説明

電子レンジ用調理容器

【課題】
電子レンジを使用して冷凍された料理を加熱解凍する際に、電子レンジによる加熱に生じがちな加熱むらやパサつきを抑制し、喫食に好適な状態で調理することが可能な電子レンジ用調理容器の提供。
【解決手段】
電子レンジの加熱により水蒸気を発生させるための水を溜める容器本体と、料理を盛り付けるための皿であって、盛り付ける複数の料理を仕切るための仕切壁と水蒸気を通すためのピンホールを備えた加熱解凍用盛付皿と、電磁シールド材料からなる蓋とで構成される電子レンジ用調理容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍された複数種類の料理を配置可能な容器であり、電子レンジを用いて容器本体に溜められた水を水蒸気化し、料理を解凍、加熱して調理することができる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子レンジの普及および食品の冷凍技術の向上により、電子レンジで調理する冷凍食品は、広く普及している。ところが、電子レンジで調理された料理は、食感や風味において必ずしも十分な満足を得られるものではなかった。これは、電子レンジを用いることに起因する特有の現象である「加熱むら」と「パサつき」によるものである。
【0003】
電子レンジは、マイクロ波が食品内部に含有されている水分を加熱することにより、解凍・加熱を行う。食品内部の水分は必ずしも均一に含有されているわけではないので、「加熱むら」が生じ、また、加熱された食品内部の水分は蒸発により消失するため、結果として「パサつき」が生じてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1においては、マイクロ波の透過性の高い紙と、反射性の強いアルミ箔を組み合わせた容器を用いることにより、マイクロ波の食品への透過密度の均一化を図る発明がなされている。また、特許文献2には、容器の一部あるいは全体に浸透性の吸水部を備え、吸水部に水を含有させることにより上記問題の解決を図る発明がなされている。
【特許文献1】特開2005−47550
【特許文献2】特開平10−314021
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2005−47550号公報に記載された発明では、マイクロ波の照射量の均一化を図るものの、解凍・加熱は専らマイクロ波の直接照射に委ねられているため「パサつき」を解消することは困難である。また、上記特開平10−314021号公報に記載された発明では、解凍後直ちに喫食を予定されている冷凍弁当のような調理済み冷凍料理などについては、簡便に解凍・加熱が行えるものとは言い難い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するための、電子レンジ用調理容器を提案するものである。すなわち第一の発明として、電子レンジで加熱して水蒸気を発生させるための水を溜める容器本体と、容器本体に重ねて配置されるとともに、盛り付ける複数の料理を仕切るための仕切り壁と、容器本体側からの水蒸気を通すためのピンホールを備え、ピンホールを介して受ける水蒸気で盛り付けられる冷凍状態の料理を加熱解凍調理するための加熱解凍用盛付皿と、加熱解凍用盛付皿の少なくとも上面を覆う電磁シールド材料からなる蓋とを有する電子レンジ用調理容器を提案する。
【0007】
第二の発明として、容器本体は、盛り付けられた冷凍状態の料理を加熱解凍するに十分な量溜められた水の水面が容器本体の深さの三分の二よりも低いことを特徴とする第一の発明に記載の電子レンジ用調理容器を提案する。
【0008】
第三の発明として、蓋はカップ型であり、加熱解凍用盛付皿の側面の少なくとも一部をも覆う第一の発明または第二の発明に記載の電子レンジ用調理容器を提案する。
【0009】
第四の発明として、蓋は電磁シールド材料としてアルミ箔からなる第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の電子レンジ用調理容器を提案する。
【0010】
第五の発明として、電子レンジで加熱して水蒸気を発生させるための水を溜める容器本体と、容器本体に重ねて配置されるとともに、容器本体側からの水蒸気を通すため容器本体との間に隙間が生じるように備えられる外壁とを有し、前記隙間を介して受ける水蒸気で盛り付けられる料理を加熱調理するための加熱用盛付皿と、加熱用盛付皿の少なくとも上面を覆う電磁シールド材料からなる蓋とを有する電子レンジ用調理容器を提案する。
