電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ
【課題】優れた機械的耐久性、電気特性、環境安定性、耐ガス性を示し、画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジの提供。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有するビストリフェニルアミン系化合物であることを特徴とする電子写真感光体。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有するビストリフェニルアミン系化合物であることを特徴とする電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰返し使用時の耐摩耗性が極めて高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体(以下、「感光体」、「静電潜像担持体」、「像担持体」と称することもある)、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機感光体(OPC:Organic Photo Conductor)は良好な性能を有し、様々な利点から、無機感光体に代わって複写機、ファクシミリ、レーザープリンター及びこれらの複合機に多く用いられている。その理由としては、例えば、(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。
【0003】
また最近、画像形成装置の小型化を図るため、感光体の小径化が進み、更に、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わって、感光体の高耐久化が切望されるようになってきている。この観点からみると、有機感光体は、電荷輸送層が低分子電荷輸送物質と不活性高分子を主成分としているため、一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的負荷により、摩耗が発生しやすいという欠点がある。
【0004】
加えて、高画質化の要求から、トナー粒子の小粒径化が進められ、これに伴ってクリーニング性の向上を図るため、クリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇とが余儀なくされる。このことも、感光体の摩耗を促進する要因の一つとなっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また、摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。
【0005】
そこで、有機感光体の耐摩耗性の改良を図ることを目的として、種々の改良が行われてきた。例えば、電荷輸送層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1参照)、高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2参照)、電荷輸送層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3参照)、多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させたもの(特許文献4参照)、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けたもの(特許文献5参照)、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有させたもの(特許文献6参照)、コロイダルシリカ含有硬化性シリコーン樹脂を用いたもの(特許文献7参照)、有機珪素変性正孔輸送性化合物を硬化性有機珪素系高分子中に結合させた樹脂層を設けたもの(特許文献8、9参照)、電荷輸送性付与基を有する硬化性シロキサン樹脂を三次元網目構造状に硬化させたもの(特許文献10参照)、水酸基を少なくとも1つ有する電荷輸送性物質と三次元に架橋された樹脂及び導電性微粒子を含有させたもの(特許文献11参照)、反応性電荷輸送性物質を少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールと芳香族系イソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有させたもの(特許文献12参照)、水酸基を少なくとも1つ有する電荷輸送性物質と三次元に架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂を含有させたもの(特許文献13参照)、水酸基を有する電荷輸送性物質と三次元に架橋されたレゾール型フェノール樹脂を含有させたもの(特許文献14参照)などが挙げられる。
【0006】
更に、硬化膜を形成し得る光機能性有機化合物と、スルホン酸及び/又はその誘導体と、沸点250℃以下のアミンとを含有させたもの(特許文献15参照)、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成され、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度が0.1質量%以上5質量%以下であり、且つ電荷輸送性材料の少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度が90質量%以上のもの(特許文献16参照)などが挙げられる。
【0007】
これら従来技術のように、3次元架橋された表面層は、機械的耐久性に優れており、摩耗による感光体寿命を著しく向上することができる。しかしながら、3次元架橋膜を形成する方法として、特許文献6に記載のものは、紫外線又は電子線によりラジカル重合させた3次元架橋膜であるが、ラジカル重合反応を進行する為に、酸素濃度の制御や紫外線照射装置や電子線照射装置等の大掛かりな製造設備を必要とする。一方、特許文献13〜16は、加熱により3次元架橋膜を形成する事ができ、生産性の点で有利であり、且つ耐摩耗性にも優れる。しかしながら、特許文献12ではウレタン結合による硬化物となり、電荷輸送性が悪く、電気特性の点で実用化には困難である。特許文献13〜16では、水酸基等の高極性基を有する電荷輸送性化合物とメラミン樹脂やフェノール樹脂といった反応性活性を有する樹脂との間で、3次元架橋させた表面層であり、電気特性にも比較的優れている。
【0008】
上記特許文献15に開示された表面層が設けられた電子写真感光体は、スルホン酸及び/又はその誘導体の存在下で光機能性有機化合物を硬化させることによって、硬化反応が十分に進行し、加水分解性基(水酸基など)の残存量が十分に低減するため、良好な硬化膜を安定的に得ることができるものである。しかしながら、硬化膜中の反応性基(加水分解性基など)は完全に消滅することは困難である。即ち、架橋反応が進行すると共に、硬化と共に塗膜の分子運動性が束縛され、どうしても未反応の反応性基は存在してしまう。水酸基等のような高極性基が未反応のまま残留すると、帯電低下しやすくなったり、高温高湿環境下や帯電基による発生する酸化性ガス(NOx)の曝露により、画像濃度低下がしやすくなる欠点を有している。耐摩耗性が極めて高い電子写真感光体を長期にわたって使用した場合、残存する反応性基によって、得られた硬化膜の特性の低下や不安定化が生じやすい。
【0009】
上記特許文献16のものは、電荷輸送性化合物を90%以上という高濃度で用いる事で、電荷輸送性に優れており、良好な電気特性を示す。しかしながら、残留する水酸基による課題は特許文献15と同様である。
そこで、特許文献17のものは、水酸基等をブロックした電荷輸送性化合物を用いて、メラミン樹脂やグアナミン樹脂等の反応性活性を有する樹脂との硬化膜を形成している。高極性基の残留を抑制する事ができるが、ブロックされた水酸基と反応性活性を有する樹脂との相互反応性が不均一となり、機械的強度に優れた3次元架橋膜の形成は困難であった。また、水酸基をブロックした反応性基を4つ有する電荷輸送性化合物を用いることで、機械的強度を高めることが可能である。しかしながら、開示されている2つのトリフェニルアミン構造が共役結合で連結している電荷輸送性化合物は以下のような課題を有している。2つのトリフェニルアミン構造が共役結合で連結することで、π電子雲が広がり、優れた電荷輸送性を有することができる。しかしながら、酸化電位が小さい電荷輸送性化合物となりやすく、長期にわたる使用により、帯電性低下しやすくなったり、画像濃度が低下しやすい。
【0010】
以上のように機械的強度に優れ、電気的特性(帯電性、電荷輸送性、残留電位特性)にも優れ、環境依存性も少なく、且つ耐ガス性にも優れた、真に高寿命で安定した画像出力が可能で、生産性にも優れる高耐久感光体の提供ができていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高画質な画像を長期に安定して出力できる電子写真感光体としては、優れた機械的耐久性(耐摩耗性、対傷性等)、優れた電気特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)、優れた耐ガス性(NOx等)の全てを経時で満足する必要がある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、繰り返し使用に対して、優れた機械的耐久性(耐摩耗性、耐傷性等)、優れた電気特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)を示し、画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意探求を重ねた結果、高い反応性を有する、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、且つ2つのトリアリールアミン構造を非共役で連結させた化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜を感光層の最表面に用いることで、前記課題を解決する事ができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式中、X1は炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,Ar5,Ar6は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
(2)前記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶であることを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般(2)で表されることを特徴する上記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
【化2】
(式中、X2は−CH2−、−CH2CH2−、−C(CH3)2−Ph−C(CH3)2−、−C(CH2)5−、−O−を表わす。R1,R2,R3,R4,R5,R6は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、o,p,q,r,s,tは1〜4の整数を表わす。)
(4)導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(5)電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
(6)前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式により行われることを特徴とする上記(5)に記載の画像形成方法。
(7)電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(8)前記露光手段による電子写真感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式であることを特徴とする上記(7)に記載の画像形成装置。
(9)電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、繰り返し使用に対して、優れた機械的耐久性(耐摩耗性、耐傷性等)、優れた電気特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)を示し、画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】合成例1において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図2】合成例2において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図3】合成例3において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図4】合成例4において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図5】合成例5において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図6】合成例6において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図7】合成例7において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図8】合成例8において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図9】合成例9において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図10】合成例10において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図11】合成例11において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図12】合成例12において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図13】合成例13において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図14】合成例14において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図15】本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略図である。
【図16】本発明の電位写真感光体の層構成の別の一例を示す概略図である。
【図17】本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。
【図18】本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。
【図19】本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。
【図20】本発明の画像形成装置及び電子写真プロセスを説明する概略図である。
【図21】本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明する概略図である。
【図22】本発明のプロセスカートリッジの一例を説明する概略図である。
【図23】実施例1におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図24】実施例2におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図25】実施例3におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図26】実施例4におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図27】実施例5におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図28】実施例6におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図29】比較例4におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図30】比較例5におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が前記一般式(1)で表されることを特徴とする。
ここで、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が適当な触媒を用いることで有機溶媒等に不溶で架橋密度の高い3次元架橋膜を形成できることを見出したのが本発明の基礎となっている。この反応は、反応前後の赤外吸収スペクトルや重量減少から[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応であることが分かった。
(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)基が水酸基の保護基として使用されることは従来から知られており、例えば前記特許文献17にも広く記載されており、この様な保護基を有する化合物とメラミンの様な反応活性種との反応による硬化物は検討されているが、保護基単独での架橋膜形成の例は無い。
【0017】
また、保護基という考え方からは保護基が外れて反応することを想起させ、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がメチロール基に変化して反応すると考えると、得られた3次元架橋膜はメチロール体の架橋膜と同じになるが、検討の結果、メチロール基を経由することなく反応することがわかり、従って、未反応部には[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がそのまま残る。この様に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が架橋膜構造中に存在することは膜物性にも影響しており、耐ガス性に影響するガス透過性においてメチロール体の架橋硬化物に比べて小さいというメリットがある。
【0018】
この様に電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、且つ、前記一般式(1)は、非共役連結基のX1を有することで適度な分子運動性をも有しており、重合反応による一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を残した3次元架橋膜を形成しやすく、出来上がった3次元架橋膜の硬度特性や弾性特性のバランスが良く、強靱で耐傷性、耐摩耗性の両方に優れた表面保護層の形成が可能になる。
【0019】
上記3次元架橋膜は溶媒に不溶である時にとりわけ優れた機械的特性を示す。電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物はテトラヒドロフランに良く溶解する。この化合物が反応して3次元の網目状に結合を形成するともはやテトラヒドロフラン及びその他の溶媒に溶解しなくなる。
従って、上記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶である事は、感光体の表面が巨大分子化されて一体となった構造になっていることを表し、高い機械的特性を発揮する。
ここで、不溶とはテトラヒドロフランに浸積しても膜が消失しない状態を言う。
更に好ましくは、テトラヒドロフランで濡らした綿棒等で擦っても、その痕跡が残らない状態が好ましい。
この様に溶媒不溶とすることで感光体への異物付着を防止できたり、異物付着を起源とした感光体表面の傷の発生等を防止することができる。
【0020】
また、電荷輸送性化合物のみの硬化物であるから良好な電荷輸送性を示し、それでいて電荷輸送に直接寄与しない[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のような電気的不活性部も適当に内在していることで帯電安定性にも優れており、更に、X1の構造性から分子の酸化電位が比較的大きく、酸化しにくい特性を有しており、オゾンガスやNOxガスのような酸化性ガスの暴露時にも比較的安定であり、耐ガス性にも強い感光体の提供が可能になる。
【0021】
本発明の電子写真感光体における3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物に硬化触媒を添加し加熱することで重合反応させて得られたものであることが好ましい。
硬化触媒を用いて加熱することで重合反応を実用的な速度で進行させることが可能にあり、表面平滑性に優れた最表面層の形成が可能になる。表面平滑性が極端に悪くなるとトナーもクリーニング性が悪くなり、異常画像の原因となって高画質な印刷ができなくなる。したがって適当な硬化触媒を用いて適当な温度で加熱することにより表面平滑性に優れる3次元架橋膜の形成が可能になり、当該3次元架橋膜を感光層の最表面層に備えた電子写真感光体は、より高画質な画像を長期に渡って印刷できるようになる。
【0022】
また、前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物は、前記一般式(2)で表される電荷輸送性化合物であることが好ましい。
前記一般式(2)の化合物は、前記一般式(1)で表される化合物の中で特に優れるもので、お互いの重合反応性が特によい。[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基同士の重合反応については不明な部分も残っているが、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の存在する芳香環が3級アミノ基を有するベンゼン環の場合に最も進行が速く、より架橋密度が高い前記3次元架橋膜(架橋保護層)の形成が可能になる。
【0023】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上の感光層が少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜である事が好ましい。
前記3次元架橋膜の電荷輸送性は、従来の架橋膜に比べて最高レベルの特性を有しているが、通常の分子分散型電荷輸送層に比べるとまだ低い。従って、電荷輸送層は従来型の分子分散型電荷輸送層を用い、その表面の保護層として使用する場合に、最高のパフォーマンスを発揮する。
すなわち比較的厚膜の通常の分子分散型電荷輸送層上に薄膜の架橋型電荷輸送層を形成することで、感度特性を低下させることなく本発明の特徴を有する電子写真感光体の提供が可能になる。その為に架橋型電荷輸送層の膜厚は1〜10μmが好ましい。
【0024】
本発明に係る画像形成方法は、電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、電子写真感光体として前記本発明の電子写真感光体を使用することを特徴とする。
これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる画像形成方法が提供できる。
【0025】
前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式により行われることが好ましい。これにより、上記本発明の画像形成方法において更にPCでの文書及び画像作製出力に効率よく対応できるようになる。
【0026】
本発明に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、電子写真感光体として前記本発明の電子写真感光体を使用することを特徴とする。
これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる画像形成装置が提供できる。
【0027】
前記露光手段における感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式により行われることが好ましい。これにより、上記本発明の画像形成装置において更にPCでの文書及び画像作製出力に効率よく対応できるようになる。
【0028】
本発明に係るプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、電子写真感光体として前記本発明の電子写真感光体を用いることを特徴とする。これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れるプロセスカートリッジの提供が可能になる。
【0029】
以下、本発明の電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成方法、画像形成装置、ならびに画像形成装置用プロセスカートリッジの詳細を説明する。
【0030】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が上記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0031】
ここで言う3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物同士が[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応を起こしてそれぞれ結合し、3次元の網目状に巨大分子化すると共に、一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基は未反応のまま残留させた構造体を表す。
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応については解明できていないが、単一の反応ではなく、以下に示すような複数の反応が競争的に生じて前記化合物同士が連結する反応である。
以下に反応様式を示す。
【0032】
反応様式1
【化3】
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基部分が切れて脱離し、もう片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、ジメチレンエーテル結合を形成する反応である。
【0033】
反応様式2
【化4】
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、両方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、エチレン結合を形成する反応である。
【0034】
反応様式3
【化5】
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、もう片方の芳香環に結合してメチレン結合を形成する反応である。
【0035】
少なくともこれらの反応が組み合わされて複雑な結合様式を取りながら、3次元の網目状に重合し巨大分子化する。
【0036】
一般的に(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は水酸基の保護基として知られているが、本発明の硬化膜においては、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残存しており、脱保護反応は起こっていないと考えている。即ち、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が加水分解してメチロール基に変化していないことを示す。
更に、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は低極性であり、未反応として残留した(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は、電気特性や画像品質に悪影響を及ぼさない。更に、2つのトリフェニルアミン構造を非共役で連結させることで、酸化電位を上げ、高い安定性を有することができる。
【0037】
また、重合反応は、歪みの大きな膜を形成しやすいが、比較的大きな[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残留することで、歪みを和らげる効果があり、また、歪みによって生じる分子空間を埋める効果が期待でき、ガス透過性の小さい、脆さを抑えた強靱な膜の形成が可能になる。
【0038】
分子中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の反応割合や残留割合は、電荷輸送性化合物の構造や狙いの膜物性調整のために任意に変化させることが可能であるが、あまりに残留が少なくなると歪みの大きな脆い膜となってしまい長寿命感光体には適さなくなる。また、反応割合を上げるためには高温とする必要があり、その熱の影響による感光劣化の問題もあり、感度低下や残留電位上昇を伴うなどの弊害が生じる。また、残留が多くなりすぎると架橋密度の低下を示しており、場合によっては有機溶剤に溶けてしまう様な架橋不良状態になり、3次元架橋膜に由来する強靱な機械的特性を示さなくなってしまう。従って、機械的特性と静電的特性の両方を満足する硬化条件を選択することが好ましい。
【0039】
次に、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物について説明する。
電荷輸送性化合物としては従来から多くの材料が知られている。これら材料のほとんどには芳香環が存在している。例えばトリアリールアミン構造やアミノビフェニル構造やベンジジン構造やアミノスチルベン構造やナフタレンテトラカルボン酸ジイミド構造やベンズヒドラジン構造等においてはいずれも芳香環が存在している。また、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物を2種以上混合して同様に形成させることもできる。
【0040】
特に、前記一般式(1)で表される化合物は前記の特徴を持ち、好ましく使用することができ、中でも前記一般式(2)で表される化合物は架橋反応が速くより好ましい。
【0041】
前記一般式(1)において、式中のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数6〜18の芳香族炭化水素の2価基を表す。ここで炭素数6〜18の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン等を挙げることができる。また、これらに置換しても良いアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐状脂肪族アルキル基等を挙げることができる。
【0042】
前記一般式(1)において、式中のX1は、炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。ここで、炭素数が1から4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状及び分岐状アルキレン基を挙げることができ、炭素数が2から6のアルキリデン基としては、1,1−エチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2-プロピリデン基、1,1−ブチリデン基、2,2−ブチリデン基、3,3−ペンタニリデン、3,3−ヘキサニリデン等を挙げることができる。フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基としては、以下の構造の物が挙げられる。
【0043】
【化6】
【0044】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。また、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物は前記一般式(1)で表される。
【0045】
<3次元架橋膜>
前記3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物に硬化触媒を添加し、加熱することで重合反応させて得られる。
【0046】
電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の具体例を以下に示すが、本発明は何らこれら例示の化合物に限定されるものではない。
【0047】
【表1−1】
【0048】
【表1−2】
【0049】
【表1−3】
【0050】
【表1−4】
【0051】
上記、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物は新規化合物であり、例えば下記の方法によって製造することができる。
【0052】
第一の方法は、電荷輸送性化合物の芳香環の4箇所をホルミル化し、次いでホルミル基を還元してメチロール化し、次いで3,4−ジヒドロ−2H−ピランをメチロール基と反応させて[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を電荷輸送性化合物に付ける方法である。
【0053】
例えば、以下の手順でアルデヒド化合物を合成し、得られたアルデヒド化合物と水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤により反応させてメチロール化合物を合成し、得られたメチロール化合物とジヒドロ−2H−ピランとを反応させて、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する電荷輸送性化合物を得ることができる。具体的には以下の製造方法により容易に合成することができる。
【0054】
また、第二の方法は、芳香環にハロゲンとメチロール基を有する化合物を原料とし、そのメチロール基を3,4−ジヒドロ−2H−ピランと酸触媒下で反応させてハロゲンと[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物を合成し、これを用いてアミン化合物とカップリング反応させて電荷輸送性化合物を合成する方法である。
【0055】
アミンの級数や個数によって、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を一度に多数導入することが可能である。ハロゲンがヨード体の場合は、アミン化合物と[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有するハロゲン化合物をウルマン反応によりカップリングすることができる。また、クロロ体、ブロモ体の場合はパラジウム触媒を用いた鈴木−宮浦反応等によりカップリングすることができる。
【0056】
<アルデヒド化合物の合成>
下記反応式に示すように電荷輸送性化合物を原料とし、これを従来知られている方法(例えばビルスマイヤー反応)を用いてホルミル化し、アルデヒド化合物を合成することができる。特許第3943522号記載のホルミル化等が挙げられる。
【0057】
【化7】
【0058】
すなわち、上記の具体的なホルミル化の方法としては、塩化亜鉛/オキシ塩化リン/ジメチルホルムアルデヒドを用いた方法が有効であるが、本発明の中間体であるアルデヒド化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の合成例に示す。
【0059】
<メチロール化合物の合成>
下記反応式に示すようにアルデヒド化合物を製造中間体とし、これを従来知られている還元方法を用いてメチロール化合物を合成することができる。
【0060】
【化8】
【0061】
すなわち、上記の具体的な還元方法としては、水素化ホウ素ナトリムを用いた方法が有効であるが、本発明のメチロール化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の実施例に示す。
【0062】
<電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物の合成[1]>
下記反応式に示すようにメチロール化合物を製造中間体とし、これに3,4−ジヒドロ−2H−ピランを触媒下で付加反応させることにより、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を合成することができる。
【0063】
【化9】
【0064】
すなわち、上記の具体的な合成方法としては、ジヒドロ−2H−ピランを用いた方法が有効であるが、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の実施例に示す。
【0065】
<[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物の合成>
【化10】
式中、Xはハロゲンを示す。
【0066】
<電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物の合成[2]>
下記反応式に示すようにアミン化合物とテトラヒドロピラニル基を有するハロゲン化合物を製造中間体とし、これを従来知られている合成方法を用いて電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を合成することができる
【0067】
【化11】
【0068】
すなわち、上記の具体的な合成方法としては、ウルマン反応等を用いた方法が有効であるが、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の合成例に示す。
【0069】
本発明では、電気特性に悪影響がない[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基からなる硬化により、優れた電荷輸送性を有し、架橋密度の極めて高い膜を形成することができる。すなわち、摩耗等の機械的耐久性や耐熱性の要求にも対応でき、しかもこれと両立して良好な電荷輸送特性を発揮することが可能である。このような優れた性質により、有機電子写真感光体、有機EL、有機TFT、有機太陽電池等各種有機半導体デバイス用の有機機能材料として極めて有用である。
[合成例]
【0070】
以下、合成例及び評価例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
[合成例1(ハロゲン中間体の合成)]
【化12】
【0072】
4−ブロモベンジルアルコール:50.43g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:45.35g、テトラヒドロフラン:150mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.512gを投下。室温下にて、2時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量72.50g、無色オイル状物)。
図1に、合成例1で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0073】
[合成例2(ハロゲン中間体の合成)]
【化13】
【0074】
3−ブロモベンジルアルコール:25.21g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:22.50g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.259gを投下。室温下にて、1時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量36.84g、無色オイル状物)。
図2に、合成例2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0075】
[合成例3(ハロゲン中間体の合成)]
【化14】
【0076】
2−(4−ブロモベンジル)エチルアルコール:25.05g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:20.95g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.215gを投下。室温下にて、3時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量35.40g、無色オイル状物)。
図3に、合成例3で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0077】
[合成例4(ハロゲン中間体の合成)]
【化15】
【0078】
4−ブロモフェノール:17.3g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:16.83g、テトラヒドロフラン:100mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.172gを投下。室温下にて、2時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量27.30g、無色オイル状物)。
図4に、合成例4で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0079】
[合成例5(例示化合物No.1の合成)]
【化16】
【0080】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン:2.99g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色アモルファス状物)。
図5に、合成例5で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0081】
[合成例6(例示化合物No.8の合成)]
【化17】
【0082】
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル:3.0g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。
図6に、合成例6で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0083】
[合成例7(例示化合物No.12の合成)]
【化18】
【0084】
4,4’−エチレンジアニリン:3.18g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。
図7に、合成例7で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0085】
[合成例8(例示化合物No.16の合成)]
【化19】
【0086】
α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン:10.335g、合成例1化合物:39.05g、酢酸パラジウム:0.673g、ターシャルブトキシナトリウム:27.677g、o−キシレン:200mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:2.43gを滴下。80℃にて1時間、還流にて2時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量23.5g、薄黄色アモルファス状物)。
図8に、合成例8で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0087】
[合成例9(例示化合物No.19の合成)]
【化20】
【0088】
1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキセン:9.323g、合成例1化合物:45.55g、酢酸パラジウム:0.785g、ターシャルブトキシナトリウム:32.289g、o−キシレン:300mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:2.43gを滴下。80℃にて1時間、還流にて2時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量11.42g、黄色アモルファス状物)。
図9に、合成例9で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0089】
[合成例10(比較例化合物Aの合成)]
【化21】
【0090】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン:0.991g、合成例3化合物:7.41g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:20mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量4.12g、薄黄色アモルファス状物)。
図10に、合成例10で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0091】
[合成例11(比較例化合物Bの合成)]
【化22】
【0092】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン:0.991g、合成例4化合物:6.603g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:20mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量3.52g、薄黄色粉末)。
図11に、合成例11で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0093】
[合成例12(比較例化合物Cの合成)]
【化23】
【0094】
中間体アルデヒド化合物:12.30g、エタノール:150mlを四つ口フラスコに入れる。室温下にて撹拌し、水素化ホウ素ナトリウム:3.63gを投下。そのまま4時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行った。濾過、洗浄、濃縮により、アモルファス状物質が得られた。n−ヘキサンにて分散し、濾過、洗浄、乾燥にて取り出し、目的物を得た(収量12.0g、薄黄白色アモルファス)。
図12に、合成例12で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0095】
[合成例13(比較例化合物Dの合成)]
【化24】
【0096】
中間体メチロール化合物:1.274g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:1.346g、テトラヒドロフラン:20mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:14mgを投下。室温下にて、4時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、黄色オイル状物質が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量1.48g、黄色オイル状物)。
図13に、合成例13で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0097】
[合成例14(比較例化合物Eの合成)]
【化25】
【0098】
4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル:1.30g、合成例1化合物:6.508g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:50mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量1.95g、薄黄色アモルファス状物)。
