説明

電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法、並びに、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法

【課題】アライメントの精度や信頼性などを向上させることができ、また、製造原価のコストダウンを図ることができる電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法、並びに、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法の提供を目的とする。
【解決手段】電子ビーム溶接装置1は、電子銃2と、集束コイル4と、アライメントコイル31、デジタル観測光学系32、デジタル画像処理コントローラ33及び情報処理装置34を有するアライメント制御手段3とを備え、情報処理装置34が、アッパーフォーカス状態とロアーフォーカス状態で電子ビームをターゲット10に照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、アライメントコイル31に、アライメント制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法、並びに、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム加工は、電子銃から放出された電子ビームを集束コイルで集束し、母材に衝突させることにより、電子の衝突エネルギーを利用して、溶接、局所焼入れ、表面改質、又は、溶断等の加工を行う方法である。
これらの加工うちの一つである電子ビーム溶接は、ビードが細く、入熱、歪みが少ないので、精密加工に適しており、また、ビーム出力範囲が広く、微細溶接から厚板貫通溶接まで幅広く対応することができる。さらに、非鉄金属(銅、アルミニウム等)の溶接、高融点の金属(タングステン、ニオブ、タンタル等)の溶接、異種金属材料どうし(銅とステンレス等)の溶接なども可能である。
【0003】
ところで、電子ビーム溶接においては、たとえば、電子銃のフィラメントを交換した際や定期点検などの際に、アライメント(ビームアライメントや軸合わせとも呼称される。)を行う必要がある。ここで、アライメントとは、電子ビームを電子銃とターゲットとの間に設けられた一又は二以上のレンズコイルの中心を通過させるための補正をいう。
このアライメントを行わないで電子ビーム溶接を行うと、レンズコイルのフォーカスによって電子ビームの照射位置が変化するとともに、ビームプロファイルが不均一となるので、溶接品質の低下を招くこととなる。
【0004】
(従来の技術)
従来、上記のアライメントは、作業者が集束コイルの電流を変化させ、電子ビームのずれを観測光学系によって目視により確認し、手動でアライメントコイルの電圧を調節するといった、一サイクルの作業を繰り返すことによって行われてきた。すなわち、作業者は、ジャストフォーカス状態(電子ビームの焦点をターゲットの表面に合わせた状態)のビーム照射位置とロアーフォーカス状態(ジャストフォーカスよりも焦点が下にある状態)のビーム照射位置とが一致するように、調整作業を繰り返し、これらのビーム照射位置をほぼ一致させることが、主な基準(調整合格の基準)となっていた。
【0005】
ただし、上述した作業者によるアライメントは、作業者の経験や感覚に大きく左右される場合があった。すなわち、電子ビームのずれによる微細な変化を肉眼でとらえ、正確な調整を行うには、作業者の経験が必要であった。そして、作業者ごとに調整合格の基準が異なるために、アライメントを行った作業者によって、溶接品質が異なる場合があった。
このため、作業者による溶接品質の差をなくし、安定した溶接品質を提供するという観点から、自動化することが要望されており、この要望に応えるための技術や本発明に関連する技術が、様々開発されてきた。
【0006】
たとえば、特許文献1には、電子ビーム溶接機のビームアライメントを自動的に調整する方法の技術が開示されている。
この技術では、電子ビーム照射位置と試験片継目位置との位置ずれを、収束コイルに流す直流電流の極性が正であるときと負であるときについて、かつ、試験片継目の方向がX軸方向と一致する場合とY軸方向と一致する場合との両方について、計測する。そして、計測した位置ずれを零にする電流値を計算し、この電流値をアライメントコイルに流し、ビームアライメントを調整する。また、電子ビーム溶接機は、反射電子、二次電子又はX線などの二次エネルギーを検出するコレクタを有する位置ずれ検出装置を備えている。
この電子ビーム溶接機は、幾何光学的中心と実際の電子ビームの照射位置とを簡単かつ高精度に合わせることができる。
【0007】
また、特許文献2には、電子ビーム溶接機の自動設定機構の技術が開示されている。
この電子ビーム溶接機は、電子ビームガンを挟んで設けられた2台のCCD(Charge Coupled Device)カメラと、画像処理部、演算装置、変換器及びCNC(Computer Numerical Contorol)制御装置を備えている。また、2台のCCDカメラにより得られた平面的な情報を、2点視差法により立体的な情報に変換し、この情報にもとづいて自動的にワークディスタンスを設定し、ビーム角度を調整することができる。
【0008】
また、電子ビームの照射に関しても、様々な技術が開発されてきた。
たとえば、特許文献3には、電子銃より出射した電子ビームにより被加工物を加工する加工装置における加工用電子銃の昇圧方法の技術が開示されている。
この技術は、被加工物の電子ビーム照射面に蛍光膜を塗布し、電子ビーム照射中の蛍光膜の状態を観察し、発生した蛍光パターンに応じて電子銃の昇圧パターンを切り替ることを特徴とし、発生したマイクロアーキングに応じた適切な制御を行うことにより、被加工物に不要な欠陥が生じることを防止することができる。
【0009】
また、特許文献4には、電子ビームの軸調整(アライメント)を容易に行うことができる走査電子顕微鏡及び走査電子顕微鏡の制御方法並びに電子ビームの軸調整方法の技術が開示されている。
この技術は、電子ビーム源と、電子ビーム源から放出された電子ビームが通過する開口部を有し、該開口部の後方に配置された試料上に電子ビームを集束させる対物レンズと、電子ビームの軸を調整する軸調整手段と、電子ビームを走査する走査コイルと、対物レンズの該開口部より前方に位置する検出器と、対物レンズの開口部を電子ビームにより走査し、これにより検出される像にもとづいて軸調整手段を制御するための制御手段とが備えられている。また、上記の検出器は、2次電子等の被検出電子を検出する。