【0011】
第六の発明として、容器本体に水を満たす注水工程と、注水工程にて水が満たされた容器本体上に、料理を盛り付けた皿を配置する皿配置工程と、皿配置工程にて配置された皿に盛り付けられた料理の上面を電磁シールド材料にて覆う覆行程と、覆工程の後に、電子レンジにて加熱し、容器本体の水から発生する蒸気によって料理を加熱する加熱工程とからなる料理方法を提案する。
【0012】
第七の発明として、前記容器本体に満たされた水は、摂氏80度以上のお湯である第六の発明に記載の料理方法を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子レンジ用調理容器により、電子レンジの解凍・加熱に特有の「加熱むら」と「パサつき」を抑制して、冷凍状態の料理を調理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明はこれら実施の形態になんら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【0015】
実施形態1は、主に請求項1について説明する。
【0016】
実施形態2は、主に請求項2について説明する。
【0017】
実施形態3は、主に請求項3について説明する。
【0018】
実施形態4は、主に請求項4について説明する。
【0019】
実施形態5は、主に請求項5について説明する。
【0020】
実施形態6は、主に請求項6及び請求項7について説明する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0021】
本実施形態の電子レンジ用調理容器は、水蒸気を発生させるための水を溜める容器本体と、盛り付ける複数の料理を仕切るための仕切り壁と、水蒸気を通すためのピンホールを備え、ピンホールを介して受ける水蒸気で盛り付けられる冷凍状態の料理を加熱解凍調理するための加熱解凍用盛付皿と、加熱解凍用盛付皿の少なくとも上面を覆う電磁シールド材料からなる蓋とを有することを特徴とする。
<実施形態1 構成>
【0022】
図1に本実施形態の電子レンジ用調理容器の一例を示す。図1の電子レンジ用調理容器は、「容器本体」(0101)と、「加熱解凍用盛付皿」(0102)と、「蓋」(0103)から構成される。図1は、それぞれの部品を上下に分離させた状態を示すものである。本実施形態に係る電子レンジ用調理容器は、これらの部品が一体として組み合わされることにより構成される。
【0023】
「冷凍状態の料理」には、加熱調理が完全に行われた後に冷凍されたものだけでなく、完全に加熱される前の段階で冷凍された料理をも含む。前者においては、解凍により喫食に好適な状態となり、後者においては、解凍の後に一定の加熱を行うことにより喫食に好適な状態となる。冷凍料理は、その食材の種類、形状、大きさなどにより解凍に要する熱量が異なる。したがって、複数種類の料理が一の容器に盛り付けられた冷凍料理を、一の加熱工程で、それぞれが喫食に好適な状態にするためには、各料理が過不足なく加熱される必要がある。そこで、解凍に要する熱量が少ないものは、完全に調理される前の段階で冷凍し、完全な調理に到達するための熱量は、後の加熱工程において補充する。このようにすることにより、それぞれの料理が、電子レンジによる一の加熱工程で程よく加熱調理される。なお、当該技術については、「特開2001−299309」の先行文献で開示されている。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
【0024】
「容器本体」(0101)は、電子レンジで加熱して水蒸気を発生させるための水を溜めるように形成される。図2(A)に容器本体(0201)を真上から見た様子を示す。また、容器本体を、図2(A)の(ア)の部分で切断した時の断面図を図2(B)に示す。容器本体の底部に溜めれられた水は電子レンジが作動するとマイクロ波の照射を受け加熱され水蒸気となる。この水蒸気の一部は、マイクロ波の照射によりさらに加熱されることにより過熱水蒸気となる。底部に溜められる水の量は、冷凍された料理の材料や質量、電子レンジの出力等の諸条件に応じて定められ、また、水の温度については、高温である場合が好ましい。高温であるほど速やかに水蒸気となり、短時間での調理が可能となるからである。また、短時間であるほど、マイクロ波の直接照射による「加熱むら」や「パサつき」の発生が抑制される。本実施形態の容器本体は、底部に水を溜めることができ、水蒸気を生じさせることが可能な程度のマイクロ波の透過性を有することで足り、形状、大きさ等は図2に示したものに限定されるものではなく、例えば、形状については丸、四角、その他の多角形であってもよく、また、底部の形状と開口部の形状とが同様であっても、あるいは、同様でなくてもよい。なお、このような具体的設計事項についての前提は、以下のすべての実施形態における「容器本体」においても同様である。