図14に、合成例14で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0099】
次に、前記3次元架橋膜の形成方法について更に詳細説明する。
前記3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物と硬化触媒を含有する塗工液を必要に応じて溶媒等で希釈調整し、該塗工液を感光体表面に塗工した後、加熱乾燥を行い、重合させることで形成することができる。また、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物を2種以上混合して同様に形成させることもできる。
更に、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物と3つ有する化合物を混合して同様に形成させることもできる。しかしながら、4つ有する化合物の混合比率が少なすぎると、耐摩耗性が劣化する問題が生じてくる。4つ有する化合物の混合比率は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0100】
加熱温度としては80℃〜180℃の範囲が好ましく、さらに100℃〜160℃の範囲がより好ましい。触媒の種類や添加量によっても反応速度が変わるために処方条件によって任意に選択すれば良い。しかしながら、加熱温度が高いほど反応は速くなるが、架橋密度が上がりすぎると電荷輸送性の低下を引き起こして感光体の明部電位が上昇したり、感度低下したりという問題が生じてくる。また、感光体の他の層構成材料への加熱の影響が大きくなり、そこでも感光体特性を劣化させやすくなる。加熱温度が低すぎると反応速度が遅くなると共に長時間かけても十分な架橋密度まで到達できなくなる問題が生じる。
【0101】
前記硬化触媒としては、酸性化合物が好ましく、更に好ましくは有機スルホン酸や有機スルホン酸誘導体である。例えば、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、有機スルホン酸塩等も挙げられ、更に、一定以上の温度をかけることで酸性度が発現する所謂熱潜在性化合物も挙げられる。例えば、キングインダストリー社製のNACURE2500、NACURE5225、NACURE5543、NACURE5925等のアミンによりブロックさせた熱潜在性プロトン酸触媒や、三進化学社製のSI−60、旭電化社製のアデカオプトマーSP−300等が挙げられる。
【0102】
これらの触媒は、塗工液の固形分濃度として0.02〜5質量%程度添加される。パラトルエンスルホン酸等の酸単独の場合は0.02〜0.4質量%程度で十分であり、多すぎる場合は塗工液の酸性度が上がり、塗工設備等の腐蝕を引き起こしたりするので好ましくない。逆に上記熱潜在性化合物の場合は、塗工液段階での腐蝕の問題は発生せず、添加量を上げることが可能であるが、ブロック剤としてのアミン化合物が残留すると残留電位等の感光体特性に悪影響するためあまり多量に添加するのは好ましくない。酸単独に比べると酸の含有量が少ないため触媒添加量としては0.2〜2%質量が適量である。
【0103】
以上のように、触媒の種類と添加量を加味しながら加熱乾燥温度と時間を任意に選択することで種々の架橋密度を持った本発明の3次元架橋膜の形成が可能になる。
【0104】
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール 1−モノメチルエーテル 2−アセテートなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする厚みにより変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
【0105】
更に、前記塗工液には、必要に応じてレベリング剤や酸化防止剤などの添加剤が含有できる。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、オリゴマー等が使用され、その使用量は全固形量に対して1質量%以下が好ましい。また、酸化防止剤も有効に使用することができる。例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類等の従来公知の材料が使用でき、繰り返し使用に対する静電特性の安定化に有効である。添加量としては、全固形量に対して1質量%以下が好ましい。
【0106】
更に、前記塗工液には、更なる耐摩耗性を向上させる目的で、フィラーを添加することができる。上記フィラーには、有機性フィラー材料と無機性フィラー材料がある。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機材料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。また、これらのフィラーの中でも高い絶縁性を有し、熱安定性が高い上に、耐摩耗性が高い六方細密構造であるα型アルミナは、耐摩耗性の向上の点から特に有用である。
【0107】
さらに、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理することが可能であり、そうすることがフィラーの分散性が向上するので好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
【0108】
例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理剤の量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が好ましく、5〜20wt%がより好ましい。表面処理剤の量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。
【0109】
また、フィラーの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こし、0.5μm超の場合には、フィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。
また、フィラーの含有量としては、5〜50wt%が好ましく、より好ましくは10〜40wt%である。5wt%未満であると耐摩耗性はあるものの十分ではなく、50wt%を越えると、透明性が損なわれる。
【0110】
前記塗工液を塗布後、熱乾燥工程により、硬化を行う。硬化反応性の目安として有機溶剤による溶解性試験を実施した。溶解性試験とは、テトラヒドロフラン等の溶解性の高い有機溶媒に綿棒を浸し、硬化物表面を擦り、その表面を観察することを意味する。硬化反応していない場合は、塗膜は溶解する。また、硬化反応が不十分である場合は膨潤し、剥がれる。硬化反応が十分である場合は、不溶となる。
【0111】
次に、本発明の電子写真感光体の層構成について、図15〜図19に基づいて説明する。尚、図15〜図19は、電子写真感光体の断面図である。
【0112】
図15は、最も基本的な積層感光体の構成例であり、導電性支持体(1)上に電荷発生層(2)、電荷輸送層(3)を順次積層したものである。負帯電で使用する場合は電荷輸送層にホール輸送性電荷輸送物質が使用され、正帯電で使用される場合は電荷輸送層に電子輸送性電荷輸送物質が使用される。
これらの場合、最表面層は電荷輸送層(3)であり、従って、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この電荷輸送層に適用される。
【0113】
図16は、基本構成の積層感光体に下引き層(4)を形成した構成であり、最も実用化されている構成である。この場合も、最表面層は電荷輸送層(3)であり、従って、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この電荷輸送層に適用される。
【0114】
図17は、さらに保護層として架橋型電荷輸送層(5)を最表面に設けた構成であり、従って、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この架橋型電荷輸送層に適用される。
ここで下引き層は必須ではないが、電荷リークの防止等に重要な機能を果たしており、通常は使用される。
この感光体構成の場合、電荷発生層から感光体表面までの電荷移動を電荷輸送層(3)と架橋型電荷輸送層(5)の二層で分担しており、主機能を分離することができる。例えば、電荷輸送性に優れる電荷輸送層と機械的強度に優れる架橋型電荷輸送層を組み合わせることで電荷輸送性にも優れ機械的強度にも優れた感光体の提供が可能になる。
【0115】
本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、架橋膜の中では電荷輸送性に優れた膜であり、電荷輸送層(3)としての適用性も高いが、従来の分子分散型電荷輸送層に比べると電荷輸送性は劣る。従って、比較的薄膜で使用することが好ましく、この様な構成で使用するときが最も特性に優れた感光体を提供できる。
架橋型電荷輸送層に本発明の3次元架橋膜を適用する場合の好ましい膜厚は、前述のように1〜10μmであり、より好ましくは、3〜8μmである。薄すぎると十分な高寿命化が図れず、厚すぎると感度低下や明部電位が上昇し易くなり安定した画像出力がしにくくなる。
【0116】
図18は、導電性支持体(1)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層(6)が設けられている。感光層(6)に本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜を使用することができる。この場合には、架橋膜中に電荷発生物質を含有させることが必要であり、前記塗工液中に電荷発生物質を混合分散した塗工液を作製して、塗工後、加熱乾燥により重合反応させて3次元架橋膜を作製する。
【0117】
図19は、単層感光層(6)上に保護層(7)を設けた構成であり、この保護層(7)に本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜が使用される。
【0118】
これら各層の構成要素は、本発明の3次元架橋膜を適用しない箇所において、全て従来公知のものを使用することができる。
【0119】
以下、その他の構成要素について詳細に説明する。
<導電性支持体>
前記導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0120】
その他、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工した導電性層を設けたものについても、本発明の支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
【0121】
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の支持体として良好に用いることができる。
【0122】
<下引き層>
本発明の電子写真感光体においては、支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。該下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。該樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等を図るため、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を添加することができる。
【0123】
前記下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。
前記下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0〜5μmが好ましい。
また、下引き層は上記種類の組合せで2層以上の積層としても良い。
【0124】
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含んでおり、バインダー樹脂更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。 前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0125】
無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン等が挙げられる。アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0126】
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系 顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0127】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0128】
また、電荷発生層のバインダー樹脂としては、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、(1)アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂などの高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料などを用いることができる。
【0129】
前記(1)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
【0130】
また、前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0131】
また、前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。 前記低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0132】
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0133】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
前記キャスティング法としては、前記無機系もしくは有機系電荷発生物質、必要に応じてバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0134】
<電荷輸送層>
前記電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ、電荷移動性がよいことが要求される。
【0135】
前記電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷輸送物質としては、正孔輸送物質、電子輸送物質、高分子電荷輸送物質、などが挙げられる。
【0136】
前記電子輸送物質(電子受容性物質)としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0137】
前記正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プ パン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
前記高分子電荷輸送物質としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
【0139】
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体としては、例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
【0140】
(c)ポリシリレン重合体としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
【0141】
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体としては、例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
【0142】
(e)その他の重合体としては、例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
【0143】
また、前記高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも、例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂、などが挙げられる。前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報、などに記載の化合物が挙げられる。
【0144】
また、電子供与性基を有する重合体としては、上記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、更には、例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることもできる。
【0145】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
【0146】
前記電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。前記電荷輸送層には、更に必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加することもできる。
【0147】
前記電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の形成は同様な塗工法が可能である。 また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0148】
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
【0149】
前記レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
【0150】
前記電荷輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0151】
本発明の電子写真感光体においては、電荷輸送層と架橋型電荷輸送層の間に、架橋型電荷輸送層への電荷輸送層成分の混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。
このため、前記中間層としては、架橋型電荷輸送層塗工液に対し不溶性又は難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成方法としては、前記塗工法が採用される。なお、前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜2μmが好適である。
【0152】
<各層への酸化防止剤の添加について>
本発明の電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、前記架橋型電荷輸送層、前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記下引き層、前記中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0153】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0154】
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3 −メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
【0155】
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
【0156】
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
【0157】
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
【0158】
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01〜10質量%が好ましい。
【0159】
<画像形成装置>
次に、図面を用いて本発明の電子写真方法、並びに、画像形成装置を詳しく説明する。
図20は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
【0160】
感光体(10)は図20中の矢印の方向に回転し、感光体(10)の周りには、帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、除電部材(18)等が配置される。クリーニング部材(17)や除電部材(18)が省略されることもある。
【0161】
画像形成装置の動作は基本的に以下のようになる。帯電部材(11)により、感光体(10)表面に対してほぼ均一に帯電が施される。続いて、画像露光部材(12)により、入力信号に対応した画像光書き込みが行われ、静電潜像が形成される。次に、現像部材(13)により、この静電潜像に現像が行われ、感光体表面にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、搬送ローラ(14)により転写部位に送られた転写紙(15)に、転写部材により、トナー像が転写される。このトナー像は、図示しない定着装置により転写紙上に定着される。転写紙に転写されなかった一部のトナーは、クリーニング部材(17)によりクリーニングされる。ついで、感光体上に残存する電荷は、除電部材(18)により除電が行われ、次のサイクルに移行する。
【0162】
図20に示すように、感光体(10)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電部材(11)、転写部材(16)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0163】
一方、画像露光部材(12)、除電部材(18)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0164】
光源等は、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体(10)に光が照射される。但し、除電工程における感光体(10)への露光は、感光体(10)に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。
したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印加することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0165】
電子写真感光体(10)に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0166】
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0167】
現像部材(13)により、感光体(10)上に現像されたトナーは、転写紙(15)に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体(10)上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング部材(17)により、感光体(10)から除去される。
このクリーニング部材は、クリーニングブレードあるいはクリーニングブラシ等公知のものが用いられる。また、両者が併用されることもある。
【0168】
