説明

電子レンジ調理用容器及び食材を収容した電子レンジ調理用容器

【課題】合成樹脂製シートを成形した容器であって、水を添加せずに食材の水分を利用して食材を加熱調理するための電子レンジ調理用容器を提供する。
【解決手段】本発明の電子レンジ調理用の容器1は、合成樹脂製の容器本体10と蓋体20とを備えている。そして、容器1内に食材を収容した状態で、電子レンジにより加熱調理した際の蒸気圧調整ができるように、裾部25に切れ目を有する凹部30を形成して、その凹部30を蒸気圧調整部とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製シートを成形した容器であって、水を添加することなく、食材を電子レンジで加熱調理するための電子レンジ調理用容器、及び、食材を収容した電子レンジ調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成樹脂製の容器に収容された冷凍食品、冷蔵食品或いはレトルト食品等を、容器ごと電子レンジで加熱した後、その食品を食卓に供することが行われている。また、弁当、麺類、パスタ、惣菜等の食品を収容した合成樹脂製容器も多く用いられており、前記食品と同様に電子レンジで加熱された後に食されることが多い。これらの食品は、予め加熱調理されたものであって、よりおいしく食するために加熱される。そして、加熱により発生した蒸気圧により、蓋が外れたりしないように、蒸気を排出するための技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されている「包装容器の蓋、包装容器及び食品包装体」では、容器の蓋に切れ込みにより舌片部が形成されている。また、この舌片部は、切れ込みが、少なくとも一端側において方向を変えて延長されているので、引き上げ力が作用した時、末端において引き裂き力が伝播しないようになっている。そして、食品が収容されたこの容器を電子レンジで加熱した場合、食品から大量の蒸気が発生しても、舌片部が撓むことにより排気口が形成されるので、加熱時の蓋外れや容器変形を防ぐことができる。
【0004】
特許文献2に開示されている「蒸気排出スリット付き電子レンジ調理容器」では、上蓋の上面に半球状凹部が形成されている。その半球状凹部に、少なくとも2つのスリットにより橋状の蒸気排出弁が形成されている。この蒸気排出弁は、蒸気圧により押し上げられて、スリット部分を開くように変形するので、蒸気が排出されやすくなる。また、蒸気圧が低下した時は、蒸気排出弁は元の状態に戻るので、開いていたスリット部分も元の状態に戻るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191161号公報
【特許文献2】特開2008−54942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の容器によれば、舌片部が容易に撓むことにより、短時間で大量の蒸気を容器外へ排出することができる。しかし、水を添加しないで、食材中に含まれる水分を有効に利用して食材を調理しようとする場合、容器内の蒸気圧をなるべく高めに維持する必要があるので、この舌片部を蓋に有する容器を用いることは難しい。
【0007】
特許文献2の容器によれば、蒸気の微小圧力で蒸気排出弁を変形させることができるので、容器内の蒸気の微小圧力のコントロールを安定して行うことができる。しかし、特許文献1の容器と同様に、容器内の蒸気圧をなるべく高めに維持することは難しい。
【0008】
近年、タジン鍋或いはタジンポットと称させる陶器製や磁器製の調理器を用いて、例えば複数の野菜等を、水を添加せずに加熱調理することが行われている。この調理法は、食材に含まれる水分を利用して蒸気を発生させ、その蒸気によって食材を蒸し焼き状態にするものである。この調理法で調理された温野菜は、食する時にシャキシャキ感を味わうことができるとして好まれている。即ち、この調理法の特徴は、蒸気を効果的に用いることにある。この点で、前記調理器は、蓋が比較的重いために容器内の蒸気圧を高めに保つことができると共に、上昇し過ぎた蒸気圧を容器と蓋との隙間から適宜排出することができるようになっているので好ましい。ところが、前記調理器を、電子レンジを用いて加熱する場合、調理器自体を加熱するためにエネルギーが消費される問題がある。また、これらの調理器は、必ずしも日常的に用いられるものではないため、特別高価なものではないにしても、家庭内での調理用として購入することが躊躇われる。
【0009】
このため、特許文献1、2の容器を前記調理器として用いることが考えられるが、前者は蒸気が無駄に容器外へ逃げ易く、後者は無駄な蒸気の排出を抑えることができるが、蒸気圧を高めに維持することが難しい。即ち、両者とも、容器から蓋が外れない範囲において、容器内における蒸気圧をなるべく高めに維持するための工夫がなされていない。