【0010】
【特許文献1】特開昭60−092089号公報
【特許文献2】特開平03−161179号公報
【特許文献3】特開平08−294782号公報
【特許文献4】特開2005−174812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された電子ビーム溶接機のビームアライメントを自動的に調整する方法の技術は、コレクタや位置ずれ検出装置などを設ける必要があり、製造原価のコストダウンを図ることができないといった問題があった。
さらに、継目を有する試験片を移動させて、位置ずれを計測する必要があり、計測の手順や動作などが複雑であった。一般的に、信頼性の要求されるアライメントの手順や動作などは、単純であるほうが好ましい傾向にあり、これらが複雑であることは、アライメントの精度や信頼性を低下させる可能性が高くなるといった問題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載された電子ビーム溶接機の自動設定機構の技術は、2台のCCDカメラを必要とし、また、各CCDカメラの中心線が電子ビームガンの中心軸に対して任意の角度だけずれる線上の任意の位置に、各カメラを設ける必要があり、製造原価のコストダウンを図ることができないといった問題があった。
さらに、ビーム点から各CCDカメラの中心線までの距離を計算し、2点視差法により演算する必要があり、計測の手順や動作などが複雑であった。したがって、上述したように、アライメントの精度や信頼性を低下させる可能性が高くなるといった問題があった。
【0013】
また、上述した手動によるアライメント作業を自動化しようとしても、様々な不具合や問題などがあった。
すなわち、フォーカスによるビーム焦点位置の変更によってエネルギーの密度と発光の輝度が変化する。たとえば、ジャストフォーカスでは高密度かつ高輝度となり、ロアーフォーカスでは低密度かつ低輝度となる。したがって、自動化するためには、カメラを用いてそれぞれ相反する状態のビーム照射位置を正確に検出する必要があった。このためには、カメラの感度又はレンズの絞りを変化させる必要があり、特に、ジャストフォーカスの場合は、ハレーションを起こしやすくビーム照射位置が正確に測りづらくなるため、カメラの感度等の調整を厳密にしなければならないといった不具合があった。
【0014】
また、ジャストフォーカスの状態は、溶接に用いるような高密度の状態であるため、アライメント用のターゲットを融解させたり、変形させたりして、電子ビームによる発光が歪んでしまい、正確なビーム照射位置の測定ができなくなってしまうといった問題があった。
さらに、必然的に、複数回、ジャストフォーカスの状態で電子ビームが、ターゲットに照射される。このジャストフォーカスの状態は一点に電子ビームが集束するためターゲットを損傷しやすく、高価な金属(たとえば、タングステン)からなるビームアライメント用のターゲットの寿命を早めてしまうといった問題もあった。
【0015】
また、特許文献3に記載された加工用電子銃の昇圧方法の技術は、被加工物に蛍光膜を塗布し、一台のCCDカメラを用いて電子ビーム照射中の蛍光膜の状態を観察し、発生した蛍光パターンに応じて電子銃の昇圧パターンを切り替ることを特徴としているものの、本発明の課題を解決することはできない。
【0016】
また、特許文献4に記載された電子ビームの軸調整(アライメント)を容易に行うことができる走査電子顕微鏡の技術は、二次電子線を検出する検出器などを設ける必要があり、製造原価のコストダウンを図ることができないといった問題があった。
さらに、走査電子顕微鏡は、電子ビーム電流出力がμAレベルであるのに対し、電子ビーム溶接機における電子ビーム電流出力がmAレベルであり、また、構成などが異なっており、本発明の課題を解決することはできない。
【0017】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、アライメントの精度や信頼性などを向上させることができ、また、製造原価のコストダウンを図ることができる電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法、並びに、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の電子ビーム加工装置は、電子ビームを放出する電子銃と、電子ビームを集束する集束コイルと、集束コイルの中心に電子ビームを入射させるためのアライメント手段、電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系、デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部、並びに、画像処理部からの処理データにもとづいて、電子銃、集束コイル及びアライメント手段を制御する制御部を有するアライメント制御手段とを備え、アライメント制御手段の制御部が、電子銃及び集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、アライメント手段に、アライメント制御信号を出力する構成としてある。
【0019】
また、本発明の電子ビーム加工方法は、電子銃が電子ビームを放出し、集束コイルの中心に電子ビームを入射させるためのアライメント手段、電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系、デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部、並びに、画像処理部からの処理データにもとづいて、電子銃、集束コイル及びアライメント手段を制御する制御部を有するアライメント制御手段が、集束コイルの中心に電子ビームを入射させ、集束コイルが電子ビームを集束することにより、加工を行う電子ビーム加工方法において、アライメント制御手段の制御部が、電子銃及び集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、アライメント手段に、アライメント制御信号を出力する方法としてある。
【0020】
また、本発明の電子ビーム照射装置は、電子ビームを放出する電子銃と、電子ビームを集束する集束コイルと、集束コイルの中心に電子ビームを入射させるためのアライメント手段、電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系、デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部、並びに、画像処理部からの処理データにもとづいて、電子銃、集束コイル及びアライメント手段を制御する制御部を有するアライメント制御手段とを備え、アライメント制御手段の制御部が、電子銃及び集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、アライメント手段に、アライメント制御信号を出力する構成としてある。
