説明

電子レンジによる調理方法及び電子レンジ調理用調味液セット

【課題】食品素材を入れて、電子レンジで加熱調理するだけで、おいしい調理品を作ることができる、電子レンジ調理用調味料セットを提供する。
【解決手段】樹脂を含むフィルムからなる上面部及び底面部を有する電子レンジ用パウチであり、上面部の中央付近に、食品具材を投入するための投入部6を突出する形で備えていることを特徴とする包装袋1に封入された調味液Sと、それを収納する外函であって、外函の一部を切り取って加熱用支持具7として用いることができるように設計された外函からなる、電子レンジ調理用調味液セットである。食品具材を投入し、電子レンジ加熱する際に、パウチの底面部の中央付近が持ち上がるように保持して加熱することによりおいしく調理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味液等が封入された電子レンジ用パウチに食品具材を投入して、電子レンジで加熱調理する際に効率よく均一に加熱する方法に関する。また、その方法に用いることができる電子レンジ調理用調味液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
レトルトパウチに食品を充填後、加熱加圧殺菌したレトルト食品はその保存性のよさ、簡便さから広く流通している。レトルトパウチをそのまま、電子レンジ加熱できればさらに便利であるが、密封状態ではパウチが破裂する恐れがあるため、通常は湯煎あるいは、別容器にあけてから電子レンジ加熱されている。
電子レンジ加熱できるレトルトパウチとして、加熱時に蒸気が抜けるための蒸気孔を設ける工夫をしたもの(特許文献1−6)や、パウチを開封し、そのまま電子レンジ加熱するための支持具パウチ(特許文献7−8)などがある。
レトルト処理された調味液に家庭で食品具材を投入して電子レンジで加熱調理するための包装袋としては、開封後、ジッパーで再度封をすることができるものとして、特許文献9−15などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−249176号
【特許文献2】特開2003−2374号
【特許文献3】特開2004−250046号
【特許文献4】特開2007−276876号
【特許文献5】特開2005−75426号
【特許文献6】特開2006−151411号
【特許文献7】特開2002−450号
【特許文献8】特開2008−265854号
【特許文献9】特開2008−296967号
【特許文献10】特開2008−296968号
【特許文献11】特開2009−12831号
【特許文献12】特開2009−67446号
【特許文献13】特開2009−166846号
【特許文献14】特開2009−166847号
【特許文献15】特開2009−166853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、煮魚は魚を煮汁で煮るだけの簡単な料理ではあるが、適切な濃度の煮汁を用意し、適切な加熱を行わないとおいしい煮魚にならない。魚料理は手間がかかるからと魚離れが進む中、簡単でおいしい煮魚を提供するため、煮汁を封入してレトルト処理した調味液を販売し、家庭では、好きな生魚の切り身をその調味液中に入れ、電子レンジで加熱するだけでよいという商品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、レトルトパウチで販売されている各種調味液と同程度のパウチで、しかもその中に食材を投入して電子レンジ加熱調理することが可能な形態を種々検討した結果、寝かせたままのパウチの上面に投入口をパウチから突き出した形状に設けることにより、ジッパーなどを用いて再度封をしなくても、中身がこぼれることなく、安定に電子レンジ加熱することができることを見出して、電子レンジ調理用の包装袋を完成させた(特願2009-223782)。さらにその包装袋を用いて、より安定して好ましい煮魚を調理することを検討する中で、本発明の調理方法を完成させた。
【0006】
本発明は(1)〜(6)の調理方法と(7)〜(9)の電子レンジ調理用調味液セットを要旨とする。
(1)樹脂を含むフィルムからなる上面部及び底面部を有する電子レンジ用パウチであり、上面部の中央付近に、食品具材を投入するための投入部を突出する形で備えていることを特徴とする包装袋に封入された調味液に、食品具材を投入し、電子レンジ加熱する際に、パウチの底面部の中央付近が持ち上がるように保持して加熱することを特徴とする調理方法。
(2)パウチの底面部の中央付近を持ち上げる方法が、加熱用支持具を用いることによるものである(1)の調理方法。