【0025】
「加熱解凍用盛付皿」(0102)は、盛り付ける複数の料理を仕切るための仕切壁(0104)と、容器本体側からの水蒸気を通すためのピンホール(0105)を備え、ピンホールを介して受ける水蒸気で盛り付けられる冷凍状態の料理を加熱解凍調理するため、容器本体に重ねて配置される。図3に加熱解凍用盛付皿を真上から見た様子を示す。また、図4に、加熱解凍用盛付皿と、容器本体の断面図を示す。図4(A)は、加熱解凍用盛付皿が容器本体の上に重ねて配置されている状態を示している。また、図4(B)は、図4(A)にて破線で囲った部分を拡大した図である。
【0026】
図3において、加熱解凍用盛付皿(0301)の黒く塗りつぶした部分は仕切壁(0302)を示している。そして、仕切壁に仕切られた複数の区画の各区画において細い破線で閉じられた領域は、各区画の底面を示す。また、各区画の底面に線を描くように配置されている黒い点(0303)は、ピンホールを示している。
【0027】
図3に示すように、加熱解凍用盛付皿の底面部分には、複数のピンホールが設けられている。また、図4(A)に示すように加熱解凍用盛付皿(0402)を容器本体(0401)の上に重ねて配置した状態においては、容器本体の開口部分の縁は、加熱解凍用盛付皿の裏面とほとんど隙間なく密着するよう構成されている。したがって、電子レンジの作動により加熱され生じた、容器本体内の水蒸気の大部分は、加熱解凍用盛付皿の底面部分に設けられた複数のピンホールを通過して、容器本体から加熱解凍用盛付皿へと上昇することとなる。かかる水蒸気により冷凍された料理は解凍されるとともに、電子レンジの作動により水分が失われがちな料理を適度に保湿する。加えて、魚や肉のような油脂を多く含む食材については加熱により液化した油脂がピンホールを介して容器本体へと滴下するため喫食者においては過度の油脂を摂取することがない。
【0028】
また、図4(C)で示すように、底部の一部を高くしてもよい。こうすることにより、溜められる水(0403)は底部において偏在することになる。そのため、底部の高い領域の上方に存在する加熱解凍用盛付皿の所定の領域(0405)においては、水に吸収されずに冷凍された料理に直接照射されるマイクロ波(0404)の割合が増えることになり、解凍調理に要する熱量の大きい料理を盛り付けるのに好適となる。
【0029】
図3は、仕切壁(0302)により、加熱解凍用盛付皿(0301)内を5つの区画に仕切っている様子を示す。なお、図3は、あくまで一例であり、仕切る区画の数や、各区画の形状、大きさなどは特段制限されない。また、加熱解凍用盛付皿の形状、大きさ等は特段制限されるものではなく、図3で示されるような八角形のほか、丸、四角、その他の多角形などでもよい。当該前提は、以下のすべての実施形態における「加熱解凍用盛付皿」において同様である。このように仕切られた区画内には、それぞれ異なった種類の料理が配置されることとなる。このように料理を配置する区画を仕切ることで、解凍、及び/又は、加熱調理した際に味の異なる複数種類の冷凍料理の味が混じりあうなどの不都合を回避できるほか、見た目も鮮やかに盛り付けすることが可能となり、喫食者の満足感を高める効果が期待できる。
【0030】
また、ピンホールは仕切壁により仕切られた区画の底部のみならず、仕切壁の壁面にも設けることもできる。図5(A)は、加熱解凍用盛付皿の仕切壁の一部を拡大した図である。加熱解凍用盛付皿は、仕切壁で複数の区画に仕切られており、底部に複数のピンホール(0501)が設けられているとともに、壁面にも水蒸気を通過させるためのピンホール(0502)が設けられている。これにより、水蒸気の熱が料理に対して効率よく加えられる。なお、仕切壁のピンホールは、盛り付けられる料理に応じて設けることで足り、必ずしもすべての仕切壁に設ける必要はない。
【0031】
