電極またはカソード自体の一部として、多層カソードにおける印刷層のうちの1つとして、または分離印刷された電極の連続特徴部として印刷することができる。これらの特徴部中のゲッターは、インクまたはペースト自体においてデバイスパッケージに導入される不純物を吸収するのに役立ち、電極相互接続ラインを通してまたはその近くの外部環境からデバイスパッケージに侵入する不純物を吸収または阻止するのにも役立ちうる。これは、パッケージ内の活性デバイス領域からパッケージの密封部分の外へ通じる電極相互接続ラインがエンキャプシュレーション接着剤およびバリア材料中に局所的流路をつくりうるし、またはこのライン自体が高い不純物伝達速度を有しうるので重要である。それゆえに、ゲッタリング材料をこれらのラインにさらに含ませることが有利でありうる。
【0014】
上で述べたように、デバイスの電極構造体は均一である必要はない。たとえば、電極を、使用するゲッターおよびその濃度が異なる1層を超えるインクまたはペーストによって形成してもよい。この濃度は、デバイスの活性部分との界面から反対側または電極にかけて均一に変化してもよいが、均一に変化する必要はない。場合によっては、デバイスの活性部分と導電する電極ペーストがゲッターを有さないことまたはゲッター濃度が低いことが、デバイスの活性部分の汚染を避けるために望ましいことがある。
【0015】
本発明の電極ペーストは、ペーストの不要な残留成分または他の不要な種と反応するかまたはこれを変換してより良性の材料とするゲッターを含むことができる。場合によっては、このような不要な残留成分または他の不要な種を、より揮発性であるか、拡散性がより高いか、または除去もしくは移動がより容易な他の化合物に変換することができる。
【0016】
処理中または処理後に不要な種を除去するゲッターの使用は、より高い性能のデバイスを製造することができるし、さらにはプロセス環境の環境管理を減らすことを可能にもし、それにより単純で迅速な製造方法、コストが低いデバイスを提供でき、高価なプロセス設備の使用を少なくすることができる。
【0017】
例1.有機発光デバイス用のカソードとして使用するためのテトラエチルオルトシリケートをブレンドした銀導電性ペースト
a.テトラエチルオルトシリケート(シレート)をブレンドした銀(Ag)ペーストの調製
Agフレークならびに粒子、ポリマーバインダ、界面活性剤、および揮発性溶媒から主になる99gの市販の銀ペーストに、1gのテトラエチルオルトシリケート(シラン)を添加して、ペースト中に1%のシラン含有物を形成した。次に、印刷する前に、このペーストを終夜室温で混ぜ合わせた。
【0018】
b.コントロール:標準的なAgカソードを有するフルスクリーン印刷白色発光デバイス
ドープト発光ポリマー(LEP)インク(住友化学とCambridge Display Technologyとの合弁事業であるSumationによって供給されるLEPをベースにした)を、1cm2の活性面積を有する予めパターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)被覆ポリエチレンテレフタラート(PET)基板上にスクリーン印刷した。基板を減圧下で加熱することによって溶媒を除去したのち、上部電極Ag標準銀ペーストをLEP層上に印刷し乾燥させてカソードおよび相互接続層を形成し、デバイスの作製を完了した。次に、デバイスを窒素グローブボックスに移し、2mA/cm2の一定の電流密度で試験した。輝度(Cd/m2)および電圧(V)の両方を時間の関数として記録した(図1)。最大輝度(Lmax)は326Cd/m2であり、最大発光効率(L.E.)は16.3Cd/Aであり、最大出力効率(P.E.)は3.4lm/Wであった。我々は、外挿法t1/2×(Lmax/100)y(ここで、t1/2は最大輝度Lmaxが半分になるまでの時間であり、yは一般に1.2ないし2.1までの指数である)を使用して、Lmaxでの寿命を100Cd/m2での寿命に変換した。このタイプのLEPに基づくこれらのフルスクリーン印刷デバイスの場合、このファクターyは約1.8であることが分かっている。したがって、このデバイスは、1.8のyファクターを使用する場合、2080時間の輝度寿命(100Cd/m2)を有していた。
【0019】
c.シランをブレンドしたAgカソードを有するフルスクリーン印刷白色発光デバイス
上で説明したAg−シランペーストをAg−標準ペーストの代わり使用した以外、コントロールについて上で説明したものと同様にデバイスを作製した。そのLmaxは355Cd/m2であり、L.E.は17.7Cd/Aであり、P.E.は3.6lm/Wであった。このデバイスは、1.8という輝度対寿命の加速度指数を使用して補外すると、100Cd/m2で3250時間の輝度寿命を有していた(図1)。輝度寿命のこの向上は、カソードに接近した外部ゲッターを使用して乾燥させたデバイスの類似した向上の結果生じる。これから、Agシランデバイスは加熱でのシラン添加剤の加水分解によるAgペースト中の水分の除去のおかげで優れた寿命性能を有していたが、シラノール生成物はデバイスに対して相殺する悪影響を与えなかったことが分かる。カソード領域中の水分のこの減少は、機能を向上させカソードの劣化を低減することができる。また、それは水についての拡散勾配を生じさせることもでき、それはデバイスの活性領域(この例ではLEP含有領域)から水を放出する。水によって引き起こされる活性層成分の光酸化および水分によるドーパントの不活性化は両方ともデバイス性能低下メカニズムであり、活性領域中の水分含有量の減少によって影響を少なくできる。なお、光酸化は、光電池、センサ、およびスイッチデバイスにおける性能劣化メカニズムでもある。スキーム1の反応式で示すように、シランのアルコキシル基のうちの1つが水によって加水分解を受けて、エタノールを生成し、これは、その高い蒸気圧またはペースト成分への低い結合のおかげで、LEPアニーリングプロセス中に水よりも容易に除去される。このような加水分解反応は添加される水と残りのアルコキシル基を有するシラノールとの間で続きうる。エタノールは熱的なアニーリングで効率的に除去できるので、シランの加水分解反応は不可逆的なものとなり、水を化学的に除去して、その結果優れたデバイス寿命をもたらすことができる。
【化1】

【0020】
