説明

電子レンジ加熱用容器

【課題】一度開封して食材等を投入した後、安全に電子レンジで加熱することができる電子レンジ加熱用容器を提供すること。
【解決手段】前面部材及び背面部材の両サイド及びボトムの三方がシールされ、トップ端部の再封止手段の開放により開口部が形成される電子レンジ加熱用容器であって、前面部材は、基材を含む外層とシーラントを含む内層との2層からなり、内層は、貫通する切込み線を有し、前面部材は、再封止手段よりもボトム側のサイドシール部の一部の、外層と内層との間に設けられた通蒸部を有し、前面部材は、少なくとも切込み線を含む、外層と内層とが貼合されていない領域を有し、背面部材は、通蒸部よりもボトム側に、背面部材が折り返されて設けられた折込部を備えたことを特徴とする電子レンジ加熱用容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に食材を投入して、調味液等とともに電子レンジで加熱調理するための電子レンジ加熱用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウチ等の包装袋に入れた食品をレトルト釜で加熱、加圧殺菌した、いわゆるレトルト食品が広く流通し、使用されている。レトルト食品は包装袋によって密封されているため、そのまま電子レンジで加熱しようとすると、食品から発生する水蒸気によって包装袋が膨張し、破裂するおそれがある。
【0003】
この問題を解決するために、包装袋の一方の端部寄りの内部に、上述の水蒸気を逃がすための耐熱性不織布を二つ折りに折り込んで取付けた包装袋が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この包装袋を使用したレトルト食品を電子レンジで加熱するときには、不織布が取り付けられている端部側を切り取って、不織布側の端部を開放し、その後食品を包装袋ごと電子レンジに入れて加熱する。
【0004】
しかしながら、特許文献1に提案されている包装袋は、開放した端部が不織布等で覆われているので、タレや調味液等が充填されたレトルト食品の包装袋を一度開封して食材を加えた後、電子レンジでタレ等と食材とを一緒に加熱するということはできない。
【0005】
開口部に開閉自在の公知のジッパー等を設ければ、食材を投入して再度包装袋を密封することは可能になるが、ジッパーを閉じた開口部は通気性に乏しく、電子レンジで加熱する際には、上述の破裂の危険性が問題となる。
【0006】
このために、通常の保存や輸送時には密閉されているが、電子レンジでの加熱によって内部の水蒸気圧が上昇したときに通蒸して、容器が破裂する危険性を回避する圧力弁としての機構を包装容器の一部に設けた構造が種々提案されている。
【0007】
特許文献2には、四辺中の三辺をシールした袋体の開放された一辺に、シール加工した際に圧力弁を形成する圧力弁要素を印刷形成したことを特徴とする食品の調理用袋体が提案されており、特許文献3には上記圧力弁を剥離剤の塗布によって形成することが提案されている。
しかしながら、特許文献2と特許文献3に記載の調理用袋体では、電子レンジでの加熱によって内部の水蒸気圧が上昇したときに通蒸した部分から内容物が外部に漏れる危険性を除去することは困難であった。
【0008】
そのために、スタンディングパウチの形態で通蒸部と再封止手段機構の位置と形状を工夫した包装容器が特許文献4と特許文献5において提案されており、通常のパウチにおいてもその一面に折り返しによる食材投入部を設けた包装容器が特許文献6において提案されている。
【0009】
さらに出願人は、特願2010−009116において、サイドシール部の一部に通蒸部を設け、背面側に折込部を備えた電子レンジ用容器を提案しているが、上記の方法によっても、電子レンジでの加熱によって内部の水蒸気圧が上昇したときに通蒸した部分から内容物が外部に漏れる危険性を簡単に除去することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−80978号公報
【特許文献2】特開平8−228697号公報
【特許文献3】特開平9−40030号公報
【特許文献4】特開平11−189278号公報
【特許文献5】特許第3802205号公報
【特許文献6】特開2009−166853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、一度開封して食材等を投入した後、安全に電子レンジで加熱することができる電子レンジ加熱用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電子レンジ加熱用容器は、電子レンジでの加熱時に容器内部に生じる水蒸気の圧力を利用して、容器の破裂を起こすことなく水蒸気を容器外部に放出し、かつ容器片面に形成した折込部の膨張を利用して水蒸気放出のための通蒸部の位置を押し上げて内容食材の漏出を防止するという機能を備えた電子レンジ加熱用容器である。