【0010】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製シートを成形した容器であって、水を添加せずに食材の水分を利用して食材を加熱調理するための電子レンジ調理用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために請求項1に記載の電子レンジ調理用容器の発明は、合成樹脂製シートを成形した容器であって、環状の係合凹部を備えた容器本体と、環状の係合凸部を備えた蓋体とが、前記係合凹部と係合凸部との係合により密閉状態に係合される電子レンジ調理用容器において、前記蓋体は、前記係合凸部が形成された周壁部と、その周壁部の下端から内方へ延在する環状平面部、又は、その周壁部の下端から内方へ向かって反り上がる環状緩斜面部と、蒸気対流を許容する空間となるように形成されると共に、中央において上方へ膨出する膨出部と、前記環状平面部又は環状緩斜面部と膨出部とを連結すると共に、母線が凹曲線の円錐台の側面で形成される裾部とを備え、前記裾部に蒸気圧調整部が設けられたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、電子レンジにより加熱された食材から発生した蒸気は、容器内を移動して膨出部内に至ると共に、食材に戻るように容器内を対流する。この時、膨出部内において蒸気の一部は水滴となって食材に戻り、その水分は食材と共に再加熱されて蒸気となる。このようにして、容器内の食材は蒸気によって蒸し焼き状態に調理される。
【0013】
また、裾部の比較的剛性が得られる部分に蒸気圧調整部が設けられているので、蒸気圧を高めに維持することが可能となり、上記蒸し焼き状態を効果的に行うことができる。そして、蒸気の発生が過多となり蒸気圧が所定圧力を超える時は、蒸気圧調整部から蒸気が放出されるので、蒸気圧を下げることができる。従って、蓋が容器から外れることを防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子レンジ調理用容器において、前記蒸気圧調整部は、前記裾部に形成された底面部と立壁部とよりなる凹部の前記底面部に形成された切れ目が、蒸気圧を受けて開くことにより蒸気圧を調整することを特徴とするものである。ここに用いられた「切れ目」とは、切断されているが、切断部が合わせられている場合、及び、切れ込みがあるが、切断されていない場合のいずれの場合も指すものとする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子レンジ調理用容器において、前記凹部は、前記裾部の等高線上において、複数が等間隔に配置されたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の電子レンジ調理用容器において、前記切れ目は、複数の切れ目が交差して形成されていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電子レンジ調理用容器において、前記切れ目が交差する部分に孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に記載の食材を収容した電子レンジ調理用容器の発明は、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の電子レンジ調理用容器の前記容器本体に食材を収容した状態で、前記容器本体と蓋体とが密閉状態に閉合されていることを特徴とするものである。
【0018】
上記構成によれば、容器本体内に食材が収容されると共に、その容器本体に蓋が密閉状態に閉合された容器を得ることができる。このため、この容器の利用者は、所定のレシピに従って電子レンジの操作をするだけで、例えば、温野菜を、シャキシャキ感を味わいながら食することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使い捨ても可能な合成樹脂製シートを成形した容器であって、水を添加せずに食材の水分を利用して食材を加熱調理するための電子レンジ調理用容器を提供することができる。また、様々な食材が収容された容器を各種用意することにより、様々な好みを有する消費者に対して、電子レンジの簡便な操作で利用可能な、食材を収容した電子レンジ調理用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の容器を示す斜視図。
【図2】閉合状態の容器本体と蓋体とを示す断面図。
【図3】膨出部を示す平面図。
【図4】図3のA部の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB矢視図、(c)は(b)のCーC断面図。
【図5】蒸気圧調整部において、(a)は切れ目の一部が開いた一態様を示し、(b)は他の態様を示す。
【図6】第2実施形態の蒸気圧調整部の切れ目を示し、(a)は逆Y字状の態様を示し、(b)はY字状の態様を示す。
【図7】(a)は第3実施形態の蒸気圧調整部の切れ目を示し、(b)は第4実施形態の蒸気圧調整部の孔を示す。
【図8】第5実施形態の凹部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D断面図。
【図9】第6実施形態の食材を収容した容器を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図5を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の容器1は、合成樹脂製シートを成形した容器本体10と蓋体20とより構成されている。合成樹脂の好適な材質としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレート等があげられる。