本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。したがって、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0169】
図21は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図21において、感光体(10C(シアン)),(10M(マゼンタ)),(10Y(イエロー)),(10K(ブラック))は、ドラム状の感光体(10)であり、これらの感光体(10C,10M,10Y,10K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(11C,11M,11Y,11K)、現像部材(13C,13M,13Y,13K)、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)が配置されている。
【0170】
この帯電部材(11C,11M,11Y,11K)と、現像部材(13C,13M,13Y,13K)との間の感光体(10)の外側より、図示しない露光部材からのレーザー光(12C,12M,12Y,12K)が照射され、感光体(10C,10M,10Y,10K)に静電潜像が形成されるようになっている。
【0171】
そして、このような感光体(10C,10M,10Y,10K)を中心とした4つの画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(19)に沿って並置されている。
【0172】
転写搬送ベルト(19)は、各画像形成ユニット(20C、20M、20Y、20K)の現像部材(13C,13M,13Y,13K)と、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)との間で感光体(10C,10M,10Y,10K)に当接しており、転写搬送ベルト(19)の感光体(10)側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写部材(16C,16M,16Y,16K)が配置されている。各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0173】
図21に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)において、感光体(10C,10M,10Y,10K)が、感光体10と連れ周り方向に回転する帯電部材(11C,11M,11Y,11K)により帯電され、次に、感光体(10)の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(12C,12M,12Y,12K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0174】
次に現像部材(13C,13M,13Y,13K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(13C,13M,13Y,13K)は、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの感光体(10C,10M,10Y,10K)上で作られた各色のトナー像は転写ベルト(19)上で重ねられる。
【0175】
転写紙(15)は給紙コロ(21)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(22)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写部材(23)に送られる。転写ベルト(19)上に保持されたトナー像は転写部材(23)に印加された転写バイアスと転写ベルト(19)との電位差から形成される電界により、転写紙(15)上に転写される。転写紙上に転写されたトナー像は、搬送されて、定着部材(24)により転写紙上にトナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体(10C,10M,10Y,10K)上に残った残留トナーは、それぞれのユニットに設けられたクリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)で回収される。
【0176】
図21に示したような、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。
中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
【0177】
なお、図21の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(20C,20M,20Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
【0178】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
【0179】
前記プロセスカートリッジとは、図22に示すように、感光体(10)を内蔵し、他に帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、及び除電部材を含んだ1つの装置(部品)である。
【0180】
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。
しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
【0181】
それに対し、本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0182】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて質量部を表す。
【0183】
(実施例1)
直径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層塗工液、下記組成の電荷発生層塗工液、及び下記組成の電荷輸送層塗工液を順次、塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの下引き層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み25μmの電荷輸送層を形成した。
得られた電荷輸送層上に、下記組成の架橋型電荷輸送層塗工液をスプレー塗工し、135℃で30分間乾燥を行い、厚み5.0μmの架橋型電荷輸送層を設けた。以上により、実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0184】
〔下引き層塗工液の組成〕
・アルキッド樹脂
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6部
・メラミン樹脂
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4部
・酸化チタン
(CREL、石原産業株式会社製) ・・・40部
・メチルエチルケトン ・・・50部
【0185】
〔電荷発生層塗工液の組成〕
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) ・・・0.5部
・シクロヘキサノン ・・・200部
・メチルエチルケトン ・・・ 80部
・下記構造式で表されるビスアゾ顔料 ・・・2.4部
【0186】
【化26】
【0187】
〔電荷輸送層塗工液の組成〕
・ビスフェノールZポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製) ・・・ 10部
・テトラヒドロフラン ・・・100部
・1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製) ・・・0.2部
・下記構造式で表される低分子電荷輸送物質 ・・・ 5部
【0188】
【化27】
【0189】
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
例示化合物No.1 ・・・ 10部
・パラトルエンスルホン酸・一水和物(酸触媒) ・・・0.01部
・テトラヒドロフラン(特級) ・・・ 90部
【0190】
(実施例2)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.8とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0191】
(実施例3)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.12とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0192】
(実施例4)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.16とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0193】
(実施例5)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.19とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0194】
(実施例6)
実施例1において架橋型電荷輸送層塗工液を以下のように変えて実施した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
例示化合物No.1 ・・・ 3部
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
下記構造で表される化合物 ・・・ 7部
【0195】
【化28】
・パラトルエンスルホン酸・一水和物(酸触媒) ・・・0.01部
・テトラヒドロフラン(特級) ・・・ 90部
【0196】
(比較例1)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Aとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0197】
【化29】
【0198】
(比較例2)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Bとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0199】
【化30】
【0200】
(比較例3)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Cとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0201】
【化31】
(比較例4)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Dとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化32】
【0202】
(比較例5)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Eとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0203】
【化33】
【0204】
(比較例6)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Fとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0205】
【化34】
【0206】
(比較例7)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Gとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0207】
【化35】
【0208】
(比較例8)
実施例1において架橋型電荷輸送層塗工液を以下のように変えて実施した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0209】
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
比較例7で用いた化合物G ・・・5.5部
・レゾール型フェノール樹脂PL−2211
(群栄化学社製) ・・・ 7部
・酸触媒 Nacure2500
(楠本化成社製) ・・・0.2部
・イソプロパノール ・・・ 15部
・メチルエチルケトン ・・・ 5部
【0210】
(比較例9)
実施例1において架橋保護層を設けない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0211】
<架橋型電荷輸送層の溶解性試験&表面平滑性評価>
架橋型電荷輸送層の架橋反応性を溶解性試験にて行った。
溶解性試験は、アルミ支持体上に架橋型電荷輸送層塗工液を実施例1〜6及び比較例1〜8と同様に直接塗工し、熱乾燥した膜を、綿棒にテトラヒドロフランを浸し、硬化物表面を擦り、その表面を観察した。そして、綿棒で擦った箇所について、変化がなく痕跡が全く見られない場合を「○」、膜は残っているが膨潤して痕跡が残る場合を「△」、膜が溶けて溶解する場合を「×」と判定した。
また、架橋型電荷輸送層の表面平滑性を表面粗さ形状測定機(東京精密社製サーフコム1400D)にて、JIS−‘82規格による十点平均粗さ(Rz)値を求め、1μm以下を「良好」、1μmを超える場合を「不良」と判定した。
結果を表2に示す。
【0212】
【表2】
【0213】
本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、前記一般式(1)で表される化合物からなる実施例1〜5の硬化膜は、良好な反応性を有し、不溶となった。また、前記一般式(1)で表される化合物と電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ有する化合物との混合からなる実施例6の硬化膜も同様に不溶となった。
また、一般式(1)で表される化合物ではないが、本発明に使用する化合物と同様に、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物からなる比較例4及び5の硬化膜も良好な反応性を有し、不溶となった。
【0214】
しかしながら、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]エチル基を4つ有する化合物からなる比較例1の膜は、反応性がなく、溶解した。更に、電荷輸送性化合物の芳香環に(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基を4つ有する化合物からなる比較例2の硬化膜は、反応性を有するが、十分な架橋膜には至っていない。
【0215】
電荷輸送性化合物の芳香環にメチロール基を4つ有する化合物からなる比較例3の硬化膜は、反応性が良好であり不溶膜となった。比較例6及び比較例7の硬化膜は、比較例1と同様に溶解した。比較例8の硬化膜は、不溶となった。
溶解した比較例1、比較例6及び比較例7の硬化膜は、表面が液体状であり表面平滑性は評価できなかった。また、膨潤した比較例2の硬化膜は、表面性が悪かった。不溶であったその他の実施例1〜6及び比較例3〜5、8の硬化膜は良好な表面平滑性を有した。
【0216】
<画像出力評価>
実施例1〜6、比較例3〜5、及び比較例8、9で作製した各電子写真感光体の機械的特性、電気的特性、環境特性を評価した。リコー製デジタルフルカラー複合機imagio Neo 455のプロセスカートリッジに得られた電子写真感光体を着装し、暗部電位700(−V)に設定した後に、連続してトータル10万枚の印刷を行った。また、画像品質は、600dpi 2×2の画像チャートを出力し、画像濃度計(X-Rite939:SDG社製)により測定した。機械的特性は、初期及び10万枚印刷後での膜厚差より摩耗量の評価を行った。電気的特性は、初期、10万枚印刷後及び10万枚印刷後の下記環境特性評価の高温高湿条件下での画像露光光源光量が約0.4μJ/cm2における明部電位を測定した。環境特性は、10万枚印刷後に上記画像出力装置を30℃90RH%の高温高湿室に入れ、画像品質を下記指標に従って、判定した。
【0217】
[判定基準]
◎:濃度>0.3 ○:濃度0.3〜0.2
△:濃度0.2〜0.1 ×:濃度1.0〜0
尚、前記溶解性試験にて溶解または膨潤した各電子写真感光体は、強固な3次元架橋を有していないことが明瞭である。その為、長期にわたって満足する耐摩耗性を得ることは困難であり、評価外とした。結果を表3に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
表3の結果から、実施例1〜5の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、耐摩耗性が高く、暗部電位の低下が少ない優れた電気的特性を有し、環境特性にも強く、高寿命な電子写真感光体であることがわかる。
実施例6の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物と電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ有するトリフェニルアミン構造である化合物との混合から3次元架橋表面層を有する電子写真感光体も実施例1〜5の電子写真感光体と同様の特性であった。
【0220】
架橋型電荷輸送層の無い比較例9と比べるとその耐摩耗性の高さは際だっており、摩耗による電荷輸送層の薄膜化で生じる電荷リークによる黒斑点等の異常画像を経時で生じることが無く、高画質を維持することができている。また、電荷輸送性化合物の芳香環にメチロール基を有する化合物の架橋膜やフェノール樹脂を用いた架橋膜のような従来の熱架橋膜を用いた比較例3、比較例8と比べると環境特性に優れており、高画質を維持できていることがわかる。
【0221】
比較例4及び5の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、耐摩耗性は高く、明部電位は低く、電荷輸送性は優れているが、暗部電位の低下が大きい。
【0222】
また、一般式(1)及び一般式(2)で表される、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物を用いた実施例1〜5は、各特性において優れた特性をバランス良く有していることがわかる。電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ有するトリフェニルアミン構造である化合物との混合から3次元架橋表面層が形成されている実施例6の電子写真感光体も、実施例1〜5の感光体と同様に、各特性において優れた特性をバランス良く有していた。
【0223】
<ドット画像評価>
実施例1〜6及び比較例4、5の各電子写真感光体において、上記通紙試験の初期の画像チャート(600dpi 2×2)紙上のドット拡大写真を図23〜図30示す。
実施例1におけるドット拡大写真を図23、実施例2におけるドット拡大写真を図24、実施例3におけるドット拡大写真を図25、実施例4におけるドット拡大写真を図26、実施例5におけるドット拡大写真を図27、実施例6におけるドット拡大写真を図28、比較例4におけるドット拡大写真を図29、比較例5におけるドット拡大写真を図30に示す。
【0224】
実施例1〜6の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、高いドット解像力を有していた。
一方、比較例4及び5の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、ドットが散っており、低いドット解像力であった。これは、表面層の抵抗が低く、書込露光ドット径を忠実に再現できていないことを示している。2つのトリフェニルアミン構造が共役で連結している電荷輸送性化合物は、酸化電位が小さく、安定性に劣ることを示唆している。
【0225】
以上より、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体を用いた画像形成方法及び画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジは、高画質な画像出力を長期に渡って出力し続けることが可能であり、環境変動が発生する環境下においても安定して高画質な画像を出力し続けることができるものである。
【符号の説明】
【0226】
1:導電性支持体
2:電荷発生層
3:電荷輸送層
4:下引き層
5:架橋型電荷輸送層
6:電荷発生物質と電荷輸送物質を両方含有する単層感光層
7:単層感光層用保護層
10、10Y、10M、10C、10K:感光体
11、11Y、11M、11C、11K:帯電部材
12、12Y、12M、12C、13K:画像露光部材
13、13Y、13M、13C、13K:現像部材
14:搬送ローラ
15:転写紙
16、16Y、16M、16C、16K:転写部材
17、17Y、17M、17C、17K:クリーニング部材
18:除電部材
20Y、20M、20C、20K:画像形成要素
21:給紙コロ
22:レジストローラ
23:転写部材(二次転写部材)
24:定着部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0227】
【特許文献1】特開昭56−048637号公報
【特許文献2】特開昭64−001728号公報
【特許文献3】特開平04−281461号公報
【特許文献4】特許第3262488号公報
【特許文献5】特許第3194392号公報
【特許文献6】特開2000−66425号公報
【特許文献7】特開平06−118681号公報
【特許文献8】特開平09−124943号公報
【特許文献9】特開平09−190004号公報
【特許文献10】特開2000−171990号公報
【特許文献11】特開2003−186223号公報
【特許文献12】特開2007−293197号公報
【特許文献13】特開2008−299327号公報
【特許文献14】特許第4262061号公報
【特許文献15】特開2006−251771号公報
【特許文献16】特開2009−229549号公報
【特許文献17】特開2006−084711号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰返し使用時の耐摩耗性が極めて高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体(以下、「感光体」、「静電潜像担持体」、「像担持体」と称することもある)、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機感光体(OPC:Organic Photo Conductor)は良好な性能を有し、様々な利点から、無機感光体に代わって複写機、ファクシミリ、レーザープリンター及びこれらの複合機に多く用いられている。その理由としては、例えば、(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。
【0003】
また最近、画像形成装置の小型化を図るため、感光体の小径化が進み、更に、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わって、感光体の高耐久化が切望されるようになってきている。この観点からみると、有機感光体は、電荷輸送層が低分子電荷輸送物質と不活性高分子を主成分としているため、一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的負荷により、摩耗が発生しやすいという欠点がある。
【0004】