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明は、前面部材及び背面部材の両サイド及びボトムの三方の端部がシールされて形成されており、トップ端部の内面に設けられた再封止手段の開放により開口部が形成される電子レンジ加熱用容器であって、前記前面部材は、基材を含む外層とシーラントを含む内層との2層からなり、該内層は、内層を貫通する切込み線を有し、前記前面部材は、前記再封止手段よりもボトム側のサイドシール部の一部の、前記外層と内層との間に設けられた通蒸部を有し、前記前面部材は、少なくとも前記切込み線を含む、前記外層と前記内層とが貼合されていない領域を有し、前記背面部材は、前記通蒸部よりもボトム側に、該背面部材が折り返されて設けられた折込部を備え、前記開口部が密封された状態で加熱され、容器の内部に水蒸気が発生して内圧が所定値以上となると、前記折込部が膨張して前記通蒸部を持ち上げると同時に前記通蒸部に蒸気孔が形成され、容器内部で発生した蒸気が、前記切込み線と、前記外層と内層とが貼合されていない領域を経由して、通蒸部から外部に放出されることを特徴とする電子レンジ加熱用容器である。
【0014】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記通蒸部が、前記内層と外層の間に塗布された剥離ニスによって剥離可能な状態に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器である。
【0015】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記通蒸部が、前記外層と内層とが貼合されていない領域に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器によれば、前面部材及び背面部材のサイド及びボトムの三方の端部がシールされて形成されており、トップ端部の内面に設けられた再封止手段の開閉により開口部が形成される電子レンジ加熱用容器であって、前記前面部材は、基材を含む外層とシーラントを含む内層との2層からなり、該内層は、内層を貫通する切込み線を有し、前記前面部材は、前記再封止手段よりもボトム側のサイドシール部の一部の、前記外層と内層との間に設けられた通蒸部を有し、前記前面部材は、少なくとも前記切込み線を含む、前記外層と前記内層とが貼合されていない領域を有しているので、電子レンジ加熱によって、容器内部に発生した水蒸気は、切込み線を通過して、外
層と内層の間の貼合されていない領域に進入し、さらに外層と内層との間に設けられた通蒸部から容器の外に放出される。このように水蒸気の放出経路が複雑であるため、内容物が水蒸気と共に噴出したりすることが生じ難く、また外層と内層の貼合されていない領域の形状を工夫することにより、水蒸気の抜け具合を調整して、例えば蒸し状態とすることも可能となる。
【0017】
また、前記背面部材は、前記通蒸部よりもボトム側に、該背面部材が折り返されて設けられた折込部を備えているので、前記開口部が密封された状態で加熱され、容器の内部に水蒸気が発生して内圧が所定値以上となると、前記折込部が膨張して前記通蒸部を持ち上げる。このため、内容物が水蒸気と共に噴出する現象をより確実に防止することができる。
【0018】
従って、本発明によれば、トップ端部の再封止手段部分から一度開封して調味料や食材等を投入した後、安全に電子レンジで加熱することができる電子レンジ加熱用容器を提供することが出来る。
【0019】
本発明の請求項2に記載の電子レンジ加熱用容器によれば、通蒸部が、内層と外層の間に塗布された剥離ニスによって剥離可能な状態に設けられているので、印刷法により剥離ニスを部分的に塗布することによって通蒸部を確実に形成することができる。
【0020】
また、本発明の請求項3に記載の電子レンジ加熱用容器によれば、通蒸部が、外層と内層とが貼合されていない領域に含まれているので、通蒸部は、加熱前から開放されており、従って、加熱によって発生した水蒸気は自然に確実に放出される。このため、加熱時に発生する容器内部の急激な圧力増加にも安全に対応出来る。特に気密性や水密性の要求されないじゃがいも等の固形食品の加熱に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電子レンジ加熱用容器の一実施態様を示した平面模式図であり、前面部材側から見た状態を示す。