【0022】
容器本体10は、環状の係合凹部12が形成された周壁部11と、環状の底面部13と底面部13の内側でドーム状に上底された上底部14とよりなる底面とで構成されている。周壁部11の下端と底面部13とは、環状の凹曲面で連結されている。また、周壁部11の上端における中心対称位置の2ヶ所には、一対のフランジ部15が形成されている。
【0023】
蓋体20は、下方に係合凸部22が形成された周壁部21と、周壁部21の下端から内方へ延在する環状平面部23と、中央において上方へ膨出する膨出部24と、環状平面部23と膨出部24とを連結する裾部25とより構成されている。裾部25は、凹曲線の母線を有する円錐台の側面形状で形成されている。また、周壁部21の上端における中心対称位置の2ヶ所には、一対のフランジ部28が形成されている。このフランジ部28と前記フランジ部15とは対応する位置に形成されているので、両方の手でフランジ部15、28を挟むように、容器1を安全に持つことができる。
【0024】
膨出部24は、頂部に天板部26を有する円錐台状に形成されると共に、その天板部26には、補強のための補強用凹部27が形成されている。この膨出部24は、容積に比較して表面積が多いので、膨出部24内に対流により移動してきた蒸気は、他の部位の蒸気に比べて放熱して水滴化しやすい。そして、水滴は、食材の表面に戻った後に蒸気となって食材の加熱を促進する。なお、膨出部24の側面を円錐台状に形成すると共に、その頂部を半球状に形成するようにしてもよい。
【0025】
そして、図3に示すように、裾部25には、等高線上の等間隔の複数ヶ所(本実施形態では4ヶ所)に凹部30が設けられている。図4に示すように、凹部30は、膨出部24の軸心に直行する方向の底面部31と、平面視円弧状且つ前記軸心に平行な立壁部32とにより形成されている。また、底面部31には十字状の切れ目33が形成されて、切れ目33と凹部30とが蒸気圧調整部を構成している。この切れ目33は、カッター等により十字状に切断されているが、切断された部分は合わせられているので、外観は十字状の線が見えるだけである。即ち、切れ目33は、スリットのように、細隙が形成されたものとは異なる。
【0026】
次に、蒸気圧調整部について説明する。図2に示すように、容器本体10に対して蓋体20を閉じて、係合凹部12と係合凸部22とが係合するようにすれば、容器本体10と蓋体20とは密閉状態に閉合されて容器1を形成する。この容器1内に予め食材を収容し(図9参照)、レシピに従って、容器1を図示しない電子レンジにより加熱した場合、食材に含まれる水分が蒸気となって容器1内に充満することになる。この時、切れ目33の切断部分は合わせられているので、蒸気圧がある程度の高さになるまで、蒸気の切れ目33からの漏洩はわずかな量に止まる。従って、容器1内の蒸気圧は高めとなって、食材を蒸し焼きにするために好ましい状態となる。一方、蒸気圧が高くなり過ぎた場合、容器本体10や蓋体20が変形したり、蓋体20が外れたりすることが起きるので好ましくない。ところが、図5(a)に示すように、切れ目33の一部が開いて開口部34が生じることにより、適宜量の蒸気が容器1外へ放出されるので、前記変形や外れは起きない。従って、容器1内の蒸気圧は、高めに安定して維持される。
【0027】
また、食材によっては、生じる蒸気の量が多い場合がある。このことは、予め予想ができるので、図5(b)に示すように、底面部31の一部が折線35で折れる撓み片36となりやすいように、折り癖を付けておくようにしてもよい。このようにした場合、比較的大きな開口部34が生じることにより、大量の蒸気により生じた蒸気圧を調整することが容易となる。
【0028】
なお、凹部30が裾部25に形成されているために、底面部31に力を加えても、凹部30及びその周辺の剛性により、凹部30が沈むことは起き難い。従って、蓋体20の撓みやすい部位に切れ目33が形成された場合と異なり、上記のような折り癖を付ける作業を容易に行うことができる。
【0029】
また、切れ目33を、上面からの切れ込みに止めて、切断しないで形成したものも好適に用いることができる。この切れ目33を有する蓋体20は、このままでは蒸気圧調整部を有しないことになる。しかし、複数の凹部30のうち必要な数の凹部30の切れ目33を、レシピ等に応じて切断することにより、所定の蒸気圧を得るための蒸気圧調整部とすることができる。この切れ込みの切断は、例えば、箸、フォーク、串等を用いて、切れ目33を押圧することにより、容易に行うことができる。
【0030】
この切断箇所の選択により、蒸気放出量がゼロの状態と、全数の凹部30の切れ目33を切断して蒸気放出量を最大とした状態との間の範囲で、蒸気放出量の加減を任意に行うことができる。従って、前記範囲に対応して、蒸気圧の任意の調整ができる。この、非切断部を切断する作業も、凹部30が裾部25に形成されているために、容易に行うことができる。
【0031】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、裾部25に複数の凹部30を形成すると共に、その凹部30の底面部31に切れ目33を設けて蒸気圧調整部とした。そして、この切れ目33の十字状に切断された切断部分が合わせられているようにした。このため、容器1内の蒸気は、蒸気圧が所定の圧力に高められるまで、切れ目33から放出され難い。従って、容器1内の蒸気圧を高めに維持できるので、容器1内に食材を収容して電子レンジで加熱した時、食材を効果的に蒸し焼きすることができる。
