説明

電子レンジ調理用麺食品

【課題】電子レンジで加熱するだけで、茹でたての麺と同等の風味を得ることができるようにした電子レンジ調理用麺食品を提供すること。
【解決手段】α化されていない乾麺と、該乾麺を収容した加熱可能な容器と、該加熱可能な容器に収納され、水を入れて電子レンジ加熱することにより、喫食可能とされるための粉末ソースとを含む電子レンジ調理用麺食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱可能な容器に収容された乾麺を電子レンジにより短時間で喫食可能に調理することができる電子レンジ調理用麺食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手軽に食することができる食品として、予め茹でてα化したパスタ等の麺類を冷凍し、それを電子レンジ加熱用容器に収納して、調理用のソースを添付して販売されている。
このような食品は、予め茹でた麺を解凍し、調理ソースをあえることにより食するようにしたものであるから、麺は、冷凍前、あるいは冷凍中に水分を吸収して、パサパサとした食感になりやすい。
【0003】
また、α化した生麺を容器に収容して常温保存できるようにし、調理ソースをかけて電子レンジ加熱することにより短時間で喫食可能にしたパスタ等の麺食品も広く普及している。
このような生麺タイプの食品は、麺が生タイプであることから食感に優れ、3分ないし5分程度の短時間で調理可能な利点を有している。
【0004】
しかしながら、α化した生麺はそのままでは数日で腐敗してしまうので、ロングライフ麺(常温で六カ月以上の長期間保存可能な生麺)とするために、通常、pH処理を行っている。具体的には、生麺を茹でる等してα化した後で、クエン酸や乳酸等を添加してpH4.3以下になるように加工している。
このため、この種麺食品は、食感に優れるものの独特の「酸っぱい」食味が残り、大きく風味を損なうものが多い。
【0005】
そこで、本出願人は、茹でパスタをソテーし、得られたソテーパスタの上にソースを添加してから冷凍するようにした食品を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−186852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した文献に記載の食品では、加熱解凍するだけで食することができるという手軽さもあり、パスタのパサパサ感も改善されているという利点があるものの、予め調理したパスタを冷凍して、それを再加熱して食する以上、どうしても風味の上で劣る点があり、特に茹でたてのパスタと比較すると、風味の違いは出てしまう。
そこで、本発明は、電子レンジで加熱するだけで、茹でたての麺と同等の風味を得ることができるようにした電子レンジ調理用麺食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子レンジ調理用麺食品は、α化されていない乾麺と、該乾麺を収容した加熱可能な容器と、該加熱可能な容器に収納され、水を入れて電子レンジ加熱することにより、喫食可能とされるための粉末ソースとを含むことを特徴とする。
上記構成によれば、容器内にα化されていない乾麺と、このα化されていない乾麺の量に対応した量の水及び粉末ソースを添加することにより、短時間で茹でたて麺の風味を備えた喫食可能な麺食品を得ることができる。
特に、従来の多くの電子レンジ加熱用麺食品と異なり、液体ソースを用いていない。このことにより、麺重量に対して適量の水を添加したことで、電子レンジ加熱調理時に、該水が容器内で対流して茹でるための湯として適切に機能し、α化されていない乾麺を茹で揚げることができる。
【0009】
好ましくは、前記水が、重量比で、前記乾麺の180%ないし360%とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、水が乾麺に対して重量比で180%未満だと、茹であがりが硬く食するに難がある。水が乾麺に対して重量比で360%を超えると、茹であがりが柔らかく、腰のない食感になってしまう傾向がある。
【0010】
好ましくは、前記乾麺がパスタ用乾麺であり、前記水が、重量比で、前記乾麺の190%ないし290%とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、水が乾麺に対して重量比で、前記乾麺の190%ないし290 %とされていると、茹であがりが適切で所謂「アルデンテ」に相当する状態となり、中心部にわずかに芯があるかないか程度のきわめて美味な食感を得ることができる。
