説明

電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジ

【課題】高画質な画像出力を長期間に亘って保持することが可能であり、感光体、帯電ローラ、クリーニングブレード、保護剤塗布用ブレード等の感光体周囲のすべての部材の寿命を大幅に延ばすことができ、各部材及びプロセスカートリッジの交換頻度が少なくて済む電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジの提供。
【解決手段】使用開始前において、表面の少なくとも一部に、少なくとも窒化ホウ素が付着されている電子写真感光体である。更に金属石鹸が付着されている態様の電子写真感光体が好ましく、表面に付着されている窒化ホウ素の付着量が、長手方向1cmにおけるドラム状電子写真感光体の周方向の積算量で、0.002mg/cm〜1mg/cmである態様の電子写真感光体が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等に使用される電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、電子写真感光体(以下、「感光体」、「静電潜像担持体」と称することもある)に対して帯電工程、露光工程、現像工程、及び転写工程を施すことにより画像形成が行われる。帯電工程で生成し、感光体表面に残る放電生成物、及び転写工程後に感光体表面に残る残留トナー又はトナー成分はクリーニング工程を経て除去される。
【0003】
一般に用いられるクリーニング方式として、安価で機構が簡単でクリーニング性に優れたクリーニングブレードが用いられる。しかし、クリーニングブレードは、感光体に押し当て感光体表面の残留物を除去するため、感光体表面とクリーニングブレード間の摩擦によるストレスが大きく、クリーニングブレードの磨耗、特に有機感光体においては、感光体表面層の磨耗が生じて、クリーニングブレード及び有機感光体の寿命を短くする。また、高画質化の要求に対して画像形成に用いられるトナーは、小粒径のものになってきている。小粒径のトナーを用いた画像形成装置では、残留トナーがクリーニングブレードをすり抜けていく割合が多くなり、特に、クリーニングブレードの寸法精度、組み付け精度が十分でなかったり、クリーニングブレードが部分的に震動した場合にトナーのすり抜けは激しくなってしまい高画質の画像形成を妨げるという問題があった。
【0004】
この問題に対して、実際には潤滑剤(保護剤)にブラシを押し当て、回転させることにより潤滑剤を粉上にして感光体に供給し、クリーニングブレードで潤滑剤の皮膜を形成する方法などが採用されている。感光体とクリーニングブレードの間に潤滑剤を介在させることにより、クリーニングブレード及び感光体表面が潤滑剤によって保護されるため、保護剤塗布用ブレードと感光体の摩擦によって生じる感光体磨耗及びブレードの劣化、並びに感光体を帯電するときに生じる放電のエネルギーによる感光体の劣化が低減される。また、潤滑剤の塗布により、感光体表面の潤滑性が上がるため、クリーニングブレードが部分的に震動する現象が低減され、すり抜けトナーの量が減少する。しかし、この潤滑剤の供給は、画像形成の際に回転する感光体に対して潤滑剤の供給が行われるため、予め感光体に潤滑剤を膜状に塗布しておかない限り、画像形成前の感光体は潤滑剤が塗布されておらず、画像形成使用開始前においては感光体とクリーニングブレード間の潤滑性は悪く、ブレード及び感光体劣化の要因となっていた。
【0005】
また近年、画像形成装置は、カラー機が主流になっており、高画質な画像が望まれることから、帯電方式は、帯電ローラを帯電器に用い、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電方式が主流となってきている。また、帯電ローラを用いたAC帯電方式は、小型化のニーズにも応えられ、オゾン、NOx等の酸化性ガスの発生量が少ないことから、そのニーズは高い。しかし、DC帯電方式の場合は、帯電器を通過する間に、1回の正放電のみで感光体を帯電させるが、AC帯電方式を用いた場合は、周波数に応じて、1秒間に数100回〜数1,000回の正負放電を繰り返し、感光体を帯電させることから、感光体が受けるハザードはDC帯電方式と比較して非常に大きく、感光体を保護する機能がより重要となってきている。
このように、保護剤を多量に塗布する必要性、小粒径トナーをクリーニングする必要性から、クリーニングブレードによるクリーニング効果を高めようとする動きが強くなっており、クリーニングブレードの劣化が加速してしまう傾向がある。
【0006】
また、保護剤を多量に塗布しようとブラシを保護剤に押し当てる圧力を高くすると、保護剤が大きな粒子となって感光体に供給されるため、クリーニングブレードをすり抜けやすくなると共に、保護剤が感光体を均一に被覆し難い、という不具合がある。
また、クリーニングブレードをすり抜けたトナーや金属石鹸等の潤滑剤は、帯電ローラに飛散して固着し、帯電不良が起こることから、帯電ローラの汚染防止も課題となっていた。
一方、従来は、感光体のみの寿命を延ばし、帯電ローラやブレードは劣化したら交換する趣向が強かったが、環境への配慮から、帯電ローラ、ブレード、感光体等の各部材全てについて、高寿命化したいというニーズが高まってきているため、各部材の劣化や汚染を防止する技術が求められている。
【0007】
前記保護剤として金属石鹸を用いた場合には、感光体に供給された金属石鹸の粉が、粉の状態でブレードを通過し、帯電ローラに飛散し、固着して、帯電不良が起こるという課題がある。この課題の低減をはかるため、窒化ホウ素(BN)等の無機潤滑剤を金属石鹸に混合することが有効であることが分かってきている。この金属石鹸に無機潤滑剤を混合した混合潤滑剤は、バー状に固めて、従来から使用されてきたステアリン酸亜鉛バーに置き換えて、使用することができる。
【0008】
前記無機潤滑剤を使用した例としては、金属石鹸に代わる感光体の保護剤として、金属石鹸に窒化ホウ素(BN)を配合した保護剤が提案されている(特許文献1参照)。この提案によると、金属石鹸(ステアリン酸亜鉛)に、窒化ホウ素(BN)を配合することにより、帯電ローラへの金属石鹸の粉の飛散やブレードの磨耗を長期間に亘って低減できるとされている。
しかし、窒化ホウ素(BN)は非常に高価であることから、感光体に供給することによる効果が高い代わりに、無機潤滑剤に関するコストがかなり高くなってしまうという課題が生じる。
【0009】
したがって高画質な画像出力を長期間に亘って保持することが可能であり、感光体、帯電ローラ、クリーニングブレード、保護剤塗布用ブレード等の部材の寿命を大幅に延ばすことができ、各部材及びプロセスカートリッジの交換頻度が少なくて済む電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジの速やかな提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−134467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高画質な画像出力を長期間に亘って保持することが可能であり、感光体、帯電ローラ、クリーニングブレード、保護剤塗布用ブレード等の感光体周囲のすべての部材の寿命を大幅に延ばすことができ、各部材及びプロセスカートリッジの交換頻度が少なくて済む電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明者らが、感光体の寿命は勿論、クリーニングブレード、保護剤塗布用ブレード、帯電ローラ、中間転写体等の感光体周囲のすべての部材の長寿命化を図ることを目的として、全ての部材を長寿命化するシステムを実現することについて鋭意検討を行った結果、クリーニングブレードと感光体の間の摩擦力を下げれば、クリーニングブレードと感光体の両方の長寿命化につながると考え、クリーニングブレードと感光体間の摩擦力を下げる方法について更に検討を行った。
【0013】
摩擦力を下げる方法として、金属石鹸を塗布する方法が広く知られている。金属石鹸は、感光体の長寿命化には寄与するが、摩擦力を下げるために、金属石鹸をどんどん塗布していくと、劣化した金属石鹸がクリーニングブレードの劣化を加速させてしまうことから、金属石鹸のみでは、感光体とクリーニングブレードの両方の長寿命化を図れる方法は見つからなかった。
そこで、金属石鹸に代えて、クリーニングブレードと感光体間の摩擦を低減する潤滑剤がないか検討を行った結果、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エチレンアクリル樹脂、フッ素樹脂等の潤滑剤をクリーニングブレードと感光体の間に介する方法では、画像形成を大量に行っていくうちに、クリーニングブレードの微細な振動を抑制する効果は低く、微細な振動が起こることによって、クリーニングブレードは劣化してしまい、クリーニングブレードの劇的な長寿命化には至らなかった。また、クリーニングブレードが微細な振動を起こすと潤滑剤自体がすり抜けてしまったり、トナーがすり抜けてしまうため、これらのすり抜けた物質が帯電ローラに飛散してしまい、帯電不良につながっていた。特に、低湿低温環境下では、帯電不良に伴う、スジ状の異常画像の発生は顕著であり、深刻な問題となっていた。しかし、金属石鹸に窒化ホウ素(BN)を混合した潤滑剤を感光体に塗布して画像形成を大量に行ったところ、クリーニングブレードは劇的に寿命が長くなり、クリーニングブレードからのトナーや潤滑剤のすり抜けも防止されて、帯電ローラ汚染による帯電不良の現象がみられなくなった。
このことから、感光体に金属石鹸と窒化ホウ素(BN)の混合物を供給するシステムでは、感光体、クリーニングブレード、帯電ローラの全ての部材の長寿命化が実現できることが分かってきたが、BNは高価な物質であることから、より安価に、かつ各部材を長寿命化できないか、更に検討を進めた結果、窒化ホウ素(BN)を絶えず供給するとBNの消費量は多くなってしまうが、BNは感光体上にはほとんど固定されておらず、感光体に供給されたBNのほとんどは、トナーと共に現像されたり、廃トナーと共に排出されていた。ただし、一定量のBNはクリーニングブレード上に付着しており、その付着したBNは、クリーニングブレードからほとんど離れず、クリーニングブレードと感光体の間にあることでクリーニングブレードの振動が抑制され、トナー等のすり抜けが防止できることを知見した。
【0014】
そして、本発明者らは、使用前の感光体に窒化ホウ素(BN)の粉を予め塗布してから、画像形成を開始したところ、感光体に予め塗布しておいたBNの粉は、感光体が回転した際、感光体とクリーニングブレードの間に移動し、長期間に亘って感光体とクリーニングブレードの間に保持され、感光体、クリーニングブレード、帯電ローラの各部材の長寿命化に寄与することを知見した。また、使用前の感光体にBNの粉を予め付着させておいた場合も、BNの粉を絶えず供給した場合と同様、BNは感光体上にはほとんど固定されていなかった。このことから、BNは画像形成前に感光体に塗っておけばよく、絶えず供給する必要がないことを知見した。
【0015】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 使用開始前において、表面の少なくとも一部に、少なくとも窒化ホウ素が付着されていることを特徴とする電子写真感光体である。
<2> 更に金属石鹸が付着されている前記<1>に記載の電子写真感光体である。
<3> 表面に付着されている窒化ホウ素の付着量が、長手方向1cmにおけるドラム状電子写真感光体の周方向の積算量で、0.002mg/cm〜1mg/cmである前記<1>から<2>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<4> 金属石鹸及び窒化ホウ素の合計付着量に対する窒化ホウ素の付着量の質量割合が、10質量%以上である前記<2>に記載の電子写真感光体である。
<5> 金属石鹸が、パルミチン酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との混合物である前記<2>に記載の電子写真感光体である。
<6> 最表面層が、フィラーを含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<7> 電子写真感光体と、電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<6>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
<8> 電子写真感光体表面に保護剤を付与して保護層を形成する保護層形成手段を有する前記<7>に記載の画像形成装置である。
<9> 保護剤が、少なくとも金属石鹸及び窒化ホウ素を含有し、前記窒化ホウ素の含有量が、金属石鹸及び窒化ホウ素の合計含有量に対し30質量%以下である前記<8>に記載の画像形成装置である。
<10> 金属石鹸が、パルミチン酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との混合物である前記<9>に記載の画像形成装置である。
<11> 保護剤が、更にアルミナを含有する前記<9>から<10>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<12> 保護剤が、保護剤バーの形態で用いられる前記<9>から<11>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<13> 保護剤バーが、保護剤粉末を圧縮成形して得られる前記<12>に記載の画像形成装置である。
<14> 保護層形成手段が、保護剤塗布用ブレードを有する前記<8>から<13>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<15> 保護剤塗布用ブレードが、カウンター方式で電子写真感光体表面に当接している前記<14>に記載の画像形成装置である。
<16> 保護剤塗布用ブレードが、電子写真感光体表面に鈍角で当接する前記<14>から<15>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<17> 帯電手段による電子写真感光体への帯電方式が接触乃至近接方式であって、該帯電手段が、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電を行う前記<7>から<16>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<18> 電子写真感光体表面を帯電する帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が前記<1>から<6>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法である。
<19> 帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び保護層形成手段から選択される少なくとも1つの手段と電子写真感光体とを有し、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体が前記<1>から<6>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、高画質な画像出力を長期間に亘って保持することが可能であり、感光体、帯電ローラ、クリーニングブレード、保護剤塗布用ブレード等の感光体周囲のすべての部材の寿命を大幅に延ばすことができ、各部材及びプロセスカートリッジの交換頻度が少なくて済む電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、保護層形成手段を備えた本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の画像形成装置の画像形成部に具備される、保護層形成手段を有するプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図3】図3は、保護層形成手段を有する本発明の画像形成装置の別の一例を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、電子写真感光体と当接する側の保護剤塗布用ブレードの先端が、直角(90度)の場合を示す模式図である。
【図4B】図4Bは、電子写真感光体と当接する側の保護剤塗布用ブレードの先端が、鈍角の場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(電子写真感光体)
本発明においては、使用開始前の電子写真感光体の表面の少なくとも一部に、少なくとも窒化ホウ素が付着されていることを特徴とする。
【0019】
ここで、前記使用開始前とは、電子写真感光体が画像形成(使用)前であることを意味する。基本的には、工場から出荷後の画像形成装置又はプロセスカートリッジで、画像形成を全くしていない状態で、前記電子写真感光体の表面の少なくとも一部に、少なくとも窒化ホウ素(BN)が付着されていればよい。また、例えば、サービスマン或いはユーザーが画像形成装置の保守・清掃の際に感光体の交換を行ったり、清掃を行った場合も含む概念である。
また、前記付着とは、前記電子写真感光体の表面上にBNの粉が接している状態をいうが、金属石鹸の中にBNの粉が埋没している状態も含まれる。
前記窒化ホウ素(BN)は、電子写真感光体とクリーニングブレードとの潤滑性を向上させ、クリーニングブレードの微細な振動を抑制することにより、クリーニングブレードの姿勢を安定させ、金属石鹸の粉やトナーがクリーニングブレードを通過して、帯電ローラに付着し、スジ状の異常画像の発生を抑制している。また、クリーニングブレードの振動が抑制されることにより、クリーニングブレードの磨耗が抑制される。そのため、窒化ホウ素(BN)は、電子写真感光体とクリーニングブレードが接する箇所にのみ存在してれば充分である。
【0020】
本発明の使用開始前の電子写真感光体においては、表面の少なくとも一部に、少なくとも金属石鹸及び窒化ホウ素(BN)が付着されていることが好ましい。
画像形成の極使用開始前においては、感光体にトナー等が介在していないため、特にブレードと感光体の摩擦力は高くなりがちだが、窒化ホウ素(BN)に加えて、金属石鹸も感光体に付着させておくことにより、極使用開始前における、感光体とクリーニングブレード間の潤滑性が窒化ホウ素(BN)のみを付着している場合より上がるため好ましい。ただし、経時では、金属石鹸は、ブレードから離れてしまうため、クリーニングブレードから離れない窒化ホウ素(BN)が潤滑性に効果を示す。また、経時においては、感光体上のトナーがクリーニングブレードと感光体の潤滑性を上げるのに寄与するため、金属石鹸が離れても潤滑性を高く保持することが可能である。
