説明

電子体温計及び表示制御方法

【課題】 電子体温計において、体温を測定する際の利便性を損なうことなく、ユーザにとってより見やすい表示を実現することを目的とする。
【解決手段】 複数のLED252Aが配列された発光部252と、電子体温計100が振られたことを検出する振れ検出部230と、各LED252Aの発光を制御する表示制御部244と、を備え、表示制御部244は、更に、発光ドットパターンを生成する手段と、振れ検出部230による検出結果に基づいて算出された、電子体温計100の所定方向の振れ時間と、前記発光パターンを表現するのに必要なドット列数とに基づいて、LED252Aの1ドット列当たりの発光時間を算出する手段と、を備え、各LED252Aの発光を、前記生成された発光ドットパターンと、前記算出された1ドット列当たりの発光時間とに基づいて制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の体温を測定する電子体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子体温計にはLCD等の表示部が設けられており、測定された被検体の体温等の情報をユーザに表示することができるよう構成されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−24530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、その表示部は、電子体温計の軽量・小型化に伴って、大きさが制約される傾向にあり、ユーザにとっては、必ずしも見やすい表示になっていない。特に、周辺環境が暗い場合にあっては、表示された情報を読み取ることは困難な状況となっている。
【0005】
一方、寸法を大きくしたり、LCDのバックライトを明るくしたりすることで、ユーザにとってより見やすい表示部を実現することは可能であるが、この場合、電子体温計の外形が大きくなったり、消費電力が増大し電池交換が必要になるなど、ユーザにとって利便性が損なわれる結果となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電子体温計において、ユーザの利便性を損なうことなく、より見やすい表示を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る測定装置は以下のような構成を備える。即ち、
被検体の体温を測定する電子体温計であって、
配列された複数の発光素子を備える発光手段と、
前記電子体温計が振られたことを検出する振れ検出手段と、
前記発光手段が備える各発光素子の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記発光制御手段は、
測定された前記被検体の体温に関する情報に基づいて発光ドットパターンを生成する生成手段と、
前記振れ検出手段による検出結果に基づいて算出された、前記電子体温計の所定方向の振れ時間と、前記発光ドットパターンを表現するのに必要な前記所定方向の発光素子のドット列数とに基づいて、前記発光素子の1ドット列当たりの発光時間を算出する算出手段と、を備え、
前記振れ検出手段が前記電子体温計が振られたことを検出した場合に、前記生成された発光ドットパターンと、前記算出された1ドット列当たりの発光時間とに基づいて、前記各発光素子の発光を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子体温計において、ユーザの利便性を損なうことなく、より見やすい表示を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子体温計100の外観構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電子体温計100のシステム構成を示す図である。
【図3】電子体温計100を長手方向と略直交する方向に、電子体温計100の姿勢を維持した状態で往復で振られた場合に、発光部252の発光によってユーザに視認される表示内容の一例を示した図である。
【図4】信号処理部232における信号処理の内容を説明するための図である。
【図5】表示制御部244において生成された発光ドットパターンの一例を示す図である。
【図6】表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。
【図7】表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。
【図8】表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。
【図9】電子体温計100の体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】測定された体温を発光部252において可視化するための、表示制御部244における可視化処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】表示制御部244において生成された発光ドットパターンの一例を示す図である。
