説明

電子レンジ用調理容器

【課題】 外観が良く、耐熱性が良好で、容器蓋の着脱操作性に優れた調理容器を提供する。
【解決手段】 容器本体50と容器蓋60とからなる樹脂製の調理容器において、容器蓋60に塗料の付着性が良好な樹脂材料を使用し、容器蓋60はウレタン樹脂塗料の付着性の良好な樹脂材料を選択し、容器蓋60の深さは、容器蓋60に設けた膨出部6Mよりも蓋側面6Sを大きくし、その凹陥部6N上面側に一字形の蓋取手6Tを設ける。容器内部の蒸気圧の調節は、通気口10,10によって行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理に際して調理物から発生する蒸気による蒸気圧と、発生した蒸気の対流とを最適化することによって、調理物を短時間で均等に蒸し上げるとともに、従来、樹脂製容器では実現できなかった高級感を保有するようにした電子レンジ用樹脂製調理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気を利用して調理物に熱を通したり、冷えた調理物の乾燥を防止しながら再加熱する場合には、調理容器が利用される。旧来からこの調理に使用されている蒸し容器としては、蒸籠が代表的である。この蒸籠は、円環状に曲げ加工した木枠の底面に蒸気を疎通させるための簀の子や竹網を使用し、通常は円板状の木蓋と組み合わせて使用されるものであるが、今日このような蒸し容器は、いわゆるプロの現場以外で使用されることは殆ど見かけられなくなっている。
【0003】
電子レンジの普及に伴い、一般家庭においては、蒸籠に代えてスチ−マ等と呼ばれる樹脂製の調理容器が多用されるようになり、樹脂製品の関係業界からそれぞれ工夫を凝らした電子レンジ用の調理容器が提案されている(下記、先行技術文献1、2、3および4参照)。
【0004】
従来調理容器における基本的な考え方を先行技術文献から見るに、調理に最も必要な要素である蒸気を逃さないための気密性の維持、気密維持構造を採用した場合における安全確保上の措置としての減圧機構の採用と、樹脂製の調理容器の耐熱性を考慮した樹脂の提案の三点にあるといえる。電子レンジによる加熱によって発生する蒸気が不用意に漏洩するようでは、蒸し調理を所期の仕上げとすることはできず、発生した蒸気圧が一定限度を超えれば、蓋飛び等の危険は避けられないことと、調理物が煮沸したときは調理容器も100度以上の高熱になっていることもあり、樹脂の耐熱性も重要である。
【0005】
すなわち、調理容器においては、圧力容器における高度な要求はされないものの、蒸気は逃さず、かつ、蒸気圧が過度に高まらないようにするということと、調理物が沸騰状態でも容器が安全に取り出させる硬さを維持していることが基本となるのである。
【0006】
上記基本的要求を構造的に実現するために、従来の調理容器における容器本体と蓋体との間には、通常、気密性の高い嵌め合い構造が採用されている(下記、特許文献1ないし4参照)。
【0007】
合成樹脂製の調理容器では、主としてポリプロピレン(以下、単に「PP樹脂」という)や飽和ポリエステル樹脂(以下、単に「PET樹脂」という)が使用されている。それに代わる代表例としては、ポリエーテルイミード樹脂(PEI)とポリカボーネイト樹脂(PC)とのブレンドによって成形された調理用容器(下記、特許文献3参照)、ポリブチレンテレフタレート(以下、単に「PBT樹脂」という)で成形された調理容器(下記、特許文献5参照)、これらの提案は、耐熱性を改善した提案である。
【0008】
一般的なPP樹脂で成形された容器本体と蓋体とは、その蓋体は、容器本体に気密性の高い取り付けをしている(下記、特許文献1ないし4参照)。調理時に蒸気圧が高まり、蓋体が飛ばされるのを防止する減圧機構(下記、特許文献1、2および4参照)が提案されている。
【0009】