加えて、高画質化の要求から、トナー粒子の小粒径化が進められ、これに伴ってクリーニング性の向上を図るため、クリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇とが余儀なくされる。このことも、感光体の摩耗を促進する要因の一つとなっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また、摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。
【0005】
そこで、有機感光体の耐摩耗性の改良を図ることを目的として、種々の改良が行われてきた。例えば、電荷輸送層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1参照)、高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2参照)、電荷輸送層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3参照)、多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させたもの(特許文献4参照)、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けたもの(特許文献5参照)、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有させたもの(特許文献6参照)、コロイダルシリカ含有硬化性シリコーン樹脂を用いたもの(特許文献7参照)、有機珪素変性正孔輸送性化合物を硬化性有機珪素系高分子中に結合させた樹脂層を設けたもの(特許文献8、9参照)、電荷輸送性付与基を有する硬化性シロキサン樹脂を三次元網目構造状に硬化させたもの(特許文献10参照)、水酸基を少なくとも1つ有する電荷輸送性物質と三次元に架橋された樹脂及び導電性微粒子を含有させたもの(特許文献11参照)、反応性電荷輸送性物質を少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールと芳香族系イソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有させたもの(特許文献12参照)、水酸基を少なくとも1つ有する電荷輸送性物質と三次元に架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂を含有させたもの(特許文献13参照)、水酸基を有する電荷輸送性物質と三次元に架橋されたレゾール型フェノール樹脂を含有させたもの(特許文献14参照)などが挙げられる。
【0006】
更に、硬化膜を形成し得る光機能性有機化合物と、スルホン酸及び/又はその誘導体と、沸点250℃以下のアミンとを含有させたもの(特許文献15参照)、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成され、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度が0.1質量%以上5質量%以下であり、且つ電荷輸送性材料の少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度が90質量%以上のもの(特許文献16参照)などが挙げられる。
【0007】
これら従来技術のように、3次元架橋された表面層は、機械的耐久性に優れており、摩耗による感光体寿命を著しく向上することができる。しかしながら、3次元架橋膜を形成する方法として、特許文献6に記載のものは、紫外線又は電子線によりラジカル重合させた3次元架橋膜であるが、ラジカル重合反応を進行する為に、酸素濃度の制御や紫外線照射装置や電子線照射装置等の大掛かりな製造設備を必要とする。一方、特許文献13〜16は、加熱により3次元架橋膜を形成する事ができ、生産性の点で有利であり、且つ耐摩耗性にも優れる。しかしながら、特許文献12ではウレタン結合による硬化物となり、電荷輸送性が悪く、電気特性の点で実用化には困難である。特許文献13〜16では、水酸基等の高極性基を有する電荷輸送性化合物とメラミン樹脂やフェノール樹脂といった反応性活性を有する樹脂との間で、3次元架橋させた表面層であり、電気特性にも比較的優れている。
【0008】
上記特許文献15に開示された表面層が設けられた電子写真感光体は、スルホン酸及び/又はその誘導体の存在下で光機能性有機化合物を硬化させることによって、硬化反応が十分に進行し、加水分解性基(水酸基など)の残存量が十分に低減するため、良好な硬化膜を安定的に得ることができるものである。しかしながら、硬化膜中の反応性基(加水分解性基など)は完全に消滅することは困難である。即ち、架橋反応が進行すると共に、硬化と共に塗膜の分子運動性が束縛され、どうしても未反応の反応性基は存在してしまう。水酸基等のような高極性基が未反応のまま残留すると、帯電低下しやすくなったり、高温高湿環境下や帯電基による発生する酸化性ガス(NOx)の曝露により、画像濃度低下がしやすくなる欠点を有している。耐摩耗性が極めて高い電子写真感光体を長期にわたって使用した場合、残存する反応性基によって、得られた硬化膜の特性の低下や不安定化が生じやすい。
【0009】
上記特許文献16のものは、電荷輸送性化合物を90%以上という高濃度で用いる事で、電荷輸送性に優れており、良好な電気特性を示す。しかしながら、残留する水酸基による課題は特許文献15と同様である。
そこで、特許文献17のものは、水酸基等をブロックした電荷輸送性化合物を用いて、メラミン樹脂やグアナミン樹脂等の反応性活性を有する樹脂との硬化膜を形成している。高極性基の残留を抑制する事ができるが、ブロックされた水酸基と反応性活性を有する樹脂との相互反応性が不均一となり、機械的強度に優れた3次元架橋膜の形成は困難であった。また、水酸基をブロックした反応性基を4つ有する電荷輸送性化合物を用いることで、機械的強度を高めることが可能である。しかしながら、開示されている2つのトリフェニルアミン構造が共役結合で連結している電荷輸送性化合物は以下のような課題を有している。2つのトリフェニルアミン構造が共役結合で連結することで、π電子雲が広がり、優れた電荷輸送性を有することができる。しかしながら、酸化電位が小さい電荷輸送性化合物となりやすく、長期にわたる使用により、帯電性低下しやすくなったり、画像濃度が低下しやすい。
【0010】
以上のように機械的強度に優れ、電気的特性(帯電性、電荷輸送性、残留電位特性)にも優れ、環境依存性も少なく、且つ耐ガス性にも優れた、真に高寿命で安定した画像出力が可能で、生産性にも優れる高耐久感光体の提供ができていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高画質な画像を長期に安定して出力できる電子写真感光体としては、優れた機械的耐久性(耐摩耗性、対傷性等)、優れた電気特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)、優れた耐ガス性(NOx等)の全てを経時で満足する必要がある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、繰り返し使用に対して、優れた機械的耐久性(耐摩耗性、耐傷性等)、優れた電気特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)を示し、画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意探求を重ねた結果、高い反応性を有する、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、且つ2つのトリアリールアミン構造を非共役で連結させた化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜を感光層の最表面に用いることで、前記課題を解決する事ができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式中、X1は炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,Ar5,Ar6は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
(2)前記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶であることを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般(2)で表されることを特徴する上記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
【化2】
(式中、X2は−CH2−、−CH2CH2−、−C(CH3)2−Ph−C(CH3)2−、−C(CH2)5−、−O−を表わす。R1,R2,R3,R4,R5,R6は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、o,p,q,r,s,tは1〜4の整数を表わす。)
(4)導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(5)電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
(6)前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式により行われることを特徴とする上記(5)に記載の画像形成方法。
(7)電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(8)前記露光手段による電子写真感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式であることを特徴とする上記(7)に記載の画像形成装置。
(9)電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、繰り返し使用に対して、優れた機械的耐久性(耐摩耗性、耐傷性等)、優れた電気特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)を示し、画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】合成例1において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図2】合成例2において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図3】合成例3において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図4】合成例4において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図5】合成例5において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図6】合成例6において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図7】合成例7において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図8】合成例8において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図9】合成例9において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図10】合成例10において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図11】合成例11において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図12】合成例12において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図13】合成例13において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図14】合成例14において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図15】本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略図である。
【図16】本発明の電位写真感光体の層構成の別の一例を示す概略図である。
【図17】本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。
【図18】本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。
【図19】本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。
【図20】本発明の画像形成装置及び電子写真プロセスを説明する概略図である。
【図21】本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明する概略図である。
【図22】本発明のプロセスカートリッジの一例を説明する概略図である。
【図23】実施例1におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図24】実施例2におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図25】実施例3におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図26】実施例4におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図27】実施例5におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図28】実施例6におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図29】比較例4におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【図30】比較例5におけるドット画像評価のドット拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が前記一般式(1)で表されることを特徴とする。
ここで、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が適当な触媒を用いることで有機溶媒等に不溶で架橋密度の高い3次元架橋膜を形成できることを見出したのが本発明の基礎となっている。この反応は、反応前後の赤外吸収スペクトルや重量減少から[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応であることが分かった。
(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)基が水酸基の保護基として使用されることは従来から知られており、例えば前記特許文献17にも広く記載されており、この様な保護基を有する化合物とメラミンの様な反応活性種との反応による硬化物は検討されているが、保護基単独での架橋膜形成の例は無い。
【0017】
また、保護基という考え方からは保護基が外れて反応することを想起させ、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がメチロール基に変化して反応すると考えると、得られた3次元架橋膜はメチロール体の架橋膜と同じになるが、検討の結果、メチロール基を経由することなく反応することがわかり、従って、未反応部には[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がそのまま残る。この様に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が架橋膜構造中に存在することは膜物性にも影響しており、耐ガス性に影響するガス透過性においてメチロール体の架橋硬化物に比べて小さいというメリットがある。
【0018】
この様に電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、且つ、前記一般式(1)は、非共役連結基のX1を有することで適度な分子運動性をも有しており、重合反応による一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を残した3次元架橋膜を形成しやすく、出来上がった3次元架橋膜の硬度特性や弾性特性のバランスが良く、強靱で耐傷性、耐摩耗性の両方に優れた表面保護層の形成が可能になる。
【0019】
上記3次元架橋膜は溶媒に不溶である時にとりわけ優れた機械的特性を示す。電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物はテトラヒドロフランに良く溶解する。この化合物が反応して3次元の網目状に結合を形成するともはやテトラヒドロフラン及びその他の溶媒に溶解しなくなる。
従って、上記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶である事は、感光体の表面が巨大分子化されて一体となった構造になっていることを表し、高い機械的特性を発揮する。
ここで、不溶とはテトラヒドロフランに浸積しても膜が消失しない状態を言う。
更に好ましくは、テトラヒドロフランで濡らした綿棒等で擦っても、その痕跡が残らない状態が好ましい。
この様に溶媒不溶とすることで感光体への異物付着を防止できたり、異物付着を起源とした感光体表面の傷の発生等を防止することができる。
【0020】
また、電荷輸送性化合物のみの硬化物であるから良好な電荷輸送性を示し、それでいて電荷輸送に直接寄与しない[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のような電気的不活性部も適当に内在していることで帯電安定性にも優れており、更に、X1の構造性から分子の酸化電位が比較的大きく、酸化しにくい特性を有しており、オゾンガスやNOxガスのような酸化性ガスの暴露時にも比較的安定であり、耐ガス性にも強い感光体の提供が可能になる。
【0021】
本発明の電子写真感光体における3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物に硬化触媒を添加し加熱することで重合反応させて得られたものであることが好ましい。
硬化触媒を用いて加熱することで重合反応を実用的な速度で進行させることが可能にあり、表面平滑性に優れた最表面層の形成が可能になる。表面平滑性が極端に悪くなるとトナーもクリーニング性が悪くなり、異常画像の原因となって高画質な印刷ができなくなる。したがって適当な硬化触媒を用いて適当な温度で加熱することにより表面平滑性に優れる3次元架橋膜の形成が可能になり、当該3次元架橋膜を感光層の最表面層に備えた電子写真感光体は、より高画質な画像を長期に渡って印刷できるようになる。
【0022】
また、前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物は、前記一般式(2)で表される電荷輸送性化合物であることが好ましい。
前記一般式(2)の化合物は、前記一般式(1)で表される化合物の中で特に優れるもので、お互いの重合反応性が特によい。[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基同士の重合反応については不明な部分も残っているが、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の存在する芳香環が3級アミノ基を有するベンゼン環の場合に最も進行が速く、より架橋密度が高い前記3次元架橋膜(架橋保護層)の形成が可能になる。
【0023】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上の感光層が少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜である事が好ましい。
前記3次元架橋膜の電荷輸送性は、従来の架橋膜に比べて最高レベルの特性を有しているが、通常の分子分散型電荷輸送層に比べるとまだ低い。従って、電荷輸送層は従来型の分子分散型電荷輸送層を用い、その表面の保護層として使用する場合に、最高のパフォーマンスを発揮する。
すなわち比較的厚膜の通常の分子分散型電荷輸送層上に薄膜の架橋型電荷輸送層を形成することで、感度特性を低下させることなく本発明の特徴を有する電子写真感光体の提供が可能になる。その為に架橋型電荷輸送層の膜厚は1〜10μmが好ましい。
【0024】
本発明に係る画像形成方法は、電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、電子写真感光体として前記本発明の電子写真感光体を使用することを特徴とする。
これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる画像形成方法が提供できる。
【0025】
前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式により行われることが好ましい。これにより、上記本発明の画像形成方法において更にPCでの文書及び画像作製出力に効率よく対応できるようになる。
【0026】
本発明に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、電子写真感光体として前記本発明の電子写真感光体を使用することを特徴とする。
これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる画像形成装置が提供できる。
【0027】
前記露光手段における感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式により行われることが好ましい。これにより、上記本発明の画像形成装置において更にPCでの文書及び画像作製出力に効率よく対応できるようになる。
【0028】
本発明に係るプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、電子写真感光体として前記本発明の電子写真感光体を用いることを特徴とする。これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れるプロセスカートリッジの提供が可能になる。
【0029】
以下、本発明の電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成方法、画像形成装置、ならびに画像形成装置用プロセスカートリッジの詳細を説明する。
【0030】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が上記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0031】
ここで言う3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物同士が[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応を起こしてそれぞれ結合し、3次元の網目状に巨大分子化すると共に、一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基は未反応のまま残留させた構造体を表す。
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応については解明できていないが、単一の反応ではなく、以下に示すような複数の反応が競争的に生じて前記化合物同士が連結する反応である。
以下に反応様式を示す。
【0032】
反応様式1
【化3】
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基部分が切れて脱離し、もう片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、ジメチレンエーテル結合を形成する反応である。
