説明

電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】下層との接着強度が高く、表面性状に優れた最表面層を有し、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して維持される電子写真感光体、並びに該電子写真感光体の製造方法を提供すること。
【解決手段】導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を少なくとも有し、最表面層が、同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)の少なくとも1種と、2種以上の熱重合開始剤(b)と、を含有する組成物の硬化膜からなることを特徴とする電子写真感光体、並びに該電子写真感光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的には、次の如き構成及びプロセスを有するものである。
即ち、電子写真感光体表面を帯電手段で所定の極性及び電位に帯電させ、帯電後の電子写真感光体表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させた後、現像手段で該静電潜像にトナーを付着させることにより、潜像をトナー像として現像し、トナー像を転写手段で被転写媒体に転写させることにより、画像形成物として排出させるといったものである。
【0003】
近年、電子写真感光体は、高速かつ高印字品質が得られるという利点を有することから、複写機及びレーザービームプリンター等の分野においての利用が多くなってきている。
これら画像形成装置において用いられる電子写真感光体としては、従来からのセレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金、硫化カドミウム等無機光導電材料を用いた電子写真感光体(無機感光体)が知られており、近年では、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体(有機感光体)が主流を占めるようになってきている。
【0004】
一方、帯電方式としては、従来はコロナ放電器を使用したコロナ帯電方式が用いられてきた。また、近年は、低オゾン及び低電力などの利点を有する接触帯電方式が実用化され、盛んに用いられるようになってきている。この接触帯電方式は、帯電用部材として導電性部材を感光体表面に接触、又は近接させ、該帯電部材に電圧を印加することにより、感光体表面を帯電させるものである。また、帯電部材に印加する方式としては、直流電圧のみを印加する直流方式と、直流電圧に交流電圧を重畳して印加する交流重畳方式とがある。この接触帯電方式では、装置の小型化が図れ、かつ、オゾンなどのガスの発生が少ないという利点を有する。
更に、転写方式としては、直接紙に転写する方式が主流であったが、転写される紙の自由度が広がることから、近年では中間転写体を用いて転写する方式が盛んに用いられている。
【0005】
一方で、電子写真感光体の表面に保護層を設けて強度を向上させることが提案されている。
保護層を形成する材料系としては、以下のものが提案されている。
即ち、例えば、特許文献1には、導電粉をフェノール樹脂に分散したものが、特許文献2には、有機−無機ハイブリッド材料によるものが、特許文献3には、アルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂によるものが、それぞれ開示されている。
また、特許文献4には、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂と、電子受容性カルボン酸、或いは、電子受容性ポリカルボン酸無水物の硬化膜が、特許文献5には、ベンゾグアナミン樹脂に、ヨウ素、有機スルホン酸化合物、或いは、塩化第二鉄などをドーピングした硬化膜が、特許文献6には、特定の添加剤と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、或いはウレタン樹脂との硬化膜が、保護層として開示されている。
【0006】
また、近年ではアクリル系材料による保護層が注目されている。例えば、特許文献7には、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を硬化した膜が、特許文献8には、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材、及びバインダー樹脂の混合物を、熱或いは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜が、特許文献9には、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が、保護層として開示されている。
これらアクリル系材料は、硬化条件、硬化雰囲気等の影響を強く受けることから、例えば、特許文献10には、真空中、或いは不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜が、特許文献11には、不活性ガス中で加熱硬化された膜が開示されている。
更に、例えば、特許文献8、12には、電荷輸送材料自身をアクリル変性し、架橋可能とすると共に、電荷輸送性を有さない反応性モノマーを添加し、膜強度を向上させることも開示されている。
【0007】
更に、反応物、硬化膜による保護層としては以下のようなものも提案されている。
例えば、特許文献13には、電荷輸送材料自身を3官能以上の多官能に変性し、これを重合した化合物を含有する保護層が開示されている。また、特許文献14には、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合物を保護層に使用する技術が開示されている。加えて、特許文献15には、電荷輸送性骨格を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー、電荷輸送性骨格を有する1官能のラジカル重合性化合物、及びラジカル重合性官能基を有する反応性シリコーン化合物を含有する塗工液を塗布、硬化する電子写真感光体において、硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効であることが開示されている。
【特許文献1】特許第3287678号公報
【特許文献2】特開平12−019749号公報
【特許文献3】特開2002−82469号公報
【特許文献4】特開昭62−251757号公報
【特許文献5】特開平7−146564号公報
【特許文献6】特開平2006−84711号公報
【特許文献7】特開平5−40360号公報
【特許文献8】特開平5−216249号公報
【特許文献9】特開2000−206715号公報
【特許文献10】特開2004−12986号公報
【特許文献11】特開平7−72640号公報
【特許文献12】特開2004−302450号公報
【特許文献13】特開2000−206717号公報
【特許文献14】特開2001−175016号公報
【特許文献15】特開2005−115353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、下層との接着強度が高く、表面性状に優れた最表面層を有し、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して維持される電子写真感光体、並びに該電子写真感光体の製造方法を提供することである。
また、本発明の他の課題は、上記電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を少なくとも有し、最表面層が、同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)の少なくとも1種と、2種以上の熱重合開始剤(b)と、を含有する組成物の硬化膜からなることを特徴とする電子写真感光体である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記硬化膜が前記組成物を熱により硬化させて得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体である。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記組成物が、前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)と反応する電荷輸送性を有さないモノマー又はオリゴマー(c)を更に含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記組成物が、前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)と反応しないポリマー(d)を更に含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記組成物が、前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)と反応するポリマー(e)を更に含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)が、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び4つ以上のメタクリロイル基を有する化合物(a’)であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び4つ以上のメタクリロイル基を有する化合物(a’)が、下記一般式(A)で表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体である。
【0016】
【化1】