PP樹脂は、結晶性樹脂でもあり、成形性も良好で、その成形品は耐熱性も優れていることがよく知られており、その耐熱性および成形性を基に調理容器として多用されている。そして、この樹脂は、他の結晶性樹脂と比較して、分子配向性が強いので、繰り返し曲げ強さ(曲げ疲労性)が大きいことを利用したフラップ部(下記、特許文献1参照)として応用形成されている。また、この分子配向性の特徴を利用して、底容器と上蓋とを嵌合させた電子レンジ調理用容器(下記、特許文献2参照)も提案されている。
【0010】
PP樹脂の場合、配向性の影響が大きく拘わり、今日、常識的になっている容器蓋におけるつまみ(下記、特許文献6参照)の部分をその蓋とともに一体成形すると、つまみの部分的な肉厚の厚さが異なるため、部分的にその固化時間が他の部分より遅延するので、それが原因してひけが発生し、そのひけと配向性が影響したと見られるそり、もしくは、変形がその製品全体に現れる。このことは、製品としての価値を低下させてしまうこととなる。
【0011】
下記特許文献6で提案実施された例では、アルミ製の鍋主体と中蓋とを嵌合によって取り付けられている。すなわち、この取り付けをして、電子レンジで調理する場合、内容物が早期に高熱化されるから、蒸気圧が急激に高まるので危険性に問題がある。
【0012】
また、蓋体に孔を開けて減圧機構とする場合(下記、特許文献4参照)、その孔は容器の上方側にあるので、調理容器の内部に発生した蒸気が、容器内部を循環することなく、減圧機構である孔を筒抜け状態で、放出されてしまう。したがって、調理物に加熱ムラが生じる恐れがある。他方、樹脂工業界では、製品に孔を同時に成形すると、ウエルドマークが発生して,強度が低下することはよく知られているところでもある。
【0013】
さらに、従来の調理容器における別の問題としては、加熱終了した調理容器を、そのまま食卓に提供することに抵抗感が伴うことである。デザイン的な問題は、適宜変更可能であるから不問にするとしても、樹脂製の調理容器特有の質感は、他の一般的な食器類と同列に並べた場合、いかにも貧相に見えるからである。これは、従来の調理容器に使用されている樹脂材料に起因する問題である。
【0014】
調理容器においては、容器本体と蓋体とが電子レンジ用として耐熱性が要求されるため、従来の調理容器用としてPP樹脂の他、特許文献3および特許文献5で示したような樹脂材料も提案されている。しかしながら、これらの樹脂は、硬質であるため蒸気が漏れないように密着させることは困難であると、いわざるを得ない。一般的には、耐熱性のある成形製品の生地表面は硬さがあり、塗料の付着性もよくないともいわれている。
【0015】
本発明では、調理容器の外観貧相の問題に対しては、今日の大方の漆器製品に見られるように、樹脂製の生地に塗装仕上げ(下記、特許文献7参照)して、漆器製品と同等に外観を改善しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−132356号公報
【特許文献2】特開2007−301000号公報
【特許文献3】特開平6−304063号公報
【特許文献4】実開62−96343号公報
【特許文献5】特開平3−222914号公報
【特許文献6】実開昭52−90269号号公報
【特許文献7】特許第3119654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来の調理容器の問題点を検討した結果、次のように考えることができる。
【0018】
調理容器は、容器体と蓋体とでなっており、視覚的に美観を感ずるのは調理容器の上面である蓋体であり、この蓋体の外面の装飾、つまり、塗料の付着性の良好な樹脂材料を選択することにより、蓋体を塗装仕上げとし、外観を改善することができる。
【0019】