【0033】
反応様式2
【化4】
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、両方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、エチレン結合を形成する反応である。
【0034】
反応様式3
【化5】
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、もう片方の芳香環に結合してメチレン結合を形成する反応である。
【0035】
少なくともこれらの反応が組み合わされて複雑な結合様式を取りながら、3次元の網目状に重合し巨大分子化する。
【0036】
一般的に(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は水酸基の保護基として知られているが、本発明の硬化膜においては、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残存しており、脱保護反応は起こっていないと考えている。即ち、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が加水分解してメチロール基に変化していないことを示す。
更に、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は低極性であり、未反応として残留した(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は、電気特性や画像品質に悪影響を及ぼさない。更に、2つのトリフェニルアミン構造を非共役で連結させることで、酸化電位を上げ、高い安定性を有することができる。
【0037】
また、重合反応は、歪みの大きな膜を形成しやすいが、比較的大きな[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残留することで、歪みを和らげる効果があり、また、歪みによって生じる分子空間を埋める効果が期待でき、ガス透過性の小さい、脆さを抑えた強靱な膜の形成が可能になる。
【0038】
分子中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の反応割合や残留割合は、電荷輸送性化合物の構造や狙いの膜物性調整のために任意に変化させることが可能であるが、あまりに残留が少なくなると歪みの大きな脆い膜となってしまい長寿命感光体には適さなくなる。また、反応割合を上げるためには高温とする必要があり、その熱の影響による感光劣化の問題もあり、感度低下や残留電位上昇を伴うなどの弊害が生じる。また、残留が多くなりすぎると架橋密度の低下を示しており、場合によっては有機溶剤に溶けてしまう様な架橋不良状態になり、3次元架橋膜に由来する強靱な機械的特性を示さなくなってしまう。従って、機械的特性と静電的特性の両方を満足する硬化条件を選択することが好ましい。
【0039】
次に、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物について説明する。
電荷輸送性化合物としては従来から多くの材料が知られている。これら材料のほとんどには芳香環が存在している。例えばトリアリールアミン構造やアミノビフェニル構造やベンジジン構造やアミノスチルベン構造やナフタレンテトラカルボン酸ジイミド構造やベンズヒドラジン構造等においてはいずれも芳香環が存在している。また、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物を2種以上混合して同様に形成させることもできる。
【0040】
特に、前記一般式(1)で表される化合物は前記の特徴を持ち、好ましく使用することができ、中でも前記一般式(2)で表される化合物は架橋反応が速くより好ましい。
【0041】
前記一般式(1)において、式中のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数6〜18の芳香族炭化水素の2価基を表す。ここで炭素数6〜18の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン等を挙げることができる。また、これらに置換しても良いアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐状脂肪族アルキル基等を挙げることができる。
【0042】
前記一般式(1)において、式中のX1は、炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。ここで、炭素数が1から4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状及び分岐状アルキレン基を挙げることができ、炭素数が2から6のアルキリデン基としては、1,1−エチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2-プロピリデン基、1,1−ブチリデン基、2,2−ブチリデン基、3,3−ペンタニリデン、3,3−ヘキサニリデン等を挙げることができる。フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基としては、以下の構造の物が挙げられる。
【0043】
【化6】
【0044】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。また、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物は前記一般式(1)で表される。
【0045】
<3次元架橋膜>
前記3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物に硬化触媒を添加し、加熱することで重合反応させて得られる。
【0046】
電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の具体例を以下に示すが、本発明は何らこれら例示の化合物に限定されるものではない。
【0047】
【表1−1】
【0048】
【表1−2】
【0049】
【表1−3】
【0050】
【表1−4】
【0051】
上記、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物は新規化合物であり、例えば下記の方法によって製造することができる。
【0052】
第一の方法は、電荷輸送性化合物の芳香環の4箇所をホルミル化し、次いでホルミル基を還元してメチロール化し、次いで3,4−ジヒドロ−2H−ピランをメチロール基と反応させて[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を電荷輸送性化合物に付ける方法である。
【0053】
例えば、以下の手順でアルデヒド化合物を合成し、得られたアルデヒド化合物と水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤により反応させてメチロール化合物を合成し、得られたメチロール化合物とジヒドロ−2H−ピランとを反応させて、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する電荷輸送性化合物を得ることができる。具体的には以下の製造方法により容易に合成することができる。
【0054】
また、第二の方法は、芳香環にハロゲンとメチロール基を有する化合物を原料とし、そのメチロール基を3,4−ジヒドロ−2H−ピランと酸触媒下で反応させてハロゲンと[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物を合成し、これを用いてアミン化合物とカップリング反応させて電荷輸送性化合物を合成する方法である。
【0055】
アミンの級数や個数によって、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を一度に多数導入することが可能である。ハロゲンがヨード体の場合は、アミン化合物と[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有するハロゲン化合物をウルマン反応によりカップリングすることができる。また、クロロ体、ブロモ体の場合はパラジウム触媒を用いた鈴木−宮浦反応等によりカップリングすることができる。
【0056】
<アルデヒド化合物の合成>
下記反応式に示すように電荷輸送性化合物を原料とし、これを従来知られている方法(例えばビルスマイヤー反応)を用いてホルミル化し、アルデヒド化合物を合成することができる。特許第3943522号記載のホルミル化等が挙げられる。
【0057】
【化7】
【0058】
すなわち、上記の具体的なホルミル化の方法としては、塩化亜鉛/オキシ塩化リン/ジメチルホルムアルデヒドを用いた方法が有効であるが、本発明の中間体であるアルデヒド化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の合成例に示す。
【0059】
<メチロール化合物の合成>
下記反応式に示すようにアルデヒド化合物を製造中間体とし、これを従来知られている還元方法を用いてメチロール化合物を合成することができる。
【0060】
【化8】
【0061】
すなわち、上記の具体的な還元方法としては、水素化ホウ素ナトリムを用いた方法が有効であるが、本発明のメチロール化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の実施例に示す。
【0062】
<電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物の合成[1]>
下記反応式に示すようにメチロール化合物を製造中間体とし、これに3,4−ジヒドロ−2H−ピランを触媒下で付加反応させることにより、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を合成することができる。
【0063】
【化9】
【0064】
すなわち、上記の具体的な合成方法としては、ジヒドロ−2H−ピランを用いた方法が有効であるが、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の実施例に示す。
【0065】
<[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物の合成>
【化10】
式中、Xはハロゲンを示す。
【0066】
<電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物の合成[2]>
下記反応式に示すようにアミン化合物とテトラヒドロピラニル基を有するハロゲン化合物を製造中間体とし、これを従来知られている合成方法を用いて電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を合成することができる
【0067】
【化11】
【0068】
すなわち、上記の具体的な合成方法としては、ウルマン反応等を用いた方法が有効であるが、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的な合成例については後述の合成例に示す。
【0069】
本発明では、電気特性に悪影響がない[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基からなる硬化により、優れた電荷輸送性を有し、架橋密度の極めて高い膜を形成することができる。すなわち、摩耗等の機械的耐久性や耐熱性の要求にも対応でき、しかもこれと両立して良好な電荷輸送特性を発揮することが可能である。このような優れた性質により、有機電子写真感光体、有機EL、有機TFT、有機太陽電池等各種有機半導体デバイス用の有機機能材料として極めて有用である。
[合成例]
【0070】
以下、合成例及び評価例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
[合成例1(ハロゲン中間体の合成)]
【化12】
【0072】
4−ブロモベンジルアルコール:50.43g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:45.35g、テトラヒドロフラン:150mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.512gを投下。室温下にて、2時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量72.50g、無色オイル状物)。
図1に、合成例1で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0073】
[合成例2(ハロゲン中間体の合成)]
【化13】
【0074】
3−ブロモベンジルアルコール:25.21g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:22.50g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.259gを投下。室温下にて、1時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量36.84g、無色オイル状物)。
図2に、合成例2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0075】
[合成例3(ハロゲン中間体の合成)]
【化14】
【0076】
2−(4−ブロモベンジル)エチルアルコール:25.05g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:20.95g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.215gを投下。室温下にて、3時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量35.40g、無色オイル状物)。
図3に、合成例3で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0077】
[合成例4(ハロゲン中間体の合成)]
【化15】
【0078】
4−ブロモフェノール:17.3g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:16.83g、テトラヒドロフラン:100mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.172gを投下。室温下にて、2時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量27.30g、無色オイル状物)。
図4に、合成例4で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0079】
[合成例5(例示化合物No.1の合成)]
【化16】
【0080】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン:2.99g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色アモルファス状物)。
図5に、合成例5で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0081】
[合成例6(例示化合物No.8の合成)]
【化17】
【0082】
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル:3.0g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。
図6に、合成例6で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0083】
[合成例7(例示化合物No.12の合成)]
【化18】
【0084】
4,4’−エチレンジアニリン:3.18g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。
図7に、合成例7で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0085】
[合成例8(例示化合物No.16の合成)]
【化19】
【0086】
α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン:10.335g、合成例1化合物:39.05g、酢酸パラジウム:0.673g、ターシャルブトキシナトリウム:27.677g、o−キシレン:200mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:2.43gを滴下。80℃にて1時間、還流にて2時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量23.5g、薄黄色アモルファス状物)。
図8に、合成例8で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0087】
[合成例9(例示化合物No.19の合成)]
【化20】
【0088】
1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキセン:9.323g、合成例1化合物:45.55g、酢酸パラジウム:0.785g、ターシャルブトキシナトリウム:32.289g、o−キシレン:300mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:2.43gを滴下。80℃にて1時間、還流にて2時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量11.42g、黄色アモルファス状物)。
図9に、合成例9で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0089】
[合成例10(比較例化合物Aの合成)]
【化21】
【0090】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン:0.991g、合成例3化合物:7.41g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:20mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量4.12g、薄黄色アモルファス状物)。
図10に、合成例10で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0091】
[合成例11(比較例化合物Bの合成)]
【化22】
【0092】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン:0.991g、合成例4化合物:6.603g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:20mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量3.52g、薄黄色粉末)。
図11に、合成例11で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0093】
[合成例12(比較例化合物Cの合成)]
【化23】
【0094】
中間体アルデヒド化合物:12.30g、エタノール:150mlを四つ口フラスコに入れる。室温下にて撹拌し、水素化ホウ素ナトリウム:3.63gを投下。そのまま4時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行った。濾過、洗浄、濃縮により、アモルファス状物質が得られた。n−ヘキサンにて分散し、濾過、洗浄、乾燥にて取り出し、目的物を得た(収量12.0g、薄黄白色アモルファス)。
図12に、合成例12で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0095】
[合成例13(比較例化合物Dの合成)]
【化24】
【0096】
中間体メチロール化合物:1.274g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:1.346g、テトラヒドロフラン:20mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:14mgを投下。室温下にて、4時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、黄色オイル状物質が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量1.48g、黄色オイル状物)。
図13に、合成例13で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0097】
[合成例14(比較例化合物Eの合成)]
【化25】
【0098】
4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル:1.30g、合成例1化合物:6.508g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:50mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量1.95g、薄黄色アモルファス状物)。
図14に、合成例14で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
【0099】
次に、前記3次元架橋膜の形成方法について更に詳細説明する。
前記3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物と硬化触媒を含有する塗工液を必要に応じて溶媒等で希釈調整し、該塗工液を感光体表面に塗工した後、加熱乾燥を行い、重合させることで形成することができる。また、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物を2種以上混合して同様に形成させることもできる。
更に、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物と3つ有する化合物を混合して同様に形成させることもできる。しかしながら、4つ有する化合物の混合比率が少なすぎると、耐摩耗性が劣化する問題が生じてくる。4つ有する化合物の混合比率は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0100】
加熱温度としては80℃〜180℃の範囲が好ましく、さらに100℃〜160℃の範囲がより好ましい。触媒の種類や添加量によっても反応速度が変わるために処方条件によって任意に選択すれば良い。しかしながら、加熱温度が高いほど反応は速くなるが、架橋密度が上がりすぎると電荷輸送性の低下を引き起こして感光体の明部電位が上昇したり、感度低下したりという問題が生じてくる。また、感光体の他の層構成材料への加熱の影響が大きくなり、そこでも感光体特性を劣化させやすくなる。加熱温度が低すぎると反応速度が遅くなると共に長時間かけても十分な架橋密度まで到達できなくなる問題が生じる。
【0101】
前記硬化触媒としては、酸性化合物が好ましく、更に好ましくは有機スルホン酸や有機スルホン酸誘導体である。例えば、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、有機スルホン酸塩等も挙げられ、更に、一定以上の温度をかけることで酸性度が発現する所謂熱潜在性化合物も挙げられる。例えば、キングインダストリー社製のNACURE2500、NACURE5225、NACURE5543、NACURE5925等のアミンによりブロックさせた熱潜在性プロトン酸触媒や、三進化学社製のSI−60、旭電化社製のアデカオプトマーSP−300等が挙げられる。