【0021】
また、本発明の電子ビーム照射方法は、電子銃が電子ビームを放出し、集束コイルの中心に電子ビームを入射させるためのアライメント手段、電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系、デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部、並びに、画像処理部からの処理データにもとづいて、電子銃、集束コイル及びアライメント手段を制御する制御部を有するアライメント制御手段が、集束コイルの中心に電子ビームを入射させ、集束コイルが電子ビームを集束することにより、電子ビームを照射する電子ビーム照射方法において、アライメント制御手段の制御部が、電子銃及び集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、アライメント手段に、アライメント制御信号を出力する方法としてある。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法、並びに、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法によれば、アライメントの精度や信頼性などを向上させることができ、また、電子ビーム加工装置や電子ビーム照射装置の製造原価のコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法の一実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接装置の概略ブロック図を示している。
図1において、本実施形態の電子ビーム加工装置としての、電子ビーム溶接装置1は、電子銃2、アライメント制御手段3、集束コイル4及び偏向コイル5などを備えている。また、電子銃2、アライメント制御手段3のアライメントコイル31、集束コイル4及び偏向コイル5は、この順番で、かつ、それぞれの中心軸が一致するように、配設されている。
また、図1においては、真空用の筐体やワーク用移動手段(通常、X−Yテーブル)などを省略してある。
【0024】
(電子銃)
電子銃2は、フィラメントやアノードなどを備えており、高圧電源21と接続されている。また、高圧電源21は、情報処理装置34と接続されている。この電子銃2は、情報処理装置34によって制御され、所定の電流量の電子を、所定のエネルギーを有する電子ビームとして放出する。
ここで、電子銃2は、通常、フィラメントが交換されると、電子ビームの放出角度が変化する。したがって、フィラメントが交換されると、上述したように、アライメントを行う必要がある。
【0025】
(アライメント制御手段)
アライメント制御手段3は、アライメントコイル31、デジタル観測光学系32、デジタル画像処理コントローラ33及び情報処理装置34などを有している。
アライメントコイル31は、アライメントを行うための偏向コイルであり、通常、二組のコイルがセットになっており、二次元的な偏向によってアライメントを行うことができる。このアライメントコイル31は、情報処理装置34と接続されており、情報処理装置34によって制御される。
なお、本実施形態では、集束コイル4の中心に電子ビームを入射させるためのアライメント手段として、アライメントコイル31を用いている。ただし、これに限定されるものではなく、たとえば、電子銃2や集束コイル4の取付け位置を修正するための機器を用いることによっても、アライメントを行うことができる。
【0026】
デジタル観測光学系32は、反射鏡321、322及び一つのCCDカメラ323を有しており、ターゲット10の表面に照射された電子ビームの照射画像(可視光)を観測する。また、反射鏡321、322は、電子ビームが当たらない位置に設けられる。このように、一つのCCDカメラ323(このCCDカメラは、市販品であり廉価である。)を有する構成としてあるので、上述した特許文献1や特許文献2の技術と比べると、製造原価のコストダウンを図ることができる。また、デジタル観測光学系32は、撮像可能に取り付けられていればよく、たとえば、特許文献2の技術と比べると、取付け精度などの影響を受けないので、アライメントの精度や信頼性などを向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、反射鏡321が、アライメントコイル31と集束コイル4との間に取り付けられており、偏向コイル5及び集束コイル4を通過してきた可視光を反射する構成としてある。このようにすると、電子ビームの照射画像をほぼ真上(真正面)から観測することができるので、観測精度を向上させることができる。
なお、反射鏡321の取付け位置は、上記に限定されるものではなく、たとえば、偏向コイル5の下方でもよい。
また、本実施形態では、二枚の反射鏡321、322を用いているが、これに限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、一枚の反射鏡321を用いる構成としてもよい。
【0028】
デジタル画像処理コントローラ33は、デジタル観測光学系32のCCDカメラ323からの画像データを処理する画像処理部であり、通常、濃淡画像を白黒2値にする2値化処理を行い、濃度変化から電子ビームの照射画像をデータ化する。このデジタル画像処理コントローラ33は、CCDカメラ323及び情報処理装置34と接続されており、処理データを情報処理装置34に出力する。
【0029】
情報処理装置34は、通常、コンピュータやPLC(プログラマブル ロジック コントローラ)などであり、高圧電源21、アライメントコイル31、デジタル画像処理コントローラ33及び集束コイル4などと接続されている。
この情報処理装置34は、デジタル画像処理コントローラ33からの処理データにもとづいて、電子銃2、集束コイル4及びアライメントコイル31を制御する。すなわち、情報処理装置34は、電子銃2及び集束コイル4を制御し、所定のフォーカスの異なる状態で電子ビームをターゲット10に照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、アライメントコイル31に、アライメント制御信号を出力する。
【0030】