上記検討に基づき本発明は、次の三点を解決課題とする。第一には、蓋体には減圧機構を廃止し、その蓋体には、操作し易い位置に十分なサイズの取手を設け、電子レンジから取り出した直後の調理容器であっても、安全に蓋体を取り外すことができるようにする。このため、減圧機構は、蓋体の上面以外のところ、あるいは、蓋体以外の部分に減圧機構と同等に機能するような構成を工夫する。
【0020】
すなわち、蓋体にあった減圧機構を廃止し、蒸気の筒抜け現象を抑制して、調理物の加熱ムラを防止するとともに、調理容器としての熱効率を改善する。しかも、その減圧機能を付与するために蓋体に孔を成形時に設けた欠点として、その樹脂成形品にはウエルドマークが発生し、強度が低下するといったことも改善するものである。
【0021】
調理容器の蓋体に、塗料の付着性の良好な硬質の樹脂材料を使用して、視認され易い蓋体を塗装仕上げとし、外観の改善を図ったことにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0023】
(解決手段1)
本発明の電子レンジ用調理容器は、底面と底面から立ち上がる容器側面と、容器側面の上端部に形成する一対の容器持ち手とを樹脂材料から一体成形してなる容器本体と、中心部に下向き膨出部の上側凹陥部に蓋取手を形成した蓋面と、その蓋面の周縁部から立ち下がる蓋側面とを合成樹脂材料から一体成形してなる容器蓋とからなる電子レンジ用調理容器において、蓋側面を下向き膨出部より深く形成するとともに、容器側面には、少なくとも二箇所に不連続部を設定した帯状の位置決め段を形成することによって、容器本体と容器蓋とが蓋側面の下端が位置決め段に上下に対面して容器本体の内側に落ち込む態様で組み合わされ、組み合わされた容器本体と容器蓋との間に前記不連続部において通気口が形成されるようにしてなり、加熱調理に際して、下向き膨出部が容器内の上昇蒸気を容器周辺部に振り分けるように方向変換するとともに、通気口が容器内の過剰蒸気を外部に排出して容器蓋の浮上を阻止することを特徴としている。
【0024】
上記解決手段1について説明する。本発明は、いずれも樹脂材料から一体成形された容器本体と、容器蓋とからなる電子レンジ用調理容器であることが前提である。容器本体は、底面と容器側面とを備え、蓋面と蓋側面とからなり、蓋面の中心部に膨出部を設け、膨出部上面には蓋取手を備える。すなわち容器蓋は、蓋取手を指でもって掴み、着脱操作は容器本体に対して容器蓋を落とし込むように嵌め込まれ、いわゆるガタガタであるため片手でも容易に蓋をすることができる。この着脱操作は、蓋付きの容器には極一般的な操作である。
【0025】
容器側面の内側には、少なくとも二箇所に不連続部を設けた帯状の位置決め段が形成され、容器本体と容器蓋とは蓋側面の下端が位置決め段に対面するように、容器蓋は容器本体の内側に落とし込む態様で組み合わせることができる。この容器蓋が、容器本体の内側になる組合せ態様においては、加熱された調理物から発散して容器蓋の裏面に凝着した水蒸気は、最終的に容器内部に滴下して再び蒸気となることができるので、調理物を乾燥させることなく蒸し上げることができる。そして、蓋側面を流下して蓋側面の下端に至った水滴は、容器本体と容器蓋との密着性を高める液状シール剤として機能するので、容器本体と容器蓋との間の過度の密着性を不要とすることができる。
【0026】
調理容器内において態様変化しながら循環する水分は、上昇と下降を繰り返すようにして調理物を蒸し上げるのであるが、蓋面の中心部には、下向きの膨出部が煮沸に基づき上昇する蒸気は、その膨出部によって円滑に外周方向に方向変換させられ、容器側面に沿って下降するように制御される。したがって、容器内における熱の偏りによる調理物の加熱ムラが防止されるとともに、調理容器としての熱効率も改善される。
【0027】