【図12】表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。
【図13】表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
1.電子体温計の外観構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子体温計100の外観構成の一例を示す図である。
【0012】
図1において、101は、被検体の体温に関する情報を表示する表示部であり、例えば、LCD等により構成されている。
【0013】
102は発光部であり、LED等の発光素子が電子体温計100の長手方向に一列に配列されている。なお、図1の例では、発光部102としてLEDが7個配列された場合について図示しているが、発光部102に含まれるLEDの数は7個に限られない。また、図1の例では、発光部102としてLEDを1列に配列した場合について図示しているが、LEDの配列数は1列に限られず、複数列であってもよい。
【0014】
103はエンドキャップであり、内蔵された温度計測部(詳細は後述)に対して被検体の体温が伝導しやすいように、ステンレスなどの金属により構成されている。
【0015】
104はON/OFFスイッチであり、体温の測定を開始する際、又は体温の測定を終了した後に押すことで、電子体温計100の電源を制御する。
【0016】
2.電子体温計のシステム構成
次に、電子体温計のシステム構成について図2を参照しながら説明する。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電子体温計100のシステム構成を示す図である。
【0018】
電子体温計100は、電源部210と温度計測部220と振れ検出部230と演算制御部240と、出力部250と、ブザー260とに大別することができる。
【0019】
電源部210は、従来の使い捨て式又は充電式の電池を内蔵しており、電子体温計100の各部に電源を供給する。
【0020】
温度計測部220は、サーミスタ、コンデンサ、測温用CR発振回路等から構成されており、サーミスタにより検出された温度を発信信号として出力する。出力された発信信号はカウンタ245においてカウントされることで、デジタル量として出力される。なお、温度計測部220の構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0021】
演算制御部240は、体温測定に必要なパラメータを格納したEEPROM241、計測した温度を時系列で記憶するためのRAM242、予測式の体温測定プログラム等を格納したROM243、出力部250を制御するための表示制御部244、温度計測部220より出力された発振信号をカウントするカウンタ245、ROM243の体温測定プログラムに従いEEPROM241に格納されたパラメータに従って演算を行う演算処理部246、カウンタ245や表示制御部244を制御する制御回路247等を備える。
【0022】
振れ検出部230は、モーション・センサ231と、信号処理部232とを備える。モーション・センサ231としては、例えば、加速度センサや傾斜センサ等が用いられるものとする。
【0023】
信号処理部232は、モーション・センサ231が検出した電子体温計100の振れを信号として受信し、当該信号に基づいて、発光部252の発光開始のタイミングならびに各発光素子の1ドット列当たりの発光時間を規定するための信号(振れ方向の変更タイミングを示す信号(詳細は後述))を表示制御部244に出力する。
【0024】
出力部250は、従来の表示方法(LCD等)で体温に関する情報を表示する表示部251と、ユーザの目の残像効果を利用して体温に関する情報を可視化する発光部252とを含む。
【0025】
表示部251は、LCD等により構成され、表示制御部244から受信した体温に関する情報を表示する。
【0026】
発光部252は、電子体温計100が往復で振られた(往復運動した)際に、被検体の体温に関する情報をユーザが視認できるように、表示制御部244にて生成された発光ドットパターン、発光時間及び発光開始タイミング/発光完了タイミングに基づいて、各発光素子が発光する(詳細は後述)。つまり、表示制御部244は、表示部251の表示を制御する表示制御機能と、発光部252の各発光素子の発光を制御する発光制御機能とを有している。
【0027】
なお、発光部252の各発光素子が発光している状態で、ユーザが電子体温計100を往復で振ることで、ユーザは、目の残像効果の影響により、被検体の体温に関する情報を空間上において視認することができる。
【0028】
なお、電子体温計100のように発光部102を備える構成の場合、必ずしも表示部251を設ける必要はなく、表示部251は省略しても良い。このように、表示部251を省略することで、電子体温計100では、表示部を配するための幅又は大きさを維持する必要が無くなるため、外形寸法を更に小さくすることが可能となる。
【0029】
ブザー260は、体温測定が終了したことを、鳴動により被検体に知らせる。
【0030】
3.発光部の発光により視認される表示内容