また、窒化ホウ素(BN)に混合する物質は、金属石鹸以外の潤滑性のある物質でもよく、窒化ホウ素(BN)とトナーの混合物でもよい。感光体に付着させる潤滑性のある物質は一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
次に、感光体への窒化ホウ素(BN)、又はBNと金属石鹸の混合物の塗布(付着)方法の一例を示す。
前記感光体へのBN、又はBNと金属石鹸の混合物の塗布は、BN、又はBNと金属石鹸の混合物を目の細かい布又はガーゼに包み、その布を感光体に叩くことで、感光体にBN、又はBNと金属石鹸の混合物を付着させてもよいし、実際の画像形成装置に感光体を組み込み、画像出力や帯電を行わない状態で、保護層形成手段のみ作動させ、保護剤バー、保護剤塗布ブラシ、ブレードを用いて行ってもよいし、また、ブラシ(ハケ)やスポンジ(化粧用パフ)にBN又は金属石鹸の混合物を付着させ、感光体に塗り付けてもよい。なお、保護層形成手段については、後述する。
【0022】
前記塗布(付着)の状態としては、感光体の劣化抑制の点で、ムラ(バラツキ)がないことが好ましい。例えば、前記感光体の形状がドラム状である場合には、前述のように、ドラム状電子写真感光体上に付着した窒化ホウ素はドラム状電子写真感光体の回転により、クリーニングブレード上に保持されるため、該感光体の周方向についてのBNの積算量が、長手方向について、ムラがないことが好ましい。
前記ドラム状電子写真感光体の長手方向におけるBNの付着量のムラは、下記数式のように、バラツキ量として表され、同一感光体中で、任意の長手方向位置におけるBN付着量をそれぞれ算出し、長手方向位置それぞれのBNの付着量の平均値を算出し、長手方向位置それぞれの実測値から平均値を差し引いて絶対値をとり、更に平均値で割ることで、平均値とどの程度異なるかを算出することができる。
〔数1〕
バラツキ量(%)=(|実測値−平均値|)/平均値×100
前記長手方向におけるBNの付着量のバラツキ量としては、30%以下が好ましい。長手方向におけるBNの付着量のバラツキ量が30%を超えると、長期に画像出力を行なった際にBNの付着量が多い部分と少ない部分で感光体の劣化状態が異なってしまうため、出力画像に影響を及ぼすことがある。
ドラム状電子写真感光体の周方向についてのBNの積算量が、長手方向について、ムラなく塗布する方法としては、水にBN、又はBNと金属石鹸の混合物を分散させた溶液に、感光体を浸漬させた後、引き上げる方法がある。感光体を浸漬させた後は、感光体の乾燥を行なう。簡易的には、BN、又はBNと金属石鹸の混合物を目の細かい布又はガーゼに包み、その布を感光体に一定の力で叩くことで、感光体にBN、又はBNと金属石鹸の混合物をほぼムラなく塗布することができる。
【0023】
感光体に付着させる窒化ホウ素(BN)は、一次粒子又は二次粒子のサイズが10μm以下であることが好ましく、2μm〜8μmであることがより好ましい。
また、感光体に付着させる金属石鹸の粒径は、0.1μm〜数μmであることが好ましい。
【0024】
使用開始前の電子写真感光体の表面に予め付着されている窒化ホウ素(BN)の付着量は、0.002mg/cm〜1mg/cmであることが好ましく、0.003mg/cm〜0.3mg/cmであることがより好ましい。前述のように、ドラム状電子写真感光体上に付着した窒化ホウ素(BN)はドラム状電子写真感光体の回転により、クリーニングブレード上に保持されるため、ドラム状電子写真感光体上の窒化ホウ素(BN)の付着量は、ドラム状電子写真感光体の周方向についての積算量で規定されていればよく、上記の値は、長手方向1cmにおけるドラム状電子写真感光体の周方向のBNの積算量を示している。
前記付着量が、1mg/cmを超えると、画像ボケを引き起こしやすくなることがあり、また、BNは高価なため、より少ない付着量で効果を得ることが好ましい。一方、前記付着量が、0.002mg/cm未満であると、BNが充分な効果を発揮しないことがある。
【0025】
前記感光体の表面に付着させた窒化ホウ素(BN)の付着量は、厳密には、ICP発光分光分析によって、評価を行う。ICP発光分光分析を行う手順としては、まず、感光体から感光層を長手方向に1〜5cm、周方向に一周分になるように短冊状に剥離し、剥離した短冊状の感光層と硫酸、硝酸を容器に入れ密栓し、マイクロ波を照射して加熱分解後、超純水で定容して検液とし、ICP発光分光分析装置により検液中のホウ素(B)の定量を行う。BNの付着量は、ホウ素(B)の定量結果より換算し、感光体上のBN付着量とする。BNの付着量(総重量)が算出されたら、総重量を長手方向の長さ(感光層を剥離した際の短冊の大きさに応じて)で割って算出された値から、単位長さ辺りのBNの付着量(mg/cm)を求める。
また、感光体上のBNの付着量は、簡易的には、精密天秤によって、重量測定を行う。精密天秤によって、重量測定を行う手順としては、例えば、感光体上のBN単独またはBNと金属石鹸の混合物をマイクロワイプで感光体から拭き取る。拭き取り後、該マイクロワイプの感光体を拭く前後の重量差から、BNの付着量を算出する。BNと金属石鹸の混合物の場合は、その混合比を基にBNの付着量を算出する。算出した、BNの総重量を長手方向の長さで割った値から、単位長さ辺りのBNの付着量(mg/cm)を求める。感光体をマイクロワイプで拭き取る範囲は、感光体にブレードが当たる範囲の内側とする。ブレードの当たらない、ブレードから外側の部分に付着したBNの付着量は算出しない。
なお、感光体を拭き取る際、長手方向の任意の範囲を拭き取ってもよい。その場合は、周方向の拭き取る範囲は一周分とし、長手方向の任意の範囲の長さで割った値から、単位長さ辺りのBNの付着量(mg/cm)を求める。
【0026】
使用開始前の電子写真感光体の表面に予め付着されている窒化ホウ素の付着量は、金属石鹸及び窒化ホウ素の合計付着量に対し10質量%以上であることが好ましく、30質量%〜90質量%がより好ましく、50質量%〜80質量%が更に好ましい。
前記窒化ホウ素(BN)の含有量が、10質量%未満であると、窒化ホウ素(BN)がクリーニングブレードと感光体間の潤滑性を上げる効果を充分に保てないことがある。
ここで、前記窒化ホウ素の含有量は、例えば、ICP発光分光分析、FT−IR分析などにより測定することができる。
【0027】
本発明の画像形成装置に用いる感光体は、支持体と、該支持体上に少なくとも感光層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0028】
前記感光層としては、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料を混在させた単層型、電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、又は電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、前記感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層上に最表面層を設けることもできる。また、前記感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また、各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0029】
−支持体−
前記支持体としては、体積抵抗1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
【0030】
ドラム状の支持体としては、直径が20mm〜150mmが好ましく、24mm〜100mmがより好ましく、28mm〜70mmが更に好ましい。前記ドラム状の支持体の直径が、20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置が大きくなってしまうことがある。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は、70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
また、特開昭52−36016号公報に開示されているようなエンドレスニッケルベルト、又はエンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0031】
前記感光体の下引き層は、一層であっても、複数の層で構成してもよく、例えば、(1)樹脂を主成分としたもの、(2)白色顔料と樹脂を主成分としたもの、(3)導電性基体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも、導電性支持体からの電荷の注入防止性が優れる点で、酸化チタンが特に好ましい。
【0032】
前記樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜10μmが好ましく、1μm〜5μmがより好ましい。
【0034】
前記感光層における電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記感光層における電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記感光層を形成するために使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。該結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類などが挙げられる。
【0038】
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
【0039】
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0040】
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0041】
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0042】
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
【0043】
これらの化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0044】
前記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
【0045】
また、前記感光層中にはレベリング剤を添加しても構わない。該レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーなどが使用される。
前記レベリング剤の使用量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましい。
【0046】
前記感光体の最表面層は、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のために設けられる。
前記最表面層は、感光層よりも機械的強度の高い樹脂と、フィラーとを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0047】
前記最表面層に用いる樹脂としては、画像形成時の書き込み光に対して透明であり、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが好ましく、例えば、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの高分子は熱可塑性樹脂であってもよいが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることで、最表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
【0048】
前記最表面層中に、フィラー(微粒子)が分散されている場合には、クリーニングブレードが劣化しやすいため、BNを予め感光体に付着させておく効果が高い。また、感光体に金属石鹸等の保護剤を付着させる場合、最表面層中にフィラーがあると、感光体表面の凹凸のため、均一な金属石鹸等の保護層の膜を形成しにくいが、BNが極使用開始前からクリーニングブレード上にあることで、ブレードの振動を防ぎ、ブレードの姿勢が安定するので、フィラーがあっても、終始に渡り均一な膜を形成しやすい。
【0049】
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、又は金属酸化物の微粒子などが挙げられる。前記金属酸化物としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO2、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモンなどが挙げられる。その他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂にフィラーを分散させたものなどを添加することができる。これらの中でも、アルミナが特に好ましい。
前記フィラーの最表面層における含有量としては、5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。前記フィラー含有量が、50質量%を超えると、残留電位の上昇、最表面層の書き込み光透過率の低下が起こりやすいことがあり、5質量%未満であると、充分な耐摩耗性向上が得られないことがある。
【0050】
前記最表面層は、電荷輸送能力を有していることが好ましい。前記最表面層に電荷輸送能力を持たせるためには、最表面層に用いる樹脂と前述の電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する樹脂を最表面層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができる点で好ましい。
【0051】
前記感光層と最表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により最表面層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、最表面層を設ける場合には、最表面層は十分な厚みとすることが重要であり、0.1μm〜12μmが好ましく、1μm〜10μmがより好ましく、2μm〜8μmが更に好ましい。前記厚みが、0.1μm未満であると、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうことがあり、12μmを超えると、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する樹脂を用いる場合には、電荷輸送能力を有する樹脂のコストが高くなってしまうことがある。
【0052】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、前記電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、クリーニング手段とを少なくとも有してなり、保護層形成手段、定着手段、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
本発明の画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程と、クリーニング工程とを少なくとも含み、保護層形成工程、定着工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。なお、帯電工程と、露光工程とを合わせて静電潜像形成工程と称することもある。
【0053】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記露光工程は前記露光手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記クリーニング工程は前記クリーニング手段により行うことができ、前記保護層形成工程は前記保護層形成手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0054】
<帯電工程及び帯電手段>
前記帯電工程は、電子写真感光体表面を帯電し、帯電手段により行うことができる。
本発明においては、電子写真感光体の帯電方式は、接触方式又は近接方式であって帯電手段は、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電を行うことが好ましい。DC帯電方式の場合は、帯電器を通過する間に、1回の正放電のみで感光体を帯電させるが、AC帯電方式を用いた場合は、周波数に応じて、1秒間に数100回〜数1,000回の正負放電を繰り返し、感光体を帯電させることから、感光体が受けるハザードはDC帯電方式と比較して非常に大きく、特に劣化が激しいため、ブレードと感光体間にBNを介在させて、感光体の劣化を防止する効果がDC帯電の場合と比較してより高い。
【0055】
前記帯電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器などが挙げられる。
【0056】
<露光工程及び露光手段>
前記露光工程は、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する工程であり、露光手段により行うことができる。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0057】
<現像工程及び現像手段>
前記現像工程は、前記静電潜像を、トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
【0058】
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0059】
−トナー−
前記トナーは、下記数式で表される円形度SRの平均値である平均円形度が0.93〜1.00のものが好ましく、0.95〜0.99がより好ましい。前記平均円形度は、トナーの凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
〔数2〕