【0011】
好ましくは、前記パスタ用乾麺が、麺の断面径が1.8mm以下とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、麺の断面径が1.8mmを超えると、水分量を多くしなければならず、必要以上に調理時間がながくなってしまう。
【0012】
好ましくは、前記パスタ用乾麺が、麺の長さ方向に延びる溝を有する溝入り乾麺であることを特徴とする。
上記構成によれば、調理中に水(ゆでるための湯)との接触面積が大きくなり、茹であがりが短時間で済む。
【0013】
好ましくは、前記パスタ用乾麺が断面ほぼN字状とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、調理中に水(ゆでるための湯)との接触面積をもっとも大きくできるので、茹で時間を最短時間とすることができる上に、茹であがり時には断面円形のパスタを得ることができる。
【0014】
好ましくは、前記パスタ用乾麺の溝が断面ほぼV字状とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、調理中に水(ゆでるための湯)との接触面積が大きくなり、茹であがりが短時間で済む上に、茹であがり時には断面円形のパスタを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、電子レンジで加熱するだけで、茹でたての麺と同等の風味を得ることができるようにした電子レンジ調理用麺食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電子レンジ調理用麺食品の好ましい実施形態の構成を示す斜視図。
【図2】図1の電子レンジ調理用麺食品の平面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図2のB−B断面図。
【図5】容器内に重ねて収容された乾麺が茹でられる際の状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
(電子レンジ調理用麺食品の全体構成)
図1乃至図4は、本発明の実施形態に係る電子レンジ調理用麺食品10であり、図1はその斜視図、図2はその平面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図である。なお、これらの図では、容器が理解し易いように、乾麺を省略ないし数を減らして図示している。また、図3及び図4では、販売の際、電子レンジ調理用麺食品10に入れられていない液体を、理解の便宜のため、二点鎖線で図示している。
【0018】
電子レンジ調理用麺食品(以下、「食品」という)10は、この場合、乾麺20と、この乾麺20を収容して調理するための乾麺調理用容器(以下、「容器」という)12とを有している。この食品10は、乾麺20が既に容器12に収容された状態で販売されており、調理をする際は、後述する組成の粉末スープSを添加後、適量の水を乾麺20が収容されている容器12に入れ、これを電子レンジで加熱しながら乾麺20を茹でるようになっている。この際、調理の利便性を考慮して、乾麺を茹でるための液体は、調理後に湯切りが不要となるように、適度な量とされることが好ましい。例えば、本実施形態の液体は麺を茹でる目的で使用される水であり、水量は乾麺重量の2〜2.5倍程度とされている。
【0019】
先ず、乾麺20について説明する。
乾麺20は細長い直線状の乾麺であって、液体を吸収して調理されるパスタ用乾麺、蕎麦用乾麺、うどん用乾麺などである。本実施形態の場合、乾麺20はパスタ用乾麺とされ、例えば、デュラム小麦のセモリナと水を混練して製麺されたもので、各麺が予め所定長さに切り揃えられている。
そして、乾麺20は、図1及び図4に示すように、該乾麺20の長さ方向をそろえるようにして、容器12の短手方向(図1のY方向)に並べられ、また高さ方向(図4のZ方向)に重ねられている。なお、乾麺20は所定量、この場合、例えば、大人の1食分として80グラム程度が容器12に収容されている。
【0020】
食品10は、電子レンジ加熱により、簡便に調理して食することを狙いとするものであるから、乾麺20についても短時間で茹であがるものが好ましい。そこで、本実施形態の乾麺20は、図4の一点鎖線で囲まれた乾麺20の断面拡大図に示されるように、その長さ方向と直行する横断面が円もしくは楕円であり、当該断面においてその外面から内方に向かって徐々に縮径する溝24が形成された溝付麺とされている。この構成によれば、乾麺20が前記溝24を備えていることにより、表面積が増大しているので、その分短時間で茹で上げることができる。