調理容器に必要な蒸気圧の調節に関しては、下向き膨出部が上昇蒸気を容器周辺部に振り分けるように方向変換され、通気口が容器内の過剰蒸気を排出させ、圧力調整機構として機能することで対応することができる。すなわち、容器蓋が定置されることとなる位置決め段は、容器側面の全周に亘って連続しているのではなく、少なくとも二箇所の不連続部の部分で分断された状態で通気口が形成されており、この部分において容器本体と容器蓋との密着性が意図的に失われている。そして、調理容器内の蒸気は、不連続部および容器上端側の内側面並びに容器蓋側面とで形成されるV字形の小溝と、電子レンジにおけるターンテーブルの回転もあるので、その小溝に案内される電子レンジ内の空気は、通気口で蒸気を誘導するように排出させると同時に吸気するから、蒸気圧が累積的に逓増して容器蓋が跳ね上がるような危険を回避することができるのである。
【0028】
(解決手段2)
さらに、一対の容器持ち手は、少なくとも二箇所の不連続部に対応して形成される通気口の中間位置に形成されていることを特徴としている。
【0029】
容器持ち手と位置決め段の不連続部の位置関係は、容器持ち手が少なくとも二箇所の不連続部の中間位置に形成されている位置関係にある。これによって、容器持ち手は、蒸気が噴出する可能性のある通気口から最も離れた位置に位置することになり、調理容器を安全に取り扱うことができる。
【0030】
(解決手段3)
本発明の電子レンジ用調理容器は、解決手段1に記載の調理容器を基本発明として、容器蓋が、PET樹脂とABS樹脂との混合樹脂材料、または、PET樹脂とPBT樹脂との混合樹脂材料とのいずれか一方の混合樹脂材料を主材料とし、適宜の結晶化促進材料を添加剤として成形した生地にウレタン樹脂塗料を塗布して焼き付け塗装することを特徴としている。
【0031】
上記解決手段3について説明する。上記解決手段1および2では、容器本体に容器蓋を落とし込んで嵌め込む、いわゆる遊合によって組み合わせられ、その容器蓋によって調理容器の外観を改善することができる構成を示している。すなわち、容器蓋に必要な機能を付与するために、部分的にリブ補強することもあり、そのことによって部分的なひけが発生し、全体として変形が生じるようでは調理容器の外観は大きく損なわれてしまう。しかしながら、上記構成に示す混合樹脂材料は、PET樹脂を含む混合樹脂材料であって、漆器産業界でも成形性と寸法安定性には定評があり、成形された軟らかい生地の表面は塗料の付着性も良く、特に、漆器産業界で漆に代わって多用されているウレタン樹脂塗料の付着性も良好で、かつ、その塗装は、生地の結晶化と同時に行え、耐熱性にも優れる。なお、詳細については、先行技術欄に提示した特許文献7を参照されたい。
【0032】
(解決手段4)
本発明の電子レンジ用調理容器は、上記解決手段3に記載の調理容器を基本発明として、容器本体の樹脂材料がPP樹脂であることを特徴とする。
【0033】
上記解決手段を説明する。上記解決手段は、上記解決手段に示すようにPET樹脂を含む混合樹脂材料で成形することによって、成形寸法の安定な容器蓋に対して、PP樹脂を使用することによって、形状的に安定な形状の容器本体が成形でき、容器本体に寸法が安定した容器蓋の遊合ができ、スムーズに着脱ができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の電子レンジ用調理容器は、容器本体の安全な位置に容器持ち手を備える他、容器本体と遊合する容器蓋には専用の取手を備えるので、一方の手で安全に容器蓋を操作できる。減圧機構を廃止した調理容器として必要な内部圧力の調節は、容器本体と容器蓋とが密着する位置決め段の一部を意図的に不連続にすることにより、その不連続部および容器上端並びに容器蓋の側面とで通気口が形成され、容器蓋側面と容器本体上端側内側面とで形成される小溝が構成され、この小溝と通気口は連通しているので、電子レンジのターンテーブルの回転に伴い、電子レンジ内の空気はこの小溝を流れるように誘導され、他方、蓋面に下向きの膨出部が容器内の蒸気を容器周辺部に方向変換させているから、過度の蒸気圧がターンテーブルの回転に誘い出されるように通気口を抜け出し、通気口の上方に送り出すことができる。