また、加熱解凍用盛付皿底部、及び、仕切壁に設けられるピンホールは、区画ごとに異なる密度で設けられてもよい。複数の冷凍料理は、その種類、量、使用する食材の大きさなどにより、加熱解凍に要する熱量がそれぞれ異なる場合がある。そこで、水蒸気が通過するピンホールの密度を区画ごとに異ならせることで、各区画の加熱条件を調節してもよい。具体的には、加熱解凍、及び/又は、加熱調理に多くの熱量を必要とする料理や、水蒸気の熱が伝わりにくい料理を配置する区画はピンホールの密度を高くし、加熱解凍、及び/又は、加熱調理に多くの熱量を必要としない料理や、水蒸気の熱が伝わりやすい料理を配置する区画はピンホールの密度を低くする。
【0032】
例えば、白米は小さな米粒の集まりであり、冷凍した際、他の惣菜などの料理に比べて体積に対する表面積の比率が高い。その結果、他の惣菜などの料理に比べて、水蒸気の熱が効率的に伝わり、加熱解凍、及び/又は、加熱調理される。よって、白米を配置する区画は、他の惣菜などの料理を配置する区画よりもピンホールの密度を低くする(あるいは、仕切壁面にはピンホールを設けない)ことが望ましい。なお、前記白米は一例であり、他の惣菜などの料理についても同様に、調理加工・加熱の具合、食材の切り方、大きさなどを考慮して、各区画のピンホールの密度を調節してもよい。
【0033】
ここで、仕切壁へのピンホールの設け方としては、例えば、図5(A)に示すように、縦長のスリット状に設けるものなどが例示できる。この時、スリット状に複数列に配列されたピンホールの隣り合う列どうしの間隔、及び、スリットの幅などの条件を調節することで、区画ごとのピンホールの密度を調節できる。また、その他のピンホールの設け方としては、各壁面全体にメッシュ状や、格子状に設けてもよい。
【0034】
さらに、図5(B)は、(A)の加熱解凍用盛付皿を(ア)の部分で切断した断面図である。図で示すように、加熱解凍用盛付皿の仕切壁は、容器本体側に開放された中空構造である。つまり、区画(0504)と、区画(0505)の間に隙間(0503)が設けられることになる。このような中空構造をとることで、水蒸気を仕切壁のピンホールを通過させて、各区画内の料理へ横からも熱を加えることが可能となる。図5(C)は、水蒸気の流れを模式的に示した図である。水蒸気の流れを矢印で示したが、水蒸気は底部だけでなく、仕切壁のピンホールからも加熱解凍用盛付皿内に侵入することができる。したがって、下からだけでなく、横からも料理を加熱することが可能となり、より効率的に料理を加熱解凍、及び/又は、加熱調理できる。
【0035】
また、加熱解凍用盛付皿が中空構造であることによって、加熱解凍用盛付皿同士を重ね置きすることができる。これによって、加熱解凍用盛付皿の保管、輸送や、食品の盛付、冷凍、保管、輸送などの段階にて、加熱解凍用盛付皿を重ね置いて、作業スペースを最小限にすることができる。
【0036】
また、加熱解凍用盛付皿の区画底面は、少なくとも一部の区画間で異なる深さである場合がある。例えば、図5(B)で示すように、加熱解凍用盛付皿は浅い区画(0504)と、深い区画(0505)を有する場合がある。これは、主食、主菜、副菜などを加熱解凍用盛付皿上に見栄えよく配置するためである。このとき、浅い深さの区画底面に足(0506)を設けることで、深い区画(0505)と底面が同等になり、加熱解凍用盛付皿を容器本体に重ねて配置する際に傾いてしまうことを防ぐことができる。なお、足の形状は図に示したものに限定されるものではない。加えて、一部に浅い区画が設けられていたとしても、深い区画で加熱解凍用盛付皿全体の水平を保つことができる場合には、足は必要でない場合もある。
【0037】
「蓋」(0103)は、電磁シールド材料からなり、加熱解凍用盛付皿の少なくとも上面を覆う。「電磁シールド材料」とは、電子レンジの作動により照射されるマイクロ波を反射し得る材料を示す。例えば、アルミニウム、鉄、銅などの金属類および、これら金属類を表面に被膜した材料である。図6に本実施形態の蓋を例示する。蓋(0601)は、アルミニウムなどの電磁シールド材料からなる。
【0038】
図7(A)に、容器本体、加熱解凍用盛付皿、蓋の断面図を示す。矢印で表しているのは、マイクロ波の働きを模式的に示したものである(矢印a〜矢印j)。図7(B)は、破線で描かれた丸の部分を拡大したものである。蓋(0703)は、加熱解凍用盛付皿(0702)が載置された容器本体(0701)に覆い被さり、容器本体と蓋とにより作られる空間を略密閉状態にする。また、蓋には、電子レンジの作動により生じた水蒸気を、容器本体と蓋とにより作られる空間の外部に適度に逃すための通気孔を設けてもよい。