好ましくは、乾麺20は、図4に示すように、横断面における各部の肉厚の変化が互いに小さな略N字型とするのがよい。
しかしながら、乾麺の形態はこれに限らず、断面V字型の溝を施したものを使用することもできる。
【0021】
図4の乾麺20についてさらに詳細に説明する。
乾麺20は、その断面22が、直径W2の円を幅T2の平行線で左右均等に裁断して、幅T2の外側部分を切り落とし、かつ、上部に左側から切れ込んだV字型の溝24aを、下部に右側から切れ込んだV字形の溝24bを設けた形状を有している。
横断面22は、最大径が直径W2であり、主外形が直径W2の円弧となっている。直径W2は、1.2mm〜3.0mmとする。裁断する平行幅T2は、乾麺20の茹で上がりの横断面が略円形となるように、直径W2の円弧を1/2以上残す幅とするのが好ましい。
【0022】
2つの溝24a,24bは、横断面22の中心について点対称となる位置に、互いに隣接する辺がほぼ平行になるように配され、2つの溝24a,24b間の麺線部分の肉厚A4は、略一定となる。
また、溝24a,24bのそれぞれは、横断面22の中央よりも深く形成されている。図4中、A3は、溝24aの先端と幅T2の直線による切り落とし面との間の麺線部分の肉厚を示している。なお、溝24aと溝24bとは点対称な形状なので、溝24bの先端における麺線部分の肉厚も同じくA3である。
溝24a,24bの深さT1、すなわち、溝の先端から開口端面までの垂線の長さT1は、横断面22の溝24a,24bの形成方向における径である幅T2の1/2よりも大きいことが好ましい。それにより、肉厚A3を小さくすることができるとともに、図4においてA1およびA2で示す、横断面22の円弧と溝24a,24bの円弧側の辺との間の肉厚を小さくすることができる。
【0023】
溝24a,24bの先端部は角度P1を有し、円弧側の辺が途中で鈍角に屈曲している。これにより、当該先端部側の辺から円弧までの肉厚A2と、屈曲部における肉厚A1とが同様の寸法になるように形成され、溝24a,24bの先端部から開口部までの肉厚の変化を小さくすることができる。なお、溝24a,24bの円弧側の辺は、2箇所以上で屈曲していてもよい。
【0024】
上述したA1〜A4で示した横断面22の各部の肉厚(麺線の横断面における麺線部分の肉厚:製造的見地から見て麺強度の骨格となる主要な部分の肉厚を意味し、溝を設けたことにより生じる、麺線の断面形状における端部を含まない)は、その差が小さく、具体的には、それぞれ0.3mm〜0.8mmの範囲とされている。ここで、麺線の横断面における麺線部分の肉厚を0.3mm以上とするのは、肉厚が0.3mm未満であると、食感が弱く、また、強度が小さいため乾麺20の製造が困難であるからである。一方、麺線の横断面における麺線部分の肉厚を0.8mm以下とするのは、0.8mmを超えると、茹で時間が長くなり、短時間での電子レンジ調理は難しいからである。また、横断面22の各部の肉厚は、上記範囲でも特に、0.5mm〜0.6mmとするのが好ましい。この範囲とすることで、製造の安定性と茹で時間の短縮との両立のバランスが最も適当となるからである。
【0025】
乾麺20は、茹でることで吸水し、麺線部分が膨張しつつ変形して溝24a,24bが塞がる。したがって、溝24a,24bのそれぞれは、先端部を境とする二辺の長さがほぼ同一であることが好ましい。溝24a,24bの二辺の長さをほぼ同一にすることで、溝24a,24bが塞がったときに、横断面22の外周に大きな段差が生じることがなく、乾麺20の良好な外観、食味および食感を得ることができる。
【0026】
さらに、溝24a,24bの先端部の角度P1は、20度〜70度とするのが好ましい。角度P1を20度以上とするのは、20度未満では、茹で時間短縮効果が少ないからであり、70度以下とするのは、70度を超えると、溝24a,24bの幅が大きすぎて茹で上がり後であっても溝が適切に閉じない場合があるからである。なお、溝24a,24bの先端部は丸みを帯びていてもよいが、横断面22において、麺線部分の肉厚に対する溝部分の幅の比を1.0:0.5〜2.0とするのが好ましい。
【0027】