【図2】本発明に係る電子レンジ加熱用容器の一実施態様を示した平面模式図であり、背面部材側から見た状態を示す。
【図3】図1のX−X’断面を示した断面模式図である。
【図4】図1のY−Y’断面を示した断面模式図である。
【図5】本発明に係る電子レンジ加熱用容器に内容物を収納して、電子レンジで加熱した時の状態を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る電子レンジ加熱用容器の他の実施態様を示した平面模式図である。
【図7】前面部材の層構成の一例を示した断面模式図である。
【図8】背面部材の層構成の一例を示した断面模式図である。
【図9】前面部材、背面部材の層構成の一例を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る電子レンジ加熱用容器の実施形態について、図1から図4の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る電子レンジ加熱用容器(1)の一実施態様を示した平面模式図であり、前面部材(2)側から見た状態を示している。また図2は、同じく背面部材(3)側から見た状態を示している。また図3は、図1のX−X’断面を示した断面模式図であり、図4は、図1のY−Y’断面を示した断面模式図である。
【0024】
本発明に係る電子レンジ加熱用容器(1)は、内部に加熱すべき食材や調味料を収納して、電子レンジで加熱することにより、安全かつ簡便に調理ができる電子レンジ加熱用容器である。
【0025】
本発明に係る電子レンジ加熱用容器(1)は、前面部材(2)及び背面部材(3)の両サイド及びボトムの三方の端部がシールされて、それぞれサイドシール部(11)、ボトムシール部(12)が形成されており、トップ端部(4)の内面に設けられた再封止手段(6)の開放により開口部が形成される電子レンジ加熱用容器である。
【0026】
前面部材(2)は、基材(9)を含む外層(2a)とシーラント(10)を含む内層(2b)との2層からなる。内層(2b)には、内層(2b)を貫通する切込み線(5)が設けられている。また、前面部材(2)には、少なくとも切込み線(5)を含む、外層(2a)と内層(2b)とが貼合されていない領域(2c)が設けられている。
【0027】
また前面部材(2)は、再封止手段(6)よりもボトム側のサイドシール部(11)の一部の、外層(2a)と内層(2b)との間に設けられた通蒸部(7)を有する。
【0028】
背面部材(3)は、通蒸部(7)よりもボトム側に、背面部材(3)が折り返されて設けられた折込部(8)を備えている。
【0029】
図5は、本発明に係る電子レンジ加熱用容器(1)に内容物を収納して、電子レンジで加熱した時の状態を示した斜視図である。開口部が密封された状態で加熱され、容器の内部に水蒸気が発生して内圧が所定値以上となると、折込部(8)が膨張して通蒸部(7)を持ち上げると同時に通蒸部(7)に蒸気孔が形成され、容器内部で発生した蒸気が、切込み線(5)と、外層と内層とが貼合されていない領域(2c)を経由して、通蒸部(7)から外部に放出される。
【0030】
このような構成によって、容器(1)の内部に水分を含む食材を封入して、再封止手段(6)を密封した状態で加熱すると、加熱によって、容器(1)の内部に水蒸気が発生して内圧が上昇する。内圧が所定値以上となると、折込部(8)が内部から膨張して通蒸部(7)を持ち上げると同時に通蒸部(7)が開口して蒸気孔が形成される。これによって通蒸部(7)から食材等の内容物が漏洩噴出することなく、過剰な水蒸気の圧力を放散させて容器の破裂を防止して安全に加熱を行うことが出来る。
【0031】
図1〜4に示した、本発明に係る電子レンジ加熱用容器(1)のトップ端部(4)の内面に設けられた再封止手段(6)は、開口して内容物の出し入れを行い、封止して電子レンジによる加熱を行うために設けられたものであり、粘着テープ、ファスナー等が使用できる。
【0032】
次に通蒸部(7)の構成について、説明する。図1〜4では通蒸部(7)として剥離ニス(7a)を用いた構成の場合を示した。本発明の電子レンジ加熱用容器(1)においては、通蒸部(7)は天地が1mmから10mmの長さでサイドシール部(11)の、再封
止手段(6)と折込部(8)の間の高さの位置の外層と内層が貼合されていない領域(2c)の位置に設けられており、前面部材(2)の外層(2a)と内層(2b)の間に剥離ニス(7a)が挟みこまれている構造になっている。
【0033】