また、上述した所定のフォーカスの異なる状態とは、ジャストフォーカスではない状態であって、かつ、フォーカスの異なる状態をいう。すなわち、電子ビームの焦点からターゲット10の表面までの距離が異なる二つのアッパーフォーカスの状態、電子ビームの焦点からターゲット10の表面までの距離が異なる二つのロアーフォーカスの状態、又は、アッパーフォーカスの状態+ロアーフォーカスの状態の三つのパターンがある。
【0031】
このようにすると、ジャストフォーカスの状態を回避できるので、たとえば、ハレーションによってビーム照射位置が精度よく観測できなくなるといった不具合や、カメラの感度又はレンズの絞り等の調整を厳密にしなければならないといった不具合を回避することができる。したがって、アライメントの精度や信頼性などを向上させることができ、また、カメラの感度等の調整のための停滞ロスが発生しないので、生産性を向上させることができる。
【0032】
また、ジャストフォーカスの状態は、溶接に用いるような高密度の状態であるため、アライメント用のターゲットを融解させたり、変形させたりして、電子ビームによる発光が歪んでしまい、ビーム照射位置の測定を精度よく行うことができなくなってしまうといった不具合を回避することができる。
さらに、本発明ではアッパーフォーカスとロアーフォーカスのときに限定して電子ビームを照射するため、ターゲット10の損傷が殆どなく長期にわたって使用することができる。
【0033】
ここで、好ましくは、所定のフォーカスの異なる状態を、アッパーフォーカス状態とロアーフォーカス状態とにするとよい。すなわち、上述した手動によるアライメント作業では、ジャストフォーカスとロアーフォーカスのビーム照射位置を確認し、これら二つのビーム照射位置を近づけるようにアライメントを行っていたが、本実施形態ではロアーフォーカスとアッパーフォーカスのビーム照射位置を認識し、これら二つを近づけるようにフィードバックを行うとよい。
【0034】
このようにすると、ともに低密度かつ低輝度のフォーカス状態を使用することによって、発光状態をほぼ同じレベルにすることができるので、フォーカスが変わるごとにカメラやレンズの設定を変更しなければならないという不具合を回避することができる。
さらに、ロアーフォーカスとジャストフォーカスとの間で、アライメントを行うよりも、ロアーフォーカスとアッパーフォーカスとの間で、アライメントを行う方が、フォーカスレンジがおよそ二倍になるので、ビーム照射位置の集束精度を向上させることができる。
【0035】
(集束コイル)
集束コイル4は、電子銃2から放射された電子ビームを集束するコイルである。この集束コイル4は、情報処理装置34と接続され、情報処理装置34によって制御される。
【0036】
(偏向コイル)
偏向コイル5は、同一方向に磁界を発生させる一対のコイルを一組にして、中心軸に対して対称に配置してあり、さらに、直交する方向にほぼ同様なもう一組のコイルを配置してある。また、偏向コイル5は、図示してないが、電子ビーム溶接装置1を全体的に制御する情報処理装置と接続されており、この情報処理装置の制御によって、集束コイル4によって集束される電子ビームを偏向する。
【0037】
次に、上記構成の電子ビーム溶接装置1の動作(溶接方法)などについて説明する。
本実施形態の電子ビーム加工方法としての、電子ビーム溶接方法は、上述した電子ビーム溶接装置1を用いて溶接を行う方法としてある。すなわち、電子ビーム溶接装置1は、電子銃2が電子ビームを放出し、アライメント制御手段3が集束コイル4の中心に電子ビームを入射させ、集束コイル4が電子ビームを集束することにより、溶接を行う方法としてある。
また、本実施形態の電子ビーム溶接方法は、アライメント制御手段3の情報処理装置34が、電子銃2及び集束コイル4を制御し、所定のフォーカスの異なる状態で電子ビームをターゲット10に照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、アライメントコイル31に、アライメント制御信号を出力する。これにより、アライメントを行うことができる。
【0038】
次に、上記のアライメントについて、図面を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
図2において、アライメントが開始されると、まず、情報処理装置34が集束コイル4に制御信号を出力することにより、集束コイル4に、アッパーフォーカスの状態となる電流を出力する(ステップS1)。この電流値は、あらかじめ設定されている。
【0039】
次に、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流を出力する。これにより、電子銃2は、フィラメントから電子ビームを照射する(ステップS2)。
この電子ビームは、図3に示すように、電子銃2、アライメントコイル31及び集束コイル4の中心軸から斜めに(たとえば、ほぼ6°の傾斜角度で)、断面がほぼ円形となる放射状に、集束コイル4に向かって照射される。なお、ここでは、アライメントコイル31は作動していないので、電子ビームはアライメントコイル31によって偏向されない。
【0040】
集束コイル4に到達した電子ビームは、アッパーフォーカスの状態となるように集束され、ターゲット10の表面に到達し、オレンジ色に発光する。これにより、ターゲット10の表面に、アッパーフォーカスの照射画像11が現れる。
なお、アッパーフォーカスの焦点は、中心軸に沿って、ターゲット10から上方に距離Hだけ離れた位置にある。また、距離Hや後述する距離Hは、通常、あらかじめ設定されている。
【0041】
次に、可視光であるアッパーフォーカスの照射画像11は、図1に示すように、反射鏡321、322を経由して、CCDカメラ323によって撮像される。デジタル画像処理コントローラ33は、CCDカメラ323からの画像データを処理し、この処理データを情報処理装置34に出力し、情報処理装置34は、図4(a)に示すアッパーフォーカスの照射画像11の処理データを取得する(ステップS3)。
【0042】
次に、情報処理装置34は、アッパーフォーカスの照射画像11の処理データからビーム位置(たとえば、図4(a)におけるアッパーフォーカスの照射画像11の重心位置(X−Y座標における(X、0)))を算出する(ステップS4)。
【0043】
続いて、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流の出力を停止する。これにより、電子銃2は、電子ビームの照射を停止する(ステップS5)。
【0044】
次に、情報処理装置34が集束コイル4に制御信号を出力することにより、集束コイル4に、ロアーフォーカスの状態となる電流を出力する(ステップS6)。この電流値は、あらかじめ設定されている。