【0039】
加熱解凍調理に際しては、加熱解凍用盛付皿を容器本体に載置し、当該蓋で覆い電子レンジで加熱解凍を行う。蓋は、電磁シールド材料からなるため、加熱解凍用盛付皿に盛り付けられた料理の上方から照射されるマイクロ波(矢印a〜矢印e)の多くを反射することができる。その一方で、水はマイクロ波を吸収しやすいことから容器本体の底部に溜められた水へ集中的にマイクロ波(矢印g〜矢印i)が照射され、高効率で水蒸気と化す。 この水蒸気もマイクロ波(矢印f、矢印j)の照射により加熱される。この高温の水蒸気が、前記ピンホールを介して容器本体と蓋とからなる空間内に対流し、冷凍された料理を満遍なく加熱する。以上のように料理が加熱されることにより、マイクロ波の直接照射による「加熱むら」と「パサつき」を生じることを抑制した加熱解凍調理が可能となる。なお、図6は、あくまで蓋の一例を示したに過ぎず、形状、大きさなどは特段制限されるものではない。図6で示されるような八角形のほか、丸、四角、その他の多角形などでもよく、また、図6に示すようなカップ状の立体的形状に限られるものではなく、平面的なものであってもよい。当該前提は、以下のすべての実施形態における「蓋」において同様である。
【0040】
ここで、本実施形態に係る電子レンジ用調理容器を用いた場合の具体例を示す。出願人による実施の場合では、いわゆる業務用の1800Wの電子レンジを用いて、質量が300gの冷凍された焼き魚弁当を加熱解凍するために、湯50mlを使い略1分30秒の電子レンジの作動により、喫食するのに好適な状態で調理された。また、同じ冷凍された焼き魚弁当を電磁シールド材料からなる蓋と、湯とを使わずに、通常の電子レンジの使用態様であるマイクロ波の直接照射により解凍加熱を行ったところ、これについても、略1分30秒で、通常の電子レンジの使用態様の場合での喫食に好適な状態となった。すなわち、本実施形態の電子レンジ用調理容器を用いる場合には、電磁シールド材料よりなる蓋によって、冷凍された料理に照射されるマイクロ波は、通常の電子レンジの使用態様の場合と比較して低減されているところ、水蒸気による加熱が冷凍された料理に働くため、通常の電子レンジの使用態様の場合と同等の時間で、喫食に好適な状態となるために要する熱量が加えられたものと認められる。したがって、本実施形態の電子レンジ用調理容器を用いることにより、通常の電子レンジの使用態様の場合と同等の時間で、「加熱むら」と「パサつき」が抑制された調理が可能となる。
<実施態様1の効果>
【0041】
本実施形態の電子レンジ用調理容器により、電子レンジの解凍・加熱に特有の「加熱むら」と「パサつき」を抑制して、冷凍食品を調理することが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0042】
本実施形態の電子レンジ用調理容器は、容器本体は、盛り付けられた冷凍状態の料理を加熱解凍するに十分な量溜められた水の水面が容器本体の深さの三分の二よりも低いことを特徴とする。
<実施形態2 構成>
【0043】
図8に本実施形態の容器本体の一例を示す。容器本体(0801)の深さ(0802)が「h」である場合、その深さの三分の二の深さ(0803)は、「2h/3」となる。盛り付けられた冷凍状態の料理を加熱解凍するのに十分な量の水を溜めた時に、その水面(0804)が、容器本体の深さの三分の二、すなわち、「2h/3」の水平面よりも低くなるように容器本体を形成する。このように容器本体を形成することにより、水が加熱され水蒸気となる際に水面に生じる泡や水滴がピンホールを介して盛り付けられた料理に直接触れることを回避することができる。また、水面と加熱解凍用盛付皿の底部との間に、ある程度の空間が生じ、水蒸気が対流するとともに水蒸気がさらにマイクロ波の照射により加熱され、過熱水蒸気となる。かかる水蒸気がピンホールを介して容器本体と蓋との間の空間内に充満し、冷凍された料理を効率よく加熱する。
<実施形態2 効果>
【0044】
本実施形態の電子レンジ用調理容器により、電子レンジの作動により生じる水蒸気が冷凍された料理を効率よく加熱解凍調理することが可能となる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0045】