次に、電子体温計100の発光部252の各発光素子の発光により視認される表示内容について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図3は電子体温計100を長手方向と略直交する方向(以下、横方向と称す)に、電子体温計100の姿勢を維持した状態で、電子体温計100を往復で振った場合に、発光部252の各発光素子の発光によってユーザに視認される表示内容の一例を示した図である。
【0032】
発光部252では、電子体温計100が横方向に往復で振られているうちの、所定方向の振れ(ここでは、紙面左側から右側への振れ、以下、右振れと称す)の間、被検体の体温に関する情報に対応する発光ドットパターンと、後述する1ドット列あたりの発光時間とに基づいて、各発光素子を発光させる。これにより、その発光を見たユーザは、目の残像効果の影響により、該被検体の体温に関する情報を視認することができる。
【0033】
なお、図3の例は、電子体温計100を横方向に往復で振ることで、振れ範囲内の空間上に、“38.5℃”という表示が浮かび上がって見える様子を示している。
【0034】
図3に示すように、電子体温計100の発光部252を構成する各LED252Aは、電子体温計100の右振れが完了するまでの間に、それぞれ対応する発光タイミングにおいて発光する。なお、本実施形態では紙面右側から左側への振れ(以下、左振れと称す)の間は、LED252Aは発光しないものとする。
【0035】
このように、それぞれのLED252Aは、対応する発光タイミングにおいて、一瞬(1ドット列当たりの発光時間分)発光するだけであるが、ユーザの目の残像効果の影響により、それぞれの発光タイミングで発光した光が残像として残るため、ユーザには、連続した文字として視認されることとなる。以下、電子体温計100を横方向に往復で振った場合の、信号処理部232及び表示制御部244における処理の詳細について説明する。
【0036】
4.信号処理部における信号処理
まず、発光部252における発光開始/発光完了のタイミングならびに各素子の発光時間を規定するための信号(振れ方向の変更タイミングを示す信号)を出力する信号処理部232における信号処理の内容について説明する。
【0037】
図4は、信号処理部232における信号処理の内容を説明するための図である。図4の(A−1)は、モーション・センサ231が傾斜センサであった場合に、ユーザによって電子体温計100が往復で振られた際のモーション・センサ231の出力を示した図である。また、図4の(A−2)は、モーション・センサ231が加速度センサであった場合に、ユーザによって電子体温計100が往復で振られた際のモーション・センサ231の出力を示した図である。
【0038】
上述したように、電子体温計100では、横方向の往復の振れのうち、右振れの間、発光部252の各発光素子の発光を制御する。これに対応するため、信号処理部232では、左振れしていた電子体温計100の振れ方向が右振れに変更されたタイミング(振れ方向の変更タイミング)を検出する。
【0039】
図4の(A−1)に示すように、本実施形態に係る傾斜センサでは、左振れしていた電子体温計100の振れ方向が、右振れに変更された場合に、これを検出し、ON信号として出力するよう構成されている。
【0040】
このため、信号処理部232では、傾斜センサより出力されたON信号を検出し、これを表示制御部244に出力する(図4の(B)参照)。
【0041】
一方、モーション・センサ231が加速度センサであった場合には、図4の(A−2)に示すように、電子体温計100の往復の振れに応じて、正弦波状の信号が出力される。
【0042】
このため、信号処理部232では、加速度センサより出力された信号を微分処理し、微分処理の結果がゼロになるタイミング(つまり、加速度センサより出力された信号の傾きがゼロになるタイミング)を検出する。
【0043】
ここで、加速度センサより出力された信号の傾きがゼロになるタイミングとしては、左振れしていた電子体温計100の振れ方向が、右振れに変更されたタイミングと、右振れしていた電子体温計100の振れ方向が、左振れに変更されたタイミングの、2種類がある。
【0044】
このうち、信号処理部232では、左振れしていた電子体温計100の振れ方向が、右振れに変更されたタイミングのみを抽出して、表示制御部244に出力する(図4の(B)参照)。
【0045】
なお、本発明は、モーション・センサ231として上述のような傾斜センサや加速度センサが用いられることに限定されるものではなく、例えば角速度センサ(ジャイロスコープ)のように、電子体温計100の振れを検出できる他のセンサが用いられるようにしてもよい。
【0046】
5.表示制御部において生成される発光ドットパターン
次に、表示制御部244において生成される発光ドットパターンについて説明する。図5は、表示制御部244において生成される発光ドットパターンの一例を示す図である。
【0047】
図5に示すように、発光ドットパターンは、発光部252の各発光素子により可視化される仮想的な表示領域における表示であり、配列された発光素子の数と、所定の方向に振られている間の発光素子の発光回数であるドット列数とにより規定される。
【0048】