剥離ニス(7a)は、外層(2a)と内層(2b)を貼り合せるための接着剤層(15)の接着力を弱めることを目的として設けられるものであり、設ける位置としては、外層(2a)の接着剤層に接する面か、内層(2b)の接着剤層に接する面に設ける。実際上は、外層(2a)の内側面に印刷層(14)を設けることが多いので、これと同時に剥離ニス(7a)を設けるのが効率的である。
【0034】
剥離ニス(7a)としては、公知の印刷用ワニスにシリコーン系、フッソ系、ワックス系等の滑剤を添加したものが使用できる。印刷時の位置合わせを容易にするために、適宜着色を施してもよい。
【0035】
通蒸部(7)の構造としては、剥離ニスによる他、後述するイージーピールテープを用いたり、あるいは未接着の状態のままにしても良い。図6に示した実施態様は、通蒸部(7)が外層と内層とが貼合されていない領域(2c)に含まれており、未接着状態のままにあるものである。
【0036】
イージーピールテープは、電子レンジ加熱用容器(1)を加熱して発生する水蒸気等の気体による内圧により易剥離性を示すテープであり、電子レンジ加熱用容器内面のシーラント(10)に対して接着性を示す接着性樹脂層と電子レンジ加熱用容器を加熱して発生する水蒸気等の気体による内圧により易剥離性を示す易剥離性樹脂層との2層からなる場合が代表的である。イージーピールテープが易剥離性シーラントである場合もある。
【0037】
上記の、シーラント(10)に対して接着性を示す接着性樹脂層としては、本体フィルムの内面シーラント(10)を構成する熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂をそのまま使用することができるが、CPPと称されるプロピレン系重合体(コポリマーやターポリマー)や、LLDPEまたはLLDと称される直鎖状低密度ポリエチレンからなる層が好適に用いられる。そしてその厚みは、20〜150μmとすることが多い。
【0038】
上記の易剥離性を示す易剥離性樹脂層としては、例えば、ブロックポリプロピレン系コポリマー、ランダムポリプロピレン系コポリマー、エチレン/酢酸ビニル等のエチレン系共重合体などが好適に用いられる。エチレン系共重合体としては、特にエチレン成分含有量が85〜98重量%の共重合体が望ましい。
【0039】
ここで、ブロックポリプロピレン系コポリマーの代表例はポリプロピレン−ポリエチレンブロックコポリマー、ランダムポリプロピレン系コポリマーの代表例はプロピレン−エチレンランダムコポリマーである。
【0040】
上記の接着性樹脂層と易剥離性樹脂層の積層方法は、特に限定されない。例えば、ドライラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、及び共押出などの周知の方法が挙げられる。
【0041】
上述したように、通蒸部(7)は、未接着部として設けられたものであっても良い。内容物が水密性を必要としない程度の固形物である場合には簡単な構造で通蒸出来るためにこの構造が好ましいが、加熱時の内圧によって容器を膨らませるための内圧上昇を得るためには通蒸部(7)の長さは1mm以上10mm以下であることが望ましい。
【0042】
図7は、前面部材(2)の層構成の一例を示した断面模式図である。前面部材(2)は
、基材(9)を含む外層(2a)とシーラント(10)を含む内層(2b)との2層からなるヒートシール性を有するシート状の可撓性フィルムによって形成されている。この例では、基材(9)と印刷層(14)とからなる外層(2a)と、シーラント(10)単体からなる内層(2b)とが、部分的に塗布された接着剤層(15)によって積層されている。接着剤層(15)のない部分は、外層と内層が貼合されていない領域(2c)を形成している。
【0043】
図8は、背面部材(3)の層構成の一例を示した断面模式図である。この例では、背面部材(3)は、印刷層(14)を含む基材(9)と、シーラント(10)とが、全面に塗布された接着剤層(15)によって積層されている。
【0044】
図9は、前面部材(2)、背面部材の層構成の一例を示した断面模式図である。この例では、印刷層(14)を含む基材(9)と、シーラント(10)との間に中間層(16)が、接着剤層(15)によって積層されている。
【0045】
通常、前面部材(2)、背面部材(3)を構成する積層フィルム(以下本体フィルムと称する)としては、調理用容器としての耐熱性や内容物保護性を備えた基材(9)とヒートシール性の優れたシーラント(10)とを含む二層以上の積層フィルムを使用する。
【0046】
図9は本発明の電子レンジ加熱用容器を構成する本体フィルムの一例を示す断面模式図である。この場合は容器外側から、内側面に印刷層(14)を施した基材(9)と最内側にシーラント(10)が積層されており、その中間に中間層(16)が両面に接着剤層(15)を介してラミネートされている。