【0017】
上記一般式(A)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(CH)=CHを示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に、1又は2を示し、kは0又は1を示し、dは1乃至5の整数を示し、eは0又は1を示し、Dの総数は4以上である。
【0018】
請求項8に係る発明は、前記2種以上の熱重合開始剤のうち2種の熱重合開始剤は、10時間半減期温度の差が20℃以上あることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
【0019】
請求項9に係る発明は、同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)の少なくとも1種と、2種以上の熱重合開始剤(b)と、を含有する組成物からなる塗布液を、被塗布面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を熱により硬化させて最表面層を得る工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0020】
請求項10に係る発明は、前記2種以上の熱重合開始剤のうち2種の熱重合開始剤は、10時間半減期温度の差が20℃以上あることを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体の製造方法である。
【0021】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種の手段と、を備え、画像形成装置に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0022】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、下層との接着強度が高く、表面性状に優れた最表面層を有し、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して維持される電子写真感光体が提供される。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、表面性状により優れた電子写真感光体が提供される。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、機械的強度がより高い最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、表面性状により優れ、また、ガスバリア性に優れた最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、機械的強度を高く保ちつつ、表面性状がより優れ、また、ガスバリア性に優れた最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
【0028】
請求項6に係る発明によれば、機械的強度が高い最表面層を有し、電気特性がより向上した電子写真感光体が提供される。
【0029】
請求項7に係る発明によれば、機械的強度が高い最表面層を有し、電気特性が更に向上した電子写真感光体が提供される。
【0030】
請求項8に係る発明によれば、表面性状により優れた電子写真感光体が提供される。
【0031】
請求項9に係る発明によれば、下層との接着強度が高く、表面性状に優れた最表面層を有し、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して維持される電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0032】
請求項10に係る発明によれば、表面性状により優れた電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0033】
請求項11に係る発明によれば、長期に亘り安定した画像が得られるプロセスカートリッジが提供される。
【0034】
請求項12に係る発明によれば、長期に亘り安定した画像が得られる画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔電子写真感光体〕
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を少なくとも有し、最表面層が、同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)の少なくとも1種と、2種以上の熱重合開始剤(b)と、を含有する組成物の硬化膜からなることを特徴とする電子写真感光体である。
以下、同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)を、適宜、特定の電荷輸送材料(a)と称して説明する。
【0036】
本実施形態に係る電子写真感光体では、上記構成とすることで、下層との接着強度が高く、表面性状に優れた最表面層を有し、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して維持される。
上記の効果を奏するメカニズムについては必ずしも明確ではないが、以下のように推定している。
【0037】
即ち、本実施形態のような最表面層を構成する硬化膜は、例えば、加熱硬化により形成されるが、この加熱硬化の際の加熱炉を用いる場合、電子写真感光体の基体等が大きな熱容量を持つことから、特定の電荷輸送材料(a)と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物を用いてなる塗膜は、瞬時に設定温度に到達する分けではなく、室温程度から徐々に設定温度に達していく。そのため、特定の電荷輸送材料(a)に加え2種以上の熱重合開始剤(b)を使用することで、その量、活性発現温度を調整することで、徐々にラジカルを発生させることができ、特許文献15に記載された段階的過熱と類似の効果により、残留ひずみの少ない硬化膜が得られると考えられる。
一方、1種の熱重合開始剤を使用した場合には、比較的狭い温度範囲で一気にラジカルを発生するため、反応が一度に進行し、残留ひずみを残したままの硬化膜となりやすいと考えられる。
以上のように、残留ひずみの少ない硬化膜が得られることから、この硬化膜からなる際表面層は、下層との接着強度が高く、表面性状に優れるものとなる。また、その結果として、このような際表面層を有する電子写真用感光体は、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して維持される。
【0038】
本実施形態に係る電子写真感光体では、前述の通り、特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物の硬化膜からなる最表面層を有するものであるが、当該最表面層は電子写真感光体自体の最上面を形成していればよく、保護層として機能する層、又は、電荷輸送層として機能する層として設けられる。
なお、最表面層が保護層として機能する層である場合、この保護層の下層には、電荷輸送層及び電荷発生層からなる感光層、又は、単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)を有することとなる。
【0039】
最表面層が保護層として機能する層の場合、導電性基体上に、感光層、及び最表面層として保護層を有し、該保護層が特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物の硬化膜で構成される形態が挙げられる。
一方、最表面層が電荷輸送層として機能する層の場合、導電性基体上に、電荷発生層、及び最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層が特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物の硬化膜で構成される形態が挙げられる。
【0040】
以下、最表面層が保護層として機能する層の場合の、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は、実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
【0041】
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層が構成されている。
【0042】
図2に示す電子写真感光体7Bは、図1に示す電子写真感光体7Aと同様に電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された機能分離型感光体である。また、図3に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層))に含有するものである。
【0043】
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に、電荷輸送層3、電荷発生層2、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Bにおいては、電荷輸送層3及び電荷発生層2により感光層が構成されている。
また、図3に示す電子写真感光体7Cにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0044】
そして、上記図1乃至図3に示す電子写真感光体7A乃至7Cにおいて、保護層5が、導電性基体2から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記所定の構成となっている。
なお、図1乃至図3に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0045】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aに基づいて、各要素について説明する。
【0046】
<保護層>
まず、電子写真感光体7Aにおける最表面層である保護層5について説明する。
保護層5は、電子写真感光体7Aにおける最表面層であり、特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物の硬化膜からなる。
まず、特定の電荷輸送材料(a)について説明する。
【0047】
(特定の電荷輸送材料(a))
保護層(最表面層)5に用いられる特定の電荷輸送材料(a)は、同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であり、この構造上の条件を満たしていれば如何なるものでもかまわない。
ここで、特定の電荷輸送材料(a)中の電荷輸送性骨格とは、反応性電荷輸送材料(a)中の電荷輸送性骨格としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が電荷輸送性骨格に相当する。
【0048】
特に、特定の電荷輸送材料(a)はメタクリロイル基を有する化合物であることが望ましい。
その理由は明確ではないが、以下のように推測される。
通常、硬化反応には反応性の高いアクリル基が用いられることが多いが、かさ高い電荷輸送性骨格に置換基として反応性の高いアクリロイル基を用いた場合、不均一な硬化反応がおきやすくなりミクロ(若しくはマクロ)的な海島構造ができやすくなると考えられる。このような海島構造は電子分野以外では特に問題となることは少ないが、電子写真感光体として用いた場合には、最表面層のムラ・シワを発生しやすく、電荷輸送性が異なる部分がマクロに生じ、結果として、画像ムラなどの問題を生じる。なお、このような海島構造の形成は一つの電荷輸送性骨格に複数の官能基がついている場合は、特に顕著になると考えられる。
そこで、メタクリロイル基を有する特定の電荷輸送材料(a)を用いることで、上記のような海島構造の形成が抑えられることから、この望ましい態様の特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物の硬化膜からなる最表面層を有する電子写真用感光体は、電気特性及び画像特性がより安定して得られるものと推測される。
【0049】
また、特定の電荷輸送材料(a)において、電荷輸送性骨格とアクリロイル基又はメタクリロイル基との間に炭素原子が1つ以上介在した構造であることが望ましい。つまり、特定の電荷輸送材料(a)としては、電荷輸送性骨格とアクリロイル基又はメタクリロイル基との間には炭素原子を1つ以上含む炭素鎖を連結基として有することが望ましい態様である。特に、かかる連結基がアルキレン基であることがもっとも望ましい態様である。
【0050】
上記の態様が望ましい理由としては、必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
即ち、電子吸引性のメタクリロイル基が電荷輸送性骨格に近すぎると、電荷輸送性骨格の電荷密度が低下し、イオン化ポテンシャルが上昇することにより、下層からのキャリア注入が円滑に進行しにくくなることがある。また、メタクリロイル基のようなラジカル重合性の置換基を重合させる場合、重合時に生成するラジカルが電荷輸送性骨格に移動しやすい構造であると、生成したラジカルが電荷輸送の機能を劣化させてしまうため、電気特性の悪化を招いてしまうと考えられる。更に、最表面層における機械強度については、かさ高い電荷輸送性骨格と重合部位(アクリロイル基又はメタクリロイル基)が近くリジッドであると重合部位同士が動きずらくなり、反応する確率が低下してしまうおそれがあるものと考えられる。
これらのことから、アクリロイル基とアクリロイル基又はメタクリロイル基との間に柔軟性に富む炭素鎖を介在させる構造が望ましいものとなる。
【0051】
更に、特定の電荷輸送材料(a)は、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と3つ以上、より望ましくは、4つ以上のメタクリロイル基と、を有する構造の化合物(a’)であることが望ましい態様である。この態様とすることで、合成時の化合物の安定性が確保でき、工業的なスケールで生産されうると言った優れた利点を有する。また、この態様とすることで、架橋密度が高く、十分な機械的強度を有する最表面層を形成しうるため、電荷輸送性を有さない多官能モノマーを必ずしも添加する必要がなくなり、多官能モノマーの添加による電気特性の低下を起こさせることなく、最表面層の厚膜化が図れる。その結果として、この最表面層を有する電子写真用感光体は、寿命が延び、長期間の利用に耐え得るものとなる。
【0052】
本実施態様において、特定の電荷輸送材料(a)としては、下記一般式(A)で表される化合物であることが、電荷輸送性に優れることから、望ましい。
【0053】
【化2】

【0054】
上記一般式(A)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(CH)=CHを示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に、1又は2を示し、kは0又は1を示し、dは1乃至5の整数を示し、eは0又は1を示し、Dの総数は4以上である。
【0055】
一般式(A)において、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ar乃至Arは、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、D:−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(CH)=CH以外のものとして、炭素数1乃至4のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6乃至10の置換若しくは未置換のアリール基等が挙げられる。
Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、Ar乃至Arの各々に連結され得る「−(D)C1」乃至「−(D)C4」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
【0056】
【化3】