円形度SR=(トナーの投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(トナーの投影像の周囲長)
前記平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナーの表面は滑らかであり、トナー同士、トナーと感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。また、トナーに角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。また、ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナーがいないため、転写で記録媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。また、トナーが角張っていないことから、トナーそのものの研磨力が小さく、感光体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
【0060】
前記円形度SRは、フロー式粒子像分析装置(東亜医用電子株式会社製、FPIA−1000)を用いて測定することができる。
【0061】
まず、容器中の予め不純固形物を除去した水100ml〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩)を0.1ml〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1g〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、分散液濃度を3,000個/μl〜10,000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
【0062】
前記トナーの質量平均粒径(D4)は、3μm〜10μmが好ましく、4μm〜8μmがより好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナーを有していることから、ドット再現性に優れる。前記質量平均粒径(D4)が、3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすいことがあり、10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しいことがある。
【0063】
また、前記トナーの質量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比(D4/D1)は、1.00〜1.40が好ましく、1.00〜1.30がより好ましい。前記比(D4/D1)が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味し、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。また、トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。また、トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密にかつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
【0064】
ここで、前記トナーの質量平均粒径(D4)、及び粒度分布の測定は、例えば、コールターカウンター法による。該コールターカウンター法によるトナーの粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。
【0065】
まず、電解水溶液100ml〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの質量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0066】
このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステル系プレポリマー、ポリエステル樹脂、着色剤、及び離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させることにより作製することができる。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
【0067】
前記窒素原子を含む官能基を有するポリエステル系プレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長又は架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
【0068】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルを更にポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。前記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
【0069】
前記ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)、3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独又は(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。
【0070】
前記ジオール(1−1)としては、例えば、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、これと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用が特に好ましい。
【0071】
前記3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0072】
前記ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)及び3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、これらの中でも、(2−1)単独、及び(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。
【0073】
前記ジカルボン酸(2−1)としては、例えば、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が特に好ましい。
【0074】
前記3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0075】
前記ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]は、2/1〜1/1が好ましく、1.5/1〜1/1がより好ましく、1.3/1〜1.02/1が更に好ましい。
【0076】
前記ポリイソシアネート(3)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
前記ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]は、5/1〜1/1が好ましく、4/1〜1.2/1がより好ましく、2.5/1〜1.5/1が更に好ましい。前記[NCO]/[OH]が5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、[NCO]のモル比が1未満であると、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0078】
前記末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が更に好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化すると共に、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0079】
前記イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、平均1個以上が好ましく、平均1.5〜3個がより好ましく、平均1.8〜2.5個が更に好ましい。1分子当たり1個未満であると、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0080】
前記アミン類(B)としては、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'ジアミノジフェニルメタン等);脂環式ジアミン(4,4'−ジアミノ−3,3'ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
【0081】
前記トナーの作製においては、更に、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0082】
前記アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]は、1/2〜2/1が好ましく、1.5/1〜1/1.5がより好ましく、1.2/1〜1/1.2が更に好ましい。前記[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満であると、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0083】
本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が更に好ましい。前記ウレア結合のモル比が10%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0084】
これらの反応により、前記トナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作製できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の質量平均分子量は、1万以上が好ましく、2万〜1,000万がより好ましく、3万〜100万が更に好ましい。前記質量平均分子量が1万未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0085】
また、ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記質量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、20,000以下が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が更に好ましい。前記数平均分子量が20,000を超えると、低温定着性及びフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が悪化することがある。
【0086】
本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。前記(ii)を併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上するので、単独使用より好ましい。前記(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。前記(i)と前記(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。
【0087】
従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の質量比は、5/95〜80/20が好ましく、5/95〜30/70がより好ましく、5/95〜25/75が更に好ましく、7/93〜20/80が特に好ましい。前記(i)の質量比が、5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。
【0088】
前記(ii)のピーク分子量は、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が更に好ましい。前記ピーク分子量が1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、10,000を超えると低温定着性が悪化することがある。前記(ii)の水酸基価は5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g〜120mgKOH/gがより好ましく、20mgKOH/g〜80mgKOH/gが更に好ましい。前記水酸基価が、5mgKOH/g未満であると、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。前記(ii)の酸価は1mgKOH/g〜30mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g〜20mgKOH/gがより好ましい。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0089】
前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃〜70℃が好ましく、55℃〜65℃がより好ましい。前記ガラス転移温度が、50℃未満であると、トナーの高温保管時のブロッキングが悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明に用いるトナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0090】
前記結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10,000dyne/cmとなる温度(TG')が、100℃以上が好ましく、110℃〜200℃がより好ましい。前記温度(TG')が100℃未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0091】
前記結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1,000ポイズとなる温度(Tη)が、180℃以下が好ましく、90℃〜160℃がより好ましい。前記温度(Tη)が、180℃を超えると、低温定着性が悪化する。即ち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG'はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG'とTηの差(TG'−Tη)は0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。なお、差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0℃〜100℃が好ましく、10℃〜90℃がより好ましく、20〜80℃が更に好ましい。
【0092】
前記結着樹脂は、以下の方法などで製造することができる。
まず、前記ポリオール(1)と、前記ポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイド等のエステル化触媒の存在下、150℃〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで、40℃〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。更に(A)にアミン類(B)を0℃〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。
【0093】
使用可能な溶剤としては、例えば、芳香族溶剤(トルエン、キシレン等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エステル類(酢酸エチル等);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。
【0094】
なお、ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0095】
また、本発明に用いるトナーは、以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
【0096】
前記トナーは、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成してもよいし、予め製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いてもよい。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
【0097】
前記プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下、トナー原料と称することもある)、着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、予めトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、及び帯電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0098】
前記水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、などが挙げられる。
【0099】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、50質量部〜2,000質量部が好ましく、100質量部〜1,000質量部がより好ましい。前記使用量が50質量部未満であると、トナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナーが得られないことがあり、2,000質量部を超えると、経済的でない。
【0100】
また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0101】
前記分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2μm〜20μmにするためには高速せん断式分散機が好ましい。