印刷層(14)と中間層(16)は必要に応じて設けられる層であり、中間層の具体例については後述する。
【0047】
本発明の電子レンジ加熱用容器において本体フィルムを構成する基材(9)の材質としては、必要な耐熱性を有し、一般に電子レンジで加熱される食品用包装材料として使用されているものならば、特に限定はされない。
【0048】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの延伸又は無延伸樹脂フィルム、ナイロン6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押出しフィルム、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押出しフィルムなどが使用できる。またはこれらの2つ以上のフィルムを積層した複合フィルムであっても構わない。
【0049】
また、基材(9)の厚さは、加工性を考慮すると、10〜50μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内がより好ましい。この基材(9)には、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの公知の添加剤を加えることができ、必要に応じて適宜添加される。さらに、基材(9)の表面にコロナ放電処理、アンカーコート処理等の表面改質を行い、後述するシーラント層(10)等との接着性や印刷適性を向上させることも可能である。
【0050】
また、必要に応じて基材(9)の表面または裏面に印刷層(14)を形成することができる。印刷層(14)は、基材(9)の表裏どちらでも形成可能であるが、一般的なプラスチックフィルムへの印刷の場合と同様に、インキの耐摩擦性、耐候性などを考慮して、
基材(9)の容器内面となる面にグラビア印刷方式などで設けることが好ましい。
【0051】
本発明の電子レンジ加熱用容器において、本体フィルムを構成する最内層のシーラント(10)には、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂、またはこれらの樹脂を成膜化したフィルムを使用することができる。
【0052】
また、シーラント(10)の層の厚さは、シール強度、物性面、加工性、を考慮すると、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、30〜70μmの範囲内がより好ましい。
【0053】
最外層の基材(9)と、最内層のシーラント(10)とを積層する方法としては、例えば、ドライラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びエクストルージョンラミネーション法を利用したサンドイッチラミネーション法などの公知の方法が使用出来る。
【0054】
但し、前面部材(2)の外層(2a)と内層(2b)の積層に当っては、外層と内層が貼合されない領域(2c)を形成することが必要であるため、接着剤の部分的な塗布が可能な、ドライラミネーション法が適している。
【0055】
前記ドライラミネーション方法に使用する接着剤は、一般的に、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系などのラミネート用接着剤を使用することができる。
【0056】
内層(2b)に切込み線(5)を設ける方法としては、刃物を用いたハーフカットや、レーザーを用いる方法がある。切込み線(5)を設けるタイミングとしては、内層と外層を貼り合せる前でも後でも良いが、貼り合せた後で設ける方が、位置合せが容易である。
【0057】
本発明の電子レンジ加熱用容器においては、基材(9)とシーラント(10)だけでは電子レンジ加熱用容器としての機能を十分に果たすことができない場合には、基材(9)とシーラント(10)との間に中間層(16)を設けることが出来る。
【0058】
前記の機能としては、例えば、ガスバリア性、機械的強靭性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性などが挙げられ、電子レンジ加熱用容器(1)として要求されるこれらの機能を中間層(16)を設けることで達成するものである。
【0059】
中間層(16)として用いられる材料としては、先に述べた、基材(9)として用いられる材料を用いることができる他、無機酸化物を蒸着したガスバリアフィルム等を用いることができる。
【0060】