(3)パウチの底面部の中央付近を持ち上げる方法が、底面部の中央付近の下に加熱用支持具を設置することによるものである(2)の調理方法。
(4)加熱用支持具の高さが2〜5cmである(3)の調理方法。
(5)前期包装袋を紙製外函に収納した製品とし、その紙製外函の一部を加熱用支持具として用いる(2)ないし(4)いずれかの調理方法。
(6)紙製外函の一端を切り目により切り取ることにより加熱用支持具として用いるものである(5)の調理方法。
(7)樹脂を含むフィルムからなる上面部及び底面部を有する電子レンジ用パウチであり、上面部の中央付近に、食品具材を投入するための投入部を突出する形で備えていることを特徴とする包装袋に封入された調味液と、それを収納する外函であって、外函の一部を切り取って加熱用支持具として用いることができるように設計された外函からなる、電子レンジ調理用調味液セット。
(8)外函の一端を2〜5cmの幅で切り取れるように切り目が入ったものである(7)の電子レンジ調理用調味液セット。
(9)外函が紙製である(7)又は(8)の電子レンジ調理用調味液セット。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調理方法により、同じ包装袋で電子レンジ加熱しても、平らに置いて加熱するのに比べて、煮汁が対流しやすく、外側からの熱伝達効率が上げり、均一に加熱される、蒸気口となる食材投入部が立ち上がりやすくなり、液が吹きこぼれにくくなる、パウチの端部の液量が多くなり、焦げにくくなる、などの効果があり、おいしい煮魚を調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明に用いる包装袋の断面図の模式図である。BはAの包装袋にマチをつけて厚みが出るようにしたタイプである。
【図2】図2は図1Aのタイプの包装袋に調味液が封入された状態の断面図である。
【図3】図3は本発明の包装袋入り調味液に食品具材を入れた状態を示す斜視図である。
【図4】図4は本発明の調理方法(B)と比較例として平らにおいて調理する場合(A)の包装袋と食品具材の状態を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の包装袋を収納する外函の1例を示す模式図である。
【図6】図6は本発明の加熱用支持具の別の態様を示す模式図である。
【図7】図7は実施例1で温度を測定した箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる電子レンジ加熱用包装袋の最もシンプルな態様は図1Aの断面図や図3の斜視図で示されるパウチである。底面3を構成するフィルムと上面2及び投入部6を構成する2枚又は3枚のフィルムからなり、図2に示すように調味液を封入することができる。例えば、底面用フィルム1枚、と上面用フィルム2枚を熱溶着して、図1Aのような形状の袋を作る。端部4を閉じる前に、端部4から調味液を入れ、端部4も閉じるというような工程で本発明の調味液入りでパウチを製造することができる。上面を1枚のフィルムで構成する、投入部6から調味液を入れるなど、他の態様でもかまわない。
使用時には、投入部6の先端を開封して食品素材を投入することができる。投入部から両端部4,5に向かってほぼ同量の食品素材を入れる(図3)。図1Bのように端部にマチを設けて厚みを持たせた包装袋でもよい。
この包装袋1に調味液と食品具材が収納された状態で、投入部6を開放したまま、電子レンジのターンテーブル中央に置き、電子レンジ加熱すると、食品素材と調味液が加熱され調理することができる。
【0010】
包装袋1をそのまま平らに置いて加熱すれば調理を行うことができるが、調味液や食品素材の種類によっては、加熱ムラができたり、調味液が突沸してしまう場合がある。これは、調味液自体の成分や粘度による影響、水溶性たんぱく質を多く含む魚肉など具材からの成分による影響などが原因である。また、調味液や具材の量にもよる。
これらの場合であっても本発明の調理方法を採用することで、いずれの場合にもより好ましい加熱状態を得ることができる。本発明の調理方法は、上記包装袋を電子レンジのターンテーブル上に置くときに、包装袋の中央部が持ち上がるように保持して加熱する方法である。保持する方法は何でもよいが、簡単なのは、中央部を持ち上げる加熱用支持具を用いる方法である。図4Bに示すように中央部の下面に支持具を置くだけでよい。加熱用支持具とは、パウチを支えることができる立体形状のものであれば何でもよく、電子レンジ内においても発熱などしない紙製、樹脂製、木製、陶器製などでできた一定の厚みのあるものであればなんでも良い。パウチの中央部が2〜5cm程度持ち上がればいいので、高さ2〜5cmの立方体、直方体、円柱などを用いることができる。好ましくは、高さ2〜5cmで、長さがパウチの幅と同程度である10〜15cm、幅が2〜5cm程度の直方体が安定するので好ましい。