前記高速せん断式分散機を使用した場合、その回転数については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1,000rpm〜30,000rpmが好ましく、5,000rpm〜20,000rpmがより好ましい。前記分散時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、バッチ方式の場合は、0.1分間〜5分間が好ましい。分散時の温度としては、0℃〜150℃が好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。高温である方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0102】
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させてもよいし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしてもよい。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
【0103】
前記反応においては、必要に応じて、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0104】
前記界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0105】
前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。該フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。該フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子株式会社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M株式会社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業株式会社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0106】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。前記アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどが挙げられる。前記四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。該陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。該カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0107】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などが挙げられる。
【0108】
前記両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどが挙げられる。
【0109】
前記難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。
【0110】
前記高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類などが挙げられる。
【0111】
前記酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。前記水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。前記ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどが挙げられる。前記ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどが挙げられる。前記アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。前記クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどが挙げられる。前記窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどが挙げられる。前記ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどが挙げられる。前記セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
【0112】
前記分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。該分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なものなどが挙げられる。
【0113】
前記分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
前記分散液の調製においては、前記伸長反応乃至前記架橋反応の触媒を用いることができる。前記触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0114】
更に、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いた方が粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。
【0115】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。
【0116】
前記プレポリマー(A)100質量部に対する溶剤の使用量は、300質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、25質量部〜70質量部が更に好ましい。溶剤を使用した場合は、伸長及び/又は架橋反応後、常圧又は減圧下にて加温し除去する。
【0117】
伸長及び/又は架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。反応温度は0℃〜150℃が好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。更に必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0118】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。また、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発させて除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分に目的とする品質が得られる。
【0119】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
【0120】
分級操作は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよいが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、又は粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際、不要の微粒子又は粗粒子はウェットの状態でも構わない。
【0121】
用いた分散剤は、得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0122】
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
【0123】
具体的手段としては、(1)高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、(2)高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0124】
また、該トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。更に必要に応じて、トナー自身に磁気特性を持たせるには、例えば、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類;鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独又は混合して、トナーへ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用することもできる。
【0125】
また、本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均粒径は、0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。前記個数平均粒径が0.5μmを超えると、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。一方、前記個数平均粒径が0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、前記個数平均粒径が0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、前記個数平均粒径が0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。更に、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こすことがある。前記個数平均粒径が0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下が好ましく、5個数%以下がより好ましい。
【0126】
また、前記着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、使用開始前的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー中における着色剤分散がより効果的に行われ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得ることができる。
【0127】
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
前記の結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
【0129】
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤、水が、着色剤の分散性の面から好ましい。これらの中でも、水の使用は、環境への配慮、及び後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から特に好ましい。
【0130】
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層よくなる。
【0131】
前記トナー中には、前記結着樹脂及び前記着色剤とともに離型剤を含有することが好ましい。
前記離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックス等);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが特に好ましい。
【0132】
前記カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミド等);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミド等);ジアルキルケトン(ジステアリルケトン等)などが挙げられる。これらの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。
【0133】
前記離型剤の融点は、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましく、60℃〜90℃が更に好ましい。前記融点が、40℃未満であると、耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすくなることがある。
【0134】
前記離型剤の溶融粘度は、融点より20℃高い温度で、5cps〜1,000cpsが好ましく、10cps〜100cpsがより好ましい。前記溶融粘度が、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が乏しくなることがある。
【0135】
前記離型剤の前記トナー中における含有量は、40質量%以下が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。
【0136】
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有させてもよい。前記帯電制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色又は白色に近い材料が好ましい。
【0137】
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
【0138】
前記帯電制御剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業株式会社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業株式会社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(いずれも、日本カ一リット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0139】
前記帯電制御剤の添加量は、バインダー樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法などによって異なり、一義的に規定できるものではないが、前記バインダー樹脂100質量部に対して0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記添加量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、有機溶剤に直接溶解し、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー作製後、固定化させてもよい。
【0140】
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
前記樹脂微粒子は、水性分散体を形成し得る樹脂であればいかなる樹脂も使用することができ、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点で、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、又はそれらの併用が好ましい。
【0141】
前記ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合又は共重合したポリマーが用いられ、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0142】
また、トナーの流動性、現像性、及び帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子が好適である。
【0143】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
【0144】
前記無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、前記無機微粒子のBET法による比表面積は20m/g〜500m/gが好ましい。前記無機微粒子の前記トナーにおける添加量は、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
【0145】
その他の高分子系微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合又は分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0146】
また、トナーには流動化剤を添加することもできる。該流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。前記流動化剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0147】
また、感光体乃至中間転写体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の金属石鹸;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合などによって製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好ましい。
【0148】
このようなトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。
【0149】
また、本発明の画像形成装置は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成の重合法トナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、この場合にも、装置寿命を大幅に延ばすことができる。このような粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
【0150】
前記粉砕法トナーに使用される結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体又はその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が、電気特性、コスト面等の点で好ましく、更には、良好な定着特性を有する点で、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が特に好ましい。