【0102】
これらの触媒は、塗工液の固形分濃度として0.02〜5質量%程度添加される。パラトルエンスルホン酸等の酸単独の場合は0.02〜0.4質量%程度で十分であり、多すぎる場合は塗工液の酸性度が上がり、塗工設備等の腐蝕を引き起こしたりするので好ましくない。逆に上記熱潜在性化合物の場合は、塗工液段階での腐蝕の問題は発生せず、添加量を上げることが可能であるが、ブロック剤としてのアミン化合物が残留すると残留電位等の感光体特性に悪影響するためあまり多量に添加するのは好ましくない。酸単独に比べると酸の含有量が少ないため触媒添加量としては0.2〜2%質量が適量である。
【0103】
以上のように、触媒の種類と添加量を加味しながら加熱乾燥温度と時間を任意に選択することで種々の架橋密度を持った本発明の3次元架橋膜の形成が可能になる。
【0104】
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール 1−モノメチルエーテル 2−アセテートなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする厚みにより変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
【0105】
更に、前記塗工液には、必要に応じてレベリング剤や酸化防止剤などの添加剤が含有できる。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、オリゴマー等が使用され、その使用量は全固形量に対して1質量%以下が好ましい。また、酸化防止剤も有効に使用することができる。例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類等の従来公知の材料が使用でき、繰り返し使用に対する静電特性の安定化に有効である。添加量としては、全固形量に対して1質量%以下が好ましい。
【0106】
更に、前記塗工液には、更なる耐摩耗性を向上させる目的で、フィラーを添加することができる。上記フィラーには、有機性フィラー材料と無機性フィラー材料がある。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機材料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。また、これらのフィラーの中でも高い絶縁性を有し、熱安定性が高い上に、耐摩耗性が高い六方細密構造であるα型アルミナは、耐摩耗性の向上の点から特に有用である。
【0107】
さらに、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理することが可能であり、そうすることがフィラーの分散性が向上するので好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
【0108】
例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理剤の量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が好ましく、5〜20wt%がより好ましい。表面処理剤の量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。
【0109】
また、フィラーの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こし、0.5μm超の場合には、フィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。
また、フィラーの含有量としては、5〜50wt%が好ましく、より好ましくは10〜40wt%である。5wt%未満であると耐摩耗性はあるものの十分ではなく、50wt%を越えると、透明性が損なわれる。
【0110】
前記塗工液を塗布後、熱乾燥工程により、硬化を行う。硬化反応性の目安として有機溶剤による溶解性試験を実施した。溶解性試験とは、テトラヒドロフラン等の溶解性の高い有機溶媒に綿棒を浸し、硬化物表面を擦り、その表面を観察することを意味する。硬化反応していない場合は、塗膜は溶解する。また、硬化反応が不十分である場合は膨潤し、剥がれる。硬化反応が十分である場合は、不溶となる。
【0111】
次に、本発明の電子写真感光体の層構成について、図15〜図19に基づいて説明する。尚、図15〜図19は、電子写真感光体の断面図である。
【0112】
図15は、最も基本的な積層感光体の構成例であり、導電性支持体(1)上に電荷発生層(2)、電荷輸送層(3)を順次積層したものである。負帯電で使用する場合は電荷輸送層にホール輸送性電荷輸送物質が使用され、正帯電で使用される場合は電荷輸送層に電子輸送性電荷輸送物質が使用される。
これらの場合、最表面層は電荷輸送層(3)であり、従って、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この電荷輸送層に適用される。
【0113】
図16は、基本構成の積層感光体に下引き層(4)を形成した構成であり、最も実用化されている構成である。この場合も、最表面層は電荷輸送層(3)であり、従って、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この電荷輸送層に適用される。
【0114】
図17は、さらに保護層として架橋型電荷輸送層(5)を最表面に設けた構成であり、従って、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この架橋型電荷輸送層に適用される。
ここで下引き層は必須ではないが、電荷リークの防止等に重要な機能を果たしており、通常は使用される。
この感光体構成の場合、電荷発生層から感光体表面までの電荷移動を電荷輸送層(3)と架橋型電荷輸送層(5)の二層で分担しており、主機能を分離することができる。例えば、電荷輸送性に優れる電荷輸送層と機械的強度に優れる架橋型電荷輸送層を組み合わせることで電荷輸送性にも優れ機械的強度にも優れた感光体の提供が可能になる。
【0115】
本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、架橋膜の中では電荷輸送性に優れた膜であり、電荷輸送層(3)としての適用性も高いが、従来の分子分散型電荷輸送層に比べると電荷輸送性は劣る。従って、比較的薄膜で使用することが好ましく、この様な構成で使用するときが最も特性に優れた感光体を提供できる。
架橋型電荷輸送層に本発明の3次元架橋膜を適用する場合の好ましい膜厚は、前述のように1〜10μmであり、より好ましくは、3〜8μmである。薄すぎると十分な高寿命化が図れず、厚すぎると感度低下や明部電位が上昇し易くなり安定した画像出力がしにくくなる。
【0116】
図18は、導電性支持体(1)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層(6)が設けられている。感光層(6)に本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜を使用することができる。この場合には、架橋膜中に電荷発生物質を含有させることが必要であり、前記塗工液中に電荷発生物質を混合分散した塗工液を作製して、塗工後、加熱乾燥により重合反応させて3次元架橋膜を作製する。
【0117】
図19は、単層感光層(6)上に保護層(7)を設けた構成であり、この保護層(7)に本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜が使用される。
【0118】
これら各層の構成要素は、本発明の3次元架橋膜を適用しない箇所において、全て従来公知のものを使用することができる。
【0119】
以下、その他の構成要素について詳細に説明する。
<導電性支持体>
前記導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0120】
その他、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工した導電性層を設けたものについても、本発明の支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
【0121】
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の支持体として良好に用いることができる。
【0122】
<下引き層>
本発明の電子写真感光体においては、支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。該下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。該樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等を図るため、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を添加することができる。
【0123】
前記下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。
前記下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0〜5μmが好ましい。
また、下引き層は上記種類の組合せで2層以上の積層としても良い。
【0124】
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含んでおり、バインダー樹脂更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。 前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0125】
無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン等が挙げられる。アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0126】
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系 顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0127】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0128】
また、電荷発生層のバインダー樹脂としては、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、(1)アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂などの高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料などを用いることができる。
【0129】
前記(1)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
【0130】
また、前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0131】
また、前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。 前記低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0132】
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0133】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
前記キャスティング法としては、前記無機系もしくは有機系電荷発生物質、必要に応じてバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0134】
<電荷輸送層>
前記電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ、電荷移動性がよいことが要求される。
【0135】
前記電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷輸送物質としては、正孔輸送物質、電子輸送物質、高分子電荷輸送物質、などが挙げられる。
【0136】
前記電子輸送物質(電子受容性物質)としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0137】
前記正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プ パン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
前記高分子電荷輸送物質としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
【0139】
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体としては、例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
【0140】
(c)ポリシリレン重合体としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
【0141】
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体としては、例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
【0142】
(e)その他の重合体としては、例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
【0143】
また、前記高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも、例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂、などが挙げられる。前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報、などに記載の化合物が挙げられる。
【0144】
また、電子供与性基を有する重合体としては、上記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、更には、例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることもできる。
【0145】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
【0146】
前記電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。前記電荷輸送層には、更に必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加することもできる。
【0147】
前記電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の形成は同様な塗工法が可能である。 また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0148】
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
【0149】
前記レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
【0150】
前記電荷輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0151】
本発明の電子写真感光体においては、電荷輸送層と架橋型電荷輸送層の間に、架橋型電荷輸送層への電荷輸送層成分の混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。
このため、前記中間層としては、架橋型電荷輸送層塗工液に対し不溶性又は難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成方法としては、前記塗工法が採用される。なお、前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜2μmが好適である。
【0152】
<各層への酸化防止剤の添加について>
本発明の電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、前記架橋型電荷輸送層、前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記下引き層、前記中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0153】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0154】
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3 −メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
【0155】
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
【0156】
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
【0157】
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
【0158】
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01〜10質量%が好ましい。
【0159】
<画像形成装置>
次に、図面を用いて本発明の電子写真方法、並びに、画像形成装置を詳しく説明する。
図20は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
【0160】
感光体(10)は図20中の矢印の方向に回転し、感光体(10)の周りには、帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、除電部材(18)等が配置される。クリーニング部材(17)や除電部材(18)が省略されることもある。
【0161】
画像形成装置の動作は基本的に以下のようになる。帯電部材(11)により、感光体(10)表面に対してほぼ均一に帯電が施される。続いて、画像露光部材(12)により、入力信号に対応した画像光書き込みが行われ、静電潜像が形成される。次に、現像部材(13)により、この静電潜像に現像が行われ、感光体表面にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、搬送ローラ(14)により転写部位に送られた転写紙(15)に、転写部材により、トナー像が転写される。このトナー像は、図示しない定着装置により転写紙上に定着される。転写紙に転写されなかった一部のトナーは、クリーニング部材(17)によりクリーニングされる。ついで、感光体上に残存する電荷は、除電部材(18)により除電が行われ、次のサイクルに移行する。
【0162】
図20に示すように、感光体(10)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電部材(11)、転写部材(16)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0163】
一方、画像露光部材(12)、除電部材(18)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0164】
光源等は、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体(10)に光が照射される。但し、除電工程における感光体(10)への露光は、感光体(10)に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。
したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印加することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0165】
電子写真感光体(10)に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0166】
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0167】
現像部材(13)により、感光体(10)上に現像されたトナーは、転写紙(15)に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体(10)上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング部材(17)により、感光体(10)から除去される。
このクリーニング部材は、クリーニングブレードあるいはクリーニングブラシ等公知のものが用いられる。また、両者が併用されることもある。
【0168】
本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。したがって、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0169】
図21は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図21において、感光体(10C(シアン)),(10M(マゼンタ)),(10Y(イエロー)),(10K(ブラック))は、ドラム状の感光体(10)であり、これらの感光体(10C,10M,10Y,10K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(11C,11M,11Y,11K)、現像部材(13C,13M,13Y,13K)、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)が配置されている。
【0170】
この帯電部材(11C,11M,11Y,11K)と、現像部材(13C,13M,13Y,13K)との間の感光体(10)の外側より、図示しない露光部材からのレーザー光(12C,12M,12Y,12K)が照射され、感光体(10C,10M,10Y,10K)に静電潜像が形成されるようになっている。
【0171】
そして、このような感光体(10C,10M,10Y,10K)を中心とした4つの画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(19)に沿って並置されている。
【0172】
転写搬送ベルト(19)は、各画像形成ユニット(20C、20M、20Y、20K)の現像部材(13C,13M,13Y,13K)と、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)との間で感光体(10C,10M,10Y,10K)に当接しており、転写搬送ベルト(19)の感光体(10)側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写部材(16C,16M,16Y,16K)が配置されている。各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0173】