【0011】
支持具となるものをセットにしてもよいが、パウチ入り調味液は紙製の外函などに収納して販売されることも多いので、その外函を利用するのが合理的である。特にパウチを収納する外函はパウチの大きさと相関するサイズであることから、外函の一部を切り取って用いるように設計しておけば好都合である。具体的には、図5に示すように外函10の一端にミシン目などの切り目を入れておき、切り取れるようにしておくのが好ましい。図5のような態様以外にも、外函の厚紙を切り開いて、折り目を印刷して置き、一定の厚みの支持具となるようにして用いたり、単に厚紙を丸めて用いることもできる。
あるいは、図6に示すように包装袋1の両端部4,5を支えることにより、包装袋の中央付近が持ち上がるように保持することもできる。この場合の両端部を支える加熱用支持具としても外函の1面を切り取るなどして用いることができる。
均一に加熱するという観点から、包装袋の投入部は包装袋のほぼ中央に設けられているものが好ましいが、製造の都合で多少の偏りはかまわない。また、投入口は全長にわたって開放されていても、中央部付近のみを開放したのでもかまわない。蒸気が抜けるような仕組みになっていれば、簡単に封をしてもかまわない。
【0012】
パウチは熱融着性を有するシート状の可撓性フィルム(以下、「本体フィルム」と称する。)で形成される。本体フィルムは、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート又はこれらを積層したものに酸化アルミニウムや酸化ケイ素等の無機化合物が蒸着された基材層に、ポリプロピレン(PP)等からなる熱融着性層が積層されて形成される。
包装袋の製造はフィルムの端部を熱溶着によって接合することによって行う。
包装袋の大きさは家庭用電子レンジで加熱できるために底面の長さは最長20cm程度、高さも10cm以下程度の大きさが好ましい。
【0013】
調味液が封入された包装袋1の使用方法は、まず使用者が食材投入部6の端部を開口する。使用者は、食材投入部6から魚の切り身等の食材Fを包装袋1の内部に投入する。このとき、食材Fを両端部4、5に均一に投入する(図3)。この包装袋1を電子レンジ内に設置する際に、外函の一部を切り取り(図5)、包装袋1の下の中央部におき、図4Bのように配置する。この状態で電子レンジ加熱する。食材Fは調味液Sとともに加熱調理される。この際、包装袋が立っていることにより、調味液の対流が起こりやすくなる。電子レンジ加熱では端部が熱くなりやすく、中央部は加熱が遅くなる傾向にあるが、対流が起こることにより、全体が均一に加熱される。また、食材投入口6付近に空間ができるので、調味液が吹きこぼれるのも防ぐことができ、スムーズに蒸気が発散される。さらに、過加熱になりやすい端部の液量が多くなるので、焦げにくくなる。加熱調理が終了した後、使用者は食材投入部6、第1端部4または第2端部5を開き、食材F及び調味液Sを容器に盛り付ける。第1端部4または第2端部5には、ノッチまたはスリットを設けて、開封しやすいようにするのが好ましい。
【0014】
本実施形態の包装袋1を用いて、本発明の調理方法で加熱すれば、食材投入部6がパウチの上面に設けられており、上を向いて開放されているので、電子レンジ加熱により水蒸気が発生しても突沸することなく、安定に加熱調理できる。また、このとき、食材投入部6の高さが重要であり、低すぎると食材を投入する際や電子レンジへ移動させるときに調味液がこぼれたりするので好ましくない。加熱用支持具は、パウチのサイズによって、取扱しやすい高さに調節するのが好ましい。2〜7cm、好ましくは、3〜5cm程度前後がよい。
【0015】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0016】
本発明の包装袋は、煮魚など魚介類の加熱調理に特に有用である。野菜、畜肉などと比較して、加熱しすぎないことが重要であるので、速やかに均一に加熱することによりおいしく調理することができる。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
本発明の調理方法の効果を包装袋を平らに置いた場合の効果と比較した。
図3に示すような状態に、包装袋(12.5cm×19cm、投入部の高さ6cm)に魚の切り身と調味料をいれ、加熱用支持具(高さ2.5cm、幅2cm、長さ12cm)を用いた場合(図4B)と用いない場合(図4A)で電子レンジ加熱した後の魚肉の部位毎の温度を測定した。