本発明の電子レンジ加熱用容器(1)においては、図2、図3に示したように背面部材(3)の一部が容器外側に突出するように折込部(8)が形成されている。背面部材(3)の本体フィルムは、電子レンジ加熱用容器(1)のトップ端部(4)とボトムシール部(12)との中間の位置で上下の端部と略平行に折り返されており、トップ端部(4)側に向かって突出する突出部を有する折込部(8)が形成されている。
【0061】
折込部(8)は、電子レンジ加熱用容器(1)の容積を増加させ、電子レンジでの加熱時にトップ端部(4)側を立ち上がらせる機能を有する。折込部(8)は、電子レンジ加熱用容器(1)のトップ端部(4)側の位置、好ましくは再封止手段(6)からの折込部の距離が電子レンジ加熱用容器(1)の高さLの1/2以内の位置に設けた方が、加熱時にトップ部(4)側をより良好に立ち上がらせることができる。このためには折込部(8)の長さが5mmから折込部とトップ端部の距離の間であることが望ましい。
【0062】
上記の各部が形成された本体フィルムの背面部材(3)と前面部材(2)とを、互いのシーラント(10)が対向するように配置し、トップ端部(4)を除く三方の端部を熱融着によって一体に接合する。この時所定の位置に剥離ニス(7a)が設けられている場合には、通蒸部(7)が自動的に形成される。
【0063】
続いて、電子レンジ加熱用容器(1)の使用時の動作について説明する。
まずユーザが再封止手段(6)の係合を解除してトップ端部(4)を広げるとトップ端部(4)が開口して内容物である食材を投入できる状態になる。トップ端部(4)がシールされている場合にはトップ端部と再封止手段部(6)の間で容器を切断してから以上の動作を行う。
【0064】
ユーザは、トップ端部(4)からジャガイモやニンジン等の食材及び調味料等を電子レンジ加熱用容器(1)の内部に投入し、再封止手段(6)を閉じて密封する。このとき、食材の投入によって折込部(8)が展開し、容器(1)の容積が増加するとともに、折込部(8)よりトップ端部(4)側の領域は、上方に向かって立ち上がる。
【0065】
続いて、ユーザは食材及び調味料等の封入された電子レンジ加熱用容器(1)を電子レンジ内に設置して加熱する。食材は調味料等とともに加熱調理される。このとき、加熱によって発生した高温の水蒸気が滞留する蒸らし空間が容器内部に形成される。
【0066】
トップ端部(4)は、再封止手段(6)によって密封されているため、容器(1)の容積を超える量の水蒸気は、切込み線(5)から出て、外層と内層が貼合されていない領域(2c)を通って通蒸部(7)に向かって移動する。その結果、通蒸部(7)の内圧が所定値以上に高まると、前面部材(2)の外層(2a)と内層(2b)とを離間させるような力が通蒸部(7)に作用する。すると、通蒸部(7)の領域の剥離ニス(7a)部が離間し図5に示したように通蒸部(7)から水蒸気(13)が噴出する。
【0067】
同時に、電子レンジ加熱用容器(1)の背面部に折込まれていた折込部(8)の本体フィルムが水蒸気の内圧によって広がって容器内部の容積を増大させるとともに電子レンジ加熱用容器(1)のトップ部側の背面部を持ち上げる状態で図5のように膨らむ。
これによって、電子レンジ加熱用容器(1)の容積を超える量の水蒸気は、高い位置に持ち上げられた通蒸部(7)から適宜外部に発散し、内容物が外部に漏れることなしに電子レンジ加熱用容器(1)の破裂が防止されて安全な調理が行える。
加熱調理が終了した後、ユーザは再び再封止手段(6)の係合を解除してトップ端部(4)を開き、食材及び調味液等を容器に盛り付ける。
【0068】
この電子レンジ加熱用容器では、背面部材(3)に折込部(8)が設けられているので、食材を投入した際には折込部(8)が展開することによって電子レンジ加熱用容器(1)の内容積が増加し、蒸らし空間が確保される。従って、電子レンジ加熱用容器(1)の内部でムラのない加熱が行われ、良好に加熱調理を行うことができる。
【0069】
以上の実施形態ではトップ端部(4)がシールされていない状態を例示したが、調味料等の食材が封入された状態で比較的長期に保存され、電子レンジでの加熱直前にトップシールと再封止手段部の間で切り裂いて開口する場合ももちろんあり得る。このような場合には公知の方法によってトップ部をヒートシールして密封することやトップシールと再封止手段部の間に開封のためのノッチを設けることにより使い勝手を向上させることも出来る。
【実施例1】
【0070】