【0057】
上記式(1)乃至(7)中、Rは、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Dは−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(CH)=CHを表し、cは1又は2を表し、sは0又は1を表し、tは0以上3以下の整数を表す。
【0058】
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
【0059】
【化4】

【0060】
上記式(8)及び(9)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、t’はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0061】
また、前記式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。また、sはそれぞれ0又は1を表す。
【0062】
【化5】

【0063】
上記式(10)乃至(17)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、t”はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0064】
前記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0065】
【化6】

【0066】
また、一般式(A)中、Arは、kが0の時は置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基と同様のものが挙げられる。また、Arは、kが1の時は置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から所定の位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0067】
以下に、一般式(A)で示される化合物の具体例(化合物A−1乃至A−21)を示す。なお、一般式(A)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0068】
【化7】

【0069】
【化8】

【0070】
【化9】

【0071】
【化10】

【0072】
【化11】

【0073】
一般式(A)で表される化合物は、以下のようにして合成される。
即ち、一般式(A)で表される化合物は、前駆体であるアルコールを、対応するメタクリル酸、或いはメタクリル酸ハロゲン化物と縮合させるか、前駆体であるアルコールがベンジルアルコール構造の場合には、ヒドロキシエチルメタクリレートのような水酸基を有するメタクリル酸誘導体との脱水エーテル化などにより合成できる。
【0074】
本実施形態で用いる化合物A−4及び化合物A−17の合成経路を一例として以下に示す。
【0075】
【化12】

【0076】
【化13】

【0077】
以上のように、特定の電荷輸送材料(a)の望ましい態様として、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び4つ以上のメタクリロイル基を有する化合物(a’)について説明したが、この化合物以外にも、以下のような化合物(以下、適宜、「その他の反応性電荷輸送材料(a”)」と称する。)が特定の電荷輸送材料(a)として用いられうる。
【0078】
即ち、その他の反応性電荷輸送材料(a”)としては、公知の電荷輸送材料にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した化合物(a”)を用いられる。公知の電荷輸送材料としては、例えば、後述の電荷輸送層3を構成する電荷輸送材料の中で、正孔輸送性化合物として挙げられているトリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などが用いられる。より具体的には、その他の反応性電荷輸送材料(a”)としては、前記特許文献8に記載の化合物、前記特許文献9に記載の化合物、前記特許文献10に記載の化合物、前記特許文献11に記載の化合物、前記特許文献12に記載の化合物、前記特許文献13に記載の化合物、前記特許文献14に記載の化合物、前記特許文献15に記載の化合物が用いられる。
【0079】
中でも、その他の反応性電荷輸送材料(a”)としては、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び1個以上3個以下のアクリル基又はメタクリロイル基を有する化合物が望ましい。特に、一般式(A)において、Dが−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(R)=CHを示し、fは0乃至5の整数を示し、gは0又は1を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Dの総数が1以上3以下の化合物が望ましく、中でも、Dにおいて、fが1乃至5の整数であり、Rがメチル基である化合物が望ましい。
以下、その他の反応性電荷輸送材料(a”)の具体例を示す。
【0080】
その他の反応性電荷輸送材料(a”)の1つである、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び1個のアクリル基又はメタクリロイル基を有する化合物の具体例としては、化合物I−1乃至I−12が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0081】
【化14】

【0082】
【化15】

【0083】
【化16】

【0084】
その他の反応性電荷輸送材料(a”)の1つである、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び2個のアクリル基又はメタクリロイル基を有する化合物の具体例としては、化合物II−1乃至II−19が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0085】
【化17】

【0086】
【化18】

【0087】
【化19】

【0088】
【化20】

【0089】
その他の反応性電荷輸送材料(a”)の1つである、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び3個のアクリル基又はメタクリロイル基を有する化合物の具体例としては、化合物III−1乃至III−11が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0090】
【化21】