図5において、黒い丸及び白い丸は、電子体温計100が横方向の振れに伴って移動した場合の、各発光タイミングにおける発光素子の位置を示している。本実施形態では、1文字(ただし、「点」は除く)を表現するのに、横方向5ドット(5つの発光素子)と縦方向7ドット(7つの発光素子)とを用いるものとする。また、横方向の文字と文字の間には、2ドット列数分の発光素子の空白が設けられているものとする。
【0049】
このため、体温に関する情報として、例えば“38.5℃”の5文字(“3”、“8”、“.”、“5”及び“℃”)を可視化するためには、
(1文字あたりの横方向ドット列数(=5ドット))×4文字
+(「点」の横方向ドット列数(=1ドット))×1文字
+(空白列のドット列数(=2ドット))×(5文字+1)
=33ドット列数が必要となる。
【0050】
つまり、電子体温計100の右振れが開始してから完了するまでの間に、発光素子は、33ドット列数からなる発光ドットパターンを出力することとなる。このため、1ドット列数分の発光時間(つまり、各発光素子の1ドット列当たりの発光時間t)は、電子体温計100の右振れが開始してから完了するまでにかかる振れ時間をTとすると、T/33となる。
【0051】
ここで、電子体温計100の右振れが開始してから完了するまでにかかる振れ時間Tは、モーション・センサ231の出力に基づいて信号処理部232が検出した検出結果(振れ方向の変更タイミング)に基づいて算出することができる。
【0052】
具体的には、信号処理部232から出力されたON信号とON信号との間隔の1/2を算出することにより求めることができる。
【0053】
なお、モーション・センサ231が加速度センサの場合には、左方向に振られた電子体温計100の振れ方向が、右方向の振れに変更された振れ方向の変更タイミングと、右方向に振られた電子体温計100の振れ方向が左方向の振れに変更された振れ方向の変更タイミングとの間隔を算出することができるため、これに基づいて求めるように構成してもよい。
【0054】
このように、表示制御部244では、体温に関する情報を可視化するために以下のように動作する。
・発光部252において可視化すべき体温に関する情報を受信し、これを表現するための発光ドットパターンを生成する。
・信号処理部232からの信号の出力間隔に基づいて算出された振れ時間Tと、体温に関する情報を表現するのに必要な横方向の発光素子のドット列数とに基づいて、次回の右振れにおける1ドット列当たりの発光時間tを算出する。
・信号処理部232からの信号(振れ方向の変更タイミング)の出力を発光開始タイミングとして、各発光素子を、生成された発光ドットパターンと、算出された1ドット列数あたりの発光時間tとに基づいて発光させる。
【0055】
6.発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容
次に、発光開始から発光完了までの表示制御部244における発光制御処理の内容について説明する。
【0056】
図6は、表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。図6において、(A)は振れ方向の変更タイミングにおいて発光を開始した状態を示している。また、(B)及び(C)は、振れ時間Tの1/3が経過した状態及び2/3が経過した状態をそれぞれ示している。さらに、(D)は振れ時間Tが経過し、発光を完了した状態を示している。
【0057】
図6に示すように、各発光素子は、発光ドットパターンのうち、発光開始タイミングからの経過時間に対応するドット列に基づく発光を行うように制御される。
【0058】
同様に、図7は、表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。図6との違いは、図7の場合、振れ時間Tが図6の振れ時間Tより小さい点である。
【0059】
なお、振れ時間Tが小さい場合とは、振れ速度が同じで振れ幅が小さい場合と、振れ幅が同じで振れ速度が大きい場合とが考えられるが、どちらの場合も発光制御処理の内容としては同じである。このため、図7では、振れ速度が同じで振れ幅が小さい場合について示している。
【0060】
図7に示すように、振れ時間Tが図6の振れ時間Tより小さい場合、発光時間tは、図6の発光時間よりも短くなり、結果として、表現される文字の大きさ(横方向の大きさ)は、小さくなる。
【0061】
なお、振れ幅が同じで振れ速度が大きい場合には、発光時間tは、図6の発光時間よりも短くなるが、振れ速度が大きい分、短い発光時間の間に移動する距離が大きくなるため、結果として、表現される文字の大きさ(横方向の大きさ)は、図6の場合と同じとなる。
【0062】
同様に、図8は、表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。図6との違いは、図8の場合、振れ時間Tが図6の振れ時間Tより大きい点である。
【0063】
なお、振れ時間Tが大きい場合とは、振れ速度が同じで振れ幅が大きい場合と、振れ幅が同じで振れ速度が小さい場合とが考えられるが、どちらの場合も発光制御処理の内容としては同じである。このため、図8では、振れ速度が同じで振れ幅が小さい場合について示している。
【0064】
図8に示すように、振れ時間Tが図6の振れ時間Tより大きい場合、発光時間tは、図6の発光時間よりも長くなり、結果として、表現される文字の大きさ(横方向の大きさ)は、大きくなる。