本実施形態の電子レンジ用調理容器は、加熱解凍用盛付皿の側面の少なくとも一部をも覆うカップ型の蓋を有することを特徴とする。
<実施形態3 構成>
【0046】
図9に本実施形態の電子レンジ用調理容器にかかる「蓋」の一例を示す。「蓋」(0901)は、アルミニウム等の電磁シールド材料からなり、カップ型に形成される。図10(A)に、容器本体、加熱解凍用盛付皿、蓋の断面図を示す。図10(B)は、破線で描かれた丸の部分を拡大したものである。図に示すように、蓋(1003)の縁を、容器本体(1001)に載置された加熱解凍用盛付皿(1002)の側面と蓋の側面とが重なり合うように形成することにより、当該蓋は、加熱解凍用盛付皿の側面の少なくとも一部をも覆う。このような蓋を用いることにより、加熱解凍用盛付皿の上面及び側面からのマイクロ波の直接的な照射を遮ることができる。したがって、電子レンジによる加熱の際に起こりがちである冷凍された料理の周辺部分に加熱が偏ってしまうという事態を抑制することができる。
<実施形態3 効果>
【0047】
本実施形態の電子レンジ用調理容器により、冷凍された料理の周辺部が過剰な加熱によりパサついてしまうことを抑制することができる。
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
【0048】
本実施形態の電子レンジ用調理容器は、電磁シールド材料としてアルミ箔からなる蓋を有することを特徴とする。
<実施形態4 構成>
【0049】
アルミ箔は、アルミニウムを圧延したものであり、電磁波を反射する性質を有しており、電磁シールド材料として好適である。加えて、アルミ箔は、加工が容易であり、耐食性に優れ、人体に対して無害である。したがって、調理容器の材料として、簡便かつ衛生的に利用することができる。蓋の形状を維持するために厚手のアルミ箔を用いてもよい。
<実施形態4 効果>
【0050】
本実施形態の電子レンジ用調理容器により、簡便な加工で、衛生的な電磁シールド材料からなる蓋を有する電子レンジ用調理容器を提供することができる。
<実施形態5>
<実施形態5 概要>
【0051】
本実施形態の電子レンジ用調理容器は、電子レンジで加熱して水蒸気を発生させるための水を溜める容器本体と、容器本体に重ねて配置されるとともに、容器本体側からの水蒸気を通すため容器本体との間に隙間が生じるように備えられる外壁とを有し、前記隙間を介して受ける水蒸気で盛り付けられる料理を加熱調理するための加熱用盛付皿と、加熱用盛付皿の少なくとも上面を覆う電磁シールド材料からなる蓋とを有することを特徴とする。
<実施形態5 構成>
【0052】
図11に本実施形態に係る電子レンジ用調理容器の一例を示す。「容器本体」(1101)は、マイクロ波透過性の材料からなり、電子レンジで加熱して水蒸気を発生させるための水を溜める。本実施形態における「容器本体」は、実施形態1で説明した容器本体と同様であるため、重ねての説明を省略する。
【0053】
「加熱用盛付皿」(1102)は、容器本体(1101)に重ねて配置されるとともに、容器本体側からの水蒸気を通すため容器本体との間に隙間が生じるように備えられる外壁(1104)とを有し、前記隙間を介して受ける水蒸気で盛り付けられる料理を加熱調理する。加熱用盛付皿は、容器本体に重ねて配置される際に、加熱用盛付皿の外壁と容器本体内側との間に隙間が生じるように形成される。図11においては、八角形の容器本体の角部と接する外壁の一部を加熱用盛付皿の内側に折り込むように形成することにより、加熱用盛付皿と容器本体との間に隙間が生じるようにしている。隙間の数、形状、大きさなどは盛り付けられる料理の状態、種類、量などに応じて任意に定めることができる。加熱用盛付皿の形状や大きさ、外壁の高さなどは、盛り付けられる料理や容器本体に応じて任意に定めることができる。ここで、「料理」とは、実施形態1において先述した「冷凍状態の料理」に加え、冷蔵状態の料理や常温状態の料理も含む。
【0054】
加熱用盛付皿の材料は、マイクロ波の透過性を有する非電磁シールド材料であってもよいし、マイクロ波を反射する電磁シールド材料であってもよい。前者の場合には、加熱用盛付皿を透過したマイクロ波による加熱と水蒸気による加熱によって料理は加熱され、後者の場合には、専ら水蒸気により料理は加熱される。盛り付けられる料理や望むべき料理の仕上がりに応じて材料を選択してもよい。電磁シールド材料については、実施形態1において説明済みであるので、重ねての説明は省略する。