【0091】
【化22】

【0092】
【化23】

【0093】
特定の電荷輸送材料(a)の総含有量は、保護層(最表面層)5を形成する際に用いられる組成物に対して30質量%以上100質量%以下が望ましく、より望ましくは40質量%以上100質量%以下、更に望ましくは50質量%以上100質量%以下である。
この範囲とすることで、硬化膜(最表面層)の電気特性に優れ、硬化膜の厚膜化が可能となる。
【0094】
また、特定の電荷輸送材料(a)のうち、電荷輸送性骨格及び3つ以上のアクリロイル基又はアクリロイル基を有する化合物の含有量は、保護層(最表面層)5を形成する際に用いられる組成物に対して5質量%以上が望ましく、より望ましくは10質量%以上、更に望ましくは15質量%以上である。
【0095】
本実施形態においては、特定の電荷輸送材料(a)として、電荷輸送性骨格及び4つ以上のアクリロイル基又はアクリロイル基を有する化合物と、電荷輸送性骨格及び1つ以上2つ以下のアクリロイル基又はアクリロイル基を有する化合物と、を併用することが望ましい。特に、一般式(A)で表される化合物と、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び1つ以上2つ以下のアクリル基又はメタクリロイル基とを有する化合物と、を併用することが望ましい。
この態様の場合、特定の電荷輸送材料(a)の全てを4つ以上のメタクリロイル基(反応性基)を有する化合物とする場合に比べ、電荷輸送性骨格の存在量を低下させることなく、架橋密度を減じさせられることから、電気特性を維持しつつも、硬化膜(最表面層)の強度の調整が行われうる。
【0096】
電荷輸送性骨格及び4つ以上のアクリロイル基又はアクリロイル基を有する化合物と、電荷輸送性骨格及び1つ以上3つ以下のアクリロイル基又はアクリロイル基を有する化合物と、を併用する場合、特定の電荷輸送材料(a)の全量中、電荷輸送性骨格及び4つ以上のアクリロイル基又はアクリロイル基とを有する化合物が、5質量%以上で含まれることが望ましく、10質量%以上で含まれることがより望ましく、15質量%以上で含まれることが更に望ましい。
【0097】
(その他の電荷輸送材料)
また、保護層(最表面層)5を構成する硬化膜は、前述した特定の電荷輸送材料(a)の他に、反応性基を有さない公知の電荷輸送材料、必要に応じて用いた硬化膜であってもよい。ここで、反応性基とは、ラジカル重合性の不飽和結合を意味する。
反応性基を有さない公知の電荷輸送材料は、電荷輸送を担わない反応性基を有さないため、例えば、この公知の電荷輸送材料を併用すると、実質的に電荷輸送成分の濃度を高め、硬化膜(最表面層)の電気特性を更に改善しうる。また、反応性基を有さない公知の電荷輸送材料は、硬化膜(最表面層)の強度の調整に寄与しうる。更に、特定の電荷輸送材料(a)は、電荷輸送性骨格を有することから、反応性基を持たない公知の電荷輸送材料との相溶性に優れるため、反応性基を持たない従来の電荷輸送材料のドーピングが行われ、より一層の電気特性の向上を図ることが可能となる。
【0098】
反応性基を有さない公知の電荷輸送材料としては、例えば、後述の電荷輸送層3を構成する電荷輸送材料として挙げられたものが用いられる。中でも、モビリティー、相溶性など点から、トリフェニルアミン骨格を有するものが望ましい。
【0099】
反応性基を有さない公知の電荷輸送材料は、塗布液中の固形分に対して2質量%以上50質量%以下で用いられることが望ましく、より望ましくは5質量%以上45質量%以下であり、更に望ましくは10質量%以上40質量%以下である。
【0100】
(2種以上の熱重合開始剤(b))
保護層(最表面層)5の形成には、前述した特定の電荷輸送材料(a)に加え2種以上の熱重合開始剤(b)を含有する組成物が用いられる。
この熱重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤を用いることができ、具体的には、下記に示すような市販の熱重合開始剤を用いることが望ましい。なお、下記の熱重合開始剤には、10時間半減期温度が併記されているものがある。
【0101】
即ち、熱重合開始剤の市販品としては、例えば、V−30(10時間半減期温度:104℃)、V−40(同:88℃)、V−59(同:67℃)、V−601(同:66℃)、V−65(同:51℃)、V−70(同:30℃)、VF−096(同:96℃)、Vam−110(同:111℃)、Vam−111(同:111℃)(以上、和光純薬工業製)、OTAZO−15(同:61℃)、OTAZO−30、AIBM(同:65℃)、AMBN(同:67℃)、ADVN(同:52℃)、ACVA(同:68℃)(以上、大塚化学製)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
また、パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーへヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(以上、日油化学社製)、
【0102】
カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(以上、化薬アクゾ社製)、
【0103】
ルペロックス LP(同:64℃)、ルペロックス 610(同:37℃)、ルペロックス 188(同:38℃)、ルペロックス 844(同:44℃)、ルペロックス 259(同:46℃)、ルペロックス 10(同:48℃)、ルペロックス 701(同:53℃)、ルペロックス 11(同:58℃)、ルペロックス 26(同:77℃)、ルペロックス 80(同:82℃)、ルペロックス 7(同:102℃)、ルペロックス 270(同:102℃)、ルペロックス P(同:104℃)、ルペロックス 546(同:46℃)、ルペロックス 554(同:55℃)、ルペロックス 575(同:75℃)、ルペロックス TANPO(同:96℃)、ルペロックス 555(同:100℃)、ルペロックス 570(同:96℃)、ルペロックス TAP(同:100℃)、ルペロックス TBIC(同:99℃)、ルペロックス TBEC(同:100℃)、ルペロックス JW(同:100℃)、ルペロックス TAIC(同:96℃)、ルペロックス TAEC(同:99℃)、ルペロックス DC(同:117℃)、ルペロックス 101(同:120℃)、ルペロックス F(同:116℃)、ルペロックス DI(同:129℃)、ルペロックス 130(同:131℃)、ルペロックス 220(同:107℃)、ルペロックス 230(同:109℃)、ルペロックス 233(同:114℃)、ルペロックス 531(同:93℃)(以上、アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
【0104】
これら熱重合開始剤は、単独で用いても硬化反応は進行するが、本実施形態では2種以上を用い、残留ひずみの少ない硬化膜を得ている。
特に、2種以上の熱重合開始剤のうち、10時間半減期温度の最低のものと最高のもののの差が20℃以上であることが望ましい組み合わせであって、この組み合わせにより、均一な硬化膜が得られる。
また、熱重合開始剤は、塗布液のポットライフと硬化反応の進行度の点から、10時間半減期温度が40℃以上120℃以下のもので組み合わせることが望ましく、50℃以上110℃以下のもので組み合わせることがより望ましい。
【0105】
10時間半減期温度が20℃以上異なる熱重合開始剤の使用比率としては、任意に設定しうるが、10時間半減期温度の最低のものと最高のものの総量が全熱重合開始剤量の30質量%以上であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上で、更に望ましくは50質量%以上である。この範囲で設定することで均一性に優れ、かつ、残留ひずみが少なく、下層との接着性に優れる硬化膜が得られる。
また、10時間半減期温度が20℃以上異なる熱重合開始剤において、10時間半減期温度の最低のものの質量(L)と最高のもののの質量(H)との比は、L:H=2:8以上9:1以下であることが望ましく、より好ましくは、L:H=3:7以上9:1以下、更に望ましくは、L:H=4:6以上9:1以下である。このように、10時間半減期温度の最低のものの質量をある程度以上とすることで硬化反応をよりマイルドに進行させることができ、均一性に優れ、かつ、残留歪が少なく、接着性に優れる硬化膜が得やすくなるものと推測できる。
【0106】
熱重合開始剤の総含有量は、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中の固形分全量に対して、望ましくは0.2質量%以上10質量%以下、より望ましく0.5質量%以上8質量%以下、更に望ましくは0.7質量%以上5質量%範囲である。
【0107】
本実施形態に係る特定の電荷輸送材料(a)と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物は、電荷輸送性を有さない反応性化合物(c)を含んでいてもよい。特定の電荷輸送材料(c)を用いることで、電気特性と機械的強度が十分に確保された保護層5(最表面層)が得られることから、この電荷輸送性を有さない反応性化合物(c)を併用することで、保護層5(最表面層)の機械的強度を調整してもよい。
ここで、「電荷輸送性を有さない」とは、Time of Flight法によりキャリア輸送が観測されないことを意味する。
かかる反応性化合物としては、1官能若しくは多官能の、重合性モノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられ、例えば、アクリレート若しくはメタクリレートのモノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられる。
【0108】
具体的には、1官能のモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、などが挙げられる。
【0109】
2官能のモノマー、オリゴマー、及びポリマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0110】
3官能モノマー、オリゴマー、及びポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0111】
4官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0112】
また、5官能以上のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
上述したモノマー、オリゴマー、及びポリマーは、単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
また、上述したモノマー、オリゴマー、及びポリマーは、特定の電荷輸送材料を含有する組成物中の電荷輸送性を持つ化合物(前述の特定の電荷輸送材料とその他の電荷輸送材料)の全量に対し、100質量%以下、望ましくは50質量%以下、より望ましくは30質量%以下で用いられる。
【0114】
また、特定の電荷輸送材料(a)と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物には、粒子分散性、粘度コントロールの目的で、また、硬化膜(最表面層)の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的で、特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマー(d)、或いは、反応しないポリマー(e)を混合することもできる。
【0115】
特定の電荷輸送材料(a)と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物の硬化膜からなる保護層5(最表面層)は、電気特性と機械的強度が十分に確保されていることから、バインダー樹脂として各種のポリマーを併用してもよい。これらポリマーを用いることで、組成物の粘度が向上し、表面性状に優れた保護層5(最表面層)が形成されると共に、最表面中のガスの混入を防止するガスバリア性の向上が図られ、また、下層との接着性の向上にも寄与しうる。
【0116】
特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマー(d)としては、反応性基としてラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するポリマーであればよく、上述のアクリレート若しくはメタクリレートのポリマーに加え、例えば、特開平5−216249号公報の段落〔0026〕乃至〔0059〕、特開平5−323630号公報の段落〔0027〕乃至〔0029〕、特開平11―52603号公報の段落〔0089〕乃至〔0100〕、特開2000−264961号公報の段落〔0107〕乃至〔0128〕などに開示されたものが挙げられる。
また、特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(e)としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を含有しないポリマーであればよく、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂など公知のものが挙げられる。
これらポリマーは、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中の電荷輸送性を持つ化合物(前述の特定の電荷輸送材料(a)とその他の電荷輸送材料)の全量に対し、100質量%以下、望ましくは50質量%以下、より望ましくは30質量%以下で用いられる。
【0117】
また、特定の電荷輸送材料(a)と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物には、更に、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、カップリング剤、ハードコート剤、含フッ素化合物を添加してもよい。これらの添加剤として具体的には、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が用いられる。
また、市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が用いられる。
更に、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の含フッ素化合物を加えてもよい。更に、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性の含フッ素化合物などを混合してもよい。
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0118】
また、保護層(最表面層)5には、該保護層の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などや、粒子分散性、粘度コントロールの目的で、アルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
【0119】
保護層(最表面層)5には、該保護層の帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては、保護層形成のための塗布液(組成物)中の全固形分に対して、20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0120】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」等が挙げられる。
【0121】
更に、保護層(最表面層)5には、該保護層の残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。
粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、アルコール、ケトン、又はエステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
保護層5中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層5の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0122】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、更に十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状が改善される。すなわち、強固な架橋構造中にバラツキが生じることなくに取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性が維持される。
保護層5中のシリコーン粒子の含有量は、保護層5の全固形分全量を基準として、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0123】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される如く、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TIO、ZnO−TIO、MgO−Al、FeO−TIO、TIO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
【0124】
また、同様な目的で、保護層(最表面層)5には、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0125】
また、保護層(最表面層)5には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
【0126】
保護層5を形成するために用いる、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物は、保護層形成用塗布液として調製されることが望ましい。