【0065】
なお、振れ幅が同じで振れ速度が小さい場合には、発光時間tは、図6の発光時間よりも長くなるが、振れ速度が小さい分、長い発光時間の間に移動できる距離は小さくなるため、結果として、表示される文字の大きさ(横方向の大きさ)は、図6の場合と同じとなる。
【0066】
このように、各発光素子は、信号処理部232からの信号(振れ方向の変更タイミングを示す信号)の出力を発光開始タイミングとして、それぞれのタイミングで発光すべき発光ドットパターンを、算出された1ドット列当たりの発光時間分だけ発光させることで、電子体温計100では右振れが完了するまでの間に、“38.5℃”なる文字を可視化させることができる。つまり、ユーザが振った場合の各振れ時間のばらつきを考慮して文字を可視化させることができる。
【0067】
7.電子体温計の体温測定手順
続いて、図9を用いて電子体温計100における体温測定処理の流れを説明する。図9は電子体温計100の体温測定処理の流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、例えば、特開2007−24530号公報などに開示された予測式の体温測定方法を用いて体温測定を行うものとする。
【0068】
ON/OFFスイッチ104が押下されると、電子体温計100の電源がONとなり、ステップS901に進む。
【0069】
ステップS901では、電子体温計100の初期化が行われ、温度計測部220による温度値の検出が開始される。例えば、0.5秒おきに温度計測部220を用いて温度値が検出される。
【0070】
ステップS902では、例えば、前回実測値(つまり0.5秒前の実測値)からの上昇が所定の値(例えば1度)以上となる温度値を計測した時点を、予測式の基準点(t=0)と設定し、RAM242に特定タイミングと実測値のデータ(時系列データ)として記憶を開始する。つまり、急激な温度上昇を検出することにより、被検体の所定の測定部位に電子体温計100が装着されたとみなす。
【0071】
ステップS903からステップS907までは、周知の予測式の体温測定方法を用いて体温を予測する処理であり、その詳細に関しては、例えば、特開2007−24530号公報などに記載されているため、ここでは簡潔に説明することとする。
【0072】
ステップS903では、測定中に計測温度の低下が観測されたか否かを判断する。所定の温度低下が見られる場合は、ステップS912に進み、所定の温度低下が見られない場合にはステップS904に進む。
【0073】
ステップS912では、計測されたデータの補正処理を行う。補正処理が正常に行われた場合にはステップS902に戻る。一方、補正処理が正常に終了しない場合には、ステップS913に進む。ステップS913では、エラーを告げるブザー260を鳴動し、体温測定処理を終了する。
【0074】
一方、ステップS904では、ステップS902で記憶されたデータを用いて、前述した予測式の体温測定方法を用いて逐次予測値を導出(例えば、0.5秒間隔で導出)する。
【0075】
ステップS905では、基準点(t=0)から所定時間(例えば16秒)だけ経過した後、例えばステップS904で導出した複数の群に対応するそれぞれの予測値の変化に基づいて群分け判定を行う。
【0076】
ステップS906では、ステップS905によって決定された群以外の演算を停止し、判定された群における予測演算を引き続き所定の時間導出する。
【0077】
ステップS907では、基準点(t=0)から所定時間(例えば30秒)だけ経過した時点で、ステップS906における処理の結果導出された一定区間(例えばt=25〜30秒)における予測値があらかじめ設定された予測成立条件を満たすかどうかをチェックする。具体的には、所定の範囲(例えば0.1度)に収まっているか否かをチェックする。
【0078】
ステップS907において予測成立条件を満たしたと判定された場合には、ステップS908に進む。一方、予測成立条件を満たさない場合は、ステップS914に進む。
【0079】
ステップS914では、例えばタイマーなどで計測開始から所定時間(例えば45秒)が経過したか否かを監視し、経過した時は、強制的に予測を成立させ、ステップS908に進む。つまり、その時点で導出されている予測値をそのまま最終予測値と見なす。
【0080】
ステップS908では予測成立を告げるブザー260を鳴らし、ステップS909に進む。ステップS909では、導出された体温の予測値を測定結果として出力部250の表示部251に表示する。
【0081】
ステップS910では、電子体温計100の横方向に往復で振られているかを判定する。横方向に往復で振られていると判定された場合には、ステップS915に進み、横方向に往復で振られていないと判定された場合には、ステップS911に進む。
【0082】
ステップS915では、表示制御部244が、測定された体温の予測値を発光部252において可視化するための可視化処理(可視化処理のフローの詳細は後述)を実行する。
【0083】