本発明をその実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、種々の変更、修正および置換がその形態および詳細の範囲内にあることは、本発明の精神および範囲から外れることなしに、当業者に容易に明らかとなるであろう。したがって、多くの例において、本発明のいくつかの特徴部が他の特徴部の対応する使用なしに用いられることが認められるであろう。さらに、当業者は、例示した要素の数および配置を変更できることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス用の導電性電極ペーストであって:
(a)導電性金属と:
(b)ゲッター材料と:
(c)バインダ材料と
を含む電極ペースト。
【請求項2】
前記ゲッター材料は、前記電極ペーストが堆積されたときには、一時的に不活性である、活性が弱められている、または作用が発現していない請求項1に記載の電極ペースト。
【請求項3】
前記ゲッター材料は、熱的活性化、光学的活性化、電気的活性化、前記ゲッター材料の活性を妨害する溶媒の除去、および前記ゲッター材料への汚染物質の拡散を抑制するマトリックスによる前記ゲッター材料の保護からなる群より選択される技術によって活性化される請求項2に記載の電極ペースト。
【請求項4】
前記ゲッターが0.01重量%ないし10重量%を構成する請求項3に記載の電極ペースト。
【請求項5】
有機溶媒をさらに含む請求項1に記載の電極ペースト。
【請求項6】
界面活性剤をさらに含む請求項5に記載の電極ペースト。
【請求項7】
前記ゲッター材料は、前記電極ペーストが堆積されたときには、一時的に不活性である、活性が弱められている、または作用が発現していない請求項5に記載の電極ペースト。
【請求項8】
前記ゲッター材料は、熱的活性化、光学的活性化、電気的活性化、前記ゲッター材料の活性を妨害する溶媒の除去、および前記ゲッター材料への汚染物質の拡散を抑制するマトリックスによる前記ゲッター材料の保護からなる群より選択される技術によって活性化される請求項7に記載の電極ペースト。
【請求項9】
前記ゲッターが0.01重量%ないし10重量%を構成する請求項8に記載の電極ペースト。
【請求項10】
活性領域を含む電子デバイスであって、導電性金属と、ゲッター材料と、バインダ材料とを含む導電性電極ペーストを使用して形成される電極を含む電子デバイス。
【請求項11】
前記ゲッター材料は、前記電極ペーストが堆積されたときには、一時的に不活性である、活性が弱められている、または作用が発現していない請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記ゲッター材料は、熱的活性化、光学的活性化、電気的活性化、前記ゲッター材料の活性を妨害する溶媒の除去、および前記ゲッター材料への汚染物質の拡散を抑制するマトリックスによる前記ゲッター材料の保護からなる群より選択される技術によって活性化される請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記ゲッターが0.01重量%ないし10重量%を構成する請求項12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
有機溶媒をさらに含む請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項15】
界面活性剤をさらに含む請求項14に記載の電子デバイス。
【請求項16】
デバイスが有機発光ダイオードである請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項17】
デバイスが光電池デバイスである請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項18】
前記ゲッター材料は、前記電極の不要な残留成分を別の物質に変換する請求項1に記載の電極ペースト。
【請求項19】
前記ゲッター材料は、前記ペーストの不要な残留成分と反応して、前記不要な残留成分よりも揮発性の高い、拡散性が高い、または除去もしくは移動が容易な化合物を生じさせる請求項18に記載の電極ペースト。
【請求項20】
前記電極中の前記ゲッター材料の濃度が、前記電極の前記デバイスの前記活性領域との界面と前記電極の反対側との間で異なる請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項21】
ゲッター材料の濃度は、前記デバイスの前記デバイスの前記活性領域との界面において低く、前記電極の前記反対側において高い請求項20に記載の電子デバイス。
【請求項22】
前記電極は電極ペーストの複数の層を使用して形成され、電極ペーストの前記層のゲッター組成が多様である請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項23】
前記活性領域に接触する電極ペーストの層におけるゲッター材料の濃度は、前記活性領域に接触しない電極ペーストの層におけるゲッター材料の濃度よりも低い請求項22に記載の電子デバイス。
【請求項24】
活性領域を含む電子デバイスであって、性能を劣化させる物質の濃度が活性領域よりも低い電極を含み、前記性能を劣化させる物質が前記活性領域から前記電極に拡散する電子デバイス。
【請求項25】
前記電極は前記性能を劣化させる物質の濃度を下げるゲッター材料を含む請求項24に記載の電子デバイス。
【請求項26】
前記ゲッター材料は、前記電極が製造されているときには、一時的に不活性である、活性が弱められている、または作用が発現していない請求項25に記載の電子デバイス。
【請求項27】
前記ゲッター材料は、前記電子デバイスが製造されたあとに活性化される請求項26に記載の電子デバイス。
【請求項28】
前記ゲッター材料は、熱的活性化、光学的活性化、電気的活性化、前記ゲッター材料の活性を妨害する溶媒の除去、および前記ゲッター材料への汚染物質の拡散を抑制するマトリックスによる前記ゲッター材料の保護からなる群より選択される技術によって活性化される請求項27に記載の電子デバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2012−529149(P2012−529149A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514048(P2012−514048)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/036937
【国際公開番号】WO2010/141493
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】