この保護層形成用塗布液は、無溶媒であってもよいし、必要に応じて、トルエン、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系等の溶媒などの単独又は混合溶媒を用いて調製される。
【0127】
また、前述の成分を反応させて塗布液を得るときには、各成分を単純に混合、溶解させるだけでもよいが、望ましくは室温以上100℃以下、より望ましくは30℃以上80℃以下で、望ましくは10分以上100時間以下、より望ましくは1時間以上50時間以下の条件で加温してもよい。また、この際に超音波を照射することも望ましい。
これにより、塗布液中で恐らく部分的な反応が進行し、塗布液の均一性が高まり、塗膜欠陥のない均一な膜が得られやすくなる。
【0128】
特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物からなる保護層形成用塗布液は、被塗布面を形成する電荷輸送層3の上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法により塗布される。
その後、得られた塗膜に対して、熱を付与してラジカル重合を生起させる方法が用いられ、これにより、該塗膜を重合、硬化させる。
熱により塗膜を重合、硬化させる際、加熱条件は50℃以上であることが望ましい。この温度以下であると硬化膜の寿命が短く望ましくない。特に、加熱温度としては、100℃以上170℃以下が、強度、電気特性、感光体の表面均一性の点から望ましい。
【0129】
上記のような、重合、硬化反応の際には、熱によって発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、真空、或いは、不活性ガス雰囲気下など酸素濃度が望ましくは10%以下、より望ましくは5%以下、更に望ましくは2%以下、最も望ましくは500ppm以下の低酸素濃度で行われる。
【0130】
本実施態様では、反応が早く進行しすぎると架橋により塗膜の構造緩和ができ難くなり、膜のムラやシワを発生しやすくなるといった理由から、ラジカルの発生が比較的ゆっくりと起こる熱による硬化が採用される。特に、特定の電荷輸送材料(a)が反応性がアクリロイル基よりも低いメタクリロイル基を有する場合、このメタクリロイル基と熱による硬化とを組み合わせることで、塗膜の構造緩和の促進が図られ、表面性状に優れ、均一性の高い保護層5(最表面層)が得られる。
一方、光や電子線にて塗膜を硬化させた場合には、反応の進行が早く、残留ひずみの多い膜となりやすく、下層との接着性、感光体表面の均一性に課題のある膜となりやすい。
【0131】
以上、図1に示される電子写真感光体7Aを参照し、機能分離型の感光層の例を説明したが、図3に示される電子写真感光体7Cの単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の場合、以下の態様であることが望ましい。
即ち、単層型感光層6中の電荷発生材料の含有量は10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層2や電荷輸送層3の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の膜厚は5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0132】
また、上述の実施形態では、特定の電荷輸送材料(a)と2種の熱重合開始剤とを含有する組成物の硬化膜からなる最表面層が保護層5である形態を説明したが、保護層5がない層構成の場合には、その層構成において最表面に位置する電荷輸送層が該最表面層となる。
最表面層が電荷輸送層である場合、この層の厚みは、7μm以上70μm以下が望ましく、10μm以上60μm以下がより望ましい。
【0133】
<導電性基体>
導電性基体4としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルトが挙げられる。また、導電性基体4としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も挙げられる。
ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0134】
電子写真感光体7Aがレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向があり、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が粗くなる傾向がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性基体4表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0135】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0136】
また、他の粗面化の方法としては、導電性基体4表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
【0137】
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
【0138】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向にある。
【0139】
また、導電性基体4には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、当該処理温度の範囲よりも低い場合に比べ一層速く、かつ厚い被膜が形成される。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0140】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行われる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これを更にアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の他種に比べ被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0141】
<下引層>
下引層1は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。これは、下引層1はリーク耐性、キャリアブロック性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要であるためである。なお、上記範囲の下限よりも無機粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
【0142】
中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子(導電性金属酸化物)を用いるのが望ましく、特に、酸化亜鉛は望ましく用いられる。
【0143】
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
無機粒子の体積平均粒径は50nm以上2000nm以下(望ましくは60nm以上1000nm以下)の範囲であることが望ましい。
【0144】
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m/g以上のものが望ましく用いられる。比表面積値が10m/g未満のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
【0145】
更に、無機粒子と共にアクセプター性化合物を含有させることで電気特性の長期安定性、キャリアブロック性に優れた下引層が得られる。
アクセプター性化合物としては、所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。更に、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0146】
これらのアクセプター性化合物の含有量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定してもよいが、望ましくは、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下の範囲で含有される。更に、電荷蓄積防止と無機粒子凝集の防止との観点から、無機粒子に対して0.05質量%以上10質量%以下で含有されることが望ましい。無機粒子の凝集は、導電路形成にバラツキが生じやすくなり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
【0147】
アクセプター化合物は、下引層形成用塗布液に添加するだけでもよいし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。
無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0148】
乾式法にて表面処理を施す場合には、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによってバラツキが生じることなく処理される。添加又は噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、バラツキが生じることなく攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまいバラツキのない処理ができにくい欠点があり、望ましくない。添加又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。
【0149】
また、湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌又は分散した後、溶剤除去することでバラツキが生じることなく処理される。溶剤除去方法はろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分を除去することもでき、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0150】
また、無機粒子にはアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。更にアミノ基を有するシランカップリング剤は下引層1に良好なブロッキング性を与えるため望ましく用いられる。
【0151】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなるものを用いてもよいが、具体的例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
また、これらの表面処理剤を用いた表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法又は湿式法を用いることがよい。また、アクセプター化合物の付与と、カップリング剤等の表面処理剤による表面処理と、を同時に行ってもよい。
【0154】
下引層1中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定されるが、分散性向上の観点から、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0155】
また、下引層1には結着樹脂が含有されてもよい。
下引層1に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ、所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用可能であるが、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0156】
下引層形成用塗布液中の、表面にアクセプター化合物を付与させた無機粒子(アクセプター性を付与した金属酸化物)と結着樹脂、又は、無機粒子と結着樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
【0157】
また、下引層1中には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。
添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層形成用塗布液に添加してもよい。
【0158】
添加剤としてのシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0159】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0160】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0161】
これらの化合物は単独に若しくは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いてもよい。
【0162】
下引層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。
溶媒として、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、Iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いられる。
【0163】
また、これらの溶剤は単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0164】
下引層形成用塗布液を調製する際の無機粒子の分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いられる。
更に、下引層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
【0165】
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、導電性基体上に下引層1が成膜される。
【0166】
また、下引層1は、ビッカース硬度が35以上とされていることが望ましい。
更に、下引層1は、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定されるが、厚さ15μm以上が望ましく、更に望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
下引層1の厚さが15μm未満であるときには、充分な耐リーク性能を得ることができず、また50μm以上であるときには長期使用した場合に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい欠点がある。
【0167】
また、下引層1の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等を用いられる。
また、表面粗さ調整のために下引層表面を研磨してもよい。
研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等を用いられる。
【0168】
下引層1は、導電性基体4上に塗布した前述の下引層形成用塗布液を乾燥させることで得られるが、通常、乾燥は、溶剤を蒸発させうる、製膜可能な温度で行われる。
【0169】
<電荷発生層>
電荷発生層2は、電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料を用いることが望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン、特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等を用いることがより望ましい。
【0170】
電荷発生層2に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、ここで、「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10の範囲内であることが望ましい。
【0171】
電荷発生層2は、上述の電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤中に分散した電荷発生層形成用塗布液を用いて形成される。
【0172】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0173】
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いられる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化が防止される。
更にこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、更に望ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0174】
また、電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
【0175】
このようにして得られる電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、更に望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0176】
<電荷輸送層>
電荷輸送層3は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物や、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0177】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
【0178】
【化24】