表面部材の外層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm厚み)を用い、この裏面に所定の印刷絵柄を印刷し、同時に剥離ニスを印刷した。内層のシーラントとしてポリプロピレンフィルム(厚み30μm)を用いて、図1の内層と外層が貼合されていない領域(2c)に相当する部分のみ接着剤を塗布しないようにしてドライラミネートにて貼り合せ、表面部材とした。同様の材料を用いて、全面を貼り合せ、背面部材とした。ドライラミネート用の接着剤としては大日本インキ化学工業製:LX703VLを用いて塗布量4g/mで行った。
この本体フィルムを用いて図3のような折込部(8)を備えた背面部材(3)のフィルムを作成した。折込部の長さは50mmとした。
【0071】
上記の各部が形成された前面部材(2)と背面部材(3)とを、互いのシーラント(10)が対向するように配置し、トップ端部(4)を除く三方の端部を熱融着によって一体に接合した。再封止手段(6)として、粘着テープをヒートシールによってトップ端部となる部分に貼り付けたのち、製袋機にてボトム及びサイドのシールを行い、図1、図2のような電子レンジ加熱用容器を作成した。
【0072】
このようにして作製した電子レンジ加熱用容器の粘着テープ部を開いて、食材及び調味液からなる内容物を充填した後に粘着テープを封止して、内容物が密封された電子レンジ加熱用容器とした。
【0073】
この内容物が充填された電子レンジ加熱用容器を背面を下にして電子レンジにセットして電子レンジで加熱して調理を行った。加熱によって容器は膨張してやがてトップ端部が持ち上げられて端部に近い通蒸部から水蒸気が噴出し容器の外観は図5に示したような状態になった。
【0074】
水蒸気の噴出する蒸気孔によって破裂にいたるような内圧の上昇が回避され、蒸気孔の形成された通蒸部が内圧によって持ち上げられて内容物よりも高い位置にあるために内容物が蒸気孔から漏洩噴出することなく加熱調理が安全に完了した。完了後、容器のトップ端部から粘着テープを開放して調理された食材等を取り出して試食したところ加熱ムラがなく均一に調理されていた。
【0075】
本発明の電子レンジ加熱用容器は、単に食品をあたためるのみならず、好みの食材を調味料等と一緒に封入して電子レンジで加熱調理することが出来るので鍋を汚さずに調理することが可能であり洗剤や洗浄のための水の節約が出来る。また、内容物は食品だけでなく、水分を含む様々な材料の電子レンジでの加熱が必要な場合にこの容器が適用出来る。
【符号の説明】
【0076】
1・・・電子レンジ加熱用容器
2・・・前面部材
2a・・・外層
2b・・・内層
2c・・・外層と内層が貼合されていない領域
3・・・背面部材
4・・・トップ端部
5・・・切込み線
6・・・再封止手段
7・・・通蒸部
7a・・・剥離ニス
8・・・折込部
9・・・基材
10・・・シーラント
11・・・サイドシール部
12・・・ボトムシール部
13・・・噴出水蒸気
14・・・印刷層
15・・・接着剤層
16・・・中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部材及び背面部材の両サイド及びボトムの三方の端部がシールされて形成されており、トップ端部の内面に設けられた再封止手段の開放により開口部が形成される電子レンジ加熱用容器であって、
前記前面部材は、基材を含む外層とシーラントを含む内層との2層からなり、該内層は、内層を貫通する切込み線を有し、
前記前面部材は、前記再封止手段よりもボトム側のサイドシール部の一部の、前記外層と内層との間に設けられた通蒸部を有し、
前記前面部材は、少なくとも前記切込み線を含む、前記外層と前記内層とが貼合されていない領域を有し、
前記背面部材は、前記通蒸部よりもボトム側に、該背面部材が折り返されて設けられた折込部を備え、
前記開口部が密封された状態で加熱され、容器の内部に水蒸気が発生して内圧が所定値以上となると、前記折込部が膨張して前記通蒸部を持ち上げると同時に前記通蒸部に蒸気孔が形成され、容器内部で発生した蒸気が、前記切込み線と、前記外層と内層とが貼合されていない領域を経由して、通蒸部から外部に放出されることを特徴とする電子レンジ加熱用容器。
【請求項2】
前記通蒸部は、前記内層と外層の間に塗布された剥離ニスによって剥離可能な状態に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項3】
前記通蒸部は、前記外層と内層とが貼合されていない領域に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−23283(P2013−23283A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163221(P2011−163221)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】