【0055】
「蓋」(1103)は、電磁シールド材料からなり、加熱用盛付皿の少なくとも上面を覆う。図11に示すような立体的な蓋の場合には、「上面A」だけでなく蓋全体を電磁シールド材料により形成してもよい。この場合には、料理に対するマイクロ波の直接照射の割合は低下し、水蒸気による加熱の割合がよりたかまる。また、「側面B」のみを非電磁シールド材料にしてもよい。ここで、「側面B」は、前記隙間を生じさせるために外壁が内側に折り込むように形成された前記加熱用盛付皿の部位に対応した側面である。「側面C」は、「側面B」以外の側面である。この場合には、「側面B」近傍には、水蒸気が比較的多く存在するため、「側面B」を透過するマイクロ波の照射を料理が受けても保湿作用が望める。このように、隙間の位置や盛り付けられる料理等に応じて蓋の材料の構成を変えてもよい。また、蓋には、電子レンジの作動により生じた水蒸気を、容器本体と蓋とにより作られる空間の外部に適度に逃すための通気孔を設けてもよい。
【0056】
加熱調理に際しては、容器本体に所定の水を溜め、加熱用盛付皿を容器本体に載置し、加熱用盛付皿の上面を蓋で覆い、電子レンジで加熱する。蓋は、電磁シールド材料からなるため、加熱用盛付皿に盛り付けられた料理の上方から照射されるマイクロ波の多くを反射することができる。その一方で、水はマイクロ波を吸収しやすいことから容器本体の底部に溜められた水へ集中的にマイクロ波が照射され、高効率で水蒸気と化す。この水蒸気もマイクロ波の照射により加熱され、一部は過熱水蒸気となる。この高温の水蒸気が、前記隙間を介して容器本体と蓋とからなる空間内に対流し、料理を満遍なく加熱する。
<実施形態5 効果>
【0057】
本実施形態の電子レンジ用調理容器により、マイクロ波の直接照射による「加熱むら」と「パサつき」を生じることを抑制した調理が可能となる。
<実施形態6>
<実施形態6 概要>
【0058】
本実施形態の調理方法は、容器本体に水を満たす注水工程と、注水工程にて水が満たされた容器本体上に、料理を盛り付けた皿を配置する皿配置工程と、皿配置工程にて配置された皿に盛り付けられた料理の上面を電磁シールド材料にて覆う覆行程と、覆工程の後に、電子レンジにて加熱し、容器本体の水から発生する蒸気によって料理を加熱する加熱工程とからなることを特徴とする。
<実施形態6 構成>
【0059】
図12に示すように、本実施形態の調理方法は、「注水工程」(S1201)と、「皿配置工程」(S1202)と、「覆工程」(S1203)と、「加熱工程」(S1204)とからなる。
【0060】
「注水工程」(S1201)においては、容器本体に水を満たす。この水は、後述する「加熱工程」において、電子レンジ作動の際に水蒸気を発生させるためのものである。容器本体とは、マイクロ波の透過性を有し、水を容器内部に溜めることができる入れものであって、少なくとも実施形態1乃至実施形態5における「容器本体」を含む。ここで、「満たす」とは、容器本体の容量一杯に水を注水する意味ではなく、料理を加熱するための水蒸気を発生させるに足る程度に注水することを意味する。具体的な水の量は、料理の量や状態(冷凍、冷蔵、常温等)及び水の温度によるものである。
【0061】
容器本体に満たされた水を、摂氏80度以上のお湯にする場合には、電子レンジの加熱の際に、比較的短時間で水蒸気化するため、調理に要する時間が短縮されるとともに、マイクロ波の直接照射を受ける時間が少なくなり「加熱ムラ」と「パサつき」が、より抑制された状態で調理される。
【0062】
「皿配置工程」(S1202)においては、注水工程にて水が満たされた容器本体上に、料理を盛り付けた皿を配置する。皿は、実施形態1で説明したようなピンホールを設けた加熱解凍用盛付皿や、実施形態5で説明したような容器本体との間で隙間を生じるような加熱用盛付皿をも含む。なお、皿の形状や大きさなどは容器本体や盛り付けられる料理に応じたものを用いることができる。
【0063】
「覆工程」(S1203)においては、皿配置工程にて配置された皿に盛り付けられた料理の上面を電磁シールド材料にて覆う。電磁シールド材料にて、皿に盛り付けられた料理の上面を覆うことにより、電子レンジ作動の際に料理がマイクロ波の直接照射を受けることにより「加熱ムラ」や「パサつき」が生じることを抑制する。料理の上面を覆う物としては、例えば、電磁シールド材料からなる蓋であってもよい。具体的には、すでに説明した実施形態1乃至実施形態5における「蓋」であってもよい。