以上のような断面形状を有する乾麺20は、表面積が増大するので、茹で時間が短縮される。また、乾麺20は、横断面22の全体において肉厚の変化が小さく、ほぼ均等であるため、麺全体を均等な固さに茹で上げることができ、良好な食味および食感を得ることができる。さらに、乾麺20に形成された溝24a,24bは、茹で上がったときに溝が適切に閉じ、かつ、閉じた部分に大きな段差も無い、良好な外観を得ることができる。
なお、本発明の乾麺は、上述した実施形態に限られず、調理時間の長短を考慮しなければ、横断面が単なる円形状であっても勿論構わない。また、本実施形態の乾麺20は、上述した溝24a,24bを略V字形としているが、溝24a,24bは、先端部を境とする二辺が略平行なU字形としてもよい。また、乾麺20の横断面の主外形は、楕円の円弧としてもよい。
【0028】
(粉末ソースについて)
粉末ソースは、食品10の味を決定するとともに、含有物の種類によっては、麺食品の「具」を決定する性質を有しているが、本実施形態では特に「粉末」ソースということにより、従来の電子レンジ調理食品に見られるように「ソース」に「水分」を含有することを排除して、乾麺の量と、当該乾麺の量に対応して、これを茹で揚げるための「水分」量の配合にくるいが生じないようにしたものである。
【実施例1】
【0029】
【表1】

【実施例2】
【0030】
【表2】

これらの粉末ソースの組成はあくまでのパスタに係る麺食品の例であり、後述する乾麺および乾麺の量とそれと対応する水分等とともに、実施例を構成する。
なお、日本蕎麦や中華麺についても、それぞれ対応する味付けの粉末ソースを容易に形成することができる。すなわち、これらの粉末ソースに関しては、従来より粉末状のソースによる味付け手法は、カップ麺(カップ容器に収容された麺を熱湯でもどす調理法による麺食品)において広く採用されており、本発明でも、水分を含有しないこれら粉末ソースを広く利用することができる。
【0031】
次に、容器12について説明する。
容器12は、電子レンジによる加熱に耐える例えば合成樹脂製の容器とされ、本実施形態の場合、ポリプロピレン樹脂発泡シート、あるいはそれと他のシートとを積層し、加熱して金型により押出し成形してなるものである。なお、容器12は、販売に供される状態では、薄いフィルムなどで気密封止されているが、説明の便宜のために該フィルムを除いて、収容物を示している。
【0032】
この容器12は、乾麺20、及び乾麺20を茹でるための液体を収容するものであり、全体として略矩形の箱型とされている。すなわち、図1に示されるように、容器12は、直線状の乾麺を載置するための底部14と、この底部14の周縁から起立して、液体を内側に納めるための枠状の壁部16とを備え、上部は大きな開口18となっている。
容器の壁部16については、図3及び図4に示すように、上方へ向かって徐々に拡開する傾斜面とされるのが好ましく、これにより、乾麺20を茹でる際の液体Rの吹きこぼれを防止できる。
また、図1に示すように、壁部16の開口18側の端面であって、長手方向Xに沿った端面には、外側に延伸したフランジ状の突出部44,44が形成され、この突出部44,44は取っ手として利用されている。
また、壁部16の長手方向(収容した乾麺の長手方向)Xに沿った側面には、縦方向に互いに平行な複数の突起もしくはリブ17が形成されている。このリブ17は好ましくは図1および図2に示すように蛇腹状になっており、外面の最も外側に突出した突出部17a(図4も参照)を指で押した場合であっても、内側への引っ込み過ぎを有効に防止している。特に、この容器12は、後述するように底面が略矩形状であり、収容された折れやすい直線状の乾麺が側面に接触し易い状況下で、運搬・陳列等されるものであるから、この蛇腹状リブの効果は大きい。さらに、この蛇腹状リブ17は、互いに隣接する突出部17a,17a間の寸法W4が、指の腹に対応しており、把持された際に滑り難くなっている。このため、余り力をいれずに容器12を把持することを促し、これにより、収容された乾麺の折れを防止している。
【0033】
ここで、乾麺20は茹でる過程で、表面の澱粉成分が「糊化」(α化)することとあいまって、互いに接した面が癒着してしまう。特に、本実施形態の乾麺20は溝24を有するため、容器内に重ねて収容された乾麺が茹でられる際の状態を示す模式図である図5に示すように、溝24どうしが噛み合って、癒着する恐れが高い。
したがって、容器を以下のような構成にして、このような事態を回避することが好ましい。
【0034】
(容器底部の形状について)