生のブリの切り身(100g)2切れと醤油ダレ120gいれた場合は500Wで6分間加熱し、生のタラの切り身(70g)2切れとあんかけダレ100gを入れた場合には500Wで5分半加熱した。3機種の電子レンジを用いて試験した。
【0018】
ブリの結果を表1に示す。魚肉の温度を測定した部位は図7に示すとおりである。支持具なしの場合、魚肉中心やパウチ中心部において、80℃に到達していないことがあったが、支持具ありの場合、いずれの部位でもすべて80℃以上になり、魚肉の中心部と端部との温度差が小さかった。
タラの結果を表2に示す。ブリの場合と同様に、支持具なしの場合、魚肉中心やパウチ中心部において、80℃に到達していないことがあったが、支持具ありの場合、いずれの部位でもすべて80℃以上になり、魚肉の中心部と端部との温度差が小さかった。
タラの支持具なしでは、パウチの4隅が激しく焦げついたが、支持具ありでは軽度であった。また、タラの支持具なしでは、沸騰の衝撃で蒸気口が倒れて液がこぼれるものが1検体見られた。
上記の結果より、加熱支持具を使用することで加熱効率が向上し、加熱ムラや焦げ付きも少なくなることが確認された。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【実施例2】
【0021】
実施例1のブリを用いた試験と同様の試験を支持具の高さを表3に示すように変えて行った。
どの高さでも支持具の効果が得られたが、15mmでは蒸気口が立ち上がりやすくなる効果はあまり感じられなかった。また、55mmでは高すぎてレンジにパウチを設置しにくく、少々不安定であり、加熱中に支持具が倒れてしまう可能性も考えられた。
以上より、支持具の高さは15mm〜55mmまでが可能だが、25mm〜45mm程度が理想的であった。
【0022】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の包装袋を使用して、レトルト処理した調味液を販売する。家庭では、好きな食材をその調味液中に入れ、電子レンジで加熱するだけで、簡単に惣菜一品を作ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 包装袋
2 上面部
3 底面部
4 第1端部
5 第2端部
6 食材投入部
7 支持具
8 外函
9 温度測定位置(パウチ外側)
10 温度測定位置(魚肉中心)
11 温度測定位置(パウチ中心)
S 調味液
F 食品素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含むフィルムからなる上面部及び底面部を有する電子レンジ用パウチであり、上面部の中央付近に、食品具材を投入するための投入部を突出する形で備えていることを特徴とする包装袋に封入された調味液に、食品具材を投入し、電子レンジ加熱する際に、パウチの底面部の中央付近が持ち上がるように保持して加熱することを特徴とする調理方法。
【請求項2】
パウチの底面部の中央付近を持ち上げる方法が、加熱用支持具を用いることによるものである請求項1の調理方法。
【請求項3】
パウチの底面部の中央付近を持ち上げる方法が、底面部の中央付近の下に加熱用支持具を設置することによるものである請求項2の調理方法。
【請求項4】
加熱用支持具の高さが2〜5cmである請求項3の調理方法。
【請求項5】
前期包装袋を紙製外函に収納した製品とし、その紙製外函の一部を加熱用支持具として用いる請求項2ないし4いずれかの調理方法。
【請求項6】
紙製外函の一端を切り目により切り取ることにより加熱用支持具として用いるものである請求項5の調理方法。
【請求項7】
樹脂を含むフィルムからなる上面部及び底面部を有する電子レンジ用パウチであり、上面部の中央付近に、食品具材を投入するための投入部を突出する形で備えていることを特徴とする包装袋に封入された調味液と、それを収納する外函であって、外函の一部を切り取って加熱用支持具として用いることができるように設計された外函からなる、電子レンジ調理用調味液セット。
【請求項8】
外函の一端を2〜5cmの幅で切り取れるように切り目が入ったものである請求項7の電子レンジ調理用調味液セット。
【請求項9】
外函が紙製である請求項7又は8の電子レンジ調理用調味液セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−21(P2012−21A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135679(P2010−135679)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】