【0151】
前記粉砕法トナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作製すればよく、また、必要に応じて前記外添成分を、適宜添加し混合すればよい。
【0152】
前記現像手段は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0153】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0154】
前記現像器に収容させる現像剤は、前記トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0155】
<転写工程及び転写手段>
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
【0156】
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0157】
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0158】
前記感光体は、感光体上に形成されたトナー像を一次転写して色重ねを行い、更に記録媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する、中間転写体であってもよい。
【0159】
−中間転写体−
前記中間転写体としては、体積抵抗10Ω・cm〜1011Ω・cmの導電性を示すものが好ましい。前記体積抵抗が、10Ω・cmを下回る場合には、感光体から中間転写体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、1011Ω・cmを上回る場合には、中間転写体から紙等の記録媒体へトナー像を転写した後に、中間転写体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。また、前記中間転写体の表面抵抗は10Ω/sq〜1013Ω/sqを示すものが好ましい。表面抵抗が10Ω/sqを下回る場合には、トナー像が乱れる、転写チリが生じる等の不具合が起こることがあり、1013Ω/sqを上回る場合には、一次転写がしにくくなることがある。
【0160】
前記中間転写体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独又は併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成形したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成形を行い、無端ベルト上の中間転写体を得ることもできる。
【0161】
前記中間転写体に表面層を設ける際には、上述の感光体の表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
【0162】
前記中間転写体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独又は併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成形したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成形を行い、無端ベルト上の中間転写体を得ることもできる。
【0163】
前記中間転写体に表面層を設ける際には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
【0164】
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0165】
<保護層形成工程及び保護層形成手段>
前記保護層形成工程は、前記電子写真感光体表面に保護剤を付与して保護層を形成する工程であり、保護層形成手段により実施される。
電子写真感光体表面に保護剤を付与して保護層を形成する保護層形成手段を有していると、電子写真感光体とクリーニングブレードの間に保持された窒化ホウ素(BN)の効果に加え、感光体に保護剤として、金属石鹸を供給することにより、感光体をAC帯電から保護する効果を得られるため、金属石鹸を感光体に供給することは非常に好ましい。また、クリーニングブレードと感光体間にはBNが保持されていることから、クリーニングブレードの姿勢が保たれるため、金属石鹸がクリーニングブレードをすり抜けることが防止されるため、帯電ローラ汚れの心配もない。
【0166】
前記保護剤は、少なくとも金属石鹸及び窒化ホウ素(BN)を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。前記保護剤として、金属石鹸にBNを混合した保護剤を用いると、BNを入れない場合と比較して、感光体とブレード間の潤滑性が更に高くなり、また、潤滑性は非常に長く保持されるため好ましい。
前記窒化ホウ素の含有量は、金属石鹸及び窒化ホウ素の合計含有量に対し30質量%以下であることが好ましく、コストの面から10質量%以下であることがより好ましい。前記含有量が、30質量%を超えると、窒化ホウ素が感光体上に付着しずぎて、不具合を起こしてしまうことがある。
【0167】
前記金属石鹸は、パルミチン酸亜鉛とステアリン酸亜鉛の混合物であることが好ましい。
前記保護剤中のステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合質量比(ステアリン酸亜鉛:パルミチン酸亜鉛)は、75:25〜40:60が好ましく、66:34〜40:60がより好ましい。
このようにステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物を用いると、ステアリン酸亜鉛が感光体上に塗布される過程を観察すると、バー状のステアリン酸亜鉛は、ブラシによりかきとられて微粉化され、ブレードで引伸ばされるが、感光体の線速が速くなると、ステアリン酸亜鉛の引伸ばされ方が、追いつかなくなることがある。しかし、ステアリン酸亜鉛に、ステアリン酸亜鉛よりも分子量の小さいパルミチン酸亜鉛を加えることにより、感光体の線速が速くても、感光体上へ、保護剤(ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛)がブレードで引伸ばされ、感光体上を充分に覆うことができる。
前記ステアリン酸亜鉛と前記パルミチン酸亜鉛は、いずれも脂肪酸金属塩であるが、脂肪酸部分は、ステアリン酸が炭素数18であり、パルミチン酸は炭素数16である。そのため、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛は構造が似ていてよく相溶し、ほぼ、同じ材料としてふるまう。
前記パルミチン酸亜鉛はステアリン酸亜鉛に比べて融点が低いため、ステアリン酸亜鉛中にパルミチン酸亜鉛が一定量以上含有していると、クリーニングブレードにより保護剤が引伸ばされやすくなる。また、感光体の線速が速くなると、感光体に降り注ぐ帯電のエネルギー、特にAC帯電のエネルギーはより強くなるため、保護剤による感光体の保護効果を高めるために、感光体上の保護剤の厚みを厚くしておくことが好ましい。
前記ステアリン酸亜鉛は、感光体上にランダムに付着しているのではなく、2分子で付着した状態が安定といわれている。即ち、ステアリン酸亜鉛を感光体上に塗布しても、ステアリン酸亜鉛の2分子分の厚みで飽和してしまう。ここにステアリン酸亜鉛に比べ、分子の長さが若干小さいパルミチン酸亜鉛が一定量以上含有すると、分子層の高さは一定ではなくなり、低い部分と高い部分が共存するようになる。すると、次の分子が低い部分に入り込み、分子層を形成するようになる。そのため、結果的に2分子よりも厚い保護剤層を形成することができ、感光体の保護効果が向上する。
【0168】
また、前記保護剤は、更にアルミナを含有することが好ましい。このようにアルミナを含有させた場合、感光体上に過剰に供給された窒化ホウ素(BN)及びステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物を研磨してくれるため好ましい。
前記アルミナの含有量としては、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物の質量に対して、2質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましく、4質量%〜8質量%が更に好ましい。前記アルミナが、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物の質量に対して、15質量%を超える場合には、アルミナが感光体を傷付けやすくなるため好ましくなく、含有させるアルミナが、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物の質量に対して、2質量%未満であると、BN及びステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物を研磨する効果が充分に発揮されないことがある。
【0169】
前記アルミナの平均粒径は、0.05μm〜0.5μmが好ましく、0.1μm〜0.4μmがより好ましく、0.2μm〜0.3μmが更に好ましい。前記アルミナの平均粒径が、0.05μm未満であると、窒化ホウ素(BN)及びステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物を研磨する効果が充分に発揮されないことがあり、0.5μmを超えると、アルミナ自体が感光体を傷付けやすくなることがある。
【0170】
前記保護層形成手段は、保護剤塗布用ブレードを有することが好ましい。クリーニングブレードのみでも、保護剤の供給は可能であるが、クリーニングブレードはトナーのクリーニングも行うため、クリーニングブレード上でトナーと保護剤が混在してしまい、感光体上に保護剤の皮膜を作る機能が十分ではない、そのため、トナークリーニングのブレードと保護剤供給及び塗布ブレードの2枚のブレードを具備することにより、機能を分離し、より効率よく、トナークリーニング及び感光体上への保護剤供給を行うことができる。
また、前記保護剤塗布用ブレードは、使用開始前の状態で窒化ホウ素(BN)、又はBNと金属石鹸の混合物が付着している。
BNが保護剤塗布用ブレードに付着していることで潤滑性を上げるので、保護剤塗布用ブレードと感光体の長寿命化、両方に寄与する。また、BNが介在することにより、すり抜けが防止されるため、帯電ローラ汚れの防止にも寄与する。保護剤塗布用ブレードにおいても、BNは、感光体と保護剤塗布用ブレードとの潤滑性を向上させ、クリーニングブレードの微細な振動を抑制することにより、保護剤塗布用ブレードの姿勢を安定させ、金属石鹸等の保護剤の粉がクリーニングブレードを通過して、帯電ローラに付着し、スジ状の異常画像の発生を抑制する。また、クリーニングブレードの振動が抑制されることにより、クリーニングブレード磨耗が抑制される。
【0171】
保護層形成手段における保護剤塗布用ブレードが、カウンター方式で電子写真感光体表面に当接していることが好ましい。保護剤を供給する手段である保護剤塗布用ブレードがカウンター方式で感光体表面に当接していると、BNの過剰な感光体への付着を抑制してくれることから好ましい。
保護層形成手段における保護剤塗布用ブレードが、電子写真感光体表面に鈍角で当接することが好ましい。
図4Aは、電子写真感光体と当接する側の保護剤塗布用ブレードの先端が、直角(90度)の場合を示す模式図である。
図4Bは、電子写真感光体と当接する側の保護剤塗布用ブレードの先端が、鈍角の場合を示す模式図である。
図4Aに示す、保護剤塗布用ブレードの先端が直角である場合は、感光体の回転によりブレードの先端が引き込まれやすいが、図4Bに示す鈍角であるブレードにおいては、感光体との当接部分のブレード先端の角度が大きく、保護剤塗布用ブレードの引き込まれが極めて起こりにくい形状であることから、保護剤塗布用ブレードが安定的に感光体に当接し、保護剤塗布用ブレードの振動も少ないことから、クリーニング性が向上すると考えられる。
このように、鈍角の保護剤塗布用ブレードを用いるとクリーニング性が向上し、トナーや金属石鹸、BNがブレードをすり抜ける現象を抑制してくれることから、BNがすり抜けて感光体上に過剰に付着することが抑制される。また、トナーや保護剤のすり抜けが少ないことから、帯電ローラ汚れも抑制されることから非常に好ましい。
ここで、前記鈍角の角度θは、95度以上170度以下であれば好ましく使用でき、100度以上150度以下であればカット面の腹当たりに対して余裕度が上がりより好ましく使用できる。
【0172】
本発明においては、保護剤としては、保護剤をバー状に固めた保護剤バーを用いることが好ましい。前記保護剤バーを用いると、感光体への保護剤供給が単純な機構で実現でき、また、適切な量の保護剤を均一に感光体上に供給できるので好ましい。保護剤バーから保護剤を感光体に供給する方法について、具体的な実施形態と共に説明する。
本発明において、保護剤バーを成形する際は、保護剤粉末を圧縮して作製する圧縮成形法を用いることが好ましい。
圧縮成形法により保護剤バーを作製する際には、圧縮の度合いにより、保護剤バーの硬さが異なる。保護剤の真比重、成形型への投入量は、予め分かっているため、求める圧縮度合いの厚さになるよう、圧縮することで、再現性よく、保護剤ブロックを製造することができる。
保護剤ブロックの圧縮度合いは、保護剤の真比重の88%〜98%、好ましくは90%〜95%に圧縮していることが好ましい。保護剤ブロックの圧縮度合いが保護剤の真比重の88%より低いと、保護剤ブロックの機械的強度が低いため、保護剤ブロックの取扱の際に、割れが生じ易く好ましくない。一方、保護剤の真比重の98%より大きいと、プレス機の能力を高くする必要があるとともに、部分的に溶融した箇所が生じ、保護剤ブロックの硬さが、場所により大きく異なることがある。
前記保護剤の真比重の88%〜98%である圧縮成形により作製した保護剤ブロックは、溶融成形により作製した保護剤ブロックよりもブラシを押し付ける力が弱くても保護剤を微粉化することができるため、経時に使用してもブラシが劣化せず、安定して保護剤を感光体に供給できるため好ましい。また、BNやアルミナ等の粉体を混合させる場合、粉体の状態での混合を十分に行っておけば、その混合状態を維持したまま保護剤バーが作製できるため、圧縮成形法が特に好ましい。
【0173】
<定着工程及び定着手段>
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を前記定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0174】
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、等が挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0175】
前記除電工程は、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0176】
前記クリーニング工程は、前記感光体上に残留する前記電子写真用トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段は、転写手段より下流側かつ保護層形成手段より上流側に設けられることが好ましい。
【0177】
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが好適に挙げられる。
【0178】
前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせるリサイクル工程を設けてもよい。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段などが挙げられる。
【0179】
ここで、図面を参照して本発明の具体的な実施形態について説明する。
図1は、保護層形成手段を備えた本発明の画像形成装置の要部構成例を示す概略図である。
ドラム状の感光体1に対向して配設された保護層形成手段2は、感光体を保護するステアリン酸亜鉛を主体とした保護剤をバー状(円柱状、四角柱状、六角柱状等)にした保護剤バー21と、この保護剤バー21が左右前後に振れないように支持する保護剤バー支持ガイド25と、保護剤バー21と接触するブラシ22aを有し、保護剤バー21からブラシ22aに移行した保護剤を感光体1へ供給する保護剤供給部材22と、保護剤バー21を保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てて保護剤を保護剤供給部材22のブラシ22aに移行させる押圧力付与機構(例えば、バネ、スプリング等)23と、保護剤供給部材22により感光体上に供給された保護剤を薄層化する保護層形成機構24等から構成されている。
前記保護剤バー21は、保護剤を溶融後、成形型に投入、冷却して作製する溶融成形法、より好ましくは、保護剤粉末を圧縮して作製する圧縮成形法により作製される。
なお、図1において、符号4は感光体のクリーニング手段であるクリーニング装置であり、保護層形成手段2の感光体回転方向上流側に設置されているが、このクリーニング装置4は、保護剤塗布前に感光体表面をクリーニングし、保護剤の塗布が良好に行われるようにするものであるので、保護層形成手段2の構成部材とみなすこともできる。
【0180】
前記保護剤バー21は、バネ、スプリング等の押圧部材からなる押圧力付与機構23からの押圧力により、保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てられ、保護剤バー21からブラシ22aに保護剤が移行する。このとき、バネ、スプリングの押圧力を変化させることにより、保護剤の供給量を変化させることができる。保護剤供給部材22は感光体1と線速差をもって回転してブラシ22aの先端で感光体表面を摺擦し、この際に保護剤供給部材22のブラシ22aの表面に保持された保護剤を、感光体1の表面に供給する。
また、感光体1の表面に供給された保護剤は、供給時に十分な保護層にならない場合があるため、より均一な保護層を形成するために、感光体表面の保護剤は、ブレード状の部材24aと、その保護剤塗布用ブレード24aを感光体ドラム1の表面に押し当てるバネやスプリング等の押圧部材24bとを持つ保護層形成機構24により薄層化され、感光体表面の保護層となる。この保護剤塗布用ブレード24aには、潤滑性物質が予め付着している。