容器12は、その底部14を平面視で略矩形状(本実施形態の場合は略長方形)とすることで、直線状の乾麺20を収容した場合において、各乾麺20の端部同士が重なり難くしている。すなわち、容器12の長手方向に、麺線の長さ方向をそろえて多数本乾麺20を並べる場合、容器の底部が例えば楕円形とされている場合には、容器の幅方向の中央付近では平坦に並べることができても、当該幅方向の両端で長さが縮まることで、乾麺20の端部同士が重なってしまう。そうすると、麺同士がくっついて適切に茹でることができない。ところが、本実施形態の場合、底部14は略矩形状であるため、このような乾麺20の端部同士の重なりが防止され、麺同士の癒着を防止できる。
なお、ここにいう底部14の略矩形状とは厳密な矩形状を意味するものではなく、図1及び図2に示す底部14のように、その四隅が弧状に面取りされた全体として矩形状のものも勿論含まれる。
【0035】
ここで、本実施形態の容器12については、麺同士の癒着を防止するため、さらなる工夫が施してある。
先ず、図1乃至図3に示すように、底部14の周縁部には、その中央領域14aよりも高い位置に乾麺20の両端が載置されるようにした高台部14bが設けられている。この高台部14bは、乾麺20が容器12の長手方向(図2のX方向)に動いた場合であっても、乾麺20の両端が載置されるだけの幅W3を有している。これにより、乾麺20の両端が載置された状態では、図4に示すように、乾麺20と底部14の中央領域14aとの間には所定の距離D1が生じるようになっている。従って、乾麺20を茹でる際、この所定の距離D1に液体Rが介在して、麺同士や麺と容器との癒着を防止することができる。
【0036】
なお、乾麺20がある程度柔らかくなった場合、その麺は底部の中央領域14aに接触するが、その状態では、茹でるための液体Rが活発に対流ないし動いているため、積極的に麺と麺との間に介在して、癒着の恐れは少ない。このため、乾麺20と底部14の中央領域14aとの間の所定の距離D1は、容器12を無意味に大きくしないためにも相当程度でよく、液体Rの対流が始まるまでの時間だけ、乾麺20と中央領域14aとの間に距離が生じ得れば足りる。
【0037】
また、底部14には、図3に示すように、高台部14bと中央領域14aとの間に窪み部14cが形成されている。この窪み部14cは二つの役割を果たす。
一つ目は、乾麺20よりも下側に液体Rを収容するスペースを作り、図3の矢印T1に示すように、乾麺10を茹でる際、液体Rの対流を促す役割を有する。また、この液体Rの対流をより効果的に発揮させるため、窪み部14cは、下側に凸となる湾曲形状とされ、さらに、高台部14bと中央領域14aとの間だけではなく、図1乃至図4に示すように、中央領域14aの周りを一周するように枠状に配置されている。これにより、乾麺同士の癒着を有効に防止している。
【0038】
二つ目は、図3の一点鎖線で囲った拡大図に示されるように、ある程度柔らかくなった麺20−1を窪み部14cに受容し、アンカー効果により動きを規制するためである。これにより、麺が浮き上がって吹き零れることを有効に防止できる。なお、乾麺20が柔らかくなった時間帯は、液体Rが活発に対流しているため、このように麺の動きをある程度規制しても、癒着の恐れは少ない。
【0039】
(容器底部の大きさについて)
底部14の長手方向Xの寸法
底部14については、図1及び図2に示すように、壁部16と複数本の乾麺20とが平行に配置される大きさとすることで、麺同士の全体の癒着を防止している。すなわち、底部14の長手方向Xに沿った寸法X1が、乾麺20と壁部16の長辺側とを平行に配置できない大きさであると、乾麺20は、例えば容器内に斜めに配置するなど、無理やり収容せざるを得ない。そして、この無理やり収容されて動けない状態で部分的又は全体的に乾麺同士が密着していると、麺を茹でる際、その密着した部分あるいは全体が癒着してしまう。このため、底部14は、壁部16と乾麺20とが平行に配置され得る大きさを有するようにした。
底部14の短手方向Yの寸法
底部14は、複数本の乾麺20が並ぶ水平方向の寸法(図2のY方向の寸法)について、電子レンジで加熱する際、複数本の各乾麺同士が液体を介在するように重ねられる大きさとすることで、麺同士の癒着を防止している。すなわち、乾麺20が並ぶ水平方向の寸法Yが小さ過ぎると、乾麺20を容器12の高さ方向Zに沢山重ねなければならず、乾麺20を重ね過ぎると、麺を茹でる際、麺自らの重さで密着して動き難い状態となる。そして、密着して動き難いと、麺を茹でる際、その密着した部分が癒着してしまう。このため、底部14は、乾麺20を容器12の高さ方向Zに重ねて収容しても、複数本の各乾麺同士が液体を介在して茹でられるような大きさとした。