ステップS911では、体温測定終了の指示を受け付けたか否かを判定する。体温測定終了の指示は、例えば、電源ON/OFFスイッチ104が押下されたか否かに基づいて判定してもよいし、ステップS909における表示から一定時間経過した場合に体温測定終了の指示があったとみなすようにしてもよい。以上のステップを経て、体温測定処理を終了し、電源をOFFにする。
【0084】
8.可視化処理の流れ
次に、図10を用いて、測定された体温の予測値を発光部252において可視化するための表示制御部244における処理の流れについて説明する。
【0085】
図9のステップS910において、電子体温計100において横方向に往復で振られていると判定されると、図10に示す処理が開始される。
【0086】
ステップS1001では、信号処理部232からの信号の出力間隔に基づいて、電子体温計100の右振れの振れ時間Tを算出する。
【0087】
ステップS1002では、測定された体温の予測値に基づいて、発光部252において可視化すべき体温に関する情報を表現するための発光ドットパターンを生成する。
【0088】
ステップS1003では、ステップS1001において算出された右振れの振れ時間Tと、ステップS1002において生成された発光ドットパターンを表現するのに必要な右振れ方向の発光素子のドット列数とに基づいて、1ドット列当たりの発光時間tを算出する。
【0089】
ステップS1004では、信号処理部232からの信号の出力を受信したタイミングで、生成された発光ドットパターンと、算出された1ドット列当たりの発光時間tとに基づいて、各発光素子の発光の制御を開始する。
【0090】
ステップS1005では、信号処理部232からの信号の出力が継続しているか否かを判定し、継続していると判定された場合には、ステップS1001に戻る。一方、信号処理部232からの信号の出力がないと判定された場合には、可視化処理を終了する。
【0091】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る電子体温計100では、配列された複数の発光素子を備える発光部252と、電子体温計100の振れを検出するモーション・センサ231と、発光部252の発光を制御する表示制御部244とを備える構成とした。
【0092】
そして、電子体温計が横方向に往復で振られている際に、発光素子の発光を適切に制御することで、測定された被検体の体温を、ユーザが空間上において視認できるよう構成した。
【0093】
この結果、電子体温計において、体温を測定する際の利便性を損なうことなく、ユーザにとってより見やすい表示を実現することが可能となった。特に、当該電子体温計によれば、周辺環境が暗い場合においても、ユーザは、容易に視認することが可能となる。
【0094】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、ユーザが振った場合の各振れ時間にはばらつきがあることを考慮して文字を可視化させる構成とした一方で、1回の振れの間(発光開始タイミングから発光完了タイミングまでの間)には、電子体温計100の振れ速度にはばらつきがなく、一定であるものとして構成した。しかしながら、ユーザが振る場合、1回の振れの間において振れ速度にはばらつきが生じ、ユーザが電子体温計100を往復で振った場合、実際には振れ方向の変更タイミング前後において、振れ速度が低下することとなる。
【0095】
そして、この場合、ユーザによって視認される体温に関する情報は、振れ方向の変更タイミング前後(つまり、文字列のうち最初と最後)において、文字が横方向に縮んでしまい、全体として文字がゆがむこととなる。
【0096】
そこで、本実施形態では、振れ速度の変化が小さい時間帯を利用して、体温に関する情報を可視化するための各発光素子の発光を制御するよう構成することで、文字のゆがみを排除することとする。
【0097】
1.表示制御部において生成される発光ドットパターン
図11は、本実施形態において生成される発光ドットパターンの一例を示す図である。
【0098】
図5との違いは、図11の場合、横方向の文字と文字との間に2ドット列数分の発光素子の空白を設けることに加えて、文字列の最初の文字の前に、更に、6ドット列数分の発光素子の空白を設けている点にある。更に、文字列の最後の文字の後ろに、6ドット列数分の発光素子の空白が設けている点にある。
【0099】
このため、体温に関する情報として、例えば“38.5℃”の5文字(“3”、“8”、“.”、“5”及び“℃”)を可視化するために、本実施形態の場合、
(最初の空白列のドット列数(=6ドット)
+(最後の空白列のドット列数(=6ドット))
+(1文字あたりの横方向ドット列数(=5ドット))×4文字
+(「点」の横方向ドット列数(=1ドット))×1文字
+(空白列のドット列数(=2ドット))×(5文字+1)
=45ドット列数が必要となる。
【0100】
つまり、本実施形態の場合、電子体温計100の右振れが開始してから完了するまでの間に、発光素子は、45ドット列数からなる発光ドットパターンを出力することとなる。このため、1ドット列数分の発光時間(つまり、各発光素子の1ドット列当たりの発光時間t)は、電子体温計100の右振れが開始してから完了するまでにかかる振れ時間をTとすると、T/45となる。
【0101】