【0045】
次に、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流を出力する。これにより、電子銃2は、フィラメントから電子ビームを照射する(ステップS7)。
この電子ビームは、図3に示すように、電子銃2、アライメントコイル31及び集束コイル4の中心軸から斜めに(たとえば、ほぼ6°の傾斜角度で)、断面がほぼ円形となる放射状に、集束コイル4に向かって照射される。なお、ここでは、アライメントコイル31は作動していないので、電子ビームはアライメントコイル31によって偏向されない。
【0046】
集束コイル4に到達した電子ビームは、ロアーフォーカスの状態となるように集束され、ターゲット10の表面に到達し、オレンジ色に発光する。これにより、ターゲット10の表面に、ロアーフォーカスの照射画像12が現れる。なお、ロアーフォーカスの焦点は、中心軸に沿って、ターゲット10から下方に距離Hだけ離れた位置にある。
【0047】
次に、可視光であるロアーフォーカスの照射画像12は、図1に示すように、反射鏡321、322を経由して、CCDカメラ323によって撮像される。デジタル画像処理コントローラ33は、CCDカメラ323からの画像データを処理し、この処理データを情報処理装置34に出力し、情報処理装置34は、図4(a)に示すロアーフォーカスの照射画像12の処理データを取得する(ステップS8)。
【0048】
次に、情報処理装置34は、ロアーフォーカスの照射画像12の処理データからビーム位置(たとえば、図4(a)におけるロアーフォーカスの照射画像12の重心位置(X−Y座標における(−X、0)))を算出する(ステップS9)。
【0049】
続いて、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流の出力を停止する。これにより、電子銃2は、電子ビームの照射を停止する(ステップS10)。
【0050】
次に、情報処理装置34は、アッパーフォーカスの照射画像11のビーム位置(たとえば、図4(a)におけるアッパーフォーカスの照射画像11の重心位置(X−Y座標における(X、0)))とロアーフォーカスの照射画像12のビーム位置(たとえば、図4(a)におけるロアーフォーカスの照射画像12の重心位置(X−Y座標における(−X、0)))との差分((X、0)−(−X、0)=(X+X、0))を算出する(ステップS11)。
【0051】
次に、情報処理装置34は、算出したビーム位置の差分(たとえば、(X+X、0))が所定の許容範囲内であるか、否かを判断し、Noの場合、ビーム位置の差分に対してあらかじめ設定された電圧を、アライメントコイル31へフィードバックする(ステップS13)。これにより、アライメントコイル31は、電子銃2から照射された電子ビームを、集束コイル4の中心に照射するように(フィードバックされた電圧に応じて)、偏向することができる。
【0052】
ここで、電子銃2から照射された電子ビームは、ターゲット10に回転しながら到達するため、アライメントコイル31のX−Y座標軸とCCDカメラ323X−Y座標とは、異なっている。このため、ビーム位置の差分をアライメントコイル31の電圧にフィードバックする際には、電子ビームの回転を考慮した角度補正を行う必要がある。
したがって、情報処理装置34は、算出したビーム位置の差分にもとづく電圧(加速電圧)、ターゲット10までの距離、及び、照射画像の回転角度をパラメータとし、軌道補正量(フィードバック情報)として演算し、これにもとづいて、アライメントコイル31に、アライメント制御信号を出力し、アライメントコイル31へのフィードバックを行う。
【0053】
また、Yesの場合、アライメントが終了される。なお、Yesの場合、情報処理装置34は、アライメントコイル31へフィードバックした電圧値を記憶するとともに、電子ビームを照射するときは、記憶した電圧をアライメントコイル31に印加する。これにより、電子銃2のフィラメントに対応したアライメントが行われる。
【0054】
上記判断がNoであった場合、上述したステップS1に戻り、情報処理装置34が集束コイル4に制御信号を出力することにより、集束コイル4に、アッパーフォーカスの状態となる電流を出力する(ステップS1)。この電流値は、あらかじめ設定されている。
【0055】
次に、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流を出力する。これにより、電子銃2は、フィラメントから電子ビームを照射する(ステップS2)。ここで、アライメントコイル31は、電子銃2から照射された電子ビームを、集束コイル4の中心に照射するように(フィードバックされた電圧に応じて)、偏向する。
すなわち、フィラメントから照射された電子ビームは、図5に示すように、アライメントコイル31によって偏向され、集束コイル4に向かって照射される。集束コイル4に到達した電子ビームは、アッパーフォーカスの状態となるように集束され、ターゲット10の表面に到達し、オレンジ色に発光する。これにより、ターゲット10の表面に、アッパーフォーカスの照射画像11が現れる。
【0056】
次に、可視光であるアッパーフォーカスの照射画像11は、図1に示すように、反射鏡321、322を経由して、CCDカメラ323によって撮像される。デジタル画像処理コントローラ33は、CCDカメラ323からの画像データを処理し、この処理データを情報処理装置34に出力し、情報処理装置34は、図4(b)に示すアッパーフォーカスの照射画像11の処理データを取得する(ステップS3)。
【0057】
次に、情報処理装置34は、アッパーフォーカスの照射画像11の処理データからビーム位置(たとえば、図4(b)におけるアッパーフォーカスの照射画像11の重心位置(X−Y座標における(X´、0)))を算出する(ステップS4)。
【0058】
続いて、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流の出力を停止する。これにより、電子銃2は、電子ビームの照射を停止する(ステップS5)。
【0059】
次に、情報処理装置34が集束コイル4に制御信号を出力することにより、集束コイル4に、ロアーフォーカスの状態となる電流を出力する(ステップS6)。この電流値は、あらかじめ設定されている。
【0060】
次に、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流を出力する。これにより、電子銃2は、フィラメントから電子ビームを照射する(ステップS7)。ここで、アライメントコイル31は、電子銃2から照射された電子ビームを、集束コイル4の中心に照射するように(フィードバックされた電圧に応じて)、偏向する。