【0181】
前記潤滑性物質とは、一般的に潤滑性を付与するとされる粉末であれば何でもよいが、好ましく用いられる物質としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルキルエーテル(PFA)、パーフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂;ポリメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン等のシリコーン樹脂;アクリル樹脂;エチレンアクリル樹脂;マイカ、窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、グラファイト等の無機固体潤滑剤などが挙げられる。
粉末状の潤滑性物質としては、無機固体潤滑剤を使用することが好ましい。これら無機固体潤滑剤は、現像剤の帯電特性や流動性に与える影響が小さく、また成膜時に像担持体表面を保護する効果が非常に高いためである。
また、無機固体潤滑剤は、脂肪酸金属塩類や他の樹脂微粒子系と比較して、帯電付与時の電気的ストレスに対する耐性が高く、材料自身が劣化しにくいため、長期間にわたる使用時にも使用開始前の潤滑性が維持され、クリーニングブレード等のクリーニング部材の長寿命化に対する効果が非常に大きいためである。
更に、無機固体潤滑剤の中でも、窒化ホウ素(BN)は、ブレードの姿勢を安定させ、トナー等のすり抜けを防止する効果が高いことから、特に好ましく用いることができる。
これら無機固体潤滑剤は、疎水性を向上させる等の目的で表面処理が行われていても構わない。
なお、保護層形成機構24は、カウンター方式を用いており、保護剤塗布用ブレード24aは、感光体表面に対してカウンター方式で接触している。
【0182】
このように、感光体1に保護剤を適量供給するとともに、保護層形成機構24により薄層化することにより、保護剤が感光体上に保持されやすくなる。これにより、帯電手段(例えば、帯電ローラ等)3の汚れ等による異常画像が起こらず、消耗品の交換頻度が少なく、長期に渡って高画質画像を出力可能な画像形成装置を実現することができる。
また、保護剤バーの代わりに保護剤粉末を直接感光体表面に供給することもできる。この場合、保護剤粉末を保有する容器、保護剤粉末を搬送する保護剤搬送装置が必要となり、保護剤バー、押圧力付与機構、保護剤供給部材が不要となる。保護剤搬送装置としては、ポンプ、オーガー等の既存の粉体搬送手段を用いることができる。
【0183】
保護層形成機構24に用いる保護剤塗布用ブレード24aの材料は、特に制限されるものではなく、例えば、クリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独又はブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、感光体1との接点部部分を低摩擦係数材料でコーティングや含浸処理してもよい。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散してもよい。
【0184】
これらの保護剤塗布用ブレード24aは、ブレード支持体24cに、先端部が感光体表面へ押圧当接できるように、接着や融着等の任意の方法によって固定される。保護剤塗布用ブレード24aの厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5mm〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1mm〜3mm程度であれば更に好ましく使用できる。
また、支持体24cから突き出し、たわみを持たせることができる保護剤塗布用ブレード24aの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える、力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1mm〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2mm〜10mm程度であれば更に好ましく使用できる。
【0185】
保護剤塗布用ブレード24aの他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いてもよい。
前記弾性金属ブレードの厚みは、0.05mm〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1mm〜1mm程度であればより好ましく使用できる。
また、前記弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施してもよい。
前記表面層を構成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PFA、PTFE、FEP、PVDF等のフッ素樹脂、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマーなどを、必要により充填剤と共に、用いることができる。
【0186】
また、保護層形成機構24の押圧部材24bで保護剤塗布用ブレード24aを感光体1に押圧する力は、感光体表面の保護剤が延展し、保護層や保護膜の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。
【0187】
また、ブラシ状の部材(以下、ブラシと言う)22aは保護剤供給部材22として好ましく用いられるが、この場合、感光体表面への機械的ストレスを抑制するためには、ブラシ繊維は可撓性を持つことが好ましい。
可撓性のブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用することができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などのうち、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いてもよい。
【0188】
保護剤供給部材22の支持体22bには、固定型と回動可能なロール状のものがある。ロール状の供給部材としては、例えば、ブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものがある。ブラシ繊維は繊維径10μm〜500μmが好ましく、20μm〜300μmがより好ましい。10μm以下では、保護剤の供給スピードが非常に遅くなるため好ましくなく、500μm以上では、ブラシ繊維が単位面積当たりに存在できる本数がより少なくなるため、ブラシが感光体に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、ブラシが感光体に当たったときに感光体を傷つけやすくなったり、保護剤を掻き取る力が強くなるため、保護剤の寿命が短くなったり、感光体に供給される保護剤が大きな粒状になり、感光体に供給された粒が帯電ローラに移動して帯電ローラを汚染してしまったり、ブラシや感光体を回転させるためのトルクがより大きくなるため好ましくない。
【0189】
ブラシの繊維の長さは1mm〜15mmが好ましく、3mm〜10mmがより好ましい。前記ブラシの繊維の長さが、1mm未満であると、ブラシの芯金と感光体が非常に近い配置となるため芯金が像担持体と接触して、感光体に傷がつきやすくなることがあり、15mmを超えると、ブラシ繊維先端で保護剤を掻きとる力やブラシ繊維先端が感光体に当たる力が弱くなり、保護剤を充分な量供給するのが困難になったり、ブラシの繊維が抜けやすくなることがある。
また、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×10〜4.5×10)である。ブラシ密度が1平方インチ当たり1万本以下においては、ブラシが感光体に当たる場所と当たらない場所での塗布ムラが顕著になったり、保護剤を充分な量供給することが困難になるため好ましくなく、また、ブラシ密度を1平方インチ当たり30万本以上にするためにはブラシ繊維の径を非常に小さくする必要があるため好ましくない。
【0190】
保護剤供給部材22は、供給の均一性やその安定性の面から、極カブラシ密度の高い物を使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
これらの保護剤供給部材の中でも、保護剤の供給の効率が高い点で、28μm〜43μmの単繊維から作られたブラシが好ましく、30μm〜40μmの単繊維から作られたブラシがより好ましい。繊維は、撚って作製されることが多いことから、繊維の径は均一でないため、デニール、デシテックスの単位が用いられてきた。しかし、単繊維の場合は、繊維径は一定であるため、繊維径で規定することの方が、保護剤供給部材を規定する上で好ましい。
単繊維の直径が、28μm未満であると、保護剤を供給する効率が低くなり、43μmを超えると、単繊維の剛性が高くなりすぎて、感光体を傷つけやすくなり好ましくない。また、28μm〜43μmの単繊維は、芯金に対してできるだけ垂直に植毛されていることが好ましく、ブラシを製造する際には、静電気を利用した、所謂、静電植毛により製造していることが好ましい。静電植毛は、ブラシの芯金上に接着剤を塗布し、芯金を帯電させることにより、静電電気力で28μm〜43μmの単繊維を飛翔させて、芯金上の接着剤に植毛し、接着剤を硬化させる方法である。このように静電植毛により、1平方インチ当たり5万〜60万本植毛したブラシが、好適に用いることができる。
【0191】
また、ブラシ22aの表面には必要に応じてブラシ22aの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けてもよい。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定されること無く使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性品(例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変性品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂などが挙げられる。
【0192】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び保護層形成手段から選択される少なくとも1つの手段と、電子写真感光体とを有し、画像形成装置に着脱可能なものである。
使用開始前の前記電子写真感光体の表面の少なくとも一部に、少なくとも窒化ホウ素(BN)が付着されている。
【0193】
使用開始前の電子写真感光体の表面の少なくとも一部に、金属石鹸及び窒化ホウ素が付着されていることが好ましい。
使用開始前の電子写真感光体の表面に予め付着されている窒化ホウ素の付着量が、長手方向1cmにおけるドラム状電子写真感光体の周方向の積算量で、0.002mg/cm〜1mg/cmであることが好ましい。
使用開始前の電子写真感光体の表面に予め付着されている窒化ホウ素の付着量が、金属石鹸及び窒化ホウ素の合計付着量に対し10質量%以上であることが好ましい。
【0194】
本発明のプロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置に着脱可能に備えさせることができ、上述した本発明の画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが好ましい。
【0195】
本発明のプロセスカートリッジは、上述したように、感光体表面状態の変動に対しての許容範囲に優れ、感光体への帯電性能変動等を高度に抑制した構成であるため、極めて高画質な画像を長期にわたって安定に形成することができる。
【0196】
次に、本発明のプロセスカートリッジと画像形成装置の実施形態を説明する。
図2は、本発明の画像形成装置の画像形成部に具備される、保護層形成手段を備えたプロセスカートリッジの構成例の概略断面図である。
図2に示す画像形成部10は、ドラム状の感光体1と、感光体1を帯電する帯電手段である帯電装置(図示の例では帯電ローラ)3と、帯電された感光体1にレーザー光L等を照射して静電潜像を形成する潜像形成手段(不図示)と、感光体1上の静電潜像をトナーで現像して可視像化する現像手段である現像装置5と、感光体1上のトナー像を記録媒体(又は中間転写体)7に転写する転写手段6と、転写後の感光体1の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング装置4と、クリーニング装置4から帯電装置3に至る部分に配置された保護層形成手段2を有している。そして、この画像形成部10では、感光体1とともに、保護層形成手段2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置4をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。なお、本発明においては、クリーニング装置4は、保護剤塗布前に感光体表面をクリーニングし、保護剤の塗布が良好に行われるようにするものであるので、保護層形成手段2の構成部材とみなすことができる。
このプロセスカートリッジ11に装着する感光体に予めBNが付着していると、感光体、帯電ローラ、ブレード等の各部材が長寿命化するため、プロセスカートリッジとしての寿命が長くなるため、交換頻度が少なくて済むことから、非常に好ましい。このことからも、わかるように、感光体に予めBNを付着させることは、プロセスカートリッジのような一体型のシステムにおいては、特に有効である。
【0197】
図2において、帯電装置3、潜像形成手段(不図示)、現像装置5は、画像形成手段を構成し、帯電装置3は、例えば、図示しない高電圧電源により直流(DC)電圧に交流(AC)電圧を重畳させた電圧を印加したAC帯電方式の帯電ローラである。また、現像装置5は、トナー、又はトナー及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤を担持搬送する現像剤担持体である現像ローラ51と、現像剤を攪拌しながら搬送する現像剤攪拌搬送部材52、53等で構成される。
感光体1に対向して配設された保護層形成手段2は、図1と同様に、保護剤バー21、保護剤供給部材22、押圧力付与機構23、保護層形成機構24、保護剤バー21が左右前後に振れないように支持する保護剤バー支持ガイド25等から主に構成される。
また、感光体1は、転写工程後に部分的に劣化した保護剤やトナー成分等が残存した表面となっているが、クリーニング装置4のクリーニング部材41により表面残存物が清掃され、クリーニングされる。図2では、ブレード状のクリーニング部材41はクリーニング押圧機構42で支持され、いわゆるカウンタータイプ(リーディングタイプ)に類する角度で当接されている。また、保護層形成機構24のブレード状部材(ブレード)24aもカウンタータイプに類する角度で当接させている。
【0198】
クリーニング装置4により、表面の残留トナーや劣化した保護剤が取り除かれた感光体表面へは、保護剤バー21の保護剤がブラシ状の保護剤供給部材22により供給され、感光体表面に供給された保護剤は、保護層形成機構24のブレード24aにより薄層化され、保護層が形成される。
【0199】
保護層が形成された感光体1は、帯電ローラ3による帯電後、レーザー光Lなどの露光によって静電潜像が形成され、現像手段である現像装置5のトナーにより現像されて可視像化され、プロセスカートリッジ外の転写手段である転写装置(転写ローラ等)6により、転写紙等の記録媒体(又は中間転写体)7へ転写される。
【0200】
本発明のプロセスカートリッジ11に用いる帯電手段(帯電装置)3としては、装置が小型で、オゾン等の酸化性ガスの発生の少ない、帯電ローラが用いられる。
前記帯電ローラ3は、感光体1と接触あるいは、20μm〜100μm近接した非接触状態で設置され、帯電ローラ3と感光体1の間に電圧を印加することにより、感光体1を帯電する。帯電ローラ3と感光体1の間に印加する電圧は、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電を用いる。なお、AC帯電を行う場合は、感光体1と帯電ローラ3の間で1秒間に数百回以上もの放電が起こることから、感光体は、放電による劣化を受けやすい。また、感光体1へ保護剤の塗布をした場合でも、保護剤は放電により劣化し、消失してしまいやすいことから、常時一定の量の保護剤を感光体1上に塗布しておくことは非常に重要である。
【0201】
前記帯電ローラの構成としては、導電性支持体上に、高分子層と、表面層から構成されることが好ましい。
前記導電性支持体は、帯電ローラ13の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、導電剤を添加した樹脂、などの導電性の材質で構成される。
【0202】
前記高分子層としては、10Ωcm〜10Ωcmの抵抗を有する導電性層であることが好ましく、高分子材料に導電剤を混合して抵抗を調整したものが用いられる。
前記帯電ローラの高分子層の高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル系、オレフィン系の熱可塑性エラストマー、ポリスチレン、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエンーアクリロニトリル共重合体等のスチレン系熱可塑性樹脂、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、又はこれらのブレンドしたゴム材料などが挙げられる。これらの中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム又はこれらのブレンドゴムが特に好ましい。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0203】
前記導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。前記電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末が挙げられる。また、イオン導電剤としては、例えば、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記導電剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記電子導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、1質量部〜30質量部が好ましく、15質量部〜25質量部がより好ましい。