【0179】
上記構造式(a−1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。lは1又は2を示す。Ar及びArは各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(R10)=C(R11)(R12)、又は−C−CH=CH−CH=C(R13)(R14)を示し、R10乃至R14は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。
ここで、上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
【0180】
【化25】

【0181】
上記構造式(a−2)中、R15及びR15’は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。R16、R16’、R17、及びR17’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R18)=C(R19)(R20)、又は−CH=CH−CH=C(R21)(R22)を示し、R18乃至R22は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m及びnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。
【0182】
ここで、前記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(R13)(R14)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R21)(R22)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、前画像の履歴が残ることで生じる残像(以下「ゴースト」と言う場合がある)などの観点で優れ望ましい。
【0183】
電荷輸送層3に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらのうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が電荷輸送性、電荷輸送材料との相溶性に優れるため望ましい。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1から1:5までが望ましい。
【0184】
特に、電荷輸送層3上には、特定の電荷輸送材料(a)と2種以上の熱重合開始剤(b)とを含有する組成物の硬化膜からなる保護層(最表面層)を備えるため、電荷輸送層3に用いる結着樹脂としては、粘度平均分子量50000以上のものが望ましく、55000以上のものがより望ましい。このような分子量の結着樹脂を用いることで、接着性、保護層(最表面層)形成時の耐クラック性などに優れるため、望ましい。
なお、電荷輸送層3に用いる結着樹脂の粘度平均分子量の上限値としては、塗布膜の均一性(液ダレ)の点から、100000が望ましい。
ここで、本実施形態における結着樹脂の粘度平均分子量は、毛細管粘度計によって測定した値である。
なお、同様の理由から、最表層が電荷輸送層である場合には、その下層中に含まれる結着樹脂の粘度平均分子量が上記の範囲であることが望ましい。
【0185】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いてもよい。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、他種に比べ高い電荷輸送性を有しており、特に望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜可能であるが、前述の結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0186】
電荷輸送層3は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独又は2種以上混合して用いられる。また、上記各構成材料の分散方法としては、公知の方法が使用される。
【0187】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層2の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0188】
電荷輸送層3の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
【0189】
〔画像形成装置/プロセスカートリッジ〕
図4は、実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。
図4に示される画像形成装置100は、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置(静電潜像形成手段)9と、転写装置(転写手段)40と、中間転写体50と、を備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0190】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置(帯電手段)8、現像装置(現像手段)11、及びクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性或いは絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、或いは、ブレードと併用してもよい。
【0191】
また、図4では、クリーニング装置13として、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)を備え、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは必要に応じて使用される。
【0192】
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0193】
なお、図示しないが、画像の安定性を高める目的で、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
【0194】
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0195】
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが望ましい。
【0196】
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
かかるトナーとしては、平均形状係数(ML/A×π/4×100、ここでMLはトナー粒子の最大長を表し、Aはトナー粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、100以上140以下であることがより望ましい。更に、トナーとしては、体積平均粒子径が2μm以上12μm以下であることが望ましく、3μm以上12μm以下であることがより望ましく、3μm以上9μm以下であることが更に望ましい。この如く平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、他のトナーと比べ、高い現像、転写性、及び高画質の画像が得られる。
【0197】
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0198】
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用してもよい。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0199】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0200】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0201】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。更に、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0202】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0203】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0204】
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられ得る。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0205】
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0206】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の如く脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の如く植物系ワックス、ミツロウの如く動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の如く鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用される。但し、体積平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0207】
現像装置11に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0208】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0209】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0210】
有機粒子としては、黒鉛やグラファイトにフッ素が結合したフッ化炭素、ポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、パーフルオロアルコキシ・フッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)等の粒子を用いることができる。
【0211】
粒子径としては、体積平均平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、更に望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。体積平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0212】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等のため、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御のため、それより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものを使用してもよいが、精密な帯電制御を行なうためにはシリカと酸化チタンを併用することが望ましい。また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。更に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために望ましい。
【0213】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、又はそれらの表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、任意に設定される。
【0214】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0215】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いられる。
【0216】
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0217】
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置120を示す概略断面図である。
図5に示される画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。
画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0218】
タンデム型の画像形成装置に本発明の電子写真感光体を用いた場合、4本の感光体の電気特性が安定することから、より長期に渡ってカラーバランスの優れた画質が得られる。
【0219】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、電子写真感光体の移動方向(回転方向)に対して逆方向に移動(回転)する現像剤保持体である現像ローラを有することが望ましい。ここで、現像ローラは表面に現像剤を保持する円筒状の現像スリーブを有しており、また、現像装置はこの現像スリーブに供給する現像剤の量を規制する規制部材を有する構成のものが挙げられる。現像装置の現像ローラを電子写真感光体の回転方向に対して逆方向に移動(回転)させることで、現像ローラと電子写真感光体との間に留まるトナーで電子写真感光体表面が摺擦される。また、電子写真感光体上に残留したトナーをクリーニングする際に、例えば、球形に近い形状のトナーのクリーニング性を高めるためにブレード等の押し当て圧を高めることなどによって、電子写真感光体表面が強く摺擦される。
【0220】
これらの摺擦により、従来知られていた電子写真感光体は強くダメージを受け、磨耗、傷、或いは、トナーのフィルミングなどが発生しやすく、画像劣化を発生していたが、本発明の特定の電荷輸送性材料(特に、反応性官能基の数を増やし、高濃度に含有させた架橋密度の高い硬化膜が得られる材料)の架橋物によって高められ、且つ、電気特性に優れるため厚膜化した電子写真感光体表面を形成することで、長期に渡って高画質を維持することが可能となった。かかる放電生成物の堆積が極めて長期間抑制されると考えられる。
また、本実施形態の画像形成装置においては、放電生成物の堆積をより長期に亘って抑制する観点から、現像スリーブと感光体との間隔を200μm以上600μm以下とすることが望ましく、300μm以上500μm以下とすることがより望ましい。また、同様の観点から、現像スリーブと上述の現像剤量を規制する規制部材である規制ブレードとの間隔を300μm以上1000μm以下とすることが望ましく、400μm以上750μm以下とすることがより望ましい。
更に、放電生成物の堆積をより長期に亘って抑制する観点から、現像ロール表面の移動速度の絶対値を、感光体表面の移動速度の絶対値(プロセススピード)の1.5倍以上2.5倍以下とすることが望ましく、1.7倍以上2.0倍以下とすることがより望ましい。
【0221】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、磁性体を有する現像剤保持体を備え、磁性キャリア及びトナーを含む2成分系現像剤で静電潜像を現像するものであることが望ましい。この構成では、一成分系現像剤、特に非磁性一成分現像剤の場合に比べ、カラー画像でよりきれいな画質が得られ、更に高水準で高画質化及び高寿命化が実現される。
【実施例】
【0222】
以下実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0223】
(合成例1:化合物A−4の合成)
【化26】