【0035】
また、容器蓋に減圧機構が存在しないことによって、調理物から立ち上がった蒸気がそのまま上方に筒抜けになることがなく、容器蓋から下垂する膨出部によって円滑に側方に方向制御され、容器本体内部を満遍なく循環する。したがって、調理物に対する加熱ムラが防止されるとともに、容器としての熱効率も改善される。
【0036】
さらには、容器蓋の上面側に凹陥状に下垂する膨出部を設け、その凹陥部側には取手を設けている。凹陥部側は蓋取手を設けるので、幅と厚さのある取手を掴む指の挿入ができる大きさに設定することとなり、その大きさに基づき膨出部は容器蓋内部側に大きく突出状態になる。その膨出部の大きさによって、蓋側面高さ(蓋の深さ)が大きくできるので、蒸気の方向変換および循環は円滑になるから熱効率を改善させる。
【0037】
容器蓋の樹脂材料に、PET樹脂を含む混合樹脂材料を用い、その容器蓋をウレタン塗装仕上げとしたものは、実質的に、今日の樹脂製漆器製品と同等の外観改善効果を奏することができる。そして、成形寸法が良好であり、その形状は安定しているので、容器蓋としての品質向上が図れる。
【0038】
そして、部分的に板厚の変化が少ない容器本体の樹脂材料としてPP樹脂を成形しているので、従来のように成形性も良く、前記容器蓋と組みあわせることで、容器蓋を安定に組み込み、安定性のある調理容器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の調理容器の実施の形態を示す平面図。
【図2】図1のX−X線矢視断面図。
【図3】図1のY−Y線矢視断面図。
【図4】図1のZ−Z線切断、A矢視側面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を引用しながら本発明の電子レンジ用調理容器の実施の形態を説明する。
【0041】
調理容器は、いずれも樹脂製の容器本体50と容器蓋60とからなるシンプルな構成である。容器本体50および容器蓋60の平面形状には、いずれも楕円形が採用され、したがって、調理容器全体としても楕円形の平面形状である(図1)。
【0042】
本実施の形態における容器本体50は、PP樹脂製である。容器本体50は、底面5Bと、底面5Bから立ち上がる容器側面5Sと、容器側面5Sの上端縁部の容器持ち手5T,5Tとを一体成形してなり、容器側面5Sの上端縁部には、側方に突出するフランジ5Fが全周囲に及んで形成されている。容器持ち手5T,5Tは、フランジ5Fの幅を部分的に拡大することによって形成され、容器持ち手5Tとフランジ5Fとは、段差なく円滑に連続する形態である。このような容器持ち手5T,5Tは、楕円の長径方向の二箇所に設けられ、容器本体50を安定に支持することができる(図1ないし図4)。一般的に、容器本体50を着色する場合は、樹脂材料に顔料を混入して成形される。
【0043】
容器蓋60は、蓋面6Pと、蓋面6Pから立ち下がる蓋側面6Sと蓋取手6Tとを一体成形してなる。蓋面6Pの中心部には、半球状に下垂する対流促進用の膨出部6Mが形成され、蓋側面6Sの長さ(深さ)は、膨出部6Mの窪み深さよりも深く形成されている。蓋面6Pは、膨出部6Mの部分で大きく窪んだ形状になっている。蓋取手6Tは、この凹陥部6Nに対して厚手のリブ状に、一字形に成形されている。また、蓋面6Pの裏面側には、水滴形の小突起6D…が多数個分散配置され、蓋面6Pに凝結した蒸気を分散滴下することができる。
【0044】
上記容器蓋60は、ウレタン樹脂塗料による焼付け塗装仕上げがされている。また、塗料の付着性を高めるため、容器蓋60の樹脂材料には、PET樹脂とABS樹脂との混合樹脂材料が主材料として用いられ、添加剤として適宜量の結晶化促進材料が含まれる。これらの材料の配合割合としては、PET樹脂40重量部、ABS樹脂40重量部、残量を添加剤とすることが好ましい。この際、添加剤としては、公知の結晶化促進材料から任意のものを選択することができる。このPET樹脂にABS樹脂を混合することによって、PET樹脂の結晶化温度まで耐熱性は向上し、さらには、ABS樹脂の塗料との付着性の良さを発揮する。