前記イオン導電剤の場合は、高分子100質量部に対して、0.1質量部〜5.0質量部が好ましく、0.5質量部〜3.0質量部がより好ましい。
【0204】
前記表面層を構成する高分子材料としては、帯電ローラ13表面のダイナミック超微小硬度が0.04以上0.5以下であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トナーとの離型性等の観点から、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミドが特に好ましい。
前記高分子材料の数平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜50,000であることがより好ましい。
【0205】
前記表面層は、前記高分子材料に前記導電性弾性層に用いた導電剤や各種微粒子を混合して組成物として形成される。前記微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物及び複合金属酸化物、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の高分子微粉体を単独又は混合して用いることができる。
【0206】
本発明のプロセスカートリッジに用いる現像手段は、現像剤を感光体に接触させ、感光体上に形成した潜像をトナー像に現像する。前記現像剤としては、トナーとキャリアから構成される二成分現像剤や、キャリアを含まない一成分現像剤を使用することができる。
例えば、図2で示すように、現像装置5は、そのケーシングの開口から現像剤担持体としての現像ローラ51が部分的に露出している。
図示しないトナーボトルから現像装置5内に補給されたトナーは、攪拌搬送スクリュー52及び53によってキャリアと撹拌されながら搬送され、現像ローラ51上に担持されることになる。この現像ローラ51は、磁界発生手段としてのマグネットローラと、その周りを同軸回転する現像スリーブとから構成されている。現像剤中のキャリアは、マグネットローラが発生させる磁力により現像ローラ51上に穂立ちした状態となって感光体ドラム1と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ51は、現像領域において感光体ドラム1の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ51上に穂立ちしたキャリアは、感光体ドラム1の表面を摺擦しながら、キャリア表面に付着したトナーを感光体ドラム1の表面に供給する。このとき、現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体ドラム1上の静電潜像と現像ローラ51との間では、現像ローラ51上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ51上のトナーは、感光体ドラム1上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体ドラム1上の静電潜像はトナー像に現像される。
【0207】
次に、本発明の画像形成装置の別の一実施形態について説明する。
図3は、保護層形成手段を備えた本発明の画像形成装置の別の構成例を示す概略図である。
この画像形成装置100は、画像形成を行う画像形成装置本体(プリンタ部)110と、この本体110の上部に設置された原稿読取部(スキャナ部)120と、その上に設置された原稿自動給紙装置(ADF)130と、画像形成装置本体110の下部に設置された給紙部200とを備えており、複写機の機能を有している。また、この画像形成装置100は、外部装置との通信機能を有しており、装置外部のパーソナルコンピュータ等と接続することにより、プリンタやスキャナとして用いることができる。また、電話回線や光回線と接続することにより、ファクシミリとして用いることができる。
【0208】
画像形成装置本体110内には、同じ構成で現像装置5のトナー色が異なる画像形成部(画像形成ステーション)10が4つ並設されており、該4つの画像形成部10でトナー色の異なる画像(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像)を形成し、各色のトナー像を記録媒体又は中間転写体に重ね合わせて転写して多色又はフルカラー画像を形成することができる。なお、図3の例では、4つの画像形成部10は、複数のローラに張架されたベルト状の中間転写体7に沿って並設されており、各画像形成部で形成された各色のトナー像は、一旦中間転写体7に順次重ね合わせて転写された後、二次転写装置12で紙等のシート状の記録媒体に一括して転写される。
【0209】
各色の画像形成部10は図2と同様の構成であり、ドラム状の感光体1(1Y,1M,1C,1K)の周囲に、保護層形成手段2、帯電装置3、潜像形成装置8からのレーザー光等の露光部、現像装置5、一次転写装置6、及びクリーニング装置4が配置されている。また、図2と同様に、各色の画像形成部10には、感光体1とともに、保護層形成手段2(クリーニング装置4を含む)、帯電装置3、現像装置5をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。そして、このプロセスカートリッジは、画像形成装置本体110に対して着脱可能に設けられている。
【0210】
次に、図3に示す画像形成装置の動作を説明する。ここでは、画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスで説明を行う。なお、各画像形成部の動作は同じであるので、ここでは一つの画像形成部の動作を説明する。
有機光導電層を有する有機感光体(OPC)等に代表される像担持体であるドラム状の感光体1は、除電ランプ(不図示)等で除電され、帯電部材(例えば、帯電ローラ)を有する帯電装置3で均一にマイナスに帯電される。
帯電装置3による感光体1の帯電が行われる際には、電圧印加機構(不図示)から帯電部材に、感光体1を所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
【0211】
帯電された感光体1は、例えば、複数のレーザー光源と、カップリング光学系と、光偏向器と、走査結像光学系等からなる、レーザー走査方式の潜像形成装置8によって照射されるレーザー光で潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる。
即ち、レーザー光源(例えば、半導体レーザー)から発せられたレーザー光は、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等からなる光偏向器により偏向走査され、走査レンズやミラー等からなる走査結像光学系を介して感光体1の表面を、感光体1の回転軸方向(主走査方向)に走査する。
【0212】
このようにして形成された潜像が、現像装置5の現像剤担持体である現像ローラ51の現像スリーブ上に供給されたトナー、又はトナー及びキャリアの混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。
潜像の現像時には、電圧印加機構(不図示)から現像ローラ51の現像スリーブに、感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0213】
上記のような動作で各色に対応した画像形成部10の感光体1上に形成されたトナー像は、転写ローラ等からなる一次転写装置6にて中間転写体7上に順次重ね合わせて一次転写される。一方、画像形成動作及び一次転写動作にタイミングを合わせて、給紙部200の多段の給紙カセット201a,201b,201c,201dの中の選択された給紙カセットから、給紙ローラ202及び分離ローラ203からなる給紙機構で紙等のシート状の記録媒体が給紙され、搬送ローラ204,205,206、及びレジストローラ207を経て二次転写部に搬送される。そして、二次転写部において、中間転写体7上のトナー画像が二次転写装置(例えば、二次転写ローラ)12にて、搬送されてきた記録媒体に二次転写される。なお、前記転写工程において、一次転写装置6や二次転写装置12には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
前記二次転写後、記録媒体は、中間転写体7から分離され、転写像が得られる。また、一次転写後に感光体1上に残存するトナーは、クリーニング装置4のクリーニング部材41によって、クリーニング装置4内のトナー回収室へ、回収される。また、二次転写後に中間転写体7上に残存するトナーは、ベルトクリーニング装置9のクリーニング部材によって、ベルトクリーニング装置9内のトナー回収室へ、回収される。
【0214】
図3に示した画像形成装置100は、上述の画像形成部10が中間転写体7に沿って複数配置された、いわゆるタンデム型で中間転写方式の画像形成装置であり、複数の画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を一旦中間転写体7上に順次転写した後、これを一括して紙のような記録媒体に転写する。そしてトナー像が転写された記録媒体を、搬送装置13により定着装置14へ送り、熱等によってトナーを定着する構成である。定着後の記録媒体は、搬送装置15及び排紙ローラ16により排紙トレイ17に排紙される。また、この画像形成装置100は両面プリント機能も備えており、両面プリント時には、定着装置9の下流の搬送路を切換え、片面の画像が定着された記録媒体を両面用搬送装置210を介して表裏反転し、搬送ローラ206及びレジストローラ207で二次転写部に再給紙して、裏面側に画像の転写を行う。転写後の記録媒体は、上記と同様に定着装置9に搬送されて画像が定着され、定着後の記録媒体は排紙トレイ17に排紙される。
【0215】
なお、上記の構成で、中間転写体を用いずに、タンデム型の直接転写方式の画像形成装置とすることもでき、この直接転写方式の場合は、中間転写体に換えて、記録媒体を担持搬送する転写ベルト等を用い、各画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を直接、転写ベルトで搬送される紙のような記録媒体に順次転写した後、定着装置へ送り、熱等によってトナーを定着する構成としてもよい。
【0216】
本発明の電子写真感光体、画像形成装置及び画像形成方法は、高画質な画像出力を長期間に亘って保持することが可能であり、感光体、帯電ローラ、クリーニングブレード、保護剤塗布用ブレード等の感光体周囲のすべての部材の寿命を大幅に延ばすことができ、各部材及びプロセスカートリッジの交換頻度が少なくて済むものである。
【実施例】
【0217】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0218】
(製造例1)
−保護剤バー1の作製−
ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛(両者とも平均粒径17μm)の混合物の粉を、内寸法8mm×350mmのアルミニウム製の金型に入れ、油圧式プレス機で圧力をかけ、真比重に対して95%まで圧縮して、厚み7mmの保護剤バーを作製した。
作製した保護剤バーを、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バー1を作製した。作製した保護剤バー1の底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0219】
(製造例2)
−保護剤バー2の作製−
ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛(両者とも平均粒径17μm)の混合物に、窒化ホウ素(BN:平均粒径5μm)の含有量が3質量%になるように混合して攪拌し、攪拌後の粉を内寸法8mm×350mmのアルミニウム製の金型に入れ、油圧式プレス機で圧力をかけ、真比重に対して95%まで圧縮して、厚み7mmの保護剤バーを作製した。
作製した保護剤バーを、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バー2を作製した。作製した保護剤バー2の底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0220】
(製造例3)
−保護剤バー3の作製−
ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛(両者とも平均粒径17μm)の混合物に、窒化ホウ素(BN:平均粒径5μm)の含有量が30質量%になるように混合して攪拌し、攪拌後の粉を内寸法8mm×350mmのアルミニウム製の金型に入れ、油圧式プレス機で圧力をかけ、真比重に対して95%まで圧縮して、厚み7mmの保護剤バーを作製した。
作製した保護剤バーを、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バー3を作製した。作製した保護剤バー3の底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0221】
(製造例4)
−保護剤バー4の作製−
ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛(両者とも平均粒径17μm)の混合物に、窒化ホウ素(BN:平均粒径5μm)の含有量が35質量%になるように混合して攪拌し、攪拌後の粉を内寸法8mm×350mmのアルミニウム製の金型に入れ、油圧式プレス機で圧力をかけ、真比重に対して95%まで圧縮して、厚み7mmの保護剤バーを作製した。
作製した保護剤バーを、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バー4を作製した。作製した保護剤バー4の底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0222】
(製造例5)
−保護剤バー5の作製−
ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛(両者とも平均粒径17μm)の混合物に、表1に示す量になるように、窒化ホウ素(BN:平均粒径5μm)と球形アルミナ粒子(平均粒径0.3μm)の各粉末を、混合して攪拌し、攪拌後の粉を内寸法8mm×350mmのアルミニウム製の金型に入れ、油圧式プレス機で圧力をかけ、真比重に対して95%まで圧縮して、厚み7mmの保護剤バーを作製した。
作製した保護剤バーを、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バー5を作製した。保護剤バー5の底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
【0223】
表1に、作製した保護剤バー1〜5のステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の質量比率、金属石鹸(ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛)と窒化ホウ素(BN)の質量比率、アルミナの金属石鹸に対する割合(質量%)を示す。
【0224】
【表1】

【0225】
(製造例6)
−感光体の作製−
直径40mmのアルミニウムドラム(支持体、表面積43,458mm)上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液、及び表面層用塗工液を、この順に塗布した後、乾燥して、厚み3.6μmの下引き層、厚み0.14μmの電荷発生層、厚み23μmの電荷輸送層、及び厚み3.5μmの表面層からなる感光体を作製した。このとき、表面層の塗工はスプレー法により行い、それ以外の層の塗工は浸漬塗工法により行った。
【0226】
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4質量部
・酸化チタン・・・40質量部
・メチルエチルケトン・・・200質量部
【0227】
〔電荷発生層用塗工液〕
・Y型オキソチタニルフタロシアニン顔料・・・2質量部
・ポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学株式会社製)・・・0.2質量部
・テトラヒドロフラン・・・50質量部
【0228】
〔電荷輸送層用塗工液〕
・ビスフェノールA型ポリカーボネート(帝人株式会社製、パンライトK1300)・・・10質量部
・下記構造式で表される低分子電荷輸送物質・・・10質量部
【化1】

・塩化メチレン・・・100質量部
【0229】
〔表面層塗工液〕
・ポリカーボネート・・・10質量部
・上記構造式で表される低分子電荷輸送物質・・・7質量部
・アルミナ微粒子(中心粒径0.30μm)・・・6質量部
・分散助剤(ビックケミージャパン社製、BYK−P104)・・・0.08質量部
・テトラヒドロフラン・・・700質量部
・シクロヘキサノン・・・200質量部
【0230】
(実施例1)
−感光体1の作製−
製造例6で作製した感光体を、窒化ホウ素(BN:平均粒径5μm)を包んだ目の細かい布(マイクロワイプ−MU2000、株式会社MCC製)で叩き、BNの粉を感光体の表面に付着させて、感光体1を作製した。なお、感光体を布で叩くときの力は、65gとし、同条件でBNの粉を塗布した感光体を複数作成した。
作製した感光体1についてICP発光分光分析により、感光体長手方向の単位長さ当たりのBNの付着量及び付着量のバラツキ量を求めた。ICP発光分光分析は以下のように行なった。まず、感光体から感光層を剥離し、分析試料を作成した。分析試料は、長手方向に5cm、周方向に一周分の大きさの短冊状になるように剥離し、1本の感光体から6枚の短冊状の分析試料を得た。剥離した短冊状の感光層と硫酸、硝酸を6つの容器にそれぞれ分けて入れて密栓し、マイクロ波を照射して加熱分解後、超純水で定容して検液とし、ICP発光分光分析装置(SPS5100型、エスアイアイ ナノテクノロジー社製)により検液中のホウ素(B)を定量した。定量されたホウ素(B)の値から、窒化ホウ素(BN)に換算し、長手方向の長さ(5cm)で割って算出された値から、単位長さ辺りのBNの付着量(mg/cm)を求めた。更に、6本の短冊状分析試料のBNの付着量(mg/cm)の平均値を求めた。感光体に付着したBNの付着量(平均値)(mg/cm)を表2に示す。