すなわち、フィラメントから照射された電子ビームは、図5に示すように、アライメントコイル31によって偏向され、集束コイル4に向かって照射される。集束コイル4に到達した電子ビームは、アッパーフォーカスの状態となるように集束され、ターゲット10の表面に到達し、オレンジ色に発光する。これにより、ターゲット10の表面に、ロアーフォーカスの照射画像12が現れる。
【0061】
次に、可視光であるロアーフォーカスの照射画像12は、図1に示すように、反射鏡321、322を経由して、CCDカメラ323によって撮像される。デジタル画像処理コントローラ33は、CCDカメラ323からの画像データを処理し、この処理データを情報処理装置34に出力し、情報処理装置34は、図4(b)に示すロアーフォーカスの照射画像12の処理データを取得する(ステップS8)。
【0062】
次に、情報処理装置34は、ロアーフォーカスの照射画像12の処理データからビーム位置(たとえば、図4(b)におけるロアーフォーカスの照射画像12の重心位置(X−Y座標における(−X´、0)))を算出する(ステップS9)。
【0063】
続いて、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流の出力を停止する。これにより、電子銃2は、電子ビームの照射を停止する(ステップS10)。
【0064】
次に、情報処理装置34は、アッパーフォーカスの照射画像11のビーム位置(たとえば、図4(b)におけるアッパーフォーカスの照射画像11の重心位置(X−Y座標における(X´、0)))とロアーフォーカスの照射画像12のビーム位置(たとえば、図4(b)におけるロアーフォーカスの照射画像12の重心位置(X−Y座標における(−X´、0)))との差分((X´、0)−(−X´、0)=(X´+X´、0))を算出する(ステップS11)。
【0065】
次に、情報処理装置34は、算出したビーム位置の差分(たとえば、(X´+X´、0))が所定の許容範囲内であるか、否かを判断し、Noの場合、ビーム位置の差分に対してあらかじめ設定された電圧を、アライメントコイル31へフィードバックする(ステップS13)。これにより、アライメントコイル31は、電子銃2から照射された電子ビームを、集束コイル4の中心に照射するように(フィードバックされた電圧に応じて)、偏向することができる。
【0066】
上記判断がNoであった場合、再び、上述したステップS1に戻り、情報処理装置34が集束コイル4に制御信号を出力することにより、集束コイル4に、アッパーフォーカスの状態となる電流を出力する(ステップS1)。この電流値は、あらかじめ設定されている。
【0067】
次に、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流を出力する。これにより、電子銃2は、フィラメントから電子ビームを照射する(ステップS2)。ここで、アライメントコイル31は、電子銃2から照射された電子ビームを、集束コイル4の中心に照射するように(フィードバックされた電圧に応じて)、偏向する。
すなわち、フィラメントから照射された電子ビームは、図6に示すように、アライメントコイル31によって偏向され、集束コイル4の中心に向かって照射される。集束コイル4に到達した電子ビームは、アッパーフォーカスの状態となるように集束され、ターゲット10の表面に到達し、オレンジ色に発光する。これにより、ターゲット10の表面に、アッパーフォーカスの照射画像11が現れる。
【0068】
次に、可視光であるアッパーフォーカスの照射画像11は、図1に示すように、反射鏡321、322を経由して、CCDカメラ323によって撮像される。デジタル画像処理コントローラ33は、CCDカメラ323からの画像データを処理し、この処理データを情報処理装置34に出力し、情報処理装置34は、図4(c)に示すアッパーフォーカスの照射画像11の処理データを取得する(ステップS3)。
【0069】
次に、情報処理装置34は、アッパーフォーカスの照射画像11の処理データからビーム位置(たとえば、図4(c)におけるアッパーフォーカスの照射画像11の重心位置(X−Y座標における(0、0)))を算出する(ステップS4)。
【0070】
続いて、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流の出力を停止する。これにより、電子銃2は、電子ビームの照射を停止する(ステップS5)。
【0071】
次に、情報処理装置34が集束コイル4に制御信号を出力することにより、集束コイル4に、ロアーフォーカスの状態となる電流を出力する(ステップS6)。この電流値は、あらかじめ設定されている。
【0072】
次に、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流を出力する。これにより、電子銃2は、フィラメントから電子ビームを照射する(ステップS7)。ここで、アライメントコイル31は、電子銃2から照射された電子ビームを、集束コイル4の中心に照射するように(フィードバックされた電圧に応じて)、偏向する。
すなわち、フィラメントから照射された電子ビームは、図6に示すように、アライメントコイル31によって偏向され、集束コイル4の中心に向かって照射される。集束コイル4に到達した電子ビームは、アッパーフォーカスの状態となるように集束され、ターゲット10の表面に到達し、オレンジ色に発光する。これにより、ターゲット10の表面に、ロアーフォーカスの照射画像12が現れる。
【0073】
次に、可視光であるロアーフォーカスの照射画像12は、図1に示すように、反射鏡321、322を経由して、CCDカメラ323によって撮像される。デジタル画像処理コントローラ33は、CCDカメラ323からの画像データを処理し、この処理データを情報処理装置34に出力し、情報処理装置34は、図4(c)に示すロアーフォーカスの照射画像12の処理データを取得する(ステップS8)。
【0074】
次に、情報処理装置34は、ロアーフォーカスの照射画像12の処理データからビーム位置(たとえば、図4(c)におけるロアーフォーカスの照射画像12の重心位置(X−Y座標における(0、0)))を算出する(ステップS9)。
【0075】
続いて、情報処理装置34が高圧電源21に制御信号を出力することにより、高圧電源21が電子銃2に所定の高圧電流の出力を停止する。これにより、電子銃2は、電子ビームの照射を停止する(ステップS10)。
【0076】