【0040】
(試験)
上述した容器12による影響を別とすると、食品10において、その内容を決めるのは、以下の要素となる。
A 乾麺の量と水分量の関係(重量比)
B 乾麺の種類
次の各要素について、官能試験を実施し、その結果を示す。
試験は、10人のパネラーに対して、1ないし5の数字による評価結果を示してもらい、その平均点で示す。
【0041】
本発明では、α化されていない乾麺のうち、パスタ料理に用いる乾麺を使用する。特に図4、図5で説明した断面ほぼN字麺を用いて、水分量を変化させて調理をしたものである。
なお、調理条件は、容器に当該α化していない乾麺(スパゲティ 日清フーズ社製
「レンジにおまかせ」、1.6mm)を一定量、80グラム入れ、上述した実施
例1および2の粉末ソースを添加して、電子レンジで500W(ワット)にて5分間加熱調理した。
【0042】
(味わいの官能試験)(評価基準)
5:非常に良好
4:良好
3:許容範囲
2:不良
1:非常に不良
【0043】
(食感の官能試験)(評価基準)
5:アルデンテの食感
4:アルデンテではないが良好な食感
3:普通
2:柔らかい、または硬い食感
1:生茹での食感
【0044】
【表3】

【0045】
以上により、水が乾麺に対して重量比で、前記乾麺の190%ないし290%とされていると、茹であがりが適切で所謂「アルデンテ」に相当する状態となり、中心部にわずかに芯があるかないか程度の美味な食感を得ることができることが明らかである。
【実施例3】
【0046】
長さ250mmの乾麺で、断面円形状のもの(スパゲティ 日清フーズ社製「マ・マースパゲティ1.7mm」)を容器12内に80グラム収容して、実施例1の粉末ソースを同封して、これを調理する水の適量としては190ml(ミリリットル)であることから、容器12に乾麺を収容し、粉末ソースを投入して、当該分量の水量を添加した場合の液面に相当する位置に該容器内側面に薄く目印線を入れた。これは、電子レンジ出力500W(ワット)で約8分加熱調子するのに適するものである。
【0047】
【表4】

【0048】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
容器の形状は図示したものに限られない。特に底部の構造を上記実施例と同様にしていれば上記と同等の作用効果がある。
乾麺の断面形状も図4、図5のものに限らず、種々の形態のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・容器付き食品、12・・・容器、14・・・底部、16・・・壁部、20・・・乾麺、14a・・・中央領域、14b・・・高台部、14c・・・窪み部、S・・・粉末ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化されていない乾麺と、
該乾麺を収容した加熱可能な容器と、
該加熱可能な容器に収納され、前記乾麺の量と対応した量の水を入れて電子レンジ加熱することにより、喫食可能とされるための粉末ソースと
を含むことを特徴とする電子レンジ調理用麺食品。
【請求項2】
前記水が、重量比で、前記乾麺の180%ないし360%とされていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用麺食品。
【請求項3】
前記乾麺がパスタ用乾麺であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ調理用麺食品。
【請求項4】
前記乾麺が、麺の断面径が1.8mm以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ調理用麺食品。
【請求項5】
前記乾麺が、麺の長さ方向に延びる溝を有する溝入り乾麺であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ調理用麺食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211974(P2011−211974A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83895(P2010−83895)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】