また、長手方向におけるBNの付着量のバラツキを把握するため、6枚の短冊状分析試料に付着した、BNの付着量の平均値を算出し、下記数式にように、それぞれの実測値から平均値を差し引いて絶対値をとり、さらに平均値で割り、平均値とどの程度異なるかバラツキ量を算出した。算出したバラツキ量のうち、6枚の分析試料での最大値を表2に示す。
〔数3〕
バラツキ量(%)=(|実測値−平均値|)/平均値×100
【0231】
(実施例2)
−感光体2の作製−
製造例6で作製した感光体を、BN(平均粒径5μm)と金属石鹸(ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛(両者とも平均粒径17μm)の混合物)をよく攪拌して、一度油圧プレス機でプレスし、該プレスして成形されたバー(保護剤バー2〜4と製造方法は同じ)を粉砕して粉状にして、その粉を包んだ目の細かい布(マイクロワイプ−MU2000、株式会社MCC製)で叩き、BNと金属石鹸(ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物)の粉を感光体の表面に付着させて、感光体2を作製した。なお、感光体を布で叩くときの力は、25gとした。
上述のように一度プレス後、粉砕した粉をICP発光分光分析(SPS5100型(エスアイアイ ナノテクノロジー社製))によって分析したところ、感光体2に用いた、金属石鹸(ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物)とBNの質量比率は、金属石鹸/BN=70/30であった。
感光体1と同様の方法で、感光体に付着したBNの付着量(平均値)(mg/cm)及び6枚の分析試料のバラツキ量の最大値を算出した。BNの付着量(平均値)(mg/cm)及びバラツキ量の最大値を表2に示す。
【0232】
(実施例3〜7)
−感光体3〜7の作製−
実施例1において、実施例3から順にそれぞれ75g、4g、30g、2g、90gの力で、BNを包んだ布を感光体に叩き、BNの粉を感光体の表面に付着させた以外は、実施例1と同様にして、感光体3〜7を作製した。
前記感光体3〜7についてもそれぞれ、感光体1と同様の方法で、感光体に付着したBNの付着量(平均値)(mg/cm)及び6枚の分析試料のバラツキ量の最大値を算出した。BNの付着量(平均値)(mg/cm)及びバラツキ量の最大値を表2に示す。
【0233】
(実施例8〜10)
−感光体8〜10の作製−
実施例2において、実施例8から順にそれぞれ30g、30g、3gの力で、BN及び金属石鹸を包んだ布を感光体に叩き、BNと金属石鹸(ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物)の粉を感光体に付着させた以外は、実施例2と同様にして、感光体8〜10を作製した。
前記ICP発光分光分析によって分析したところ、感光体8〜10に用いた、金属石鹸(ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物)とBNの質量比率は、それぞれ金属石鹸/BN=40/60、91/9、40/60であった。
感光体8〜10についてもそれぞれ、感光体1と同様の方法で、感光体に付着したBNの付着量(平均値)(mg/cm)及び6枚の分析試料のバラツキ量の最大値を算出した。BNの付着量(平均値)(mg/cm)及びバラツキ量の最大値を表2に示す。
【0234】
(比較例1)
−感光体11の作製−
製造例6で作製した感光体について、何も塗布せずそのまま使用し、感光体11とした。
【0235】
(比較例2)
−感光体12の作製−
製造例6で作製した感光体について、金属石鹸の粉(保護剤バー1を粉砕して粉状にしたもの)を包んだ目の細かい布(マイクロワイプ−MU2000、株式会社MCC製)で感光体を叩き、金属石鹸の粉を10mg付着させて、感光体12とした。なお、感光体を布で叩くときの力は、30gとした。
【0236】
(比較例3)
−感光体13の作製−
製造例6で作製した感光体について、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA、平均粒径0.4μm)を包んだ目の細かい布(マイクロワイプ−MU2000、株式会社MCC製)で感光体を叩き、PMMAの粉を10mg付着させて、感光体13とした。なお、感光体を布で叩くときの力は、30gとした。
【0237】
【表2】

【0238】
(実施例11)
<画像形成>
表3に示すように、感光体1を用いて、図3に示すような、保護層形成手段を具備した画像形成部(プロセスカートリッジ)を複数有する画像形成装置(imagio MPC4500、タンデム型カラー画像形成装置、株式会社リコー製)を使用し、該装置に設置されている、保護剤塗布用ブレードを鈍角(120°)のブレード(カウンター方式)に付け替えて評価を行った。感光体の線速は125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1,450Hz、振幅1,100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。評価はすべて低温低湿(室温15℃、湿度20%RH)環境下で行った。また、評価用の出力チャートとして、ISOテストチャート(ISO/IEC JTC 1/SC 28のホームページ http://www.iso.org/jtc1/sc28)を用いた。なお、保護剤塗布用ブレードとしては、ウレタン製ブレードを用いた。
【0239】
<ブレード上における潤滑剤の有無の評価>
前記ISOテストチャートを5,000枚出力した後、画像出力後の保護剤塗布用ブレードについて、該ブレードに付着した粉をスパチュラーで丁寧にかきとり、ICP発光分光分析(SPS5100型、エスアイアイ ナノテクノロジー社製)、FT−IR分析(FT/IR6100、日本分光株式会社製)を用いて、保護剤塗布用ブレード上のBN、金属石鹸、又はPMMAの付着の有無を評価した。
なお、ICP発光分光分析を行うためには、かきとられる粉の量が一定量以上必要であったため、同条件での画像出力を複数回行い、ICP発光分光分析用の分析サンプルを回収した。また、スパチュラのみでは回収しきれない付着物もあるため、スパチュラでのかきとり後、更にブレードに残った粉をマイクロワイプで丁寧に拭き取り、スパチュラで回収した粉、及びブレード拭き取り後のマイクロワイプの付着物をICP発光分光分析した。
また、FT−IR分析についても同様に、同条件での画像出力を複数回行い、それぞれの画像出力に用いた保護剤塗布用ブレードからスパチュラを用いて予め付着物の粉を回収し、更にブレードにKBrの粉をまぶし、まぶしたKBrを再度回収して、回収したすべての粉を集めて錠剤(分析サンプル)を作り、分析を行った。BNの有無はICP発光分析におけるホウ素(B)の検出有無により、金属石鹸、及びPMMAの有無はFT−IRのピークにより判断した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
○(B):ICP発光分析により、ホウ素(B)が検出される。
×(B):ICP発光分析により、ホウ素(B)が検出されない、又は定量限界以下。
○(金属石鹸):IR分析により、金属石鹸が検出される。
×(金属石鹸):IR分析により、金属石鹸が検出されない、又は定量限界以下。
○(PMMA):IR分析により、PMMAが検出される。
×(PMMA):IR分析により、PMMAが検出されない、又は定量限界以下。
【0240】
<画像評価>
ISOテストチャートを出力し、出力画像の合計枚数が10枚目、5,000枚目、10,000枚目、50,000枚目、及び60,000枚目のチャートの出力画像について、目視又は顕微鏡観察により画像出力の評価を行った。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
○:高画質画像
△:目視では確認できないが、顕微鏡で拡大すると僅かに画質が悪い箇所がある(実使用上は問題なし)
×:異常画像
【0241】
(実施例12〜24及び比較例4〜7)
表3に示す感光体、保護剤バー、ブラシ、及び保護剤をブラシに押し当てるバネ圧の条件を用いて、実施例11と同様にして画像形成を行い、実施例11と同様にしてブレード上の潤滑剤の有無及び画像評価を行った。結果を表3に示す。
【0242】
【表3−1】

*ブラシの種類A:5.3デニール、毛の本数5万本、編みブラシ(ブラシ繊維を基布に編みこんだブラシ)
*ブラシの種類B:20デニール、毛の本数5万本、編みブラシ(ブラシ繊維を基布に編みこんだブラシ)
*ブラシの種類C:10デニール、毛の本数5万本、静電植毛ブラシ
【表3−2】

【0243】
前記画像評価の結果、実施例11〜24の10枚目及び5,000枚目の出力画像について、目視評価を行ったところ、高画質な画像が保持されていた。また、10,000枚目の出力画像について、目視評価を行ったところ、高画質な画像が保持されていた。更に、50,000枚目、及び60,000枚目の出力画像について、目視評価を行ったところ、高画質な画像が保持されていた。
更に、実施例11〜24の10枚目及び5,000枚目の出力画像について、顕微鏡観察を行い比較したところ、実施例17の画像は、10枚目及び5,000枚目の両者ともドットサイズが多少広がっていたが、その他の実施例の出力画像は、10枚目及び5,000枚目の両者とも、ドットが綺麗に並んでいた。再度、目視で実施例17とその他の実施例の出力画像について比較を行ったが、目視においては、これらの画像に有意な差は見られなかった。
次に、実施例11〜24の10,000枚目の出力画像について、顕微鏡観察を行い比較したところ、実施例17の画像はドットサイズが多少広がっており、実施例20の画像はドット濃度が多少ばらついていたが、その他の実施例の出力画像はドットが綺麗に並んでいた。再度、目視で実施例17及び実施例20とその他の実施例の出力画像について比較を行ったが、目視においては、これらの画像に有意な差は見られなかった。
次に、実施例11〜24の50,000枚目の出力画像について、顕微鏡観察を行い比較したところ、実施例16及び20の画像はドット濃度が多少ばらついており、実施例17及び22の画像はドットサイズが多少広がっていたが、その他の実施例の出力画像はドットが綺麗に並んでいた。再度、目視で実施例17、18、20及び22とその他の実施例の出力画像について比較を行ったが、目視においては、これらの画像に有意な差は見られなかった。
次に、実施例11〜24の60,000枚目の出力画像について、顕微鏡観察を行い比較したところ、実施例11及び12以外は、50,000枚目の出力画像の結果と変わりなかった。実施例11及び12の60,000枚目の出力画像は、50,000枚目の出力画像よりドット濃度が多少ばらついていた。再度、目視で実施例11〜24の出力画像について比較を行ったが、目視においては、これらの画像に有意な差は見られなかった。
【0244】
前記画像評価の結果、比較例4〜7の10枚目及び5,000枚目の出力画像について、目視評価を行ったところ、高画質な画像が保持されていた。次に、10,000枚目の出力画像について、目視評価を行ったところ、比較例6では高画質な画像が保持されていたが、比較例4及び比較例5では微かな黒帯が見られ、比較例7では微かな筋状欠陥と印字のない部分(地肌部)に薄い地汚れが見られた。また、画像にザラツキが感じられた。更に、50,000枚目、及び60,000枚目の出力画像について、目視評価を行ったところ、比較例4、5及び比較例6では両出力画像とも微かな黒帯が見られ、比較例7では両出力画像とも微かな筋状欠陥と印字のない部分(地肌部)に地汚れが見られた。また、画像にザラツキが感じられた
更に、比較例4〜7及び実施例11の10枚目の出力画像について、顕微鏡観察を行い比較したところ、全ての出力画像はドットが綺麗に並んでいた。
次に、比較例4〜7及び実施例11の5,000枚目の出力画像について、顕微鏡観察を行い比較したところ、比較例4及び5の画像は局所的に僅かにドット濃度が濃くなっており、比較例7の画像はドットの濃度が局所的にばらついており、印字のない部分(地肌部)の汚れが他の出力画像上より多く見られたが、比較例6及び実施例11の出力画像はドットが綺麗に並んでいた。再度、目視で比較例4〜7及び実施例11の出力画像について比較を行ったが、目視においては、これらの画像に有意な差は見られなかった。
次に、比較例6及び実施例11の10,000枚目の出力画像について、顕微鏡観察を行い比較したところ、比較例6の画像は局所的に僅かにドット濃度が濃くなっていたが、実施例11の出力画像はドットが綺麗に並んでいた。再度、目視で比較例6及び実施例11の出力画像について比較を行ったが、目視においては、これらの画像に有意な差は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0245】
本発明の電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジは、複写機、プリンター、ファクシミリなどに用いられ、特に直接又は間接電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンター、及びフルカラー普通紙ファックス等に幅広く使用できる。
【符号の説明】
【0246】
1 感光体
1Y、1M、1C,1K 感光体ドラム
2 保護層形成手段
3 帯電装置
4 クリーニング装置
5 現像装置
6 転写装置
7 記録媒体
21 保護剤バー
22 保護剤供給手段
23 押圧手段
24 薄層化手段
41 クリーニング手段
42 クリーニング押圧機構
60 中間転写体
100 画像形成装置
200 給紙機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用開始前において、表面の少なくとも一部に、少なくとも窒化ホウ素が付着されていることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
更に金属石鹸が付着されている請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
表面に付着されている窒化ホウ素の付着量が、長手方向1cmにおけるドラム状電子写真感光体の周方向の積算量で、0.002mg/cm〜1mg/cmである請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項4】
金属石鹸及び窒化ホウ素の合計付着量に対する窒化ホウ素の付着量の質量割合が、10質量%以上である請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
金属石鹸が、パルミチン酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との混合物である請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
最表面層が、フィラーを含有する請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項7】
電子写真感光体と、電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項1から6のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
電子写真感光体表面に保護剤を付与して保護層を形成する保護層形成手段を有する請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
保護剤が、少なくとも金属石鹸及び窒化ホウ素を含有し、前記窒化ホウ素の含有量が、金属石鹸及び窒化ホウ素の合計含有量に対し30質量%以下である請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
金属石鹸が、パルミチン酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との混合物である請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
保護剤が、更にアルミナを含有する請求項9から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
保護剤が、保護剤バーの形態で用いられる請求項9から11のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
保護剤バーが、保護剤粉末を圧縮成形して得られる請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
保護層形成手段が、保護剤塗布用ブレードを有する請求項8から13のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項15】
保護剤塗布用ブレードが、カウンター方式で電子写真感光体表面に当接している請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
保護剤塗布用ブレードが、電子写真感光体表面に鈍角で当接する請求項14から15のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項17】
帯電手段による電子写真感光体への帯電方式が接触乃至近接方式であって、該帯電手段が、直流電圧に交流電圧を重畳したAC帯電を行う請求項7から16のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項18】
電子写真感光体表面を帯電する帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が請求項1から6のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項19】
帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び保護層形成手段から選択される少なくとも1つの手段と電子写真感光体とを有し、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体が請求項1から6のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−133850(P2011−133850A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196693(P2010−196693)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】