【0032】
(2)上記実施形態では、切断により十字状の切れ目33を形成した。このため、容器1内の食材から多量の蒸気の発生が予測される場合には、切断部が開く方向の癖付けを行うことによって、切れ目33に適宜大きさの開口部34を生じさせ易くすることができる。
【0033】
(3)上記実施形態では、切れ目33を、上面からの切れ込みに止めて、切断しないで形成した。このため、複数の凹部30のうち必要な数の凹部30の切れ目33を、レシピ等に応じて切断することにより、所定の蒸気圧を得るための蒸気圧調整部とすることができる。この切断箇所の選択により、蒸気放出量がゼロの状態と、全部の凹部30の切れ目33を切断して蒸気放出量を最大にした状態との間の範囲で、蒸気放出量の加減を任意に行うことができる。従って、前記範囲に対応して、蒸気圧の任意の調整ができるので、食材の種類及び量が変わっても、一つの容器1で調理することができる。
【0034】
(4)上記実施形態では、裾部25に、底面部31と立壁部32とよりなる凹部30を形成して、その底面部31に切れ目33を設けた。このため、底面部31は、斜面で構成される裾部25及び立壁部32で支持されているので、押圧力を受けても容易には沈み込むことがない。一方、蓋体20の平板状部分或いは緩斜面状部分に切れ目33が設けられた場合、その切れ目33の形成部位は押圧力により容易に沈むので、切れ目33を広げたり、非切断部を切断したりする作業がし難い。ところが、凹部30の底面部31の切れ目33に対しては、前記作業を容易に行うことができる。
【0035】
(5)上記実施形態では、蓋体20の中心に膨出部24を形成した。この膨出部24は容積に比較して表面積が多いので、膨出部24の表面からの熱の放出量は、膨出部24以外の部分に比べて多くなる。即ち、対流により膨出部24内に移動してきた蒸気は、他の部位の蒸気に比べて放熱して水滴化しやすい。このため、水滴が食材の表面に戻った後に蒸気となって食材の加熱を促進するので、食材の調理を効率よく行うことができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図6を用いて説明する。
【0037】
本実施形態の切れ目37、38は、3線分が一点で交わる三叉状に形成されている。そして、切れ目37は図6(a)に示すような逆Y字状に配置され、また、切れ目38は図6(b)に示すようなY字状に配置されている。この例示のように、様々な方向に配置された三叉状の切れ目を、蒸気圧調整部を構成するものとして採用することができる。この切れ目37、38は、十字状の切れ目33に比べて、変形応力が強くなるので、蒸気の放出開始を遅らせて、高めの蒸気圧を維持することができる。
【0038】
(第3及び第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3、4実施形態を、第1、2実施形態と異なる部分を中心に図7を用いて説明する。
【0039】
図7(a)に示す第3実施形態の切れ目41は、円弧状部41aと、円弧状部41aの両端部からそれぞれ内側へ延出した直線部41bとよりなっている。また、円弧状部41aの2ヶ所には、切れ目が中断した中断部42が配置されている。この切れ目41の場合、必要に応じて中断部42を切断することにより、切れ目41の内側の部分を、ヒンジ予定部43を中心に開きやすい開放片とすることができる。
【0040】
図7(b)に示す第4実施形態の切れ目44は、十字状の切れ込みにより形成されたものであって、切断されていない。そして、十字状切れ込みが交差する部分に孔45が穿設されている。この孔45は、開口度合いを適宜選択することにより容器1内の蒸気圧の調整を行うために用いられる。また、蒸気の放出量を増やすために、孔45を押圧することにより、孔45を起点として、十字状の切れ込みを切断することができる。
【0041】
なお、複数の凹部30に設けられた切れ目44のうちの一部に孔45を穿設して、その他の切れ目44に孔45を穿設しないようにしてもよい。
(第5の実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態を、第1〜4実施形態と異なる部分を中心に図8を用いて説明する。
【0042】
図8(a)、(b)に示すように、本実施形態の環状の凹部50は、裾部25に形成された環状の底面部51と立壁部52とにより構成されている。凹部50は、環状の補強リブの機能を有するため、蓋体20の平板状部分或いは緩斜面状部分よりも剛性が高められている。そして、底面部51には、等間隔に複数ヶ所(本実施形態では8ヶ所)に切れ目33が設けられている。この切れ目33の配置箇所の増減は、蓋体20の成形型の改造によらず、成形品に対する後加工時に行うことができる。
【0043】
そして、この第5実施形態においては、第1実施形態における効果の一部に変えて、以下の効果を得ることができる。
(6)上記実施形態では、裾部25に、環状の底面部51と立壁部52とによりなる凹部50を形成した。そして、その底面部51に、複数の切れ目33を設けるようにした。このため、切れ目33の配置箇所の増減を、成形品に対する後加工時に行うことができるので、成形型の改造を行って凹部30の数を増減する場合と異なり、蓋体20の製造にかかるコストアップを抑えることができる。