【0045】
なお、主材料中のABS樹脂については、PBT樹脂に置き換えても、その成形後の生地表面は軟らかで、その軟らかさによって塗料の付着性も良く、塗装性は良好であり、塗装した塗料を焼き付けているので、その表面は硬さが得られる(特許文献7参照)。
【0046】
容器本体50における容器側面5Sとフランジ5Fとの境界部分には、容器60の位置決めをするための位置決め段5Eが形成され、容器本体50と容器蓋60とは、蓋側面6Sの下端面が位置決め段5Eによって下方から支持される状態で組みあわされる。すなわち、全体としては、安定な成形寸法に成形された容器蓋60が、安定な形状に成形された容器本体50に一定の深さ遊合され、その容器本体50に落とし込まれるのである。
【0047】
位置決め段5Eは、フランジ5Fの内側に沿う帯状に形成されるが、位置決め段5Eには、楕円の短径位置に対応する二箇所に不連続部5G,5Gが設定されている(図1,図2)。各不連続部5Gの形状は、位置決め段5Eの一部が下方と側方に変形したといえる複雑な曲面形状であるが、各不連続部5Gの機能は、この部分で、容器本体50と容器蓋60とを極部分的な範囲において接触させないという機能であり、したがってこの機能が実現される限り、不連続部5G,5Gの形状には、図示以外の形状を採用することができる。
【0048】
すなわち、容器蓋60を容器本体50に落とし込むことによって嵌め込まれ、蓋側面6Sの下端縁は、位置決め段5Eに密着して不連続部5Gと蓋側面6Sとで通気口10,10を形成し、容器本体50の上端と蓋側面6Sとで略V字形の小溝11,11を形成している。したがって、電子レンジのターンテーブルが回転すると、その回転によって小溝11,11にあった空気は流動し、小溝11と連通した通気口10に流れるように誘導して、容器内の蒸気は、下垂する膨出部6Mによって容器周辺方向に方向変換され、その蒸気を誘い出されるように通気口10,10から小溝11,11へ、または、通気口10からその上方へと蒸気は安定的に誘導される。
【0049】
したがって、上記のような形態の容器本体50と容器蓋60との組合せからなる調理用容器は、適度な水分を含む調理物の電子レンジによる加熱調理や、調理済み食品の再加熱において、安全かつ熱効率良く使用することができる。
【0050】
なお、調理容器は、このまま電子レンジのターンテーブル上に載せ置いてもよい。容器蓋60が容器本体50の内側に嵌り込む形態であるので、調理物の水分量が適切である限りは、吹きこぼれが発生する恐れは極めて少ないからである。調理物の水分量が多めであるときは、適当なトレイに載せて電子レンジ内に収納してもよい。
【0051】
調理に際して、調理物から立ち上がった蒸気(図1ないし図4において矢印Hで示す)は、容器蓋60の中央位置から下垂する膨出部6Mによって円滑に両方向に向かうように方向を制御され、その後冷えて調理容器の周囲側から下降するように環流することができる。したがって、熱の回りが良好であって、調理容器内における蒸気の対流偏在による熱ムラが発生し難いのである。
【0052】
しかも、この膨出部6Mには、厚さのある蓋取手6Tを設けるので、手指が挿入できる大きさでなければならない。したがって、容器蓋6内に大きく突出した形態にならざるを得ない。そして、蓋側面6Sの高さ(深さ)も高くなる。つまり、調理容器内の調理物の上面と容器蓋内面とは十分な空間が得られ、蒸気の環流をより円滑にさせている。
【0053】