図21に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)において、感光体(10C,10M,10Y,10K)が、感光体10と連れ周り方向に回転する帯電部材(11C,11M,11Y,11K)により帯電され、次に、感光体(10)の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(12C,12M,12Y,12K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0174】
次に現像部材(13C,13M,13Y,13K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(13C,13M,13Y,13K)は、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの感光体(10C,10M,10Y,10K)上で作られた各色のトナー像は転写ベルト(19)上で重ねられる。
【0175】
転写紙(15)は給紙コロ(21)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(22)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写部材(23)に送られる。転写ベルト(19)上に保持されたトナー像は転写部材(23)に印加された転写バイアスと転写ベルト(19)との電位差から形成される電界により、転写紙(15)上に転写される。転写紙上に転写されたトナー像は、搬送されて、定着部材(24)により転写紙上にトナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体(10C,10M,10Y,10K)上に残った残留トナーは、それぞれのユニットに設けられたクリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)で回収される。
【0176】
図21に示したような、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。
中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
【0177】
なお、図21の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(20C,20M,20Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
【0178】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
【0179】
前記プロセスカートリッジとは、図22に示すように、感光体(10)を内蔵し、他に帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、及び除電部材を含んだ1つの装置(部品)である。
【0180】
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。
しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
【0181】
それに対し、本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0182】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて質量部を表す。
【0183】
(実施例1)
直径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層塗工液、下記組成の電荷発生層塗工液、及び下記組成の電荷輸送層塗工液を順次、塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの下引き層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み25μmの電荷輸送層を形成した。
得られた電荷輸送層上に、下記組成の架橋型電荷輸送層塗工液をスプレー塗工し、135℃で30分間乾燥を行い、厚み5.0μmの架橋型電荷輸送層を設けた。以上により、実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0184】
〔下引き層塗工液の組成〕
・アルキッド樹脂
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6部
・メラミン樹脂
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4部
・酸化チタン
(CREL、石原産業株式会社製) ・・・40部
・メチルエチルケトン ・・・50部
【0185】
〔電荷発生層塗工液の組成〕
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) ・・・0.5部
・シクロヘキサノン ・・・200部
・メチルエチルケトン ・・・ 80部
・下記構造式で表されるビスアゾ顔料 ・・・2.4部
【0186】
【化26】
【0187】
〔電荷輸送層塗工液の組成〕
・ビスフェノールZポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製) ・・・ 10部
・テトラヒドロフラン ・・・100部
・1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製) ・・・0.2部
・下記構造式で表される低分子電荷輸送物質 ・・・ 5部
【0188】
【化27】
【0189】
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
例示化合物No.1 ・・・ 10部
・パラトルエンスルホン酸・一水和物(酸触媒) ・・・0.01部
・テトラヒドロフラン(特級) ・・・ 90部
【0190】
(実施例2)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.8とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0191】
(実施例3)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.12とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0192】
(実施例4)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.16とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0193】
(実施例5)
実施例1において、例示化合物No.1をNo.19とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0194】
(実施例6)
実施例1において架橋型電荷輸送層塗工液を以下のように変えて実施した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
例示化合物No.1 ・・・ 3部
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
下記構造で表される化合物 ・・・ 7部
【0195】
【化28】
・パラトルエンスルホン酸・一水和物(酸触媒) ・・・0.01部
・テトラヒドロフラン(特級) ・・・ 90部
【0196】
(比較例1)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Aとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0197】
【化29】
【0198】
(比較例2)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Bとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0199】
【化30】
【0200】
(比較例3)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Cとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0201】
【化31】
(比較例4)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Dとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化32】
【0202】
(比較例5)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Eとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0203】
【化33】
【0204】
(比較例6)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Fとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0205】
【化34】
【0206】
(比較例7)
実施例1において、例示化合物No.1を下記構造式で表される化合物Gとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0207】
【化35】
【0208】
(比較例8)
実施例1において架橋型電荷輸送層塗工液を以下のように変えて実施した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0209】
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
比較例7で用いた化合物G ・・・5.5部
・レゾール型フェノール樹脂PL−2211
(群栄化学社製) ・・・ 7部
・酸触媒 Nacure2500
(楠本化成社製) ・・・0.2部
・イソプロパノール ・・・ 15部
・メチルエチルケトン ・・・ 5部
【0210】
(比較例9)
実施例1において架橋保護層を設けない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0211】
<架橋型電荷輸送層の溶解性試験&表面平滑性評価>
架橋型電荷輸送層の架橋反応性を溶解性試験にて行った。
溶解性試験は、アルミ支持体上に架橋型電荷輸送層塗工液を実施例1〜6及び比較例1〜8と同様に直接塗工し、熱乾燥した膜を、綿棒にテトラヒドロフランを浸し、硬化物表面を擦り、その表面を観察した。そして、綿棒で擦った箇所について、変化がなく痕跡が全く見られない場合を「○」、膜は残っているが膨潤して痕跡が残る場合を「△」、膜が溶けて溶解する場合を「×」と判定した。
また、架橋型電荷輸送層の表面平滑性を表面粗さ形状測定機(東京精密社製サーフコム1400D)にて、JIS−‘82規格による十点平均粗さ(Rz)値を求め、1μm以下を「良好」、1μmを超える場合を「不良」と判定した。
結果を表2に示す。
【0212】
【表2】
【0213】
本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、前記一般式(1)で表される化合物からなる実施例1〜5の硬化膜は、良好な反応性を有し、不溶となった。また、前記一般式(1)で表される化合物と電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ有する化合物との混合からなる実施例6の硬化膜も同様に不溶となった。
また、一般式(1)で表される化合物ではないが、本発明に使用する化合物と同様に、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物からなる比較例4及び5の硬化膜も良好な反応性を有し、不溶となった。
【0214】
しかしながら、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]エチル基を4つ有する化合物からなる比較例1の膜は、反応性がなく、溶解した。更に、電荷輸送性化合物の芳香環に(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基を4つ有する化合物からなる比較例2の硬化膜は、反応性を有するが、十分な架橋膜には至っていない。
【0215】
電荷輸送性化合物の芳香環にメチロール基を4つ有する化合物からなる比較例3の硬化膜は、反応性が良好であり不溶膜となった。比較例6及び比較例7の硬化膜は、比較例1と同様に溶解した。比較例8の硬化膜は、不溶となった。
溶解した比較例1、比較例6及び比較例7の硬化膜は、表面が液体状であり表面平滑性は評価できなかった。また、膨潤した比較例2の硬化膜は、表面性が悪かった。不溶であったその他の実施例1〜6及び比較例3〜5、8の硬化膜は良好な表面平滑性を有した。
【0216】
<画像出力評価>
実施例1〜6、比較例3〜5、及び比較例8、9で作製した各電子写真感光体の機械的特性、電気的特性、環境特性を評価した。リコー製デジタルフルカラー複合機imagio Neo 455のプロセスカートリッジに得られた電子写真感光体を着装し、暗部電位700(−V)に設定した後に、連続してトータル10万枚の印刷を行った。また、画像品質は、600dpi 2×2の画像チャートを出力し、画像濃度計(X-Rite939:SDG社製)により測定した。機械的特性は、初期及び10万枚印刷後での膜厚差より摩耗量の評価を行った。電気的特性は、初期、10万枚印刷後及び10万枚印刷後の下記環境特性評価の高温高湿条件下での画像露光光源光量が約0.4μJ/cm2における明部電位を測定した。環境特性は、10万枚印刷後に上記画像出力装置を30℃90RH%の高温高湿室に入れ、画像品質を下記指標に従って、判定した。
【0217】
[判定基準]
◎:濃度>0.3 ○:濃度0.3〜0.2
△:濃度0.2〜0.1 ×:濃度1.0〜0
尚、前記溶解性試験にて溶解または膨潤した各電子写真感光体は、強固な3次元架橋を有していないことが明瞭である。その為、長期にわたって満足する耐摩耗性を得ることは困難であり、評価外とした。結果を表3に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
表3の結果から、実施例1〜5の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、耐摩耗性が高く、暗部電位の低下が少ない優れた電気的特性を有し、環境特性にも強く、高寿命な電子写真感光体であることがわかる。
実施例6の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物と電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ有するトリフェニルアミン構造である化合物との混合から3次元架橋表面層を有する電子写真感光体も実施例1〜5の電子写真感光体と同様の特性であった。
【0220】
架橋型電荷輸送層の無い比較例9と比べるとその耐摩耗性の高さは際だっており、摩耗による電荷輸送層の薄膜化で生じる電荷リークによる黒斑点等の異常画像を経時で生じることが無く、高画質を維持することができている。また、電荷輸送性化合物の芳香環にメチロール基を有する化合物の架橋膜やフェノール樹脂を用いた架橋膜のような従来の熱架橋膜を用いた比較例3、比較例8と比べると環境特性に優れており、高画質を維持できていることがわかる。
【0221】
比較例4及び5の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、耐摩耗性は高く、明部電位は低く、電荷輸送性は優れているが、暗部電位の低下が大きい。
【0222】
また、一般式(1)及び一般式(2)で表される、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物を用いた実施例1〜5は、各特性において優れた特性をバランス良く有していることがわかる。電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ有するトリフェニルアミン構造である化合物との混合から3次元架橋表面層が形成されている実施例6の電子写真感光体も、実施例1〜5の感光体と同様に、各特性において優れた特性をバランス良く有していた。
【0223】
<ドット画像評価>
実施例1〜6及び比較例4、5の各電子写真感光体において、上記通紙試験の初期の画像チャート(600dpi 2×2)紙上のドット拡大写真を図23〜図30示す。
実施例1におけるドット拡大写真を図23、実施例2におけるドット拡大写真を図24、実施例3におけるドット拡大写真を図25、実施例4におけるドット拡大写真を図26、実施例5におけるドット拡大写真を図27、実施例6におけるドット拡大写真を図28、比較例4におけるドット拡大写真を図29、比較例5におけるドット拡大写真を図30に示す。
【0224】
実施例1〜6の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、高いドット解像力を有していた。
一方、比較例4及び5の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体は、ドットが散っており、低いドット解像力であった。これは、表面層の抵抗が低く、書込露光ドット径を忠実に再現できていないことを示している。2つのトリフェニルアミン構造が共役で連結している電荷輸送性化合物は、酸化電位が小さく、安定性に劣ることを示唆している。
【0225】
以上より、本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有し、2つのトリフェニルアミン構造が非共役で連結している化合物からなる3次元架橋表面層を有する電子写真感光体を用いた画像形成方法及び画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジは、高画質な画像出力を長期に渡って出力し続けることが可能であり、環境変動が発生する環境下においても安定して高画質な画像を出力し続けることができるものである。
【符号の説明】
【0226】
1:導電性支持体
2:電荷発生層
3:電荷輸送層
4:下引き層
5:架橋型電荷輸送層
6:電荷発生物質と電荷輸送物質を両方含有する単層感光層
7:単層感光層用保護層
10、10Y、10M、10C、10K:感光体
11、11Y、11M、11C、11K:帯電部材
12、12Y、12M、12C、13K:画像露光部材
13、13Y、13M、13C、13K:現像部材
14:搬送ローラ
15:転写紙
16、16Y、16M、16C、16K:転写部材
17、17Y、17M、17C、17K:クリーニング部材
18:除電部材
20Y、20M、20C、20K:画像形成要素
21:給紙コロ
22:レジストローラ
23:転写部材(二次転写部材)
24:定着部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0227】
【特許文献1】特開昭56−048637号公報
【特許文献2】特開昭64−001728号公報
【特許文献3】特開平04−281461号公報
【特許文献4】特許第3262488号公報
【特許文献5】特許第3194392号公報
【特許文献6】特開2000−66425号公報
【特許文献7】特開平06−118681号公報
【特許文献8】特開平09−124943号公報
【特許文献9】特開平09−190004号公報
【特許文献10】特開2000−171990号公報
【特許文献11】特開2003−186223号公報
【特許文献12】特開2007−293197号公報
【特許文献13】特開2008−299327号公報
【特許文献14】特許第4262061号公報
【特許文献15】特開2006−251771号公報
【特許文献16】特開2009−229549号公報
【特許文献17】特開2006−084711号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式中、X1は炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,Ar5,Ar6は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
【請求項2】
前記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般(2)で表されることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【化2】
(式中、X2は−CH2−、−CH2CH2−、−C(CH3)2−Ph−C(CH3)2−、−C(CH2)5−、−O−を表わす。R1,R2,R3,R4,R5,R6は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、o,p,q,r,s,tは1〜4の整数を表わす。)
【請求項4】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記電子写真感光体が、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式により行われることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記露光手段による電子写真感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、該電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式中、X1は炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,Ar5,Ar6は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
【請求項2】
前記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4つ有する化合物が下記一般(2)で表されることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【化2】
(式中、X2は−CH2−、−CH2CH2−、−C(CH3)2−Ph−C(CH3)2−、−C(CH2)5−、−O−を表わす。R1,R2,R3,R4,R5,R6は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、o,p,q,r,s,tは1〜4の整数を表わす。)
【請求項4】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記電子写真感光体が、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式により行われることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記露光手段による電子写真感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
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【図20】
【図21】
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【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−150401(P2012−150401A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10764(P2011−10764)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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