【0044】
(第6の実施形態)
次に、本発明を具体化した第6実施形態を、第1〜5実施形態と異なる部分を中心に図9を用いて説明する。
【0045】
本実施形態の食材を収容した電子レンジ調理用容器2は、容器本体10に食材3を収容した状態で、容器本体10と蓋体20とを密閉状態に閉合したものである。そして、この食材を収容した電子レンジ調理用容器2には、図示しないレシピが備えられており、消費者はこのレシピに従って、電子レンジの操作のみで、調理された食材を食することができる。
【0046】
ちなみに、調理の一例を次に示す。食材3として、もやし100gと、短冊切りしたキャベツ100gと、2mmの厚さにスライスしたエリンギ50gとを容器本体10内に収容し、蓋体20を被せて、容器本体10と蓋体20とを密閉状態に閉合した。そして、食材3に対して、電子レンジ調理用容器2ごと、電子レンジにより、800W×3分の加熱を行うことにより、食材3が一様に蒸し上がった。食材3のどれをも、シャキシャキ感を味わいながら食することができた。
【0047】
そして、この第6実施形態においては、第1〜5実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(7)上記実施形態では、容器本体10に食材3を収容した状態で、容器本体10と蓋体20とを密閉状態に閉合して、食材を収容した電子レンジ調理用容器2とした。このため、消費者はレシピに従って、単に電子レンジを操作するのみで、調理された食材を食することができる。このため、専用の陶器製や磁器製の調理器を用いることなく、手軽に温野菜等を、シャキシャキ感を味わいながら食することができる。
【0048】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 裾部25に凹部30、50を形成し、それらの底面部31、51に切れ目33、37、38、41、44を設けるようにしたが、裾部25の斜面に直に切れ目33、37、38、41、44を設けること。
・ 蓋体20において、周壁部21の下端から内方へ延在する環状平面部23を設けたが、周壁部21の下端から内方へ向かって反り上がる環状緩斜面部とすること。従って、裾部25は、膨出部24と前記環状緩斜面部とを連結すること。
【符号の説明】
【0049】
1…容器、2…電子レンジ調理用容器、3…食材、10…容器本体、11,21…周壁部、12…係合凹部、13,31,51…底面部、20…蓋体、22…係合凸部、23…環状平面部、24…膨出部、25…裾部、30,50…凹部、32,52…立壁部、33,37,38,41,44…切れ目、45…孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製シートを成形した容器であって、環状の係合凹部を備えた容器本体と、環状の係合凸部を備えた蓋体とが、前記係合凹部と係合凸部との係合により密閉状態に係合される電子レンジ調理用容器において、前記蓋体は、前記係合凸部が形成された周壁部と、その周壁部の下端から内方へ延在する環状平面部、又は、その周壁部の下端から内方へ向かって反り上がる環状緩斜面部と、蒸気対流を許容する空間となるように形成されると共に、中央において上方へ膨出する膨出部と、前記環状平面部又は環状緩斜面部と膨出部とを連結すると共に、母線が凹曲線の円錐台の側面で形成される裾部とを備え、前記裾部に蒸気圧調整部が設けられたことを特徴とする電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
前記蒸気圧調整部は、前記裾部に形成された底面部と立壁部とよりなる凹部の前記底面部に形成された切れ目が、蒸気圧を受けて開くことにより蒸気圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記凹部は、前記裾部の等高線上において、複数が等間隔に配置されたことを特徴とする請求項2に記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項4】
前記切れ目は、複数の切れ目が交差して形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項5】
前記切れ目が交差する部分に孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の電子レンジ調理用容器の前記容器本体に食材を収容した状態で、前記容器本体と蓋体とが密閉状態に閉合されていることを特徴とする食材を収容した電子レンジ調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−10906(P2012−10906A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149646(P2010−149646)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(593215829)アテナ工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】