このように、1回の振れの間におけるユーザの振れ速度のばらつきを考慮して、文字列の最初と最後に空白を設けることにより、振れ方向の変更タイミングの前後において、体温に関する情報を示す文字列が可視化されず、比較的振れ速度が安定している時間帯においてのみ、体温に関する情報を示す文字列が可視化されることとなる。
【0102】
この結果、文字のゆがみを排除することが可能となる。
【0103】
2.発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容
次に、本実施形態における発光開始から発光完了までの表示制御部244における発光制御処理の内容について説明する。
【0104】
図12は、表示制御部244における、発光開始から発光完了までの発光制御処理の内容を説明するための図である。図12において、(A)は振れ方向の変更タイミングにおいて発光を開始した状態を示している。また、(B)及び(C)は、振れ時間Tの1/3が経過した状態及び2/3が経過した状態をそれぞれ示している。さらに、(D)は振れ時間Tが経過し、発光を完了した状態を示している。
【0105】
図12に示すように、各発光素子は、発光ドットパターンのうち、発光開始タイミングからの経過時間に対応するドット列に基づく発光を行うように制御される。そして、本実施形態において用いられる発光ドットパターンには、文字列の最初と最後に空白が含まれているため、振れ方向の変更タイミング直後は、各発光素子は発光せず、空白列数分の時間が経過してから、最初の文字についての発光が開始されることとなる。また、振れ方向の変更タイミング直前も、各発光素子は発光せず、空白列数分前に、最後の文字についての発光が完了することとなる。
【0106】
この結果、振れ方向の変更タイミングの前後における振れ速度の低下の影響を受けることなく、体温に関する情報を可視化させることが可能となる。
【0107】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、振れ速度の変化が小さい時間帯を利用して、体温に関する情報を可視化するための発光を行う構成としたことで、文字のゆがみを排除することが可能となった。
【0108】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態では、文字のゆがみを排除するために、発光ドットパターンの最初と最後に空白列を入れる構成とした。
【0109】
本発明はこれに限定されず、文字のゆがみを排除するにあたり、振れ方向の変更タイミングから最初の文字が可視化されるまでの時間ならびに最後の文字が可視化されてから振れ方向の変更タイミングまでの時間を固定時間または振れ時間Tに基づく所定の時間として設定するように構成してもよい。
【0110】
つまり、振れ方向の変更タイミングから固定時間(Th)または振れ時間Tに基づく所定の時間(Ti)経過してから、発光開始タイミングとなり、発光完了タイミングから固定時間(Th)または振れ時間Tに基づく所定の時間(Ti)経過してから、振れ方向の変更タイミングとなるように制御するように構成してもよい。
【0111】
図13は、本実施形態における発光開始から発光完了までの表示制御部244における発光制御処理の内容を説明するための図である。図13において、(A)は振れ方向の変更タイミングから固定時間Thまたは振れ時間Tに基づく所定の時間Tiが経過してから発光を開始した状態を示している。また、(B)及び(C)は、振れ時間Tの1/3が経過した状態及び2/3が経過した状態をそれぞれ示している。さらに、(D)は振れ時間Tが経過し、発光がすでに完了している状態を示している。
【0112】
なお、本実施形態の場合、各発光素子の発光時間tは、発光ドットパターンのドット列数を33とすると、
t=(T−2×Th)/33 (Thは定数、例えば、Th=50ms)
または、
t=(T−2×Ti)/33 (Ti=α×T、例えば、α=0.25)
となる。
【0113】
以上の説明から明らかにように、本実施形態では、振れ方向の変更タイミング前後に固定時間Thまたは振れ時間Tに基づく所定の時間Tiを設定することで、振れ速度の変化が小さい時間帯を利用して、体温に関する情報を可視化するための発光を行う構成とした。この結果、文字のゆがみを排除することが可能となった。
【0114】
[第4の実施形態]
上記第1の実施形態では、発光素子としてLEDを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、有機EL等、他の発光素子を用いるようにしてもよい。
【0115】
また、上記第1の実施形態では、発光部により可視化された被検体の体温に関する情報として、予測された体温を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、実測された体温を用いるようにしてもよい。また、可視化される情報は、被検体の体温に限定されず、他の情報であってもよいことはいうまでもない。
【0116】
また、上記第1乃至3の実施形態では、各文字を均等に配置するように発光ドットパターンを生成することとしたが、本発明はこれに限定されず、不均等に配置してもよいし、全体として右寄りに(あるいは左寄り)に配置するように構成してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の体温を測定する電子体温計であって、