【0224】
200mlフラスコに、上記化合物(1)を10g、ヒドロキシエチルメタクリレート50g、テトラヒドロフラン20ml、アンバーリスト15E(オルガノ社製)0.5gを加え、室温で24時間攪拌した。反応終了後、メタノール100mlを加え、析出した油状物をデカントで取り出した。この油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製して、油状の(A−4)を12g得た。得られた(A−4)のIRスペクトルを図7に示す。
【0225】
(合成例2:化合物A−17の合成)
【化27】

【0226】
500mlフラスコに、上記化合物(2)を36g、メタクリル酸75g、トルエン300ml、p−トルエンスルホン酸2gを加え、10時間加熱還流した。反応後、冷却し、水2000mlにあけ、洗浄を行い、更に水で洗浄を行った。トルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトにより精製して、(A−17)を30g得た。得られた(A−17)のIRスペクトルを図8に示す。
【0227】
(合成例3:化合物A−18の合成)
【化28】

【0228】
500mlフラスコに、上記化合物(3)を50g、メタクリル酸107g、トルエン300ml、p−トルエンスルホン酸2gを加え、10時間加熱還流した。反応後、冷却し、水2000mlにあけ、洗浄を行い、更に水で洗浄を行った。トルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトにより精製して、(A−18)を38g得た。得られた(A−18)のIRスペクトルを図9に示す。
【0229】
(比較合成例−1)
500mlフラスコに、前記化合物(2)を36g、アクリル酸70g、トルエン300ml、p−トルエンスルホン酸2gを加え、10時間加熱還流した。反応後、冷却し、水2000mlにあけ、洗浄を行い、更に水で洗浄を行った。トルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトにより精製したが、溶剤を減圧留去中にゲル化し、目的物を単離することはできなかった。
【0230】
(比較合成例−2)
比較合成例−1にヒドロキノン0.5gを加えて反応を行った後、比較合成例―1と同様の処理を行ったが、溶剤を減圧留去中にゲル化し、目的物を単離することはできなかった。
【0231】
以下、実施例及び比較例に用いる材料を示す。
<粒子>
・コロイダルシリカ(商品名:PL−1、扶桑化学工業社製)
・酸化チタン(tItone R−1T、堺化学(株)製)
・PTFE(商品名:ルブロンL−2、ダイキン化学工業社製)
【0232】
<ポリマー(c)及び(d)>
・ビスフェノール(Z)ポリカーボネート((PC(Z)、分子量4万、三菱瓦斯化学工業社製):特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(c)
・ポリメチルメタクリレート(PMMA、分子量2万):特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(c)
・特開平5−323630号公報記載の炭素−炭素2重結合を有するポリカーボネート(R−レジン、分子量2万):特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマー(d)
【0233】
<特定の電荷輸送材料(a)と反応する電荷輸送性を有さないモノマー:硬化剤>
・イソブチルアクリレート(IBA、和光純薬製)
・エトキシ化ビスフェノールジアクリレート(ABE−300、新中村化学社製)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(THE330、日本化薬社製)
【0234】
<熱重合開始剤(b)>
・AIBM:アゾイソブチルニトリル(10時間半減期温度:65℃、大塚化学製)
・V−30(10時間半減期温度:104℃、和光純薬工業製)
・V−601(10時間半減期温度:66℃、和光純薬工業製)
・OTAZO−15(10時間半減期温度:61℃、大塚化学製)
・V−40(10時間半減期温度:88℃、和光純薬工業製)
・ルペロックス TAP(10時間半減期温度:100℃、アルケマ吉富製)
・ルペロックス 26(10時間半減期温度:77℃、アルケマ吉富製)
【0235】
[実施例1]
(下引層の形成)
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理を施した酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、更に60℃で減圧乾燥を行い、アリザリンを付与させた酸化亜鉛を得た。
【0236】
このアリザリンを付与させた酸化亜鉛:60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製):15質量部と、をメチルエチルケトン85質量部に混合した液38質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
【0237】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ18μmの下引層を得た。
【0238】
(電荷発生層の形成)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温(25℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0239】
(電荷輸送層の形成)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン45質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:8万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
【0240】
(保護層の形成)
特定の電荷輸送材料(化合物A−4)30質量部、コロイダルシリカ(商品名:PL−1、扶桑化学工業社製)0.2質量部、トルエン30質量部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、アゾイソブチロニトリル(10時間半減期温度:65℃)0.1質量部、及びV−30(10時間半減期温度:104℃)を加えて保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にスプレー塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、窒素気流下、酸素濃度110ppmで室温から150℃まで30分かけて加熱し、更に150℃で30分加熱処理して硬化させ、膜厚が10μmの保護層を形成した。
以上のような方法で、電子写真感光体を得た。この感光体を感光体1とする。
【0241】
[評価]
−画質評価−
上述のようにして作製した電子写真感光体を富士ゼロックス社製、DocuCentre Color 400CPに装着し、低温低湿(8℃、20%RH)及び高温高湿(28℃、85%RH)において、以下の評価を連続して行なった。
即ち、まず、低温低湿(8℃、20%RH)の環境下にて5000枚の画像形成テストを行ない、その5000枚目の画像の画質、及び、5000枚画像形成テストを実施した後、低温低湿(8℃、20%RH)環境下で、画像形成装置を24時間放置した後の最初の画像の画質について、以下の画質均一性、カブリ、スジ、及び画像流れを評価した。
評価結果を表4に示した。
【0242】
その後、この低温低湿環境下での画像形成テスト及び画質評価に続いて、高温高湿(28℃、85%RH)の環境下にて5000枚の画像形成テストを行い、その5000枚目の画像の画質、及び、5000枚画像形成テストを実施した後、画像形成装置を高温高湿(28℃、85%RH)環境下で24時間放置した後の最初の画像の画質について、以下の画質均一性、カブリ、スジ、及び画像流れを評価した。
評価結果を表5に示した。
なお、画像形成テストには、富士ゼロックス製P紙(A4サイズ、横送り)を用いた。
【0243】
<画質均一性の評価>
画質均一性は、図6に示した文字と濃度30%の黒領域を有するパターンのチャートをプリントし、濃度30%の黒領域部分の濃度ムラを目視にて評価した。
A:濃度ムラは良好から軽微である。
B:濃度ムラは若干目立つ程度である。
C:濃度ムラは、はっきり確認できることを示す。
【0244】
<カブリの評価>
カブリは、上述の画質均一性の評価と同じサンプルを用いて白地部のトナー付着程度を目視にて観察し判断した。
A:良好。
B:うっすらとカブリあり。
C:画質上問題となるカブリあり。
【0245】
<スジの評価>
スジは、上述の画質均一性の評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:部分的にスジの発生あり。
C:画質上問題となるスジ発生。
【0246】
<画像流れの評価>
画像流れは、上述の画質均一性評価と同じサンプルを用いて濃度30%の黒領域の万線のボケを目視にて判断した。
A:良好。
B:連続的にプリントテストしている時は問題ないが、1日(24時間)放置後にボケ発生。
C:連続的にプリントテストしている時にもボケ発生。
【0247】
−保護層(最表面層)の評価−
以下のようにして保護層(最表面層)の接着性、表面粗さ、及び磨耗量について評価した。
【0248】
<保護層の接着性の評価>
保護層の接着性は、前述のような低温低湿、高温高湿で合計約10000枚の画像形成テストを実施した後の感光体に、2mm角で5個×5個の切れ目をカッターナイフで付け、3M社製メンディングテープを貼り付け、剥離した時の残存数で評価した。
残存数が多いほど、下層である電荷輸送層との密着性に優れることが分かる。
A:21個以上残存。
B:11個以上20個以下残存。
C:10個以下残存。
評価結果を表4に示す。
【0249】
<最表面層の表面粗さの評価>
画像形成テスト前の感光体表面の十点平均粗さRz(μm)を、表面粗さ形状測定装置SURFCOM1400D(東京精密社製)にて測定した。
評価結果を表4に示す。
【0250】
<最表面層の磨耗量の測定>
最表面層の磨耗量は、低温低湿、高温高湿で合計約10000枚の画像形成テストを実施した後の感光体の膜厚を測定し、画像形成テスト前の感光体の膜厚と比較して、最表面層の磨耗量を算出した。測定には、渦電流膜厚計(Surfix N:PHYNIX社製)を用いた。
磨耗量が小さいほど、最表面層の機械的強度が高いことが分かる。
評価結果を表5に示す。
【0251】
[実施例2乃至13]
下記表1に従って、特定の電荷輸送材料(a)、及び各種の添加剤(粒子、ポリマー、硬化剤、酸化防止剤、及び熱重合開始剤)の種類、更には、これらの配合量を変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体2乃至13を作製し、その評価を行った。なお、保護層の膜厚は、DocuCentre Color 400CPで適正な電位が得られる膜厚に調整した。
評価結果は表4及び表5に示す。
【0252】
[実施例14]
電荷輸送層の形成を以下のように変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体14を作製し、その評価を行った。評価結果は表4及び表5に示す。
【0253】
(電荷輸送層の形成)
下記構造の化合物(a)45質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が17μmの電荷輸送層を形成した。
【0254】
【化29】