次に、情報処理装置34は、アッパーフォーカスの照射画像11のビーム位置(たとえば、図4(b)におけるアッパーフォーカスの照射画像11の重心位置(X−Y座標における(0、0)))とロアーフォーカスの照射画像12のビーム位置(たとえば、図4(b)におけるロアーフォーカスの照射画像12の重心位置(X−Y座標における(0、0)))との差分(0、0)を算出する(ステップS11)。
なお、本実施形態では、上述したように、理想的に差分を(0、0)としてあるが、通常、差分は(Δ(微小距離)、0)である。
【0077】
次に、情報処理装置34は、算出したビーム位置の差分(たとえば、(Δ、0))が所定の許容範囲内であるか、否かを判断し、Yesの場合、アライメントを終了する。また、Noの場合は、再びステップS1に戻る。
なお、上述したように、Yesの場合、情報処理装置34は、アライメントコイル31へフィードバックした電圧値を記憶するとともに、電子ビームを照射するときは、記憶した電圧をアライメントコイル31に印加する。これにより、電子銃2のフィラメントに対応したアライメントが行われる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の電子ビーム溶接装置1及び電子ビーム溶接方法によれば、アライメントの精度や信頼性などを向上させることができ、また、製造原価のコストダウンを図ることができる。
また、ビーム照射位置のずれをフィードバックし、アライメントコイル31に電圧を印加するため、作業者が手動で行うよりも無駄がなく短時間で調整を完了できる。たとえば、熟練の作業者であっても1分以上かかっていたアライメント作業を、本実施形態によれば、平均30秒程度で完了することができる。
さらに、作業者一人一人の感覚や経験が支配的な作業であったため、アライメントの補正結果には個人差があったが、本実施形態によれば、高精度かつ統一された補正結果を得ることができる。これにより、安定した溶接品質の提供が可能になる。
【0079】
また、本実施形態の電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法は、様々な応用例を有している。
たとえば、画像処理システムのアルゴリズム、入力画像の波長帯等の演算処理方法、入力条件の相違、フィードバック制御の方法などは、特に限定されるものではなく、様々な方法などを採用することができ、これらは、本実施形態の応用例の範囲に含まれる。
【0080】
さらに、上述した実施形態では、アライメント制御手段3を用いて、アライメントを行っているが、これに限定されるものではなく、たとえば、アライメント制御手段3を用いて、フォーカスによるビーム焦点位置の変化を観測し、最適なフォーカスを算出することなどが可能となり、電子ビーム溶接装置及び電子ビーム溶接方法の付加価値を向上させることができる。
【0081】
[電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法の一実施形態]
本発明は、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法の発明としても有効である。すなわち、上述した電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法の一実施形態は、電子ビームを用いて溶接を行う構成や方法としてあるが、たとえば、電子ビームを用いて局所的な加熱を行う装置や方法などとして、広く適用することができる。
【0082】
本実施形態の電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法は、上述した電子ビーム溶接装置1及び電子ビーム溶接方法とほぼ同様としてある。
このようにすることによって、本実施形態の電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法は、アライメントの精度や信頼性などを向上させることができ、また、製造原価のコストダウンを図ることができる。
【0083】
以上、本発明の電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法、並びに、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法について、好ましい実施形態や応用例を示して説明したが、本発明に係る電子ビーム加工装置及び電子ビーム加工方法、並びに、電子ビーム照射装置及び電子ビーム照射方法は、上述した実施形態や応用例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、電子ビーム溶接装置1は、一つのアライメントコイル31を備えた構成としてあるが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、二つのアライメントコイル31を備える構成としてもよい。このように、二つのアライメントコイル31を用いてアライメントを行うことにより、電子ビームの中心軸を、集束コイル4の中心軸と一致させることができ、より高精度のアライメントを行うことができる。
【0084】
また、情報処理装置34は、アライメント制御手段3としての制御を行う構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、電子ビーム溶接装置1の全体的な制御をも行う構成としてもよい。また、電子ビーム溶接装置1の全体的な制御を行う情報処理装置が、情報処理装置34の制御をも行う構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接装置の概略ブロック図を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接装置の動作(第一ループ)を説明するための、要部の概略拡大図を示している。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接装置における照射画像を説明するための概略拡大図であり、(a)は図3に対応する照射画像を示しており、(b)は図5に対応する照射画像を示しており、(c)は図6に対応する照射画像を示している。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接装置の動作(第二ループ)を説明するための、要部の概略拡大図を示している。
【図6】図6は、本発明の一実施形態にかかる電子ビーム溶接装置の動作(第三ループ)を説明するための、要部の概略拡大図を示している。
【符号の説明】
【0086】
1 電子ビーム溶接装置
2 電子銃
3 アライメント制御手段
4 集束コイル