配列された複数の発光素子を備える発光手段と、
前記電子体温計が振られたことを検出する振れ検出手段と、
前記発光手段が備える各発光素子の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記発光制御手段は、
測定された前記被検体の体温に関する情報に基づいて発光ドットパターンを生成する生成手段と、
前記振れ検出手段による検出結果に基づいて算出された、前記電子体温計の所定方向の振れ時間と、前記発光ドットパターンを表現するのに必要な前記所定方向の発光素子のドット列数とに基づいて、前記発光素子の1ドット列当たりの発光時間を算出する算出手段と、を備え、
前記振れ検出手段が前記電子体温計が振られたことを検出した場合に、前記生成された発光ドットパターンと、前記算出された1ドット列当たりの発光時間とに基づいて、前記各発光素子の発光を制御することを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記振れ検出手段は、
前記電子体温計の長手方向と略直交する方向における往復の振れを検出することを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記振れ検出手段は、傾斜センサを備え、
該傾斜センサは、前記電子体温計の往復の振れにおける、振れ方向の変更タイミングを検出することを特徴とする請求項2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記振れ検出手段は、加速度センサを備え、
該加速度センサより出力された信号に基づいて、前記電子体温計の往復の振れにおける、振れ方向の変更タイミングを検出することを特徴とする請求項2に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記算出手段は、
前記振れ検出手段により検出された前記振れ方向の変更タイミングに基づいて算出された前記電子体温計の所定方向の振れ時間を、前記被検体の体温に関する情報を表現する発光ドットパターンに必要な前記所定方向の発光素子のドット列数で除算することにより、前記発光素子の1ドット列当たりの発光時間を算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電子体温計。
【請求項6】
前記算出手段は、
前記振れ検出手段により検出された前記振れ方向の変更タイミングに基づいて算出された前記電子体温計の所定方向の振れ時間から固定時間減算した時間または前記振れ時間に基づく所定の時間減算した時間を、前記被検体の体温に関する情報を表現する発光ドットパターンに必要な前記所定方向の発光素子のドット列数で除算することにより、前記発光素子の1ドット列当たりの発光時間を算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電子体温計。
【請求項7】
前記発光制御手段は、
前記振れ検出手段により検出された前記振れ方向の変更タイミングに基づいて、前記各発光素子の発光を開始することを特徴とする請求項5に記載の電子体温計。
【請求項8】
前記生成手段は、前記体温に関する情報を示す文字列のうち、最初の文字の前と最後の文字の後に、空白のドット列が配された発光ドットパターンを生成することを特徴とする請求項7に記載の電子体温計。
【請求項9】
前記発光制御手段は、
前記振れ検出手段により検出された前記振れ方向の変更タイミングに対して、前記固定時間または前記振れ時間に基づく所定の時間が経過してから、前記発光素子の発光を開始することを特徴とする請求項6に記載の電子体温計。
【請求項10】
配列された複数の発光素子を備える発光手段と、電子体温計が振られたことを検出する振れ検出手段と、を備え、被検体の体温を測定する電子体温計における表示制御方法であって、
測定された前記被検体の体温に関する情報に基づいて発光ドットパターンを生成する生成工程と、
前記振れ検出手段による検出結果に基づいて算出された、前記電子体温計の所定方向の振れ時間と、前記発光ドットパターンを表現するのに必要な前記所定方向の発光素子のドット列数とに基づいて、前記発光素子の1ドット列当たりの発光時間を算出する算出工程と、
前記振れ検出手段が前記電子体温計が振られたことを検出した場合に、前記生成された発光ドットパターンと、前記算出された1ドット列当たりの発光時間とに基づいて、前記各発光素子の発光を制御する制御工程と
を備えることを特徴とする電子体温計の表示制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の表示制御方法をコンピュータによって実行させるためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−190798(P2010−190798A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37041(P2009−37041)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】