【0064】
「加熱工程」(S1204)は覆工程の後に、電子レンジにて加熱し、容器本体の水から発生する蒸気によって料理を加熱する。電子レンジの作動により生じるマイクロ波は、盛り付けられた料理の上面においては電磁シールド材料によって反射される。容器本体に満たされた水は、マイクロ波の照射を受けて加熱され、水蒸気化する。この水蒸気も、マイクロ波の照射を受けることにより、さらに加熱され、一部は過熱水蒸気となる。これらの水蒸気が、料理を加熱する。このように料理に直接照射されるマイクロ波を電磁シールド材料で遮蔽しつつ、マイクロ波の加熱により生じた蒸気により料理を加熱することにより、電子レンジの加熱において生じがちな「加熱むら」と「パサつき」を抑制した調理が可能となる。
<実施形態6 効果>
【0065】
本実施形態の調理方法により、マイクロ波の直接照射による「加熱むら」と「パサつき」を生じることを抑制した調理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】電子レンジ用調理容器の一例
【図2】実施形態1の容器本体の一例
【図3】実施形態1の加熱解凍用盛付皿の一例
【図4】実施形態1の容器本体と加熱解凍用盛付皿の断面図
【図5】実施形態1の加熱解凍用盛付皿の一例
【図6】実施形態1の蓋の一例
【図7】実施形態1の容器本体、加熱解凍用盛付皿、蓋の断面図
【図8】実施形態2の容器本体の一例
【図9】実施形態3の蓋の一例
【図10】実施形態3の容器本体、加熱解凍用盛付皿、蓋の断面図
【図11】実施形態5の電子レンジ用調理容器の一例
【図12】実施形態6の調理方法の工程の流れを示すフロー図
【符号の説明】
【0067】
0101 容器本体
0102 加熱解凍用盛付皿
0103 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジで加熱して水蒸気を発生させるための水を溜める容器本体と、
容器本体に重ねて配置されるとともに、盛り付ける複数の料理を仕切るための仕切り壁と、容器本体側からの水蒸気を通すためのピンホールを備え、ピンホールを介して受ける水蒸気で盛り付けられる冷凍状態の料理を加熱解凍調理するための加熱解凍用盛付皿と、
加熱解凍用盛付皿の少なくとも上面を覆う電磁シールド材料からなる蓋と、
を有する電子レンジ用調理容器。
【請求項2】
容器本体は、盛り付けられた冷凍状態の料理を加熱解凍するに十分な量溜められた水の水面が容器本体の深さの三分の二よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用調理容器。
【請求項3】
蓋はカップ型であり、加熱解凍用盛付皿の側面の少なくとも一部をも覆う請求項1または2に記載の電子レンジ用調理容器。
【請求項4】
蓋は電磁シールド材料としてアルミ箔からなる請求項1から3のいずれか一に記載の電子レンジ用調理容器。
【請求項5】
電子レンジで加熱して水蒸気を発生させるための水を溜める容器本体と、
容器本体に重ねて配置されるとともに、容器本体側からの水蒸気を通すため容器本体との間に隙間が生じるように備えられる外壁とを有し、前記隙間を介して受ける水蒸気で盛り付けられる料理を加熱調理するための加熱用盛付皿と、
加熱用盛付皿の少なくとも上面を覆う電磁シールド材料からなる蓋と、
を有する電子レンジ用調理容器。
【請求項6】
容器本体に水を満たす注水工程と、
注水工程にて水が満たされた容器本体上に、料理を盛り付けた皿を配置する皿配置工程と、
皿配置工程にて配置された皿に盛り付けられた料理の上面を電磁シールド材料にて覆う覆行程と、
覆工程の後に、電子レンジにて加熱し、容器本体の水から発生する蒸気によって料理を加熱する加熱工程と、
からなる調理方法。
【請求項7】
前記容器本体に満たされた水は、摂氏80度以上のお湯である請求項6に記載の調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−82358(P2010−82358A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257161(P2008−257161)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507422884)株式会社 キュイジーヌ・ラボ (8)
【Fターム(参考)】