5 偏向コイル
10 ターゲット
11 アッパーフォーカスの照射画像
12 ロアーフォーカスの照射画像
21 高圧電源
31 アライメントコイル
32 デジタル観測光学系
33 デジタル画像処理コントローラ
34 情報処理装置
321 反射鏡
322 反射鏡
323 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを放出する電子銃と、
前記電子ビームを集束する集束コイルと、
前記集束コイルの中心に前記電子ビームを入射させるためのアライメント手段、前記電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系、前記デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部、並びに、前記画像処理部からの処理データにもとづいて、前記電子銃、前記集束コイル及び前記アライメント手段を制御する制御部を有するアライメント制御手段と
を備え、
前記アライメント制御手段の前記制御部が、前記電子銃及び前記集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で前記電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、前記アライメント手段に、アライメント制御信号を出力することを特徴とする電子ビーム加工装置。
【請求項2】
前記所定のフォーカスの異なる状態が、アッパーフォーカス状態とロアーフォーカス状態であることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム加工装置。
【請求項3】
前記アライメント手段が、アライメントコイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム加工装置。
【請求項4】
前記デジタル観測光学系が、CCDカメラと一つ以上の反射鏡を有し、前記反射鏡が、前記電子銃と前記集束コイルとの間に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子ビーム加工装置。
【請求項5】
電子銃が電子ビームを放出し、
集束コイルの中心に前記電子ビームを入射させるためのアライメント手段と、前記電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系と、前記デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部と、前記画像処理部からの処理データにもとづいて、前記電子銃、前記集束コイル及び前記アライメント手段を制御する制御部とを有するアライメント制御手段が、前記集束コイルの中心に前記電子ビームを入射させ、
前記集束コイルが前記電子ビームを集束することにより、加工を行う電子ビーム加工方法において、
前記アライメント制御手段の前記制御部が、前記電子銃及び前記集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で前記電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、前記アライメント手段に、アライメント制御信号を出力することを特徴とする電子ビーム加工方法。
【請求項6】
前記所定のフォーカスの異なる状態が、アッパーフォーカス状態とロアーフォーカス状態であることを特徴とする請求項5に記載の電子ビーム加工方法。
【請求項7】
電子ビームを放出する電子銃と、
前記電子ビームを集束する集束コイルと、
前記集束コイルの中心に前記電子ビームを入射させるためのアライメント手段、前記電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系、前記デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部、並びに、前記画像処理部からの処理データにもとづいて、前記電子銃、前記集束コイル及び前記アライメント手段を制御する制御部を有するアライメント制御手段と
を備え、
前記アライメント制御手段の前記制御部が、前記電子銃及び前記集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で前記電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、前記アライメント手段に、アライメント制御信号を出力することを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項8】
前記所定のフォーカスの異なる状態が、アッパーフォーカス状態とロアーフォーカス状態であることを特徴とする請求項7に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項9】
電子銃が電子ビームを放出し、
集束コイルの中心に前記電子ビームを入射させるためのアライメント手段と、前記電子ビームの照射画像を観測するデジタル観測光学系と、前記デジタル観測光学系からの画像データを処理する画像処理部と、前記画像処理部からの処理データにもとづいて、前記電子銃、前記集束コイル及び前記アライメント手段を制御する制御部とを有するアライメント制御手段が、前記集束コイルの中心に前記電子ビームを入射させ、
前記集束コイルが前記電子ビームを集束することにより、前記電子ビームを照射する電子ビーム照射方法において、
前記アライメント制御手段の前記制御部が、前記電子銃及び前記集束コイルを制御し、所定のフォーカスの異なる状態で前記電子ビームをターゲットに照射し、これらの照射画像の位置座標の差分から算出した補正値にもとづいて、前記アライメント手段に、アライメント制御信号を出力することを特徴とする電子ビーム照射方法。
【請求項10】
前記所定のフォーカスの異なる状態が、アッパーフォーカス状態とロアーフォーカス状態であることを特徴とする請求項9に記載の電子ビーム照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−125467(P2010−125467A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300801(P2008−300801)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000232173)NECコントロールシステム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】