【0255】
[実施例15]
電荷輸送層の形成を以下のように変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体15を作製し、その評価を行った。評価結果は表4及び表5に示す。
【0256】
(電荷輸送層の形成)
下記構造の化合物(b)50質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)50質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
【0257】
【化30】

【0258】
<実施例16>
電荷輸送層の形成を以下のように変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体16を作製し、その評価を行った。評価結果は表4及び表5に示す。
【0259】
(電荷輸送層の形成)
下記構造の化合物(c)50質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:8万)50質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
【0260】
【化31】

【0261】
[実施例17]
電荷輸送層の形成に用いた結着樹脂を、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)に代えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体17を作製し、その評価を行った。
評価結果は表4及び表5に示す。
【0262】
[実施例18]
電荷発生層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、以下のようにして電荷輸送層を形成して感光体18を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4及び表5に示す。
【0263】
(電荷輸送層の形成)
特定の電荷輸送材料(化合物A−4)60質量部、コロイダルシリカ(商品名:PL−1、扶桑化学工業社製)0.2質量部、トルエン30質量部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、アゾイソブチロニトリル(10時間半減期温度:65℃)0.1質量部、及びV−30(10時間半減期温度:104℃)0.15質量部を混合して電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、窒素気流下、酸素濃度110ppmで室温から150℃まで30分かけて加熱し、更に150℃で40分加熱処理して硬化させ、膜厚30μmの電荷輸送層を形成して実施例18の感光体を作製した。
【0264】
[実施例19]
電荷発生層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、以下のようにして電荷輸送層を形成して感光体19を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4及び表5に示す。
【0265】
(電荷輸送層の形成)
特定の電荷輸送材料(化合物A−4)30質量部、前記化合物(b)10質量部、PC(Z)10質量部、トルエン30質量部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、アゾイソブチロニトリル(10時間半減期温度:65℃)0.1質量部、及びV−30(10時間半減期温度:104℃)0.15質量部を混合して電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、窒素気流下、酸素濃度110ppmで室温から150℃まで30分かけて加熱し、更に150℃で40分加熱処理して硬化させ、膜厚30μmの電荷輸送層を形成して実施例19の感光体を作製した。
【0266】
[実施例20]
電荷発生層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、以下のようにして電荷輸送層を形成して感光体20を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4及び表5に示す。
【0267】
(電荷輸送層の形成)
特定の電荷輸送材料(化合物A−4)30質量部、前記化合物(c)10質量部、PC(Z)10質量部、トルエン30質量部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、アゾイソブチロニトリル(10時間半減期温度:65℃)0.2質量部、及びV−30(10時間半減期温度:104℃)0.1質量部を混合して電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、窒素気流下、酸素濃度110ppmで室温から150℃まで30分かけて加熱し、更に150℃で40分加熱処理して硬化させ、膜厚30μmの電荷輸送層を形成して実施例20の感光体を作製した。
【0268】
[比較例1乃至4]
電荷輸送層の膜厚を30μmとし、保護層を設けなかった以外は、[実施例1]と同様にして比較感光体1乃至4を作製し、[実施例1]と同様に評価した。
評価結果は表4及び表5に示す。
【0269】
[比較例5乃至10]
下記表3に従って、特定の電荷輸送材料(a)、その他の電荷輸送材料、及び各種の添加剤(粒子、ポリマー、硬化剤、酸化防止剤、及び熱重合開始剤)の種類、更には、これらの配合量を変えた以外は、[実施例1]と同様にして比較感光体5乃至10を作製し、その評価を行った。なお、保護層の膜厚は、DocuCentre Color 400CPで適正な電位が得られる膜厚に調整した。
評価結果は表4及び表5に示す。
【0270】
【表1】

【0271】
【表2】

【0272】
【表3】

【0273】
【表4】

【0274】
【表5】

【0275】
表4及び表5に示すように、本実施例では、比較例に比べ、画像均一性、カブリ、スジ、及び画像流れのいずれもが良好であり、接着性の評価も優れていることが分かる。
また、比較例5乃至10の表面粗さは、実施例に比べ非常に大きく、最表面層に残留ゆがみが発生しているものと考えられる。
なお、比較例の電子写真感光体を用いた場合、高温高湿下での画像形成テストにおける評価が、低温低湿下での画像形成テストにおける評価よりも劣る。これは、放電生成物の影響をより受けやすくなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図2】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図3】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図5】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図6】(A)乃至(C)はそれぞれ画像評価に用いた画像パターンを示す図である。
【図7】生成物(A−4)のIRスペクトルである。
【図8】生成物(A−17)のIRスペクトルである。
【図9】生成物(A−18)のIRスペクトルである。
【符号の説明】
【0277】
1 下引層
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 導電性基体
5 保護層
6 単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)
7A、7B、7C、7 電子写真感光体
8 帯電装置
9 露光装置
11 現像装置
13 クリーニング装置
14 潤滑材
40 転写装置
50 中間転写体
100 画像形成装置
120 画像形成装置
300 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を少なくとも有し、
最表面層が、同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)の少なくとも1種と、2種以上の熱重合開始剤(b)と、を含有する組成物の硬化膜からなることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記硬化膜が前記組成物を熱により硬化させて得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記組成物が、前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)と反応する電荷輸送性を有さないモノマー又はオリゴマー(c)を更に含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記組成物が、前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)と反応しないポリマー(d)を更に含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記組成物が、前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)と反応するポリマー(e)を更に含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)が、同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び4つ以上のメタクリロイル基を有する化合物(a’)であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記同一分子内にトリフェニルアミン骨格及び4つ以上のメタクリロイル基を有する化合物(a’)が、下記一般式(A)で表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
【化1】

〔一般式(A)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(CH)=CHを示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に、1又は2を示し、kは0又は1を示し、dは1乃至5の整数を示し、eは0又は1を示し、Dの総数は4以上である。〕
【請求項8】
前記2種以上の熱重合開始剤のうち2種の熱重合開始剤は、10時間半減期温度の差が20℃以上あることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
同一分子内に電荷輸送性骨格及びアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(a)の少なくとも1種と、2種以上の熱重合開始剤(b)と、を含有する組成物からなる塗布液を、被塗布面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を熱により硬化させて最表面層を得る工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項10】
前記2種以上の熱重合開始剤のうち2種の熱重合開始剤は、10時間半減期温度の差が20℃以上あることを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種の手段と、を備え、画像形成装置に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−152179(P2010−152179A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331462(P2008−331462)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】