調理容器内における蒸気の発生量が逓増し、調理容器内の蒸気圧が一定限度を超えるようになると、過度の蒸気は、位置決め段5Eの二箇所の不連続部5G,5Gから外部に抜ける(図2)。この場合、二箇所の不連続部5G,5Gは、蒸気抜きとして調理容器内の圧力を一定の範囲に維持し、蓋はね等を未然に防止するように機能する。このような、通気口10,10の重要な機能を担当する不連続部5G,5Gの開口面積は、調理容器の内容積と容器蓋の重さを勘案して実験的に求められ、最適化している。
【0054】
開口面積の増大は、不連続部5G,5Gに対向する容器蓋60の蓋側面6Sの下端を部分的に切り欠くように切り欠きを形成してもその目的は、達成できる。また、容器本体50に不連続部5G,5Gを設けず、連続する位置決め段5Eとし、容器蓋60の蓋側面6Sの下端面を位置決め段5Eとの密着をしない一部切り欠きを設けることで、蒸気抜きとすることもできる(「切り欠き」については、図示なし)。
【0055】
通気口10,10からの蒸気の排出に際しての危険性の問題に関しては、蓋取手6Tが二箇所の不連続部5G,5Gの中間に位置するとともに、容器持ち手5T,5Tが、楕円の短径位置に対応して配置されている不連続部5G,5Gに対して、楕円の長径位置に対応して配置されていることにより、容器蓋60を操作するについても、容器本体50を操作するについても極自然に蒸気を避けることができる配置関係が成立されるのである。
【符号の説明】
【0056】
50 容器本体
5B 底面
5E 位置決め段
5G 不連続部
5S 容器側面
5T 容器持ち手
60 容器蓋
6P 蓋面
6M 膨出部
6N 凹陥部
6S 蓋側面
6T 蓋取手
10 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と該底面から立ち上がる容器側面と、該容器側面の上端部に形成する一対の容器持ち手とを合成樹脂材料から一体成形してなる容器本体と、中心部に半球状に下垂する下向き膨出部の上側凹陥部に蓋取手を形成した蓋面と、該蓋面の周縁から立ち下がる蓋側面とを合成樹脂材料から一体成形してなる容器蓋とからなる電子レンジ用調理容器において、
前記蓋側面を前記下向き膨出部より深く形成するとともに、前記蓋側面には、少なくとも二箇所に不連続部を設定した帯状の位置決め段を形成することによって、前記容器本体と容器蓋とが前記蓋側面の下端が前記位置決め段に上下に対面して前記容器本体の内側に落ち込む態様で組み合わされ、組み合わされた前記容器本体と容器蓋との間に前記不連続部において通気口が形成されるようにしてなり、
加熱調理に際して、前記下向き膨出部が容器内の上昇蒸気を容器周辺部に振り向けるように方向変換させるとともに、前記通気口が容器内の過剰蒸気を外部に排出して前記容器蓋の浮上を阻止すること、を特徴とする
電子レンジ用調理容器。
【請求項2】
前記一対の容器持ち手は、前記少なくとも二箇所の不連続部に対応して形成される前記通気口の中間位置に形成されていること、を特徴とする、
請求項1に記載の電子レンジ用の調理容器。
【請求項3】
前記容器蓋は、PET樹脂とABS樹脂との混合樹脂材料、または、PET樹脂とPBT樹脂との混合樹脂材料のいずれか一方の混合樹脂材料を主材料とし、適宜量の結晶化促進材料を添加剤として形成した蓋生地にウレタン樹脂塗料を焼き付け塗装してなること、を特徴とする
請求項1に記載の電子レンジ用調理容器。
【請求項4】
前記容器本体の樹脂材料が、PP樹脂であること、を特徴とする
請求項1または2に記載の電子レンジ用調理容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245346(P2012−245346A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226306(P2011−226306)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(302035751)株式会社 竹中 (1)
【Fターム(参考)】